説明

地盤掘削方法

【課題】 地盤を補強したあと掘削したとき、掘削土に産業廃棄物が含有されず、分別処理不要で掘削土を一般残土として廃棄することが可能な、地盤掘削方法を提供する。
【解決手段】 生分解性を有する中空の管体5または中実の棒体7を地盤に打設し、水ガラスを主成分とする薬液を注入することによって固結領域4が形成され、地盤が補強される。その後地盤を掘削して掘削土を排出する。この掘削土には有害物質が含まれておらず、一般残土として廃棄処理が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤を補強して掘削する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘削工事における切羽の安定対策の補助工法として先受け工法や、鏡面の補強として鏡ボルトを打設して鏡面の崩落を防止する方法が知られている。切羽の崩落を防ぐためのこれらの工法は、吐出口を有する管を地盤に打設し、地盤を補強するための薬液を管の内部に注入し、吐出口から周囲の地盤に薬液を浸透させて硬化させることによって行われる。
このとき、土中の環境負荷の軽減のため、前記管として生分解性樹脂からなるものを用いた工法も知られている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2007−40057
【特許文献2】特開2003−3168
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
管に生分解性樹脂を使用した場合、掘削した後の残土に混じる管の破片は分別処理する必要がない。しかし、地盤を補強するために注入した薬液も残土に含まれる。特許文献2に記載されているウレタン系薬液は、緊急やむを得ない状況下で使用が許容されるものの、通常のトンネル補助工法に使用が許可されているものではない。また掘削土に混入するウレタンの固結物は産業廃棄物として処理されており、掘削土の廃棄処分は煩雑でありかつ高コストとなるという問題があった。
また、セメント系硬化剤を使用した場合、環境汚染物質である六価クロムが溶出するおそれがあるため、掘削土を一般残土として処理することができないという問題があった。
【0004】
本発明はこのような従来の技術の問題を解決しようとするものであり、地盤を補強したあと掘削したとき、産業廃棄物が発生することなく、掘削土を一般残土として廃棄処理することが可能な地盤掘削方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、長手方向に所定の間隔で複数の吐出口が穿設された中空の管体を地盤に打設する打設工程と、前記管体の内部に地盤を補強する薬液を注入する注入工程と、前記地盤を掘削する掘削工程と、前記掘削した土を排出する排出工程とを備え、前記管体が生分解性樹脂からなり、前記薬液の成分が、水ガラスとグリオキザールとリン酸と水とを含むことを特徴とする地盤掘削方法である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、地盤の掘削時に発生する掘削土の中に混入するのは生分解性材料の破砕物および水ガラスの固結物のみであるため、分別する必要はなく、全て一般残土として廃棄することができる。
【0007】
また請求項2に記載の発明は、地盤に長孔を穿孔する穿孔工程と、前記長孔に生分解性樹脂からなる中実の棒体を、吐出口を有する注入ホースとともに挿入する挿入工程と、前記注入ホースの内部に地盤を補強する薬液を注入する注入工程と、前記地盤を掘削する掘削工程と、前記掘削した土を排出する排出工程とを備え、前記薬液の成分が、水ガラスをとグリオキザールとリン酸と水とを含むことを特徴とする地盤掘削方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、地盤に打設する生分解性樹脂の形状が中実であるため高強度であり、さらに地盤の掘削時に発生する掘削土の中に混入するのは生分解性材料の破砕物および水ガラスの固結物のみであるため、分別する必要はなく、全て一般残土として廃棄することができる。
【0009】
また請求項3に記載の発明は、前記挿入工程において、複数の可撓性を有する長尺の前記棒体を、生分解性を有する結束紐で所定の間隔で結束しつつ、前記注入ホースとともに挿入することを特徴とする請求項2に記載の地盤掘削方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、生分解性樹脂からなる中実の棒体をロール状にして持ち運ぶことができ、地盤に穿孔した長孔の長さに応じて適宜切断することが可能となり、定尺の管体や棒体を連結する工程が不要となり低コストとなる。また、地盤の掘削時に発生する掘削土の中に混入するのは生分解性材料の破砕物および水ガラスの固結物のみであるため、分別する必要はなく、全て一般残土として廃棄することができる。
