説明

地盤調査方法及び地盤調査検証装置並びに地盤調査検証方法

【課題】地盤又は法面の土質を正確に評価できる地盤調査方法を提供する。
【解決手段】地盤における粘土層を想定して設定した荷重、及び砂層を想定して設定した、前記荷重よりも小さい荷重をスクリューポイント21にかけて、1〜2m程度離れた第1及び第2測定地点に毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させる一方、粘土層に応じて設定した荷重を、ロッド200の先端部に取り付けたコンクリート用ドリルビット210にかけて、第1及び第2測定地点からさらに1〜2m離れた第3測定地点に毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させて、第1〜第3測定地点における測定データを図表に示すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤又は法面の成層構造における土質を評価するための地盤調査方法及び、該地盤調査の結果を検証する地盤調査検証装置並びに地盤調査検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、雨量の多い時に発生する地滑りの可能性を評価する地盤調査装置として、地盤をボーリングして採取した土(試料)を三軸圧縮装置にセットして、該試料に所定条件に基づいて三軸、即ち軸方向、径方向からそれぞれ圧縮することで、試料が変形に至る応力から地滑りに対するその試料を評価して、試料を採取した地盤の評価を行うようにしているのが現況である。
【0003】
この三軸圧縮装置としては、例えば、上面及び下面の両開口部が円盤状の上蓋及び下蓋で密封されて、内部に圧力室が形成される円筒体と、試料(現地から採取した土)を載置するための傾斜面が上面に形成された載置台と、上蓋の中央部に貫設されたピストンを介して軸方向に応力を生じさせる載荷装置と、該ピストンに対する載荷装置の荷重を測定する測定装置と、前記圧力室に側方向に応力を生じさせる圧力供給装置と、載置台に形成されている溝を介して排出される間隙水に係る圧力を測定する間隙水圧測定装置とを備えているものが公知になっている(特許文献1参照)。
【0004】
そして、載置台は、剛体(アルミニウム)で構成され、上述した傾斜面は、地滑りの評価を行うためのもので、該傾斜面の傾斜角度に応じて試料の下面も傾斜面が形成されている。また、試料は、載置台の傾斜面に試料の傾斜面を接合させた状態で載置される。また、載置台は、上述したように、底面から外周面にかけて複数の溝が形成されている。該溝は、底面の中心を合流箇所とするように放射状に形成され、しかも、外周面に対して軸線に沿うように平行状に形成されている。試料は、載置台の傾斜面に対応するように、底面が傾斜して形成され、濾紙及びゴムで外周面が覆われている。
【0005】
このように構成された三軸圧縮装置では、圧力室に水を満たした状態にすると共に、圧力供給装置によって側方向の圧力を加えて、試料の圧密状況を形成する。この圧密状況下において、載荷装置によって軸方向の圧力を加えて、軸方向及び側方向の応力と、間隙水圧との経時的変化を有効応力経路図に表す。そして、この有効応力経路図を用いて、対象となる地盤の地滑りの評価を行う。即ち、載置台を使用しない場合、載置台の傾斜面が60度の場合、載置台の傾斜面が45度の場合のいずれにおいても、間隙水圧が最大を示したときの屈曲点を結んで傾線を描き、該傾線の傾斜角度を地滑りに対する強度としている。
【0006】
また、地盤の支持強度を測定するものとして、スウェーデン式サウンディング試験装置が一般的に知られている。この装置は、ドリルの刃状を呈したスクリューポイントと称される抵抗体をロッドの先端部に設けて、該ロッドを地盤に対して鉛直方向に突き立てると共に、該ロッドに錘を載せつつ回転させながら地盤に貫入させ、地盤に対するスクリューポイントの回転時の抵抗やロッドの貫入量を測定しながら地盤の硬軟を調査するものである。この種の装置として、流体圧シリンダに設定された複数の所定圧力をロッドに順次加えることによって、ロッド貫入時の作業効率を改善しようとするものが公知になっている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−53042号公報
【特許文献2】特開平10−121453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、三軸圧縮装置を用いた地盤調査方法の場合、現地から採取した土(試料)を所定の試験条件で三軸圧縮装置を用いて、地盤を評価しようとしているので、実際の地盤の積層構造における評価、例えば地滑りに対する評価は充分ではないという問題がある。
【0009】
