説明

型材並びにこれを用いた枠組構造体

【課題】 本発明は、汎用性の向上、組立作業の容易さ、仕上がり形状の自然さ、更には十分な強度確保等の複合的な技術的要求を満足し得る新規な型材並びにこれを用いた枠組構造体の開発を試みたものである。
【解決手段】 本発明の型材1は、四辺の周縁板11が一体に形成された四角柱状を成し、各周縁板11は、その外面部12において一連の基準平面を形成し、且つ四辺の周縁板11は、そのうち少なくとも一辺において、幅方向中心で、その長手方向に連続する凹陥形状のビスポケット13を具えていることを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルミニウム素材で構成した型材、並びにこれを用いた枠組構造体に関するものであって、特に汎用性の向上、組立作業の容易化、仕上げ形状の自然さの確保、並びに十分な強度確保、などの複合的要求に応えた新規な形状、構造に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えばアルミニウム素材を用いたディスプレイ用看板用、更には建具・建材用の型材は、概ね図7に示すように型材100の中心部に基柱部101を具え、その周囲に外窄まり状のアリ状スペース102を構成にするようにし、この部位を利用して機能拡張のための部材の取り付けを行っている。例えばこのアリ状スペース102に対して、他の部材を組み付けるにあたっては、アリ状スペース102にバヨネット状に入り込む特殊ナット103を適用し、ボルト104をこの特殊ナット103に捻じ込んで、機能部材の取り付けを行っている。
【0003】
このような形状の型材相互の組み付け、あるいは他の機能部材の取り付けにあたっては、前述のような特殊ナット103を使用しなければならず、その汎用性が十分得られない。
加えて、アリ状スペース102の解放部は、比較的幅広であり、この部位が目視され、外観的に十分な仕上がりが得られない。加えて、これら型材に対し、タッピングビスによる固定を試みた場合、断面方向に連続するビスポケット104が設けられているに過ぎず、これだけでは、固定構造の選択範囲が限られてくる。
もちろん、図7に示すように型材100同士を連結する手法として、デザイン性を考慮して、型材100の断面形状に応じた嵌め込み形状を有する連結部材105を用いるものも提案されているが、この手法であっても、サイズごとに、連結形態に応じた個別の連結部材105を用意しなくてはならない。
因みに、後掲特許文献のように型材の組立構造に工夫を施したものが提案されているが、いずれも前記従来手法の有する問題点の解消には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3103845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの種々の従来技術の問題点を考慮してなされたものであって、汎用性の向上、組立作業の容易化、仕上がり形状の自然さの確保、更には十分な強度確保等の複合的な技術的要求を満足し得る、新規な型材並びにこれを用いた枠組構造体の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の型材は、四辺の周縁板が一体に形成された四角柱状を成し、各周縁板は、その外面部において一連の基準平面を形成し、且つ四辺の周縁板は、そのうち少なくとも一辺において、幅方向中心で、その長手方向に連続する凹陥形状のビスポケットを具えていることを特徴として成るものである。
【0007】
請求項2記載の型材は、前記請求項1記載の要件に加え、ビスポケットについては、内壁面にビス掛かりリブを具えていることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項3記載の型材は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記ビスポケット奥部については、ビスポケット解放部と同寸法の径で円弧断面として閉塞し、且つ奥部内壁面には、複数条の凹陥部が形成されていることを特徴として成るものである。
【0009】
請求項4記載の型材は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記周縁板は四辺が全て等幅であり、また前記ビスポケットは四辺の周縁板全てに設けられていることを特徴として成るものである。
【0010】