【0011】
また請求項4に記載の発明は、前記薬液において前記水ガラス200リットルに対して前記リン酸を75%濃度換算で4.5〜7.0リットル配合することを特徴とする請求項1〜3に記載の地盤掘削方法である。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、地盤補強に適した固結強度を実現しつつ、薬液が地盤に浸透するのに十分なゲル化時間を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地盤の掘削時に発生する掘削土の中に混入するのは生分解性材料の破砕物および水ガラスの固結物のみであるため、分別する必要はなく、全て一般残土として廃棄することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず本発明の地盤掘削方法に用いられる地盤補強用の薬液について説明する。
本発明の地盤掘削方法に用いられる地盤補強用の薬液は、水ガラスを主成分とするA液と、グリオキザール、リン酸および水を主成分とするB液とからなる。
【0015】
A液とB液を混合することによってまずグリオキザールが水ガラス中のアルカリの存在下で加水分解し、グリコール酸を生成する。その後、水ガラスがグリコール酸と反応し、グリコール酸ソーダと不溶性の珪酸ゲルを生成する。また、リン酸によってゲル化時間が短縮され、リン酸の添加量によってゲル化時間を制御することが可能となる。
固化した薬液はグリコール酸ナトリウムおよび珪酸ゲルを含んでいる。珪酸ゲルは自然界に存在するシリカと同じで無害である。また、グリコール酸ナトリウムも環境に害を与えることはなく、最終的には炭酸ナトリウムと炭酸ガスと水とに分解され、これらも同様に無害である。
【0016】
(実施例)
以下本発明の地盤掘削方法に用いる薬液の実施例について説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0017】
表1に示す配合の薬液におけるゲル化時間および24時間後の圧縮強度について試験した結果をしめす。使用した材料は以下の通りである。
水ガラス JIS K1408 3号、比重1.40
グリオキザール 純分40%、比重1.25
リン酸 濃度75%、比重1.58
【0018】
【表1】

【0019】
表1の実施例1〜8において、水ガラスおよびグリオキザールの配合は一定であるが、リン酸の配合量は各実施例ごとに異なっており、400L当たり4.5〜7.0Lまで変化させている。また実施例9および10では、リン酸が配合されていない。
【0020】
試験の結果、リン酸の配合量が増加するとともに圧縮強度は増加し、ゲル化時間は短縮するという傾向が示されている。ここで、実施例1,2,4,5において圧縮強度のデータが得られていないが、上記の傾向から、実施例1〜9のいずれの実施例においても圧縮強度は1.0MPaを超えることが明らかであり、トンネルの補助工法における使用に耐える強度を備えている。また、ゲル化時間については7秒から60分まで調節することができ、種々の土質に浸透させることが可能であり、地盤の土質や用途に応じて適宜な薬液配合を選択することができる。
なお、上記実施例以外の配合を採用して、所望のゲル化時間および強度を得ることも適宜行い得る。例えば高強度が不要である場合に、水ガラスの量を減らして水の量を増やすといった配合を採用することも可能である。
【0021】
次に薬液の分解性について説明する。上述のように混合により反応した薬液はグリコール酸ナトリウム、珪砂および水を含んだ珪酸ゲルである。この珪酸ゲルの経時的な分解について試験した結果を以下に示す。試験を行ったのは上述の実施例4に係る薬液であり、この薬液を砂礫に適用しゲル化させたサンドゲル、および薬液のみでゲル化させたホモゲルそれぞれについて一週間水中で養生し、ゲル化直後の重量と一週間後の重量とを比較した。
【0022】
その結果、サンドゲルについてはゲル化直後の重量が384.8gに対して、一週間後の重量が341.2gとなり、11.3%の減少となった。一方、ホモゲルについては、ゲル化直後の重量が186.7gに対して、一週間後の重量が177.1gとなり、5.1%の減少となった。この重量の減少は、珪酸ゲルが内包する水が外部に放出されているためであり、十分な分解性能を有していることを示している。
【0023】
次に、上記薬液を用いた本発明に係る地盤掘削方法の実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0024】