また、スウェーデン式サウンディング試験装置の場合、建築物が構築される現地で行われるものの、地盤の成層構造に対する綿密な調査を行う手段はなく、前記土質評価方法と同様に、地盤の積層構造における充分な評価は得られないという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、地盤又は法面の土質を正確に評価できる地盤調査方法及び地盤調査検証装置並びに地盤調査検証方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る地盤調査装置は、地盤に対して直角に突き立てられるスクリューポイント21,21A,21B,21Cが貫入開始される場合及び地盤に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント21,21A,21B,21Cの降下時間が所定時間よりも速くなった場合、ロッド20,20A,20B,20Cに係る加重を、流体圧によって相殺しロッド20,20A,20B,20Cの自重のみに調整した後、ロッド20,20A,20B,20Cに流体圧を徐々に加圧して前記所定重量に戻った場合、ロッド(20,20A,20B,20C)を再度低回転させつつスクリューポイント21,21A,21B,21Cを貫入させる一方、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド20,20A,20B,20Cに対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント21,21A,21B,21Cの停止状態が継続される場合、最大重量が加重された状態のロッド20,20A,20B,20Cを高回転させつつスクリューポイント21,21A,21B,21Cを貫入させる地盤調査装置を用いて地盤を調査する地盤調査方法であって、地盤における粘土層を想定して設定した荷重、及び砂層を想定して設定した、前記荷重よりも小さい荷重をスクリューポイント21,21A,21B,21Cにかけて、1〜2m程度離れた第1及び第2測定地点に毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させる一方、粘土層に応じて設定した荷重を、ロッド200の先端部に取り付けたコンクリート用ドリルビット210にかけて、第1及び第2測定地点からさらに1〜2m離れた第3測定地点に毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させて、第1〜第3測定地点における測定データを図表に示すようにしたことを特徴とする。
【0012】
この場合、第1〜第3測定地点における測定データを図表に示すと、コンクリート用ドリルビット210の場合は、ほとんど変化のない横ばい状態のデータが得られるが、粘土層と砂層とを想定して設定した荷重をかけたスクリューポイント21,21A,21B,21Cの場合は、水分が含まれる場合において、データに大きな開きが生じることになる。即ち、各測定地点の土壌に水分が含まれるか否かを判別できるようになる。つまり、各測定地点の地盤が、地滑りの生じやすい地盤であるか否かを推測できるようになる。
【0013】
また、本発明によれば、粘土層を想定して設定される荷重を1000N〜2500Nとして、砂層を想定して設定される荷重を300N〜1000N未満とすることが好ましい。
【0014】
この場合、国土省で規定されている荷重(1000N)だけでは、得られなかったデータ、即ち水分が多くて密度が高い土壌であると推測されるデータや、水分が多くて密度が小さい土壌であると推測されるデータが得られるようになる。つまり、地盤の土壌に応じたデータが得られるようになる。
【0015】
本発明に係る地盤調査検証装置は、地盤調査結果を検証する際に使用される地盤調査検証装置であって、先端部にスクリューポイント21Aが取り付けられると共に、該先端部に土壌の水を流入させる流入孔51が形成される筒状のロッド20Aと、該流入孔51よりも上方のロッド20Aの外周面に、両側の開口端部が固着されると共に、流体の供給によって膨出する環状の袋体55と、該袋体55に流体を供給する流体圧供給手段60と、流入孔51からロッド20Aの内部に流入した水を吸い上げる吸水手段と、ロッド20Aの内部に設けられ、流入孔51から内部に流入する水位を検出する水位検出手段70と、ロッド20Aの内部に流入する水の流入時間を検出する流入時間検出手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
この場合、地盤調査結果を検証すべく、該調査時に形成された貫入孔Gに、ロッド20Aの先端部に取り付けられたスクリューポイント21Aを貫入させ、袋体55に流体を供給して、袋体55を膨張させて、貫入孔Gの内壁に袋体55の外面を圧接させる。即ち、袋体55の上方からの水の流入を防止して、水の流入路を一つにする。この状態で、ロッド20Aの先端部に形成された流入孔51から前記土壌の水をロッド20A内部に流入させる。そして、流入した水を一旦吸水し、再度流入孔51から流入する水の流入時間とその水位を検出することで、調査結果の正否を検証する。即ち、水の流入時間が速く、水位が高ければ、上述した調査結果が正しいとされる。
