説明

地盤圧密工法

【課題】多数の鉛直ドレーンや水平ドレーンを設ける手間をかけずに、効率よく地盤の圧密を行うことができる地盤圧密工法を提供する。
【解決手段】地盤1に地下水位低下装置10を埋設し、次いで地盤1表面を気密シート2で覆い、その後地下水位低下装置10により地下水位を低下させることで地下水面と気密シート2との間の気圧を低減させ、地下水面と気密シート2との間の気圧と大気圧との差分の圧力を、気密シート2を介して地盤1に作用させる地盤圧密工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤圧密工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地盤圧密工法としては、改良の対象となる地盤に多数の鉛直ドレーンを設け、その上部に水平ドレーンを設け、水平ドレーンの中央部に集水容器を埋設し、集水容器内の水を排水ポンプで排水するドレーン工法がある。この工法では、地盤中の地下水が鉛直ドレーンに浸透し、間隙水圧により上昇し、水平ドレーンを介して集水容器に排水される。このとき水平ドレーン及び集水容器の上部を気密シートで覆い、水平ドレーン及び集水容器の上部と気密シートとの間の空気を真空ポンプで排気することで、大気圧を地盤に上載荷重として作用させることができる。そして、地盤中の地下水の間隙水圧を増大させ、鉛直ドレーンへの排水を促進することで、圧密が促進される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−166233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記工法では、多数の鉛直ドレーンや水平ドレーンを設ける手間がかかるという問題があった。また、地盤中の地下水の排水を均一に行うため、気密シート下の空気を均一に吸い出す必要があった。
【0004】
本発明の課題は、多数の鉛直ドレーンや水平ドレーンを設ける手間をかけずに、効率よく地盤の圧密を行うことができる地盤圧密工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、地盤圧密工法であって、地盤に地下水位低下装置を埋設し、次いで地盤表面を気密シートで覆い、その後前記地下水位低下装置により地下水位を低下させることで地下水面と前記気密シートとの間の気圧を低減させ、地下水面と前記気密シートとの間の気圧と大気圧との差分の圧力を、前記気密シートを介して地盤に作用させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の地盤圧密工法であって、前記気密シートの上部にさらに上載荷重を加えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の地盤圧密工法であって、前記地下水位低下装置は、下端に透水性のストレーナ部を有し地盤に埋設されるストレーナ管と、前記ストレーナ管の外周に形成されるフィルターと、前記ストレーナ管内を排気することにより前記フィルターを透過して前記ストレーナ部から前記ストレーナ管内に地下水を流入させる真空ポンプと、前記ストレーナ管内に配置された排水ポンプにより前記ストレーナ管内に流入した地下水を地上に排水する排水管と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、地盤に地下水位低下装置を埋設し、次いで前記地下水位低下装置により地下水位を低下させるとともに、地盤に上載荷重を作用させることで地盤を圧密する地盤圧密工法において、前記地下水位低下装置は、下端に透水性のストレーナ部を有し地盤に埋設されるストレーナ管と、前記ストレーナ管の外周に形成されるフィルターと、前記ストレーナ管内を排気することにより前記フィルターを透過して前記ストレーナ部から前記ストレーナ管内に地下水を流入させる真空ポンプと、前記ストレーナ管内に配置された排水ポンプにより前記ストレーナ管内に流入した地下水を地上に排水する排水管と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、多数の鉛直ドレーンや水平ドレーンを設ける手間をかけずに、効率よく地盤の圧密を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の実施形態の地盤圧密工法が適用される地盤1を示す断面図である。地盤1は気密シート2により覆われている。気密シート2は空気を透過せず、地盤1の表面の圧密変形に追従して変形する。気密シート2としては、例えばビニールシート等の空気を透過しないシートを用いることができる。
【0012】
なお、本発明の地盤圧密工法が適用される地盤1には、サンドドレーン、ペーパードレーン等の鉛直ドレーンや水平ドレーンを設けていない。その代わりに、地盤1には地下水位低下装置10が埋設されている。
【0013】
地下水位低下装置10は、図1に示すように、フィルター20と、ストレーナ管30と、排水管40と、真空ポンプ(図示せず)等からなる。
フィルター20はストレーナ管30の外周部に埋設されており、透水性を有する。フィルター20としては、砂利や巻線等を用いることができる。フィルター20内には周囲の地盤1から地下水が浸透する。
【0014】
ストレーナ管30は地盤1にほぼ鉛直に埋設されており、周囲にフィルター20が設けられている。ストレーナ管30は、例えば、鋼管等の非透水性のものからなり、上端は遮蔽され、下部には外周部に穴を設けて水が通るようにしたストレーナ部31を有する。フィルター20内の水はストレーナ部31からストレーナ管30内に吸引される。
【0015】
ストレーナ管30の上端には、吸引管32が設けられている。吸引管32には地上部に設けられた真空ポンプ(図示せず)と接続されている。ストレーナ管30内部の空気は吸引管32を介して真空ポンプにより排気される。
また、ストレーナ管30の上部には、ストレーナ管30内の圧力を計測する真空ゲージ33が設けられている。
【0016】
排水管40は、ストレーナ管30の上端を貫通して内部に挿入されており、下端に排水ポンプ41が設けられている。排水ポンプ41はストレーナ部31よりも上方に設けられている。排水ポンプ41は、例えば、ポンプ本体とモーター部が一体化されたものであり、排水管40の下端に接続されている。
【0017】