図1はトンネルの掘削に本発明を適用した場合における切羽の側断面図であり、切羽1周辺にドリルジャンボ2を用いて長孔3を穿孔している状態を示している。図2は地盤に中空の管体5を打設し、薬液を注入する工程を示した図である。図3は地盤に長孔3を穿孔したあと、中実の棒体7を挿入し、薬液を注入する工程を示した図である。図4は地盤に長孔3を穿孔したあと、可撓性を有する長尺の中実の棒体7を挿入し、薬液を注入する工程を示した図である。これらの図に示すとおり、本発明は、薬液注入による地盤の強化と掘削とを交互に行って地盤を掘進する工法であり、地盤に穿孔した長孔3から地中に薬液を注入し、地盤に固結領域4が形成された後掘削し、掘削された土を排出するものである。
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る地盤掘削方法を、図1および図2に基づいて以下説明する。本実施形態は、地盤の穿孔と、中空の管体の挿入とを、それぞれ独立に行う形態である。
まず、切羽1において中空の管体を打設する位置および穿孔深さを決め、その位置にドリルジャンボ2等の機械によって穿孔を行う。そして所定の長さの長孔3が穿孔されたことを確認した後、穿孔ロッド21およびビット22を引き抜き、長孔3内に残されたスライム等の洗浄を行う。
【0026】
次に穿孔された長孔3に生分解性樹脂からなるの中空の管体5を挿入する。このとき予め中空の管体の先端部に略円錐形状の先端コーン52を取り付けておけば、途中で詰まることなく挿入がスムーズとなるため好適である。さらに、この先端コーン52が生分解性樹脂から成るものであれば、後述の掘削土の処理の際分別する必要がないため、さらに好適である。また、複数の定尺の管体5を、カプラ53を用いて直列に連結し、適宜延長することも可能であり、このとき先端コーン52と同様に、カプラ53が生分解性樹脂から成るものであればさらに好適である。
【0027】
ここで管体5に使用する生分解性樹脂としては種々のものを採用することができる。地盤補強に用いられる管体5は、地盤の崩落を防ぐため十分なせん断強度を有することが求められているが、こんにゃくから生成される飛粉を含有する生分解性樹脂は機械的特性に優れ、なおかつ低コストであるため、好適に使用される。
また廃棄した場合、水分吸収性が高く土壌中での微生物が発生しやすいため、良好な生分解性を有する。
【0028】
次に注入工程に移る。管体5を長孔3の奥まで挿入した後、管体5の後部に薬液を注入するための注入プラグ62を設置し、さらに長孔3と管体5との隙間にウェスやコーキング材などの封止体61を挿入し封止する。薬液を注入する際隙間から流れ出ないようにするためである。
そして注入プラグ62に薬液注入用のスタティックミキサーを内蔵したノズル63、分岐管64、薬液のA液およびB液それぞれにつながる連通管65a,65bを接続する。
次にA液、B液それぞれの送液ポンプを作動させノズル63に向けて送液する。ノズル63に到達したA液およびB液はスタティックミキサーより混合され、混合された薬液が管体5の内部に注入される。
【0029】
管体5の内部に注入された薬液は、管体5の長手方向に所定の間隔で穿設された複数の吐出口51から外部に吐出され、地盤の隙間や亀裂に浸透する。浸透が十分に行われた後送液ポンプを停止し、注入プラグ62を取り外す。地盤に浸透した薬液が固化すると、中空の管体および周辺の地盤が固結され、固結領域4が形成される。この手順を所定の本数分繰り返し、地盤の補強が完了する。
【0030】
次に掘削工程および排出工程に移る。補強された地盤の掘削は、掘削機、油圧ジャンボ等の機械を用いて行われ、掘削土は大型ダンプ、ショベル、ベルトコンベアなどで掘削土置場へと搬送され、排出される。
【0031】
このとき掘削土には、生分解性樹脂および固結した薬液の破片が含まれる。生分解性樹脂については、掘削土置場にて表面に土が接するように放置することによって確実に分解が進み、最終的には水および二酸化炭素に変化する。一方、薬液はA液およびB液の混合により化学反応し、グリコール酸ナトリウムおよび珪酸ゲルが生じる。珪酸ゲルは自然界に存在するシリカと同じで無害である。また、グリコール酸ナトリウムも環境に害を与えることはなく、最終的には炭酸ナトリウムと炭酸ガスと水とに分解される。
すなわち、掘削土は産業廃棄物を含んでおらず、分別作業などの特別な廃棄処理は不要であり、全て一般残土として処理することが可能となる。
【0032】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態に係る地盤掘削方法を以下説明する。本実施形態は、地盤の穿孔と同時に中空の管体を打設する形態である。
まず、切羽1において中空の管体5を打設する位置および穿孔深さを決める。その位置にドリルジャンボ2等の機械によって穿孔を行う。このとき穿孔ロッド21に代えて管体5を直接連結し、先端にはビット22を装着した上で穿孔する。所定の長さの長孔3が穿孔され、管体5が挿入されたたことを確認した後、ドリルジャンボ2等の機械と管体5との結合を解除する。この工程により、地盤への穿孔と管体5の打設とを同時に行うことができる。また管体5の先端に取り付ける先端コーン52も不要となる。
