説明

均一マルチプレックススクリーニングアッセイおよびキット

多数の可能な核酸標的(それらのうちのいずれかはサンプル中に存在しうる)に関する高マルチプレックス化均一in vitroスクリーニングアッセイは、発蛍光団のパネルから組合せコードされている蛍光ハイブリダイゼーションプローブを使用するものであり、各プローブを幾つかの部分に細分し各部分を異なって標識してそれらの部分が組合された場合に各プローブが固有のコードを有するようにすることにより、該組合せコードを行う。該アッセイは標的の増幅およびリアルタイム検出を含みうる。追加的なアッセイ試薬を含有するキットおよびプローブセットを使用して、該スクリーニングアッセイを行うことが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の核酸配列のいずれかの存在に関して生物学的サンプルをスクリーニングするための、特に均一増幅アッセイを含む均一in vitroマルチプレックス化(multiplexed;多重化)アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の起源のいずれかから得た生物学的サンプルを、例えば特定の細菌、ウイルスまたは他の病原体(特定の株または突然変異体を含む)の存在を示しうる核酸配列の存在に関して試験するためには、種々のアッセイ技術が利用可能である。例えばいずれかの疾患関連遺伝的突然変異の存在を示しうる被検体自身のゲノムDNAの核酸配列の存在に関してそのようなサンプルを試験するためのアッセイも利用可能である。アッセイは、検出可能な標識、例えばP32または発蛍光団を含有するオリゴヌクレオチドプローブを含みうる。サンプル中の核酸は、DNAであってもRNAであっても、直接的にプローブされうる。あるいは、アッセイは、いくつかの増幅技術、例えばPCR、NASBAまたはTMAのいずれかによる標的配列の増幅を含みうる。増幅アッセイは、インターカレーション色素、例えばSYBRグリーンまたは蛍光標識プローブ、例えば5'ヌクレアーゼプローブ(Livak, K.J.ら, (1995), Oligonucleotides with fluorescent Dyes at Opposite Ends Provide a Quenched Probe System Useful for Detecting PCR Product and Nucleic Acid Hybridization, PCR Meth. Appl. 4: 357-362)、二重FRETプローブ(Espy, M.J.ら, (2002), Detection of Vaccinia Virus, Herpes Simplex Virus, Varicella-Zoster Virus, and Bacillus anthracis by LightCycler Polymerase Chain Reaction after Autoclaving: Implications for Biosafety of Bioterrorism Agents, Mayo Clin. Proc. 77: 624-628)または分子ビーコンプローブ(Tyagi, S.およびKramer, F.R. (1996), Molecular Beacons: Probes that Fluoresce upon Hybridization, Nature Biotechnol. 14: 303-308; Tyagi, S.ら, (1998), Multicolor Molecular Beacons for Allele Discrimination, Nature Biotechnol. 16: 49-53)を使用して、リアルタイムでモニターすることが可能である。TaqMan二重標識直鎖状プローブおよび5'ヌクレアーゼ検出法によるPCR増幅を用いる、あるいはPCR増幅および分子ビーコンプローブを用いるリアルタイムマルチプレックスアッセイが示されている(Tyagi. S.ら, (1998), 前掲; Vet, J.A.ら, (1999), Multiplex Detection of Four Pathogenic Retroviruses Using Molecular Beacons, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 6394-6399; El-Hajj, H.ら, (2001), Detection of Rifampin Resistance in Mycobacterium tuberculosis in a Single Tube with Molecular Beacons, J. Clin. Microbiol. 39: 4131-4137)。現在のところ、蛍光に基づくマルチプレックスアッセイは、発光スペクトルにおける重複を最小にする必要があるため、サンプル当たり約8標的に制限されており、したがって、高マルチプレックス化(highly multiplexed;高多重化)スクリーニングアッセイとしての使用に拡張することはできない。
【0003】
高マルチプレックス化アッセイは、シグナルの分離のための、標的の空間的分離に基づく。空間的分離は、異なる色の発蛍光団の組合せ(組合せコーディング(combinatorial coding))、異なる量の各発蛍光団の組合せ(比コーディング(ratio coding))およびそれらの両方を含むコード形式の使用を可能にする。空間的分離によるアッセイの一例は、染色体解析のための蛍光in situハイブリダイゼーション、すなわちFISHである。Speicherら, (1996), Karyotyping Human Chromosomes by Combinatorial Multi-fluor FISH, Nature Genet. 12: 368-375は、例えば、染色体分析のための、6個の異なる発蛍光団のセットを使用して組合せ標識された27個のプローブの使用を報告している。同様に、細胞核内の転写部位の分離は、部位当たりに複数の単一標識プローブを使用した組合せコーディングおよび比コーディングを可能にしている(Singer, R.H., 国際 (PCT) 特許出願WO 00/65094; Levsky, J.M.ら, (2002), Single-Cell Gene Expression Profiling, Science 297: 836-840)。もう1つの空間的分離プローブ技術は、DNAチップ上のアレイを含むマルチプレックスプローブアレイの使用である(Schena, M.ら, (1995), Quantitative Monitoring of Gene Expression Patterns with a Complementary DNA Microarray, Science 20: 467-470; Gingeras, T.R.ら, (1998), Simultaneous Genotyping and Species Identification Using Hybridization Pattern Recognition Analysis of Generic Mycobacterium DNA Arrays. Genet. Res. 8: 435-448; Hanら, (2001), Quantum-Dot-Tagged Microbeads for Multiplexed Optical Coding of Biomolecules, Nature Biotechnol. 19, 631-635)。もう1つの分離アプローチは、異なる長さの連結プローブペアを分離するための電気泳動の使用である(Tong, A.K., (2001), Combinatorial Fluorescence Energy Transfer Tags for Multiplex Biological Assays, Nature Biotechnol. 19: 756-759)。SNP検出のためのオリゴヌクレオチド連結アッセイ(「OLA」)の変法であるその方法においては、異なって標識されたプローブを連結して標的上のプローブを捕捉し、ハイブリッドを固定化し、洗浄し、遊離させ、電気泳動により互いから分離し、色と比との組合せである各プローブ蛍光コードを読み取る。アレイ法および電気泳動法は依然として技術的に複雑であり、増幅、ハイブリダイゼーション、洗浄および分析を含む多数の分離工程を要する。
【0004】
