説明

地盤改良装置等に使用される撹拌装置

【課題】複数種の撹拌翼において、十分な撹拌混合を達成する。
【解決手段】内軸と外軸を回転自在に差し合わせてなる二重軸1において、上記内軸2の下端に掘削羽根7を固定し、その上位に、枠形中間撹拌翼13、及び上記中間撹拌翼13の少くとも外側の該中間撹拌翼13より撹拌径の大きい枠形外側撹拌翼19からなる少くとも同心位置から内外二重に翼を張り出す複数重撹拌翼において、上記外側撹拌翼19を上記内軸2に固定すると共に、該内軸2に回転を伝達する回転駆動装置24を接続し、上記中間撹拌翼19を上記外軸3に固定すると共に、該外軸に小角度往復回転を伝達する揺動駆動装置を装備した、地盤改良装置等の撹拌装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地盤改良装置等に使用される撹拌装置であって、枠形中間撹拌翼、及び上記中間撹拌翼の少くとも外側の該中間撹拌翼よりも撹拌径の大きい枠形外側撹拌翼からなる少くとも同心位置から内外二重に翼を張り出す複数重の撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撹拌装置として、内軸と外軸を逆方向に回転自在に嵌合してなる二重軸の下端に掘削羽根を設け、その上位に、半円弧棒状の内側撹拌翼、上記内側撹拌翼より撹拌径の大きい半円弧棒状の中間撹拌翼、及び上記中間撹拌翼よりも撹拌径の大きい半円弧棒状の外側撹拌翼を同心位置に三重状態に設け、上記内、外側撹拌翼を上記内軸に固定して正方向に回転させ、上記中間撹拌翼を共回り防止翼として、上記外軸に固定して逆方向に回転させる構造のものが知られている。
【0003】
しかし、上記の従来撹拌装置では、上記内軸、外軸を互に反対方向へ回転させるため、両軸に回転を伝達するための回転駆動装置が複雑で大型となる欠点がある。又、上記三重撹拌翼により、全体として有効な撹拌混合を行うが、内、外側撹拌翼に押されて正方向に回転移動しようとする一部の土砂の流れと、中間撹拌翼に押されて逆方向に回転移動しようとする一部の土砂の流れとが生じる傾向があり、これら一部の土砂が、上記全体の撹拌混合から取り残される場合があるといわれている。
【0004】
さらに、従来の撹拌装置において、正回転する外側撹拌翼と、その内がわを逆回転する中間撹拌翼との間の撹拌径間隔、及び正回転する内側撹拌翼と、その外がわを逆回転する中間撹拌翼との間の撹拌径間隔は、それぞれ一定間隔に固定されているため、例えば 土砂が軟弱であるのに上記撹拌径間隔が広過ぎるときは、土砂に対する羽切り作用が弱く、そのため土砂の細粒化は得られなかったり、又土塊が大きいか、硬いのに上記撹拌径間隔が狭いときは、土砂が上記間隔を通過できずに撹拌翼に付着堆積する等の支障が生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願第1発明は、内軸及び外軸に回転を伝達する回転駆動装置の簡素化を実現すると共に、従来装置において、正方向に回転移動しようとする一部の土砂の流れと、逆方向に回転移動しようとする一部の土砂の流れをも十分に撹拌混合することができる撹拌装置を提供することを課題とする。
【0006】
本願第2発明は、掘削撹拌すべき土砂の性状に応じて、中間撹拌翼と、それと内、外隣り合う撹拌翼との間の撹拌径間隔を適正に変更調整することを可能にする撹拌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題解決の手段として、本願第1発明は、
内軸と外軸を回転自在に差し合わせてなる二重軸において、
上記内軸の下端に掘削羽根を固定し、その上位に、枠形中間撹拌翼、及び上記中間撹拌翼の少くとも外側の該中間撹拌翼より撹拌径の大きい枠形外側撹拌翼からなる少くとも同心位置から内外二重に翼を張り出す複数重撹拌翼において、
上記外側撹拌翼を上記内軸に固定すると共に、該内軸に回転を伝達する回転駆動装置を接続し、
上記中間撹拌翼を上記外軸に固定すると共に、該外軸に小角度往復回転を伝達する揺動駆動装置を装備した、
地盤改良装置等の撹拌装置を提供する。
【0008】
本願第2発明は、
上記中間撹拌翼を上記外軸に着脱自在に取りつけ、
上記中間撹拌翼は、少くとも上記外側撹拌翼との間の撹拌径間隔が互に広狭異なる複数種を用意した、
地盤改良装置等の撹拌装置を提案する。
【発明の効果】
【0009】
本願第1発明の地盤改良装置等の撹拌装置によれば、内軸に回転を伝達する回転駆動装置は、一軸回転用の簡単な構造のもので足りることとなり、又中間撹拌翼は、揺動駆動装置にて小角度往復回転されるから、中間撹拌翼に押される土砂の流れを崩して土砂を多方向へ放散させ、しかも放散される土砂が外側撹拌翼に押されて回転移動しようとする土砂の流れに激しく衝突して、その流れを崩し、これらが相まって土砂全体に撹乱混合を生起させるのである。
【0010】
