説明

地盤改良方法

【課題】地盤の隆起を抑制するとともに所望の改良効果を確保することを可能とした地盤改良方法を提案する。
【解決手段】所定の深度までボーリング孔を削孔する削孔工程S1と、このボーリング孔に細管を挿入する細管挿入工程S2と、この細管の先端から地盤に気泡を注入して予め改良対象の地盤を不飽和化する不飽和化工程S3と、ボーリング孔から固化材を注入して地盤に固結体を形成する固結体形成工程S4と、を含む地盤改良方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に固結体を形成することにより周辺地盤を締固める地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市化の発展に伴い、河川、湖沼、海岸等における臨海部の開発が進められている。このような地域では、一般的に地下水位が高く、地盤はゆるく堆積しているため、地震に伴う液状化が発生しやすい。
【0003】
このような地盤の液状化抵抗力を向上させる液状化対策工としては、サンドコンパクションパイル工法等の動的締め固め工法や、深層混合処理工法等の地盤改良工法等がある。
【0004】
ところが、サンドコンパクションパイル等の動的締め固め工法は、施工時に騒音や振動が発生することにより周辺地域に影響を及ぼすため、市街地等の都市部における採用が困難である。また、施工時に使用する施工機械が大規模であるため、供用中の施設や既設構造物の直下等、狭隘な作業スペースしか確保できない場合には施工が困難であるという不具合があった。
【0005】
また、後者の地盤改良工法についても、供用中の施設や既設構造物の直下への施工は困難であり、施工機械が大規模となるため、限られた施工スペースしか確保できない箇所における施工は困難であった。
【0006】
そのため、本出願人等は、特許文献1に示すように、供用中の施設や既設構造物の直下の地盤への施工を可能とした静的圧入締固め工法を開示し、実用化に至っている。
【0007】
この静的圧入締固め工法は、改良対象地盤に所定間隔に所定径の削孔を行い、低流動性の固化材をポンプで静的に圧入して地盤に固結体を連続的に造成することにより、この固結体による体積増加によって、周辺地盤を圧縮して、密度を増大させることで、液状化地盤を非液状化地盤へと改良させるものである。
【0008】
【特許文献1】特開2005−105740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の静的圧入締固め工法は、固化材の地盤への注入に伴い、過剰間隙水圧が発生し、地盤の隆起が発生する場合があるという問題点を有していた。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、地盤の隆起を抑制するとともに所望の改良効果を確保することを可能とした地盤改良方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は、所定の深度までボーリング孔を削孔する削孔工程と、前記ボーリング孔から固化材を注入して地盤に固結体を形成する固結体形成工程と、を含む地盤改良方法であって、予め改良対象の地盤を不飽和化する不飽和化工程を含むことを特徴としている。
【0012】
かかる地盤改良方法によれば、予め地盤を不飽和化しておくことにより、地盤への固化材の注入に伴い発生する地盤の隆起を抑制することを可能としている。つまり、飽和状態の地盤を予め不飽和化しておくことにより、固化材の注入に伴う周辺地盤の過剰間隙水圧の発生を抑制して、地盤の隆起を抑制することを可能としている。さらに、地盤の不飽和化がなされていることにより、液状化が発生する可能性も低減することが可能となる。
【0013】
そして、前記不飽和化工程では、前記ボーリング孔を介して前記地盤に気泡を注入することによって液状化を防止してもよい。
【0014】
また、前記不飽和化工程において、前記ボーリング孔の孔内水と空気を超音波発振器や高周波振動器等によってかく乱することによって気泡を生成させてもよい。
【0015】
また、前記削孔工程後であって、前記不飽和化工程前に、前記ボーリング孔に気泡注入管を挿入する気泡注入管挿入工程を含み、前記不飽和化工程では、前記気泡注入管の先端から前記地盤に気泡を注入することによって液状化を防止してもよい。このように、地盤に気泡を注入することにより、土粒子の間隙に気泡を配置して、地盤の不飽和化を図ることができる。また、地盤への気泡の注入について、固化材を注入するためのボーリング孔を利用することで、別途、気泡注入管を配管するためのボーリングを行う手間を省略することが可能となる。