そのようなアッセイが必要とされているにもかかわらず、高マルチプレックス化スクリーニングアッセイとしての使用に適した均一蛍光ハイブリダイゼーションアッセイは、現在のところ利用不可能である。プロテアーゼインヒビターでのHIV-1ウイルスの抑制治療中には、例えば、約30個の突然変異のいずれかが時間経過と共に増殖し、治療の変更を迫る可能性がある(Hirsch, M.S.ら, (1998), Antiretroviral Drug Resistance testing in Adults with HIV Infection, JAMA 279: 1984-1991)。高マルチプレックス化スクリーニングアッセイが存在しないため、現在の実施は、患者のウイルス負荷の増加に応答して該ウイルスを配列決定するというものである。生じる突然変異体は、存在する唯一の対立遺伝子ではないため、配列決定は困難となる。特定の症状、例えば発熱を示す患者の初期診断中に、患者の症状の原因でありうる多数の考えられうる感染性因子の1つの初期指標に関してスクリーニングするために高マルチプレックス化均一アッセイを利用することは不可能である。
【0005】
本発明の1つの態様は、通常の蛍光検出装置および技術ならびに蛍光標識ハイブリダイゼーションプローブを使用して、少なくとも10個、そして60個以上もの考えられうる標的からの標的核酸配列の存在に関してサンプルをスクリーニングするための高マルチプレックス化均一アッセイである。
【0006】
本発明のもう1つの態様は、病原体が無ければ無菌であるサンプル(例えば、血液)中で見出されうる少量の該病原体を検出しうる、場合によってはリアルタイム検出と共に標的増幅を用いるそのようなスクリーニングアッセイである。
【0007】
本発明の更にもう1つの態様は、本発明の個々のスクリーニングアッセイを行うためのキットおよびオリゴヌクレオチドセットである。
【発明の開示】
【0008】
概要
本発明のアッセイは、スクリーニングに適した高マルチプレックス化アッセイである。「高マルチプレックス化(highly multiplexed)」は、アッセイが、少なくとも6個、好ましくは少なくとも10個、ある実施形態においては30〜60個、さらにはそれ以上の可能な標的配列を検出しうることを意味する。
【0009】
本発明のアッセイは、蛍光標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用する均一核酸in vitroアッセイである。「均一」は、標的を空間的に分離することなく且つ未結合ハイブリダイゼーションプローブを洗い落とすことなく溶液中で核酸標的が検出されることを意味する。反応混合物自体から蛍光シグナルを得る。ある好ましい実施形態は、サンプル中の少量の病原体の検出を可能にする例えばPCRまたはNASBAによる標的の増幅を含む。増幅を用いる場合には、同時に試験している他のサンプル、未だ試験していないサンプル、装置および作業者の汚染を防ぐために、反応容器、例えばミクロ遠心管を密封する。
【0010】
本発明によるアッセイにおける検出は、蛍光標識された核酸ハイブリダイゼーションプローブによるものである。蛍光標識は、刺激されると、電磁スペクトルの可視、紫外または近赤外部における放射線を放出する。各プローブは、スクリーニングされている多数の可能な標的のなかの1つの標的に特異的である。アッセイの目的および設計が細菌種間の識別である場合には、種に対するプローブ、例えば、エム・ツベルクローシス(M. tuberculosis)の保存領域に対するプローブを設計し、または同じ種の複数の株の非同一配列にハイブリダイズするプローブを設計する。一方、目的が株または突然変異対立遺伝子間の識別である場合には、必要な識別を達成しプローブを株特異的にするために、可変領域に対する各プローブを設計する。本発明における使用に好ましいプローブは分子ビーコンプローブであり、これは、個々のアッセイの要求に応じて、ミスマッチ許容またはミスマッチ非許容とされうる。当技術分野で公知のとおり、標的配列の選択およびプローブの設計は、偽陰性および偽陽性の両方が最小となるよう調整される。
【0011】
マルチプレックス能は、識別可能な発蛍光団のパネルを使用する、比コーディングを伴う又は好ましくは伴わない組合せコーディングにより達成される。組合せコードにおいては、各コード要素は、異なる標識(この場合は色)のその特有のパターンにより同定される。組合せコードは、コード要素当たり4個までの異なる発蛍光団を含む。異なる発蛍光団は、少なくとも4個の識別可能な発蛍光団のパネル、より好ましくは、4〜8個の識別可能な発蛍光団のパネルからのものである。組合せコードは、コード要素が2色(これは、場合によっては、1色の追加的コード要素により拡張される)を含む二重コーディングでありうる。組合せコードは、コード要素が3色[これは、場合によっては、2色の追加的コード要素により拡張され(二重コードと組合された三重コード)、場合によっては、1色のコード要素により拡張される]を含む三重コーディングでありうる。組合せコードは、コード要素が4色(これは、場合によっては、3色、2色もしくは1色またはそれらの何らかの組合せの追加的なコード要素により拡張される)を含む四重コーディングでありうる。
【0012】
コード要素としてプローブに割当てられたパターンを該プローブに付与するために個々のプローブ分子を複数の色で標識する代わりに、各プローブを、必要な部分数に細分し、異なる色シグナルを放出するよう各部分を標識する。ついで、対応標的にハイブリダイズした際にコード要素の特有の色シグナルパターンを含むプローブを作製するために、該部分を混合する。
【0013】
好ましい高消光プローブ、例えば分子ビーコンプローブの場合には、各部分は単一色を放出する。2つの異なる相互作用性発蛍光団、例えば5'-ヌクレアーゼプローブで標識されたそれほど好ましくないプローブの場合には、1つの選択肢は、共通の短波長発蛍光団(本明細書中では「ハーベスター(harvester)」発蛍光団と称される)を使用し、長波長発蛍光団(本明細書中では「エミッター(emitter)」発蛍光団と称される)を変化させ、後者におけるシグナルの変化を検出することである。その場合、各部分は、異なる色のシグナルを放出するであろう。もう1つの選択肢はその逆である。すなわち、共通のエミッター発蛍光団を使用し、ハーベスター発蛍光団を変化させ、後者におけるシグナルの変化を検出するというものである。その場合も、各部分は、異なる色のシグナルを放出するが、コーディングの目的には、検出されるエミッターとなるのはハーベスターである。一方、第3の選択肢では、両方の発蛍光団を変化させて、それらの発光における比の変化の検出が可能となるようにして、1つの部分からのシグナルが比a/bとなり、第2の部分からの比が比c/dとなり、第3の部分からの比がe/fとなるようにする。ここで、a、b、c、d、eおよびfは、識別可能な発蛍光団である。この場合、長波長発蛍光団を変化させ、該長波長発蛍光団は、いずれかの与えられたプローブ部分から得られるシグナルを特徴づけるとみなされうる。理解を容易にするために、本出願および図面における組合せコードの説明で一般的に記載されている実施形態においては、各プローブ部分ごとに、個々の色の放出を検出し、それがエミッター発蛍光団として特徴づけられうる。該教示は、比を使用する実施形態にも適用され、当業者は、該教示をそれらの実施形態に適用しうると理解されるべきである。
【0014】
例えば、8つの異なる発蛍光団のパネルから開始し、各プローブを4つの部分に細分し、それらの4つの部分のそれぞれを異なる色で標識することを選択した場合には、コード表は70通りもの異なる組合せを含みうる。同じサイズの発蛍光団のパネルから開始し、各プローブを3つの部分に細分し、それらの3つの部分のそれぞれを異なる色で標識した場合には、コード表は56通りもの異なる組合せを含みうる。同じサイズの発蛍光団のパネルから開始し、各プローブを2つの部分に細分し、それらの2つの部分のそれぞれを異なる色で標識した場合には、コード表は28通りもの異なる組合せを含みうる。4色、3色および2色のコードを互いに及び更には1色のコードと組合せることが可能であるが、本発明者の最も好ましい実施形態はそのような組合せを含まない。比コーディングにおいては、識別のために、異なる量の同じ標識を使用する。本発明の組合せコードは、比コーディング、好ましくは、整数比コーディング(すなわち、2:1、3:1、4:1または5:1のような整数の比)で増強されることが可能であり、その逆も成り立つ。分子ビーコンプローブの部分を非蛍光消光剤および1つのシグネチャー(signature)色発蛍光団で標識することが好ましく、最も好ましくは、後記で説明する理由により、その場合、比コーディングの追加を伴わないのが好ましい。
【0015】
