地表下地層の温度を評価する方法
地表下地層の開口部内の温度を評価する方法が、本明細書に記載される。方法は、開口部内に配置する絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の誘電特性を評価するステップと、1つまたは複数の評価済み誘電特性に基づいて、絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の温度を評価するステップとを含んでもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、炭化水素含有地層などの様々な地表下地層から、炭化水素、水素、および/またはその他の生成物を生産するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地下地層から得られる炭化水素は、しばしばエネルギー源として、原料として、および消費財として使用される。利用可能な炭化水素源の枯渇に対する懸念、および生産された炭化水素の全体的な質の低下に対する懸念は、利用可能な炭化水素源のより効率的な回収、処理、および/または使用のためのプロセスの開発につながってきた。かつてはアクセス不可能であった、および/または利用可能な方法を用いて取り出すには高額すぎた、地下地層から炭化水素材料を取り出すために、現場プロセスが使用されてもよい。地下地層中の炭化水素材料の化学的および/または物理的特性は、炭化水素材料を地下地層からより容易に取り出せるようにするため、および/または炭化水素材料の価値を高めるために、変化される必要がある場合がある。化学的および物理的変化は、取り出し可能な流体を生成する現場反応、地層中の炭化水素材料の組成変化、可溶性変化、密度変化、相変化、および/または粘度変化を含んでもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,688,387号明細書
【特許文献2】米国特許第6,991,036号明細書
【特許文献3】米国特許第6,698,515号明細書
【特許文献4】米国特許第6,880,633号明細書
【特許文献5】米国特許第6,782,947号明細書
【特許文献6】米国特許第6,991,045号明細書
【特許文献7】米国特許第7,073,578号明細書
【特許文献8】米国特許第7,121,342号明細書
【特許文献9】米国特許第7,320,364号明細書
【特許文献10】米国特許第7,527,094号明細書
【特許文献11】米国特許第7,584,789号明細書
【特許文献12】米国特許第7,533,719号明細書
【特許文献13】米国特許第7,562,707号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2009−0071652号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2009−0189617号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2010−0071903号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2010−0096137号明細書
【特許文献18】米国特許第5,579,575号明細書
【特許文献19】米国特許第5,065,501号明細書
【特許文献20】米国特許第5,512,732号明細書
【特許文献21】米国特許第4,849,611号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2008−0048668号明細書
【特許文献23】国際公開第2007/040406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的透水性の高い地層に(たとえばタールサンドに)含まれる大量の重質炭化水素堆積物(重油および/またはタール)が、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、およびアジアで発見されている。タールは露天掘りされて、原油、ナフサ、灯油、および/または軽油などのより軽質な炭化水素に改質されることが可能である。露天掘り坑内処理(surface milling)プロセスは、砂からビチューメンをさらに分離してもよい。分離されたビチューメンは、従来の精製方法を用いて、軽質炭化水素に変換されてもよい。タールサンドの採掘および改質は通常、従来の石油貯蔵層からのより軽質な炭化水素の生産よりも、実質的に高額である。通常の温度測定方法は、現場熱処理プロセスでの加熱のために地表下地層に配置された加熱器の温度プロファイルの評価での使用を実現するには、難しく、および/または高額となる場合がある。地表下地層中の加熱器の長さまたは一部に沿って複数の温度を含む温度プロファイルが望まれる。熱電対は、可能性のある一解決法である。しかしながら、熱電対は1カ所に1つの温度しか提供せず、通常は各熱電対に2つの電線が必要とされる。熱電対(または関連する電線)のうちの1つまたは複数の故障のリスクは、地表下井孔での複数の電線の使用に伴って増加する。このため、加熱器の長さに沿った温度プロファイルを獲得するために、複数の電線が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される実施形態は一般に、地表下地層を処理するためのシステム、方法、および加熱器に関する。本明細書に記載される実施形態は一般に、内部に新規な部品を有する加熱器にも関する。このような加熱器は、本明細書に記載されるシステムおよび方法を用いて獲得されることが可能である。
【0006】
特定の実施形態において、本発明は、1つもしくは複数のシステム、方法、および/または加熱器を提供する。いくつかの実施形態において、システム、方法、および/または加熱器は、地表下地層を処理するために使用される。
【0007】
いくつかの実施形態において、地表下地層の開口部内の温度を評価する方法は、開口部内に配置された絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の誘電特性を評価するステップと、1つまたは複数の評価済み誘電特性に基づいて、絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の温度を評価するステップとを含む。1つまたは複数の温度を評価するステップは、誘電特性の温度依存性データを評価済み誘電特性と比較するステップを含む。誘電特性のうちの少なくとも1つは、誘電率および/または損失正接を含む。1つまたは複数の評価済み温度は、約400℃超、または約400℃と約900℃の間の範囲内にある。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の評価済み温度は、絶縁導体の長さに沿って異なる位置に分布している。いくつかの実施形態において、評価された絶縁導体の長さは、最大で絶縁導体の上半分を含む。絶縁導体は、コア、コアを包囲する絶縁材料、および絶縁材料を包囲する外側外装を含む。いくつかの実施形態において、絶縁導体は、絶縁導体の長さに沿って変化する特性を有する絶縁材料を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、方法は、絶縁導体の少なくとも一部分に電力を供給するステップと、絶縁導体の部分から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給するステップとをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、方法は、開口部に配置された少なくとも1つの追加絶縁導体に電力を供給するステップと、追加絶縁導体から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給するステップとをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、方法は、誘電特性の温度依存性データを記憶するように構成された計算システムを用いて1つまたは複数の温度を評価するステップをさらに含む。
【0011】
さらなる実施形態において、特定の実施形態からの特徴は、別の実施形態からの特徴と組み合わせられてもよい。たとえば、1つの実施形態からの特徴は、別の実施形態のうちのいずれかからの特徴と組み合わせられてもよい。
【0012】
さらなる実施形態において、地表下地層を処理するステップは、本明細書に記載される方法、システム、または加熱器のいずれかを用いて実施される。
【0013】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される特定の実施形態に、付加的な特徴が追加されてもよい。
【0014】
本発明の利点は、以下の詳細な説明により、および添付図面を参照して、当業者にとって明らかになる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部分の実施形態の模式図である。
【図2】絶縁導体熱源の実施形態を示す図である。
【図3】絶縁導体熱源の別の実施形態を示す図である。
【図4】絶縁導体熱源の別の実施形態を示す図である。
【図5A】絶縁導体加熱器に使用される温度制限加熱器部品の実施形態の断面図である。
【図5B】絶縁導体加熱器に使用される温度制限加熱器部品の実施形態の断面図である。
【図6】導管内の3つの絶縁導体の上面図である。
【図7】複数の加熱器に結合された3相Y変圧器の実施形態を示す図である。
【図8】導管内の3つの絶縁導体の末端区間の実施形態の側面図である。
【図9】導管内に3つの絶縁コアを備える加熱器の実施形態を示す図である。
【図10】導管内に3つの絶縁導体および絶縁戻り導体を有する加熱器の実施形態を示す図である。
【図11】絶縁導体加熱器の一実施形態における、酸化マグネシウム絶縁材の誘電率対温度のグラフの例である。
【図12】絶縁導体加熱器の一実施形態における、酸化マグネシウム絶縁材の損失正接(tanδ)対温度のグラフの例である。
【図13】異なる印加電圧での絶縁導体加熱器の一実施形態における酸化マグネシウム絶縁材の漏れ電流(mA)対温度(°F)のグラフの例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、様々な修正形態および代替形態の影響を受けやすいが、その特定の実施形態は、例示によって図中に示されており、本明細書において詳細に記載される場合がある。図面は縮尺通りではないかもしれない。しかしながら、図面およびそれに関する詳細な説明は、本発明を開示される特定の形態に限定するように意図するものではなく、むしろ対照的に、添付請求項によって規定される本発明の趣旨および範囲内に含まれる全ての修正形態、均等物、および代替物を包含するように意図されることは、理解されるべきである。
【0017】
以下の記載は一般に、地層中の炭化水素を処理するためのシステムおよび方法に関する。このような地層は、炭化水素生成物、水素、およびその他の生成物を産出するために処理されてもよい。
【0018】
「交流電流(AC)」とは、実質的に正弦波的に方向を逆転させる、時間依存性電流を指す。ACは、強磁性導体において表皮効果電流を発生させる。
【0019】
「環状領域」とは、外部導管と、外部導管内に位置する内部導管との間の領域である。
【0020】
「API比重」とは、15.5℃(60°F)でのAPI比重を指す。API比重は、ASTM法D6822またはASTM法D1298によって決定される。
【0021】
「ASTM」とは、米国材料試験規格(American Standard Testing and Materials)を指す。
【0022】
低減熱出力加熱システム、装置、および方法の関連において、「自動的に」という用語は、外部制御(たとえば、温度センサおよびフィードバックループを有するコントローラ、PIDコントローラ、または予測コントローラなどの外部コントローラ)の使用を伴わない特定の方法で機能するようなシステム、装置、および方法を意味する。
【0023】
「アスファルト/ビチューメン」とは、二硫化炭素に可溶性の、半固体の粘性材料を指す。アスファルト/ビチューメンは、精製操作から得られるか、または地表下地層から生産されてもよい。
【0024】
「凝縮性炭化水素」は、25℃および1絶対気圧で凝縮する炭化水素である。凝縮性炭化水素は、4より大きい炭素数を有する炭化水素の混合物を含んでもよい。「非凝縮性炭化水素」は、25℃および1絶対気圧で凝縮しない炭化水素である。非凝縮性炭化水素は、5未満の炭素数を有する炭化水素を含んでもよい。
【0025】
「結合」は、1つまたは複数の物体または部品の間の直接接続または間接接続(たとえば、1つまたは複数の介在接続)のいずれかを意味する。「直接接続」という語句は、物体または部品が「使用場所」的に動作するように物体または部品が互いに直接的に接続されるような、物体または部品の間の直接接続を意味する。
【0026】
「キュリー温度」は、それを超えると強磁性材料がその強磁性の全てを失う温度である。キュリー温度を超えるとその強磁性の全てを失うことに加えて、強磁性材料は、増加する電流が強磁性材料を通過するときにその強磁性を失い始める。
【0027】
「ダイアド(diad)」とは、互いに結合された2つのアイテム(たとえば、加熱器、井孔、またはその他の物体)の群を指す。
【0028】
「流体」は、気体、液体、乳剤、スラリ、および/または液体流と類似の流動性を有する固体粒子のストリームであってもよいが、これらに限定されない。
【0029】
「地層」は、1つもしくは複数の炭化水素含有層、1つもしくは複数の非炭化水素層、上層土、および/または下層土を含む。「炭化水素層」とは、炭化水素を含有する地層中の層を指す。炭化水素層は、非炭化水素材料および炭化水素材料を含有してもよい。「上層土」および/または「下層土」は、1つもしくは複数の異なるタイプの不透水性材料を含む。たとえば、上層土および/または下層土は、岩、頁岩、泥岩、または湿潤/緻密炭酸塩を含んでもよい。現場熱処理プロセスのいくつかの実施形態において、上層土および/または下層土は、比較的不透水性であって、現場熱処理プロセスの間に上層土および/または下層土の炭化水素含有層の著しい特性変化を生じる温度に曝されない、(1つまたは複数の)炭化水素含有層を含んでもよい。たとえば、下層土は頁岩または泥岩を含有してもよいが、しかし下層土は、現場熱処理プロセスの間、熱分解温度まで加熱されてはならない。場合により、上層土および/または下層土は、ある程度透水性であってもよい。
【0030】
「地層流体」とは、地層中に存在する流体を指し、熱分解流体、合成ガス、流動化炭化水素、および水(蒸気)を含んでもよい。地層流体は、炭化水素流体、ならびに非炭化水素流体を含んでもよい。「流動化流体」という用語は、地層の熱処理の結果として流動可能な、炭化水素含有地層中の流体を指す。「生産流体」とは、地層から取り出された流体を指す。
【0031】
「熱源」は、実質的に伝導性および/または放射性の熱伝達によって地層の少なくとも一部に熱を供給するための、いずれかのシステムである。たとえば、熱源は、絶縁導体などの導電性材料および/または電気加熱器、長尺部材、および/または導管内に設けられた導体を含んでもよい。熱源は、地層の外部または内部の燃料を燃焼させることによって熱を発生させるシステムも含んでもよい。システムは、表面バーナ、ダウンホールガスバーナ、無炎分散燃焼器、および自然分散燃焼器であってもよい。いくつかの実施形態において、1つもしくは複数の熱源に供給されるかまたはそこで発生する熱は、その他のエネルギー源によって供給されてもよい。その他のエネルギー源は地層を直接加熱してもよく、またはエネルギーは、直接的または間接的に地層を加熱する伝達媒体に印加されてもよい。地層に熱を加える1つまたは複数の熱源が異なるエネルギー源を使用してもよいことは、理解されるべきである。このため、たとえば所与の地層について、いくつかの熱源は、導電性材料または電気抵抗加熱器から熱を供給してもよい。いくつかの熱源は燃焼から熱を供給してもよく、いくつかの熱源は1つまたは複数のその他のエネルギー源(たとえば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、またはその他の再生可能エネルギー源)から熱を供給してもよい。化学反応は、発熱反応(たとえば、酸化反応)を含んでもよい。熱源は、導電性材料、および/または加熱器井戸などの加熱箇所に近接かつ/または包囲する領域に熱を供給する加熱器も含んでもよい。
【0032】
「加熱器」は、井戸または井孔近接領域において熱を発生させるためのいずれかのシステムまたは熱源である。加熱器は、電気加熱器、バーナ、地層内のまたは地層から生産された材料と反応する燃焼器、および/あるいはそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0033】
「重質炭化水素」は、粘性炭化水素流体である。重質炭化水素は、重油、タール、および/またはアスファルトなどの、粘性の高い炭化水素流体を含んでもよい。重質炭化水素は、炭素および水素、ならびにより低濃度の硫黄、酸素、および窒素を含んでもよい。付加的な元素もまた、重質炭化水素中に微量だけ存在してもよい。重質炭化水素は、API比重によって分類されてもよい。重質炭化水素は通常、約20°未満のAPI比重を有する。たとえば重油は通常約10〜20°のAPI比重を有するのに対して、タールは通常約10°未満のAPI比重を有する。重質炭化水素の粘度は通常、15℃で約100センチポアズ超である。重質炭化水素は、芳香族またはその他の複合環炭化水素を含んでもよい。
【0034】
重質炭化水素は、比較的透水性の高い地層中に見いだされる可能性がある。比較的透水性の高い地層は、たとえば砂または炭酸塩中に同伴された重質炭化水素を含むかもしれない。「比較的透水性が高い」とは、地層またはその部分に対して、10ミリダルシー以上(たとえば10または100ミリダルシー)の平均透水性として定義される。「比較的低い透水性」は、地層またはその部分に対して、約10ミリダルシー未満の平均透水性として定義される。1ダルシーは、約0.99平方マイクロメートルに等しい。不透水性層は通常、約0.1ミリダルシー未満の透水性を有する。
【0035】
重質炭化水素を含む特定のタイプの地層は、天然鉱蝋または天然アスファルタイトも含んでもよいが、これらに限定されない。「天然鉱蝋」は通常、幅数メートル、長さ数キロメートル、および深さ数百メートルであってもよい、実質的に管状の鉱脈に発生する。「天然アスファルタイト」は、芳香族化合物の固体炭化水素を含み、通常は大型の鉱脈に発生する。天然鉱蝋および天然アスファルタイトなどの地層からの炭化水素の現場回収は、液体炭化水素を形成するための溶融、および/または地層からの炭化水素の溶解採鉱を含んでもよい。
【0036】
「炭化水素」は通常、主に炭素および水素原子によって形成される分子として定義される。炭化水素は、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、および/または硫黄などの、ただしこれらに限定されない、その他の元素も含んでもよい。炭化水素は、油母、ビチューメン、焦性ビチューメン、油、天然鉱蝋、およびアスファルタイトであってもよいが、これらに限定されない。炭化水素は、地中の鉱物基質中またはこれに隣接して位置する可能性がある。基質は、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻岩、およびその他の多孔質媒体を含んでもよいが、これらに限定されない。「炭化水素流体」は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水、およびアンモニアなどの非炭化水素流体を含んでもよく、同伴してもよく、またはこれらに同伴されてもよい。
【0037】
「現場転換プロセス」とは、熱分解流体が地層中で生産されるように、地層の少なくとも一部の温度を熱分解温度よりも上昇させるために、熱源から炭化水素含有地層を加熱するプロセスを指す。
【0038】
「現場熱処理プロセス」とは、流動化流体、ビスブレーク流体、および/または熱分解流体が地層中で生産されるように、地層の少なくとも一部の温度を炭化水素含有材料の流動化流体、ビスブレーキング、および/または熱分解を生じる温度よりも上昇させるために、熱源を用いて炭化水素含有地層を加熱するプロセスを指す。
【0039】
「絶縁導体」とは、電気を通すことが可能で、全体的にまたは部分的に電気絶縁材料で覆われている、いずれかの長尺材料を指す。
【0040】
「油母」は、自然劣化によって転換された、主に炭素、水素、窒素、酸素、および硫黄を含有する、固体で不溶性の炭化水素である。石炭および油頁岩は、油母を含有する材料の典型例である。「ビチューメン」は、二硫化炭素中で実質的に可溶性の、非晶質固体または粘性炭化水素材料である。「油」は、凝縮性炭化水素の混合物を含有する流体である。
【0041】
「変調直流電流(DC)」とは、強磁性導体中で表皮効果電流を生成する、いずれかの実質的に非正弦波的時間依存性電流を指す。
【0042】
強磁性材料の「相転移温度」とは、強磁性材料の透磁率を減少させる(たとえば、フェライトからオーステナイトへの)相転移を材料が受ける、温度または温度範囲を指す。透磁率の減少は、キュリー温度における強磁性材料の磁気転移による透磁率の減少と類似している。
【0043】
「熱分解」は、熱を加えることによる化学結合の分解である。たとえば、熱分解は、熱のみによって化合物を1つまたは複数の別の物質に転換することを含んでもよい。熱は、熱分解を生成するために、地層の区間に伝達されてもよい。
【0044】
「熱分解流体」または「熱分解生成物」とは、実質的に炭化水素の熱分解の間に生産される流体を指す。熱分解反応によって生産された流体は、地層中のその他の流体と混合してもよい。混合物は、熱分解流体または熱分解生成物と考えられるであろう。本明細書において使用される際に、「熱分解領域」とは、熱分解流体を形成するために反応されるかまたは反応する、ある体積の地層(たとえば、タールサンド地層などの比較的透水性の高い地層)を指す。
【0045】
「沈下」は、表面の初期隆起に対する地層の一部の下方移動である。
【0046】
「熱の重畳」とは、熱源間の少なくとも1カ所における地層の温度が熱源によって影響を受けるように、地層の選択区間に2つ以上の熱源から熱を供給することを指す。
【0047】
「タール」は、通常15℃で約10,000センチポアズ超の粘度を有する、粘性炭化水素である。タールの比重は、通常1.000超である。タールは10°未満のAPI比重を有してもよい。
【0048】
「タールサンド地層」は、鉱物粒子構造またはその他の宿主岩石(たとえば、砂または炭酸塩)中に同伴された重質炭化水素および/またはタールの形態で炭化水素が圧倒的に存在する地層である。タールサンド地層の例は、3つともカナダのアルバータ州にある、アサバスカ地層、グロスモント地層、およびピースリバー地層、ならびにベネズエラのオリノコ地帯にあるファヤ地層などの地層を含む。
【0049】
「温度制限加熱器」とは主に、温度調節器、電力調整器、整流器、またはその他の装置などの外部制御を用いることなく特定温度を超える熱出力を調整する(たとえば熱出力を低下させる)加熱器を指す。温度制限加熱器は、AC(交流電流)または変調(たとえば「裁断」)DC(直流電流)式電気抵抗加熱器であってもよい。
【0050】
「熱伝導流体」は、標準温度および気圧(STP)(0℃および101.325kPa)で空気よりも高い熱伝導率を有する流体を含む。
【0051】
「熱伝導率」は、定常状態で、2つの表面の間の所与の温度差に対し材料の2つの表面の間を熱が流れる比率を表す、材料の特性である。
【0052】
「熱破壊」とは、地層、および/または地層中の流体の膨張、または収縮によって生じる、地層中に形成された破壊を指し、これはひいては地層、および/または地層中の流体の温度を上昇/低下させることによって、ならびに/あるいは加熱により地層中の流体の圧力を上昇/低下させることによって、生成される。
【0053】
層の「厚み」とは、層の断面の厚みを指し、ここで断面は層の面に対して垂直である。
【0054】
「時間依存性電流」とは、強磁性導体中で表皮効果電流を発生し、時間と共に変動する振幅を有する電流を指す。時間依存性電流は、交流電流(AC)および変調直流電流(DC)の両方を含む。
【0055】
「トライアド(triad)」とは、互いに結合された3つのアイテム(たとえば、加熱器、井孔、またはその他の物体)の群を指す。
【0056】
電流が加熱器に直接印加される温度制限加熱器の「ターンダウン比」は、所与電流について、キュリー温度を超える最低抵抗に対するキュリー温度未満の最高AC抵抗または変調DC抵抗の比率である。誘導加熱器のターンダウン比は、加熱器に印加される所与の電流について、キュリー温度を超える最低熱出力に対するキュリー温度未満の最高熱出力の比率である。
【0057】
「U字型井孔」とは、地層中の第1の開口部から、地層の少なくとも一部を通って、地層中の第2の開口部に抜けて延在する井孔を指す。この関連において、井孔は「U字型」と考えられるべき井孔について、「U」の「脚部」が互いに平行であるかまたは「U」の「底部」に対して直交する必要がないことを理解した上で、ほぼ「V」または「U」の形状であるだけでよい。
【0058】
「改質」とは、炭化水素の質を向上することを指す。たとえば、重質炭化水素を改質した結果として、重質炭化水素のAPI比重の増加を招いてもよい。
【0059】
「ビスブレーキング」とは、熱処理中の流体中の分子のもつれ解消、および/または熱処理中の大型分子の小型分子への分解を指し、その結果として流体の粘度が減少する。
【0060】
「粘度」とは、別途指定のない限り、40℃での動粘度を指す。粘度は、ASTM法D445によって決定されるとおりである。
【0061】
「井孔」という用語は、地層中への導管の掘削または挿入によって形成される、地層中の穴を指す。井孔は、実質的に円形の断面、または別の断面形状を有してもよい。本明細書において使用される際に、「井戸」および「開口部」という用語は、地層中の開口部を指す場合に、「井孔」という用語と同義に使用されてもよい。
【0062】
地層は、多くの異なる生成物を生産するために、様々な方法で処理されてもよい。現場熱処理プロセス中に地層を処理するために、異なる段階またはプロセスが使用されてもよい。いくつかの実施形態において、その区間から可溶性鉱物を取り出すために、地層の1つまたは複数の区間が溶解採鉱される。鉱物の溶解採鉱は、現場熱処理プロセスの前、最中、および/または後に実行されてもよい。いくつかの実施形態において、溶解採鉱されている1つまたは複数の区間の平均温度は、約120℃未満に保たれてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、地層の1つまたは複数の区間は、区間から水を取り出すために、かつ/あるいは区間からメタンおよびその他の揮発性炭化水素を取り出すために、加熱される。いくつかの実施形態において、平均温度は、水および揮発性炭化水素の除去の間、周囲温度から約220℃未満の温度まで上昇させられてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、地層の1つまたは複数の区間は、地層中の炭化水素の移動および/またはビスブレーキングを可能にする温度まで、加熱される。いくつかの実施形態において、地層の1つまたは複数の区間の平均温度は、区間中の炭化水素の流動化温度まで上昇させられる(たとえば、100℃から250℃、120℃から240℃、または150℃から230℃の温度範囲まで)。
【0065】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の区間は、地層中の熱分解反応を可能にする温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、地層の1つまたは複数の区間の平均温度は、区間の炭化水素の熱分解温度まで上昇させられてもよい(たとえば、230℃から900℃、240℃から400℃、または250℃から350℃の温度範囲)。
【0066】
複数の熱源を用いて炭化水素含有地層を加熱することにより、地層中の炭化水素の温度を所望の加熱率で所望の温度まで上昇させる熱源の周囲に温度勾配を確立する可能性がある。流動化温度範囲を通じての温度上昇率および/または所望の生成物の熱分解温度範囲は、炭化水素含有地層から生産される地層流体の質および量に影響を及ぼす可能性がある。流動化温度および/または熱分解温度範囲を通じて地層の温度をゆっくりと上昇させることにより、地層から高品質、高API比重炭化水素の生産を可能にする場合がある。流動化温度および/または熱分解温度範囲を通じて地層の温度をゆっくりと上昇させることにより、地層中に存在する大量の炭化水素を炭化水素生成物として除去をすることを可能にする場合がある。
【0067】