同様に、前記削孔工程後であって、前記不飽和化工程前に、前記ボーリング孔に超音波発振器や高周波振動器等を挿入する発振器挿入工程を含み、前記不飽和化工程では、前記超音波発振器の超音波や高周波振動器の振動等により前記地盤をかく乱させて気泡を発生させてもよい。
【0016】
さらに、前記不飽和化工程における気泡の注入とともに、または、前記不飽和化工程を実行する前に、土粒子間の結合力を弱める材料を前記地盤に注入すれば、土粒子間へ気泡が混入しやすくなり、地盤の不飽和化を好適に行うことが可能となり、好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の地盤改良方法によれば、地盤の隆起を抑制するとともに所望の改良効果を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
ここで、図1は、第1の実施の形態に係る地盤改良方法の手順を示すフロー図である。また、図2の(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係る地盤改良方法による各施工段階を示す側面図である。また、図3は、第1の実施の形態に係る地盤改良方法による締固め効果を示す横断面図である。また、図4の(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係る地盤改良方法による施工時の地盤の状況を示す断面図である。
【0019】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態に係る地盤改良方法は、図1に示すように、所定の深度までボーリング孔を削孔する削孔工程S1と、前記ボーリング孔に細管(気泡注入管)を挿入する細管(気泡注入管)挿入工程S2と、該細管の先端から地盤に気泡を注入する不飽和化工程S3と、前記ボーリング孔から固化材を注入して地盤に固結体を形成する固結体形成工程S4と、から構成されている。
【0020】
削孔工程S1は、図2(a)に示すように、ボーリングマシンBMによりボーリング孔1を削孔する工程である。ここで、ボーリング孔1の径は限定されるものではないが、第1の実施の形態では、外径70mmのケーシングパイプ2を介して削孔するものとする。
ボーリング孔1の削孔後、ケーシングパイプ2は、ボーリング孔1に残置しておく。なお、第1の実施の形態では、ボーリング孔1を垂直に形成するものとするが、ボーリング孔1の削孔方向(角度)は限定されないことはいうまでもない。
【0021】
細管挿入工程S2は、図2(b)に示すように、削孔工程S1において、ボーリング孔1に残置されたケーシングパイプ2の内部に細管3を挿入する工程である。細管3は、先端がボーリング孔1の下端付近まで到達するように挿入する。なお、細管3は、ケーシングパイプ2内への挿通が可能で、気体の輸送が可能なものであれば、限定されるものではなく、適宜、公知の材料から選定して使用することが可能である。例えば、内径10mm未満の鋼製のシームレス管等を使用することも可能である。また、ケーシングパイプ2に挿入する細管3の本数は限定されるものではなく、地盤Gの状況等に応じて適宜設定すればよい。
【0022】
不飽和化工程S3は、図2(b)に示すように、細管挿入工程S2においてケーシングパイプ2に挿入された細管3を利用して、ボーリング孔1の周囲の地盤Gに気泡4を注入する工程である。
ここで、第1の実施の形態では、気泡4を生成するために地盤Gに注入する気体として、空気を使用するものとするが、気体が限定されないことはいうまでもなく、適宜公知の気体の中から選定して使用すればよい。
【0023】
地盤Gへの気泡4の注入は、細管3を介して輸送された気体を、ボーリング孔1の下端に配置された細管3の先端から地盤G中に排出することにより行う。
この時、気泡4は、ボーリング孔1の下端から排出されるため、浮力により地盤G内を上昇しながら、地盤G中の土粒子7,7,…間の間隙水(地下水)Wと置き換えられて、地盤Gの不飽和化を行う(図4(a)および(b)参照)。
【0024】
第1の実施の形態に係る不飽和化工程S3による、地盤Gの不飽和化は、改良後の地盤Gの飽和度Srが、式1を満足するように、好ましくは飽和度Srが60%〜90%となるように設定する。
【0025】
ここで、改良の前後で体積変化ない場合、地盤Gを締固めることによって、改良後の間隙比eは以下の通りになる。
=e−(1+e)a
:改良前の間隙比
:改良後の間隙比