前記のとおり、本発明のアッセイは均一検出アッセイである。標的の分離は行わない。標的に結合したプローブからの未結合プローブの分離は行わない。したがって、本発明のアッセイにおいては、標的にハイブリダイズしているプローブを示す検出可能なシグナル変化が存在しなければならない。好ましい分子ビーコンプローブは、アッセイにおける検出温度における自由浮動(free-floating)の際には高度に消光されるが、それらのそれぞれの標的にハイブリダイズするとコンホメーションを変化させ蛍光発光する。標的へのハイブリダイゼーションにより蛍光が回復し本発明のアッセイでの使用に一般に適しているもう1つのタイプのプローブは、標的相補鎖上の発蛍光団と競合鎖上の消光剤とで標識された二分子プローブである「イン・ヤン(yin-yang)」プローブである(Li, Q.ら, (2002), A New Class of Homogeneous Nucleic Acid Probes Based on Specific Displacement Hybridization, Nucleic Acids Res. 30: e5)。他のプローブ-アッセイ形式は、標的にハイブリダイズしているプローブを示す蛍光シグナル変化を与える。5'-ヌクレアーゼ検出法においては、2つの異なる発蛍光団を有する末端標識された直鎖状(またはランダムコイル状)のプローブが、自由浮動の際には蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により相互作用するが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅におけるプライマー伸長中に切断されて、シグナル変化を与える(短波長発蛍光団からの発光が増加し、長波長発蛍光団からの発光が減少し、それに応じて、それらの2つの比が変化する)(Livak, K.J.ら, (1995), 前掲)。もう1つの系である、いわゆる、ライトサイクラー(LightCycler)プローブは、逆の様態で作用する。各プローブは、標的上で隣り合ってハイブリダイズする蛍光標識された直鎖状オリゴヌクレオチドのペアであり、FRETにより相互作用し、それにより、シグナル変化を与える(短波長発蛍光団からの発光が減少し、長波長発蛍光団からの発光が増加し、それに応じて、それらの2つの比が変化する)(Espy, M.J.ら, (2002), 前掲)。FRET系の場合、
本明細書中では、短波長発蛍光団は「ハーベスター」と称され、長波長発蛍光団は「エミッター」と称される。しかし、FRET消光から生じるバックグラウンドは、分子ビーコンプローブおよびイン・ヤン・プローブにおいて一般に使用される接触媒介性消光より相当に高いため(Tyagi ら, (1998), 前掲; Marras, S.A.E.ら, (2002), Efficiencies of Fluorescence Resonance Energy Transfer and Contact-Mediated Quenching in Oligonucleotide Probes, Nucleic Acids Res. 30: e122)、FRET消光は本発明のスクリーニングアッセイには好ましくない。本発明のアッセイは、好ましくは、分子ビーコンプローブまたはイン・ヤン・プローブのような接触媒介性消光により消光されるプローブを使用する。本発明者にとって最も好ましいプローブは、非蛍光消光剤を含む分子ビーコンプローブである。これらのプローブが最も好ましいのは、それらの低いバックグラウンドシグナルのみならず、マルチプレックス系へのそれらの設計のし易さのためでもある(Bonnet, G.ら, (1998), Thermodynamic Basis of the Enhanced Specificity of Structured DNA Probes, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 6171-6176)。
【0016】
本発明のアッセイは、標的増幅を用いる実施形態を含むが、それらに限定されるものではない。いくつかの指数関数的増幅技術がよく知られている。それらとしては、加熱サイクルを含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、等温増幅法、例えば核酸配列に基づく増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介性増幅(TMA)、ローリング・サークル(rolling-circle)増幅(RCA)および分枝化(ramification)増幅法(RAM)が挙げられる。増幅アッセイの実施形態は終点検出またはリアルタイム検出を用いうる。サンプルチューブを開くことにより生じるサンプル間の交差汚染の可能性を最小にするために、ハイブリダイゼーションプローブの存在下、密封された環境中、例えば密封チューブ中で増幅を行うのが好ましい。
【0017】
サンプル源により限定されるものではないが、本発明のアッセイは、有利には、通常は無菌であると称されることもある、血液、組織または髄液のようなヒトまたは動物サンプルを使用しうる。そのようなサンプルは、例えば喀痰、便または環境サンプルと比較して有利である。なぜなら、それらは、増幅および検出を潜在的に妨げうる外来性DNA配列を、より少量しか含有しないからである。細菌感染症から生じる敗血症症候群においてさえも、少なくとも少量の多数の病原体が患者の血液中に見出されうることが公知である。個々のスクリーニングアッセイが許容する場合には、非無菌源ではなく、通常は無菌であるサンプル源を使用することが好ましい。
【0018】
本発明の或る増幅アッセイは、有利には、スクリーニングされている全て又は多数の核酸標的を増幅するプライマーを使用しうる。突然変異に関するスクリーニングの場合には、関心のある個々の可変性核酸配列中に多数の可能な突然変異が生じる可能性があり、その領域に隣接する1つのプライマーペアを使用して、すべてのそのような可能な突然変異を増幅することが可能である。これらの、いわゆる「汎用プライマー(universal primers)」のうちの或るものは、複数の種の保存領域に結合し、多数の標的、例えば種々の細菌の遺伝子の増幅に使用される。例えば、Kox, L.F.F.ら, (1995), PCR Assay Based on DNA Coding for 16S rRNA for Detection and Identification of Mycobacteria in Clinical Samples. J. Clin. Microbiol. 33: 3225-3233; Iwen, P.C.ら, (1995), Evaluation of Nucleic Acid-Based Test (PACE 2C) for Simultaneous detection of Chlamydia trachomatis and Neisseria gonorrhoeae in Endocervical Specimens, J. Clin. Microbiol. 33: 2587-2591; Yang, S.ら, (2002), Quantitative Multiprobe PCR Assay for Simultaneous Detection and Identification to Species Level of Bacterial Pathogens, J. Clin. Microbiol. 40: 3449-3454; Schonhuber, W.ら, (2001), Utilization of mRNA Sequences for Bacterial Identification, BMC Microbiol. 1: 2; Wong, R.S.およびChow, A.W. (2002), Identification of Enteric Pathogens by Heat Shock Protein 60kDa (HSP 60) Gene Sequences, FEMS Microbiol. Lett. 206: 107-113を参照されたい。個々のスクリーニングアッセイには、1つのプライマーペア、より一般的には2つ又は3つのプライマーペアで十分であろう。
【0019】
本発明は、本発明の個々のマルチプレックススクリーニングアッセイを実施するためのアッセイキットを含む。キットは、少なくとも、検出プローブの、意図される相補体を含む。オリゴヌクレオチドの集合体は「オリゴヌクレオチドセット」と称される。該アッセイが増幅アッセイ、例えばPCRである場合には、オリゴヌクレオチドセットは、好ましくは、増幅に必要なプライマーをも含む。それらは任意の増幅可能な対照配列をも含みうる。キットは、追加的なアッセイ試薬、例えば酵素、増幅バッファー、および所望により、核酸の単離のためのサンプル調製試薬、すなわち、サンプルの調製から検出までの該アッセイを実施するのに必要な全ての試薬を含みうる。
