説明

地盤改良工法及び地盤改良のための管理システム

【課題】高圧水等による地盤の泥土化と充填材の充填とを別工程で行う際に、地盤中に形成される改良体のサイズを簡単かつ確実に確認可能な地盤改良工法及びそのための管理システムを提供する。
【解決手段】この地盤改良工法は、高圧水および/または圧縮空気により地盤G内を泥土化する工程と、地盤内に改良体を形成するために泥土化された地盤内に充填材を送り込む工程と、充填材の送り込みにより泥土を外部に押し出す工程と、外部に押し出された泥土に続いて充填材が押し出されたことを確認する工程と、地盤内に送り込まれる充填材の充填量を計測する工程と、を含み、充填材の確認結果に基づいて地盤内における充填材の充填完了時期を判断し、その判断時の充填材の充填量の計測結果に基づいて地盤内に形成された改良体のサイズを確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧水および/または圧縮空気を用いた地盤改良工法及びそのための管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法の深層混合処理工法の1つとして高圧噴射撹拌工法が知られている。高圧噴射撹拌工法は高圧水または高圧空気によって改良対象土を噴射して破壊すると同時に硬化材スラリーを添加して混合を期待する工法である(非特許文献1参照)。
【0003】
従来の高圧噴射撹拌工法として次のような工法が知られている。JSGに代表される二重管高圧噴射攪拌工法は硬化材スラリーと圧縮空気を地盤中に回転して噴射しながら切削・攪拌し、スライム(硬化材スラリーが混じった切削泥土)を地表に排出させて円柱状の改良体を造成するものである。CJGに代表される三重管高圧噴射攪拌工法は上部吐出口から高圧水と圧縮空気を回転して噴射しながら切削し、そのスライムを地表に排出し下部の吐出口から硬化材スラリーを噴射し円柱状の改良体を造成するものである。
【0004】
特許文献1は、地盤中に挿入した噴射管の先端部に設けた高圧液噴射ノズルから高圧水を噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの緩んだ地盤中に硬化材スラリーや水ガラスなどが添加された自硬性材料を圧入することにより、前記弛緩泥土を押し上げて排除するとともに前記自硬性材料による置換を行い改良体を造成する地盤改良工法を開示する。
【0005】
特許文献2は、地盤中に挿入した噴射管に設けた噴射ノズルから高圧水を噴射して対象地盤を緩めて泥土化し、次いでこの弛緩地盤中に高粘性の自硬性改良材を圧入することにより、弛緩泥土を押し上げて地上に排出させるとともに自硬性改良材による置換を行い改良体を造成する一方で、排泥を調泥槽にて沈降分離により上澄液と濃縮泥土とに分離し、上澄液を取り出して貯液槽に供給し、調泥槽中の貯留物が所定の含水比になったら上澄液の取り出しを停止させるとともに、調泥槽貯留物を取り出して硬化材と混練し混練物を自硬性改良材として噴射管へ供給し再利用し、貯液槽の上澄み液はそのまま又は水を添加して地盤弛緩用液として噴射管へ供給し再利用する地盤の改良工法を開示する。
【0006】
特許文献3は、ジェット噴流を利用した地盤改良工事の工程管理方法を開示し、固化材を含む改良液ジェットを地中に噴射して周囲の土砂を削り取り、混合して地中に固化体を形成する地盤改良工事において、改良液ジェット噴射管周囲の地盤内にペーハーセンサーを取付けたセンサー棒を立込み、改良液ジェット噴流によって変化した地中のペーハーを測定し、ペーハー変化を感知したペーハーセンサーの位置から改良液ジェット到達位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平7−111052号公報
【特許文献2】特開2001−172960号公報
【特許文献3】特開平5−239826号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】地盤工学用語辞典(社団法人地盤工学会)413頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
JSG工法、CJG工法に代表される高圧噴射撹拌工法においては、改良対象土の種類とN値、深度により、引き上げ時間と有効径および硬化材スラリーの単位吐出量の関係が過去の実績に基づき決定されている。しかしながら、実際に地盤中に形成された改良杭径を確認する方法はなく、想定よりN値が大きい場合は改良径不足に、想定よりN値が小さい場合は改良過多になる恐れがある。
【0010】
