説明

型枠およびコンクリートの覆工厚さ測定方法

【課題】場所打ちライニング工法において、未硬化で内型枠の脱型前のコンクリートの覆工厚さを測定する方法を提供する。
【解決手段】内型枠13は、スキンプレート23に複数の開口部が設けられ、前記開口部に開閉可能なゲート33が設けられ、スキンプレート23の片面側のゲート33に対応する位置に、超磁歪素子を用いる発振装置29と受振装置27とを有する。発振装置29が発振し、受振装置27がコンクリート21と地山19との境界で反射した波動59を受振し、コンクリート21の覆工厚さを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちライニング工法に用いられる型枠、および場所打ちライニング工法においてコンクリートの覆工厚を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シールドトンネルの形成に、場所打ちライニング工法、押し出しコンクリートライニング工法、ECL(Extruded Concrete Lining)工法と呼ばれる、シールド掘削機で地山を掘削しつつ、前記シールド掘削機のテール部内側で内型枠を円環状に組立て、前記内型枠と前記掘削した地山との間にコンクリートを流し込んで覆工コンクリートを構築してトンネルを形成する工法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
場所打ちライニング工法において、コンクリートの覆工厚さを測定することが求められている。硬化後のコンクリートについては、コンクリートの片面に超音波振動子の送波器及び受波器を設置し、送波器からコンクリート体内に超音波を送波し、コンクリートの対面で反射する反射波を受波器により受波し、受波信号を解析してコンクリートの覆工厚さの測定が可能である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−241800号公報
【特許文献2】特開平5−332758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、硬化前のフレッシュコンクリートは、硬化時や硬化後よりも軟質であるため、通常の超音波振動子が発するP波は伝播しにくい。
【0006】
また、未硬化のコンクリートは、型枠に覆われているため、型枠を間に挟んで振動を発生させると、振動が金属製の型枠のみを伝播し、コンクリートの覆工厚さを測定することができない。
【0007】
以上より、これまで打設中のフレッシュコンクリートの覆工厚さを適確に計測する手段がないという問題点があった。
【0008】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、場所打ちライニング工法において、未硬化で脱型前のフレッシュコンクリートの覆工厚さを測定する測定方法などである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、スキンプレートに4枚の側板が設けられ、前記スキンプレートに複数の開口部が設けられ、前記開口部に開閉可能なゲートが設けられ、前記スキンプレートの片面側の前記ゲートに対応する位置に、超磁歪素子を用いる発振装置と受振装置とが設けられることを特徴とする型枠である。
【0010】
また、前記発振装置は、超磁歪素子により振動可能なヘッドを有する超磁歪型振動子を備え、前記受振装置は、センサを備えることが望ましい。
【0011】
第2の発明は、シールド掘削機で地山を掘削しつつ、前記シールド掘削機のテール部内側で型枠を環状に組立て、前記型枠と前記掘削した地山との間にコンクリートを打設して覆工コンクリートを構築し、トンネルを形成するにあたり、前記型枠が、超磁歪素子を用いた発振装置と受振装置を有し、前記発振装置が振動して波動を発生させ、前記受振装置が前記波動を受振し、前記波動の到達時間から、前記コンクリートの覆工厚さを測定することを特徴とするコンクリートの覆工厚測定方法である。
【0012】
また、前記型枠は、第1の発明記載の型枠であることが望ましい。
【0013】