【0020】
本発明の、蛍光に基づくスクリーニングアッセイは、一般には、加熱サイクル能を含みうる検出装置に適合しうる。装置は、単一波長源または多波長源、例えば、選択可能なフィルターと組合された白色光、多レーザー源または多発光ダイオード源を使用しうる。検出装置は、それが複数の発蛍光団からの発光を識別する能力において様々であり、これは、個々のアッセイのための発蛍光団パネルを選択する際に考慮する必要がある、本発明のアッセイの好ましい実施形態においては、各プローブに関する発蛍光団からの発光は、細分化部分からの強度が狭い間隔で配置されるよう(これは同定に役立つ)、強度において調整される。発蛍光団は強度において様々であり、標的配列はプローブハイブリダイゼーションの受け易さにおいて様々であり、装置は種々の波長に対するその応答において様々でありうる。調整(バランス)を達成するために、部分の相対量を変化させることが可能である。可能な場合には、同定を更に容易にするために、全てのプローブに関する全ての部分を調整することが好ましい。これらのアッセイの結果はコンピュータープログラムによりリアルタイムで自動的に解読され解釈されることが可能であり、該アッセイは非常に高精度となり、臨床診断場面において自動化ハイスループット様態で実施されうる。
【0021】
本発明の1以上の実施形態の詳細は添付図面および後記の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的および利点は該説明および図面から並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【0022】
図面の説明
図1は、プローブ当たり2色または3色および4〜8個の識別可能な発蛍光団を使用して得られる識別可能な組合せの数を示す表である。
【0023】
図2は、試験されているサンプル中に(該アッセイが検出することを意図する多数の可能な標的配列のうちの)単一の標的配列が存在し、アッセイ混合物中の多数の異なるプローブのうちの(等しい蛍光強度の3つの異なる色で標識された)1つのプローブが、増幅される標的配列に結合する、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【0024】
図3は、試験されているサンプル中に2つの異なる標的配列が、異なる濃度で存在し、2つのプローブ(それぞれは、等しい蛍光強度の3つの異なる色の、異なる組合せで標識されており、いずれの色も両方のプローブにより共有されていない)が、増幅される標的配列に結合する、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【0025】
図4は、試験されているサンプル中に2つの異なる標的配列が、異なる濃度で存在し、2つのプローブ(それぞれは、等しい蛍光強度の3つの異なる色の、異なる組合せで標識されており、1つの色が両方のプローブにより共有されている)が、増幅される標的配列に結合する、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【0026】
図5は、試験されているサンプル中に2つの異なる標的配列が、同じ濃度で存在し、(図6aに示す第一3三要素色コード表に従い標識された)2つのプローブが2つの色を共有していて解釈の結果の明瞭化をもたらす、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【0027】
図6aおよび6bは、5つの異なる発蛍光団のパレット(palette)からの等しい蛍光強度の3つの異なる色でそれぞれ標識されているプローブを使用してサンプル中の10個の異なる可能な標的を検出するための代替的プローブコード形式の、試験されているサンプル中に同じ濃度で存在しうる2つの異なる標的の45個の可能な組合せの1つごとに得られる結果に対する効果を示す表を含む。
【0028】
図7は、試験されているサンプル中に2つの異なる標的配列が、同じ濃度で存在し、(図6aに示す第一3要素色コード表に従い標識された)2つのプローブが1つの色を共有していて曖昧な結果を与える、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【0029】
図8は、図7に示すアッセイにおいて使用したのと同じサンプルが、図6bに示す第二3色コード表に従い標識されたプローブを使用して再試験され、別のコード形式を使用する第2のアッセイが曖昧な結果を明瞭化しうる一例を与える、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
詳細な説明
図1は、本発明において有用な或る組合せコード形式を示す表である。該表の上部は、各プローブが4、5、6、7または8個の発蛍光団のパネルからの2つの異なる発蛍光団で異なって標識されることにより得られるコードの数を示す。該パネルが8個の発蛍光団を含む場合には、28個の可能なコードが存在する。該表の下部は、各プローブが5、6、7または8個の発蛍光団の同一パネルからの3つの異なる発蛍光団で標識されることにより得られるコードの数を示す。該パネルが8個の発蛍光団を含む場合には、56の可能性が存在する。本発明のアッセイは、各プローブの、2つ又は3つ(および時には4つ)の異なって標識された部分、および少なくとも6つの異なってコードされたプローブを許容するのに十分なサイズの発蛍光団のパネルを使用する。これは、例えば、該表の2つの部分を組合せることにより、すなわち、2色の両方のコードおよび3色のコードを使用することにより達成されうる。例えば、プローブを、5つの発蛍光団のパネルと共に使用するための3つの部分に細分して、10個までの異なってコードされたプローブを得ることが可能であり(該表の下部に大まかに示されているとおり)、追加的なプローブを、5つの発蛍光団のパネルと共に使用する2つの部分に細分して、10個までの追加的な異なってコードされたプローブを得ることが可能である(該表の上部に大まかに示されているとおり)。このようにして、20個もの異なってコードされたプローブを、同じアッセイ混合物中で組合せることが可能である。
【0031】
本発明のアッセイは、各標的に対して(分子ビーコンプローブもしくはTaqManプローブのような単一分子プローブ、またはイン・ヤン・プローブまたはLightCyclerプローブペアのような二分子プローブでありうる)1つのプローブを使用する。プローブを数部分に細分し、少なくとも4個、好ましくは5〜8個の識別可能な発蛍光団のパネルからの組合せコードまたは組合せ + 比コードに従い該部分を標識することにより、単一色により表されるコード要素以外では、コーディングが達成される。例示目的として、本発明者らの好ましい分子ビーコンプローブを使用して、各プローブ部分を、異なる色シグネチャーを有するように設計する。該プローブの或るものは波長変動性プローブ、すなわち、一方のアームが消光剤で標識されており、他方のアームがFRETペアで標識されているプローブ(該FRETペアは「ハーベスター」発蛍光団を含み、該「ハーベスター」発蛍光団は、刺激性光源からのエネルギーを吸収し、そのエネルギーを「エミッター」発蛍光団に転移させるためのものであり、該「エミッター」発蛍光団は、該プローブがその開いた立体配置にある場合には、それ自身の特徴的な、より長い波長スペクトルで、強力に蛍光を発する)でありうる。本発明者らは、より長い波長の可視蛍光を発する発蛍光団(例えば、テキサス・レッド(Texas Red))によっては高度には吸収されない単一波長源を使用する装置と共に波長変動性プローブを使用する(Tyagi, S.ら, (2000), Wavelength-Shifting Molecular Beacons, Nature Biotechnol. 18: 1191-1196; El-Hajj, H.ら, (2001), 前掲を参照されたい)。接触媒介性消光により、1つの発蛍光団を消光するために、別の発蛍光団を使用することも可能である。これは2つの追加的な可能性を与える。第1に、プローブが閉じた場合には発蛍光団は互いに消光するが、該プローブがその標的にハイブリダイズし開いた場合には両方は同色の蛍光を発してその強度を増すよう、使用している系内で比較的低い発光を示す発蛍光団が各アーム上に配置されうるであろう。組合せコードに比コーディングを追加するために、この技術を用いることが可能である。第2に、プローブが閉じた場合には発蛍光団は互いに消光するが、該プローブがその標的にハイブリダイズして開いた場合にはそれぞれはそれ自身の特徴的な発光スペクトルで蛍光を発するよう、2つのアーム上に異なる発蛍光団を配置することにより、プローブの、1つの部分は、2つのコード要素(色)を有することが可能である。2つの部分を1つに組合せて、それにより、2色、3色または4色コード要素に必要な異なる部分の数を減少させるために、これを用いることが可能である。それは、別々の部分を有することと等価である。非蛍光消光剤による消光は発蛍光団による消光より効率的であるため、また、同じ分子上に2つの発光性発蛍光団を有することは、相対濃度によりそれらの強度を釣り合わせる選択肢を排除するため、本発明の好ましい実施形態は、分子ビーコンプローブの、1つのアーム上に、非蛍光消光剤を使用する。Dabcylは、Black Hole Quencher No.2と同様に、好ましい消光剤である。