また、従来の高圧噴射撹拌工法によれば、地盤の切削と硬化材スラリーの注入とをほぼ同時に実施するために排出泥土中に硬化材スラリーが混入してしまう。そこで、高圧水による対象地盤の泥土化と自硬性材料を含む充填材の圧入とを別工程で行うことが提案され(特許文献1参照)、また、排出泥土を自硬性改良材として再利用することで排出泥土を減らすことが提案されている(特許文献2参照)。さらに、排出泥土と充填材とが混ざらなくするために自硬性改良材を噴射でなく圧入する。この場合の自硬性改良材は従来のものに比べ流動性が小さいことが特徴である。しかし、このような工法でも、実際に地盤中に形成された改良杭径を確認する方法はない。特許文献3の方法によれば、地盤内にペーハーセンサーを取付けたセンサー棒を3次元的に多数設置する必要があり、工程が煩雑化しコスト高になる。
【0011】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、高圧水等による地盤の泥土化と充填材の充填とを別工程で行う際に、地盤中に形成される改良体のサイズを簡単かつ確実に確認可能な地盤改良工法及びそのための管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための地盤改良工法は、高圧水および/または圧縮空気により地盤内を泥土化する工程と、前記地盤内に改良体を形成するために前記泥土化された地盤内に充填材を送り込む工程と、前記充填材の送り込みにより前記泥土を外部に押し出す工程と、前記外部に押し出された泥土に続いて前記充填材が押し出されたことを確認する工程と、前記地盤内に送り込まれる充填材の充填量を計測する工程と、を含み、前記充填材の確認結果に基づいて前記地盤内における前記充填材の充填完了時期を判断し、その判断時の前記充填材の充填量の計測結果に基づいて前記地盤内に形成された改良体のサイズを確認することを特徴とする。
【0013】
この地盤改良工法によれば、地盤内の泥土が充填材の送り込みで外部に押し出されるのに続いて充填材が押し出されることを確認し、この確認結果から地盤内における充填材の充填完了時期を判断でき、その判断時の充填材の充填量の計測結果から地盤内に形成された改良体のサイズを確認することができる。このように、高圧水等による地盤の泥土化と充填材の充填とを別工程で行う際に、地盤中に形成される改良体のサイズを簡単かつ確実に確認することができる。
【0014】
上記地盤改良工法において前記外部に押し出された充填材の確認は、前記地盤内から外部に押し出された材料のペーハー(pH)を計測することで行うことができる。一般に地盤のpHは中性であるのに対し、充填材はセメント等の自硬性材料を含むためアルカリ性であるから、地盤内から外部に押し出された材料のpHを計測することで、外部に押し出された充填材を確認することができる。
【0015】
また、前記外部に押し出された泥土を処理し、前記充填材として前記地盤内へと送り込むときの流量を測定することで前記充填量を計測することができる。
【0016】
また、複数の管路を有する多重管を前記地盤内に挿入し、前記多重管の側面に設けた噴射口から高圧水および/または圧縮空気を噴射するとともに、前記多重管を回転させかつ引き上げながら前記多重管の先端側に設けた充填口から前記充填材を送り込むことが好ましい。多重管の側面の噴射口から高圧水、圧縮空気を噴射して地盤内を泥土化し、多重管の先端の充填口から充填材を充填することで泥土を外部に押し出して地盤内を充填材に置換することが容易にできる。
【0017】
なお、この場合、前記多重管において前記噴射口と前記充填口とを1m以上離すことが好ましい。これにより、排出泥土と充填材とが混合し難くなる。
【0018】
また、前記多重管を引き上げることなく予め前記充填材を充填し、その後、前記多重管の引き上げ速度と前記充填材の充填速度とを同期させることで前記充填材を前記充填口が常に前記充填材の中にある状態で送り込むことが好ましい。充填材の充填中に充填口が常に充填材の中にある状態として充填材を送り込むことができるので、排出泥土と充填材とが混合し難くなる。
【0019】
また、前記地盤内で予め貫入切削を行い、その後、前記多重管の引き上げとともに前記充填材を送り込むことで、排出泥土と充填材とが混合し難くなる。
【0020】
前記確認された改良体サイズの弛緩空間内に、その弛緩空間以上の前記充填材を充填することにより前記地盤を締め固めることができる。
【0021】