【0017】
本発明に係る地盤調査検証方法は、前記地盤調査検証装置を用いて地盤調査結果の検証行う地盤調査結果の検証方法であって、地盤調査終了後、地盤調査の結果によって水分が多いと推測される土壌の位置に、流体の供給によって膨出する環状の袋体55を設けたスクリューポイント21Aを貫入させ、該位置において、袋体55に流体を供給して該袋体55を径外方向に膨張させると共に、地盤調査時に形成された貫入孔Gの内壁に圧接させ、ロッド20Aの流入孔51からロッド20A内部に流入する土壌の水を吸い上げた後、流入孔51からロッド20A内部に再度流入する水の流入時間とその水位を検出するようにしたことを特徴とする。
【0018】
この場合、地盤調査の結果で、粘性はあるが水を多く含んでいる土壌であると推測される位置において、ロッド20A内部に再度流入する水の流入時間とその水位を検出することで、地盤調査結果の検証を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、ロッドを低回転させつつ、スクリューポイントに係る荷重を、粘土層及び砂層を想定して設定しているので、地盤又は法面の成層構造を正確に把握することができると共に、地滑りを起こしやすい地盤であるか否かを容易に探知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る地盤調査装置を示す側面図。
【図2】図1の正面図。
【図3】図1の背面図。
【図4】図1の平面図。
【図5】(a)は、スクリューポイントが取り付けられたロッドを示す断面図、(b)は、コンクリート用ドリルビットが取り付けられたロッドを示す断面図。
【図6】図1の地盤調査装置の動作説明図。
【図7】図1の地盤調査装置のフローチャート。
【図8】地盤調査検証装置の一部を構成する水位検出器及び環状の袋体が設けられたロッドを示す断面図。
【図9】図8の袋体が流体の供給によって膨出し、貫入孔の内壁に圧接した状態を示す概略図。
【図10】試料採取器が設けられたロッドを示す断面図。
【図11】水分検出器が内装されたロッドを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る地盤調査方法につき図1〜図7を参照して説明する。
まず、本実施形態に係る地盤調査方法について説明する前に、該地盤調査方法に使用される地盤調査装置について、図1〜図6を参照して説明する。該地盤調査装置は、移動可能に構成された架台1と、該架台1に立設された縦長の枠体5と、該枠体5に上下動自在に設けられた移動体10と、枠体5に取り付けられたシリンダ15と、該シリンダ15に流体圧を供給する加重手段Bと、シリンダ15に取り付けられた移動体10を上下動させるための移動手段Cと、該移動体10に設けられた、先端部にスクリューポイント21が取り付けられたロッド20と、先端部にコンクリート用ドリルビット210が取り付けられたロッド200と、該両ロッド20,200うちいずれかを回動させるための回動手段Dと、加重手段B、移動手段C及び回動手段Dを制御する制御手段Eとから構成されている。なお、支持手段Aは、架台1、枠体5、移動体10、後述のモータ40の回転軸との連結部から構成されている。
【0022】
架台1は、図1〜図4に示すように、前後に車輪2が設けられた平面視矩形状の台車からなり、後述する下枠7に対して着脱可能な構成になっている(図示せず)。
【0023】
枠体5は、図1〜図3に示すように、平面視略正方形状の上枠6及び下枠7と、該上端部が上枠6の左右の両側に溶着されると共に、下端部が下枠7の左右の両側に溶着された左右一対の側部支柱8と、上端部が上枠6の後部に溶着されると共に、下端部が下枠7の後部に溶着された後部支柱9とを備えている。
【0024】
移動体10は、図1〜図4に示すように、側面視コ字形状を呈し、後述のチェーン19の一部の各環に接続された正面視矩形状の基部11と、該基部11の上端部及び下端部から水平方向に折り曲げられた折曲部12とを有している。そして、移動体10は、チェーン19の移動に従動し、下側の折曲部12にロッド20,200を回転させるためのモータ(回動手段)40が取り付けられている。
【0025】
シリンダ15は、図6に示すように、内部が油収容室16と空気収容室17の二つの室に構成され、上下方向に伸縮ロッド18が貫通して、図1〜図4に示すように、該伸縮ロッド18の上端部及び下端部にそれぞれ支持板22が取り付けられ、該支持板22にスプロケット23が回転自在に設けられている。そして、該両スプロケット23には、環状のチェーン19が捲回されると共に、該チェーン19に移動体10の基部が固着されている。