【0032】
本発明において有用な「コード表」は、プローブ当たり4色、プローブ当たり3色、プローブ当たり2色、またはプローブ当たり4色、3色もしくは2色の組合せ(単一色プローブを伴う又は伴わない)を使用する。好ましいコード表は、プローブ当たり4色のみ、プローブ当たり3色のみ、またはプローブ当たり2色のみを使用する。これらが好ましい理由は、例えば、個々のPCRサイクルにおいて生じる1つの色の出現が、アッセイの調製において誤りが生じたことを示すことである。単一色プローブを使用する場合には、そのような誤りは明らかではない。本発明の幾つかの実施形態においては、コード要素の数または可能性を増加させるために、組合せコーディングを比コーディングで補足することが可能である。好ましい比は5:1から1:5まで、好ましくは、3:1から1:3までの整数である。比コーディングは、1つだけの標的が見出される可能性が非常に高いスクリーニングアッセイに最も適している。この理由は、該コードが厳密に組合せ様態であり2以上の標的が存在する場合には、強度レベルの変化が、発光スペクトルの分析において生じうる曖昧さを解消するための助けとなることである。したがって、1つだけの標的を見出す可能性がそれほど高くない好ましいアッセイは、厳密には組合せ様態のコーディングを使用する。
【0033】
発蛍光団のパネルには種々の発蛍光団が含まれうる。ある発蛍光団、例えばVic、Alexa 488および量子ドット(Gaoら, (2002), Quantum-Dot Nanocrystals for Ultrasensitive Biological Labeling and Multicolor Optical Encoding, J. Biomed. Opt. 7, 532-537)は比較的狭い発光スペクトルを有し、したがって、それらは、6個を超える発蛍光団のパネルを使用する高マルチプレックス化アッセイに特に有用である。
【0034】
分子ビーコンプローブを含むオリゴヌクレオチドプローブは、例えばApplied Biosystems 394 DNA/RNAシンセサイザー上の固相DNA合成により簡便に製造される。切断に対する鎖抵抗性をもたらす2'-O-メチルリボヌクレオチドのような修飾ヌクレオチドを含むDNAヌクレオチドまたはRNAヌクレオチドを使用することが可能である。分子ビーコン合成の本発明者らの好ましい方法は、プローブの3'末端における取り込みのための消光剤ダブシル(dabcyl)を含有する制御多孔性(controlled-pore)ガラスカラムで開始する。これらのカラムはBiosearch Technologies(Novato, California, USA)から入手可能である。プローブの5'末端に発蛍光団を取り込ませる、本発明者らの好ましい方法は、チオール修飾ホスホルアミジットまたはアミノ修飾ホスホルアミジットを使用して、ヨードアセチル化発蛍光団誘導体を5'-チオール基に結合させることが可能であり、発蛍光団のスクシンイミジルエステルを5'-アミノ基に結合させることが可能である。テトラクロロフルオレセインの場合には、本発明者らの実施は、テトラクロロフルオレセインホスホルアミジットを直接的に取り込ませることである。波長変動性プローブの場合には、非末端発蛍光団が必要である。本発明者らは、この目的のために内部フルオレセイン部分を取り込ませるために、フルオレセインホスホルアミジットを使用した。本発明者らの分子ビーコンプローブ合成は、NAP-5 Sephadexカラムによるゲル排除クロマトグラフィー、およびそれに続く、Watersによる販売されているC-18カラムのような逆相カラムによるHPLCによるプローブの精製を含む。最後に、プローブをエタノールで沈殿させ、100μlのTris-EDTAバッファーに溶解させる。分子ビーコンプローブは、例えば、三重コードの場合には、各発蛍光団は該プローブの30〜60%に共通であることを考慮して、少なくとも25、好ましくは約100のシグナル-ノイズ比を有するべきである。
【0035】
前記のとおり、標識および使用のために、該プローブを2つ、3つ又は4つの部分に細分する。プローブの種々の部分、可能な場合には該アッセイにおける全ての部分が、ほぼ同じシグナル強度を与えるのが有利である。したがって、本発明者らの好ましいアッセイおよびキットは、その目的のために「調整された」部分を有する。「調整された」は、異なる部分からのシグナルの蛍光強度が一般にはお互いの20%以内、最も好ましくは5%以内であることを意味する。個々のプローブ部分、例えば分子ビーコンプローブ部分により生じた蛍光強度は、そのエミッター発蛍光団(および、それが波長変動性分子ビーコンプローブである場合にはまた、そのハーベスター発蛍光団)の固有の特性、標的の性質(なぜなら、いくつかの標的は、他のものより容易にプローブを受容するからである)、および恐らくは、検出に使用する装置に左右される。プローブを、使用する装置上でのアッセイにおけるその標的に対して試験することにより、お互いに対する該部分の量を調節して、調整されたシグナルを得ることが可能である。さらに、組合せ標識されたプローブの全ての全部分を調整することが好ましい。各プローブの部分を調整した後、お互いに対するプローブの量を調節して、調整されたシグナルを得ることが可能である。発蛍光団および装置における相違を説明するために、各プローブの部分の量ではなく検出装置を調節することにより、シグナル読取値を調節することが可能である。例えば、a、b、cで示される3つの部分を有するプローブが、それぞれ1.0、1.5および3.0の各部分の等容量を伴う相対強度を与える場合には、部分「a」からの読取値には3を掛け算し、部分「b」からの読取値には2を掛け算し、部分「c」からの読取値には1を掛け算するよう、該装置をプログラムすることが可能であろう。ついで、該プローブの相対量のみを調整する必要があるであろう。しかし、本発明者としては、好ましくは、装置ではなく部分の量を調節する。調整された発光を用いることは、観測者による解釈を、有意に、より容易にする。なぜなら、例えば3色が個々のコード要素を示すか否かが、直ちに理解されうるからである。
【0036】
本発明のアッセイは高マルチプレックス化される。サンプル源には限定されないが、該アッセイは特に、無菌とみなされる、ヒトまたは他の動物の身体部位からのサンプル、例えば血液、組織および脳脊髄液での使用に適用可能である。非無菌標本、例えば喀痰または便は、種々の源からの核酸を有する可能性があり、そのため、スクリーニングがより困難である。病原体は、一般には、少なくとも低度には、血流に感染する。しかし、核酸増幅アッセイはサンプル中の最小量の標的配列を要するに過ぎない。例えば、Kaneらは、危篤状態の外科患者において細菌感染を診断するために、血液培養と、「汎用」細菌プライマーを使用するPCRアッセイとを比較した(Kane, T.D.ら, (1998), The Detection of Microbial DNA in Blood: a Sensitive Method for Diagnosing Bacteremia and/or Bacterial Translocation in Surgical Patients. Ann. Surg. 227: 1-9)。血液培養は該サンプルの14%において陽性であったに過ぎなかったが、PCRアッセイは64%で陽性であった。
【0037】