いくつかの現場熱処理実施形態において、地層の一部分は、温度範囲を通じて、ゆっくりと温度を加熱する代わりに、所望の温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、所望の温度は300℃、325℃、または350℃である。その他の温度が所望の温度として選択されてもよい。
【0068】
熱源からの熱の重畳によって、所望の温度が地層中で比較的迅速かつ効果的に確立することが可能になる。熱源から地層中に入力されるエネルギーは、実質的に所望の温度で地層中の温度を維持するために、調節されてもよい。
【0069】
流動化および/または熱分解生成物は、生産井を通じて地層から生産されてもよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の区間の平均温度は流動化温度まで上昇させられ、炭化水素が生産井から生産される。1つまたは複数の区間の平均温度は、流動化による生産が選択値未満まで減少した後に、熱分解温度まで上昇させられてもよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の区間の平均温度は、熱分解温度に到達する前に著しい生産を伴わずに、熱分解温度まで上昇させられてもよい。熱分解生成物を含む地層流体は、生産井を通じて生産されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の区間の平均温度は、流動化および/または熱分解の後に、合成ガス生産を可能にするのに十分な温度まで上昇させられてもよい。いくつかの実施形態において、炭化水素は、合成ガス生産を可能にするのに十分な温度まで到達する前に、著しい生産を伴わずに合成ガス生産を可能にするのに十分な温度まで上昇させられてもよい。たとえば、合成ガスは、約400℃から約1200℃、約500℃から約1100℃、または約550℃から約1000℃の温度範囲内で、生産されてもよい。流体(たとえば、蒸気および/または水)を生成する合成ガスは、合成ガスを生成するために区間内に導入されてもよい。合成ガスは、生産井から生産されてもよい。
【0071】
溶解採鉱、揮発性炭化水素および水の除去、炭化水素の流動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの生成、および/またはその他のプロセスは、現場熱処理プロセスの間に実行されてもよい。いくつかの実施形態において、現場熱処理プロセスの後に、何らかのプロセスが実施されてもよい。このようなプロセスは、処理済み区間から熱を回収するステップ、先に処理済みの区間に流体(たとえば、水および/または炭化水素)を保存するステップ、および/または先に処理済みの区間に二酸化炭素を封鎖するステップを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0072】
図1は、炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部分の実施形態の模式図を示す。現場熱処理システムは、障壁井戸100を含んでもよい。障壁井戸100は、処理領域の周りに障壁を形成するために使用される。障壁は、流体が処理領域の内部におよび/または外部に流れるのを抑制する。障壁井戸は、脱水井戸、真空井戸、捕獲井戸、注入井戸、グラウト井戸、凍結井戸、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、障壁井戸100は脱水井戸である。脱水井戸は、液状水を除去してもよく、かつ/あるいは加熱されるべき地層の一部分に、または加熱されている地層に液状水が侵入するのを抑制してもよい。図示されるように、障壁井戸100は、熱源102の片側のみに沿って延在するが、しかし障壁井戸は通常、地層の処理領域を加熱するために、使用されている、または使用されるべき全ての熱源102を取り囲む。
【0073】
熱源102は、地層の少なくとも一部分に配置される。熱源102は、絶縁導体、導管内導体加熱器、表面バーナ、無炎分散燃焼器、および/または自然分散燃焼器などの加熱器を含んでもよい。熱源102はまた、その他のタイプの加熱器も含んでもよい。熱源102は、地層中の炭化水素を加熱するために、地層の少なくとも一部に熱を供給する。エネルギーは、供給ライン104を通じて熱源102に供給されてもよい。供給ライン104は、地層を加熱するために使用される(1つまたは複数の)熱源のタイプに応じて、構造的に異なってもよい。熱源用の供給ライン104は、電気加熱器用の電気を送電してもよく、燃焼器用の燃料を搬送してもよく、あるいは地層中で循環される熱交換流体を搬送してもよい。いくつかの実施形態において、現場熱処理プロセス用の電気は、(1つまたは複数の)原子力発電所によって供給されてもよい。原子力の使用は、現場熱処理プロセスからの二酸化炭素排出量の削減または排除を可能にする場合がある。
【0074】
地層が加熱されると、地層に入力された熱は、地層の膨張および地質工学的運動を引き起こす可能性がある。熱源は、脱水プロセスの前、同時、または最中に、起動されてもよい。コンピュータシミュレーションは、加熱に対する地層反応をモデリングする可能性がある。コンピュータシミュレーションは、地層の地質工学的運動が、熱源、生産井、および地層中のその他の設備の機能に悪影響を及ぼさないように、地層中の熱源を起動するためのパターンおよび時間系列を展開するために使用されてもよい。
【0075】
地層の加熱は、地層の透水性および/または多孔性の増加を引き起こすかもしれない。透水性および/または多孔性の増加は、水の蒸発および除去、炭化水素の除去、および/または破壊の生成による地層中の質量の減少に起因するかもしれない。流体は、地層の透水性および/または多孔性が増加したため、地層の加熱部分をより容易に流れるかもしれない。地層の加熱部分の流体は、透水性および/または多孔性が増加したため、地層を通じて相当な距離を移動するかもしれない。相当な距離とは、地層の透水性、流体の特性、地層の温度、および流体の運動を可能にする圧力勾配などの、様々な要因に依存して、1000mを超えてもよい。地層中の相当な距離を移動する流体の能力により、地層中で生産井106を比較的遠く離間させることが可能になる。
【0076】
生産井106は、地層から地層流体を取り出すために使用される。いくつかの実施形態において、生産井106は熱源を含む。生産井の熱源は、生産井のまたはその付近の地層の1つまたは複数の部分を加熱してもよい。いくつかの現場熱処理プロセス実施形態において生産井から地層に供給される生産井1メートルあたりの熱量は、熱源1メートルあたりの地層を加熱する熱源から地層に加えられる熱量よりも少ない。生産井から地層に加えられる熱は、生産井に隣接する液相流体を蒸発および除去することによって、ならびに/あるいは巨視的および/または微小破壊の形成により生産井に隣接する地層の透水性を増加させることによって、生産井に隣接する地層の透水性を増加させてもよい。
【0077】
2つ以上の熱源が生産井に配置されてもよい。生産井の下部の熱源は、隣接する熱源からの熱の重畳が、生産井を用いて地層を加熱することによって提供される恩恵に対抗するのに十分なほど地層を加熱するときに、停止されてもよい。いくつかの実施形態において、生産井の上部の熱源は、生産井の下部の熱源が停止された後も、起動したままであってもよい。井戸の上部の熱源は、地層流体の凝縮および還流を抑制してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、生産井106の熱源は、地層からの地層流体の気相除去を可能にする。生産井での、またはこれを通じての加熱を提供することは、(1)このような生産流体が上層土に近接する生産井の中で移動するときに、生産流体の凝縮および/または還流を抑制し、(2)地層への熱入力を増加し、(3)熱源を備えない生産井と比較して、生産井からの生産率を増加し、(4)生産井内の高炭素数化合物(C6炭化水素以上)の凝縮を抑制し、および/または(5)生産井またはその付近での地層透水性を増加する可能性がある。
【0079】
地層中の地表下圧力は、地層中で発生する流体圧力に対応する可能性がある。地層の加熱部分の温度が上昇するにつれて、現場流体の熱膨張、流体生成の増加、および水の蒸発の結果として、加熱部分の圧力が上昇する可能性がある。地層からの流体除去の速度を制御することで、地層中の圧力の制御を可能にしてもよい。地層中の圧力は、生産井でまたはその付近で、熱源の付近またはそこで、および監視井戸の付近またはそこでなど、多数の異なる位置において判断されてもよい。
【0080】
いくつかの炭化水素含有地層において、地層からの炭化水素の生産は、地層中の少なくともある程度の炭化水素が流動化および/または熱分解されてしまうまで、抑制される。地層流体は、地層流体が選ばれた品質であるときに、地層から生産されてもよい。いくつかの実施形態において、選ばれた品質は、少なくとも約20°、30°、または40°のAPI比重を含む。少なくともある程度の炭化水素が流動化および/または熱分解されてしまうまで生産を抑制することは、重質炭化水素から軽質炭化水素への転換を増加させるかもしれない。初期生産の抑制は、地層からの重質炭化水素の生産を最小化させるかもしれない。相当量の重質炭化水素の生産は、高額な設備を必要とするかもしれず、および/または生産設備の寿命を短縮するかもしれない。
【0081】
いくつかの炭化水素含有地層において、地層中の炭化水素は、実質的な透水性が地層の加熱部分で生成されてしまう前に、流動化および/または熱分解温度まで加熱されてもよい。透水性の初期の欠落は、生産井106への生成流体の搬送を抑制する可能性がある。初期加熱の間、地層中の流体圧力は、近接する熱源102を増加させる可能性がある。増加した流体圧力は、1つまたは複数の熱源102を通じて解放、監視、修正、および/または制御されてもよい。たとえば、選択された熱源102または個別の圧力解放井戸は、地層からの何らかの流体の除去を可能にする圧力逃がし弁を含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、生産井106への開放路またはその他いずれかの圧力シンクがまだ地層中に存在していなくても、流動化流体、熱分解流体、または地層中で生成されたその他の流体の膨張によって生成された圧力は、上昇可能であってもよい。流体圧力は、地盤圧力に向かって増加可能であってもよい。炭化水素含有地層中の破壊は、流体が地盤圧力に接近するときに形成してもよい。たとえば、破壊は、地層の加熱部分において熱源102から生産井106まで形成してもよい。加熱部分の破壊の生成は、その部分のある程度の圧力を解放するかもしれない。地層中の圧力は、望ましくない生産、上層土または下層土の破壊、ならびに/あるいは地層中の炭化水素のコークス化を抑制するために、選択圧力未満に維持されなければならないかもしれない。
【0083】
流動化および/または熱分解温度に到達して、地層からの生産が可能になった後、生産された地層流体の組成を修正および/または制御するために、地層流体中の非凝縮性流体と比較して凝縮性流体のパーセンテージを制御するために、ならびに/あるいは生産される地層流体のAPI比重を制御するために、地層中の圧力は変動してもよい。たとえば、圧力の減少の結果、より大きい凝縮性流体成分の生産をもたらしてもよい。凝縮性流体成分は、かなり多くのオレフィンを含有してもよい。
【0084】
いくつかの現場熱処理プロセスにおいて、地層中の圧力は、20°超のAPI比重を備える地層流体の生産を促進するのに十分な高さで維持されてもよい。地層中の上昇圧力を維持することは、現場熱処理中の地層沈下を抑制するかもしれない。上昇圧力の維持は、採集導管内の流体を処理施設まで搬送するために、表面で地層流体を圧縮する必要性を低減または解消するかもしれない。
【0085】
地層の加熱部分における上昇圧力の維持は、向上した品質および比較的低分子量の、大量の炭化水素の生産を、驚くほど可能にする場合がある。圧力は、生産された地層流体が選択された炭素数を超える最低量の化合物を有するように、維持されてもよい。選択された炭素数は、最大25、最大20、最大12、または最大8であってもよい。いくつかの高炭素数化合物は、地層中の蒸気に同伴されてもよく蒸気と共に地層から除去されてもよい。上昇圧力の維持は、蒸気中の高炭素数化合物および/または多環炭化水素化合物の同伴を抑制するかもしれない。高炭素数化合物および/または多環炭化水素化合物は、かなりの長期間にわたって地層中で液相のままであるかもしれない。かなりの長期間は、低炭素数化合物を形成するために化合物が熱分解するのに十分な時間を提供するかもしれない。
【0086】
比較的低い分子量の炭化水素の生成は、部分的に、炭化水素含有地層の一部分における水素の自己発生および反応によると考えられている。たとえば、上昇圧力の維持は、熱分解中に生成された水素を地層中で液相にさせるかもしれない。熱分解温度範囲内の温度までこの部分を加熱することは、液相熱分解流体を生成するために地層中の炭化水素を熱分解するかもしれない。生成された液相熱分解流体成分は、二重結合および/またはラジカルを含んでもよい。液相の水素(H2)は、生成された熱分解流体の二重結合を還元させ、それによって、生成された熱分解流体から長鎖化合物の重合または形成の可能性を低減するかもしれない。加えて、H2はまた、生成された熱分解流体中のラジカルを中和させるかもしれない。液相のH2は、生成された熱分解流体が互いにおよび/または地層中の別の化合物と反応するのを抑制するかもしれない。
【0087】
生産井106から生産された地層流体は、採集配管108を通じて処理施設110まで搬送されてもよい。地層流体はまた、熱源102から生産されてもよい。たとえば、流体は、熱源に隣接する地層中の圧力を制御するために、熱源102から生産されてもよい。熱源102から生産された流体は、管または配管を通じて採集配管108まで搬送されてもよく、あるいは生産流体は、管または配管を通じて処理施設110まで直接搬送されてもよい。処理施設110は、分離装置、反応装置、改質装置、燃料電池、タービン、貯蔵容器、ならびに/または生産された地層流体を処理するためのその他のシステムおよび装置を含んでもよい。処理施設は、地層から生産された炭化水素の少なくとも一部分から、輸送燃料を形成してもよい。いくつかの実施形態において、輸送燃料は、JP−8などのジェット燃料であってもよい。
【0088】
温度制限加熱器は、特定の温度で加熱器に自動温度制限特性を提供する構成であってもよく、かつ/またはそのような材料を含んでもよい。温度制限加熱器の実施例は、Wellingtonらの米国特許第6,688,387号明細書、Sumnu−Dindorukらの米国特許第6,991,036号明細書、Karanikasらの米国特許第6,698,515号明細書、Wellingtonらの米国特許第6,880,633号明細書、Rouffignacらの米国特許第6,782,947号明細書、Vinegarらの米国特許第6,991,045号明細書、Vinegarらの米国特許第7,073,578号明細書、Vinegarらの米国特許第7,121,342号明細書、Fairbanksの米国特許第7,320,364号明細書、McKinzieらの米国特許第7,527,094号明細書、Moらの米国特許第7,584,789号明細書、Hinsonらの米国特許第7,533,719号明細書、Millerの米国特許第7,562,707号明細書、Vinegarらの米国特許出願公開第2009−0071652号明細書、Burnsらの米国特許出願公開第2009−0189617号明細書、Prince−Wrightらの米国特許出願公開第2010−0071903号明細書、およびNguyenらの米国特許出願公開第2010−0096137号明細書に見いだされる場合がある。温度制限加熱器は、AC周波数(たとえば60HzAC)で、または変調DC電流で動作する寸法になっている。
【0089】
特定の実施形態において、温度制限加熱器において強磁性材料が使用される。強磁性材料は、時間依存性電流が材料に印加されたときに低減された熱量を提供するために、材料のキュリー温度および/または相転移温度範囲あるいはその付近の温度で、温度を自己制御してもよい。特定の実施形態において、強磁性材料は、ほぼキュリー温度および/または相転移温度範囲である選択温度で、温度制限加熱器の温度を自己制御する。特定の実施形態において、選択温度はキュリー温度および/または相転移温度範囲の約35℃以内、約25℃以内、約20℃以内、あるいは約10℃以内である。特定の実施形態において、強磁性材料は、様々な電気的/機械的特性を提供するために、その他の材料(たとえば、高導電性材料、高強度材料、耐腐食性材料、またはそれらの組み合わせ)と結合される。温度制限加熱器のいくつかの部分は、温度制限加熱器のその他の部分よりも低い抵抗を有してもよい(異なる幾何学的形状によって、ならびに/あるいは異なる強磁性および/または非強磁性材料を使用することによって生じる)。様々な材料および/または寸法を備える温度制限加熱器の部分を有することは、加熱器の各部分からの所望の熱出力を調整させることを可能にする。
【0090】
温度制限加熱器は、他の加熱器よりも信頼性が高いかもしれない。温度制限加熱器は、地層中のホットスポットによって破壊または故障する可能性が低いかもしれない。いくつかの実施形態において、温度制限加熱器は、地層の実質的に均一な加熱を可能にする。いくつかの実施形態において、温度制限加熱器は、加熱器の全長にわたって高めの平均熱出力で動作することによって、より効率的に地層を加熱することができる。温度制限加熱器は、加熱器のいずれかの点に沿った温度が加熱器の最大動作温度を超過するかまたは超過しそうな場合に、一般的な定ワット数加熱器の場合のように、加熱器への電力を加熱器全体まで低減する必要がないので、加熱器の全長にわたって高めの平均熱出力で動作する。加熱器のキュリー温度および/または相転移温度範囲に近づく温度制限加熱器の部分からの熱出力は、加熱器に印加される時間依存性電流の制御された調節を伴わずに、自動的に低下する。熱出力は、温度制限加熱器の部分の電気的特性(たとえば、電気抵抗)の変化のため、自動的に低下する。このため、加熱プロセスの大部分の間、温度制限加熱器によってさらに大きいパワーが供給される。
【0091】
特定の実施形態において、温度制限加熱器を含むシステムは、温度制限加熱器が時間依存性電流によって電力供給されたとき、最初に第1の熱出力を供給し、次に加熱器の電気的抵抗部分のキュリー温度および/または相転移温度範囲の付近、ちょうど、またはそれより上で、低減された熱出力(第2の熱出力)を供給する。第1の熱出力は、温度制限加熱器がそれ未満で自己制御を開始する温度での熱出力である。いくつかの実施形態において、第1の熱出力は、温度制限加熱器の強磁性材料のキュリー温度および/または相転移温度範囲未満の、約50℃、約75℃、約100℃、または約125℃の温度での熱出力である。
【0092】
温度制限加熱器は、坑口装置で供給される時間依存性電流(交流電流または変調直流電流)によって電力供給されてもよい。坑口装置は、温度制限加熱器への電力の供給に使用される、電源およびその他の部品(たとえば、変調部品、変圧器、および/またはコンデンサ)を含んでもよい。温度制限加熱器は、地層の一部分を加熱するために使用される、多くの加熱器のうちの1つであってもよい。
【0093】
特定の実施形態において、温度制限加熱器は、時間依存性電流が導体に印加されたときに表皮効果または近接効果加熱器として動作する導体を含む。表皮効果は、導体内部への電流侵入の深さを制限する。強磁性材料では、表皮効果は導体の透磁率によって支配される。強磁性材料の比透磁率は、一般的に10から1000の間である(たとえば、強磁性材料の比透磁率は、一般的に少なくとも10であり、少なくとも50、100、500、1000、またはこれを超えてもよい)。強磁性材料の温度がキュリー温度、または相転移温度範囲を超えて上昇するにつれて、かつ/または印加電流が増加するにつれて、強磁性材料の透磁率は実質的に低下し、表皮深さは急速に拡大する(たとえば、表皮深さは透磁率の逆平方根として拡大する)。透磁率の低下は、キュリー温度、相転移温度範囲の付近、ちょうど、またはそれより上で、ならびに/あるいは印加電流が増加するにつれて、導体のACまたは変調DCの抵抗の減少を招く。温度制限加熱器が実質的に定電流源によって電力供給されるとき、キュリー温度および/もしくは相転移温度範囲に接近、到達、またはそれを超える加熱器の部分は、より低い熱放散を有する可能性がある。キュリー温度および/または相転移温度範囲でもその付近でもない温度制限加熱器の区間は、より高い抵抗負荷のため加熱器に高い熱放散を許容する表皮効果加熱によって支配される可能性がある。
【0094】
キュリー温度加熱器は、はんだ付け装置、医療用途向け加熱器、およびオーブン用加熱素子(たとえば、ピザ用オーブン)において使用されてきた。これらの使用法のうちのいくつかは、Lamomeらの米国特許第5,579,575号明細書、Henschenらの米国特許第5,065,501号明細書、およびYagnikらの米国特許第5,512,732号明細書に開示されている。Whitneyらの米国特許第4,849,611号明細書は、反応部品、抵抗加熱部品、および温度反応部品を含む、複数の個別離間加熱装置を記載している。
【0095】
地層中の炭化水素を加熱するために温度制限加熱器を使用する利点は、導体が、所望の温度動作範囲内のキュリー温度および/または相転移温度範囲を有するように選択されることである。所望の動作温度範囲内での動作は、温度制限加熱器、およびその他の設備の温度を設計限界温度未満に維持しながら、地層内への実質的な熱注入を可能にする。設計限界温度は、腐食、クリープ、および/または変形等の特性が悪影響を受ける温度である。温度制限加熱器の温度制限特性は、地層中の低熱伝導率「ホットスポット」に隣接する加熱器の過熱または焼損を抑制する。いくつかの実施形態において、温度制限加熱器は、加熱器に使用される材料に応じて、熱出力を低下または制御すること、および/または25℃、37℃、100℃、250℃、500℃、700℃、800℃、900℃を超え、またはそれ以上で最大1131℃までの温度での加熱に耐えることが、可能である。
【0096】
加熱器に隣接する低熱伝導率領域に対応するために、温度制限加熱器へのエネルギー入力が制限される必要はないので、温度制限加熱器は、地層に対して定ワット数加熱器よりも多くの熱注入を可能にする。たとえば、グリーンリバー油頁岩では、最低含有量の油頁岩層と最高含有量の油頁岩層との熱伝導率に、少なくとも3倍の差がある。このような地層を加熱するとき、低伝導率層の温度によって制限される従来の加熱器よりも、温度制限加熱器を用いると、実質的により多くの熱が地層に伝達される。従来の加熱器の全長に沿った熱出力は、加熱器が低熱伝導率層で過熱して焼損しないように、低熱伝導率層に適応する必要がある。高温である低熱伝導率層に隣接する熱出力は、温度制限加熱器では低下するが、しかし温度制限加熱器の高温ではない残りの部分は、まだ高熱出力を供給する。炭化水素地層を加熱するための加熱器は一般的に長尺なので(たとえば、少なくとも10m、100m、300m、500m、1km、またはそれ以上で最大10km)、わずかな部分のみが、温度制限加熱器のキュリー温度および/または相転移温度範囲に、またはその付近にある一方で、温度制限加熱器の長さの大部分はキュリー温度および/または相転移温度範囲未満で動作していてもよい。
【0097】
温度制限加熱器の使用は、地層への熱の効率的な伝達を可能にする。効率的な熱の伝達は、所望の温度まで地層を加熱するために必要とされる時間の削減を可能にする。たとえば、グリーンリバー油頁岩では、従来の定ワット数加熱器で12mの加熱器井戸間隔を用いると、熱分解は通常、9.5年から10年の加熱を必要とする。同じ加熱器間隔で、温度制限加熱器は、設備設計限界温度未満に加熱器設備温度を維持しながら、より大きい平均熱出力を可能にする場合がある。地層中の熱分解は、定ワット数加熱器によって供給されるより低い平均熱出力よりも、温度制限加熱器によって供給されるより大きい平均熱出力を用いる方が、より早期に発生する。たとえば、グリーンリバー油頁岩では、12mの加熱器井戸間隔の温度制限加熱器を用いて、熱分解は5年後に発生する場合がある。温度制限加熱器は、加熱器井戸が互いに接近しすぎる、不正確な井戸間隔または掘削によるホットスポットに対抗する。特定の実施形態において、温度制限加熱器は、間隔が開きすぎた加熱器井戸に対して時間をかけて大量のパワー出力を可能にし、または互いに接近しすぎた加熱器井戸に対するパワー出力を制限する。温度制限加熱器はまた、これらの領域における温度損失を補償するために、上層土および下層土に隣接する領域において、より大きいパワーを供給する。
【0098】
温度制限加熱器は、有利には、多くのタイプの地層で使用されてもよい。たとえば、重質炭化水素を含有するタールサンド地層または比較的透水性の高い地層において、温度制限加熱器は、井孔でまたはその付近で、または地層内で、流体の粘度を低下させ、流体を流動化し、かつ/または流体の輻流を強化するための制御可能な低温出力を提供するために、使用されてもよい。温度制限加熱器は、地層の井孔近接領域の過熱による過剰なコークス形成を抑制するために使用されてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、温度制限加熱器の使用は、高額な温度制御回路の必要性を排除または低減する。たとえば、温度制限加熱器の使用は、ホットスポットでの過熱の可能性を監視するために、温度検層を実行する必要性および/または加熱器上で固定熱電対を使用する必要性を、排除または低減する。
【0100】
温度制限加熱器は、導管内導体加熱器に使用されてもよい。導管内導体加熱器のいくつかの実施形態において、抵抗性熱の大部分は導体中で生成され、熱は放射的に、伝導的に、および/または対流的に、導管に伝達する。導管内導体加熱器のいくつかの実施形態において、抵抗性熱の大部分は、導管内で生成される。
【0101】
いくつかの実施形態において、温度制限加熱器の電気抵抗性熱出力の大部分を強磁性導体のキュリー温度および/または相転移温度範囲の、またはその付近の温度までの温度で供給するために、比較的薄い導電層が使用される。このような温度制限加熱器は、絶縁導体加熱器の加熱部材として使用されてもよい。絶縁導体加熱器の加熱部材は、外装と加熱部材との間に絶縁層を備えて、外装の内部に配置されてもよい。
【0102】
絶縁導体は、加熱器または熱源の電気加熱器要素として使用されてもよい。絶縁導体は、電気絶縁体によって包囲された内側導電体(コア)および外側導電体(ジャケット)を含んでもよい。電気絶縁体は、鉱物絶縁材(たとえば、酸化マグネシウム)またはその他の電気絶縁材を含んでもよい。
【0103】
特定の実施形態において、絶縁導体は、炭化水素含有地層の開口部に配置される。いくつかの実施形態において、絶縁導体は、炭化水素含有地層の未被覆開口部内に配置される。炭化水素含有地層の未被覆開口部に絶縁導体を配置することは、放射ならびに伝導による、絶縁導体から地層への熱伝達を可能にする場合がある。未被覆開口部を使用することにより、必要であれば、井戸からの絶縁導体の回収を容易にする可能性がある。
【0104】
いくつかの実施形態において、絶縁導体は、地層中のケーシング内に配置され、地層内に固定されてもよく、あるいは砂、砂利、またはその他の充填材料を用いて開口部内に詰め込まれてもよい。絶縁導体は、開口部内に配置された支持部材上に支持されてもよい。支持部材は、ケーブル、ロッド、または導管(たとえばパイプ)であってもよい。支持部材は、金属、セラミック、無機材料、またはそれらの組み合わせで作られてもよい。支持部材の部分は使用中に地層流体および熱に曝される可能性があるので、支持部材は化学的に耐性があり、かつ/または熱的に耐性があってもよい。
【0105】
タイ、スポット溶接点、および/またはその他のタイプのコネクタが、絶縁導体の長さに沿った様々な位置において絶縁導体を支持部材に結合するために使用されてもよい。支持部材は、地層の上面において坑口装置に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、絶縁導体は、支持部材が必要とされないように、十分な構造強度を有している。絶縁導体は、多くの場合に、温度変化を受けるときに熱膨張損傷を抑制するために、少なくともある程度の可撓性を有してもよい。
【0106】
特定の実施形態において、絶縁導体は、支持部材および/またはセントラライザを用いずに井孔内に配置される。支持部材および/またはセントラライザを備えない絶縁導体は、温度耐性および腐食耐性、クリープ強度、長さ、厚み(直径)、ならびに使用中に絶縁導体の故障を抑制する冶金技術の、適切な組み合わせを有してもよい。
【0107】