:改良率
気泡注入後は、飽和度は低下するため、気泡注入後の飽和度Srは、式1を満足するように設定する。
Sr<e/e={e−(1+e)a}/e・・・(式1)
【0026】
第1の実施の形態では、不飽和化工程S3において、気泡4の地盤Gへの注入とともに、地盤Gに土粒子7同士の結合力を弱める機能を有する不飽和補助化材料を注入するものとする。これにより地盤G中の土粒子7同士の結合力が低下するため、土粒子7同士の間隙への気泡4の注入がより効果的に行われる。ここで、不飽和化補助材料として使用する材料は、限定されるものではないが、第1の実施の形態では分散剤を使用するものとする。なお、分散剤以外の不飽和化補助材料として、例えば、土粒子間の結合力を弱める効果を有するとともに気泡を保持する機能を発揮する界面活性剤を使用してもよい。
ここで、地盤Gへの不飽和化補助材料の注入は、必ずしも気泡4の注入とともに行う必要はなく、気泡4の注入前に不飽和化補助材料のみを地盤Gに注入してもよい。
【0027】
固結体形成工程S4は、図2(c)に示すように、ボーリング孔1に残置されたケーシングパイプ2を利用して、地盤Gに固化材を圧入することにより、固結体5を形成する工程である。固化材の注入は、ケーシングパイプ2を介して、所定量注入することにより所定形状の固結体5を形成した後、ケーシングパイプ2を所定長上昇させて、再度注入することにより行う。これにより、縦方向に連続した固結体5を柱状に形成することが可能となる。
【0028】
固化材の注入は、注入ポンプ等を含むグラウトマシンGMを利用して低振動、低騒音に行う。この時、ケーシングパイプ2の上端には、グラウトマシンGMから配管された送管6が接続されている。
ここで、固結体5は、地盤Gの地層に応じて打ち分けてもよい。例えば、地盤Gが、砂層と粘性土層の互層の地盤の場合は、砂層にのみ固結体5を形成することとしてもよい。なお、削孔工程S1におけるボーリング孔1の削孔時に、地層の確認を行えば、正確な地層状況を把握することができるため、地層に応じた固化材の注入が可能となる。
【0029】
第1の実施の形態では、固化材として、スランプ5cm以下のモルタルを使用するものとする。グラウトマシンGMは、固化材を振動や衝撃をほとんど加えることなく、地盤Gに注入することを可能としている。なお、固化材はモルタルに限定されないことはいうまでもなく、適宜、公知の材料の中から選定して使用すればよい。
【0030】
地盤Gにこの流動性の極めて低いモルタル(固化材)を注入することにより、図3に示すように、地盤Gには、球根状の固結体5が形成される。そして、この固結体5による地盤内の体積増加が周辺の地盤Gを圧縮し、その密度を増大させることで、地盤Gを締固める。
【0031】
以上、第1の実施の形態に係る地盤改良方法によれば、不飽和化工程S3において、気泡4を地盤Gに注入するため、図4(a)に示すように地下水Wにより飽和状態であった地盤Gについて、図4(b)に示すように、土粒子7,7,…の間隙に気泡4が配置されて、地盤Gの不飽和化がなされる。そして、地盤Gの不飽和化により、地盤Gの液状化の抑制が可能となる。
【0032】
また、土粒子7,7,…同士の間隙に気泡4が配置されることにより、固結体形成工程S4において固結体5を造成する際に、地盤Gの密度が増大しても、気泡4が収縮して過剰間隙水圧の発生を抑制することが可能となる。これにより、固結体5の造成に伴う地盤Gの隆起を抑制することが可能となる。
【0033】
また、気泡4の地盤Gへの注入とともに、不飽和化補助材を地盤Gに注入するため、土粒子7同士の結合力が弱められて、土粒子7同士の間隙への気泡4の配置がより効果的に行われる(図4参照)。
【0034】
また、当該地盤改良方法は、ボーリングマシンBMによる削孔およびグラウトマシンGMによる固化材の注入により施工が可能ため、比較的設備が簡易で、移動および設置が容易である。そのため、供用中の施設における施工など、限られた時間による施工も好適に行うことが可能である。また、簡易な設備による施工が可能なため、狭隘な作業スペースしか確保できない場合でも施工が可能なため、好適である。さらに、低振動、低騒音での施工が可能なため、供用中の構造物の基礎地盤に施工を行っても、利用者に悪影響を及ぼすことがなく、地盤改良を行い、地盤の強度を高めることを可能としている。
【0035】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について説明する。ここで、図5は、第2の実施の形態に係る地盤改良方法の手順を示すフロー図である。
【0036】
