説明

地盤改良装置等の撹拌翼構造

【課題】掘削撹拌すべき土砂の性状に応じて中間撹拌翼と内、外側撹拌翼との撹拌径間隔を適正に変更して有効な撹拌を可能にする撹拌翼構造を提供する。
【解決手段】内側撹拌翼、内側撹拌翼より撹拌径の大きい中間撹拌翼13及び中間撹拌翼より撹拌径の大きい外側撹拌翼からなる三重撹拌翼において、中間撹拌翼が内側及び外側撹拌翼との間の撹拌径間隔が互に広狭異なる複数種13a〜13cを着脱自在に用意してある、地盤改良装置等の撹拌翼構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地盤改良装置等に使用される撹拌翼構造であって、軸下端に掘削刃を固定し、その上位に、内側撹拌翼、上記内側撹拌翼より撹拌径の大きい枠形中間撹拌翼、及び上記中間撹拌翼より撹拌径の大きい枠形外側撹拌翼を設け、上記内側及び外側撹拌翼は同方向に回転し、上記中間撹拌翼は非回転の共回り防止翼とした撹拌翼構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の撹拌翼構造として、内軸と外軸を逆方向に回転自在に嵌合してなる二重軸の下端に掘削刃を設け、その上位に、半円弧枠形に回曲した撹拌棒からなる内側撹拌翼、上記内側撹拌翼より撹拌径の大きい半円弧枠形の撹拌棒からなる中間撹拌翼、及び上記中間撹拌翼より撹拌径の大きい半円弧枠形の撹拌棒からなる外側撹拌翼を設け、上記内、外側撹拌翼は上記内軸に連結して一方向に回転させ、上記中間撹拌翼は上記外軸に連結して、共回り防止翼として、他方向に回転させる構造のものが知られている。
【0003】
しかし、上記の従来撹拌翼構造では、上記内、外軸を互に反対方向へ回転させるため、駆動部が複雑で大型となる欠点があった。又、従来の撹拌翼構造を地盤改良装置に使用した場合、上記中間撹拌翼の撹拌棒と、上記内、外側撹拌翼の各撹拌棒との間の撹拌径間隔が固定されているため、実際の撹拌作用において、土砂の性状に対応して適正な間隔にない場合が多く、そのため土砂が軟弱であるのに間隔が広過ぎるときは、土砂に対する羽切り作用が弱く、土砂の細粒化は得られなかったり、又土塊が大きいか、硬いのに間隔が狭いときは、土砂が間隔を通過できずに中間撹拌翼に付着堆積する等の支障が生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願第1発明は、駆動部の簡素化、小型化を実現することを課題とする。
【0005】
本願第2発明は、掘削撹拌すべき土砂の性状に応じて、中間撹拌翼と内側、外側撹拌翼との間の撹拌径間隔を適正に変更調整することを可能にする撹拌翼構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題解決の手段として、本願第1発明は、
回転を伝達される内軸を、非回転の外軸に回転自在に挿通してなる二重軸において、上記内軸の下端に掘削刃を固定し、その上位に、内側撹拌翼、上記内側撹拌翼より撹拌径の大きい枠形中間撹拌翼、及び上記中間撹拌翼より撹拌径の大きい枠形外側撹拌翼の三重翼を同心的に位置させ、上記内、外側撹拌翼を上記内軸に回転伝達可能に連結支持させ、上記中間撹拌翼を上記非回転の外軸に連結支持させた、
地盤改良装置等の撹拌翼構造を提案する。
【0007】
本願第2発明は、
上記第1発明における中間撹拌翼の非回転外軸への連結支持は着脱自在とし、
上記中間撹拌翼は、上記内側及び外側撹拌翼との間の撹拌径間隔が互に広狭異る複数種を用意した、
地盤改良装置等の撹拌翼構造を提案する。
【発明の効果】
【0008】
本願第1発明の地盤改良装置等の撹拌翼構造によれば、二重軸のうち内軸のみを回転させればよいから、軸回転駆動部は簡素で小型のものとなり、装置の製造コストを低減できる。
【0009】
本願第2発明の地盤改良装置等の撹拌翼構造によれば、作業に先立ち、地盤の土砂性状を調査し、それに基づいて、複数種の中間撹拌翼の中から、土砂の性状に適した撹拌径間隔を有するものを選択し、これを外軸の所定位置に着脱自在に取りつけて地盤の掘削撹拌を行えば、中間撹拌翼と内、外側撹拌翼との適正な撹拌径間隔によって有効な撹拌を行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本願第2発明による撹拌翼構造の掘削刃及び三重撹拌翼部分の正面図である。