図2は、絶縁導体112の一実施形態の末端部分の斜視図を示す。絶縁導体112は、円形(図2に示される)、三角形、楕円形、矩形、六角形、または不規則形状などの、ただしこれらに限定されない、所望の断面形状を有してもよい。特定の実施形態において、絶縁導体112は、コア114、電気絶縁体116、およびジャケット118を含む。コア114は、電流がコアを通過するときに、抵抗的に熱くなるようにしてもよい。交流または時間依存性電流および/あるいは直流電流は、コアが抵抗的に熱くなるように、コア114に電力を供給するために使用されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、電気絶縁体116は、ジャケット118への電流漏れおよびアーク放電を抑制する。電気絶縁体116は、コア114で発生した熱をジャケット118まで熱伝導してもよい。ジャケット118は、地層に熱を放射または伝導する可能性がある。特定の実施形態において、絶縁導体112は1000m以上の長さである。特定用途の要求を満たすために、より長いまたは短い絶縁導体もまた使用されてよい。絶縁導体112のコア114、電気絶縁体116、およびジャケット118の寸法は、絶縁導体が、使用温度上限であっても自立するのに十分な強度を有するように選択されてもよい。このような絶縁導体は、支持部材が絶縁導体と共に炭化水素含有地層内に延在することを必要とせずに、上層土と炭化水素含有地層との間の界面付近に配置された坑口装置または支持体から吊り下げられてもよい。
【0109】
絶縁導体112は、約1650ワット/メートル以上までの電力レベルで動作するように設計されてもよい。特定の実施形態において、絶縁導体112は、地層を加熱するときに、約500ワット/メートルから約1150ワット/メートルの間の電力レベルで動作する。絶縁導体112は、一般的な動作温度での最大電圧レベルが電気絶縁体116の実質的な熱的および/または電気的破壊を生じさせないように、設計されてもよい。絶縁導体112は、ジャケット118が、ジャケット材料の耐腐食性の著しい低下を招くことになる温度を超過しないように、設計されてもよい。特定の実施形態において、絶縁導体112は、約650℃から約900℃の間の範囲内の温度に到達するように設計されてもよい。その他の動作範囲を有する絶縁導体が、特定の動作要件を満たすように形成されてもよい。
【0110】
図2に示されるように、絶縁導体112は単一のコア114を有している。いくつかの実施形態において、絶縁導体112は2つ以上のコア114を有する。たとえば、単一の絶縁導体は、3つのコアを有してもよい。コア114は、金属またはその他の導電性材料で作られてもよい。コア114を形成するために使用される材料は、ニクロム、銅、ニッケル、炭素鋼、ステンレス鋼、およびそれらの組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。特定の実施形態において、コア114は、オームの法則にしたがって、その抵抗が、1メートルあたりの選択された電力損失、加熱器の長さ、および/またはコア材料に許容される最大電圧について電気的および構造的に安定化させるように、直径および動作温度における抵抗を有するように選択される。
【0111】
いくつかの実施形態において、コア114は、絶縁導体112の長さに沿って異なる材料で作られている。たとえば、コア114の第1の区間は、コアの第2の区間よりも著しく低い抵抗を有する材料で作られてもよい。第1の区間は、第2の区間に隣接する第2の地層階層と同じ温度まで加熱される必要のない地層階層に隣接して、配置されてもよい。コア114の様々な区間の抵抗は、可変直径を有することによって、および/または異なる材料で作られたコア区間を有することによって、調節されてもよい。
【0112】
電気絶縁体116は、様々な材料で作られてもよい。通常使用される粉末は、酸化マグ値シム(MgO)、三酸化アルミナ(Al2O3)、ジルコニア、酸化ベリリウム(BeO)、スピネルの異なる化学変異物質、およびそれらの組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。酸化マグネシウムは、良好な熱伝導率および電気絶縁特性を提供する可能性がある。望ましい電気絶縁特性は、低漏れ電流および高絶縁耐力を含む。低漏れ電流は熱的破壊の可能性を減少し、高絶縁耐力は絶縁体にわたるアーク放電の可能性を減少する。熱的破壊は、漏れ電流が絶縁体の温度の漸進的な上昇を引き起こす場合に発生し、やはり絶縁体にかかるアーク放電を引き起こす。
【0113】
ジャケット118は、外側金属層または導電層であってもよい。ジャケット118は、高温の地層流体と接触していてもよい。ジャケット118は、高い温度で腐食に対して高い耐性を有する材料で作られてもよい。ジャケット118の所望の動作温度範囲で使用されてもよい合金は、304ステンレス鋼、310ステンレス鋼、Incoloy(R)800、およびInconel(R)600(米国ウェストバージニア州ハンティントン、Inco Alloys International)を含むが、これらに限定されない。ジャケット118の厚みは、高温および腐食性の環境で3年から10年持ちこたえるのに十分でなければならない場合がある。ジャケット118の厚みは一般的に、約1mmから約2.5mmの間で異なってもよい。たとえば、3年を超える期間にわたって地層の加熱領域の硫化腐食に対する良好な耐化学性を提供するために、1.3mm厚の310ステンレス鋼外層がジャケット118として使用されてもよい。特定用途要件を満たすために、より厚いまたはより薄いジャケット厚が使用されてもよい。
【0114】
(1つまたは複数の)熱源を形成するために、1つまたは複数の絶縁導体が地層の開口部内に配置されてもよい。地層を加熱するために、開口部の各絶縁導体に電流が流されてもよい。あるいは、電流は、開口部の選択された絶縁導体に流されてもよい。バックアップ用加熱器として、未使用の導体が使用されてもよい。絶縁導体は、いずれかの便利な方法で、電源と電気的に結合されてもよい。絶縁導体の各末端は、坑口装置を通る引き込みケーブルに結合されてもよい。このような構成は通常、熱源の底部付近に位置する180°カーブ(「ヘアピン」カーブ)またはターンを有する。180°カーブまたはターンを含む絶縁導体は底部終端を必要としないかもしれないが、しかし180°カーブまたはターンは、加熱器における電気的および/または構造的弱点であるかもしれない。絶縁導体は、直列に、並列に、または直列および並列の組み合わせで、互いに電気的に結合されてもよい。熱源のいくつかの実施形態において、電流は、絶縁導体の導体に流入してもよく、熱源の底部においてコア114をジャケット118に接続することによって(図2に示される)、絶縁導体のジャケットを通じて戻ってきてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、3つの絶縁体112は、3相Y構成で電源に電気的に結合されている。図3は、Y構成で結合された、地表下地層の開口部にある3つの絶縁導体の一実施形態を示している。図4は、地層の開口部120から取り外し可能な3つの絶縁導体112の一実施形態を示している。Y構成の3つの絶縁導体にとって、底部接続は必要とされないであろう。あるいは、Y構成の3つ全ての絶縁導体が、開口部の底部付近で互いに接続されてもよい。接続は、絶縁導体の底部において、絶縁導体の加熱区間の末端で直接、または加熱区間と結合されたコールドピンの末端(抵抗の低い区間)で、なされてもよい。底部接続は、絶縁体が充填および封止された缶を用いて、またはエポキシ樹脂が充填された缶を用いてなされてもよい。絶縁体は、電気絶縁材として使用される絶縁体と同じ組成であってもよい。
【0116】
図3および図4に示される3つの絶縁導体112は、セントラライザ124を用いて支持部材122に結合されてもよい。あるいは、絶縁導体112は、金属ストラップを用いて支持部材122に直接固定されてもよい。セントラライザ124は、支持部材122上の絶縁導体の位置を維持してもよく、および/または動きを抑制してもよい。セントラライザ124は、金属、セラミック、またはそれらの組み合わせで作られてもよい。金属は、ステンレス鋼、または腐食性および高温環境に耐えることが可能なその他のタイプの金属であってもよい。いくつかの実施形態において、セントラライザ124は、約6m未満の距離で支持部材に溶接された、湾曲金属ストリップである。セントラライザ124に使用されるセラミックは、Al2O3、MgO、またはその他の電気絶縁体であってもよいが、これらに限定されない。セントラライザ124は、絶縁導体の動作温度で絶縁導体の動きが抑制されるように、支持部材122上の絶縁導体112の位置を維持してもよい。絶縁導体112はまた、加熱中に支持部材122の膨張に耐えられるように、ある程度可撓性であってもよい。
【0117】
支持部材122、絶縁導体112、およびセントラライザ124は、炭化水素層126の開口部内に配置されてもよい。絶縁導体112は、コールドピン130を用いて底部導体接合部128に結合されてもよい。底部導体接合部128は、各絶縁導体112を互いに電気的に結合させてもよい。底部導体接合部128は、導電性があり、開口部120内で見いだされる温度で溶融しない材料を含んでもよい。コールドピン130は、絶縁導体112よりも低い電気抵抗を有する絶縁導体であってもよい。
【0118】
引き込み導体132は、絶縁導体112に電力を供給するために、坑口装置134に結合されてもよい。引き込み導体132は、引き込み導体を流れる電流から比較的少ない熱が発生するように、比較的低い電気抵抗の導体で作られてもよい。いくつかの実施形態において、引き込み導体は、ゴムまたはポリマーで絶縁された撚り銅線である。いくつかの実施形態において、引き込み導体は、銅製コアを備える鉱物絶縁導体である。引き込み導体132は、上層土138と表面136との間に位置する封止フランジを通じて、表面136で坑口装置134と結合してもよい。封止フランジは、流体が開口部120から表面136に漏れ出すのを抑制してもよい。
【0119】
特定の実施形態において、引き込み導体132は、つなぎ(transition)導体140を用いて絶縁導体112に結合される。つなぎ導体140は、絶縁導体112の低抵抗部分であってもよい。つなぎ導体140は、絶縁導体112の「コールドピン」と称されてもよい。つなぎ導体140は、絶縁導体112の主要な加熱区間の単位長さにおいて消費されるのと比較して、単位長さあたり約10分の1から約5分の1の電力を消費するように設計されてもよい。つなぎ導体140は、通常約1.5mから約15mの間であってもよいが、ただし特定用途の要求を満たすように、これより短いまたは長い長さが使用されてもよい。一実施形態において、つなぎ導体140の導体は銅である。つなぎ導体140の電気絶縁体は、主要な加熱区間で使用されるのと同じタイプの電気絶縁体であってもよい。つなぎ導体140のジャケットは、耐腐食性材料で作られてもよい。
【0120】
特定の実施形態において、つなぎ導体140は、スプライスまたはその他の結合継ぎ手によって、引き込み導体132に結合される。スプライスは、つなぎ導体140を絶縁導体112に結合させるためにも使用されてよい。スプライスは、標的領域動作温度の半分に等しい温度に耐えられなければならない場合がある。スプライスの電気絶縁材の密度は、多くの場合に、要求温度および動作電圧に耐えられるほど十分に高くなければならない。
【0121】
いくつかの実施形態において、図3に示されるように、上層土ケーシング144と開口部120との間に充填材料142が配置される。いくつかの実施形態において、補強材料146が上層土ケーシング144を上層土138に固定してもよい。充填材料142は、流体が開口部120から表面136に流れるのを抑制してもよい。補強材料146は、たとえば、改善された高温性能のためにシリカ粉末と混合されたクラスGまたはクラスHのポートランドセメント、スラグまたはシリカ粉末、および/またはそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、補強材料146は、約5cmから約25cmの幅を半径方向に延在させる。
【0122】
図3および図4に示されるように、支持部材122および引き込み導体132は、地層の表面136で坑口装置134に結合されてもよい。表面導体148は、補強材料146を包囲して坑口装置134と結合してもよい。表面導体の実施形態は、地層の開口部内へおよそ3メートルからおよそ515メートルの深さまで延在してもよい。あるいは、表面導体は、地層内へおよそ9mの深さまで延在してもよい。絶縁導体の電気抵抗による熱を発生させるために、電源から絶縁導体112に電流が供給されてもよい。3つの絶縁導体112から発生した熱は、炭化水素層126の少なくとも一部分を加熱するために、開口部120内に伝達してもよい。
【0123】
絶縁導体112によって生成された熱は、炭化水素含有地層の少なくとも一部分を加熱してもよい。いくつかの実施形態において、熱は、実質的に生成された熱の地層への放射によって、地層に伝達される可能性がある。一部の熱は、開口部に存在するガスによる熱の伝導または対流によって、伝達されてもよい。開口部は、図3および図4に示されるように、未被覆開口部であってもよい。未被覆開口部は、加熱器を熱的に地層にセメント固定することに関わる費用、ケーシングに関わる費用、および/または加熱器を開口部内に封入する費用を削減する。加えて、放射による熱伝達は、通常は伝導によるよりも効率的なので、加熱器は開放井孔においてより低い温度で動作してもよい。熱源の初期動作中の伝導性熱伝達は、開口部へのガスの添加によって強化されてもよい。ガスは、最大で約27バール(絶対圧)までの圧力で維持されてもよい。ガスは、二酸化炭素および/またはヘリウムを含んでもよいが、これらに限定されない。開放井孔内の絶縁導体加熱器は、有利なことに、熱膨張および収縮に適応するために、自由に膨張または収縮してもよい。絶縁導体加熱器は、有利なことに、開放井孔から取り外し可能または再配備可能であってもよい。
【0124】
特定の実施形態において、絶縁導体加熱器アセンブリは、スプールアセンブリを用いて設置および取り外しがされる。絶縁導体および支持部材の両方を同時に設置するために、2つ以上のスプールアセンブリが使用されてもよい。あるいは、支持部材は、コイル状配管ユニットを用いて設置されてもよい。加熱器は、ほどかれてもよく、支持体が井戸に挿入される際に支持体に接続されてもよい。電気加熱器および支持部材は、スプールアセンブリからほどかれてもよい。スペーサは、支持部材の長さに沿って、支持部材および加熱器に結合されてもよい。追加スプールアセンブリは、追加電気加熱器要素に使用されてもよい。
【0125】
図5Aおよび図5Bは、加熱部材として温度制限加熱器を備える絶縁導体加熱器の一実施形態の断面図を示している。絶縁導体112は、コア114、強磁性導体150、内部導体152、電気絶縁体116、およびジャケット118を含む。コア114は銅製コアである。強磁性導体150は、たとえば、鉄または鉄合金である。
【0126】
内部導体152は、強磁性導体150よりも高い導電率を有する非強磁性材料の比較的薄い導電層である。特定の実施形態において、内部導体152は銅である。内部導体152は銅合金であってもよい。銅合金は通常、純粋な銅よりも温度プロファイルに対して平坦な抵抗を有する。温度プロファイルに対して平坦な抵抗は、最大キュリー温度および/または相転移温度範囲までの温度に応じた熱出力の、より小さい変動を提供する場合がある。いくつかの実施形態において、内部導体152は、6重量%のニッケルを含む銅である(たとえば、CuNi6またはLOHM(TM))。いくつかの実施形態において、内部導体152はCuNi10Fe1Mn合金である。強磁性導体150のキュリー温度および/または相転移温度範囲未満で、強磁性導体の磁気特性は、電流の流れの大部分を内部導体152に封じ込める。このため、内部導体152は、キュリー温度および/または相転移温度範囲未満で、絶縁導体112の抵抗性熱出力の大部分を提供する。
【0127】
特定の実施形態において、内部導体152は、コア114および強磁性導体150と共に、内部導体が所望の量の熱出力および所望のターンダウン比を提供するような寸法になっている。たとえば、内部導体152は、コア114の断面積よりもおよそ2〜3倍小さい断面積を有してもよい。通常、内部導体152が銅または銅合金である場合に、所望の熱出力を提供するために、内部導体152は比較的小さい断面積を有していなければならない。銅製内部導体152の一実施形態において、コア114は0.66cmの直径を有し、強磁性導体150は0.91cmの外径を有し、内部導体152は1.03cmの外径を有し、電気絶縁体116は1.53cmの外径を有し、ジャケット118は1.79cmの外径を有する。CuNi6内部導体152の一実施形態において、コア114は0.66cmの直径を有し、強磁性導体150は0.91cmの外径を有し、内部導体152は1.12cmの外径を有し、電気絶縁体116は1.63cmの外径を有し、ジャケット118は1.88cmの外径を有する。このような絶縁導体は通常、キュリー温度および/または相転移温度範囲未満未満で熱出力の大部分を提供するために、薄い内部導体を使用しない絶縁導体よりも、小型であって安価に製造できる。
【0128】
電気絶縁体116は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、またはそれらの組み合わせであってもよい。特定の実施形態において、電気絶縁体116は、酸化マグネシウムの圧縮粉体である。いくつかの実施形態において、電気絶縁体116は、窒化ケイ素のビーズを含む。
【0129】
特定の実施形態において、より高温で銅が電気絶縁体に移動するのを抑制するために、電気絶縁体116と内部導体152との間に薄い層の材料が配置される。たとえば、薄いニッケルの層(たとえば、約0.5mmのニッケル)が、電気絶縁体116と内部導体152との間に配置されてもよい。
【0130】
ジャケット118は、347ステンレス鋼、347Hステンレス鋼、446ステンレス鋼、または825ステンレス鋼などの、ただしこれらに限定されない、耐腐食性材料で作られている。いくつかの実施形態において、ジャケット118は、強磁性導体150のキュリー温度および/または相転移温度範囲以上で、絶縁導体112にいくらかの機械的強度を提供する。特定の実施形態において、ジャケット118は、電流を通すために使用されない。
【0131】
長尺の垂直温度制限加熱器(たとえば、少なくとも300m、少なくとも500m、または少なくとも1kmの長さの加熱器)では、吊り下げ応力が、温度制限加熱器用の材料の選択において重要になってくる。材料の適切な選択がなければ、支持部材は加熱器の動作温度で温度制限加熱器の重量を支持するのに十分な機械的強度(たとえば、クリープ破断強度)を有していないかもしれない。
【0132】
特定の実施形態において、支持部材の材料は、温度制限加熱器の動作温度での最大許容可能吊り下げ応力を増加させ、こうして温度制限加熱器の最大動作温度を上昇させるために、変更される。材料の変更は支持部材の温度プロファイルに対する抵抗を変化させるので、支持部材用の材料を変更することは、キュリー温度および/または相転移温度範囲未満の温度制限加熱器の熱出力に影響を及ぼす。特定の実施形態において、温度制限加熱器が、加熱器を支持するのに十分な機械的特性を提供しながら、可能な限り所望の動作特性(たとえば、キュリー温度および/または相転移温度範囲未満の温度プロファイルに対する抵抗)を維持するように、支持部材は加熱器の長さに沿って2つ以上の材料で作られる。いくつかの実施形態において、加熱器の区間の間の温度差を補償する強度を提供するために、加熱器の区間の間でつなぎ区間が使用される。特定の実施形態において、温度制限加熱器の1つまたは複数の部分は、加熱器に所望の特性を提供するために、様々な外径および/または材料を有している。
【0133】
温度制限加熱器の特定の実施形態において、3つの温度制限加熱器が、3相Y構成で互いに結合されている。3相Y構成で3つの温度制限加熱器を結合することは、3つの個別加熱器の間で電流が分割されるので、個別加熱器の各々における電流を減少させる。各個別温度制限加熱器の電流を減少させることで、各加熱器は小さい直径を有することができる。より低い電流は、個別温度制限加熱器の各々においてより高い比透磁率を、したがってより高いターンダウン比を可能にする。加えて、個別温度制限加熱器の各々にとって戻り電流路は必要とされないかもしれない。このため、ターンダウン比は、各温度制限加熱器が自身の戻り電流路を有する場合よりも、個別温度制限加熱器の各々の方が高いままである。
【0134】
3相Y構成において、個別温度制限加熱器は、個別温度制限加熱器の外装、ジャケット、または缶を、終端(たとえば、加熱器井孔の底部における加熱器の末端)で導電性区間(熱を供給する導体)に短絡することによって一緒に結合されてもよい。いくつかの実施形態において、外装、ジャケット、缶、および/または導電性区間は、井孔内で温度制限加熱器を支持する支持部材に結合される。
【0135】
特定の実施形態において、多数の加熱器(たとえば、鉱物絶縁導体加熱器)を変圧器などの単一の電源に結合することが、有利である。多数の加熱器を単一の変圧器に結合した結果、各加熱器に個別の変圧器を使用する場合と比較して、処理領域に使用される加熱器に電力供給するために、より少ない変圧器を使用することになる可能性がある。より少ない変圧器を使用することは、表面過密を低減し、加熱器および表面部品への容易なアクセスを可能にする。より少ない変圧器を使用することは、処理領域への電力供給に関わる資本コストを削減する。いくつかの実施形態において、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも25個、少なくとも35個、または少なくとも45個の加熱器が、単一変圧器によって電力供給される。加えて、単一変圧器から(異なる加熱器井戸の)多数の加熱器に電力供給することは、単一変圧器によって電力供給される加熱器井戸の各々の間で低減された電圧および/または位相差のため、上層土損失を低減する可能性がある。単一変圧器から多数の加熱器に電力供給することは、加熱器が単一変圧器に結合されているので、加熱器の間の電流不均衡を抑制する可能性がある。
【0136】
単一変圧器を用いて多数の加熱器に電力供給するためには、変圧器は、加熱器の各々に効率的に電流を送るためにより高い電圧で電力を供給する必要がある場合がある。特定の実施形態において、加熱器は、地層中の浮遊(未接地)加熱器である。加熱器を浮遊させることで、加熱器はより高い電圧で動作することができる。いくつかの実施形態において、変圧器は、少なくとも約3kV、少なくとも約4kV、少なくとも約5kV、または少なくとも約6kVの出力を提供する。
【0137】
図6は、導管156内の3つの絶縁導体112を備える加熱器154の上面図を示している。加熱器154は、地表下地層の加熱器井戸内に配置されてもよい。導管156は、外装、ジャケット、または絶縁導体112の周りのその他の囲いであってもよい。各絶縁導体112は、コア114、電気絶縁体116、およびジャケット118を含む。絶縁導体112は、銅合金(たとえばAlloy 180などの銅−ニッケル合金)であるコア114、酸化マグネシウムである電気絶縁体116、およびIncoloy(R)825(米国Inco Alloys Internationalの登録商標)、銅、またはステンレス鋼(たとえば347Hステンレス鋼)であるジャケット118を有する、鉱物絶縁導体であってもよい。いくつかの実施形態において、ジャケット118は、ジャケットが焼き鈍し可能となるように、未加工硬化性金属を含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、コア114および/またはジャケット118は、強磁性材料を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の絶縁導体112は、温度制限加熱器である。特定の実施形態において、絶縁導体112の上層土部分は、絶縁導体の上層土部分がほとんどまたは全く熱出力を供給しないように、コア114中に高導電率材料(たとえば、純粋な銅または溶接継ぎ手でのケイ素を3%含む銅などの銅合金)を含む。特定の実施形態において、導管156は、ステンレス鋼などの非腐食性材料および/または高強度材料を含む。一実施形態において、導管156は347Hステンレス鋼である。
【0139】
絶縁導体112は、3相構成(たとえば、3相Y構成)で単一変圧器に結合されてもよい。各絶縁導体112は、単一変圧器の1つの位相に結合されてもよい。特定の実施形態において、単一変圧器はまた、地層中のその他の加熱器井戸にある複数の同一の加熱器154にも結合されてもよい(たとえば、単一変圧器は地層中の40個以上の加熱器と結合してもよい)。いくつかの実施形態において、単一変圧器は、地層中の少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも15個、または少なくとも25個の追加加熱器と結合する。
【0140】
電気絶縁体116’は、絶縁導体112を導管から電気的に絶縁するために、導管156内に配置されてもよい。特定の実施形態において。電気絶縁体116’は酸化マグネシウム(たとえば、圧縮酸化マグネシウム)である。いくつかの実施形態において、電気絶縁体116’は窒化ケイ素(たとえば、窒化ケイ素ブロック)である。電気絶縁体116’は、高い動作電圧(たとえば、3kV以上)で、導体と導管の間にアーク放電が生じないように、絶縁導体112を導管156から電気的に絶縁する。いくつかの実施形態において、導管156内の電気絶縁体116’は、少なくとも絶縁導体112の電気絶縁体116の厚みを有する。(電気絶縁体116および/または電気絶縁体116’からの)加熱器154内の絶縁体の増加した厚みは、加熱器から地層への電流漏れを抑制して、防止する可能性がある。いくつかの実施形態において、電気絶縁体116’は、絶縁導体112を導管156内に空間的に配置する。
【0141】
図7は、複数の加熱器154に結合された3相Y変圧器158の実施形態を示している。図中の簡素化のため、図7には4つの加熱器154のみが示されている。あといくつかの加熱器が変圧器158に結合されてもよいことは、理解されるべきである。図7に示されるように、各加熱器の各区間(各絶縁導体)は変圧器158の1つの位相に結合されており、電流は変圧器の中性端子または接地端子に戻される(たとえば、図6および図8に示される導体160を通じて戻される)。
【0142】
戻り導体160は、絶縁導体112の末端に電気的に結合されてもよい(図8に示される)。電流は、絶縁導体の末端から、地層の表面上の変圧器に戻る。戻り導体160は、戻り導体がほとんどまたは全く熱出力を提供しないように、純銅、ニッケル、銅合金、またはそれらの組み合わせなどの、高導電率材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、戻り導体160は、温度および/またはその他の測定に使用されるために光ファイバを管状物の内部に配置できるようにする管状物(たとえば、ステンレス鋼管状物)である。いくつかの実施形態において、戻り導体160は小さい絶縁導体(たとえば、小さい鉱物絶縁導体)である。戻り導体160は、3相Y構成で、変圧器の中性または接地脚部に結合されてもよい。したがって、絶縁導体112は、導管156および地層から電気的に絶縁される。電流を表面に戻すために戻り導体160を使用することにより、加熱器と坑口装置との結合を容易になる可能性がある。いくつかの実施形態において、電流は、図6に示されている、ジャケット118のうちの1つまたは複数を使用して戻される。1つまたは複数のジャケット118は、加熱器の末端でコア114に結合されてもよく、3相Y変圧器の中性端子に電流を戻してもよい。
【0143】
図8は、導管156内の3つの絶縁導体112の末端区間の側面図を示している。末端区間は、地層の表面から最も離れた(遠位の)加熱器の区間である。末端区間は、導管156に結合された接触器区間162を含む。いくつかの実施形態において、接触器区間162は、導管156に溶接またはろう付けされている。終端164は接触器区間162内に配置されている。終端164は、絶縁導体112および戻り導体160に電気的に結合されている。終端164は、絶縁導体112のコアを、加熱器の末端で戻り導体160に電気的に結合させる。
【0144】
特定の実施形態において、図6および図8に示されている、加熱器154は、絶縁導体のコアとして銅を使用している、上層土区間を含む。上層土区間の銅は、加熱器の加熱区間に使用されるコアと同じ直径であってもよい。上層土区間の銅は、加熱器の加熱区間に使用されるコアよりも大きい直径を有してもよい。上層土区間の銅のサイズを増加させることにより、加熱器の上層土区間における損失が減少する可能性がある。
【0145】
図6および図8に示されるような、導管156内に3つの絶縁導体112を含む加熱器は、複数のステッププロセスで作られてもよい。いくつかの実施形態において、複数のステッププロセスは、地層または処理領域の現場で実施される。いくつかの実施形態において、複数のステッププロセスは、地層から離れた遠隔製造場所で実施される。完成した加熱器はその後、処理領域まで搬送される。
【0146】