PCRまたはNASBAのような増幅を用いる実施形態では、種々の考えられうる標的に、プライマーが必要である。プライマーの設計は当技術分野で公知である。プライマーは、他のプライマーで試験することが可能であり、ついで、望ましくない相互作用を調べるために、プローブで試験することが可能である。プライマー、およびより低度ではあるがプローブも、マルチプレックス反応において相互作用しないことが重要である。本発明において有用な高特異性プライマーのタイプは、公開されている国際特許出願WO 00/71562に開示されている。そのようなプライマーは、望ましくないハイブリダイゼーションを有意に減少させるヘアピンステムを形成する。本発明者らは、該ステムの融解温度(Tm)が、アッセイにおいて用いるプライマーアニーリング温度より約6℃高いことが保証されるように注意しつつ、そのような高特異性プライマーを使用することによりプライマー相互作用を減少させている。本発明者らは、多数の細菌種の16sリボソームRNA遺伝子の断片を一緒になって増幅する2つのペアの汎用プライマーを構築した。1つのペアは、炭疽菌(B. anthracis)および関連グラム陽性細菌における標的領域を増幅するための5’-TGACGACAACCATGCACC-3’(配列番号1)および5'-ATGTGGTTTAATTCGAAGCAA-3'(配列番号2)を含む。もう一方のペアは、いくつかの重要なグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌における標的領域を増幅する5'-GTGGACTTAGATACCCTGGTAGTCCAC-3'(配列番号3)および5'-GCGTTGCATCGAATTAA-3'(配列番号4)を含む。示されている3番目のプローブの下線部の配列は、このプライマーによる望ましくないハイブリダイゼーションを減少させるために付加されたヘアピン形成配列である。
【0038】
リアルタイム検出による増幅アッセイは、発蛍光団を励起させ発光を検出するための種々の技術を用いる種々の装置において行うことが可能である。励起は、レーザー、フィルターを伴う白色光、または発光ダイオードによるものでありうる。また、該アッセイ装置は、狭い励起および発光波長が連続的に変化する一方でそれらの波長差が一定に保たれる同時スキャニングモードを用いることが可能である(Leeら, (1999), Seven-Color, Homogeneous Detection of Six PCR Products, Biotechniques 27, 342-349)。装置の選択は、パネルに含まれうる異なる発蛍光団の数に影響を及ぼしうる。
【0039】
リアルタイム増幅アッセイを含む(これに限定されるものではない)本発明のスクリーニングアッセイは、単一の標的に関して陽性となりうる。この場合、該標的はその特有のシグネチャー(特徴)、好ましくはその特有の色シグネチャーにより同定可能であるが、恐らくは、その色+強度シグネチャーにより同定可能であろう。時には、2個または更にはそれ以上の標的がサンプル中に存在しうる。プローブの絶対蛍光は標的濃度に左右されるが、同じ標的にハイブリダイズする2つのプローブ部分の蛍光比は標的濃度には左右されないということを、そのような場合のスペクトルの解読において利用することが可能である。2つの標的が存在するとして、複数の部分の強度が調整された3色コードを用いる厳密に組合せ様態のコーディングの場合を考えてみよう。該標的が色を共有していない場合には6つの色が生じることになる。しかし、サンプル中の2つの標的が等濃度で存在することは非常に考えにくいため、該サンプルの直接的プロービングは、1つの強度の3つの色、および第2の強度の3つの色を与え、それにより、2つの標的が同定されると考えられうる。一方、該アッセイがリアルタイム増幅アッセイである場合には、シグナルがバックグラウンドを上回る時点(例えば、PCR反応の閾値サイクル(CT))は異なっており、異なる時点で各群が生じる3つの色の2群が得られ、それにより、2つの標的が同定されると考えられうる。
【0040】
サンプル中の核酸の直接的プロービングに基づくアッセイにおいて、2つの標的に対するプローブに割当てられたコードが色を共有する場合には、その色に関する蛍光強度は、その他の色に関する蛍光強度とは一致しない。むしろ、それは2つの標的からの組合せとなり、その他の色のレベルからは際立ったものとなり、それにより、それが共通の色として同定される。一方、該アッセイがリアルタイム増幅アッセイである場合には、3つの色が、豊富な方の標的からのシグナルとして、一緒に現れるであろう。豊富でない方の標的に関する第2閾値に達したら、さらに2つの色が一緒に現れ、共通の色に関する強度曲線は、傾きを、より高い値へ変化させ、それにより、それが共通の色として同定される。
【0041】
1つの色が2つの標的に共通であるが、豊富な方の標的に関するその強度比が、その標的に関するその他の部分に対して2:1であるとして、比コーディングをも用いる場合を考えてみよう。リアルタイム増幅アッセイにおいては、第1閾値に達すると、3つの色がバックグラウンドを上回るが、1つの色(共通の色)は、その他の2つの色より高い傾きを有するであろう。それでも、第2閾値に達すると、共通の色の強度曲線は、傾きを、より高い値へ変化させて、その共通性を示すであろう。
【0042】
サンプル中に2つの異なる標的種が同一濃度で存在する場合には、各プローブをコードする色が同時に現れる。この状況の或る場合には、各コードを明白に同定することは可能でないかもしれない。そのような場合には、該標的に関して別のコード形式を用いる繰返しアッセイが、ほぼ全ての場合において、その曖昧さを解消するはずである。
【実施例】
【0043】
実施例1
本実施例においては、感染性細菌を含有する疑いのある通常は無菌の血液サンプルから単離したDNAに対してリアルタイムPCR増幅アッセイを行う。反応混合物中に存在するプライマーのセットは、血液サンプル中に恐らく存在すると疑われる細菌種のすべてに存在する16sリボソームRNA遺伝子の断片の増幅を可能にする。該アッセイにおいては、多数の分子ビーコンプローブが、疑われる細菌標的種のそれぞれに1つずつ存在する。それぞれの異なる分子ビーコンは、その3'末端に共有結合した汎用消光剤部分(ダブシル(dabcyl))を有する。それぞれの異なる種特異的分子ビーコンプローブを、3つの異なる色の発蛍光団の特有のセットで、本発明の組合せ様態で標識する。これらの発蛍光団を各オリゴヌクレオチドのそれぞれの5'末端に共有結合させる。アッセイ混合物中に存在するそれぞれの種特異的プローブについて、一緒になって種特異的プローブを構成する、3つの異なる色のオリゴヌクレオチドのそれぞれの存在量を、アッセイの実施前に調節して、そのプローブの3つの色のそれぞれの蛍光強度が、アッセイを行うために使用するアッセイ装置で測定した場合にほぼ同じになるようにする。図2は、このアッセイで得られる結果のプロットである。「x」軸は、蛍光の各測定を行う時点までに行った増幅サイクルの数を表す。この測定は、プローブを標識するために使用する異なる色の発蛍光団のそれぞれの蛍光強度の測定を可能にする様態で、アッセイ装置により自動で行う。「y」軸は個々の着色蛍光による蛍光強度を表す。各増幅サイクルのアニーリング段階中に測定を行う。増幅の経過の全体を通して、各増幅サイクル中にリアルタイムで測定を行う。プローブを標識するために使用した異なる色の発蛍光団のそれぞれの蛍光強度を、完了した増幅サイクルの数の関数としてプロットする。
【0044】
図2に示す実験においては、個々の増幅サイクル数を行った後にバックグラウンド蛍光を超えて検出されるのに十分に強力なシグナルが出現している。これが生じる増幅サイクルは「閾値サイクル」として公知であり、一般には「CT」と略称される。閾値サイクルの後で出現するシグナルは3つの異なる色(a、bおよびc)よりなる。このシグナルは、完了した増幅サイクルの増加と共に直線的に増加する。組合されて一緒に出現する3つの色のセットは、どの細菌種が血液サンプル中に存在するのかを同定する。サンプル中の種の存在量は、シグナルが生じる閾値サイクルから決定される。閾値サイクルはサンプル中の標的分子数の対数に反比例する。
【0045】
実施例2
本実施例においては、実施例1に記載のアッセイと同様にして且つ同じ目的でアッセイを行う。この実験で得られる結果を図3に示す。2つの異なるシグナルが生じ、一方(色a、bおよびcよりなる)は反応の初期に出現し、もう一方(色d、eおよびfよりなる)は反応の後期に出現する。この結果が示すところによると、2つの異なる細菌種がサンプル中に存在し、一方(色a、bおよびcにより同定される)は比較的豊富であり、もう一方(色d、eおよびfにより同定される)は比較的少量であり、したがって、種特異的プローブのハイブリダイゼーションによる蛍光シグナルがバックグランド蛍光を超えて認められるのに十分な増幅産物が得られるまでに更に多くの増幅サイクルを要する。2つのシグナルのそれぞれにおける特有のセットの色は、サンプル中に存在する2つの細菌種のそれぞれを明白に同定する。
【0046】
実施例3