本願第2発明の地盤改良装置等の撹拌装置によれば、上記第1発明の効果に加え、作業に先立ち、地盤の土砂性状を調査し、それに基いて、複数種の中間撹拌翼の中から、土砂の性状に適した撹拌径間隔を有するものを選択し、それを外軸の所定位置に着脱自在に取りつけて地盤の掘削撹拌を行えば、中間撹拌翼と外側撹拌翼との適正な撹拌径間隔によって有効な撹拌を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願第1発明の撹拌装置を備えた地盤改良装置の側面図である。
【図2】(イ)揺動回転駆動装置を図1A−A断面からみた拡大平面図である。 (ロ)同上一部縦断拡大側面図である。
【図3】三重撹拌翼部分の拡大側面図である。
【図4】(イ)図3のB−B線拡大断面図である。 (ロ)同上C−C線拡大断面図である。
【図5】本願第2発明による撹拌径間隔が互に広狭異なる複数種の中間撹拌翼の各正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願第1、第2発明における「撹拌翼」は、矩形、台形、半円弧、弧状等の種々の枠形にすることができる。又本願第2発明における「複数種の中間撹拌翼」は、その翼面に各種形状の突起又は孔を設けるものもよい。
【実施例1】
【0013】
以下本発明の実施例について図面を参照して詳述する。
図2において、二重軸(1)は、軸心に固化液供給路(4)を縦通された内軸(2)を中空外軸(3)に回転自在に挿通したもので、本例では、上記外軸(3)の下端に、さらに中空ヘッドロッド(5)をフランジ継手(6)を介して接続し、上記内軸(2)を該ヘッドロッド(5)を回転自在に貫通してヘッドロッド(5)下方へ突出し、突出下端に、掘削羽根(7)、(7)を有する掘削ロッド(8)をフランジ継手(9)を介して接続し、この掘削羽根(7)、(7)の上位に、本例では三重撹拌翼(A)を設けてある。(29)は上記掘削ロッドに設けた固化液吐出口である。
【0014】
三重撹拌翼(A)の構造は次のようである。上記ヘッドロッド(5)下端と上記フランジ継手(9)との間の内軸(2)に、一対の2つ割リング半体(10)、(10)を被嵌し、ボルトナット(11)…により回転不能に接合し、この接合リング半体(10)、(10)の外周面に、直線棒状の内側撹拌翼(12)、(12)を半径方向に突出した状態にそれぞれ溶接により固定してある。
【0015】
中間撹拌翼(13)、(13)は、上記内側撹拌翼(12)、(12)よりも撹拌径の大きい矩形棒状のもので、その上端に連結片(14)をそれぞれ固定すると共に、その下端に2つ割リング半体(15)をそれぞれ固定してあり、そのうち上端連結片(14)、(14)を、上記ヘッドロッド(5)の下端部外周面に突設された2枚構成の支持板(16)、(16)にボルトナット(17)…によりそれぞれ着脱自在に連結し、又下端の2つ割リング半体(15)、(15)を、上記内軸(2)に被嵌し、ボルトナット(18)…により回転自在に且つ着脱自在に接合してある。
【0016】
外側撹拌翼(19)、(19)は、上記中間撹拌翼(13)、(13)よりも撹拌径の大きい矩形棒状のもので、その下端を、上記内軸(2)下端のフランジ(9)に固定し、その上端を、上記ヘッドロッド(5)に回転自在に被嵌されたリング(20)の外周面に固定してある。
【0017】
上記のような三重撹拌翼(A)を地盤改良装置に使用するには、一例として、図1に示すように、クローラ(21)の前端部に垂直に支持されたマスト(22)の2本のガイドレール(23)、(23)に、モータ、減速機からなる回転駆動装置(24)を搭載された回転駆動部キャリア(25)を上下摺動自在に支持させると共に、トップシーブ(26)から垂下されたワイヤロープ(27)により昇降自在に吊支し、この回転駆動装置(24)の出力軸(28)を下方へ突出している。
【0018】
一方、上記回転駆動部キャリア(25)の下位に、図2(イ)、(ロ)に示すように、揺動駆動キャリア(30)を上記ガイドレール(23)、(23)に同様に摺動自在に支持させ、このキャリア(30)の先端部に設けた短円筒軸受部(31)内に、ボールベアリング(32)、(32)を介して短小の円筒状補助軸(33)を回転自在に支承すると共に、その内側に上記出力軸(28)の下端部をボールベアリング(34)、(34)を介して同心的に回転自在に支承し、このように支承した補助軸(33)の下端に、上記外軸(3)の上端をボルト(35)…により固定し、又上記出力軸(28)の下端に上記内軸(2)の上端をオス、メス継手(28’)により接続し、抜け止めピンを差しこみ、このように支承された外軸(3)に一定角度往復回転を伝達する揺動駆動装置が装備されている。
【0019】