第2の実施の形態に係る地盤改良方法は、図5に示すように、所定の深度までボーリング孔を削孔する削孔工程S1と、前記ボーリング孔に超音波発振器を挿入する発振器挿入工程S2’と、該超音波発振器を介して地盤に気泡を発生させる不飽和化工程S3’と、前記ボーリング孔から固化材を注入して地盤に固結体を形成する固結体形成工程S4と、から構成されている。
【0037】
削孔工程S1は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
【0038】
発振器挿入工程S2’は、削孔工程S1において、ボーリング孔1に残置されたケーシングパイプ2の内部に超音波発振器を挿入する工程である。超音波発振器は、ケーシングパイプ2内への挿入が可能で、地盤G中に超音波により気泡4を発生させることが可能であれば限定されるものではなく、適宜、公知の材料から選定して使用することが可能である。なお、第2の実施の形態では、ボーリング孔1の下端に超音波発振器を配置するが、地盤G中に気泡4を発生させて(注入して)地盤Gの不飽和化を行うことが可能であれば、超音波発振器の設置箇所は限定されるものではない。
【0039】
不飽和化工程S3’は、発振器挿入工程S2’においてケーシングパイプ2に挿入された超音波発振器を介して、ボーリング孔1の周囲の地盤Gに気泡4を発生させる(注入する)工程である。
つまり、超音波発振器は、ボーリング孔1の坑内水と空気とをかく乱することにより地盤G内に気泡4を発生させる。なお、超音波発振器による地盤Gへの気泡4の注入は、地盤G内に超音波を発振することにより、気泡4を地盤G内に生成してもよい。
【0040】
この時、気泡4は、ボーリング孔1の下端から注入(生成)されるため、浮力により地下水W内を上昇しながら、地盤G中の土粒子7,7,…間の間隙水(地下水W)と置き換えられて、地盤の不飽和化を行う(図4(a)および(b)参照)。
【0041】
この他、不飽和化工程S3に関する事項は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
また、固結体形成工程S4は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
【0042】
第2の実施の形態に係る地盤改良方法によれば、超音波発振器を介して気泡4を生成するため、気体を輸送するための配管等を要することなく、地盤G内に気泡を注入することが可能となる。
また、超音波発振器により気泡4を生成するため、所望の気泡径からなる気泡4を地盤G中に配置することが可能となる。
【0043】
この他の第2の実施の形態に係る地盤改良方法の作用効果は、第1の実施の形態に示す地盤改良方法で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0044】
なお、第2の実施の形態では、超音波発振器を介して気泡を生成するものとしたが、超音波発振器に代えて高周波振動器を利用しても同様の効果を得ることが可能である。
【0045】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態に係る地盤改良方法は、所定の深度までボーリング孔を削孔する削孔工程S1と、前記ボーリング孔に超音波発振器を挿入する発振器挿入工程S2’と、該超音波発振器を介して地盤に気泡を発生させる不飽和化工程S3’と、前記ボーリング孔から固化材を注入して地盤に固結体を形成する固結体形成工程S4と、から構成されている(図5参照)。
【0046】
削孔工程S1および発振器挿入工程S2’は、第2の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。なお、超音波発振器には、超音波発振器の作動にともない振動する振動体が連結されており、発振器挿入工程S2’では、この振動体が地盤に接するように配置される。
【0047】
不飽和化工程S3’は、発振器挿入工程S2’においてケーシングパイプ2に挿入された超音波発振器に連動された振動体により、地盤をかく乱させることで、ボーリング孔1の周囲の地盤Gに気泡4を発生させる工程である。
つまり、超音波発振器が作動することにより、振動体が振動し、地盤Gをかく乱(振動)して気泡4を地盤G内に生成(注入)する。
【0048】
この時、気泡4は、地盤G中の土粒子7,7,…間の間隙水(地下水W)と置き換えられて、地盤の不飽和化を行う(図4(a)および(b)参照)。
【0049】
この他、不飽和化工程S3に関する事項は、第2の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