なお、排出泥土に充填材が混入し難くなるためには、排出泥土と充填材の単位体積重量の差が大きいほうが望ましい(排出泥土単位体積重量<充填材の単位体積重量)。排出泥土に自硬性材料を混合した場合の充填材の単位体積重量は、少なくとも排出泥土よりは大きくなることは明らかであるが、排出泥土の固液分離を実施し、排出泥土中の水分を除去することによりさらに単位体積重量の差が大きくなる。
【0022】
また、排出泥土に充填材が混入し難くなるためには、排出泥土と充填材の流動性(フロー値)の差が大きいほうが望ましい(排出泥土のフロー値>充填材のフロー値)。排出泥土に自硬性材料を混合した場合の充填材の流動性は、少なくとも排出泥土よりは小さくなることは明らかであるが、自硬性材料とともに水ガラス(ケイ酸ソーダ)を混合することによりさらにフロー値の差が大きくなる。
【0023】
上記目的を達成するための地盤改良工法のための管理システムは、高圧水および/または圧縮空気により地盤内を泥土化する工程と、前記地盤内に改良体を形成するために前記泥土化された地盤内に充填材を送り込む工程と、前記充填材の送り込みにより前記泥土を外部に押し出す工程と、を含む地盤改良工法における前記改良体のサイズを管理するためのシステムであって、前記地盤内から外部に押し出された材料のpHを計測する手段と、前記地盤内に送り込まれる充填材の充填量を計測する手段と、を備え、前記pHの計測結果に基づいて前記地盤内における前記充填材の充填完了時期を判断し、その判断時の前記充填材の充填量の計測結果に基づいて前記地盤内に形成された改良体のサイズを確認することを特徴とする。
【0024】
この地盤改良工法のための管理システムによれば、地盤内の泥土が充填材の送り込みで外部に押し出されるのに続いて充填材が押し出されることをpH計測により確認し、この確認結果から地盤内における充填材の充填完了時期を判断でき、その判断時の充填材の充填量の計測結果から地盤内に形成された改良体のサイズを確認することができる。このように、高圧水等による地盤の泥土化と充填材の充填とを別工程で行う際に、地盤中に形成される改良体のサイズを簡単かつ確実に確認することができる。
【0025】
上記地盤改良工法のための管理システムにおいて前記外部に押し出された泥土に自硬性材料を加えて前記泥土を処理して得た充填材を前記地盤内へと送り込む手段と、前記送り込むときの流量を測定することで前記充填量を計測する手段と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の地盤改良工法及びそのための管理システムによれば、高圧水および/または圧縮空気による地盤の泥土化と充填材の充填とを別工程で行う際に、地盤中に形成される改良体のサイズを簡単かつ確実に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施の形態による高圧水・圧縮空気を用いた地盤改良工法の主要工程(a)(b)(c)を説明するための概略図である。
【図2】図1の地盤改良工法で用いることのできるツールスの構成を示す図である。
【図3】図1の各工程と対応し、削孔の位置(a)、ツールスの位置(b)、及び施工完了時のツールスの位置(c)を示す図である。
【図4】図2のツールスのロッドの端部を示す斜視図である。
【図5】図1(b)の工程をさらに詳しく説明するための図である。
【図6】本実施形態の地盤改良工法の管理システムに用いられる管理装置を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態による高圧水・圧縮空気を用いた地盤改良工法の主要工程(a)(b)(c)を説明するための概略図である。図2は図1の地盤改良工法で用いるツールスの構成を示す図である。図3は図1の各工程と対応し、削孔の位置(a)、ツールスの位置(b)、及び施工完了時のツールスの位置(c)を示す図である。図4は図2のツールスのロッドの端部を示す斜視図である。
【0029】
本実施形態による地盤改良工法は、高圧水・圧縮空気を用いて改良対象の地盤内に改良体を造成するものである。かかる地盤改良工法に用いられるツールスについて図2,図4を参照して説明する。
【0030】
図2のように、ツールス10は、上端から下端に向けて、スイベル11と、ロッド12と、モニタ13と、を有し、全体として長く延びた構成となっている。先端側のモニタ13は、側面に高圧水、圧縮空気を噴射するために設けられた噴射口13aと、充填材を地盤内に送り込んで充填するために先端側に設けられた充填口13bと、を有する。
【0031】
また、モニタ13の噴射口13aは高圧水用噴射口と圧縮空気用噴射口とに分かれている。また、モニタ13は取り替え可能となっており、噴射口13aと充填口13bとの距離aを変更可能に構成されているが、距離aは1m以上が好ましい。これにより、充填材と排出泥土とが混合しないようにできる。