また、排水管40には、ストレーナ管30の上端よりも上方に、逆止弁42が設けられている。逆止弁42は、排水管40内の地下水が地上に向かう方向に流れるときに開き、ストレーナ管30内に向かって逆流するときに閉じる。
【0018】
次に、本発明の地盤圧密工法の手順について説明する。
まず、地下水位低下装置10の真空ポンプの駆動を開始し、ストレーナ管30内を減圧する。すると、ストレーナ管30内の気圧とフィルター20外部の間隙水圧との圧力差により、フィルター20内の地下水がストレーナ部31よりストレーナ管30内に浸透し始めるとともに、地盤1からフィルター20内に地下水が浸透し始める。ストレーナ管30内の水位は、ストレーナ管30内の気圧とフィルター20外部の間隙水圧との圧力差による圧力水頭に相当する高さまで上昇しようとする。このとき、真空ポンプによりストレーナ管30内が減圧されている分、ストレーナ管30内の気圧とフィルター20外部の間隙水圧との圧力差が大きくなり、圧力水頭が増大するため、地下水が効率的にストレーナ管30内に流入する。
【0019】
ストレーナ管30内の水位が圧力水頭に相当する高さに達する前に、排水ポンプ41によりストレーナ管30内に浸透した地下水を排水する。このため、ストレーナ管30内の水位は常に圧力水頭よりも低い。したがって、地盤1からフィルター20内に浸透した地下水は常にストレーナ部31からストレーナ管30内に流入する。
【0020】
地下水の排水が継続されると、地盤1内の地下水位が低下する。すると、地盤1の表面が気密シート2によって覆われているため、地下水面と気密シート2との間の空気の容積が増大し、気圧が低下する。
【0021】
気密シート2の下部の気圧が気密シート2の上部の気圧(大気圧)よりも低下すると、気密シート2は上下の圧力差により下向きに力を受けるため、地盤1は気密シート2より下向きに力を受け、圧密が促進される。
【0022】
このように、本発明の地盤圧密工法によれば、地下水位低下装置10により地下水位を低下させることにより、地下水面と気密シート2との間の気圧と大気圧との差分の圧力を地盤1に対する上載荷重として作用させることができ、地盤1の圧密を促進することができる。
【0023】
なお、地盤1に対してさらに上載荷重を加えるために、図2に示すように、気密シート2の上部に盛土等の荷重材3を設け、地下水位低下装置10による排水を行ってもよい。荷重材3を設けることにより、大気圧による上載荷重に加えて荷重材3の上載荷重を地盤1に加えることができ、さらに地盤1の圧密を促進することができる。
【0024】
また、荷重材3のみで地盤1を圧密するのに充分な上載荷重が得られる場合には、図3に示すように、気密シート2を設けずに、地盤1の上に直接、荷重材3を設け、地下水位低下装置10による排水を行ってもよい。地下水位低下装置10により排水を行う前は、上載荷重は地盤1の土粒子骨格及び間隙水圧により支持されているが、排水を行うことで、上載荷重を土粒子骨格のみで支持することになるため、上載荷重により土粒子骨格が圧縮され、地盤1が圧密される。
【0025】
同様に、地盤1の表面の通気性が低い場合(例えば粘性土等)や、荷重材3の通気性が低い場合にも、図3に示すように、気密シート2を設けずに、地盤1の上に直接、荷重材3を設け、地下水位低下装置10による排水を行ってもよい。地盤1や荷重材3の通気性が低い場合には、地盤1内の気圧と大気圧との差分の圧力を地盤1または荷重材3に対する上載荷重として作用させることができ、地盤1の圧密を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態の地盤圧密工法が適用される地盤1を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態の地盤圧密工法が適用される地盤1を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態の地盤圧密工法が適用される地盤1を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 地盤
2 気密シート
3 荷重材
10 地下水位低下装置
20 フィルター
30 ストレーナ管
31 ストレーナ部
40 排水管
41 排水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に地下水位低下装置を埋設し、次いで地盤表面を気密シートで覆い、
その後前記地下水位低下装置により地下水位を低下させることで地下水面と前記気密シートとの間の気圧を低減させ、
地下水面と前記気密シートとの間の気圧と大気圧との差分の圧力を、前記気密シートを介して地盤に作用させることを特徴とする地盤圧密工法。
【請求項2】
前記気密シートの上部にさらに上載荷重を加えることを特徴とする請求項1に記載の地盤圧密工法。
【請求項3】
前記地下水位低下装置は、下端に透水性のストレーナ部を有し地盤に埋設されるストレーナ管と、
前記ストレーナ管の外周に形成されるフィルターと、
前記ストレーナ管内を排気することにより前記フィルターを透過して前記ストレーナ部から前記ストレーナ管内に地下水を流入させる真空ポンプと、
前記ストレーナ管内に配置された排水ポンプにより前記ストレーナ管内に流入した地下水を地上に排水する排水管と、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の地盤圧密工法。
【請求項4】
地盤に地下水位低下装置を埋設し、次いで前記地下水位低下装置により地下水位を低下させるとともに、地盤に上載荷重を作用させることで地盤を圧密する地盤圧密工法において、
前記地下水位低下装置は、下端に透水性のストレーナ部を有し地盤に埋設されるストレーナ管と、
前記ストレーナ管の外周に形成されるフィルターと、
前記ストレーナ管内を排気することにより前記フィルターを透過して前記ストレーナ部から前記ストレーナ管内に地下水を流入させる真空ポンプと、
前記ストレーナ管内に配置された排水ポンプにより前記ストレーナ管内に流入した地下水を地上に排水する排水管と、
を備えることを特徴とする地盤圧密工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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