【0026】
加重手段Bは、図1〜図4及び図6に示すように、内部に所定量の油が収容され、シリンダ15に油又は空気のいずれかを供給するタンク25と、該タンク25に空気を供給するコンプレッサ26と、該コンプレッサ26の圧力を調整するレギュレータ27と、タンク25及びシリンダ15にそれぞれ設けられ、タンク25及びシリンダ15の流体圧を切り換えるための一対の三方弁28a,28bと、タンク25の下流側に設けられたニードル弁29及び二方弁30とを備えている。なお、図1〜図4においては、コンプレッサ26とレギュレータ27は図示していないが、市販のものを作業現場に別途搬入するため省略している。
【0027】
移動手段Cは、図1〜図4に示すように、左右の側部支柱8に、その長さ方向に沿って設けられたレール35と、移動体10の上下の折曲部12に架設された支持板36と、該支持板36の上部及び下部にそれぞれ回転自在に取り付けられ、レール35を滑動する複数のローラ37とを有している。
【0028】
ロッド20は、図5(a)に示すように、先端部にスクリューポイント21が設けられた掘削用ロッド20aと、所定の降下位置において掘削用ロッド20aに接続される複数の連結用ロッド20bとから構成されている。また、ロッド200は、図5(b)に示すように、コンクリート用ドリルビット210が取り付けられた掘削用ロッド200aと、所定の降下位置において掘削用ロッド200aに接続される複数の連結用ロッド200bとから構成されている。
【0029】
回動手段Dは、図1〜図4に示すように、鉛直方向のロッド20の基端部と、水平方向に導出されたモータ40の回転軸と、モータ40に設けられたギアボックス(減速機構部)41と、ロッド20の基端部、モータ40の回転軸、ギアボックス41とを連結するコレットと、ロッド20の回転数を検出する検出器とを備えている(図示せず)。
【0030】
制御手段Eは、マイクロコンピュータが搭載されると共に、降下距離(貫入深さ)、降下時間、モータ40(ロッド20)の回転数、土壌の硬さ(N値)を図表にて表示する表示装置が備えられた制御盤からなり、枠体5に取り付けられている。そして、コンプレッサ26、レギュレータ27、各三方弁28a,28b、ニードル弁29、二方弁30、モータ40を図7のフローに従って動作させるようプログラムされている。
【0031】
ここで、スクリューポイント21を地盤に貫入させた場合、例えば空間層であれば、N値が0〜3を示し、軟弱層(砂層)であれば、N値が6以下を示す。また、スクリューポイント21の直径は、例えば20〜40mm、コンクリート用ドリルビット210の直径は、例えば、22mm〜35mm、コンプレッサ26の空気圧は6〜7kg/m2、各連結用ロッド20b,200b及び掘削用ロッド20a,200aを地中から引き抜く力は1.5トンとする。
【0032】
なお、スクリューポイント21の降下時間が所定時間よりも速くなった場合、ロッド20に係る加重を、流体圧によって相殺してロッド20の自重のみにするようにしている理由は、スクリューポイント21が貫入している地層が砂、土、礫などの軟弱な層であっても、これらの層を貫通して硬い岩盤や粘土層に一気に到達することがなく、地盤がどのような成層構造になっているのか探知するためである。
【0033】
また、スクリューポイント21を低回転、即ち毎分30回転で貫入させている理由は、貫入部位の地層を推察するためである。即ち、荷重が大きく回転数も大きくしてしまえば、砂層などの軟弱な土壌を通り越してしまう可能性がある。したがって、できるだけ水の抵抗や、土壌の粘性による抵抗などを感じやすい回転数にするのが好ましいのである。
【0034】
また、スクリューポイント21にかける荷重を粘土層及び砂層を想定して設定する理由としては、土壌に水分が含まれる場合と、そうでない場合とでは異なるデータが得られるようになるためである。具体的に説明すると、粘土層を想定して設定した荷重をスクリューポイント21にかけて、毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させると、水分を含んだ粘土層の場合は、水分を含まない粘土層に比して、やや多めの時間を要することになる。一方、砂層に対しては、荷重が大きいため、時間を要することなく通過する。また、砂層を想定して設定した荷重、即ち粘土層を想定して設定した荷重よりも小さい荷重をスクリューポイント21にかけて、毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させると、水分を含む粘土層の場合は、荷重が小さく回転数が低いので、スクリューポイント21が貫入するのに多大の時間を要するようになる。一方、砂層に対しては、荷重が砂層を想定して設定されているので、貫入するにあたって抵抗が生じる。つまり、粘土層を想定して設定した荷重では通過してしまった砂層を探知できるようになる。さらに、粘土層を想定して設定した荷重を、コンクリート用ドリルビット210にかけた場合は、コンクリート用ドリルビット210が水の抵抗を受けることなく、砂層から硬岩層に到達することになる。つまり、コンクリート用ドリルビット210は、硬度な土壌を探知するのに適している。