【0032】
ロッド12は、図4のように、特殊三重管構造となっており、充填材が通る中央孔12aと、圧縮空気が通る圧縮空気孔12bと、高圧水が通る高圧水孔12cと、を有する。
【0033】
上述のように、ツールス10は、スイベル11に供給された充填材、圧縮空気及び高圧水がロッド12の中央孔12a、圧縮空気孔12b及び高圧水孔12cを通してモニタ13の噴射口13a及び充填口13bから送り出されるようになっている。
【0034】
本実施形態による地盤改良工法について、図1,図3を参照して説明する。すなわち、図3(a)のように、ボーリング用ツールスを用いて地表面Sから削孔し、地盤G内に穴Aを形成する。このとき、造成しようとする改良体Bの下端までの深さをH1とすると、穴Aの深さは、上述のモニタ13の噴射口13aと充填口13bとの間の距離aを加えた(H1+a)である。
【0035】
次に、図1(a)のようにツールス10をバックホウBHに取り付けた状態で、図3(b)のようにツールス10を地表面Sから穴A内にツールス10を貫入させる(a)。なお、このとき、改良下端で定位置噴射を2分程度行うことが好ましい。すなわち、ツールス10の引き上げを行わず、ツールス10のモニタ13の噴射口13aから高圧水と圧縮空気を噴射させながらツールス10を回転方向dに回転させることを2分程度実行する。
【0036】
次に、図1(b)のようにツールス10のモニタ13の噴射口13aから高圧水と圧縮空気を噴射させながらツールス10を回転方向dに回転させるとともに、ツールス10を上方cに引き上げながらモニタ13の先端の充填口13bから充填材を送り出す。このように、ツールス10を回転させかつ一定速度で引き上げながら噴射口13aから高圧水と圧縮空気を噴射することで、地盤Gを所定の半径及び引き上げ高さで切削して弛緩空聞とし、その弛緩空間内が泥土化するとともに、充填口13bから充填材を送り出し圧入することで下側から弛緩空間内に充填材を充填する。この充填材の圧入のとき、図1(b)、後述の図5のように、モニタ13の先端の充填口13bは、充填された充填材の中にあることが好ましい。
【0037】
上述の切削及び充填工程の途中で、図1(b)のように、地盤G内の改良対象部分の下側部分B1から充填材が圧入により充填され、上側部分B2へと順次充填されていく。このとき、下側部分B1への充填材の充填にともなって上側部分B2の泥土は、上方bへと押し上げられ、ついには地表面Sへと押し出されて排除される。
【0038】
図3(c)のように、ツールス10を長さHだけ引き上げ、弛緩空間内に充填材を充填させると、充填が完了し、図1(c)のようにツールス10を引き上げる。これにより、図1(c)、図3(c)のように、下端の深さがH1で高さHの改良体Bを地盤G内に造成することができる。このようにして、地盤内に充填材を圧入することで改良地盤を造成できる。
【0039】
上述のように、本地盤改良工法では、ツールス10のモニタ13の中間部分にある噴射口13aから高圧水と圧縮空気を噴射させて地盤内を切削し泥土化するとともに、モニタ13の先端の充填口13bから充填材を送り出して切削泥土の下端から充填材を充填し、充填材の上にある切削泥土を外部に排出するので、切削泥土と充填材とが混合することなく切削泥土を充填材に置換することができる。
【0040】
次に、上述の地盤改良工法のさらなる詳細例及び改良体Bのサイズを確認する管理システム・管理方法について図5,図6を参照して説明する。図5は図1(b)の工程をさらに詳しく説明するための図である。図6は本実施形態の地盤改良工法の管理システムに用いられる管理装置を概略的に示すブロック図である。
【0041】
本実施形態の地盤改良工法では、上述のように改良対象の地盤G内に改良体Bを造成するとき、地盤Gから押し出された泥土を再利用する。すなわち、図5のように、地盤G内から上方bに押し出されて排泥された泥土を、穴Aの上部の凹部Dに配置された送り出しポンプ21により貯泥槽22に送り貯蔵する。貯泥槽22から泥土をポンプ23で混練プラント24に送り、混練プラント24で泥土にセメント等の自硬性材料を混入し、管路ミキサ25で水ガラス等の添加材を加えて充填材とし、この充填材をコンクリートポンプ26によりツールス10のスイベル11へと圧送する。充填材は、スイベル11から図4のロッド12の中央孔12aを通ってモニタ先端の充填口13bから地盤G内へと圧入されるようにして供給される。
【0042】