この後の注入工程、掘削工程および排出工程は第1の実施形態と同様である。
【0033】
また、内径の大きい中空の管体を打設する場合、以下のような工程を適用することができる。
まず、切羽1において中空の管体5を打設する位置および穿孔深さを決める。その位置にドリルジャンボ2等の機械によって穿孔を行う。このとき穿孔ロッド21を管体5に挿入し、穿孔ロッド21の先端にはインナービットおよびリングビットを装着する。このときインナービットおよびリングビットには、特開2004−190270に開示されたものを使用するのが好適である。そして、所定の長さの長孔3を穿孔し、管体5が挿入されたたことを確認した後、穿孔ロッド21およびインナービッド23を管体5から抜いて回収する。この工程により、地盤への穿孔と管体5の打設とを同時に行うことができる。
【0034】
次に注入工程として、第1の実施形態と同様の注入工程を適用することも可能であるが、管体5の内部に直接薬液を注入するのに代えて、長孔3の奥部に到達するようなホースを管体5の内部に挿入し、このホースに薬液を注入して、管体5に穿設された複数の吐出口51から地盤の隙間や亀裂に浸透させることが可能である。また、長さの異なるホースを複数同時に挿入して使用すれば、薬液を地盤にむらなく浸透させることが可能となる。
この後の掘削工程および排出工程は第1の実施形態と同様である。なお、注入工程においてホースは地盤に固着されるが、その後の掘削工程においてもホースは破砕されず、長尺を保っているため、掘削土の中からホースを分別して廃棄することは容易である。またホースに生分解性の樹脂が用いられていれば、分別廃棄の必要はない。
【0035】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態に係る地盤掘削方法を、図1および図3に基づいて以下説明する。本実施形態は、中空の管体に代えて中実の棒体を用いる形態である。
まず、切羽1において中実の棒体7を打設する位置および穿孔深さを決め、その位置にドリルジャンボ2等の機械によって穿孔を行う。そして所定の長さの長孔3が穿孔されたことを確認した後、穿孔ロッド21およびビット22を引き抜き、長孔内に残されたスライム等の洗浄を行う。
【0036】
次に穿孔された長孔に生分解性樹脂からなる中実の棒体7を、吐出口661を有する注入ホース66とともに挿入する。このとき予め棒体7の先端部に略円錐形状の先端コーン71を取り付けておけば、途中で詰まることなく挿入がスムーズとなるため好適である。さらに、この先端コーン71が生分解性樹脂から成るものであれば、後述の掘削土の処理の際分別する必要がないため、さらに好適である。また、棒体7と注入ホース66とを併せて長孔3に挿入するため、棒体7と注入ホース66とを生分解性を有する結束紐67で結んでおくのが好適である。なお、棒体7に使用する生分解性樹脂としては第1の実施形態と同様に選択することができる。また、第1の実施形態と同様に、複数の定尺の棒体7を、カプラ(図示しない)を用いて直列に連結し、適宜延長することも可能であり、このとき先端コーン71と同様に、カプラが生分解性樹脂から成るものであればさらに好適である。
【0037】
次に注入工程に移る。棒体7および注入ホース66を長孔3の奥まで挿入した後、注入ホース66の後部に薬液を注入するための注入プラグ62を設置し、さらに長孔3と棒体7および注入ホース66との隙間にウェスやコーキング材などの封止材61を挿入し封止する。薬液を注入する際隙間から流れ出ないようにするためである。
そして注入プラグ62に薬液注入用のスタティックミキサーを内蔵したノズル63、分岐管64、薬液のA液およびB液それぞれにつながる連通管65a,65bを接続する。
次にA液、B液それぞれの送液ポンプを作動させノズル63に向けて送液する。ノズル63に到達したA液およびB液はスタティックミキサーより混合され、混合された薬液が注入ホース66に注入される。
【0038】
注入ホース66に注入された薬液は、注入ホース66の吐出口661から外部に吐出され、地盤の隙間や亀裂に浸透する。浸透が十分に行われた後送液ポンプを停止する。地盤に浸透した薬液が固化すると、棒体および周辺の地盤が固結され、固結領域4が形成される。この手順を所定の本数分繰り返し、地盤の補強が完了する。
【0039】
この後の掘削工程および排出工程は第1の実施形態と同様である。なお、注入工程において注入ホース66は地盤に固着されるが、その後の掘削工程においても注入ホース66は破砕されず、長尺を保っているため、掘削土の中から注入ホース66を分別して廃棄することは容易である。また注入ホース66に生分解性の樹脂が用いられていれば、分別廃棄の必要はない。
【0040】
(第4の実施形態)