請求項5記載の枠組構造体は、前記請求項1、2、3、4記載の型材を複数本組み合わせて適宜の目的部材を構成するものであって、前記各型材の接続部は、各周縁板の外側に当てがう接続片を介して、その外側からビスポケットに向って、タッピングビスを捻じ込み固定されていることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、型材そのものは、四角柱状であり、十分な曲げ強度、捻じり強度を発揮し得る。またその周縁板の中心にビスポケットが連続形成されており、他の型材を接続する場合に、このものを利用した相互の組み付けが容易に行い得る。また取り付けにあたって、単純な形状のビス及び接続片を介して固定を図るものであり、その操作も行い易く、組み付けに要する部材も、汎用的な金具等が利用できる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、ビスポケット内壁面にビス掛かりリブが突出形成されており、ビスを捻じ込んだ際の安定性が良く、確実な固定が図られる。
【0013】
また請求項3記載の発明によれば、ビスポケットの奥部の断面方向において、ビスを受け入れるような形状を構成し、他の機能部材との組み付けが断面においても合理的に行い得る。
【0014】
また請求項4記載の発明によれば、型材は周縁板が等幅の正方形断面となり、且つ前記ビスポケットは、四辺の周縁板全てに設けられており、型材相互を組み付けるにあたっての汎用性をより高くし得る。
【0015】
また請求項5記載の発明によれば、前述した効果を伴った枠組構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の型材を用いた枠組構造体を示す斜視図、並びに型材の組付態様を示す分解斜視図及び縦断面図である。
【図2】本願発明の型材を示す斜視図、並びに型材の端面図及びビスとの螺合状態を示す拡大断面図である。
【図3】本願発明の枠組構造体の実施例を示す斜視図、並びに型材の組付態様を示す一部拡大図である。
【図4】本願発明の型材の外観を示すものであり、(a)は正面図(端面図)であり、(b)は右側面図であり、(c)は平面図(上面図)であり、(d)斜視図である。
【図5】本願発明の枠組構造体の他の実施例を示す斜視図及び一部拡大分解図である。
【図6】本願発明の枠組構造体の更に他の実施例を示す斜視図及び一部拡大分解図である。
【図7】従来の型材相互の接合方法、並びに他の部材を固定する手法の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態は、以下述べる実施例をその一つとするものであると共に、この技術思想に基づく種々の改良した実施例をも含むものである。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
まず符号1で示すものは、本願発明に係る型材であり、符号2はこの型材1を用いた枠組構造体を示す。
まず型材1について具体的に説明する。この型材1は、一例として図1、図2、図4に示すように等幅に構成された周縁板11が四辺断面正方形状になるように組み合わされて、一体形成された四角柱状の部材である。なお内部を中空状としたままの場合、厳密には四角筒状と表記すべきであるが、枠組構造体2として構成された場合、型枠1は柱体と認識されるほうが自然であり、本明細書中では四角柱体として表現したものである。これら各周縁板11の外面部12は、基準平面となる平面形状を有している。そして、周縁板11の幅方向中心には、ビスポケット13を設ける。このビスポケット13は、実質的には周縁板11の素材を抜形形成したビスポケット形成部14が、ほぼ断面U字状に周縁板11から凹陥したような形状となることにより、その内側空間として形成される。
このような形状から理解できるように、型材1は、アルミニウム素材を用いて引き抜き材として構成することが最も適している。しかしながら、強度的に保証できる範囲であれば、樹脂材料を用いて構成してもよい。また型材1の内部は中空状のままであってもよいが、強度的に必要であれば例えば発泡ウレタン等を注入して更に強度を増すようなことも可能である。
【0019】
そして本発明のビスポケット13は、詳細に見ると図2に示すように単なる凹陥した溝形状ではなく、ビス掛かりリブ15を、外縁部近い開放側と、奥部16側とにそれぞれ対向的に一例として計4条形成している。また奥部16は、開放側と同寸法の直径を採った円弧状の閉鎖空間とし、更にそこに凹陥部17が一例として3条形成されている。なおこの奥部16は、断面方向にビスを受け入れた際のビスポケットとなり得るものである。