図5のように、コンクリートポンプ26とツールス10のスイベル11との間に流量計27を配置し、充填材の単位時間あたりの流量を連続して計測することで、地盤G内に供給された充填材量を計測する。流量計27は、例えば、公知の電磁式流量計であってよく、その計測値が電気信号として出力する。
【0043】
また、穴Aの上部の凹部D内にpHセンサ28を配置し、地盤G内からツールス10と穴Aとの間を通って上方bへと押し出された被押出材料のpHを計測する。pHセンサ28は、公知の電極構造のものであってよく、そのpH計測値が電気信号として出力する。
【0044】
充填材は自硬性材料としてセメントが混入されているため、pHが11〜14程度のアルカリ性であり、一般の地盤はpHが7〜8程度の中性である場合、pHを測定することで、充填材と地盤の泥土とを区別することができる。
【0045】
上述のように、本実施形態の地盤改良工法では、地盤内で泥土を充填材で押し上げて排出するため排出された泥土には自硬性材料が混入しない。このため、地盤G内から上方bへと押し出された被押出材料のpHをpHセンサ28により計測することで、その被押出材料が地盤を泥土化した中性の泥土であるか、または、地盤内に供給したアルカリ性の充填材であるか、を検知することができる。充填材の検知により地盤内での充填材の充填完了時点を判断できる。
【0046】
図6に示すように、本実施形態の地盤改良工法用管理システムの管理装置30は、パーソナルコンピュータ(パソコン/PC)31と、パソコン31から出力するデータを表示する液晶パネル等からなる表示部32と、を有し、パソコン31には流量計27から出力した充填材の流量の電気信号と、pHセンサ28から出力したpHの電気信号とが入力し、パソコン31は、所定の演算を行い、その演算結果を表示部32に表示するようになっている。
【0047】
本実施形態の地盤改良工法における改良体Bの径はツールス10のモニタ13の引き上げ時間で制御することができ、また、改良体Bの高さHはツールス10の引き上げ高さで制御することができる。
【0048】
図6の管理装置30による、図1(a)、図3(c)の地盤G内に造成された改良体Bのサイズ、特に径の確認方法について説明する。
【0049】
図5のように、地盤G内で切削予定の半径をr、高さをHとすると、切削予定(設計)の体積Vは、次式(1)であらわすことができる。
【0050】
V=πr2H (1)
【0051】
パソコン31は、充填材の充填中に図5,図6のpHセンサ28により地盤から押し出された被押出材料のpHが中性からアルカリ性に変化したことを検知すると、充填開始から検知時点までの充填材の総充填量V’を流量計27による計測結果から演算して求める。
【0052】
実際の切削半径をRとすると、次式(2)が成り立つ。
【0053】
V’=πR2H (2)
【0054】
上記式(2)から次式(3)が得られる。
【0055】
R=[V’/(πH)]0.5 (3)
【0056】
得られた実際の切削半径Rと、切削予定の半径rとを比べて、R=r、または、R≒rである場合は、改良体Bは切削予定の半径を有すると判断できる。これにより、改良体の径を確認することができる。
【0057】
また、R<rの場合は、予定の有効径の弛緩空間が形成されていないことになるので、ツールス10のモニタ13の引き上げ時間を長くし、有効径が大きくなるように管理する。
【0058】
また、R>rの場合は、予定の有効径以上の弛緩空間が形成されていることになるので、ツールス10のモニタ13の引き上げ時間を短くし、有効径が小さくなるように管理する。
【0059】
なお、上記例では、実際の切削半径Rと、切削予定の半径rとを比べたが、計測によって得られた、充填開始から検知時点までの充填材の総充填量V’を、上記式(1)から得られる予定(設計)の充填量Vと比較してもよい。この場合、V’=V、または、V’ ≒Vであれば、R=r、または、R≒rである。また、V’<Vであれば、R<rである。また、V’>Vであれば、R>rである。
【0060】
以上のように、本実施形態の地盤改良工法によれば、改良対象の地盤内に高圧水・圧縮空気により形成した切削泥土と地盤内に送り込んだ充填材とが混合せずに切削泥土を充填材に完全に置換することができるとともに、外部に押し出された泥土を処理し、充填材として再利用することができる。また、改良対象の地盤内に充填材により造成された改良体の直径を原位置で確認し管理することができる。
【0061】
また、多重管のツールス10のモニタ13における噴射口13aと充填口13bとの距離aは1m以上が好ましく、これにより、充填材が排出泥土に確実に混入しないようにできる。