また、固結体形成工程S4は、第1の実施の形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
【0050】
第3の実施の形態に係る地盤改良方法によれば、超音波発振器を介して気泡4を生成するため、気体を輸送するための配管等を要することなく、地盤G内に気泡を注入することが可能となる。
また、超音波発振器により気泡4を生成するため、所望の気泡径からなる気泡4を地盤G中に配置することが可能となる。
【0051】
この他の第3の実施の形態に係る地盤改良方法の作用効果は、第1の実施の形態および第2の実施の形態に示す地盤改良方法で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0052】
なお、第3の実施の形態では、超音波発振器を介して気泡を生成するものとしたが、超音波発振器に代えて高周波振動器を利用しても同様の方法により同様の効果を得ることが可能である。
【0053】
<第4の実施の形態>
次に、第4の実施の形態について説明する。ここで、図6は、第4の実施の形態に係る地盤改良方法の施工例を示す断面図である。
【0054】
図6に示すように、第4の実施の形態では、供用中の既設構造物Aに対して、既設構造物Aの左右両側から斜め下方向に向かって、本発明の地盤改良方法をV字状に施工を行っている。このように、既設構造物Aの直下の地盤GにV字状の固化体5の集合体を形成することで、既設構造物Aの基礎地盤Gaを締固めている。
なお、第4の実施の形態に係る地盤改良方法の各手順は、第1の実施の形態または第2の実施の形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0055】
地盤Gは、V字状の固結体5の集合体が形成されることにより、既設構造物Aの直下の固化体5の集合体に囲まれた部分(基礎地盤Ga)が、固化体5の体積増加により圧縮されて、その密度が増大して締固められている。この時、地盤Gは、固結体5の形成前に、不飽和化がなされているため、地盤Gの隆起が発生することがなく、既設構造物Aに悪影響を及ぼすことがない。
【0056】
さらに、基礎地盤Gaは、V字状の固化体5の集合体により囲まれているため、基礎地盤Gaの不飽和状態が長期間維持される。そのため、液状化し難い状態が維持されるため、既設構造物の耐震性がより向上する。なお、図6において符号Bは、地中連続壁である。
【0057】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の各実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能であることはいうまでもない。
例えば、前記各実施形態では、ボーリング孔を削孔した後に気泡を注入するものとしたが、ボーリング孔の削孔前に気泡を注入してもよい。
【0058】
また、地盤の不飽和化は、気泡の注入による方法に限定されるものではなく、例えば、地下水を低下させることにより行ってもよい。
【0059】
また、地盤への気泡の注入(生成)方法は、前記各実施形態で示した方法に限定されるものではなく、適宜公知の方法により行えばよい。
例えば、不飽和化工程において、細管を使用することなく、ボーリング孔を介して地盤に気泡を注入(生成)することで液状化を防止してもよい。ボーリング孔を介して地盤に気泡を注入(生成)する方法としては、例えば、ボーリング孔の孔内水をかく乱することによってボーリング孔内に気泡を生成するにより地盤に気泡を生成する方法がある。ここで、坑内水のかく乱方法は限定されるものではなく、適宜公知の手段により行えばよい。
【0060】
また、前記各実施形態では、土粒子間の結合力を弱める材料を地盤に注入するものとしたが、必ずしもこのような材料を注入する必要はない。
また、不飽和化補助材料として、分散剤の変わりに界面活性剤を使用すれば、間隙に配置された気泡が間隙水に溶け込んでしまうことが防止されて、間隙に配置された気泡が長期間にわたって保持されるため、地盤の不飽和状態を維持して、液状化を抑制することが可能となる。
【0061】
また、より優れた改良効果を得ることを目的として、固結体形成工程において、固化材の注入とともに、当該ボーリング孔の周囲に形成された他のボーリング孔を利用して周辺地盤をかく乱してもよい。これにより、周辺地盤の不飽和化がなされるため、固化材の注入がより効果的に行われて、所望の固結体の形成がより効果的に行われるとともに、地盤の隆起が抑制される。なお、固結体の形成を行うボーリング孔に対する、周囲のボーリング孔の配置は限定されるものではない。なお、周辺地盤の不飽和化は、他のボーリング孔を利用した地盤のかく乱に限定されるものではなく、気泡の注入等によりおこなっても同様の効果を得ることが可能である。