絶縁導体112は、現場または遠隔地のいずれかでの結束に先立って、事前組み立てされてもよい。絶縁導体112および戻り導体160は、スプール上に配置されてもよい。機械が、選択された速度でスプールから絶縁導体112および戻り導体160を引き出してもよい。絶縁材料の予備成形ブロックは、戻り導体160および絶縁導体112の周りに位置決めされてもよい。一実施形態において、電気絶縁体116’を形成するために、2つのブロックが戻り導体160の周りに位置決めされ、3つのブロックが絶縁導体112の周りに位置決めされる。絶縁導体および戻り導体は、管状に巻かれた導管材料の板に引き込まれるかまたは押し込まれてもよい。板の縁部は、一緒に加圧され、溶接(たとえばレーザ溶接によって)されてもよい。電気絶縁体116’、絶縁導体112の束、および戻り導体160の周りに導管156を形成した後、加熱器の部品の全てが一緒に加圧されてコンパクトでぴったり適合する形状になるように、導管は電気絶縁体160に対して圧縮されてもよい。圧縮中、電気絶縁体は、加熱器内のいずれかの空隙を流れて充填してもよい。
【0147】
いくつかの実施形態において、(電気絶縁体116’、および絶縁導体112の束、および戻り導体160の周りに導管156を含む)加熱器154は、地層の井孔内に配置されているコイル状管状物内に挿入される。コイル状管状物は、地層内の所定位置に残されても(地層の加熱中に残されても)よく、あるいは加熱器の設置後に地層から取り出されてもよい。コイル状管状物は、井孔内への加熱器154のより容易な設置を可能にする場合がある。
【0148】
いくつかの実施形態において、加熱器154の1つまたは複数の部品は変動(たとえば取り外し、移動、または交換)してもよく、その一方で加熱器の動作は実質的に同一のままである。図9は、導管156内に3つの絶縁コア114を有する加熱器154の実施形態を示している。この実施形態において、電気絶縁体116’は、導管156内のコア114および戻り導体160を包囲している。コア114は、コアを包囲する電気絶縁体およびジャケットを伴わずに、導管156内に配置されている。コア114は、各コア114が変圧器の1つの相に結合した状態で、3相Y構成で単一変圧器に結合されている。戻り導体160は、コア114の末端に電気的に結合され、コアの末端から地層の表面にある変圧器まで電流を戻す。
【0149】
図10は、導管156内に3つの絶縁導体112および絶縁戻り導体を備える加熱器154の実施形態を示している。この実施形態において、戻り導体160は、コア114、電気絶縁体116、およびジャケット118を有する絶縁導体である。戻り導体160および絶縁導体112は、電気絶縁体116’によって包囲された導管156内に配置されている。戻り導体160および絶縁導体112は、同じサイズまたは異なるサイズであってもよい。戻り導体160および絶縁導体112は、図6および図8に示された実施形態と実質的に同じように動作する。
【0150】
いくつかの実施形態において、3つの絶縁導体加熱器(たとえば、鉱物絶縁導体加熱器)が一緒に結合されて、単一のアセンブリになっている。単一アセンブリは、長尺に形成されてもよく、高電圧(たとえば、4000Vの公称電圧)で動作してもよい。特定の実施形態において、個別の絶縁導体加熱器は、外部環境からの損傷に耐えるために、耐腐食性ジャケットに囲まれている。ジャケットは、たとえば、MC/CWCMCタイプのケーブルで使用されるものと類似のシーム溶接ステンレス鋼外装であってもよい。
【0151】
いくつかの実施形態において、当技術分野で既知の従来方法によって、3つの絶縁導体加熱器がケーブル接続され、絶縁充填物が添加される。絶縁導体加熱器は、加熱器区間に隣接する地層を抵抗的に加熱して熱を供給する、1つまたは複数の加熱器区間を含んでもよい。絶縁導体は、比較的小さい熱損失で加熱器区間に電気を供給する、1つまたは複数のその他の区間を含んでもよい。個別の絶縁導体加熱器は、巻き取りリール(たとえば、コイル状配管リグ)上に配置される前に、高温繊維テープで包まれてもよい。リールアセンブリは、外側金属外装または外側保護導管の適用のため、別の機械に移動させられてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態において、充填物は、760℃以上の動作温度に耐えられる、ガラス、セラミック、またはその他の耐熱性繊維を含んでもよい。加えて、絶縁導体ケーブルは、多層のセラミック繊維織りテープ材料に包まれてもよい。外側金属外装の適用に先立ってケーブル接続された絶縁導体加熱器の周りにテープを巻き付けることによって、絶縁導体加熱器と外側外装との間に電気的分離が提供される。この電気的分離は、絶縁導体加熱器からの漏れ電流が地表下地層に流入するのを抑制し、いかなる漏れ電流も、個別の絶縁導体外装上の、および/あるいは絶縁導体に結合された引き込み導体または引き出し導体上の電源に、直接戻らせる。引き込みまたは引き出し導体は、絶縁導体が外側金属外装を有するアセンブリ内に配置されるときに、絶縁導体に結合されてもよい。
【0153】
特定の実施形態において、絶縁導体加熱器は、高温セラミック繊維織りテープ材料の代わりに、金属テープまたはその他のタイプのテープで包まれてもよい。金属テープは、絶縁導体加熱器を一緒に保持する。高温繊維ロープの間隔を空けた広ピッチのらせん状ラッピングは、絶縁導体加熱器の周りに巻き付けられてもよい。繊維ロープは、絶縁導体と外側外装との間に電気的分離を提供してもよい。繊維ロープは、組み立て中のいずれの段階において追加されてもよい。たとえば、繊維ロープは、外側外装が追加されるときに、最終組み立ての一部として追加されてもよい。繊維ロープの適用は、多層のセラミックテープの代わりに単層のロープのみで行われるので、繊維ロープの適用は、他の電気的分離法よりも簡単かもしれない。繊維ロープは、多層のセラミックテープよりも安価であるかもしれない。繊維ロープは、絶縁導体と外側外装との間の熱伝達を向上し、かつ/または絶縁導体の周りに外側外装を溶接するために使用されるいずれかの溶接プロセス(たとえば、シーム溶接)による干渉を低減する可能性がある。
【0154】
通常の温度測定方法は、現場熱処理プロセスでの加熱のために地表下地層に配置された加熱器の温度プロファイルの評価で使用するのに実行することが難しく、かつ/または高額であるかもしれない。地表下地層内の加熱器の長さまたは一部分に沿った複数の温度を含む温度プロファイルが、望ましい。熱電対は、可能性のある一解決法である。しかしながら、熱電対は1カ所に1つの温度しか提供せず、通常は各熱電対に2つの電線が必要とされる。このため、加熱器の長さに沿った温度プロファイルを獲得するために、複数対の電線が必要とされる。熱電対(または関連する電線)のうちの1つまたは複数の故障のリスクは、地表下井孔での複数の電線の使用に伴って増加する。加えて、高温用途(>300℃)に設置された熱電対は、温度測定ドリフトとして知られる現象をこうむる可能性がある。温度測定ドリフトは、エラーの主要な原因であるかもしれない。
【0155】
可能性のある別の解決法は、光ファイバケーブル温度センサシステムの使用である。光ファイバケーブルシステムは、加熱器の長さに沿った温度プロファイルを提供する。しかしながら、市販の光ファイバケーブルシステムは通常、約300℃までの動作温度範囲しか有しておらず、結果的に様々な材料が互いに接着することになる、ファイバおよび/またはファイバ被膜の軟化による、機械的損傷に弱い。このため、これらのシステムは、現場熱処理プロセスの際に地表下地層を加熱する間に直面するさらに高温の測定には適していない。いくつかの実験的光ファイバケーブルシステムは、これら高温での使用に適しているが、しかしこれらのシステムは、商用プロセス(たとえば、加熱器の広い分野)で実現するには高額すぎる可能性がある。このため、追加セットのケーブルを用いることなく、現場熱処理プロセスで使用される地表下加熱器の長さに沿って1カ所または複数カ所での温度評価を可能にする、単純で安価なシステムの需要が存在する。
【0156】
現在の手法は、絶縁材の長さに沿って絶縁材の誘電特性の測定を可能にする(絶縁材の長さに沿って分布する誘電特性の測定)。これらの手法は、絶縁材のタイプおよび測定システムの能力に基づく空間分解能(測定の間の間隔)を有する誘電特性のプロファイルを提供する。これらの手法は現在、誘電特性の評価および、絶縁不良および/または絶縁損傷を検出するために使用されている。現在の手法の例は、軸断層撮影および線共鳴分析である。あるバージョンの軸断層撮影(Mashikian Axial Tomography)は、Instrument Manufacturing Company(IMCORP)(米国コネチカット州ストーズ)よって提供される。Mashikian軸断層撮影は、Mashikianの米国特許出願公開第2008−0048668号明細書に開示されている。あるバージョンの線共鳴分析(LIRA)は、Wirescan AS(ノルウェー、ハルデン)より提供される。Wirescan ASのLIRAは、Fantoniの国際公開第2007/040406号に開示されている。
【0157】
誘電特性の評価(現在の手法またはこれらの手法の修正版を用いる)は、1つまたは複数の通電加熱器(電力供給されて熱を供給している加熱器)の温度プロファイルを評価するために、誘電特性の温度依存性に関する情報と組み合わせて使用されてもよい。誘電特性の温度依存性データは、シミュレーションおよび/または実験から見いだされてもよい。時間とともに評価されてもよい絶縁材の誘電特性の実施例は、誘電率および損失正接を含むが、これらに限定されない。図11は、絶縁導体加熱器の一実施形態における酸化マグネシウム絶縁材の誘電率対温度のグラフの一実施例を示している。図12は、絶縁導体加熱器の一実施形態における、酸化マグネシウム絶縁材の、60Hzで測定された損失正接(tanδ)対温度のグラフの一実施例を示している。
【0158】
誘電特性の温度依存挙動が特定の要因に基づいて変動する可能性があることに留意されたい。誘電特性の温度依存挙動に影響を及ぼす可能性のある要因は、絶縁材のタイプ、絶縁材の寸法、絶縁材が環境(たとえば加熱器からの熱)に曝される時間、絶縁材の組成(化学的性質)、含水率、および絶縁材の圧縮度を含むが、これらに限定されない。このため、選択された加熱器で使用されるべき絶縁材の実施形態について、誘電特性の温度依存挙動を(シミュレーションおよび/または実験のいずれかによって)測定することが、通常は必要である。
【0159】
特定の実施形態において、加熱器の長さ(たとえば加熱器の全長または加熱器の一部分)に沿って温度プロファイルを評価(判定)するために、電気絶縁材を有する加熱器内の絶縁材の1つまたは複数の誘電特性が評価(測定)され、誘電特性の温度依存性データと比較される。たとえば、絶縁導体加熱器(鉱物絶縁(MI)ケーブル加熱器など)の温度は、加熱器で使用される絶縁材の誘電特性に基づいて評価されてもよい。絶縁導体加熱器の実施例は、図5A、図5B、および図6に示されている。測定される誘電特性の温度依存性は、既知であるかあるいはミュレーションおよび/または実験から予測されるので、加熱器に沿った位置の測定誘電特性は、その位置の加熱器の温度を評価するのに使用されてもよい。(現在の手法を用いて可能なように)加熱器の長さに沿った複数の位置で誘電特性を測定する手法を用いて、加熱器の長さに沿った温度プロファイルが提供されてもよい。
【0160】
いくつかの実施形態において、図11および図12のグラフによって示されるように、誘電特性は、より高い(たとえば、図11および図12に示されるように、約900°Fを超える)温度で、温度に対してより敏感である。このため、いくつかの実施形態において、絶縁導体加熱器の一部分の温度は、約400℃(約760°F)を超える温度での誘電特性の測定によって、評価される。たとえば、その部分の温度は、約400℃、約450℃、または約500℃から約800℃、約850℃、または約900℃の範囲の温度での誘電特性の測定によって、評価されてもよい。これらの温度範囲は、市販の光ファイバケーブルシステムを用いて測定可能な温度よりも高い。しかしながら、より高い温度範囲での使用に適した光ファイバケーブルシステムは、誘電特性の測定による温度評価よりも高い空間分解能での測定を提供する。このため、いくつかの実施形態において、より高い温度範囲で動作可能な光ファイバケーブルシステムは、誘電特性の測定による温度評価を較正するために使用されてもよい。
【0161】
これらの温度範囲より低い(たとえば、約400℃未満の)温度で、誘電特性の測定による温度評価は、正確さにおいて劣るかもしれない。しかしながら、誘電特性の測定による温度評価は、加熱器の部分の妥当な予測または「平均」温度を提供する可能性がある。平均温度評価は、加熱器が約500℃未満、約450℃未満、または約400℃未満の温度で動作しているかどうかを評価するために使用されてもよい。
【0162】
誘電特性の測定による温度評価は、絶縁導体加熱器の長さまたは部分に沿った温度プロファイル(加熱器の長さまたは部分に沿って分布する温度測定値)を提供する可能性がある。温度プロファイルの測定は、選択位置のみにおいて温度測定を行う場合(熱電対を用いる温度測定など)と比較して、加熱器を監視および制御するのにより有用である。温度プロファイルを提供するために、多数の熱電対が使用されてもよい。しかしながら、多数の電線(各熱電対に1つ)が必要とされるであろう。誘電特性の測定による温度評価は温度プロファイルの測定に1つの電線のみを使用するが、これは多数の熱電対を使用するよりも単純で安価である。いくつかの実施形態において、選択位置に配置された1つまたは複数の熱電対は、誘電特性の測定による温度評価を較正するために使用される。
【0163】
特定の実施形態において、絶縁導体加熱器の絶縁材の誘電特性は、一定期間にわたって加熱器の温度および動作特性を評価するために、その期間にわたって評価(測定)される。たとえば、誘電特性は、誘電特性および温度のリアルタイムの監視を提供するために、連続的に(または実質的に連続的に)評価されてもよい。誘電特性および温度の監視は、加熱器の動作中に加熱器の状態を評価するために使用されてもよい。たとえば、加熱器の長さにわたる平均特性に対する特定位置の評価特性の比較は、加熱器のホットスポットまたは欠陥の位置に関する情報を提供するかもしれない。
【0164】
いくつかの実施形態において、絶縁材の誘電特性は、時間とともに変化する。たとえば、誘電特性は、時間に応じた絶縁材の酸素濃度の変化および/または時間に応じた絶縁材の含水量の変化のため、時間とともに変化するかもしれない。絶縁材中の酸素は、クロムまたは絶縁導体加熱器で使用されるその他の金属によって消費される可能性がある。このため、酸素濃度は、絶縁材中で時間とともに減少し、絶縁材の誘電特性に影響を及ぼす。
【0165】
時間にわたる誘電特性の変化は、実験および/またはシミュレーションデータを通じて測定および補償されてもよい。たとえば、温度評価に使用されるべき絶縁導体加熱器は、オーブンまたはその他の装置内で加熱されてもよく、誘電特性の変化は、様々な温度および/または一定温度で時間をかけて測定されることが可能である。加えて、誘電特性によって評価された温度と熱電対データとの比較によって時間にわたる誘電特性変化の評価を較正するために、熱電対が使用されてもよい。
【0166】
特定の実施形態において、誘電特性の測定による温度評価は、ワークステーションまたはコンピュータなどの計算システムを用いて実施される。計算システムは、加熱器に沿った誘電特性の測定結果(評価結果)を受信してもよく、加熱器上の1つまたは複数の位置で温度を評価するために、これらの測定誘電特性を相互に関連づけてもよい。たとえば、計算システムは、誘電特性と温度との関係に関するデータ(図11および図12に示されるデータなど)および/または時間を保存してもよく、また、測定誘電特性に基づいて加熱器上の温度を算出するために、この保存データを使用してもよい。
【0167】
特定の実施形態において、誘電特性測定による温度評価は、地表下地層に熱を供給する通電加熱器上(たとえば、抵抗加熱するために電力が供給されて、絶縁導体の部分から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給する、絶縁導体加熱器の少なくとも一部分)で実施される。通電加熱器上で温度を評価することにより、実際に地層に熱を供給している装置の絶縁材の欠陥の検出が可能になる。しかしながら、通電加熱器上で温度を評価することは、加熱器が抵抗加熱しているので、加熱器に沿った信号の減衰のため、より困難であるかもしれない。この減衰は、加熱器の長さにわたってさらに(加熱器に沿ってより地層深くまで)見ることを抑制するかもしれない。いくつかの実施形態において、加熱器の上部区間(上層土に近い方の加熱器の区間、たとえば加熱器の上半分または上3分の1)の温度は、これらの区間ではより加熱器に印加される電圧がより高く、より高い温度であり、故障またはホットスポット生成の危険性も高いので、評価にとってより重要となる可能性がある。誘電特性測定による温度評価における信号減衰は、これらの区間と表面との近接のため、これら上部区間においてそれほど重要な要因ではないかもしれない。
【0168】
いくつかの実施形態において、絶縁導体加熱器への電力は、温度評価を実施する前に遮断される。電力はその後、温度評価の後に絶縁導体加熱器に戻される。このため、絶縁導体加熱器は、温度を評価するために加熱オン/オフ周期を受ける。しかしながら、このオン/オフ周期は、熱サイクルのため、加熱器の寿命を短縮させるかもしれない。加えて、加熱器は、非通電期間の間は冷たくなり、より正確ではない温度情報(加熱器の実際の使用温度に関するあまり正確ではない情報)を提供する可能性がある。
【0169】
特定の実施形態において、誘電特性測定による温度評価は、加熱に使用されるべきではない、または加熱に向けに構成されていない絶縁導体上で実施される。このような絶縁導体は、別個の絶縁導体温度プローブであってもよい。いくつかの実施形態において、絶縁導体温度プローブは、非通電加熱器(たとえば、電力供給がされない絶縁導体加熱器)である。絶縁導体温度プローブは、開口部の温度を測定するために地表下地層の開口部内に配置されることが可能な、独立型装置であってもよい。いくつかの実施形態において、絶縁導体温度プローブは、プローブ上の一方向に送信される信号を有する、開口部内を出て戻ってくる、ループプローブである。いくつかの実施形態において、絶縁導体温度プローブは、コアに沿って送信されて絶縁導体の外装に沿って戻ってくる信号を有する、単一の吊り下げプローブである。
【0170】
特定の実施形態において、絶縁導体温度プローブは、酸化マグネシウム絶縁材によって包囲された銅製コア(ケーブルの末端へのより良い伝導性およびより良い空間分解能を提供するため)、および外側金属外装を含む。外側金属外装は、地表下開口部での使用に適したいずれの材料で作られてもよい。たとえば、外側金属外装は、ステンレス鋼外装、またはステンレス鋼の外側外装で包まれた銅の内側外装であってもよい。通常、絶縁導体温度プローブは、外側金属外装によって耐えられる温度および圧力までで動作する。
【0171】
いくつかの実施形態において、絶縁導体温度プローブは、通電加熱器に沿って温度を測定するために、開口部内の通電加熱器に隣接してまたはその付近に配置されている。絶縁導体温度プローブと通電加熱器との間には、温度差があってもよい(たとえば、約50℃と約100℃の間の温度差)。この温度差は、実験および/またはシミュレーションを通じて評価されてもよく、温度測定によって説明されてもよい。温度差はまた、通電加熱器に取り付けられた1つまたは複数の熱電対を用いて較正されてもよい。
【0172】
いくつかの実施形態において、温度評価に使用される絶縁導体(通電絶縁導体加熱器または非通電絶縁導体温度プローブのいずれか)に、1つまたは複数の熱電対が取り付けられている。取り付けられた熱電対は、誘電特性測定によって絶縁導体上で評価される温度の較正および/またはバックアップ測定に使用されてもよい。いくつかの実施形態において、較正および/またはバックアップ温度表示は、所与の印加電圧における絶縁導体のコアの抵抗変動の評価によって実現される。温度は、所与の電圧におけるコア材料の温度プロファイルに対する抵抗を知ることによって、評価されてもよい。いくつかの実施形態において、絶縁導体はループであり、地表下開口部の通電加熱器からループに誘導される電流は、抵抗測定の入力を提供する。
【0173】
特定の実施形態において、絶縁導体の絶縁材料特性は、温度に対する異なる感度を絶縁導体に提供するために、変化される。変化してもよい絶縁材料特性の実施例は、化学成分および相成分、微細構造、ならびに/または絶縁材料の混合を含むが、これらに限定されない。絶縁導体の絶縁材料特性を変化させることにより、絶縁導体が選択温度範囲に適合することが可能になる。選択温度範囲は、たとえば、絶縁導体の所望の用途に合わせて選択されてもよい。
【0174】
いくつかの実施形態において、絶縁材料特性は、絶縁導体の長さに沿って変化される(絶縁材料特性は、絶縁導体中の選択された点ごとに異なる)。絶縁導体の長さに沿った既知の位置での絶縁材料の特性を変化させることにより、誘電特性の測定が位置情報を与えること、および/または温度評価の提供に加えて絶縁導体の自己較正を提供することが可能になる。いくつかの実施形態において、絶縁導体は、その部分を反射器として機能させる絶縁材料を有する部分を含む。反射器部分は、温度評価を絶縁体の特性部分(たとえば、絶縁導体の特定の長さ)に限定するために使用されてもよい。1つまたは複数の反射器部分は、絶縁導体の長さに沿って空間マーカを提供するために使用されてもよい。
【0175】
絶縁材料特性を変化させることにより、絶縁材料の活性化エネルギーを調節する。通常、絶縁材料の活性化エネルギーを増加させることにより、絶縁材料の減衰が低減され、より良い空間分解能が提供される。活性化エネルギーを低下させることにより、通常、より良い温度感受性が提供される。活性化エネルギーは、たとえば、絶縁材料に異なる成分を添加することによって、上昇または低下させられてもよい。たとえば、酸化マグネシウム絶縁材に特定の成分を添加することにより、活性化エネルギーが低下される。活性化エネルギーを低下させるために酸化マグネシウムに添加されてもよい成分の例は、酸化チタン、酸化ニッケル、および酸化鉄を含むが、これらに限定されない。
【0176】
いくつかの実施形態において、温度は、2つ以上の絶縁導体を用いて評価される。絶縁導体の絶縁材料は、空間分解能に多様性を付与するための異なる活性化エネルギー、および地表下開口部の温度をより正確に評価するための温度感受性を有してもよい。より良い空間分解能を提供し、ホットスポットの位置またはその他の温度変動をより正確に特定するために、高活性化エネルギー絶縁導体が使用されてもよく、その一方で低活性化エネルギー絶縁導体は、これらの位置においてより正確な温度測定を提供するために使用されてもよい。
【0177】
いくつかの実施形態において、温度は、絶縁導体からの漏れ電流を評価することによって評価される。評価(測定)された絶縁導体からの漏れ電流に基づいて温度を評価するために、漏れ電流の温度依存性データが使用されてもよい。測定された漏れ電流は、地表下開口部に配置された1つもしくは複数の加熱器または絶縁導体の温度プロファイルを評価するために、漏れ電流の温度依存性に関する情報と組み合わせて使用されてもよい。漏れ電流の温度依存性データは、シミュレーションおよび/または実験から見いだされてもよい。特定の実施形態において、漏れ電流の温度依存性データもまた、加熱器に印加される電圧に依存している。
【0178】
図13は、異なる60Hz印加電圧での絶縁導体加熱器の一実施例における、酸化マグネシウム絶縁材の漏れ電流(mA)対温度(°F)のグラフの例を示している。曲線166は、4300Vの印加電圧のものである。曲線168は、3600Vの印加電圧のものである。曲線170は、2800Vの印加電圧のものである。曲線172は、2100Vの印加電圧のものである。
【0179】
図13のグラフによって示されるように、漏れ電流は、温度が高いほど(たとえば、482℃(約900°F)を超えると)温度に対して敏感である。このため、いくつかの実施形態において、絶縁導体加熱器の一部分の温度は、約500℃(約932°F)超の、あるいは約500℃から約870℃、約510℃から約810℃、または540℃から約650℃の範囲の温度での漏れ電流の測定によって、評価される。
【0180】
加熱器の長さに沿った温度プロファイルは、当技術分野において既知の手法を用いて加熱器の長さに沿って漏れ電流を測定することによって、獲得されてもよい。いくつかの実施形態において、漏れ電流の測定による温度の評価は、誘電特性測定による温度評価と組み合わせて使用される。たとえば、漏れ電流の測定による温度評価は、誘電特性の測定によって作成された温度評価を較正および/またはバックアップするために、使用されてもよい。
【0181】
本発明は、当然ながら変更されてもよい、記載された特定のシステムに限定されないことは、理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、限定されるように意図されるものではないこともまた、理解されるべきである。本明細書で使用される際に、単数形の「a」、「an」、および「the」は、その内容において別途明確に指示されない限り、複数の対象物を含む。このため、たとえば、「コア」という表現は2つ以上のコアの組み合わせを含み、「材料」という表現は複数の材料の混合物を含む。
【0182】
本発明の様々な態様のさらなる修正形態および代替実施形態は、本明細書に照らして、当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、この記載は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する一般的な方法を当業者に教示することを目的とする。本明細書に提示および記載される本発明の形態は、現時点で好適な実施形態と見なされるべきであることは、理解されたい。要素および材料は本明細書に図示および記載されているものと置き換えられてもよく、部品およびプロセスは入れ替えられてもよく、本発明の特定の特徴は独立して利用されてもよく、これらの全ては、本発明のこの記載の恩恵を有した後に当業者にとって明らかになる。以下の請求項に記載される本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更がなされてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、炭化水素含有地層などの様々な地表下地層から、炭化水素、水素、および/またはその他の生成物を生産するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
地下地層から得られる炭化水素は、しばしばエネルギー源として、原料として、および消費財として使用される。利用可能な炭化水素源の枯渇に対する懸念、および生産された炭化水素の全体的な質の低下に対する懸念は、利用可能な炭化水素源のより効率的な回収、処理、および/または使用のためのプロセスの開発につながってきた。かつてはアクセス不可能であった、および/または利用可能な方法を用いて取り出すには高額すぎた、地下地層から炭化水素材料を取り出すために、現場プロセスが使用されてもよい。地下地層中の炭化水素材料の化学的および/または物理的特性は、炭化水素材料を地下地層からより容易に取り出せるようにするため、および/または炭化水素材料の価値を高めるために、変化される必要がある場合がある。化学的および物理的変化は、取り出し可能な流体を生成する現場反応、地層中の炭化水素材料の組成変化、可溶性変化、密度変化、相変化、および/または粘度変化を含んでもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,688,387号明細書
【特許文献2】米国特許第6,991,036号明細書
【特許文献3】米国特許第6,698,515号明細書
【特許文献4】米国特許第6,880,633号明細書
【特許文献5】米国特許第6,782,947号明細書
【特許文献6】米国特許第6,991,045号明細書
【特許文献7】米国特許第7,073,578号明細書
【特許文献8】米国特許第7,121,342号明細書
【特許文献9】米国特許第7,320,364号明細書
【特許文献10】米国特許第7,527,094号明細書
【特許文献11】米国特許第7,584,789号明細書
【特許文献12】米国特許第7,533,719号明細書
【特許文献13】米国特許第7,562,707号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2009−0071652号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2009−0189617号明細書
【特許文献16】米国特許出願公開第2010−0071903号明細書
【特許文献17】米国特許出願公開第2010−0096137号明細書
【特許文献18】米国特許第5,579,575号明細書
【特許文献19】米国特許第5,065,501号明細書
【特許文献20】米国特許第5,512,732号明細書
【特許文献21】米国特許第4,849,611号明細書
【特許文献22】米国特許出願公開第2008−0048668号明細書