上記補助軸(33)の上端に、図2(イ)に示すように環状中央板から直径方向にアーム(37)、(37)を延出してなる揺動板(36)を環状部においてボルト(38)…により固定し、一方キャリア(30)の左右両側後部にブラケット(39)、(39)を突設し、両ブラケット(39)、(39)に油圧シリンダ(40)、(40)の基部を揺動自在に支持し、両シリンダのピストンロッド(41)、(41)の先端部を上記揺動板(36)のアーム(37)、(37)の先端部にピン連結してある。一方のシリンダ(40)の進出駆動と他方のシリンダ(40)の後退駆動を交互に行って揺動板(36)を一定角度往復回転させれば、外軸(3)、その先端部の中間撹拌翼(13)、(13)が同様の往復回転を行うこととなる。
【0020】
図1の地盤改良装置において、回転駆動装置(24)を始動すれば、出力軸(28)から内軸(2)に回転が伝達され、掘削羽根(7)、(7)とともに、内側及び外側撹拌翼(12)(12)、(19)(19)がそれぞれ正回転する。ワイヤロープ(27)をゆるめて回転駆動部キャリア(25)、揺動駆動部キャリア(30)とともに内軸(2)、外軸(3)を降下させ、その回転する掘削羽根(7)、(7)で地盤に掘削を開始する。
【0021】
それと共に、揺動駆動装置の油圧シリンダ(40)、(40)を小角度づつ交互に進退駆動させて外軸(3)を小角度づつ往復回転させ、中間撹拌翼(13)、(13)を同様に往復回転させると、正回転する内側、外側撹拌翼(12)(12)、(19)(19)に押されて回転移動する内側の土砂と、外側の土砂の2つの流れの間で、中間撹拌翼(13)、(13)が正逆往復回転することにより、まず中間撹拌翼(13)、(13)自身の土砂の流れを崩して土砂を多方向へ放散させ、それが内側、外側撹拌翼(12)(12)、(19)(19)による土砂の流れに衝突して流れを崩し、これらが相まって全体の撹乱、混合を行うことになる。
【実施例2】
【0022】
本例は、中間撹拌翼と、その内外両隣りの撹拌翼との間の撹拌径間隔を土砂の性状に対応して適正な間隔に変更できるように予備の中間撹拌翼を用意した例である。
【0023】
図3における中間撹拌翼(13)、(13)は、上記内側、外側撹拌翼(12)(12)、(19)(19)との撹拌径間隔が最広のものであるが、このほか図5に示すように上記撹拌翼(13)、(13)よりも撹拌径間隔が少しづつ狭いもの(13a)(ハ図)、(13b)(ロ図)、(13c)(イ図)の3種の中間撹拌翼を一対づつ用意している。これら予備の中間撹拌翼(13a)(13a)、(13b)、(13b)、(13c)、(13c)は、本例では矩形枠形に形成された金属板からなり、その各上端に、上記2枚構成の支持板(16)、(16)にボルトナット(17)…により着脱自在の連結片(14a)、(14b)、(14c)をそれぞれ固定し、又各下端には、ボルトナット(18)…によりリング形に接合すべき2つ割リング半体(15a)、(15b)、(15c)をそれぞれ固定してある。
【0024】
使用においては、作業に先立ち、改良すべき地盤の土砂の性状について調査する。ついで上記調査結果に基づき、図5の例の中から最適の撹拌径間隔を有する中間撹拌翼を選択して付け替える。それにより土砂の性状に応じた土砂の羽切り作用と撹拌混合を行うことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 二重軸
2 内軸
3 外軸
7 掘削羽根
13 中間撹拌翼
19 外側撹拌翼
A 三重撹拌翼
24 回転駆動装置
36 揺動板
40 油圧シリンダ
13a、13b、13c 予備の中間撹拌翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内軸と外軸を回転自在に差し合わせてなる二重軸において、
上記内軸の下端に掘削羽根を固定し、その上位に、枠形中間撹拌翼、及び上記中間撹拌翼の少くとも外側の該中間撹拌翼より撹拌径の大きい枠形外側撹拌翼からなる少くとも同心位置から内外二重に翼を張り出す複数重撹拌翼において、
上記外側撹拌翼を上記内軸に固定すると共に、該内軸に回転を伝達する回転駆動装置を接続し、
上記中間撹拌翼を上記外軸に固定すると共に、該外軸に小角度往復回転を伝達する揺動駆動装置を装備した、
地盤改良装置等の撹拌装置。
【請求項2】
上記中間撹拌翼を上記外軸に着脱自在に取りつけ、
上記中間撹拌翼は、少くとも上記外側撹拌翼との間の撹拌径間隔が互に広狭異る複数種を用意した、
請求項1に記載の地盤改良装置等の撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7318(P2012−7318A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142348(P2010−142348)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(510111696)大阪湾開発管理株式会社 (2)
【出願人】(000177416)三和機材株式会社 (144)
【Fターム(参考)】