【0062】
本発明の地盤改良方法の適用箇所は限定されるものではなく、例えば、構造物の基礎地盤や埋設物の周辺地盤など、さまざまな箇所に適用可能である。また、これらの構造物(埋設物)が、既設、新設を問わないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1の実施の形態に係る地盤改良方法の手順を示すフロー図である。
【図2】(a)〜(c)は、第1の形態に係る地盤改良方法による各施工段階を示す側面図である。
【図3】第1の形態に係る地盤改良方法による締固め効果を示す横断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、第1の実施の形態に係る地盤改良方法による施工時の地盤の状況を示す断面図である。
【図5】第2の実施の形態および第3の実施の形態に係る地盤改良方法の手順を示すフロー図である。
【図6】第4の実施の形態に係る地盤改良方法の施工例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 ボーリング孔
2 ケーシングパイプ
3 細管
4 気泡
5 固結体
G 地盤
W 地下水
S1 削孔工程
S2 細管挿入工程
S2’ 発振器挿入工程
S3,S3’ 不飽和化工程
S4 固結体形成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の深度までボーリング孔を削孔する削孔工程と、
前記ボーリング孔から固化材を注入して地盤に固結体を形成する固結体形成工程と、を含む地盤改良方法であって、
予め改良対象の地盤を不飽和化する不飽和化工程を含むことによって地盤隆起を抑制することを特徴とする、地盤改良方法。
【請求項2】
前記不飽和化工程では、前記ボーリング孔を介して前記地盤に気泡を注入することによって液状化を防止することを特徴とする、請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
前記不飽和化工程において、前記ボーリング孔の孔内水と空気を超音波発振器や高周波振動器等によってかく乱することによって気泡を生成することを特徴とする、請求項2に記載の地盤改良方法。
【請求項4】
前記削孔工程後であって、前記不飽和化工程前に、前記ボーリング孔に気泡注入管を挿入する気泡注入管挿入工程を含み、
前記不飽和化工程では、前記気泡注入管の先端から前記地盤に気泡を注入することによって液状化を防止することを特徴とする、請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項5】
前記削孔工程後であって、前記不飽和化工程前に、前記ボーリング孔に超音波発振器や高周波振動器等を挿入する発振器挿入工程を含み、
前記不飽和化工程では、前記超音波発振器の超音波や高周波振動器の振動等により前記地盤をかく乱させて気泡を発生させることを特徴とする、請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項6】
前記不飽和化工程における気泡の注入とともに、または、前記不飽和化工程を実行する前に、土粒子間の結合力を弱める材料を前記地盤に注入することを特徴とする、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の地盤改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−115638(P2008−115638A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301138(P2006−301138)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【出願人】(501072278)
【出願人】(391019740)三信建設工業株式会社 (59)
【出願人】(390001993)みらい建設工業株式会社 (26)
【出願人】(393003505)復建調査設計株式会社 (13)
【出願人】(598076502)みらいジオテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】