【特許文献23】国際公開第2007/040406号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的透水性の高い地層に(たとえばタールサンドに)含まれる大量の重質炭化水素堆積物(重油および/またはタール)が、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、およびアジアで発見されている。タールは露天掘りされて、原油、ナフサ、灯油、および/または軽油などのより軽質な炭化水素に改質されることが可能である。露天掘り坑内処理(surface milling)プロセスは、砂からビチューメンをさらに分離してもよい。分離されたビチューメンは、従来の精製方法を用いて、軽質炭化水素に変換されてもよい。タールサンドの採掘および改質は通常、従来の石油貯蔵層からのより軽質な炭化水素の生産よりも、実質的に高額である。通常の温度測定方法は、現場熱処理プロセスでの加熱のために地表下地層に配置された加熱器の温度プロファイルの評価での使用を実現するには、難しく、および/または高額となる場合がある。地表下地層中の加熱器の長さまたは一部に沿って複数の温度を含む温度プロファイルが望まれる。熱電対は、可能性のある一解決法である。しかしながら、熱電対は1カ所に1つの温度しか提供せず、通常は各熱電対に2つの電線が必要とされる。熱電対(または関連する電線)のうちの1つまたは複数の故障のリスクは、地表下井孔での複数の電線の使用に伴って増加する。このため、加熱器の長さに沿った温度プロファイルを獲得するために、複数の電線が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される実施形態は一般に、地表下地層を処理するためのシステム、方法、および加熱器に関する。本明細書に記載される実施形態は一般に、内部に新規な部品を有する加熱器にも関する。このような加熱器は、本明細書に記載されるシステムおよび方法を用いて獲得されることが可能である。
【0006】
特定の実施形態において、本発明は、1つもしくは複数のシステム、方法、および/または加熱器を提供する。いくつかの実施形態において、システム、方法、および/または加熱器は、地表下地層を処理するために使用される。
【0007】
いくつかの実施形態において、地表下地層の開口部内の温度を評価する方法は、開口部内に配置された絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の誘電特性を評価するステップと、1つまたは複数の評価済み誘電特性に基づいて、絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の温度を評価するステップとを含む。1つまたは複数の温度を評価するステップは、誘電特性の温度依存性データを評価済み誘電特性と比較するステップを含む。誘電特性のうちの少なくとも1つは、誘電率および/または損失正接を含む。1つまたは複数の評価済み温度は、約400℃超、または約400℃と約900℃の間の範囲内にある。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の評価済み温度は、絶縁導体の長さに沿って異なる位置に分布している。いくつかの実施形態において、評価された絶縁導体の長さは、最大で絶縁導体の上半分を含む。絶縁導体は、コア、コアを包囲する絶縁材料、および絶縁材料を包囲する外側外装を含む。いくつかの実施形態において、絶縁導体は、絶縁導体の長さに沿って変化する特性を有する絶縁材料を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、方法は、絶縁導体の少なくとも一部分に電力を供給するステップと、絶縁導体の部分から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給するステップとをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、方法は、開口部に配置された少なくとも1つの追加絶縁導体に電力を供給するステップと、追加絶縁導体から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給するステップとをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、方法は、誘電特性の温度依存性データを記憶するように構成された計算システムを用いて1つまたは複数の温度を評価するステップをさらに含む。
【0011】
さらなる実施形態において、特定の実施形態からの特徴は、別の実施形態からの特徴と組み合わせられてもよい。たとえば、1つの実施形態からの特徴は、別の実施形態のうちのいずれかからの特徴と組み合わせられてもよい。
【0012】
さらなる実施形態において、地表下地層を処理するステップは、本明細書に記載される方法、システム、または加熱器のいずれかを用いて実施される。
【0013】
さらなる実施形態において、本明細書に記載される特定の実施形態に、付加的な特徴が追加されてもよい。
【0014】
本発明の利点は、以下の詳細な説明により、および添付図面を参照して、当業者にとって明らかになる場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部分の実施形態の模式図である。
【図2】絶縁導体熱源の実施形態を示す図である。
【図3】絶縁導体熱源の別の実施形態を示す図である。
【図4】絶縁導体熱源の別の実施形態を示す図である。
【図5A】絶縁導体加熱器に使用される温度制限加熱器部品の実施形態の断面図である。
【図5B】絶縁導体加熱器に使用される温度制限加熱器部品の実施形態の断面図である。
【図6】導管内の3つの絶縁導体の上面図である。
【図7】複数の加熱器に結合された3相Y変圧器の実施形態を示す図である。
【図8】導管内の3つの絶縁導体の末端区間の実施形態の側面図である。
【図9】導管内に3つの絶縁コアを備える加熱器の実施形態を示す図である。
【図10】導管内に3つの絶縁導体および絶縁戻り導体を有する加熱器の実施形態を示す図である。
【図11】絶縁導体加熱器の一実施形態における、酸化マグネシウム絶縁材の誘電率対温度のグラフの例である。
【図12】絶縁導体加熱器の一実施形態における、酸化マグネシウム絶縁材の損失正接(tanδ)対温度のグラフの例である。
【図13】異なる印加電圧での絶縁導体加熱器の一実施形態における酸化マグネシウム絶縁材の漏れ電流(mA)対温度(°F)のグラフの例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、様々な修正形態および代替形態の影響を受けやすいが、その特定の実施形態は、例示によって図中に示されており、本明細書において詳細に記載される場合がある。図面は縮尺通りではないかもしれない。しかしながら、図面およびそれに関する詳細な説明は、本発明を開示される特定の形態に限定するように意図するものではなく、むしろ対照的に、添付請求項によって規定される本発明の趣旨および範囲内に含まれる全ての修正形態、均等物、および代替物を包含するように意図されることは、理解されるべきである。
【0017】
以下の記載は一般に、地層中の炭化水素を処理するためのシステムおよび方法に関する。このような地層は、炭化水素生成物、水素、およびその他の生成物を産出するために処理されてもよい。
【0018】
「交流電流(AC)」とは、実質的に正弦波的に方向を逆転させる、時間依存性電流を指す。ACは、強磁性導体において表皮効果電流を発生させる。
【0019】
「環状領域」とは、外部導管と、外部導管内に位置する内部導管との間の領域である。
【0020】
「API比重」とは、15.5℃(60°F)でのAPI比重を指す。API比重は、ASTM法D6822またはASTM法D1298によって決定される。
【0021】
「ASTM」とは、米国材料試験規格(American Standard Testing and Materials)を指す。
【0022】
低減熱出力加熱システム、装置、および方法の関連において、「自動的に」という用語は、外部制御(たとえば、温度センサおよびフィードバックループを有するコントローラ、PIDコントローラ、または予測コントローラなどの外部コントローラ)の使用を伴わない特定の方法で機能するようなシステム、装置、および方法を意味する。
【0023】
「アスファルト/ビチューメン」とは、二硫化炭素に可溶性の、半固体の粘性材料を指す。アスファルト/ビチューメンは、精製操作から得られるか、または地表下地層から生産されてもよい。
【0024】
「凝縮性炭化水素」は、25℃および1絶対気圧で凝縮する炭化水素である。凝縮性炭化水素は、4より大きい炭素数を有する炭化水素の混合物を含んでもよい。「非凝縮性炭化水素」は、25℃および1絶対気圧で凝縮しない炭化水素である。非凝縮性炭化水素は、5未満の炭素数を有する炭化水素を含んでもよい。
【0025】
「結合」は、1つまたは複数の物体または部品の間の直接接続または間接接続(たとえば、1つまたは複数の介在接続)のいずれかを意味する。「直接接続」という語句は、物体または部品が「使用場所」的に動作するように物体または部品が互いに直接的に接続されるような、物体または部品の間の直接接続を意味する。
【0026】
「キュリー温度」は、それを超えると強磁性材料がその強磁性の全てを失う温度である。キュリー温度を超えるとその強磁性の全てを失うことに加えて、強磁性材料は、増加する電流が強磁性材料を通過するときにその強磁性を失い始める。
【0027】
「ダイアド(diad)」とは、互いに結合された2つのアイテム(たとえば、加熱器、井孔、またはその他の物体)の群を指す。
【0028】
「流体」は、気体、液体、乳剤、スラリ、および/または液体流と類似の流動性を有する固体粒子のストリームであってもよいが、これらに限定されない。
【0029】
「地層」は、1つもしくは複数の炭化水素含有層、1つもしくは複数の非炭化水素層、上層土、および/または下層土を含む。「炭化水素層」とは、炭化水素を含有する地層中の層を指す。炭化水素層は、非炭化水素材料および炭化水素材料を含有してもよい。「上層土」および/または「下層土」は、1つもしくは複数の異なるタイプの不透水性材料を含む。たとえば、上層土および/または下層土は、岩、頁岩、泥岩、または湿潤/緻密炭酸塩を含んでもよい。現場熱処理プロセスのいくつかの実施形態において、上層土および/または下層土は、比較的不透水性であって、現場熱処理プロセスの間に上層土および/または下層土の炭化水素含有層の著しい特性変化を生じる温度に曝されない、(1つまたは複数の)炭化水素含有層を含んでもよい。たとえば、下層土は頁岩または泥岩を含有してもよいが、しかし下層土は、現場熱処理プロセスの間、熱分解温度まで加熱されてはならない。場合により、上層土および/または下層土は、ある程度透水性であってもよい。
【0030】
「地層流体」とは、地層中に存在する流体を指し、熱分解流体、合成ガス、流動化炭化水素、および水(蒸気)を含んでもよい。地層流体は、炭化水素流体、ならびに非炭化水素流体を含んでもよい。「流動化流体」という用語は、地層の熱処理の結果として流動可能な、炭化水素含有地層中の流体を指す。「生産流体」とは、地層から取り出された流体を指す。
【0031】
「熱源」は、実質的に伝導性および/または放射性の熱伝達によって地層の少なくとも一部に熱を供給するための、いずれかのシステムである。たとえば、熱源は、絶縁導体などの導電性材料および/または電気加熱器、長尺部材、および/または導管内に設けられた導体を含んでもよい。熱源は、地層の外部または内部の燃料を燃焼させることによって熱を発生させるシステムも含んでもよい。システムは、表面バーナ、ダウンホールガスバーナ、無炎分散燃焼器、および自然分散燃焼器であってもよい。いくつかの実施形態において、1つもしくは複数の熱源に供給されるかまたはそこで発生する熱は、その他のエネルギー源によって供給されてもよい。その他のエネルギー源は地層を直接加熱してもよく、またはエネルギーは、直接的または間接的に地層を加熱する伝達媒体に印加されてもよい。地層に熱を加える1つまたは複数の熱源が異なるエネルギー源を使用してもよいことは、理解されるべきである。このため、たとえば所与の地層について、いくつかの熱源は、導電性材料または電気抵抗加熱器から熱を供給してもよい。いくつかの熱源は燃焼から熱を供給してもよく、いくつかの熱源は1つまたは複数のその他のエネルギー源(たとえば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、またはその他の再生可能エネルギー源)から熱を供給してもよい。化学反応は、発熱反応(たとえば、酸化反応)を含んでもよい。熱源は、導電性材料、および/または加熱器井戸などの加熱箇所に近接かつ/または包囲する領域に熱を供給する加熱器も含んでもよい。
【0032】
「加熱器」は、井戸または井孔近接領域において熱を発生させるためのいずれかのシステムまたは熱源である。加熱器は、電気加熱器、バーナ、地層内のまたは地層から生産された材料と反応する燃焼器、および/あるいはそれらの組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0033】
「重質炭化水素」は、粘性炭化水素流体である。重質炭化水素は、重油、タール、および/またはアスファルトなどの、粘性の高い炭化水素流体を含んでもよい。重質炭化水素は、炭素および水素、ならびにより低濃度の硫黄、酸素、および窒素を含んでもよい。付加的な元素もまた、重質炭化水素中に微量だけ存在してもよい。重質炭化水素は、API比重によって分類されてもよい。重質炭化水素は通常、約20°未満のAPI比重を有する。たとえば重油は通常約10〜20°のAPI比重を有するのに対して、タールは通常約10°未満のAPI比重を有する。重質炭化水素の粘度は通常、15℃で約100センチポアズ超である。重質炭化水素は、芳香族またはその他の複合環炭化水素を含んでもよい。
【0034】
重質炭化水素は、比較的透水性の高い地層中に見いだされる可能性がある。比較的透水性の高い地層は、たとえば砂または炭酸塩中に同伴された重質炭化水素を含むかもしれない。「比較的透水性が高い」とは、地層またはその部分に対して、10ミリダルシー以上(たとえば10または100ミリダルシー)の平均透水性として定義される。「比較的低い透水性」は、地層またはその部分に対して、約10ミリダルシー未満の平均透水性として定義される。1ダルシーは、約0.99平方マイクロメートルに等しい。不透水性層は通常、約0.1ミリダルシー未満の透水性を有する。
【0035】
重質炭化水素を含む特定のタイプの地層は、天然鉱蝋または天然アスファルタイトも含んでもよいが、これらに限定されない。「天然鉱蝋」は通常、幅数メートル、長さ数キロメートル、および深さ数百メートルであってもよい、実質的に管状の鉱脈に発生する。「天然アスファルタイト」は、芳香族化合物の固体炭化水素を含み、通常は大型の鉱脈に発生する。天然鉱蝋および天然アスファルタイトなどの地層からの炭化水素の現場回収は、液体炭化水素を形成するための溶融、および/または地層からの炭化水素の溶解採鉱を含んでもよい。
【0036】
「炭化水素」は通常、主に炭素および水素原子によって形成される分子として定義される。炭化水素は、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、および/または硫黄などの、ただしこれらに限定されない、その他の元素も含んでもよい。炭化水素は、油母、ビチューメン、焦性ビチューメン、油、天然鉱蝋、およびアスファルタイトであってもよいが、これらに限定されない。炭化水素は、地中の鉱物基質中またはこれに隣接して位置する可能性がある。基質は、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻岩、およびその他の多孔質媒体を含んでもよいが、これらに限定されない。「炭化水素流体」は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水、およびアンモニアなどの非炭化水素流体を含んでもよく、同伴してもよく、またはこれらに同伴されてもよい。
【0037】
「現場転換プロセス」とは、熱分解流体が地層中で生産されるように、地層の少なくとも一部の温度を熱分解温度よりも上昇させるために、熱源から炭化水素含有地層を加熱するプロセスを指す。
【0038】
「現場熱処理プロセス」とは、流動化流体、ビスブレーク流体、および/または熱分解流体が地層中で生産されるように、地層の少なくとも一部の温度を炭化水素含有材料の流動化流体、ビスブレーキング、および/または熱分解を生じる温度よりも上昇させるために、熱源を用いて炭化水素含有地層を加熱するプロセスを指す。
【0039】
「絶縁導体」とは、電気を通すことが可能で、全体的にまたは部分的に電気絶縁材料で覆われている、いずれかの長尺材料を指す。
【0040】
「油母」は、自然劣化によって転換された、主に炭素、水素、窒素、酸素、および硫黄を含有する、固体で不溶性の炭化水素である。石炭および油頁岩は、油母を含有する材料の典型例である。「ビチューメン」は、二硫化炭素中で実質的に可溶性の、非晶質固体または粘性炭化水素材料である。「油」は、凝縮性炭化水素の混合物を含有する流体である。
【0041】
「変調直流電流(DC)」とは、強磁性導体中で表皮効果電流を生成する、いずれかの実質的に非正弦波的時間依存性電流を指す。
【0042】
強磁性材料の「相転移温度」とは、強磁性材料の透磁率を減少させる(たとえば、フェライトからオーステナイトへの)相転移を材料が受ける、温度または温度範囲を指す。透磁率の減少は、キュリー温度における強磁性材料の磁気転移による透磁率の減少と類似している。
【0043】
「熱分解」は、熱を加えることによる化学結合の分解である。たとえば、熱分解は、熱のみによって化合物を1つまたは複数の別の物質に転換することを含んでもよい。熱は、熱分解を生成するために、地層の区間に伝達されてもよい。
【0044】
「熱分解流体」または「熱分解生成物」とは、実質的に炭化水素の熱分解の間に生産される流体を指す。熱分解反応によって生産された流体は、地層中のその他の流体と混合してもよい。混合物は、熱分解流体または熱分解生成物と考えられるであろう。本明細書において使用される際に、「熱分解領域」とは、熱分解流体を形成するために反応されるかまたは反応する、ある体積の地層(たとえば、タールサンド地層などの比較的透水性の高い地層)を指す。
【0045】
「沈下」は、表面の初期隆起に対する地層の一部の下方移動である。
【0046】
「熱の重畳」とは、熱源間の少なくとも1カ所における地層の温度が熱源によって影響を受けるように、地層の選択区間に2つ以上の熱源から熱を供給することを指す。
【0047】
「タール」は、通常15℃で約10,000センチポアズ超の粘度を有する、粘性炭化水素である。タールの比重は、通常1.000超である。タールは10°未満のAPI比重を有してもよい。
【0048】
「タールサンド地層」は、鉱物粒子構造またはその他の宿主岩石(たとえば、砂または炭酸塩)中に同伴された重質炭化水素および/またはタールの形態で炭化水素が圧倒的に存在する地層である。タールサンド地層の例は、3つともカナダのアルバータ州にある、アサバスカ地層、グロスモント地層、およびピースリバー地層、ならびにベネズエラのオリノコ地帯にあるファヤ地層などの地層を含む。
【0049】
「温度制限加熱器」とは主に、温度調節器、電力調整器、整流器、またはその他の装置などの外部制御を用いることなく特定温度を超える熱出力を調整する(たとえば熱出力を低下させる)加熱器を指す。温度制限加熱器は、AC(交流電流)または変調(たとえば「裁断」)DC(直流電流)式電気抵抗加熱器であってもよい。
【0050】
「熱伝導流体」は、標準温度および気圧(STP)(0℃および101.325kPa)で空気よりも高い熱伝導率を有する流体を含む。
【0051】
「熱伝導率」は、定常状態で、2つの表面の間の所与の温度差に対し材料の2つの表面の間を熱が流れる比率を表す、材料の特性である。
【0052】
「熱破壊」とは、地層、および/または地層中の流体の膨張、または収縮によって生じる、地層中に形成された破壊を指し、これはひいては地層、および/または地層中の流体の温度を上昇/低下させることによって、ならびに/あるいは加熱により地層中の流体の圧力を上昇/低下させることによって、生成される。
【0053】
層の「厚み」とは、層の断面の厚みを指し、ここで断面は層の面に対して垂直である。
【0054】
「時間依存性電流」とは、強磁性導体中で表皮効果電流を発生し、時間と共に変動する振幅を有する電流を指す。時間依存性電流は、交流電流(AC)および変調直流電流(DC)の両方を含む。
【0055】
「トライアド(triad)」とは、互いに結合された3つのアイテム(たとえば、加熱器、井孔、またはその他の物体)の群を指す。
【0056】
電流が加熱器に直接印加される温度制限加熱器の「ターンダウン比」は、所与電流について、キュリー温度を超える最低抵抗に対するキュリー温度未満の最高AC抵抗または変調DC抵抗の比率である。誘導加熱器のターンダウン比は、加熱器に印加される所与の電流について、キュリー温度を超える最低熱出力に対するキュリー温度未満の最高熱出力の比率である。
【0057】
「U字型井孔」とは、地層中の第1の開口部から、地層の少なくとも一部を通って、地層中の第2の開口部に抜けて延在する井孔を指す。この関連において、井孔は「U字型」と考えられるべき井孔について、「U」の「脚部」が互いに平行であるかまたは「U」の「底部」に対して直交する必要がないことを理解した上で、ほぼ「V」または「U」の形状であるだけでよい。
【0058】
「改質」とは、炭化水素の質を向上することを指す。たとえば、重質炭化水素を改質した結果として、重質炭化水素のAPI比重の増加を招いてもよい。
【0059】
「ビスブレーキング」とは、熱処理中の流体中の分子のもつれ解消、および/または熱処理中の大型分子の小型分子への分解を指し、その結果として流体の粘度が減少する。
【0060】
「粘度」とは、別途指定のない限り、40℃での動粘度を指す。粘度は、ASTM法D445によって決定されるとおりである。
【0061】
「井孔」という用語は、地層中への導管の掘削または挿入によって形成される、地層中の穴を指す。井孔は、実質的に円形の断面、または別の断面形状を有してもよい。本明細書において使用される際に、「井戸」および「開口部」という用語は、地層中の開口部を指す場合に、「井孔」という用語と同義に使用されてもよい。
【0062】
地層は、多くの異なる生成物を生産するために、様々な方法で処理されてもよい。現場熱処理プロセス中に地層を処理するために、異なる段階またはプロセスが使用されてもよい。いくつかの実施形態において、その区間から可溶性鉱物を取り出すために、地層の1つまたは複数の区間が溶解採鉱される。鉱物の溶解採鉱は、現場熱処理プロセスの前、最中、および/または後に実行されてもよい。いくつかの実施形態において、溶解採鉱されている1つまたは複数の区間の平均温度は、約120℃未満に保たれてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、地層の1つまたは複数の区間は、区間から水を取り出すために、かつ/あるいは区間からメタンおよびその他の揮発性炭化水素を取り出すために、加熱される。いくつかの実施形態において、平均温度は、水および揮発性炭化水素の除去の間、周囲温度から約220℃未満の温度まで上昇させられてもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、地層の1つまたは複数の区間は、地層中の炭化水素の移動および/またはビスブレーキングを可能にする温度まで、加熱される。いくつかの実施形態において、地層の1つまたは複数の区間の平均温度は、区間中の炭化水素の流動化温度まで上昇させられる(たとえば、100℃から250℃、120℃から240℃、または150℃から230℃の温度範囲まで)。
【0065】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の区間は、地層中の熱分解反応を可能にする温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、地層の1つまたは複数の区間の平均温度は、区間の炭化水素の熱分解温度まで上昇させられてもよい(たとえば、230℃から900℃、240℃から400℃、または250℃から350℃の温度範囲)。
【0066】
複数の熱源を用いて炭化水素含有地層を加熱することにより、地層中の炭化水素の温度を所望の加熱率で所望の温度まで上昇させる熱源の周囲に温度勾配を確立する可能性がある。流動化温度範囲を通じての温度上昇率および/または所望の生成物の熱分解温度範囲は、炭化水素含有地層から生産される地層流体の質および量に影響を及ぼす可能性がある。流動化温度および/または熱分解温度範囲を通じて地層の温度をゆっくりと上昇させることにより、地層から高品質、高API比重炭化水素の生産を可能にする場合がある。流動化温度および/または熱分解温度範囲を通じて地層の温度をゆっくりと上昇させることにより、地層中に存在する大量の炭化水素を炭化水素生成物として除去をすることを可能にする場合がある。
【0067】
いくつかの現場熱処理実施形態において、地層の一部分は、温度範囲を通じて、ゆっくりと温度を加熱する代わりに、所望の温度まで加熱される。いくつかの実施形態において、所望の温度は300℃、325℃、または350℃である。その他の温度が所望の温度として選択されてもよい。
【0068】
熱源からの熱の重畳によって、所望の温度が地層中で比較的迅速かつ効果的に確立することが可能になる。熱源から地層中に入力されるエネルギーは、実質的に所望の温度で地層中の温度を維持するために、調節されてもよい。
【0069】
流動化および/または熱分解生成物は、生産井を通じて地層から生産されてもよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の区間の平均温度は流動化温度まで上昇させられ、炭化水素が生産井から生産される。1つまたは複数の区間の平均温度は、流動化による生産が選択値未満まで減少した後に、熱分解温度まで上昇させられてもよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の区間の平均温度は、熱分解温度に到達する前に著しい生産を伴わずに、熱分解温度まで上昇させられてもよい。熱分解生成物を含む地層流体は、生産井を通じて生産されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の区間の平均温度は、流動化および/または熱分解の後に、合成ガス生産を可能にするのに十分な温度まで上昇させられてもよい。いくつかの実施形態において、炭化水素は、合成ガス生産を可能にするのに十分な温度まで到達する前に、著しい生産を伴わずに合成ガス生産を可能にするのに十分な温度まで上昇させられてもよい。たとえば、合成ガスは、約400℃から約1200℃、約500℃から約1100℃、または約550℃から約1000℃の温度範囲内で、生産されてもよい。流体(たとえば、蒸気および/または水)を生成する合成ガスは、合成ガスを生成するために区間内に導入されてもよい。合成ガスは、生産井から生産されてもよい。
【0071】
溶解採鉱、揮発性炭化水素および水の除去、炭化水素の流動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの生成、および/またはその他のプロセスは、現場熱処理プロセスの間に実行されてもよい。いくつかの実施形態において、現場熱処理プロセスの後に、何らかのプロセスが実施されてもよい。このようなプロセスは、処理済み区間から熱を回収するステップ、先に処理済みの区間に流体(たとえば、水および/または炭化水素)を保存するステップ、および/または先に処理済みの区間に二酸化炭素を封鎖するステップを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0072】
図1は、炭化水素含有地層を処理するための現場熱処理システムの一部分の実施形態の模式図を示す。現場熱処理システムは、障壁井戸100を含んでもよい。障壁井戸100は、処理領域の周りに障壁を形成するために使用される。障壁は、流体が処理領域の内部におよび/または外部に流れるのを抑制する。障壁井戸は、脱水井戸、真空井戸、捕獲井戸、注入井戸、グラウト井戸、凍結井戸、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、障壁井戸100は脱水井戸である。脱水井戸は、液状水を除去してもよく、かつ/あるいは加熱されるべき地層の一部分に、または加熱されている地層に液状水が侵入するのを抑制してもよい。図示されるように、障壁井戸100は、熱源102の片側のみに沿って延在するが、しかし障壁井戸は通常、地層の処理領域を加熱するために、使用されている、または使用されるべき全ての熱源102を取り囲む。
【0073】