なおこの型材1は、図1、図2、図4において断面正方形のものを例示したが、図示を省略するが断面長方形のものであっても差し支えない。
また各周縁板11にビスポケット13が設けられているが、このものを、少なくとも一つの周縁板11に、または対抗する二つの周縁板12に設けることも可能である。
【0020】
このような型材1を用いて、型材1を用いた枠組構造体2が構成し得る。
まず枠組構造体2におけるそれぞれの組立構造を述べる前に、全体的にその応用例を主に説明する。
図1、図3において示すものは、看板等として設置し得る構造体であって、このタイプの枠組構造体を符号2Aを付して説明する。
この枠組構造体2Aは、具体的には型材1を4片組み合わせ、下方を脚柱状に延長した形態である。その接続にあたっては、接続ピース21を介在させながらビス22によって固定し、看板機能を持たせるパネル23を嵌め込むものである。
また図5(a)に示す枠組構造体2Bは、前記看板状の枠組構造体に対し、その移動据付等をより容易にするために脚部を設けて、キャスター25を設けるようにしたものである。
同様に図5(b)に示す枠組構造体2Cは、更に幅を横方向に伸ばしたような形態としたフェンスのようなものである。
【0021】
更に図5(c)に示す枠組構造体2Dは、例えば室内におけるパーティションとして適用できるものであり、4本の型材1を組み合わせて四角面状に構成するとともに、柱状の型材1の少なくとも上下の一方の端部にジャッキピース26を適用して、床面と天井面との間で突っ張るようにしたものである。
【0022】
更に図6(a)に示す枠組構造体2Eは、スツール状の腰掛ないしは踏み台として用いられるものであって、4本の脚柱状に配された型材1を上方と下方寄りの各4本の矩形状に構成した型材1によって組み合わせている。更に、図6(b)に示す枠組構造体2Fは、ベンチ状に構成したものであり、この場合において、座板部を構成する部位については、例えば図6(b)に拡大して示すように、型材1を付き合わせて接続する手法で接続させるのではなく、重ね合わせるようにして接合させる手法を用いる。
具体的には、門型形状の接続ピース214を用いて接合させるものである。
【0023】
以下、これらのこれらの組み付け構造の接合形態について説明する。
最も一般的な形態として直角に型材1を付き合わせる場合、型材1そのものの切断面は、例えばいわゆる大留めと呼ばれる、各型材1の結合側端部を45°に切断形成して突合せた構造であってもよし、90°切放しの端縁の突合せ構造であってもよい(図1、図3参照)。
この場合に、帯板状の部材を90°曲げたL曲げ状の接続ピース211を用いたり、あるいは板状部材をLの字に打ち抜いた平面L字状の接続ピース212やT字状の接続ピース213を側面に当てがい、両者の接続を図る。もちろん上述した接続ピース21以外でも、図示は省略するが付き合わせた態様に応じた形状とした平板状の接続ピース21や、適宜の角度に屈曲させた接続ピースを用いることは言うまでもない。
具体的には、それぞれにビス穴221を形成し、この部位を利用してビス22を型材1におけるビスポケット13に向かって捻じ込むのである。
この捻じ込みは、図2に拡大して示すようにビス掛かりリブ15の存在により、ビスのねじ山がこれと係合し、確実な捻じ込みがなされる。
なお図1に示すように、この看板状の枠組構造体2Aにパネル23が収まる部位において型材1の内側にもビスポケット13が存在しており、この部位にパネル23を嵌め込むようにすることにより、他の格別な固定手段を用いることなく確実に固定することができる。
【0024】
なお、図1、図5(b)及び図6に示す実施例においては、看板状の枠組構造体2の脚部端部が切り離し状であり、この部位を保護するため、図6に示すようにグロメット24を利用して、この部位を閉塞するような形態を採ってもよい。このグロメット24は、型材1の端部の開放部を塞ぐような四角片状のものを用いるほか、例えばコーナー部の安全を確保するため、図6に示すように、L型に成形された樹脂製のグロメット等を用いてもよい。
この場合、グロメット24と型材1との係合は、グロメット24に対し、型材1におけるビスポケット13にはまり込むような係合部241を形成しておいてもよい。また図6に示すように端面のみを保護するグロメット24には、型材1のビスポケット13において係合する突起を設けてもよいし、型材1の内周面に嵌り込むような突起部242を設けておいてもよい。