【0035】
つぎに本実施形態に係る地盤調査装置を用いた地盤調査方法について図5及び図6並びに表1を参照して説明する。
【0036】
ここで、ロッド20を例にとって地盤調査装置の制御フローを説明する。まず、降下距離0cmの地点では、一方の三方弁28aのa−b間の流路が開放されると共に、他方の三方弁28bのa−c間の流路が大気解放され、タンク25内部に空気圧力が供給されて、油がニードル弁29、二方弁30を介してシリンダ15に供給され、シリンダ15の空気収容室17の空気圧が0.5減圧される(S1)。この空気圧の数値は、モータ40や移動体10の重量に相当し、この重量が減圧されるのでロッド20に係る加重は「0」になり、ロッド20が降下せずに停止状態(以下スタンバイ状態という)になる。
【0037】
そして、空気収容室17の減圧と同時に、ロッド20の降下距離が測定(S4)されると共に、ロッド20の降下時間の測定が開始される(S5)。降下距離は、ロッド20が上昇した下側のスプロケット23の中心位置を開始位置とし、この開始位置から降下する距離を測定する。一方、降下時間は、チェーン19の各環が近接スイッチSの検知部を通過する毎に近接スイッチSはオンすることになるが、このオン−オン期間の速度を降下時間として換算する。
【0038】
降下距離20cmの地点では、一方の三方弁28aのa−b間の流路が閉鎖されて、他方の三方弁28bのa−c間の流路が開放され、空気収容室17に空気圧が供給され、二方弁30、ニードル弁29を介してシリンダ15の油がタンク25に戻され、他方の三方弁28のa−b間の流路が閉鎖されて、シリンダ15の空気圧が元に戻る(S2)。つまり、モータ40や移動体10の重さ(450W)がロッド20に加重されるようになる。
【0039】
降下距離20〜40cmの区間では、一方の三方弁28aのa−c間の流路の開放が維持されると共に、他方の三方弁28bのa−b間の流路の閉鎖が維持されて、シリンダ15の空気圧が徐々に加圧される(S3)と同時に、ロッド20が低回転、即ち毎分30回転以下されて(S8)、ロッド20が加圧に対応して貫入されていく。
【0040】
そして、さらなる貫入によって、例えば、スクリューポイント21が砂、礫、土などの透水層に到達すると、ロッド20の降下時間が所定時間よりも速く(S6)なり、上述したS1〜S3の動作が繰り返し行われると同時に、ロッド20の低回転が維持されている。この理由としては、スクリューポイント21が、軟弱な透水層を貫通してその下の岩盤や粘度層などの不透水層に到達するのを防止するためで、透水層において、空洞になっているか、もしくは水が浸透して泥状態になっているかどうかを確認するためである。
【0041】
また、例えば、スクリューポイント21が粘土層(不透水層)に到達すると、ロッド20への加重が規定の最大荷重を加えても(S9)、スクリューポイント21が停止状態になっている。即ち、この停止は、スクリューポイント21の回転が停止した場合、或いはロッド20の降下が停止した場合の停止時間が所定時間よりも長いと判定された場合(S7)で、ロッド20の回転数を徐々に上げてスクリューポイント21を貫入する(S10)。また、ロッド2の停止時間が所定時間よりも長いと判定(S7)されて、これ以降の貫入は不可能と判定された場合は、ロッド20の地盤からの引き抜きが行われて作業終了となる。つまり、ロッド20に最大荷重をかけた状態で回転させてもスクリューポイント21が貫入しない場合、これ以降は不透水層であることを示唆しており、この不透水層の手前に地滑りを起こすとされる境界層があると推察できる。
【0042】
(実施例)
つぎに実施例について説明する。上述した制御フローに基づいて、建造物が構築される地盤における第1〜第3測定地点のそれぞれにおいて測定を行う。まず、第1測定地点において、スクリューポイント21に、粘土層を想定して設定された荷重1000N〜2500N(好ましくは1200N)をかけて、毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させる。また、第1測定地点から1〜2m程度離れた第2測定地点において、砂層を想定して設定された荷重300N〜1000N未満(好ましくは800N)をかけて、毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させる一方、第1及び第2測定地点からさらに1〜2m程度離れた第3測定地点において、コンクリート用ドリルビット210が取り付けられたロッド200に、粘土層を想定して設定された荷重(好ましくは1200N)をかけて、毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させる。そして、第1〜第3測定地点における測定データを図表にする(表1参照)。