熱源102は、地層の少なくとも一部分に配置される。熱源102は、絶縁導体、導管内導体加熱器、表面バーナ、無炎分散燃焼器、および/または自然分散燃焼器などの加熱器を含んでもよい。熱源102はまた、その他のタイプの加熱器も含んでもよい。熱源102は、地層中の炭化水素を加熱するために、地層の少なくとも一部に熱を供給する。エネルギーは、供給ライン104を通じて熱源102に供給されてもよい。供給ライン104は、地層を加熱するために使用される(1つまたは複数の)熱源のタイプに応じて、構造的に異なってもよい。熱源用の供給ライン104は、電気加熱器用の電気を送電してもよく、燃焼器用の燃料を搬送してもよく、あるいは地層中で循環される熱交換流体を搬送してもよい。いくつかの実施形態において、現場熱処理プロセス用の電気は、(1つまたは複数の)原子力発電所によって供給されてもよい。原子力の使用は、現場熱処理プロセスからの二酸化炭素排出量の削減または排除を可能にする場合がある。
【0074】
地層が加熱されると、地層に入力された熱は、地層の膨張および地質工学的運動を引き起こす可能性がある。熱源は、脱水プロセスの前、同時、または最中に、起動されてもよい。コンピュータシミュレーションは、加熱に対する地層反応をモデリングする可能性がある。コンピュータシミュレーションは、地層の地質工学的運動が、熱源、生産井、および地層中のその他の設備の機能に悪影響を及ぼさないように、地層中の熱源を起動するためのパターンおよび時間系列を展開するために使用されてもよい。
【0075】
地層の加熱は、地層の透水性および/または多孔性の増加を引き起こすかもしれない。透水性および/または多孔性の増加は、水の蒸発および除去、炭化水素の除去、および/または破壊の生成による地層中の質量の減少に起因するかもしれない。流体は、地層の透水性および/または多孔性が増加したため、地層の加熱部分をより容易に流れるかもしれない。地層の加熱部分の流体は、透水性および/または多孔性が増加したため、地層を通じて相当な距離を移動するかもしれない。相当な距離とは、地層の透水性、流体の特性、地層の温度、および流体の運動を可能にする圧力勾配などの、様々な要因に依存して、1000mを超えてもよい。地層中の相当な距離を移動する流体の能力により、地層中で生産井106を比較的遠く離間させることが可能になる。
【0076】
生産井106は、地層から地層流体を取り出すために使用される。いくつかの実施形態において、生産井106は熱源を含む。生産井の熱源は、生産井のまたはその付近の地層の1つまたは複数の部分を加熱してもよい。いくつかの現場熱処理プロセス実施形態において生産井から地層に供給される生産井1メートルあたりの熱量は、熱源1メートルあたりの地層を加熱する熱源から地層に加えられる熱量よりも少ない。生産井から地層に加えられる熱は、生産井に隣接する液相流体を蒸発および除去することによって、ならびに/あるいは巨視的および/または微小破壊の形成により生産井に隣接する地層の透水性を増加させることによって、生産井に隣接する地層の透水性を増加させてもよい。
【0077】
2つ以上の熱源が生産井に配置されてもよい。生産井の下部の熱源は、隣接する熱源からの熱の重畳が、生産井を用いて地層を加熱することによって提供される恩恵に対抗するのに十分なほど地層を加熱するときに、停止されてもよい。いくつかの実施形態において、生産井の上部の熱源は、生産井の下部の熱源が停止された後も、起動したままであってもよい。井戸の上部の熱源は、地層流体の凝縮および還流を抑制してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態において、生産井106の熱源は、地層からの地層流体の気相除去を可能にする。生産井での、またはこれを通じての加熱を提供することは、(1)このような生産流体が上層土に近接する生産井の中で移動するときに、生産流体の凝縮および/または還流を抑制し、(2)地層への熱入力を増加し、(3)熱源を備えない生産井と比較して、生産井からの生産率を増加し、(4)生産井内の高炭素数化合物(C6炭化水素以上)の凝縮を抑制し、および/または(5)生産井またはその付近での地層透水性を増加する可能性がある。
【0079】
地層中の地表下圧力は、地層中で発生する流体圧力に対応する可能性がある。地層の加熱部分の温度が上昇するにつれて、現場流体の熱膨張、流体生成の増加、および水の蒸発の結果として、加熱部分の圧力が上昇する可能性がある。地層からの流体除去の速度を制御することで、地層中の圧力の制御を可能にしてもよい。地層中の圧力は、生産井でまたはその付近で、熱源の付近またはそこで、および監視井戸の付近またはそこでなど、多数の異なる位置において判断されてもよい。
【0080】
いくつかの炭化水素含有地層において、地層からの炭化水素の生産は、地層中の少なくともある程度の炭化水素が流動化および/または熱分解されてしまうまで、抑制される。地層流体は、地層流体が選ばれた品質であるときに、地層から生産されてもよい。いくつかの実施形態において、選ばれた品質は、少なくとも約20°、30°、または40°のAPI比重を含む。少なくともある程度の炭化水素が流動化および/または熱分解されてしまうまで生産を抑制することは、重質炭化水素から軽質炭化水素への転換を増加させるかもしれない。初期生産の抑制は、地層からの重質炭化水素の生産を最小化させるかもしれない。相当量の重質炭化水素の生産は、高額な設備を必要とするかもしれず、および/または生産設備の寿命を短縮するかもしれない。
【0081】
いくつかの炭化水素含有地層において、地層中の炭化水素は、実質的な透水性が地層の加熱部分で生成されてしまう前に、流動化および/または熱分解温度まで加熱されてもよい。透水性の初期の欠落は、生産井106への生成流体の搬送を抑制する可能性がある。初期加熱の間、地層中の流体圧力は、近接する熱源102を増加させる可能性がある。増加した流体圧力は、1つまたは複数の熱源102を通じて解放、監視、修正、および/または制御されてもよい。たとえば、選択された熱源102または個別の圧力解放井戸は、地層からの何らかの流体の除去を可能にする圧力逃がし弁を含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施形態において、生産井106への開放路またはその他いずれかの圧力シンクがまだ地層中に存在していなくても、流動化流体、熱分解流体、または地層中で生成されたその他の流体の膨張によって生成された圧力は、上昇可能であってもよい。流体圧力は、地盤圧力に向かって増加可能であってもよい。炭化水素含有地層中の破壊は、流体が地盤圧力に接近するときに形成してもよい。たとえば、破壊は、地層の加熱部分において熱源102から生産井106まで形成してもよい。加熱部分の破壊の生成は、その部分のある程度の圧力を解放するかもしれない。地層中の圧力は、望ましくない生産、上層土または下層土の破壊、ならびに/あるいは地層中の炭化水素のコークス化を抑制するために、選択圧力未満に維持されなければならないかもしれない。
【0083】
流動化および/または熱分解温度に到達して、地層からの生産が可能になった後、生産された地層流体の組成を修正および/または制御するために、地層流体中の非凝縮性流体と比較して凝縮性流体のパーセンテージを制御するために、ならびに/あるいは生産される地層流体のAPI比重を制御するために、地層中の圧力は変動してもよい。たとえば、圧力の減少の結果、より大きい凝縮性流体成分の生産をもたらしてもよい。凝縮性流体成分は、かなり多くのオレフィンを含有してもよい。
【0084】
いくつかの現場熱処理プロセスにおいて、地層中の圧力は、20°超のAPI比重を備える地層流体の生産を促進するのに十分な高さで維持されてもよい。地層中の上昇圧力を維持することは、現場熱処理中の地層沈下を抑制するかもしれない。上昇圧力の維持は、採集導管内の流体を処理施設まで搬送するために、表面で地層流体を圧縮する必要性を低減または解消するかもしれない。
【0085】
地層の加熱部分における上昇圧力の維持は、向上した品質および比較的低分子量の、大量の炭化水素の生産を、驚くほど可能にする場合がある。圧力は、生産された地層流体が選択された炭素数を超える最低量の化合物を有するように、維持されてもよい。選択された炭素数は、最大25、最大20、最大12、または最大8であってもよい。いくつかの高炭素数化合物は、地層中の蒸気に同伴されてもよく蒸気と共に地層から除去されてもよい。上昇圧力の維持は、蒸気中の高炭素数化合物および/または多環炭化水素化合物の同伴を抑制するかもしれない。高炭素数化合物および/または多環炭化水素化合物は、かなりの長期間にわたって地層中で液相のままであるかもしれない。かなりの長期間は、低炭素数化合物を形成するために化合物が熱分解するのに十分な時間を提供するかもしれない。
【0086】
比較的低い分子量の炭化水素の生成は、部分的に、炭化水素含有地層の一部分における水素の自己発生および反応によると考えられている。たとえば、上昇圧力の維持は、熱分解中に生成された水素を地層中で液相にさせるかもしれない。熱分解温度範囲内の温度までこの部分を加熱することは、液相熱分解流体を生成するために地層中の炭化水素を熱分解するかもしれない。生成された液相熱分解流体成分は、二重結合および/またはラジカルを含んでもよい。液相の水素(H2)は、生成された熱分解流体の二重結合を還元させ、それによって、生成された熱分解流体から長鎖化合物の重合または形成の可能性を低減するかもしれない。加えて、H2はまた、生成された熱分解流体中のラジカルを中和させるかもしれない。液相のH2は、生成された熱分解流体が互いにおよび/または地層中の別の化合物と反応するのを抑制するかもしれない。
【0087】
生産井106から生産された地層流体は、採集配管108を通じて処理施設110まで搬送されてもよい。地層流体はまた、熱源102から生産されてもよい。たとえば、流体は、熱源に隣接する地層中の圧力を制御するために、熱源102から生産されてもよい。熱源102から生産された流体は、管または配管を通じて採集配管108まで搬送されてもよく、あるいは生産流体は、管または配管を通じて処理施設110まで直接搬送されてもよい。処理施設110は、分離装置、反応装置、改質装置、燃料電池、タービン、貯蔵容器、ならびに/または生産された地層流体を処理するためのその他のシステムおよび装置を含んでもよい。処理施設は、地層から生産された炭化水素の少なくとも一部分から、輸送燃料を形成してもよい。いくつかの実施形態において、輸送燃料は、JP−8などのジェット燃料であってもよい。
【0088】
温度制限加熱器は、特定の温度で加熱器に自動温度制限特性を提供する構成であってもよく、かつ/またはそのような材料を含んでもよい。温度制限加熱器の実施例は、Wellingtonらの米国特許第6,688,387号明細書、Sumnu−Dindorukらの米国特許第6,991,036号明細書、Karanikasらの米国特許第6,698,515号明細書、Wellingtonらの米国特許第6,880,633号明細書、Rouffignacらの米国特許第6,782,947号明細書、Vinegarらの米国特許第6,991,045号明細書、Vinegarらの米国特許第7,073,578号明細書、Vinegarらの米国特許第7,121,342号明細書、Fairbanksの米国特許第7,320,364号明細書、McKinzieらの米国特許第7,527,094号明細書、Moらの米国特許第7,584,789号明細書、Hinsonらの米国特許第7,533,719号明細書、Millerの米国特許第7,562,707号明細書、Vinegarらの米国特許出願公開第2009−0071652号明細書、Burnsらの米国特許出願公開第2009−0189617号明細書、Prince−Wrightらの米国特許出願公開第2010−0071903号明細書、およびNguyenらの米国特許出願公開第2010−0096137号明細書に見いだされる場合がある。温度制限加熱器は、AC周波数(たとえば60HzAC)で、または変調DC電流で動作する寸法になっている。
【0089】
特定の実施形態において、温度制限加熱器において強磁性材料が使用される。強磁性材料は、時間依存性電流が材料に印加されたときに低減された熱量を提供するために、材料のキュリー温度および/または相転移温度範囲あるいはその付近の温度で、温度を自己制御してもよい。特定の実施形態において、強磁性材料は、ほぼキュリー温度および/または相転移温度範囲である選択温度で、温度制限加熱器の温度を自己制御する。特定の実施形態において、選択温度はキュリー温度および/または相転移温度範囲の約35℃以内、約25℃以内、約20℃以内、あるいは約10℃以内である。特定の実施形態において、強磁性材料は、様々な電気的/機械的特性を提供するために、その他の材料(たとえば、高導電性材料、高強度材料、耐腐食性材料、またはそれらの組み合わせ)と結合される。温度制限加熱器のいくつかの部分は、温度制限加熱器のその他の部分よりも低い抵抗を有してもよい(異なる幾何学的形状によって、ならびに/あるいは異なる強磁性および/または非強磁性材料を使用することによって生じる)。様々な材料および/または寸法を備える温度制限加熱器の部分を有することは、加熱器の各部分からの所望の熱出力を調整させることを可能にする。
【0090】
温度制限加熱器は、他の加熱器よりも信頼性が高いかもしれない。温度制限加熱器は、地層中のホットスポットによって破壊または故障する可能性が低いかもしれない。いくつかの実施形態において、温度制限加熱器は、地層の実質的に均一な加熱を可能にする。いくつかの実施形態において、温度制限加熱器は、加熱器の全長にわたって高めの平均熱出力で動作することによって、より効率的に地層を加熱することができる。温度制限加熱器は、加熱器のいずれかの点に沿った温度が加熱器の最大動作温度を超過するかまたは超過しそうな場合に、一般的な定ワット数加熱器の場合のように、加熱器への電力を加熱器全体まで低減する必要がないので、加熱器の全長にわたって高めの平均熱出力で動作する。加熱器のキュリー温度および/または相転移温度範囲に近づく温度制限加熱器の部分からの熱出力は、加熱器に印加される時間依存性電流の制御された調節を伴わずに、自動的に低下する。熱出力は、温度制限加熱器の部分の電気的特性(たとえば、電気抵抗)の変化のため、自動的に低下する。このため、加熱プロセスの大部分の間、温度制限加熱器によってさらに大きいパワーが供給される。
【0091】
特定の実施形態において、温度制限加熱器を含むシステムは、温度制限加熱器が時間依存性電流によって電力供給されたとき、最初に第1の熱出力を供給し、次に加熱器の電気的抵抗部分のキュリー温度および/または相転移温度範囲の付近、ちょうど、またはそれより上で、低減された熱出力(第2の熱出力)を供給する。第1の熱出力は、温度制限加熱器がそれ未満で自己制御を開始する温度での熱出力である。いくつかの実施形態において、第1の熱出力は、温度制限加熱器の強磁性材料のキュリー温度および/または相転移温度範囲未満の、約50℃、約75℃、約100℃、または約125℃の温度での熱出力である。
【0092】
温度制限加熱器は、坑口装置で供給される時間依存性電流(交流電流または変調直流電流)によって電力供給されてもよい。坑口装置は、温度制限加熱器への電力の供給に使用される、電源およびその他の部品(たとえば、変調部品、変圧器、および/またはコンデンサ)を含んでもよい。温度制限加熱器は、地層の一部分を加熱するために使用される、多くの加熱器のうちの1つであってもよい。
【0093】
特定の実施形態において、温度制限加熱器は、時間依存性電流が導体に印加されたときに表皮効果または近接効果加熱器として動作する導体を含む。表皮効果は、導体内部への電流侵入の深さを制限する。強磁性材料では、表皮効果は導体の透磁率によって支配される。強磁性材料の比透磁率は、一般的に10から1000の間である(たとえば、強磁性材料の比透磁率は、一般的に少なくとも10であり、少なくとも50、100、500、1000、またはこれを超えてもよい)。強磁性材料の温度がキュリー温度、または相転移温度範囲を超えて上昇するにつれて、かつ/または印加電流が増加するにつれて、強磁性材料の透磁率は実質的に低下し、表皮深さは急速に拡大する(たとえば、表皮深さは透磁率の逆平方根として拡大する)。透磁率の低下は、キュリー温度、相転移温度範囲の付近、ちょうど、またはそれより上で、ならびに/あるいは印加電流が増加するにつれて、導体のACまたは変調DCの抵抗の減少を招く。温度制限加熱器が実質的に定電流源によって電力供給されるとき、キュリー温度および/もしくは相転移温度範囲に接近、到達、またはそれを超える加熱器の部分は、より低い熱放散を有する可能性がある。キュリー温度および/または相転移温度範囲でもその付近でもない温度制限加熱器の区間は、より高い抵抗負荷のため加熱器に高い熱放散を許容する表皮効果加熱によって支配される可能性がある。
【0094】
キュリー温度加熱器は、はんだ付け装置、医療用途向け加熱器、およびオーブン用加熱素子(たとえば、ピザ用オーブン)において使用されてきた。これらの使用法のうちのいくつかは、Lamomeらの米国特許第5,579,575号明細書、Henschenらの米国特許第5,065,501号明細書、およびYagnikらの米国特許第5,512,732号明細書に開示されている。Whitneyらの米国特許第4,849,611号明細書は、反応部品、抵抗加熱部品、および温度反応部品を含む、複数の個別離間加熱装置を記載している。
【0095】
地層中の炭化水素を加熱するために温度制限加熱器を使用する利点は、導体が、所望の温度動作範囲内のキュリー温度および/または相転移温度範囲を有するように選択されることである。所望の動作温度範囲内での動作は、温度制限加熱器、およびその他の設備の温度を設計限界温度未満に維持しながら、地層内への実質的な熱注入を可能にする。設計限界温度は、腐食、クリープ、および/または変形等の特性が悪影響を受ける温度である。温度制限加熱器の温度制限特性は、地層中の低熱伝導率「ホットスポット」に隣接する加熱器の過熱または焼損を抑制する。いくつかの実施形態において、温度制限加熱器は、加熱器に使用される材料に応じて、熱出力を低下または制御すること、および/または25℃、37℃、100℃、250℃、500℃、700℃、800℃、900℃を超え、またはそれ以上で最大1131℃までの温度での加熱に耐えることが、可能である。
【0096】
加熱器に隣接する低熱伝導率領域に対応するために、温度制限加熱器へのエネルギー入力が制限される必要はないので、温度制限加熱器は、地層に対して定ワット数加熱器よりも多くの熱注入を可能にする。たとえば、グリーンリバー油頁岩では、最低含有量の油頁岩層と最高含有量の油頁岩層との熱伝導率に、少なくとも3倍の差がある。このような地層を加熱するとき、低伝導率層の温度によって制限される従来の加熱器よりも、温度制限加熱器を用いると、実質的により多くの熱が地層に伝達される。従来の加熱器の全長に沿った熱出力は、加熱器が低熱伝導率層で過熱して焼損しないように、低熱伝導率層に適応する必要がある。高温である低熱伝導率層に隣接する熱出力は、温度制限加熱器では低下するが、しかし温度制限加熱器の高温ではない残りの部分は、まだ高熱出力を供給する。炭化水素地層を加熱するための加熱器は一般的に長尺なので(たとえば、少なくとも10m、100m、300m、500m、1km、またはそれ以上で最大10km)、わずかな部分のみが、温度制限加熱器のキュリー温度および/または相転移温度範囲に、またはその付近にある一方で、温度制限加熱器の長さの大部分はキュリー温度および/または相転移温度範囲未満で動作していてもよい。
【0097】
温度制限加熱器の使用は、地層への熱の効率的な伝達を可能にする。効率的な熱の伝達は、所望の温度まで地層を加熱するために必要とされる時間の削減を可能にする。たとえば、グリーンリバー油頁岩では、従来の定ワット数加熱器で12mの加熱器井戸間隔を用いると、熱分解は通常、9.5年から10年の加熱を必要とする。同じ加熱器間隔で、温度制限加熱器は、設備設計限界温度未満に加熱器設備温度を維持しながら、より大きい平均熱出力を可能にする場合がある。地層中の熱分解は、定ワット数加熱器によって供給されるより低い平均熱出力よりも、温度制限加熱器によって供給されるより大きい平均熱出力を用いる方が、より早期に発生する。たとえば、グリーンリバー油頁岩では、12mの加熱器井戸間隔の温度制限加熱器を用いて、熱分解は5年後に発生する場合がある。温度制限加熱器は、加熱器井戸が互いに接近しすぎる、不正確な井戸間隔または掘削によるホットスポットに対抗する。特定の実施形態において、温度制限加熱器は、間隔が開きすぎた加熱器井戸に対して時間をかけて大量のパワー出力を可能にし、または互いに接近しすぎた加熱器井戸に対するパワー出力を制限する。温度制限加熱器はまた、これらの領域における温度損失を補償するために、上層土および下層土に隣接する領域において、より大きいパワーを供給する。
【0098】
温度制限加熱器は、有利には、多くのタイプの地層で使用されてもよい。たとえば、重質炭化水素を含有するタールサンド地層または比較的透水性の高い地層において、温度制限加熱器は、井孔でまたはその付近で、または地層内で、流体の粘度を低下させ、流体を流動化し、かつ/または流体の輻流を強化するための制御可能な低温出力を提供するために、使用されてもよい。温度制限加熱器は、地層の井孔近接領域の過熱による過剰なコークス形成を抑制するために使用されてもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、温度制限加熱器の使用は、高額な温度制御回路の必要性を排除または低減する。たとえば、温度制限加熱器の使用は、ホットスポットでの過熱の可能性を監視するために、温度検層を実行する必要性および/または加熱器上で固定熱電対を使用する必要性を、排除または低減する。
【0100】
温度制限加熱器は、導管内導体加熱器に使用されてもよい。導管内導体加熱器のいくつかの実施形態において、抵抗性熱の大部分は導体中で生成され、熱は放射的に、伝導的に、および/または対流的に、導管に伝達する。導管内導体加熱器のいくつかの実施形態において、抵抗性熱の大部分は、導管内で生成される。
【0101】
いくつかの実施形態において、温度制限加熱器の電気抵抗性熱出力の大部分を強磁性導体のキュリー温度および/または相転移温度範囲の、またはその付近の温度までの温度で供給するために、比較的薄い導電層が使用される。このような温度制限加熱器は、絶縁導体加熱器の加熱部材として使用されてもよい。絶縁導体加熱器の加熱部材は、外装と加熱部材との間に絶縁層を備えて、外装の内部に配置されてもよい。
【0102】
絶縁導体は、加熱器または熱源の電気加熱器要素として使用されてもよい。絶縁導体は、電気絶縁体によって包囲された内側導電体(コア)および外側導電体(ジャケット)を含んでもよい。電気絶縁体は、鉱物絶縁材(たとえば、酸化マグネシウム)またはその他の電気絶縁材を含んでもよい。
【0103】
特定の実施形態において、絶縁導体は、炭化水素含有地層の開口部に配置される。いくつかの実施形態において、絶縁導体は、炭化水素含有地層の未被覆開口部内に配置される。炭化水素含有地層の未被覆開口部に絶縁導体を配置することは、放射ならびに伝導による、絶縁導体から地層への熱伝達を可能にする場合がある。未被覆開口部を使用することにより、必要であれば、井戸からの絶縁導体の回収を容易にする可能性がある。
【0104】
いくつかの実施形態において、絶縁導体は、地層中のケーシング内に配置され、地層内に固定されてもよく、あるいは砂、砂利、またはその他の充填材料を用いて開口部内に詰め込まれてもよい。絶縁導体は、開口部内に配置された支持部材上に支持されてもよい。支持部材は、ケーブル、ロッド、または導管(たとえばパイプ)であってもよい。支持部材は、金属、セラミック、無機材料、またはそれらの組み合わせで作られてもよい。支持部材の部分は使用中に地層流体および熱に曝される可能性があるので、支持部材は化学的に耐性があり、かつ/または熱的に耐性があってもよい。
【0105】
タイ、スポット溶接点、および/またはその他のタイプのコネクタが、絶縁導体の長さに沿った様々な位置において絶縁導体を支持部材に結合するために使用されてもよい。支持部材は、地層の上面において坑口装置に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、絶縁導体は、支持部材が必要とされないように、十分な構造強度を有している。絶縁導体は、多くの場合に、温度変化を受けるときに熱膨張損傷を抑制するために、少なくともある程度の可撓性を有してもよい。
【0106】
特定の実施形態において、絶縁導体は、支持部材および/またはセントラライザを用いずに井孔内に配置される。支持部材および/またはセントラライザを備えない絶縁導体は、温度耐性および腐食耐性、クリープ強度、長さ、厚み(直径)、ならびに使用中に絶縁導体の故障を抑制する冶金技術の、適切な組み合わせを有してもよい。
【0107】
図2は、絶縁導体112の一実施形態の末端部分の斜視図を示す。絶縁導体112は、円形(図2に示される)、三角形、楕円形、矩形、六角形、または不規則形状などの、ただしこれらに限定されない、所望の断面形状を有してもよい。特定の実施形態において、絶縁導体112は、コア114、電気絶縁体116、およびジャケット118を含む。コア114は、電流がコアを通過するときに、抵抗的に熱くなるようにしてもよい。交流または時間依存性電流および/あるいは直流電流は、コアが抵抗的に熱くなるように、コア114に電力を供給するために使用されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、電気絶縁体116は、ジャケット118への電流漏れおよびアーク放電を抑制する。電気絶縁体116は、コア114で発生した熱をジャケット118まで熱伝導してもよい。ジャケット118は、地層に熱を放射または伝導する可能性がある。特定の実施形態において、絶縁導体112は1000m以上の長さである。特定用途の要求を満たすために、より長いまたは短い絶縁導体もまた使用されてよい。絶縁導体112のコア114、電気絶縁体116、およびジャケット118の寸法は、絶縁導体が、使用温度上限であっても自立するのに十分な強度を有するように選択されてもよい。このような絶縁導体は、支持部材が絶縁導体と共に炭化水素含有地層内に延在することを必要とせずに、上層土と炭化水素含有地層との間の界面付近に配置された坑口装置または支持体から吊り下げられてもよい。
【0109】
絶縁導体112は、約1650ワット/メートル以上までの電力レベルで動作するように設計されてもよい。特定の実施形態において、絶縁導体112は、地層を加熱するときに、約500ワット/メートルから約1150ワット/メートルの間の電力レベルで動作する。絶縁導体112は、一般的な動作温度での最大電圧レベルが電気絶縁体116の実質的な熱的および/または電気的破壊を生じさせないように、設計されてもよい。絶縁導体112は、ジャケット118が、ジャケット材料の耐腐食性の著しい低下を招くことになる温度を超過しないように、設計されてもよい。特定の実施形態において、絶縁導体112は、約650℃から約900℃の間の範囲内の温度に到達するように設計されてもよい。その他の動作範囲を有する絶縁導体が、特定の動作要件を満たすように形成されてもよい。
【0110】
図2に示されるように、絶縁導体112は単一のコア114を有している。いくつかの実施形態において、絶縁導体112は2つ以上のコア114を有する。たとえば、単一の絶縁導体は、3つのコアを有してもよい。コア114は、金属またはその他の導電性材料で作られてもよい。コア114を形成するために使用される材料は、ニクロム、銅、ニッケル、炭素鋼、ステンレス鋼、およびそれらの組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。特定の実施形態において、コア114は、オームの法則にしたがって、その抵抗が、1メートルあたりの選択された電力損失、加熱器の長さ、および/またはコア材料に許容される最大電圧について電気的および構造的に安定化させるように、直径および動作温度における抵抗を有するように選択される。
【0111】
いくつかの実施形態において、コア114は、絶縁導体112の長さに沿って異なる材料で作られている。たとえば、コア114の第1の区間は、コアの第2の区間よりも著しく低い抵抗を有する材料で作られてもよい。第1の区間は、第2の区間に隣接する第2の地層階層と同じ温度まで加熱される必要のない地層階層に隣接して、配置されてもよい。コア114の様々な区間の抵抗は、可変直径を有することによって、および/または異なる材料で作られたコア区間を有することによって、調節されてもよい。
【0112】
電気絶縁体116は、様々な材料で作られてもよい。通常使用される粉末は、酸化マグ値シム(MgO)、三酸化アルミナ(Al2O3)、ジルコニア、酸化ベリリウム(BeO)、スピネルの異なる化学変異物質、およびそれらの組み合わせを含んでもよいが、これらに限定されない。酸化マグネシウムは、良好な熱伝導率および電気絶縁特性を提供する可能性がある。望ましい電気絶縁特性は、低漏れ電流および高絶縁耐力を含む。低漏れ電流は熱的破壊の可能性を減少し、高絶縁耐力は絶縁体にわたるアーク放電の可能性を減少する。熱的破壊は、漏れ電流が絶縁体の温度の漸進的な上昇を引き起こす場合に発生し、やはり絶縁体にかかるアーク放電を引き起こす。
【0113】