【0025】
このような基本的な組み付け構造により、各タイプの枠組構造体2が構成し得るものであるが、キャスター25を有する枠組構造体2B、2Cや、ジャッキピース26を有するパーティション状の枠組構造体2Dにあっては、それに応じた取付構造を採る。即ちキャスター25あるいは、ジャッキピース26を取り付けるにあたっては、例えば図5(a)に示すようにキャスター取付板251に適宜のビス穴221を形成しておき、これを利用してビスにより型材1の基準面に取り付ける形態を採る。また、パーティション状の枠組構造体2Dの場合、ジャッキピース26を型材1の端面に設けるにあたっては、図5(b)に示すようにジャッキピース26におけるベースプレート261にビス穴221を形成しておき、ここを利用してビスを固定する。このビスの捻じ込まれる位置は、図2に拡大して示すように型材1のビスポケット13における最奥部が好ましい。この場合には、凹陥部17の存在により、凹陥部17に隣接して相対的に凸状に形成された壁面部位にビス22のねじ山の頂部が適宜に噛み込むことで、捻じ込みが確実に行われ、且つビス22の捻じ込み抵抗が少なく、ビス22の直進安定性を高めるものとして好ましい。
【0026】
〔他の実施の形態〕
本発明は以上述べた実施の形態を一つの基本的な技術思想として例示したものであるが、例えば、扉などの建具、額縁などの室内装飾品や、例えば計測装置におけるフレーム等の種々の目的に利用し得るものである。
【符号の説明】
【0027】
1 型材
2 枠組構造体
2A 枠組構造体(看板)
2B 枠組構造体(移動式看板)
2C 枠組構造体(フェンス)
2D 枠組構造体(天井突っ張り式)
2F 枠組構造体(スツール踏み台)
2E 枠組構造体(ベンチ)
11 周縁板
12 外周面
13 ビスポケット
14 ビスポケット形成部
15 ビス掛かりリブ
16 奥部
17 凹陥部
21 接続ピース
211 接続ピース(Lの字状)
212 接続ピース(Lの字平面状)
213 接続ピース(Tの字平面状)
214 接続ピース(コの字状)
22 ビス
221 ビス穴
23 パネル
24 グロメット
241 係合部
242 突起部
25 キャスター
251 キャスター取付板
26 ジャッキピース
261 ベースプレート
100 型材
101 基柱部
102 アリ状スペース
103 特殊ナット
104 ボルト
105 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四辺の周縁板が一体に形成された四角柱状を成し、各周縁板は、その外面部において一連の基準平面を形成し、且つ四辺の周縁板は、そのうち少なくとも一辺において、幅方向中心で、その長手方向に連続する凹陥形状のビスポケットを具えていることを特徴とする型材。
【請求項2】
前記ビスポケットは、内壁面にビス掛かりリブを具えていることを特徴とする請求項1記載の型材。
【請求項3】
前記ビスポケット奥部は、ビスポケット解放部と同寸法の径で円弧断面として閉塞し、且つ奥部内壁面には、複数条の凹陥部が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の型材。
【請求項4】
前記周縁板は四辺が全て等幅であり、また前記ビスポケットは四辺の周縁板全てに設けられていることを特徴とする請求項1、2または3記載の型材。
【請求項5】
前記請求項1、2、3、4記載の型材を複数本組み合わせて適宜の目的部材を構成するものであって、前記各型材の接続部は、各周縁板の外側に当てがう接続片を介して、その外側からビスポケットに向って、タッピングビスを捻じ込み固定されていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の型材を用いた枠組構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31909(P2012−31909A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170895(P2010−170895)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(510207553)アルシャン工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】