【0043】
【表1】

【0044】
前記表1において、1200Nの荷重のスクリューポイント21の曲線を第1曲線とし、800Nの荷重のスクリューポイント21の曲線を第2曲線とし、コンクリート用ドリルビット210の曲線を第3曲線とする。そして、20cm〜30cm程度の地点の土壌は、第1及び第2曲線が略重なるように、第3曲線がこれらの曲線から少し離間して推移している。したがって、この深さでの土壌は、水分が少しあって、密度が高い土壌であると推測される。その後は、第1〜第3曲線が重なるように推移しており、90cm地点で、第2曲線が上昇し、第3曲線が第2曲線の下方に横ばい状態で推移すると共に、第1曲線が第3曲線の下方に略横ばいの状態で推移している。この深さでの土壌は、水分がやや多くて密度がやや高い土壌であると推測される。100cm地点では、ロッド20の交換作業が行われているので、この地点でのデータは無視するものとする。つぎに、100cm〜130cm地点では、第3曲線のみが急激に上昇している。この地点での土壌は、水分が飽和状態にあって、密度が極めて高い土壌であると推測される。このように、同一地点の土壌であっても、スクリューポイント21に係る荷重(1200Nと800Nの荷重)によって差が生じることが理解できる。そして、上昇する第2曲線に対して、時間の要素を入れた傾線を描くことで、地滑りに対する密度及び土壌の強度が得られる。
【0045】
つぎに、地盤調査装置によって得られた結果を検証する検証作業について説明するが、まず、検証作業時に使用される地盤調査検証装置について説明する。該地盤調査検証装置50は、図8及び図9に示すように、先端部にスクリューポイント21Aが取り付けられると共に、該先端部に土壌の水を流入させる流入孔51が形成される筒状のロッド20Aと、該流入孔51よりも上方のロッド20Aの外周面に、両側の開口端部が固着されると共に、流体の供給によって膨出する環状の袋体55と、該袋体55に流体を供給する流体圧供給手段60と、流入孔51からロッド20Aの内部に流入した水を吸い上げる吸水手段(図示せず)と、ロッド20Aの内部に設けられ、流入孔51から内部に流入する水位を検出する水位検出手段70と、ロッド20Aの内部に流入する水の流入時間を検出する流入時間検出手段とを備えている。
【0046】
ロッド20Aは、円筒状であり、土壌の水をロッド20Aの内部に流入させることで、土壌の含水状態を把握しやすくする。詳細には、後述する水位検出手段70の検知部72が内部に設けられていると共に、袋体55に空気を供給する流体圧供給手段60の給気管61が挿入されている。なお、図中の符号201aは掘削用ロッド、201bは連結用ロッドである。
【0047】
流体圧供給手段60は、図9に示すように、一端部が後述する袋体55の逆止弁56に接続され、ロッド20Aの内部を通って、地表に位置するロッド20Aの端部から導出される給気管61と、該給気管61の他端部が接続されると共に、該給気管61に流体(本実施形態の場合は空気とする)を供給するコンプレッサ62とを有している(図8参照)。
【0048】
袋体55は、図9に示すように、自転車のタイヤと同様に、ゴム製で、逆止弁56が設けられており、該逆止弁56は、一端部がコンプレッサ62に接続された給気管61の他端部が接続されている。そして、給気管61を経て袋体55に空気が供給されると、該袋体55が略径外方向に膨出することになる。具体的には、貫入孔Gの径よりも大径に膨出することになる。そして、袋体55が径外方向に膨出することで、貫入孔Gの内壁に膨出した袋体55の外面が圧接し、一つの水の流入経路が形成されることになる。
【0049】
吸水手段は、図示していないが、市販のポンプと、該ポンプに接続された吸水管とを備えている。そして、吸水管をロッド20Aの内部に挿入すると共に、ポンプを作動させて、ロッド20Aの内部に流入した水を吸水管を経て吸い上げる。この際、後述する水位検出手段70の最下位aの検知部72よりも水位が下がることで、最下位aに対応する発光ダイオード73,…が消灯することになり、ロッド20Aの内部に流入した水が吸い上げられたことが確認される。
【0050】
水位検出手段70は、図8に示すように、所定の間隔(例えば25cm間隔)をおいて各位置a〜dに導体部72aを露出させた状態にした電線71を、ロッド20Aの内部に挿入すると共に、各位置a〜dに応じて発光ダイオード73,…を設ける。そして、ロッド20Aの流入孔51を通って内部に流入した水の水位によって、各位置a〜dの発光ダイオード73のいずれかが導通されて点灯するようになる。即ち、水位を視認することで、土壌の含水状態を把握できるようになる。つまり、水位が高いほどその土壌は含水率が高いと考えられる。なお、図中の符号74は、発光ダイオード73,…に直流電源を供給する電源である。