ジャケット118は、外側金属層または導電層であってもよい。ジャケット118は、高温の地層流体と接触していてもよい。ジャケット118は、高い温度で腐食に対して高い耐性を有する材料で作られてもよい。ジャケット118の所望の動作温度範囲で使用されてもよい合金は、304ステンレス鋼、310ステンレス鋼、Incoloy(R)800、およびInconel(R)600(米国ウェストバージニア州ハンティントン、Inco Alloys International)を含むが、これらに限定されない。ジャケット118の厚みは、高温および腐食性の環境で3年から10年持ちこたえるのに十分でなければならない場合がある。ジャケット118の厚みは一般的に、約1mmから約2.5mmの間で異なってもよい。たとえば、3年を超える期間にわたって地層の加熱領域の硫化腐食に対する良好な耐化学性を提供するために、1.3mm厚の310ステンレス鋼外層がジャケット118として使用されてもよい。特定用途要件を満たすために、より厚いまたはより薄いジャケット厚が使用されてもよい。
【0114】
(1つまたは複数の)熱源を形成するために、1つまたは複数の絶縁導体が地層の開口部内に配置されてもよい。地層を加熱するために、開口部の各絶縁導体に電流が流されてもよい。あるいは、電流は、開口部の選択された絶縁導体に流されてもよい。バックアップ用加熱器として、未使用の導体が使用されてもよい。絶縁導体は、いずれかの便利な方法で、電源と電気的に結合されてもよい。絶縁導体の各末端は、坑口装置を通る引き込みケーブルに結合されてもよい。このような構成は通常、熱源の底部付近に位置する180°カーブ(「ヘアピン」カーブ)またはターンを有する。180°カーブまたはターンを含む絶縁導体は底部終端を必要としないかもしれないが、しかし180°カーブまたはターンは、加熱器における電気的および/または構造的弱点であるかもしれない。絶縁導体は、直列に、並列に、または直列および並列の組み合わせで、互いに電気的に結合されてもよい。熱源のいくつかの実施形態において、電流は、絶縁導体の導体に流入してもよく、熱源の底部においてコア114をジャケット118に接続することによって(図2に示される)、絶縁導体のジャケットを通じて戻ってきてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態において、3つの絶縁体112は、3相Y構成で電源に電気的に結合されている。図3は、Y構成で結合された、地表下地層の開口部にある3つの絶縁導体の一実施形態を示している。図4は、地層の開口部120から取り外し可能な3つの絶縁導体112の一実施形態を示している。Y構成の3つの絶縁導体にとって、底部接続は必要とされないであろう。あるいは、Y構成の3つ全ての絶縁導体が、開口部の底部付近で互いに接続されてもよい。接続は、絶縁導体の底部において、絶縁導体の加熱区間の末端で直接、または加熱区間と結合されたコールドピンの末端(抵抗の低い区間)で、なされてもよい。底部接続は、絶縁体が充填および封止された缶を用いて、またはエポキシ樹脂が充填された缶を用いてなされてもよい。絶縁体は、電気絶縁材として使用される絶縁体と同じ組成であってもよい。
【0116】
図3および図4に示される3つの絶縁導体112は、セントラライザ124を用いて支持部材122に結合されてもよい。あるいは、絶縁導体112は、金属ストラップを用いて支持部材122に直接固定されてもよい。セントラライザ124は、支持部材122上の絶縁導体の位置を維持してもよく、および/または動きを抑制してもよい。セントラライザ124は、金属、セラミック、またはそれらの組み合わせで作られてもよい。金属は、ステンレス鋼、または腐食性および高温環境に耐えることが可能なその他のタイプの金属であってもよい。いくつかの実施形態において、セントラライザ124は、約6m未満の距離で支持部材に溶接された、湾曲金属ストリップである。セントラライザ124に使用されるセラミックは、Al2O3、MgO、またはその他の電気絶縁体であってもよいが、これらに限定されない。セントラライザ124は、絶縁導体の動作温度で絶縁導体の動きが抑制されるように、支持部材122上の絶縁導体112の位置を維持してもよい。絶縁導体112はまた、加熱中に支持部材122の膨張に耐えられるように、ある程度可撓性であってもよい。
【0117】
支持部材122、絶縁導体112、およびセントラライザ124は、炭化水素層126の開口部内に配置されてもよい。絶縁導体112は、コールドピン130を用いて底部導体接合部128に結合されてもよい。底部導体接合部128は、各絶縁導体112を互いに電気的に結合させてもよい。底部導体接合部128は、導電性があり、開口部120内で見いだされる温度で溶融しない材料を含んでもよい。コールドピン130は、絶縁導体112よりも低い電気抵抗を有する絶縁導体であってもよい。
【0118】
引き込み導体132は、絶縁導体112に電力を供給するために、坑口装置134に結合されてもよい。引き込み導体132は、引き込み導体を流れる電流から比較的少ない熱が発生するように、比較的低い電気抵抗の導体で作られてもよい。いくつかの実施形態において、引き込み導体は、ゴムまたはポリマーで絶縁された撚り銅線である。いくつかの実施形態において、引き込み導体は、銅製コアを備える鉱物絶縁導体である。引き込み導体132は、上層土138と表面136との間に位置する封止フランジを通じて、表面136で坑口装置134と結合してもよい。封止フランジは、流体が開口部120から表面136に漏れ出すのを抑制してもよい。
【0119】
特定の実施形態において、引き込み導体132は、つなぎ(transition)導体140を用いて絶縁導体112に結合される。つなぎ導体140は、絶縁導体112の低抵抗部分であってもよい。つなぎ導体140は、絶縁導体112の「コールドピン」と称されてもよい。つなぎ導体140は、絶縁導体112の主要な加熱区間の単位長さにおいて消費されるのと比較して、単位長さあたり約10分の1から約5分の1の電力を消費するように設計されてもよい。つなぎ導体140は、通常約1.5mから約15mの間であってもよいが、ただし特定用途の要求を満たすように、これより短いまたは長い長さが使用されてもよい。一実施形態において、つなぎ導体140の導体は銅である。つなぎ導体140の電気絶縁体は、主要な加熱区間で使用されるのと同じタイプの電気絶縁体であってもよい。つなぎ導体140のジャケットは、耐腐食性材料で作られてもよい。
【0120】
特定の実施形態において、つなぎ導体140は、スプライスまたはその他の結合継ぎ手によって、引き込み導体132に結合される。スプライスは、つなぎ導体140を絶縁導体112に結合させるためにも使用されてよい。スプライスは、標的領域動作温度の半分に等しい温度に耐えられなければならない場合がある。スプライスの電気絶縁材の密度は、多くの場合に、要求温度および動作電圧に耐えられるほど十分に高くなければならない。
【0121】
いくつかの実施形態において、図3に示されるように、上層土ケーシング144と開口部120との間に充填材料142が配置される。いくつかの実施形態において、補強材料146が上層土ケーシング144を上層土138に固定してもよい。充填材料142は、流体が開口部120から表面136に流れるのを抑制してもよい。補強材料146は、たとえば、改善された高温性能のためにシリカ粉末と混合されたクラスGまたはクラスHのポートランドセメント、スラグまたはシリカ粉末、および/またはそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、補強材料146は、約5cmから約25cmの幅を半径方向に延在させる。
【0122】
図3および図4に示されるように、支持部材122および引き込み導体132は、地層の表面136で坑口装置134に結合されてもよい。表面導体148は、補強材料146を包囲して坑口装置134と結合してもよい。表面導体の実施形態は、地層の開口部内へおよそ3メートルからおよそ515メートルの深さまで延在してもよい。あるいは、表面導体は、地層内へおよそ9mの深さまで延在してもよい。絶縁導体の電気抵抗による熱を発生させるために、電源から絶縁導体112に電流が供給されてもよい。3つの絶縁導体112から発生した熱は、炭化水素層126の少なくとも一部分を加熱するために、開口部120内に伝達してもよい。
【0123】
絶縁導体112によって生成された熱は、炭化水素含有地層の少なくとも一部分を加熱してもよい。いくつかの実施形態において、熱は、実質的に生成された熱の地層への放射によって、地層に伝達される可能性がある。一部の熱は、開口部に存在するガスによる熱の伝導または対流によって、伝達されてもよい。開口部は、図3および図4に示されるように、未被覆開口部であってもよい。未被覆開口部は、加熱器を熱的に地層にセメント固定することに関わる費用、ケーシングに関わる費用、および/または加熱器を開口部内に封入する費用を削減する。加えて、放射による熱伝達は、通常は伝導によるよりも効率的なので、加熱器は開放井孔においてより低い温度で動作してもよい。熱源の初期動作中の伝導性熱伝達は、開口部へのガスの添加によって強化されてもよい。ガスは、最大で約27バール(絶対圧)までの圧力で維持されてもよい。ガスは、二酸化炭素および/またはヘリウムを含んでもよいが、これらに限定されない。開放井孔内の絶縁導体加熱器は、有利なことに、熱膨張および収縮に適応するために、自由に膨張または収縮してもよい。絶縁導体加熱器は、有利なことに、開放井孔から取り外し可能または再配備可能であってもよい。
【0124】
特定の実施形態において、絶縁導体加熱器アセンブリは、スプールアセンブリを用いて設置および取り外しがされる。絶縁導体および支持部材の両方を同時に設置するために、2つ以上のスプールアセンブリが使用されてもよい。あるいは、支持部材は、コイル状配管ユニットを用いて設置されてもよい。加熱器は、ほどかれてもよく、支持体が井戸に挿入される際に支持体に接続されてもよい。電気加熱器および支持部材は、スプールアセンブリからほどかれてもよい。スペーサは、支持部材の長さに沿って、支持部材および加熱器に結合されてもよい。追加スプールアセンブリは、追加電気加熱器要素に使用されてもよい。
【0125】
図5Aおよび図5Bは、加熱部材として温度制限加熱器を備える絶縁導体加熱器の一実施形態の断面図を示している。絶縁導体112は、コア114、強磁性導体150、内部導体152、電気絶縁体116、およびジャケット118を含む。コア114は銅製コアである。強磁性導体150は、たとえば、鉄または鉄合金である。
【0126】
内部導体152は、強磁性導体150よりも高い導電率を有する非強磁性材料の比較的薄い導電層である。特定の実施形態において、内部導体152は銅である。内部導体152は銅合金であってもよい。銅合金は通常、純粋な銅よりも温度プロファイルに対して平坦な抵抗を有する。温度プロファイルに対して平坦な抵抗は、最大キュリー温度および/または相転移温度範囲までの温度に応じた熱出力の、より小さい変動を提供する場合がある。いくつかの実施形態において、内部導体152は、6重量%のニッケルを含む銅である(たとえば、CuNi6またはLOHM(TM))。いくつかの実施形態において、内部導体152はCuNi10Fe1Mn合金である。強磁性導体150のキュリー温度および/または相転移温度範囲未満で、強磁性導体の磁気特性は、電流の流れの大部分を内部導体152に封じ込める。このため、内部導体152は、キュリー温度および/または相転移温度範囲未満で、絶縁導体112の抵抗性熱出力の大部分を提供する。
【0127】
特定の実施形態において、内部導体152は、コア114および強磁性導体150と共に、内部導体が所望の量の熱出力および所望のターンダウン比を提供するような寸法になっている。たとえば、内部導体152は、コア114の断面積よりもおよそ2〜3倍小さい断面積を有してもよい。通常、内部導体152が銅または銅合金である場合に、所望の熱出力を提供するために、内部導体152は比較的小さい断面積を有していなければならない。銅製内部導体152の一実施形態において、コア114は0.66cmの直径を有し、強磁性導体150は0.91cmの外径を有し、内部導体152は1.03cmの外径を有し、電気絶縁体116は1.53cmの外径を有し、ジャケット118は1.79cmの外径を有する。CuNi6内部導体152の一実施形態において、コア114は0.66cmの直径を有し、強磁性導体150は0.91cmの外径を有し、内部導体152は1.12cmの外径を有し、電気絶縁体116は1.63cmの外径を有し、ジャケット118は1.88cmの外径を有する。このような絶縁導体は通常、キュリー温度および/または相転移温度範囲未満未満で熱出力の大部分を提供するために、薄い内部導体を使用しない絶縁導体よりも、小型であって安価に製造できる。
【0128】
電気絶縁体116は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、またはそれらの組み合わせであってもよい。特定の実施形態において、電気絶縁体116は、酸化マグネシウムの圧縮粉体である。いくつかの実施形態において、電気絶縁体116は、窒化ケイ素のビーズを含む。
【0129】
特定の実施形態において、より高温で銅が電気絶縁体に移動するのを抑制するために、電気絶縁体116と内部導体152との間に薄い層の材料が配置される。たとえば、薄いニッケルの層(たとえば、約0.5mmのニッケル)が、電気絶縁体116と内部導体152との間に配置されてもよい。
【0130】
ジャケット118は、347ステンレス鋼、347Hステンレス鋼、446ステンレス鋼、または825ステンレス鋼などの、ただしこれらに限定されない、耐腐食性材料で作られている。いくつかの実施形態において、ジャケット118は、強磁性導体150のキュリー温度および/または相転移温度範囲以上で、絶縁導体112にいくらかの機械的強度を提供する。特定の実施形態において、ジャケット118は、電流を通すために使用されない。
【0131】
長尺の垂直温度制限加熱器(たとえば、少なくとも300m、少なくとも500m、または少なくとも1kmの長さの加熱器)では、吊り下げ応力が、温度制限加熱器用の材料の選択において重要になってくる。材料の適切な選択がなければ、支持部材は加熱器の動作温度で温度制限加熱器の重量を支持するのに十分な機械的強度(たとえば、クリープ破断強度)を有していないかもしれない。
【0132】
特定の実施形態において、支持部材の材料は、温度制限加熱器の動作温度での最大許容可能吊り下げ応力を増加させ、こうして温度制限加熱器の最大動作温度を上昇させるために、変更される。材料の変更は支持部材の温度プロファイルに対する抵抗を変化させるので、支持部材用の材料を変更することは、キュリー温度および/または相転移温度範囲未満の温度制限加熱器の熱出力に影響を及ぼす。特定の実施形態において、温度制限加熱器が、加熱器を支持するのに十分な機械的特性を提供しながら、可能な限り所望の動作特性(たとえば、キュリー温度および/または相転移温度範囲未満の温度プロファイルに対する抵抗)を維持するように、支持部材は加熱器の長さに沿って2つ以上の材料で作られる。いくつかの実施形態において、加熱器の区間の間の温度差を補償する強度を提供するために、加熱器の区間の間でつなぎ区間が使用される。特定の実施形態において、温度制限加熱器の1つまたは複数の部分は、加熱器に所望の特性を提供するために、様々な外径および/または材料を有している。
【0133】
温度制限加熱器の特定の実施形態において、3つの温度制限加熱器が、3相Y構成で互いに結合されている。3相Y構成で3つの温度制限加熱器を結合することは、3つの個別加熱器の間で電流が分割されるので、個別加熱器の各々における電流を減少させる。各個別温度制限加熱器の電流を減少させることで、各加熱器は小さい直径を有することができる。より低い電流は、個別温度制限加熱器の各々においてより高い比透磁率を、したがってより高いターンダウン比を可能にする。加えて、個別温度制限加熱器の各々にとって戻り電流路は必要とされないかもしれない。このため、ターンダウン比は、各温度制限加熱器が自身の戻り電流路を有する場合よりも、個別温度制限加熱器の各々の方が高いままである。
【0134】
3相Y構成において、個別温度制限加熱器は、個別温度制限加熱器の外装、ジャケット、または缶を、終端(たとえば、加熱器井孔の底部における加熱器の末端)で導電性区間(熱を供給する導体)に短絡することによって一緒に結合されてもよい。いくつかの実施形態において、外装、ジャケット、缶、および/または導電性区間は、井孔内で温度制限加熱器を支持する支持部材に結合される。
【0135】
特定の実施形態において、多数の加熱器(たとえば、鉱物絶縁導体加熱器)を変圧器などの単一の電源に結合することが、有利である。多数の加熱器を単一の変圧器に結合した結果、各加熱器に個別の変圧器を使用する場合と比較して、処理領域に使用される加熱器に電力供給するために、より少ない変圧器を使用することになる可能性がある。より少ない変圧器を使用することは、表面過密を低減し、加熱器および表面部品への容易なアクセスを可能にする。より少ない変圧器を使用することは、処理領域への電力供給に関わる資本コストを削減する。いくつかの実施形態において、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも25個、少なくとも35個、または少なくとも45個の加熱器が、単一変圧器によって電力供給される。加えて、単一変圧器から(異なる加熱器井戸の)多数の加熱器に電力供給することは、単一変圧器によって電力供給される加熱器井戸の各々の間で低減された電圧および/または位相差のため、上層土損失を低減する可能性がある。単一変圧器から多数の加熱器に電力供給することは、加熱器が単一変圧器に結合されているので、加熱器の間の電流不均衡を抑制する可能性がある。
【0136】
単一変圧器を用いて多数の加熱器に電力供給するためには、変圧器は、加熱器の各々に効率的に電流を送るためにより高い電圧で電力を供給する必要がある場合がある。特定の実施形態において、加熱器は、地層中の浮遊(未接地)加熱器である。加熱器を浮遊させることで、加熱器はより高い電圧で動作することができる。いくつかの実施形態において、変圧器は、少なくとも約3kV、少なくとも約4kV、少なくとも約5kV、または少なくとも約6kVの出力を提供する。
【0137】
図6は、導管156内の3つの絶縁導体112を備える加熱器154の上面図を示している。加熱器154は、地表下地層の加熱器井戸内に配置されてもよい。導管156は、外装、ジャケット、または絶縁導体112の周りのその他の囲いであってもよい。各絶縁導体112は、コア114、電気絶縁体116、およびジャケット118を含む。絶縁導体112は、銅合金(たとえばAlloy 180などの銅−ニッケル合金)であるコア114、酸化マグネシウムである電気絶縁体116、およびIncoloy(R)825(米国Inco Alloys Internationalの登録商標)、銅、またはステンレス鋼(たとえば347Hステンレス鋼)であるジャケット118を有する、鉱物絶縁導体であってもよい。いくつかの実施形態において、ジャケット118は、ジャケットが焼き鈍し可能となるように、未加工硬化性金属を含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、コア114および/またはジャケット118は、強磁性材料を含む。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の絶縁導体112は、温度制限加熱器である。特定の実施形態において、絶縁導体112の上層土部分は、絶縁導体の上層土部分がほとんどまたは全く熱出力を供給しないように、コア114中に高導電率材料(たとえば、純粋な銅または溶接継ぎ手でのケイ素を3%含む銅などの銅合金)を含む。特定の実施形態において、導管156は、ステンレス鋼などの非腐食性材料および/または高強度材料を含む。一実施形態において、導管156は347Hステンレス鋼である。
【0139】
絶縁導体112は、3相構成(たとえば、3相Y構成)で単一変圧器に結合されてもよい。各絶縁導体112は、単一変圧器の1つの位相に結合されてもよい。特定の実施形態において、単一変圧器はまた、地層中のその他の加熱器井戸にある複数の同一の加熱器154にも結合されてもよい(たとえば、単一変圧器は地層中の40個以上の加熱器と結合してもよい)。いくつかの実施形態において、単一変圧器は、地層中の少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10個、少なくとも15個、または少なくとも25個の追加加熱器と結合する。
【0140】
電気絶縁体116’は、絶縁導体112を導管から電気的に絶縁するために、導管156内に配置されてもよい。特定の実施形態において。電気絶縁体116’は酸化マグネシウム(たとえば、圧縮酸化マグネシウム)である。いくつかの実施形態において、電気絶縁体116’は窒化ケイ素(たとえば、窒化ケイ素ブロック)である。電気絶縁体116’は、高い動作電圧(たとえば、3kV以上)で、導体と導管の間にアーク放電が生じないように、絶縁導体112を導管156から電気的に絶縁する。いくつかの実施形態において、導管156内の電気絶縁体116’は、少なくとも絶縁導体112の電気絶縁体116の厚みを有する。(電気絶縁体116および/または電気絶縁体116’からの)加熱器154内の絶縁体の増加した厚みは、加熱器から地層への電流漏れを抑制して、防止する可能性がある。いくつかの実施形態において、電気絶縁体116’は、絶縁導体112を導管156内に空間的に配置する。
【0141】
図7は、複数の加熱器154に結合された3相Y変圧器158の実施形態を示している。図中の簡素化のため、図7には4つの加熱器154のみが示されている。あといくつかの加熱器が変圧器158に結合されてもよいことは、理解されるべきである。図7に示されるように、各加熱器の各区間(各絶縁導体)は変圧器158の1つの位相に結合されており、電流は変圧器の中性端子または接地端子に戻される(たとえば、図6および図8に示される導体160を通じて戻される)。
【0142】
戻り導体160は、絶縁導体112の末端に電気的に結合されてもよい(図8に示される)。電流は、絶縁導体の末端から、地層の表面上の変圧器に戻る。戻り導体160は、戻り導体がほとんどまたは全く熱出力を提供しないように、純銅、ニッケル、銅合金、またはそれらの組み合わせなどの、高導電率材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、戻り導体160は、温度および/またはその他の測定に使用されるために光ファイバを管状物の内部に配置できるようにする管状物(たとえば、ステンレス鋼管状物)である。いくつかの実施形態において、戻り導体160は小さい絶縁導体(たとえば、小さい鉱物絶縁導体)である。戻り導体160は、3相Y構成で、変圧器の中性または接地脚部に結合されてもよい。したがって、絶縁導体112は、導管156および地層から電気的に絶縁される。電流を表面に戻すために戻り導体160を使用することにより、加熱器と坑口装置との結合を容易になる可能性がある。いくつかの実施形態において、電流は、図6に示されている、ジャケット118のうちの1つまたは複数を使用して戻される。1つまたは複数のジャケット118は、加熱器の末端でコア114に結合されてもよく、3相Y変圧器の中性端子に電流を戻してもよい。
【0143】
図8は、導管156内の3つの絶縁導体112の末端区間の側面図を示している。末端区間は、地層の表面から最も離れた(遠位の)加熱器の区間である。末端区間は、導管156に結合された接触器区間162を含む。いくつかの実施形態において、接触器区間162は、導管156に溶接またはろう付けされている。終端164は接触器区間162内に配置されている。終端164は、絶縁導体112および戻り導体160に電気的に結合されている。終端164は、絶縁導体112のコアを、加熱器の末端で戻り導体160に電気的に結合させる。
【0144】
特定の実施形態において、図6および図8に示されている、加熱器154は、絶縁導体のコアとして銅を使用している、上層土区間を含む。上層土区間の銅は、加熱器の加熱区間に使用されるコアと同じ直径であってもよい。上層土区間の銅は、加熱器の加熱区間に使用されるコアよりも大きい直径を有してもよい。上層土区間の銅のサイズを増加させることにより、加熱器の上層土区間における損失が減少する可能性がある。
【0145】
図6および図8に示されるような、導管156内に3つの絶縁導体112を含む加熱器は、複数のステッププロセスで作られてもよい。いくつかの実施形態において、複数のステッププロセスは、地層または処理領域の現場で実施される。いくつかの実施形態において、複数のステッププロセスは、地層から離れた遠隔製造場所で実施される。完成した加熱器はその後、処理領域まで搬送される。
【0146】
絶縁導体112は、現場または遠隔地のいずれかでの結束に先立って、事前組み立てされてもよい。絶縁導体112および戻り導体160は、スプール上に配置されてもよい。機械が、選択された速度でスプールから絶縁導体112および戻り導体160を引き出してもよい。絶縁材料の予備成形ブロックは、戻り導体160および絶縁導体112の周りに位置決めされてもよい。一実施形態において、電気絶縁体116’を形成するために、2つのブロックが戻り導体160の周りに位置決めされ、3つのブロックが絶縁導体112の周りに位置決めされる。絶縁導体および戻り導体は、管状に巻かれた導管材料の板に引き込まれるかまたは押し込まれてもよい。板の縁部は、一緒に加圧され、溶接(たとえばレーザ溶接によって)されてもよい。電気絶縁体116’、絶縁導体112の束、および戻り導体160の周りに導管156を形成した後、加熱器の部品の全てが一緒に加圧されてコンパクトでぴったり適合する形状になるように、導管は電気絶縁体160に対して圧縮されてもよい。圧縮中、電気絶縁体は、加熱器内のいずれかの空隙を流れて充填してもよい。
【0147】
いくつかの実施形態において、(電気絶縁体116’、および絶縁導体112の束、および戻り導体160の周りに導管156を含む)加熱器154は、地層の井孔内に配置されているコイル状管状物内に挿入される。コイル状管状物は、地層内の所定位置に残されても(地層の加熱中に残されても)よく、あるいは加熱器の設置後に地層から取り出されてもよい。コイル状管状物は、井孔内への加熱器154のより容易な設置を可能にする場合がある。
【0148】
いくつかの実施形態において、加熱器154の1つまたは複数の部品は変動(たとえば取り外し、移動、または交換)してもよく、その一方で加熱器の動作は実質的に同一のままである。図9は、導管156内に3つの絶縁コア114を有する加熱器154の実施形態を示している。この実施形態において、電気絶縁体116’は、導管156内のコア114および戻り導体160を包囲している。コア114は、コアを包囲する電気絶縁体およびジャケットを伴わずに、導管156内に配置されている。コア114は、各コア114が変圧器の1つの相に結合した状態で、3相Y構成で単一変圧器に結合されている。戻り導体160は、コア114の末端に電気的に結合され、コアの末端から地層の表面にある変圧器まで電流を戻す。
【0149】
図10は、導管156内に3つの絶縁導体112および絶縁戻り導体を備える加熱器154の実施形態を示している。この実施形態において、戻り導体160は、コア114、電気絶縁体116、およびジャケット118を有する絶縁導体である。戻り導体160および絶縁導体112は、電気絶縁体116’によって包囲された導管156内に配置されている。戻り導体160および絶縁導体112は、同じサイズまたは異なるサイズであってもよい。戻り導体160および絶縁導体112は、図6および図8に示された実施形態と実質的に同じように動作する。
【0150】
いくつかの実施形態において、3つの絶縁導体加熱器(たとえば、鉱物絶縁導体加熱器)が一緒に結合されて、単一のアセンブリになっている。単一アセンブリは、長尺に形成されてもよく、高電圧(たとえば、4000Vの公称電圧)で動作してもよい。特定の実施形態において、個別の絶縁導体加熱器は、外部環境からの損傷に耐えるために、耐腐食性ジャケットに囲まれている。ジャケットは、たとえば、MC/CWCMCタイプのケーブルで使用されるものと類似のシーム溶接ステンレス鋼外装であってもよい。
【0151】
いくつかの実施形態において、当技術分野で既知の従来方法によって、3つの絶縁導体加熱器がケーブル接続され、絶縁充填物が添加される。絶縁導体加熱器は、加熱器区間に隣接する地層を抵抗的に加熱して熱を供給する、1つまたは複数の加熱器区間を含んでもよい。絶縁導体は、比較的小さい熱損失で加熱器区間に電気を供給する、1つまたは複数のその他の区間を含んでもよい。個別の絶縁導体加熱器は、巻き取りリール(たとえば、コイル状配管リグ)上に配置される前に、高温繊維テープで包まれてもよい。リールアセンブリは、外側金属外装または外側保護導管の適用のため、別の機械に移動させられてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態において、充填物は、760℃以上の動作温度に耐えられる、ガラス、セラミック、またはその他の耐熱性繊維を含んでもよい。加えて、絶縁導体ケーブルは、多層のセラミック繊維織りテープ材料に包まれてもよい。外側金属外装の適用に先立ってケーブル接続された絶縁導体加熱器の周りにテープを巻き付けることによって、絶縁導体加熱器と外側外装との間に電気的分離が提供される。この電気的分離は、絶縁導体加熱器からの漏れ電流が地表下地層に流入するのを抑制し、いかなる漏れ電流も、個別の絶縁導体外装上の、および/あるいは絶縁導体に結合された引き込み導体または引き出し導体上の電源に、直接戻らせる。引き込みまたは引き出し導体は、絶縁導体が外側金属外装を有するアセンブリ内に配置されるときに、絶縁導体に結合されてもよい。