また、前記ゲートを開ける工程と、前記発振装置を振動させて波動を発生させる工程と、前記受振装置で前記波動を受振する工程と、前記ゲートを閉じる工程と、を具備し、前記波動の到達時間からコンクリートの覆工厚さを計算することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、場所打ちライニング工法において、未硬化で脱型前の打設中のフレッシュコンクリートの覆工厚さを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、地山19にトンネルを形成するシールド掘削機1を示す図である。シールド掘削機1は、前端に回転掘削部3を有し、回転掘削部3の後部に延長する円筒状のテールプレート5を備える。テールプレート5の内側に沿うように、複数のシールドジャッキ7とプレスジャッキ9とが設けられる。プレスジャッキ9の後端には、テールプレート5の内周面に沿って前後に移動可能な妻型枠11を設ける。
【0017】
妻型枠11は、テールプレート5の内側と後述する内型枠13との間をふさいだ状態でプレスジャッキ9の伸縮で前後に移動可能な構成物である。また、コンクリート21を加圧するための加圧板としての機能も有する。
【0018】
また、シールドジャッキ7は、内型枠13により反力を得ており、その反力によってシールド掘削機1を推進する。また、妻型枠11と内型枠13、地山19との間に、コンクリート21を充填する。コンクリート21は、レミキサー(図示せず)から供給され、打設ポンプ17とコンクリート供給ホース15を通って、妻型枠11のコンクリート供給孔16から、打設される。妻型枠11が形成するリングには、プレスジャッキ9とコンクリート供給孔16の両方が設けられ、コンクリート供給孔16にはコンクリート供給ホース15が設けられる。図1の上部は、プレスジャッキ9が加圧する妻型枠11を、下部はコンクリート供給ホース15とコンクリート供給孔16が設けられた妻型枠11を表している。
【0019】
なお、シールド掘削機1が形成するトンネルは、断面円状のトンネルに限られず、断面かまぼこ状や断面馬てい状のトンネルなどにすることができる。
【0020】
また、コンクリート21の覆工厚さの測定は、ひとつのトンネル断面中で、複数箇所の測定が可能である。
【0021】
図2は、本実施形態に係る内型枠13の斜視図を示している。
内型枠13は、スキンプレート23と、側板25とからなる。スキンプレート23に設けられた発振装置29や受振装置27とが設けられる。
【0022】
スキンプレート23は、湾曲した長方形の板である。スキンプレート23は環の一部を形成しており、内型枠13が複数集まることで環状および筒状になる。スキンプレート23は、鋼製である。
【0023】
側板25は、長方形の板である。側板25は、スキンプレート23の四方の端部に設けられており、スキンプレート23の強度を高めている。側板25は鋼製である。
【0024】
内型枠13は発振装置29と受振装置27を各一つ設けているが、測定精度の向上のため、ひとつの発振装置29に対して複数の受振装置27を設けてもよいし、発振装置29と受振装置27の対を複数設けてもよい。
【0025】
図3は、図2のA−A断面の概略図であり、スキンプレート23の開口部には、ゲート33を有するソケット31が設けられる。ソケット31の下部には、ネジが設けられている。
【0026】
ゲート33は、妻型枠11により加圧されているコンクリート21が、内型枠13の開口部を通って、漏れ出さないように設けられており、ゲートバルブやカットゲートなどが用いられる。
【0027】
図4(a)は、発振装置29を示す図である。発振装置29とは、筒状のケーシング37と、ケーシング37の端部に形成されたニップル39と、ジャッキ45により、ケーシング37上部より突出可能な振動子41及びヘッド43とからなる。
【0028】
ニップル39は、前記ソケット31と螺合可能なネジが設けられている。
【0029】
また、ニップル39のような螺合による固定に限られず、ソケット31とケーシング37を接合可能な、管用の継手を用いることができる。例えば、ワンタッチカプラーなどを用いることができる。
【0030】
また、振動子41とケーシング37の間に、パッキンを設け、ゲート33の開放時にコンクリート21が、ケーシング37内に進入することを防いでもよい。
【0031】
ジャッキ45は、振動子41を前後に移動可能なものであり、油圧ジャッキでもネジジャッキでもよい。なお、ジャッキ45には、ストローク計を設けることが好ましい。コンクリートの覆工厚さを測定する際、ヘッドの位置が異なると波動の伝播距離が異なり、算出される覆工厚さが変化するためである。