【0062】
従来工法においては、高圧水による対象地盤の泥土化と硬化材スラリーの噴射とがほぼ同位置で行われており、硬化材スラリーがエアリフトされ排出泥土に混入するため改良工程の初期より高pHとなり、上述のような管理手法をとることが不可能であったが、本実施形態の地盤改良工法においては、排出泥土のpHと充填材の充填量を経時的に計測することにより、改良杭径(弛緩空間)の原位置確認が可能であり、従来工法よりも安全かつ経済的に所定の直径の改良体を造成することができる。
【0063】
次に、上述のpHセンサによる充填材の充填完了時の判断についての別の手段・方法について説明する。すなわち、混練プラント24の出口付近にpHセンサ29を別途設け、混練プラント24から排出された充填材のpHを計測する。pHセンサ29から出力したpHの電気信号を図6の破線のようにパソコン31に入力させる。充填材の充填中において、pHセンサ28により計測された地盤から押し出された充填材のpHと、pHセンサ29により計測された混練プラント24でつくられた充填材のpHとが等しくなった時点を、地盤G内での充填材の充填完了時と判断する。かかるpH計測の手段・方法によれば、排出泥土に充填材が混入した場合や地盤がアルカリ性の場合等でも、充填材が泥土と完全に置換した時点を確実に判断することができる。
【0064】
また、排出泥土に充填材が混入しないことを目的として、ツールス10のモニタ13を引き上げることなく、予め例えば厚さ50cm程度の充填材を弛緩空間内に充填しておき、その後、図5のようにモニタ13の充填口13bが常に充填材の中にある状態となるように、モニタ13の引き上げ速度と充填材の充填速度を同期させて制御し管理することが好ましい。モニタ13の引き上げ速度は図1のバックホウBHの操作パネルから得ることができる。また、充填材の充填速度は図5,図6の流量計27の測定流量から求めることができる。
【0065】
同様に排出泥土に充填材が混入しないことを目的として、従来工法が引き上げ施工しかできないのに対して、引き上げ施工のみではなく、例えば貫入切削10分、引き上げ切削10分とし、引き上げ時のみ充填材を充填するように制御し管理するようにしてもよい。これにより、貫入切削時に充填材の混入がないため、pHによる管理がより確実に実施できる。
【0066】
また、地盤の締め固めを目的に、上述の管理システム・方法で管理された有効径の弛緩空間内に、弛緩空間以上の充填材を充填することにより、地盤を締め固めるようにしてもよい。
【実施例】
【0067】
本地盤改良工法の効果を確認するために図2のツールスを用いて図1,図2のような地盤改良工法を実施した。地盤中に造成する柱状の改良体の目標直径は1.5m、高さは1.5〜2mであり、施工管理は上述のように切削泥土が充填材と完全に置換するようにした。
【0068】
実施例1,2,3として図2のツールスのモニタの噴射口と充填口との距離aを100cmとした。比較例1,2,3として距離aを50cmとした。各実施例、各比較例の条件を次の表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
地盤内に改良体を造成した後、地盤内を掘削して改良体を目視し、直径、高さを測定した。その結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2のように、実施例1,2,3では、ほぼ目標どおりの改良体が形成された。これに対し、比較例1,2,3では、周囲のスライムを除去している間に改良体が崩壊してしまった。充填材に原地盤の泥土が混入してしまったためと考えられる。
【0073】
以上のように、ツールスのモニタの噴射口と充填口との距離aが各比較例のように50cmと短い場合、充填材に泥土が混入し、充填材が圧縮空気によ排泥とともに排出されてしまったのに対し、各実施例のように1mと長い場合は排泥中に充填材が混入せずに置換されたことが確認された。
【0074】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、本実施形態では、充填材が改良対象の地盤内に完全に充填されたことを、pH計測により確認したが、本発明はこれに限定されず、目視や手で触ることによる確認であってもよい。すなわち、泥土と色が異なる充填材や泥土と固さ、粘性が異なる充填材の場合は、目視や手で触ることにより両者を区別できる。また、泥土と充填材とを色等で区別しにくい場合や省力化を図る場合には、pH計測の方が好ましい。
【0075】