本実施例においては、実施例1に記載のアッセイと同様にして且つ同じ目的でアッセイを行う。この実験で得られる結果を図4に示す。2つの異なるシグナルが生じ、一方(色a、bおよびcよりなる)は反応の初期に出現し、もう一方(色dおよびeよりなる)は反応の後期に出現する。また、色「c」の蛍光強度を示す曲線の傾きは、後者のシグナル(色dおよびeよりなる)が生じる閾値サイクルの後で増加している。この結果は、2つの異なる細菌種がサンプル中に存在し、一方(色a、bおよびcにより同定される)が比較的豊富であり、もう一方(色c、dおよびeにより同定される)は比較的少量であり、より後に出現することを示している。色「c」の蛍光強度を示す曲線の傾きの増加は、該豊富細菌種からのDNAの増幅断片に結合するプローブからの「c」蛍光に付加された、該少量細菌種からのDNAの増幅断片に結合するプローブからの「c」蛍光の寄与によるものである。サンプル中に存在する2つの細菌種のそれぞれに関する3色コードが1つの色を共通に有している場合であっても、サンプル中の異なる濃度でのそれらの2つの種の出現は、各種からのシグナルがお互いから識別されるのを可能にする。一般に、2つ(または更には3つ)の種が臨床サンプル中に同時に存在する場合には、それぞれは、異なる濃度で存在し、細菌種のそれぞれの存在によるコード化シグナルは、サンプル中のその他の種によるシグナルから識別されうる。
【0047】
実施例4
本実施例は、2つの異なる種がほぼ同じ濃度でサンプル中に存在する場合であっても、明白な結果が得られうることを示す。本実施例に記載されているアッセイは、実施例1に記載のアッセイと同様にして且つ同じ目的で行う。本実施例においては、アッセイ混合物中に存在するプローブは、10個の異なる細菌種(種0、1、2、3、4、5、6、7、8および9と称される)を検出するように設計する。5つの異なる色の発蛍光団(a、b、c、dおよびe)のパレットから、それらの10個のプローブのそれぞれを標識するために、3色コードを用いる。アッセイ混合物中に存在する各種特異的プローブについて、一緒になって種特異的プローブを構成する3つの異なる色のオリゴヌクレオチドのそれぞれの存在量を、アッセイの実施前に調節して、そのプローブの3つの色のそれぞれの蛍光強度が、アッセイを行うために使用するアッセイ装置で測定した場合にほぼ同じになるようにする。このアッセイにおいては以下のコード形式(本明細書中では、「第一3色コード表」と称される)を用いる。
【0048】
種0に対するプローブ abc
種1に対するプローブ abd
種2に対するプローブ abe
種3に対するプローブ acd
種4に対するプローブ ace
種5に対するプローブ ade
種6に対するプローブ bcd
種7に対するプローブ bce
種8に対するプローブ bde
種9に対するプローブ cde。
【0049】
このコード表に従い標識したプローブで行う実験において得られる結果を図5に示す。4つの異なる色(a、b、cおよびd)よりなるシグナルが、同じ閾値サイクルで生じる。該色の2つ(aおよびb)の曲線の傾きはその他の2つの色(cおよびd)の曲線の傾きの2倍である。この結果は、2つの異なる細菌種がほぼ同じ濃度でサンプル中に存在すること、およびそれらのそれぞれのプローブの3色コードが2つの色を共通に有することを示している。色「a」および「b」の曲線の傾きは色「c」および「e」の曲線の傾きの約2倍であるため、色「a」および「b」は、サンプル中に存在する両方の細菌種に関するコードの成分である。これらの結果から導かれる結論は、増幅された標的配列に結合したプローブの1つは「abc」としてコードされ、増幅した標的配列に結合した他方のプローブは「abd」としてコードされる。これらの結果を第一3色コード表(前記)におけるコード形式と比較することにより、「abc」は細菌種「0」に対するコードであると理解され、「abd」は細菌種「1」に対するコードであると理解される。このように、これらの結果は、サンプルが種「0」および種「1」をほぼ等しい濃度で含有することを明白に示している。
【0050】
実施例5
本実施例は、2つの異なる種がほぼ同じ濃度でサンプル中に存在する場合に、明白な結果が時には得られうることを示す。本実施例に記載されているアッセイは、実施例4に記載のアッセイと同様にして且つ同じ目的で行う。このアッセイにおいて使用するプローブは第一3色コード表(実施例4に示されている)を利用する。
【0051】
図6aは、可能な2つの種の45個の組合せのそれぞれに関する、サンプル中に2つの異なる種が同じ濃度で存在する場合に見出されるはずである結果を示す(第一3色コード表に基づく)2成分表を含む。これらの組合せの30個においては、4つの色が生じ、2つは、より高い蛍光強度増加率におけるものであり(下線付き文字により示されている)、2つは、より低い蛍光強度増加率におけるものである(下線無しの文字により示されている)。これらの30個の組合せのそれぞれは該表において唯一のものであり、したがって明白な結果を与える。
【0052】
しかし、図6aの精査から、サンプル中に同じ濃度で存在しうる2つの異なる種の45個の可能な組合せのうちの15個においては、5つの色が生じ、1つは、より高い蛍光強度増加率におけるものであり(下線付きの文字により示されている)、4つは、より低い蛍光強度増加率におけるものである(下線無しの文字により示されている)ことが認められうる。しかし、これらの組合せは唯一のものではない。例えば、コード「abcde」は上の表では3回出現している。すなわち、それは種「2」および「9」の組合せに関して1回出現し、種「4」および「8」の組合せに関して2回目に出現し、種「5」および「7」の組合せに関して3回目に出現している。そのような曖昧な結果を与える実験の一例を図7に示す。このアッセイの結果は、同じ閾値サイクルで生じる5つの色(a、b、c、dおよびe)を示しており、それらのうちの1つの色(e)の強度は、その他の4つの色の場合の2倍の率で増加している。
【0053】
実施例7
図7に示すような結果に固有の曖昧さは、別のコード形式によりコードされる同じプローブを使用するアッセイを繰返すことにより解消されうる。例えば、図8に示す結果を与えるアッセイを、図7に示す結果を得るために使用したのと同じサンプルに対して行う。ただし、この場合には、プローブは以下の別のコード形式(本明細書中では、「第二3色コード表」と称される)によりコードされる。
【0054】
種0に対するプローブ cde
種1に対するプローブ bde
種2に対するプローブ bce
種3に対するプローブ bcd
種4に対するプローブ ade
種5に対するプローブ ace
種6に対するプローブ acd
種7に対するプローブ abe
種8に対するプローブ abd
種9に対するプローブ abc。
【0055】
図8は、図7に示す実験で使用したのと同じサンプルに対するアッセイから得られる結果を示す。ただし、この場合には、プローブは第二3色コード表に従いコードされている。4つの異なる色(a、b、cおよびe)よりなるシグナルが、同じ閾値サイクルで生じる。該色の2つ(bおよびc)の曲線の傾きはその他の2つの色(aおよびe)の曲線の傾きの2倍である。色「b」および「c」の曲線の傾きは色「a」および「e」の曲線の傾きの約2倍であるため、色「b」および「c」は、サンプル中に存在する両方の細菌種に関するコードにおいて存在する。これらの結果から導かれる結論は、増幅された標的配列に結合したプローブの1つは「abc」としてコードされ、増幅した標的配列に結合した他方のプローブは「bce」としてコードされる。これらの結果を第二3色コード表(前記)におけるコード形式と比較することにより、「bce」は細菌種「2」に対するコードであると理解され、「abd」は細菌種「9」に対するコードであると理解される。このように、図8に示す結果は、図7に示す結果で見出された曖昧さを解消しており、サンプルが種「2」および種「9」をほぼ等しい濃度で含有することを明白に示している。
【0056】
図6bは、プローブが第二3色コード表に従いコードされている場合に、サンプル中のほぼ同じ濃度の2つの異なる細菌種の全45個の異なる組合せに関して見出されるはずである結果を示す。図6aの2成分表と図6bの2成分表との比較は、第1のアッセイから生じた曖昧さを解消することが必要な場合に、代替的にコードされたプローブを使用して第2のアッセイを行うことにより2つの異なる細菌種の全45個の可能な組合せが明白に同定されうることを示している。
【0057】
本発明の多数の実施形態が説明されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の修飾が施されうると理解されるであろう。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、プローブ当たり2色または3色および4〜8個の識別可能な発蛍光団を使用して得られる識別可能な組合せの数を示す表である。