【0032】
図5は、振動子41の断面の概略図である。超磁歪素子51が、コイル49の中におかれ、コイル49の周りを永久磁石53が覆っている。超磁歪素子51はロッド57に接続し、ロッド57は、バネ55により、振動子41の長軸方向に力がかけられている。
【0033】
超磁歪素子51は、Tb0.3Dy0.7Fe2.0(テルビウム‐ディスプロジウム‐鉄)の化合物により形成される。コイル49に電流を流し、磁界を生じることで、超磁歪素子51は、長軸方向へ通常0.1%以上伸張する。コイル49からの磁界がなくなると、元の長さに戻る。コイル49に電流を流す/止めるを繰返し行うことで、超磁歪素子51は、伸縮する。超磁歪素子51の伸縮により、ロッド57が往復運動をし、更にはヘッド43が図5に示した矢印方向に振動することによって波動を発生させることができる。
【0034】
また、図4(b)は、受振装置27を示す図であり、受振装置27は、先端にニップル39を有する筒状のケーシング37に、センサ47が設けられ、センサ47は、ジャッキ45によりケーシング37上部より突出可能である。また、受振装置27は、発振装置29と同様に、パッキンやストローク計を設けてもよい。
【0035】
センサ47は、ヘッド43が発生させた波動がコンクリート21と地山19の岩盤との境界部で反射した波動を受振することのできる振動計を一般的に用いることができる。例えば、圧電素子を備えた加速度計を用いることができる。
【0036】
続いて、図6を用いて、内型枠13において、発振装置29と受振装置27とを用いてフレッシュコンクリート21の覆工厚さを測定する方法を説明する。
【0037】
図6(a)に示すように、発振装置29と受振装置27とを内型枠13のソケット31に取り付ける。
【0038】
図6(b)に示すように、発振装置29、受振装置27のニップル39が、ソケット31に螺合する。ニップル39とソケット31の螺合は、コンクリート21の圧力に耐えることができる。
【0039】
その後、図6(c)に示すように、ゲート33を開け、発振装置29からは振動子41とヘッド43を、受振装置27からはセンサ47をゲート33から突き出す。この際、波動59が、ソケット31内で反射するなど、ソケット31の影響を受けないように、ヘッド43とセンサ47は、スキンプレート23が形成する平面と同じかそれ以上にコンクリート21中に突き出す。
【0040】
その後、振動子41がヘッド43を振動させ、P波やS波といった波動59を発生させる。波動59は、コンクリート21と地山19の間の伝播速度が異なるため、境界面で反射し、センサ47で受振する。なお、ヘッド43の先端はコンクリート21に圧縮する方向に振動してP波を発生させ、ヘッド43の側面は、コンクリート21にせん断する方向に振動してS波を発生させる。
【0041】
その後、図6(d)に示すように、振動子41を発振装置29のケーシング37の内部に、センサ47を受振装置27のケーシング37の内部に収納し、ゲート33を閉じる。
【0042】
その後、図6(e)に示すように、発振装置29と受振装置27を、内型枠13より撤去する。
【0043】
なお、コンクリート覆工厚さの測定において、振動子41やセンサ47をコンクリート21中へ押し出さずに測定することも可能である。押し出さずに測定する場合には、発振装置29と受振装置27にジャッキ45を設ける必要はない。また、測定方法においても、振動子41とセンサ47の押し出し工程および引き戻し工程は不要となる。
【0044】
受振データを用いた覆工厚さの計算方法の一例を紹介する。センサ47で受振した受振データを用いて、直達波の到達時間と反射波の到達時間を算出する。ここで、発振装置29と受振装置27の距離が既知であるため、直達波の到達時間よりコンクリート21中の波動の伝播速度が計算できる。そのため、この伝播速度と反射波の到達時間より覆工厚さを計算できる。
【0045】
本実施の形態においては、超磁歪素子を用いた発振装置により、従来の超音波発生装置よりも短い波長のS波を発生させることができる。
【0046】
また、本実施の形態においては、従来困難であった、脱型前のコンクリートと発振装置を、金属製の内型枠を間に挟まずに接することができる。
【0047】
また、本実施の形態においては、加圧コンクリートの圧力に耐えながら、発振装置と受振装置を出し入れ可能な内型枠を提供する。