次に本発明の第4の実施形態に係る地盤掘削方法を、図1および図4に基づいて以下説明する。本実施形態は、可撓性のある中実の棒体を複数本束ねて用いる形態である。
まず、切羽1において中実の棒体7を打設する位置および穿孔深さを決め、その位置にドリルジャンボ2等の機械によって穿孔を行う。そして所定の長さの長孔3が穿孔されたことを確認した後、穿孔ロッド21およびビット22を引き抜き、長孔3内に残されたスライム等の洗浄を行う。
【0041】
次に、穿孔された長孔3に、生分解性樹脂からなる中実の棒体7を複数本束ねつつ、吐出口661を備える注入ホース66とともに挿入する。この棒体7a,7b,7cがそれぞれ可撓性を有していれば、図4に示すように長尺の棒をロール状にして運搬可能であるため好適である。そして複数本束ねることによって強度を高めることができる。束ねる本数に制限はないが、図4に示すように棒体7a,7b,7cの三本を束ねる場合、小さな断面積に多くの本数を納めることができるため好適である。また、結束紐67を用いて棒体を束ねると、地盤中で一本一本が離れて進入が妨げられるということがない。なお、結束紐67も棒体7と同様に生分解性樹脂からなるものを使用すれば、掘削土について分別作業などの特別な廃棄処理は不要となり好適である。また、棒体7と注入ホース66とを併せて長孔に挿入するため、棒体7と注入ホース66とを結束紐67で結んでおくのが好適である。そして、棒体7および注入ホース66を奥まで挿入した後、棒体7を切断する。
この後の注入工程、掘削工程および排出工程は第2の実施形態と同様である。
【0042】
なお、以上の実施形態では、切羽を補強して掘削する方法を示したが、本発明は切羽に限らず、地盤に対して垂直堀りする場合や、地盤に対して斜めに削孔する場合などにも適用可能であり、掘削の位置や方向は問わない。また、薬液の注入は図示した形態以外の適宜な方法や手段により行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の地盤掘削方法を説明するための切羽の側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態および第2の実施形態を説明するための切羽の側断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態を説明するための切羽の側断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態を説明するための切羽の側断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 切羽
2 ドリルジャンボ

21 穿孔ロッド
22 ビット
3 長孔
4 固結領域
5 管体
51 吐出口
52 先端コーン
53 カプラ
61 封止体
62 注入プラグ
63 ノズル
64 分岐管
65 連通管
66 注入ホース
661 吐出口
67 結束紐
7 棒体
71 先端コーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に所定の間隔で複数の吐出口が穿設された中空の管体を地盤に打設する打設工程と、
前記管体の内部に地盤を補強する薬液を注入する注入工程と、
前記地盤を掘削する掘削工程と、
前記掘削した土を排出する排出工程とを備え、
前記管体が生分解性樹脂からなり、
前記薬液の成分が、水ガラスとグリオキザールとリン酸と水とを含む
ことを特徴とする地盤掘削方法。
【請求項2】
地盤に長孔を穿孔する穿孔工程と、
前記長孔に生分解性樹脂からなる中実の棒体を、吐出口を有する注入ホースとともに挿入する挿入工程と、
前記注入ホースの内部に地盤を補強する薬液を注入する注入工程と、
前記地盤を掘削する掘削工程と、
前記掘削した土を排出する排出工程とを備え、
前記薬液の成分が、水ガラスをとグリオキザールとリン酸と水とを含む
ことを特徴とする地盤掘削方法。
【請求項3】
前記挿入工程において、複数の可撓性を有する長尺の前記棒体を、生分解性を有する結束紐で所定の間隔で結束しつつ、前記注入ホースとともに挿入する
ことを特徴とする請求項2に記載の地盤掘削方法。
【請求項4】
前記薬液において前記水ガラス200リットルに対して前記リン酸を75%濃度換算で4.5〜7.0リットル配合する
ことを特徴とする請求項1〜3に記載の地盤掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−215719(P2009−215719A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57663(P2008−57663)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(302063189)新日本開発株式会社 (3)
【Fターム(参考)】