【図2】図2は、試験されているサンプル中に(該アッセイが検出することを意図する多数の可能な標的配列のうちの)単一の標的配列が存在し、アッセイ混合物中の多数の異なるプローブのうちの(等しい蛍光強度の3つの異なる色で標識された)1つのプローブが、増幅される標的配列に結合する、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【図3】図3は、試験されているサンプル中に2つの異なる標的配列が、異なる濃度で存在し、2つのプローブ(それぞれは、等しい蛍光強度の3つの異なる色の、異なる組合せで標識されており、いずれの色も両方のプローブにより共有されていない)が、増幅される標的配列に結合する、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【図4】図4は、試験されているサンプル中に2つの異なる標的配列が、異なる濃度で存在し、2つのプローブ(それぞれは、等しい蛍光強度の3つの異なる色の、異なる組合せで標識されており、1つの色が両方のプローブにより共有されている)が、増幅される標的配列に結合する、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【図5】図5は、試験されているサンプル中に2つの異なる標的配列が、同じ濃度で存在し、(図6aに示す第一3三要素色コード表に従い標識された)2つのプローブが2つの色を共有していて解釈の結果の明瞭化をもたらす、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【図6a】図6aは、5つの異なる発蛍光団のパレット(palette)からの等しい蛍光強度の3つの異なる色でそれぞれ標識されているプローブを使用してサンプル中の10個の異なる可能な標的を検出するための代替的プローブコード形式の、試験されているサンプル中に同じ濃度で存在しうる2つの異なる標的の45個の可能な組合せの1つごとに得られる結果に対する効果を示す表である。
【図6b】図6bは、5つの異なる発蛍光団のパレット(palette)からの等しい蛍光強度の3つの異なる色でそれぞれ標識されているプローブを使用してサンプル中の10個の異なる可能な標的を検出するための代替的プローブコード形式の、試験されているサンプル中に同じ濃度で存在しうる2つの異なる標的の45個の可能な組合せの1つごとに得られる結果に対する効果を示す表である。
【図7】図7は、試験されているサンプル中に2つの異なる標的配列が、同じ濃度で存在し、(図6aに示す第一3要素色コード表に従い標識された)2つのプローブが1つの色を共有していて曖昧な結果を与える、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。
【図8】図8は、図7に示すアッセイにおいて使用したのと同じサンプルが、図6bに示す第二3色コード表に従い標識されたプローブを使用して再試験され、別のコード形式を使用する第2のアッセイが曖昧な結果を明瞭化しうる一例を与える、リアルタイム増幅アッセイの蛍光発光を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)異なる核酸標的にそれぞれが特異的である少なくとも6個の組合せコードされている蛍光ハイブリダイゼーションプローブを含む蛍光ハイブリダイゼーションプローブのセットとサンプルとを接触させ、ここにおいて、
i)該セット中のプローブは、少なくとも4個のスペクトル的に識別可能な発蛍光団のパネルからの4個までの異なるエミッター発蛍光団で組合せコードされており、
ii)該セット中のプローブは、その部分を異なるエミッター発蛍光団で標識することによりコードされており、
iii)各プローブ部分のハイブリダイゼーションが、その標識を示す検出可能な蛍光シグナル変化を与え、
b)該サンプルと共に存在する発蛍光団を刺激し、
c)該核酸標的をお互いから空間的に分離することなく、該発蛍光団からの発光シグナルにおける変化を検出することを含んでなる、少なくとも6個の異なる核酸標的のいずれかの存在に関してサンプルをスクリーニングするための高マルチプレックス化均一in vitroアッセイ。
【請求項2】
該核酸標的を指数関数的に増幅することを更に含む、請求項1記載のアッセイ。
【請求項3】
発光シグナルにおける変化を、増幅中にリアルタイムで検出する、請求項2記載のアッセイ。
【請求項4】
各プローブが2個、3個または4個の異なって標識された部分を含む、請求項3記載のアッセイ。
【請求項5】
各プローブの部分の相対量をお互いに対して調節して、調整されたシグナル変化を得る、請求項1記載のアッセイ。
【請求項6】
プローブのセットが、比コードされている少なくとも1つのプローブを更に含む、請求項1記載のアッセイ。
【請求項7】
組合せコードされたプローブが、それらの標的に対するハイブリダイゼーションにより蛍光が回復する消光されたプローブである、請求項1記載のアッセイ。
【請求項8】
組合せコードされたプローブが、一方のアーム上に非蛍光消光剤を有し他方のアーム上にエミッター発蛍光団を有する分子ビーコンプローブである、請求項7記載のアッセイ。
【請求項9】
各プローブの部分の蛍光強度がお互いに対して調整されている、請求項8記載のアッセイ。
【請求項10】
該プローブの存在下で該核酸標的を指数関数的に増幅し、エミッター発蛍光団からの蛍光における増加をリアルタイムで検出することを更に含む、請求項8記載のアッセイ。
【請求項11】
各プローブが、4〜8個の識別可能な発蛍光団のパネルからの2個、3個または4個の異なって標識された部分を含み、ここにおいて、各プローブの部分の相対量をお互いに対して調節して、調整された蛍光発光を得る、請求項10記載のアッセイ。
【請求項12】
全プローブの全部分の相対量をお互いに対して調節して、調整された蛍光発光を得る、請求項11記載のアッセイ。
【請求項13】
異なる核酸標的にそれぞれが特異的である少なくとも6個の組合せコードされている蛍光ハイブリダイゼーションプローブを含む蛍光ハイブリダイゼーションプローブのセットを含んでなり、それらの標的に対するそのハイブリダイゼーションが、それらの標識を示す蛍光シグナル変化により、該アッセイにおいて検出されることが可能であり、該セット中のプローブが、異なるエミッター発蛍光団で各プローブの部分を標識することにより、少なくとも4個のスペクトル的に識別可能な発蛍光団のパネルからの4個までの異なるエミッター発蛍光団で組合せコードされていることを特徴とする、少なくとも6個の異なる核酸標的のいずれかの存在に関してサンプルをスクリーニングするための高マルチプレックス化in vitroアッセイにおいて使用するための試薬のキット。
【請求項14】
該核酸標的の指数関数的増幅のためのプライマーを更に含む、請求項13記載のキット。
【請求項15】
該プライマーを使用して該核酸標的を増幅するための増幅試薬を更に含む、請求項14記載のキット。
【請求項16】
比コードされている少なくとも1つのプローブを更に含む、請求項13記載のキット。
【請求項17】
組合せコードされたプローブが、それらの標的に対するハイブリダイゼーションにより蛍光が回復する消光されたプローブである、請求項13記載のキット。
【請求項18】
該プローブが、一方のアーム上に非蛍光消光剤を有し他方のアーム上にエミッター発蛍光団を有する分子ビーコンプローブである、請求項17記載のキット。
【請求項19】
各プローブの部分の相対量をお互いに対して調節して、調整された蛍光発光を得る、請求項18記載のキット。
【請求項20】
全プローブの全部分の相対量をお互いに対して調節して、調整された蛍光発光を得る、請求項19記載のキット。
【請求項21】
該核酸標的の指数関数的増幅のためのプライマーを更に含む、請求項18記載のキット。
【請求項22】
該プライマーを使用して該核酸標的を増幅するための増幅試薬を更に含む、請求項21記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−525184(P2007−525184A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514227(P2006−514227)
【出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/013652
【国際公開番号】WO2004/099434
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(507112815)ピーエイチアールアイ プロパティーズ,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】