【0051】
流入時間検出手段は、上述した地盤調査装置の制御手段Eに組み込まれており、水位を検出する水位計としての機能と、各水位に到達する時間を各位置の発光ダイオード73,…のオンーオン期間の時間で流入時間を検出する機能と、最高位の発光ダイオード73が点灯するのが早い場合、警報(音声、ブザー、光など)を出力する警報手段とを備えている。即ち、各位置の発光ダイオード73,…の点灯時間が早ければ、その土壌の内部を通る水の速度(透水度)が早いと考えられる。また、最高位の発光ダイオード73が点灯するのに時間を要した場合は、その土壌の内部を通る水の速度(透水度)が遅いと考えられる。
【0052】
つぎに、地盤調査による調査結果を検証する検証方法について説明する。前記地盤調査装置によって得られた調査結果、即ち粘性はあるが水を多く含んでいる土壌であると推測される調査結果を検証する。まず、該調査時に形成された貫入孔Gに、ロッド20Aと共にスクリューポイント21Aを貫入させる。続いて、図9に示すように、給気管61を通して袋体55に空気を供給して、袋体55を膨張させて、貫入孔Gの内壁に袋体55の外面を圧接させる。即ち、袋体55の上方からの水の流入を防止して、水の流入路を一つにする。この状態で、ロッド20Aの先端部に形成された流入孔51から前記土壌の水をロッド20Aの内部に流入させる。そして、流入した水を一旦吸水し、再度流入孔51から流入する水の流入時間とその水位を検出することで、調査結果の正否を検証する。この場合、水の流入時間が速く、水位が高ければ、上述した調査結果が正しいと判断されると共に、透水状態も把握できる。
【0053】
なお、前記実施形態では、貫入深さに応じて変化する土壌の硬さを表1に示したが、表2に示すように、降下時間に応じて変化する土壌の硬さを図表にしてもよい。この場合も表1と同様に、1200Nの荷重のスクリューポイント21の曲線を第1曲線とし、800Nの荷重のスクリューポイント21の曲線を第2曲線とし、コンクリート用ドリルビット210の曲線を第3曲線とする。そして、表2においては、第1及び第3曲線が重なるように推移し、第2曲線が時間応じて急激に推移している。
【0054】
【表2】

【0055】
また、表3に示すように、降下時間に応じて変化する貫入深さを図表にするようにしてもよい。この場合も表1と同様に、1200Nの荷重のスクリューポイント21の曲線を第1曲線とし、800Nの荷重のスクリューポイント21の曲線を第2曲線とし、コンクリート用ドリルビット210の曲線を第3曲線とする。そして、表3においては、100cmの地点で、第1及び第3曲線が共に上昇カーブを示しており、第2曲線が大きく湾曲するように推移している。
【0056】
【表3】

【0057】
また、前記実施形態の場合、図5(a),(b)に示すロッド20,200を使用したが、その他のロッドとして、地盤における土壌を採取するための円筒状の試料採取器80が設けられるロッド20Bや、内部に水分検出手段90が設けられるロッド20Cを使用することもある。そして、試料採取器80は、図10に示すように、両端部の内面に雌ねじ82が形成された筒体81と、該筒体81の壁面に径外方向に沿って形成された貫通孔83と、貫入する際の回転方向とは逆方向に延出されると共に、該貫通孔83を覆う被覆体84とを有している。そして、採取しようとする土壌の位置に試料採取器80を挿入し、貫入する際の回転方向とは逆方向にロッド20Bを回転させることで、被覆体84によって土壌が採取される。なお、図中の符号202aは掘削用ロッド、202bは連結用ロッドである。また、水分検出手段90は、図11に示すように、内部に設けられたセンサ91と、該センサ91の検出信号に応じて点滅する発光ダイオード92とを有している。なお、図中に示す符号93は、センサ91に接続される電線、94は、センサ91及び発光ダイオード92に直流電源を供給する電源、203aは掘削用ロッド、203bは連結用ロッドである。
【0058】
また、前記実施形態の場合、略水平な地盤を調査対象としているが、法面を調査対象とすることもできるのは言うまでもない。但し、この場合、スクリューポイント21を法面に対して直角に突き立てられるよう、装置に、それ自体を斜めの状態に支持できる支持棒を取り付ける必要がある。
【符号の説明】
【0059】