【0048】
つまり、本実施の形態においては、従来測定が困難であった、場所打ちライニング工法における脱型前の未硬化のコンクリートの覆工厚の測定が可能である。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら、本発明にかかる型枠やコンクリートの覆工厚さの測定方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態に係るシールド掘削機1の概要を示す図。
【図2】本実施の形態に係る、発振装置29と受振装置27を有する内型枠13を示す図。
【図3】本実施の形態に係る内型枠13の断面を示す図。
【図4】本実施の形態に係る発振装置29と受振装置27を示す図。
【図5】本実施の形態に係る振動子41の断面の概略図。
【図6(a)】本実施の形態に係るコンクリート21の覆工厚さの測定方法を示す図。
【図6(b)】本実施の形態に係るコンクリート21の覆工厚さの測定方法を示す図。
【図6(c)】本実施の形態に係るコンクリート21の覆工厚さの測定方法を示す図。
【図6(d)】本実施の形態に係るコンクリート21の覆工厚さの測定方法を示す図。
【図6(e)】本実施の形態に係るコンクリート21の覆工厚さの測定方法を示す図。
【符号の説明】
【0051】
1………シールド掘削機
3………回転切削部
5………テールプレート
7………シールドジャッキ
9………プレスジャッキ
11………妻型枠
13………内型枠
15………コンクリート供給ホース
16………コンクリート供給孔
17………打設ポンプ
19………地山
21………コンクリート
23………スキンプレート
25………側板
27………受振装置
29………発振装置
31………ソケット
33………ゲート
37………ケーシング
39………ニップル
41………振動子
43………ヘッド
45………ジャッキ
47………センサ
49………コイル
51………超磁歪素子
53………永久磁石
55………ばね
57………ロッド
59………波動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキンプレートに4枚の側板が設けられ、
前記スキンプレートに複数の開口部が設けられ、
前記開口部に開閉可能なゲートが設けられ、
前記スキンプレートの片面側の前記ゲートに対応する位置に、超磁歪素子を用いる発振装置と受振装置とが設けられることを特徴とする型枠。
【請求項2】
前記発振装置は、超磁歪素子により振動可能なヘッドを有する超磁歪型振動子を備え、
前記受振装置は、センサを備えることを特徴とする請求項1記載の型枠。
【請求項3】
シールド掘削機で地山を掘削しつつ、前記シールド掘削機のテール部内側で型枠を環状に組立て、前記型枠と前記掘削した地山との間にコンクリートを打設して覆工コンクリートを構築し、トンネルを形成するにあたり、
前記型枠が、超磁歪素子を用いた発振装置と受振装置を有し、
前記発振装置が振動して波動を発生させ、前記受振装置が前記波動を受振し、前記波動の到達時間から、前記コンクリートの覆工厚さを測定することを特徴とするコンクリートの覆工厚測定方法。
【請求項4】
前記型枠は、請求項1記載の型枠であることを特徴とする請求項3記載のコンクリートの覆工厚測定方法。
【請求項5】
前記ゲートを開ける工程と、
前記発振装置を振動させて波動を発生させる工程と、
前記受振装置で前記波動を受振する工程と、
前記ゲートを閉じる工程と、
を具備し、
前記波動の到達時間からコンクリートの覆工厚さを計算することを特徴とする請求項4記載のコンクリートの覆工厚測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【図6(d)】
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【図6(e)】
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【公開番号】特開2009−179943(P2009−179943A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17286(P2008−17286)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】