【0153】
特定の実施形態において、絶縁導体加熱器は、高温セラミック繊維織りテープ材料の代わりに、金属テープまたはその他のタイプのテープで包まれてもよい。金属テープは、絶縁導体加熱器を一緒に保持する。高温繊維ロープの間隔を空けた広ピッチのらせん状ラッピングは、絶縁導体加熱器の周りに巻き付けられてもよい。繊維ロープは、絶縁導体と外側外装との間に電気的分離を提供してもよい。繊維ロープは、組み立て中のいずれの段階において追加されてもよい。たとえば、繊維ロープは、外側外装が追加されるときに、最終組み立ての一部として追加されてもよい。繊維ロープの適用は、多層のセラミックテープの代わりに単層のロープのみで行われるので、繊維ロープの適用は、他の電気的分離法よりも簡単かもしれない。繊維ロープは、多層のセラミックテープよりも安価であるかもしれない。繊維ロープは、絶縁導体と外側外装との間の熱伝達を向上し、かつ/または絶縁導体の周りに外側外装を溶接するために使用されるいずれかの溶接プロセス(たとえば、シーム溶接)による干渉を低減する可能性がある。
【0154】
通常の温度測定方法は、現場熱処理プロセスでの加熱のために地表下地層に配置された加熱器の温度プロファイルの評価で使用するのに実行することが難しく、かつ/または高額であるかもしれない。地表下地層内の加熱器の長さまたは一部分に沿った複数の温度を含む温度プロファイルが、望ましい。熱電対は、可能性のある一解決法である。しかしながら、熱電対は1カ所に1つの温度しか提供せず、通常は各熱電対に2つの電線が必要とされる。このため、加熱器の長さに沿った温度プロファイルを獲得するために、複数対の電線が必要とされる。熱電対(または関連する電線)のうちの1つまたは複数の故障のリスクは、地表下井孔での複数の電線の使用に伴って増加する。加えて、高温用途(>300℃)に設置された熱電対は、温度測定ドリフトとして知られる現象をこうむる可能性がある。温度測定ドリフトは、エラーの主要な原因であるかもしれない。
【0155】
可能性のある別の解決法は、光ファイバケーブル温度センサシステムの使用である。光ファイバケーブルシステムは、加熱器の長さに沿った温度プロファイルを提供する。しかしながら、市販の光ファイバケーブルシステムは通常、約300℃までの動作温度範囲しか有しておらず、結果的に様々な材料が互いに接着することになる、ファイバおよび/またはファイバ被膜の軟化による、機械的損傷に弱い。このため、これらのシステムは、現場熱処理プロセスの際に地表下地層を加熱する間に直面するさらに高温の測定には適していない。いくつかの実験的光ファイバケーブルシステムは、これら高温での使用に適しているが、しかしこれらのシステムは、商用プロセス(たとえば、加熱器の広い分野)で実現するには高額すぎる可能性がある。このため、追加セットのケーブルを用いることなく、現場熱処理プロセスで使用される地表下加熱器の長さに沿って1カ所または複数カ所での温度評価を可能にする、単純で安価なシステムの需要が存在する。
【0156】
現在の手法は、絶縁材の長さに沿って絶縁材の誘電特性の測定を可能にする(絶縁材の長さに沿って分布する誘電特性の測定)。これらの手法は、絶縁材のタイプおよび測定システムの能力に基づく空間分解能(測定の間の間隔)を有する誘電特性のプロファイルを提供する。これらの手法は現在、誘電特性の評価および、絶縁不良および/または絶縁損傷を検出するために使用されている。現在の手法の例は、軸断層撮影および線共鳴分析である。あるバージョンの軸断層撮影(Mashikian Axial Tomography)は、Instrument Manufacturing Company(IMCORP)(米国コネチカット州ストーズ)よって提供される。Mashikian軸断層撮影は、Mashikianの米国特許出願公開第2008−0048668号明細書に開示されている。あるバージョンの線共鳴分析(LIRA)は、Wirescan AS(ノルウェー、ハルデン)より提供される。Wirescan ASのLIRAは、Fantoniの国際公開第2007/040406号に開示されている。
【0157】
誘電特性の評価(現在の手法またはこれらの手法の修正版を用いる)は、1つまたは複数の通電加熱器(電力供給されて熱を供給している加熱器)の温度プロファイルを評価するために、誘電特性の温度依存性に関する情報と組み合わせて使用されてもよい。誘電特性の温度依存性データは、シミュレーションおよび/または実験から見いだされてもよい。時間とともに評価されてもよい絶縁材の誘電特性の実施例は、誘電率および損失正接を含むが、これらに限定されない。図11は、絶縁導体加熱器の一実施形態における酸化マグネシウム絶縁材の誘電率対温度のグラフの一実施例を示している。図12は、絶縁導体加熱器の一実施形態における、酸化マグネシウム絶縁材の、60Hzで測定された損失正接(tanδ)対温度のグラフの一実施例を示している。
【0158】
誘電特性の温度依存挙動が特定の要因に基づいて変動する可能性があることに留意されたい。誘電特性の温度依存挙動に影響を及ぼす可能性のある要因は、絶縁材のタイプ、絶縁材の寸法、絶縁材が環境(たとえば加熱器からの熱)に曝される時間、絶縁材の組成(化学的性質)、含水率、および絶縁材の圧縮度を含むが、これらに限定されない。このため、選択された加熱器で使用されるべき絶縁材の実施形態について、誘電特性の温度依存挙動を(シミュレーションおよび/または実験のいずれかによって)測定することが、通常は必要である。
【0159】
特定の実施形態において、加熱器の長さ(たとえば加熱器の全長または加熱器の一部分)に沿って温度プロファイルを評価(判定)するために、電気絶縁材を有する加熱器内の絶縁材の1つまたは複数の誘電特性が評価(測定)され、誘電特性の温度依存性データと比較される。たとえば、絶縁導体加熱器(鉱物絶縁(MI)ケーブル加熱器など)の温度は、加熱器で使用される絶縁材の誘電特性に基づいて評価されてもよい。絶縁導体加熱器の実施例は、図5A、図5B、および図6に示されている。測定される誘電特性の温度依存性は、既知であるかあるいはミュレーションおよび/または実験から予測されるので、加熱器に沿った位置の測定誘電特性は、その位置の加熱器の温度を評価するのに使用されてもよい。(現在の手法を用いて可能なように)加熱器の長さに沿った複数の位置で誘電特性を測定する手法を用いて、加熱器の長さに沿った温度プロファイルが提供されてもよい。
【0160】
いくつかの実施形態において、図11および図12のグラフによって示されるように、誘電特性は、より高い(たとえば、図11および図12に示されるように、約900°Fを超える)温度で、温度に対してより敏感である。このため、いくつかの実施形態において、絶縁導体加熱器の一部分の温度は、約400℃(約760°F)を超える温度での誘電特性の測定によって、評価される。たとえば、その部分の温度は、約400℃、約450℃、または約500℃から約800℃、約850℃、または約900℃の範囲の温度での誘電特性の測定によって、評価されてもよい。これらの温度範囲は、市販の光ファイバケーブルシステムを用いて測定可能な温度よりも高い。しかしながら、より高い温度範囲での使用に適した光ファイバケーブルシステムは、誘電特性の測定による温度評価よりも高い空間分解能での測定を提供する。このため、いくつかの実施形態において、より高い温度範囲で動作可能な光ファイバケーブルシステムは、誘電特性の測定による温度評価を較正するために使用されてもよい。
【0161】
これらの温度範囲より低い(たとえば、約400℃未満の)温度で、誘電特性の測定による温度評価は、正確さにおいて劣るかもしれない。しかしながら、誘電特性の測定による温度評価は、加熱器の部分の妥当な予測または「平均」温度を提供する可能性がある。平均温度評価は、加熱器が約500℃未満、約450℃未満、または約400℃未満の温度で動作しているかどうかを評価するために使用されてもよい。
【0162】
誘電特性の測定による温度評価は、絶縁導体加熱器の長さまたは部分に沿った温度プロファイル(加熱器の長さまたは部分に沿って分布する温度測定値)を提供する可能性がある。温度プロファイルの測定は、選択位置のみにおいて温度測定を行う場合(熱電対を用いる温度測定など)と比較して、加熱器を監視および制御するのにより有用である。温度プロファイルを提供するために、多数の熱電対が使用されてもよい。しかしながら、多数の電線(各熱電対に1つ)が必要とされるであろう。誘電特性の測定による温度評価は温度プロファイルの測定に1つの電線のみを使用するが、これは多数の熱電対を使用するよりも単純で安価である。いくつかの実施形態において、選択位置に配置された1つまたは複数の熱電対は、誘電特性の測定による温度評価を較正するために使用される。
【0163】
特定の実施形態において、絶縁導体加熱器の絶縁材の誘電特性は、一定期間にわたって加熱器の温度および動作特性を評価するために、その期間にわたって評価(測定)される。たとえば、誘電特性は、誘電特性および温度のリアルタイムの監視を提供するために、連続的に(または実質的に連続的に)評価されてもよい。誘電特性および温度の監視は、加熱器の動作中に加熱器の状態を評価するために使用されてもよい。たとえば、加熱器の長さにわたる平均特性に対する特定位置の評価特性の比較は、加熱器のホットスポットまたは欠陥の位置に関する情報を提供するかもしれない。
【0164】
いくつかの実施形態において、絶縁材の誘電特性は、時間とともに変化する。たとえば、誘電特性は、時間に応じた絶縁材の酸素濃度の変化および/または時間に応じた絶縁材の含水量の変化のため、時間とともに変化するかもしれない。絶縁材中の酸素は、クロムまたは絶縁導体加熱器で使用されるその他の金属によって消費される可能性がある。このため、酸素濃度は、絶縁材中で時間とともに減少し、絶縁材の誘電特性に影響を及ぼす。
【0165】
時間にわたる誘電特性の変化は、実験および/またはシミュレーションデータを通じて測定および補償されてもよい。たとえば、温度評価に使用されるべき絶縁導体加熱器は、オーブンまたはその他の装置内で加熱されてもよく、誘電特性の変化は、様々な温度および/または一定温度で時間をかけて測定されることが可能である。加えて、誘電特性によって評価された温度と熱電対データとの比較によって時間にわたる誘電特性変化の評価を較正するために、熱電対が使用されてもよい。
【0166】
特定の実施形態において、誘電特性の測定による温度評価は、ワークステーションまたはコンピュータなどの計算システムを用いて実施される。計算システムは、加熱器に沿った誘電特性の測定結果(評価結果)を受信してもよく、加熱器上の1つまたは複数の位置で温度を評価するために、これらの測定誘電特性を相互に関連づけてもよい。たとえば、計算システムは、誘電特性と温度との関係に関するデータ(図11および図12に示されるデータなど)および/または時間を保存してもよく、また、測定誘電特性に基づいて加熱器上の温度を算出するために、この保存データを使用してもよい。
【0167】
特定の実施形態において、誘電特性測定による温度評価は、地表下地層に熱を供給する通電加熱器上(たとえば、抵抗加熱するために電力が供給されて、絶縁導体の部分から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給する、絶縁導体加熱器の少なくとも一部分)で実施される。通電加熱器上で温度を評価することにより、実際に地層に熱を供給している装置の絶縁材の欠陥の検出が可能になる。しかしながら、通電加熱器上で温度を評価することは、加熱器が抵抗加熱しているので、加熱器に沿った信号の減衰のため、より困難であるかもしれない。この減衰は、加熱器の長さにわたってさらに(加熱器に沿ってより地層深くまで)見ることを抑制するかもしれない。いくつかの実施形態において、加熱器の上部区間(上層土に近い方の加熱器の区間、たとえば加熱器の上半分または上3分の1)の温度は、これらの区間ではより加熱器に印加される電圧がより高く、より高い温度であり、故障またはホットスポット生成の危険性も高いので、評価にとってより重要となる可能性がある。誘電特性測定による温度評価における信号減衰は、これらの区間と表面との近接のため、これら上部区間においてそれほど重要な要因ではないかもしれない。
【0168】
いくつかの実施形態において、絶縁導体加熱器への電力は、温度評価を実施する前に遮断される。電力はその後、温度評価の後に絶縁導体加熱器に戻される。このため、絶縁導体加熱器は、温度を評価するために加熱オン/オフ周期を受ける。しかしながら、このオン/オフ周期は、熱サイクルのため、加熱器の寿命を短縮させるかもしれない。加えて、加熱器は、非通電期間の間は冷たくなり、より正確ではない温度情報(加熱器の実際の使用温度に関するあまり正確ではない情報)を提供する可能性がある。
【0169】
特定の実施形態において、誘電特性測定による温度評価は、加熱に使用されるべきではない、または加熱に向けに構成されていない絶縁導体上で実施される。このような絶縁導体は、別個の絶縁導体温度プローブであってもよい。いくつかの実施形態において、絶縁導体温度プローブは、非通電加熱器(たとえば、電力供給がされない絶縁導体加熱器)である。絶縁導体温度プローブは、開口部の温度を測定するために地表下地層の開口部内に配置されることが可能な、独立型装置であってもよい。いくつかの実施形態において、絶縁導体温度プローブは、プローブ上の一方向に送信される信号を有する、開口部内を出て戻ってくる、ループプローブである。いくつかの実施形態において、絶縁導体温度プローブは、コアに沿って送信されて絶縁導体の外装に沿って戻ってくる信号を有する、単一の吊り下げプローブである。
【0170】
特定の実施形態において、絶縁導体温度プローブは、酸化マグネシウム絶縁材によって包囲された銅製コア(ケーブルの末端へのより良い伝導性およびより良い空間分解能を提供するため)、および外側金属外装を含む。外側金属外装は、地表下開口部での使用に適したいずれの材料で作られてもよい。たとえば、外側金属外装は、ステンレス鋼外装、またはステンレス鋼の外側外装で包まれた銅の内側外装であってもよい。通常、絶縁導体温度プローブは、外側金属外装によって耐えられる温度および圧力までで動作する。
【0171】
いくつかの実施形態において、絶縁導体温度プローブは、通電加熱器に沿って温度を測定するために、開口部内の通電加熱器に隣接してまたはその付近に配置されている。絶縁導体温度プローブと通電加熱器との間には、温度差があってもよい(たとえば、約50℃と約100℃の間の温度差)。この温度差は、実験および/またはシミュレーションを通じて評価されてもよく、温度測定によって説明されてもよい。温度差はまた、通電加熱器に取り付けられた1つまたは複数の熱電対を用いて較正されてもよい。
【0172】
いくつかの実施形態において、温度評価に使用される絶縁導体(通電絶縁導体加熱器または非通電絶縁導体温度プローブのいずれか)に、1つまたは複数の熱電対が取り付けられている。取り付けられた熱電対は、誘電特性測定によって絶縁導体上で評価される温度の較正および/またはバックアップ測定に使用されてもよい。いくつかの実施形態において、較正および/またはバックアップ温度表示は、所与の印加電圧における絶縁導体のコアの抵抗変動の評価によって実現される。温度は、所与の電圧におけるコア材料の温度プロファイルに対する抵抗を知ることによって、評価されてもよい。いくつかの実施形態において、絶縁導体はループであり、地表下開口部の通電加熱器からループに誘導される電流は、抵抗測定の入力を提供する。
【0173】
特定の実施形態において、絶縁導体の絶縁材料特性は、温度に対する異なる感度を絶縁導体に提供するために、変化される。変化してもよい絶縁材料特性の実施例は、化学成分および相成分、微細構造、ならびに/または絶縁材料の混合を含むが、これらに限定されない。絶縁導体の絶縁材料特性を変化させることにより、絶縁導体が選択温度範囲に適合することが可能になる。選択温度範囲は、たとえば、絶縁導体の所望の用途に合わせて選択されてもよい。
【0174】
いくつかの実施形態において、絶縁材料特性は、絶縁導体の長さに沿って変化される(絶縁材料特性は、絶縁導体中の選択された点ごとに異なる)。絶縁導体の長さに沿った既知の位置での絶縁材料の特性を変化させることにより、誘電特性の測定が位置情報を与えること、および/または温度評価の提供に加えて絶縁導体の自己較正を提供することが可能になる。いくつかの実施形態において、絶縁導体は、その部分を反射器として機能させる絶縁材料を有する部分を含む。反射器部分は、温度評価を絶縁体の特性部分(たとえば、絶縁導体の特定の長さ)に限定するために使用されてもよい。1つまたは複数の反射器部分は、絶縁導体の長さに沿って空間マーカを提供するために使用されてもよい。
【0175】
絶縁材料特性を変化させることにより、絶縁材料の活性化エネルギーを調節する。通常、絶縁材料の活性化エネルギーを増加させることにより、絶縁材料の減衰が低減され、より良い空間分解能が提供される。活性化エネルギーを低下させることにより、通常、より良い温度感受性が提供される。活性化エネルギーは、たとえば、絶縁材料に異なる成分を添加することによって、上昇または低下させられてもよい。たとえば、酸化マグネシウム絶縁材に特定の成分を添加することにより、活性化エネルギーが低下される。活性化エネルギーを低下させるために酸化マグネシウムに添加されてもよい成分の例は、酸化チタン、酸化ニッケル、および酸化鉄を含むが、これらに限定されない。
【0176】
いくつかの実施形態において、温度は、2つ以上の絶縁導体を用いて評価される。絶縁導体の絶縁材料は、空間分解能に多様性を付与するための異なる活性化エネルギー、および地表下開口部の温度をより正確に評価するための温度感受性を有してもよい。より良い空間分解能を提供し、ホットスポットの位置またはその他の温度変動をより正確に特定するために、高活性化エネルギー絶縁導体が使用されてもよく、その一方で低活性化エネルギー絶縁導体は、これらの位置においてより正確な温度測定を提供するために使用されてもよい。
【0177】
いくつかの実施形態において、温度は、絶縁導体からの漏れ電流を評価することによって評価される。評価(測定)された絶縁導体からの漏れ電流に基づいて温度を評価するために、漏れ電流の温度依存性データが使用されてもよい。測定された漏れ電流は、地表下開口部に配置された1つもしくは複数の加熱器または絶縁導体の温度プロファイルを評価するために、漏れ電流の温度依存性に関する情報と組み合わせて使用されてもよい。漏れ電流の温度依存性データは、シミュレーションおよび/または実験から見いだされてもよい。特定の実施形態において、漏れ電流の温度依存性データもまた、加熱器に印加される電圧に依存している。
【0178】
図13は、異なる60Hz印加電圧での絶縁導体加熱器の一実施例における、酸化マグネシウム絶縁材の漏れ電流(mA)対温度(°F)のグラフの例を示している。曲線166は、4300Vの印加電圧のものである。曲線168は、3600Vの印加電圧のものである。曲線170は、2800Vの印加電圧のものである。曲線172は、2100Vの印加電圧のものである。
【0179】
図13のグラフによって示されるように、漏れ電流は、温度が高いほど(たとえば、482℃(約900°F)を超えると)温度に対して敏感である。このため、いくつかの実施形態において、絶縁導体加熱器の一部分の温度は、約500℃(約932°F)超の、あるいは約500℃から約870℃、約510℃から約810℃、または540℃から約650℃の範囲の温度での漏れ電流の測定によって、評価される。
【0180】
加熱器の長さに沿った温度プロファイルは、当技術分野において既知の手法を用いて加熱器の長さに沿って漏れ電流を測定することによって、獲得されてもよい。いくつかの実施形態において、漏れ電流の測定による温度の評価は、誘電特性測定による温度評価と組み合わせて使用される。たとえば、漏れ電流の測定による温度評価は、誘電特性の測定によって作成された温度評価を較正および/またはバックアップするために、使用されてもよい。
【0181】
本発明は、当然ながら変更されてもよい、記載された特定のシステムに限定されないことは、理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、限定されるように意図されるものではないこともまた、理解されるべきである。本明細書で使用される際に、単数形の「a」、「an」、および「the」は、その内容において別途明確に指示されない限り、複数の対象物を含む。このため、たとえば、「コア」という表現は2つ以上のコアの組み合わせを含み、「材料」という表現は複数の材料の混合物を含む。
【0182】
本発明の様々な態様のさらなる修正形態および代替実施形態は、本明細書に照らして、当業者にとって明らかとなるであろう。したがって、この記載は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する一般的な方法を当業者に教示することを目的とする。本明細書に提示および記載される本発明の形態は、現時点で好適な実施形態と見なされるべきであることは、理解されたい。要素および材料は本明細書に図示および記載されているものと置き換えられてもよく、部品およびプロセスは入れ替えられてもよく、本発明の特定の特徴は独立して利用されてもよく、これらの全ては、本発明のこの記載の恩恵を有した後に当業者にとって明らかになる。以下の請求項に記載される本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、本明細書に記載される要素に変更がなされてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表下地層の開口部内の温度を評価する方法であって、
開口部内に配置する絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の誘電特性を評価するステップと、
1つまたは複数の評価済み誘電特性に基づいて、絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の温度を評価するステップとを含む、方法。
【請求項2】
絶縁導体の少なくとも一部分に電力を供給するステップと、絶縁導体の部分から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開口部に配置された少なくとも1つの追加絶縁導体に電力を供給するステップと、追加絶縁導体から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の温度を評価するステップが、誘電特性の温度依存性データを評価済み誘電特性と比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
誘電特性のうちの少なくとも1つが誘電率を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
誘電特性のうちの少なくとも1つが損失正接を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1つまたは複数の評価済み温度が約400℃超である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の評価済み温度が約400℃から約900℃の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数の評価済み温度が、絶縁導体の長さに沿って異なる位置に分布する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
誘電特性の温度依存性データを記憶するように構成された計算システムを用いて1つまたは複数の温度を評価するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
評価された絶縁導体の長さが、最大で絶縁導体の上半分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
絶縁導体が、コア、コアを包囲する絶縁材料、および絶縁材料を包囲する外側外装を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
絶縁導体が、絶縁導体の長さに沿って変化する特性を有する絶縁材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
地表下地層の開口部内の温度を評価する方法であって、開口部内の加熱器の1つまたは複数の誘電特性を評価するステップを含む、方法。
【請求項15】
1つまたは複数の誘電特性を有する絶縁導体を含む、地表下地層の開口部内の温度を評価するシステム。
【請求項1】
地表下地層の開口部内の温度を評価する方法であって、
開口部内に配置する絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の誘電特性を評価するステップと、
1つまたは複数の評価済み誘電特性に基づいて、絶縁導体の長さに沿って1つまたは複数の温度を評価するステップとを含む、方法。
【請求項2】
絶縁導体の少なくとも一部分に電力を供給するステップと、絶縁導体の部分から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
開口部に配置された少なくとも1つの追加絶縁導体に電力を供給するステップと、追加絶縁導体から地表下地層に少なくともある程度の熱を供給するステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の温度を評価するステップが、誘電特性の温度依存性データを評価済み誘電特性と比較するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
誘電特性のうちの少なくとも1つが誘電率を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
誘電特性のうちの少なくとも1つが損失正接を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1つまたは複数の評価済み温度が約400℃超である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の評価済み温度が約400℃から約900℃の範囲内である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
1つまたは複数の評価済み温度が、絶縁導体の長さに沿って異なる位置に分布する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
誘電特性の温度依存性データを記憶するように構成された計算システムを用いて1つまたは複数の温度を評価するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
評価された絶縁導体の長さが、最大で絶縁導体の上半分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
絶縁導体が、コア、コアを包囲する絶縁材料、および絶縁材料を包囲する外側外装を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
絶縁導体が、絶縁導体の長さに沿って変化する特性を有する絶縁材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
地表下地層の開口部内の温度を評価する方法であって、開口部内の加熱器の1つまたは複数の誘電特性を評価するステップを含む、方法。
【請求項15】
1つまたは複数の誘電特性を有する絶縁導体を含む、地表下地層の開口部内の温度を評価するシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2013−507617(P2013−507617A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533357(P2012−533357)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/052027
【国際公開番号】WO2011/044489
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/052027
【国際公開番号】WO2011/044489
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]