【図2】(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)撹拌径間隔が互に異る中間撹拌翼の各正面図である。
【図3】図1におけるA−A線拡大断面図である。
【図4】図1におけるB−B線拡大断面図である。
【図5】本発明の撹拌翼構造を備えた地盤改良装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願第2発明における「中間撹拌翼及び外側撹拌翼」は、矩形枠形に限らず、台形枠形、弧状枠形等種々の形状の枠形にすることができる。又「複数種の中間撹拌翼」は、その翼面に各種形状の突起又は孔を設けたものも含む。
【実施例1】
【0012】
以下本発明の実施例について図面を参照して詳述する。
図1において、二重軸(1)は、軸心に固化液供給路(4)を縦通された内軸(2)を、中空外軸(3)に回転自在に挿通したもので、本例では、上記外軸(3)の下端に、さらに中空ヘッドロッド(5)をフランジ継手(6)を介して接続し、上記内軸(2)を該ヘッドロッド(5)を回転自在に貫通してヘッドロッド(5)下方へ突出し、突出下端に、掘削刃(7)、(7)を有する掘削ロッド(8)をフランジ継手(9)を介して接続し、この掘削刃(7)、(7)の上位に三重撹拌翼(A)が設けられている。
【0013】
三重撹拌翼(A)は次のような構造である。上記ヘッドロッド(5)下端と上記フランジ継手(9)との間の内軸(2)に、一対の2つ割リング半体(10)、(10)を被嵌し、ボルトナット(11)…により回転不能に接合し、この接合リング半体(10)、(10)の外周面に、直線棒状の内側撹拌翼(12)、(12)を半径方向に突出した状態で、それぞれ溶接により固定してある。
【0014】
中間撹拌翼(13)、(13)は、上記内側撹拌翼(12)、(12)よりも撹拌径の大きい矩形枠形の棒状のもので、その上端に、特に図2(ニ)に示すように、連結片(14)をそれぞれ固定すると共に、その下端に2つ割リング半体(15)をそれぞれ固定してあり、この上端連結片(14)、(14)を、上記ヘッドロッド(5)の下端部外周面に突設された2枚構成の支持板(16)、(16)にボルトナット(17)…によりそれぞれ着脱自在に連結し、又下端の2つ割リング半体(15)、(15)は、上記内軸(2)に被嵌し、ボルトナット(18)…により回転自在に且つ着脱自在に接合してある。
【0015】
外側撹拌翼(19)、(19)は、上記中間撹拌翼(13)、(13)よりも撹拌径の大きい矩形枠形の棒状のもので、その下端を、上記内軸(2)下端のフランジ(9)に固定し、その上端を、上記ヘッドロッド(5)に回転自在に被嵌されたリング(20)の外周面に固定してある。
【0016】
上記中間撹拌翼(13)、(13)は、本例では、上記内、外側撹拌翼(12)、(12)及び(19)、(19)との撹拌径間隔が最広のものであるが、このほか図2に示すように、上記撹拌翼(13)、(13)よりも撹拌径間隔が少しづつ狭いもの(13a)(ハ図)、(13b)(ロ図)、(13c)(イ図)の3種の中間撹拌翼が一対づつ用意してある。
【0017】
これら中間撹拌翼(13a)(13a)、(13b)(13b)、(13c)(13c)は、本例では、矩形枠形に形成された金属板からなるもので、その各上端部に、上記2枚構成の支持板(16)、(16)にボルトナット(17)…により着脱自在の連結片(14a)、(14b)、(14c)をそれぞれ固定し、又各下端部に、ボルトナット(18)…によりリングに接合すべき2つ割リング半体(15a)、(15b)、(15c)をそれぞれ固定してある。
【0018】
上例の三重撹拌翼(A)を地盤改良装置に使用する場合は、一例として図1に示すように、クローラ(21)の前端部に垂直に支持されたマスト(22)のガイドレール(23)に、モータ、減速機等の駆動装置を搭載された駆動部キャリヤ(24)を上下摺動自在に支持させると共にトップシーブ(25)から垂下されたワイヤロープ(26)により昇降自在に吊支し、このキャリヤ(24)の下端部に設けたチャック装置(27)に、上記外軸(3)の上端部を把持して非回転に吊下すると共に、上記内軸(2)の上端部を駆動装置から突出された出力軸(28)と回転伝達可能に接続してある。