1…架台、2…車輪、5…枠体、6…上枠、7…下枠、8…側部支柱、9…後部支柱、10…移動体、11…基部、12…折曲部、15…シリンダ、16…油収容室、17…空気収容室、18…伸縮ロッド、19…チェーン、20,20A,20B,20C…ロッド、20a,201a,202a,203a…掘削用ロッド、20b,201b,202b,203b…連結用ロッド、21…スクリューポイント、22…支持板、23…スプロケット、25…タンク、26…コンプレッサ、27…レギュレータ、28…三方弁、29…流量調整弁、30…二方弁、35…レール、36…支持板、37…ローラ、40…モータ、41…ギアボックス、50…地盤調査検証装置、51…流入孔、55…袋体、56…逆止弁、60…流体圧供給手段、61…給気管、62…コンプレッサ、70…水位検出手段、71…電線、72…検知部、72a…導体部、73,92…発光ダイオード、80…試料採取器、81…筒体、82…雌ねじ、83…貫通孔、90…水分検出手段、91…センサ、93…電線、74,94…電源、A…支持手段、B…移動手段、C…加重手段、D…回転手段、E…制御手段、G…貫入孔、S…近接スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に対して直角に突き立てられるスクリューポイント(21,21A,21B,21C)が貫入開始される場合及び地盤に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント(21,21A,21B,21C)の降下時間が所定時間よりも速くなった場合、ロッド(20,20A,20B,20C)に係る加重を、流体圧によって相殺しロッド(20,20A,20B,20C)の自重のみに調整した後、ロッド(20,20A,20B,20C)に流体圧を徐々に加圧して前記所定重量に戻った場合、ロッド(20,20A,20B,20C)を再度低回転させつつスクリューポイント(21,21A,21B,21C)を貫入させる一方、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド(20,20A,20B,20C)に対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント(21,21A,21B,21C)の停止状態が継続される場合、最大重量が加重された状態のロッド(20,20A,20B,20C)を高回転させつつスクリューポイント(21,21A,21B,21C)を貫入させる地盤調査装置を用いて地盤を調査する地盤調査方法であって、地盤における粘土層を想定して設定した荷重、及び砂層を想定して設定した、前記荷重よりも小さい荷重をスクリューポイント(21,21A,21B,21C)にかけて、1〜2m程度離れた第1及び第2測定地点に毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させる一方、粘土層に応じて設定した荷重を、ロッド(200)の先端部に取り付けたコンクリート用ドリルビット(210)にかけて、第1及び第2測定地点からさらに1〜2m離れた第3測定地点に毎分30回転以下の回転数で回転させつつ貫入させて、第1〜第3測定地点における測定データを図表に示すようにしたことを特徴とする地盤調査方法。
【請求項2】
粘土層を想定して設定される荷重を1000N〜2500Nとして、砂層を想定して設定される荷重を300N〜1000N未満とすることを特徴とする請求項1に記載の地盤調査方法。
【請求項3】
地盤調査結果を検証する際に使用される地盤調査検証装置であって、先端部にスクリューポイント(21A)が取り付けられると共に、該先端部に土壌の水を流入させる流入孔(51)が形成される筒状のロッド(20A)と、該流入孔(51)よりも上方のロッド(20A)の外周面に、両側の開口端部が固着されると共に、流体の供給によって膨出する環状の袋体(55)と、該袋体(55)に流体を供給する流体圧供給手段(60)と、流入孔(51)からロッド(20A)の内部に流入した水を吸い上げる吸水手段と、ロッド(20A)の内部に設けられ、流入孔(51)から内部に流入する水位を検出する水位検出手段(70)と、ロッド(20A)の内部に流入する水の流入時間を検出する流入時間検出手段とを備えたことを特徴とする地盤調査検証装置。
【請求項4】
請求項3に記載の地盤調査検証装置50を用いて地盤調査結果の検証行う地盤調査結果の検証方法であって、地盤調査終了後、地盤調査の結果によって水分が多いと推測される土壌の位置に、流体の供給によって膨出する環状の袋体(55)を設けたスクリューポイント(21A)を貫入させ、該位置において、袋体(55)に流体を供給して該袋体(55)を径外方向に膨張させると共に、地盤調査時に形成された貫入孔(G)の内壁に圧接させ、ロッド(20A)の流入孔(51)からロッド(20A)内部に流入する土壌の水を吸い上げた後、流入孔(51)からロッド(20A)内部に再度流入する水の流入時間とその水位を検出するようにしたことを特徴とする地盤調査結果の検証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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