また、本実施形態では、地盤の切削に高圧水と圧縮空気とを用いたが、これに限定されず、高圧水と圧縮空気のいずれか一方を用いてもよい。
【0076】
なお、本明細書では、充填材は自硬性材料を含むが、自硬性材料はセメントに代表される地盤改良材であり、水ガラス等を添加することもできる。また、充填材は、切削泥土に自硬性材料を加えて得ることができるが、これに限定されず、切削泥土以外から得るようにしてもよい。
【0077】
また、充填材は、地盤内に噴射されるものではなく、モニタ先端の充填口から地盤内に圧入されるものである。したがって、本明細書では、充填口から地盤内に圧入される材料を総称して充填材という。
【符号の説明】
【0078】
10 ツールス(多重管)
11 スイベル
12 ロッド
12a 中央孔
12b 圧縮空気孔
12c 高圧水孔
13 モニタ
13a 噴射口
13b 充填口
27 流量計
28 pHセンサ
29 pHセンサ
30 管理装置
B 改良体
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧水および/または圧縮空気により地盤内を泥土化する工程と、
前記地盤内に改良体を形成するために前記泥土化された地盤内に充填材を送り込む工程と、
前記充填材の送り込みにより前記泥土を外部に押し出す工程と、
前記外部に押し出された泥土に続いて前記充填材が押し出されたことを確認する工程と、
前記地盤内に送り込まれる充填材の充填量を計測する工程と、を含み、
前記充填材の確認結果に基づいて前記地盤内における前記充填材の充填完了時期を判断し、その判断時の前記充填材の充填量の計測結果に基づいて前記地盤内に形成された改良体のサイズを確認することを特徴とする地盤改良工法。
【請求項2】
前記外部に押し出された充填材の確認は、前記地盤内から外部に押し出された材料のpHを計測することで行う請求項1に記載の地盤改良工法。
【請求項3】
前記外部に押し出された泥土を処理し、前記充填材として前記地盤内へと送り込むときの流量を測定することで前記充填量を計測する請求項1または2に記載の地盤改良工法。
【請求項4】
複数の管路を有する多重管を前記地盤内に挿入し、前記多重管の側面に設けた噴射口から高圧水および/または圧縮空気を噴射するとともに、前記多重管を回転させかつ引き上げながら前記多重管の先端側に設けた充填口から前記充填材を送り込む請求項1乃至3のいずれか1項に記載の地盤改良工法。
【請求項5】
前記多重管を引き上げることなく予め前記充填材を充填し、その後、前記多重管の引き上げ速度と前記充填材の充填速度とを同期させることで前記充填材を前記充填口が常に前記充填材の中にある状態で送り込む請求項4に記載の地盤改良工法。
【請求項6】
前記地盤内で予め貫入切削を行い、その後、前記多重管の引き上げとともに前記充填材を送り込む請求項4に記載の地盤改良工法。
【請求項7】
前記確認された改良体サイズの弛緩空間内に、その弛緩空間以上の前記充填材を充填することにより前記地盤を締め固める請求項1乃至6のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
【請求項8】
高圧水および/または圧縮空気により地盤内を泥土化する工程と、前記地盤内に改良体を形成するために前記泥土化された地盤内に充填材を送り込む工程と、前記充填材の送り込みにより前記泥土を外部に押し出す工程と、を含む地盤改良工法における前記改良体のサイズを管理するためのシステムであって、
前記地盤内から外部に押し出された材料のpHを計測する手段と、
前記地盤内に送り込まれる充填材の充填量を計測する手段と、を備え、
前記pHの計測結果に基づいて前記地盤内における前記充填材の充填完了時期を判断し、その判断時の前記充填材の充填量の計測結果に基づいて前記地盤内に形成された改良体のサイズを確認することを特徴とする地盤改良工法のための管理システム。
【請求項9】
前記外部に押し出された泥土に自硬性材料を加えて前記泥土を処理して得た充填材を前記地盤内へと送り込む手段と、前記送り込むときの流量を測定することで前記充填量を計測する手段と、を備える請求項8に記載の地盤改良工法のための管理システム。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−185016(P2011−185016A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54630(P2010−54630)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】