【0019】
なお、上記掘削ロッド(8)に、図1に示すように固化液吐出口(29)を開口し、上記固化液供給路(4)を通じて固化液が圧送される。
【0020】
図5の地盤改良装置を使用した地盤改良作業について説明する。作業に先立ち、改良すべき地盤の土砂性状について調査する。ついで、図2の各中間撹拌翼(13)、(13a)、(13b)、(13c)と内、外側撹拌翼(12)、(19)との間の各撹拌径間隔のうち、どの撹拌径間隔が上記調査した土砂性状に最適かを慎重に決定し、その決定に基づいて、図2の中間撹拌翼(13)〜(13c)の中から使用する中間撹拌翼を選択する。
【0021】
一例として、図2(ロ)の撹拌翼(13b)を選択した場合は、図1の既設の中間撹拌翼(13)、(13)の上端の連結片(14)、(14)をボルトナット(17)…をゆるめて支持板(16)、(16)から外し、下端の2つ割リング半体(15)、(15)をボルトナット(18)…を外して分離し、撹拌翼(13)、(13)を軸から取り外し、それに代えて上記の新たな中間撹拌翼(13b)、(13b)を上記と同様の操作で軸に取りつける。
【0022】
駆動装置を始動すれば、出力軸(28)から内軸(2)に回転が伝えられ、掘削刃(7)、(7)と共に内側及び外側撹拌翼(12)、(12)及び(19)、(19)がそれぞれ時計方向に回転し、外軸(3)は非回転に保持されて中間撹拌翼(13)、(13)を非回転におく。ワイヤロープ(26)をゆるめて駆動部キャリヤ(24)とともに内軸(2)、外軸(3)を降下させ、その回転する掘削刃(7)、(7)で地盤に掘削を開始する。
【0023】
掘削刃(7)、(7)で掘削された土砂は三重撹拌翼(A)に至り、そこで回転する内側及び外側撹拌翼(12)、(12)及び(19)、(19)により時計方向へかき回されつつ非回転の中間撹拌翼(13b)、(13b)に当って内、外側撹拌翼(12)(12)、(19)(19)との共回りを抑制されると共に、中間撹拌翼(13b)、(13b)と内側撹拌翼(12)、(12)との撹拌径間隔、及び中間撹拌翼(13b)、(13b)と外側撹拌翼(19)、(19)との撹拌径間隔をそれぞれ通過する際に、各撹拌翼(13b)、(13b)と(12)(12)、(19)(19)との羽切り作用による土砂の細粒化と混合撹拌を受ける。その場合、土砂の硬軟等の性状に応じて上記撹拌径間隔を調整してあるので、常に有効な羽切り作用と混合作用を保証される。
【0024】
所定深さの掘削撹拌を行ったら、吐出口(29)から固化液を吐出しながら内軸(2)の回転により内側、外側撹拌翼(12)(12)、(19)(19)を回転させて固化液と土砂を混合しつつ内、外軸(2)、(3)を徐々に地上に引き抜く。
【符号の説明】
【0025】
A 三重撹拌翼
2 内軸
3 外軸
7 掘削刃
12 内側撹拌翼
13、13a、13b、13c 中間撹拌翼
19 外側撹拌翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転を伝達される内軸を、非回転の外軸に回転自在に挿通してなる二重軸において、上記内軸の下端に掘削刃を固定し、その上位に、内側撹拌翼、上記内側撹拌翼より撹拌径の大きい枠形中間撹拌翼、及び上記中間撹拌翼より撹拌径の大きい枠形外側撹拌翼の三重翼を同心的に位置させ、上記内、外側撹拌翼を上記内軸に回転伝達可能に連結支持させ、上記中間撹拌翼を上記非回転の外軸に連結支持させた、
地盤改良装置等の撹拌翼構造。
【請求項2】
上記中間撹拌翼の非回転外側への連結支持は着脱自在とし、
上記中間撹拌翼は、上記内側及び外側撹拌翼との間の撹拌径間隔が互に広狭異る複数種を用意した、
請求項1に記載の地盤改良装置等の撹拌翼構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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