埋在性二枚貝の養殖方法及びその養殖具
【課題】海中に埋在性二枚貝を垂下養殖するに際して、養殖基質と二枚貝が不用意に分離してしまうことがなく、しかも、通水性を良好に維持して埋在性二枚貝の成長や生残に悪影響が生養殖方法を提供する。
【解決手段】埋在性二枚貝7と、粒状の養殖基質5とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網袋2に収容し、網袋2を、網袋2が流出しない目合いを有する飼育容器3に収容し、飼育容器3を海中に垂下する。
【解決手段】埋在性二枚貝7と、粒状の養殖基質5とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網袋2に収容し、網袋2を、網袋2が流出しない目合いを有する飼育容器3に収容し、飼育容器3を海中に垂下する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アサリ、ハマグリ、アカガイ、ミルクイ、トリガイ、ウチムラサキ、ホンビノス、エゾイシカゲガイ等(以下、アサリ等という。)の埋在性二枚貝の養殖方法および養殖具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砂泥中に埋在して生活するアサリ等の埋在性二枚貝は、潜入すべき砂床が必要であることから、養殖方法としては一般に地蒔き式養殖が採用されていた。なお、埋在性二枚貝とは、アサリ等のように砂地や砂泥地に生息する貝類のことをいう。
【0003】
しかし、沿岸水域の海底環境の悪化によって、種苗放流の効果が期待できなくなったため、地蒔き式養殖に代わるものとして垂下式養殖方法が開発されている。
【0004】
かかる垂下式養殖方法としては、図16(a)〜(c)に示すように、適度の目合いを有するコンテナ等の平面積の大きな剛性を有する飼育容器100に、アンスラサイト、カキ殻等からなる養殖基質101を敷き詰めた後に、この養殖基質101内に二枚貝(種苗)102を埋める。そして、かかる養殖基質101と二枚貝種苗102とを収容した飼育容器100を海中に垂下する方法が公知である。
【0005】
また、他の垂下式養殖方法としては、プラスチック製の小容器内に砂又は泥を容れ、この砂又は泥中に二枚貝の種苗を埋める。そして、複数個の小容器をポッケ式ネットに入れ、これら小容器とポッケ式ネットを海中に垂下させる方法が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−266736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記図16に示した垂下式養殖方法においては、飼育容器が海中に垂下された状態であるため、波浪によって飼育容器が垂直移動や揺動を受け易く、海中で不安定になり易い。これらの現象が複合して砂床の砂が激しく流動し、容器の片側に移動する。このような砂床の不安定な状態を埋在性二枚貝は嫌い、二枚貝が養殖基質の表面に出てしまう問題があった。養殖基質と二枚貝が分離してしまうと、二枚貝の成長や生残に悪影響が生じる。
【0008】
また、二枚貝の飼育には、一定の養殖基質深度が必要なため、少量の二枚員を飼育する場合でも飼育容器内に敷設する養殖基質の量を少なくできない。このため、養殖基質から二枚貝が出てしまわないように、大量の養殖基質が必要となっていた。
【0009】
また、特許文献1に記載の垂下式養殖方法は、小容器内に砂又は泥を容れ、この砂又は泥中に二枚貝を埋めるものである。すなわち、小容器の周壁全面は海水と区画されており、この周壁内外に海水の流通性がないため、通水性が悪い。この結果、二枚貝は、海水とともに飼料を十分に補給することができず、飼料環境が悪化する問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、海中に埋在性二枚貝を垂下養殖するに際して、養殖基質と二枚貝が不用意に分離してしまうことがなく、しかも、通水性を良好に維持して埋在性二枚貝の成長や生残に悪影響が生じることがない埋在性二枚貝の養殖方法及びその養殖具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために、埋在性二枚貝の養殖方法及びその養殖具としてなされたもので、本発明に係る埋在性二枚貝の養殖方法としての特徴は、埋在性二枚貝と、粒状の養殖基質とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網袋に収容し、前記網袋を、網袋が流出しない目合いを有する飼育容器に収容し、前記飼育容器を海中に垂下することにある。
【0012】
前記本願発明は、網袋2は、網篭3側には固定せず、形状が任意に変形できる可変式になっている。また、海中に埋在性二枚貝を垂下養殖するに際して、養殖基質と二枚貝が網袋2に収容されているため、養殖基質と二枚貝が不用意に分離してしまうことがない。しかも、網袋2および網袋が流出しない目合いを有する飼育容器を採用することにより、通水性を良好に維持して埋在性二枚貝の成長や生残に悪影響が生じるのを防止できる。
【0013】
また、埋在性二枚貝の養殖方法としての特徴は、埋在性二枚貝と、粒状の養殖基質とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網生地からなる網袋に収容し、前記網袋の開口部を閉塞手段で閉塞した後に、前記網袋を海中に垂下することにある。
【0014】
前記埋在性二枚貝の養殖方法において、養殖途中に前記使用中の網袋を目合いの大きな網袋に交換することが好ましい。
【0015】
本発明に係る養殖具としての特徴は、埋在性二枚貝と粒状の養殖基質とが収容可能で且つそれらが流出しない目合いを有する網袋と、前記埋在性二枚貝と養殖基質とが収容された網袋が収容可能で且つ有底筒状の網生地からなる網篭本体を有する飼育容器とを備え、前記網篭本体の目合いは、前記網袋の目合いよりも大きく設定されていることにある。
【0016】
前記本発明に係る養殖具は、網袋と網篭とを備えた簡単な構造により、前記埋在性二枚貝の養殖方法を実施することが可能である。
【0017】
また、波浪の強さや養殖具を破壊する可能性のあるフグ、ブダイ、クロダイ、カニ類等の生息状況は各海域により異なるため、養殖する海域によって、様々な強度、剛性を持った網篭を用意する必要があった。
【0018】
本発明の養殖具は、網袋と網篭とで二枚貝を保護しているので、網篭は既存の剛性を有するものが採用でき、各海域に応じた専用の網篭を用意する必要はない。
【0019】
前記埋在性二枚貝の養殖具において、前記網袋の両側にマチを形成することにより、前記網袋を立体的な構造とするのが好ましい。かかる場合には、網袋の両側にマチを形成することにより、網袋の強度を高めるとともに、網篭の中で、立体的な構造を維持し易くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、海中に埋在性二枚貝を垂下養殖するに際して、養殖基質と二枚貝が不用意に分離してしまうことがなく、しかも、通水性を良好に維持して埋在性二枚貝の成長や生残に悪影響が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る養殖具を使用して埋在性二枚貝を養殖する状態を示し、(a)はフロ一ト式の筏での養殖状態を示す斜視図、(b)は延縄式の垂下養殖施設での養殖状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る養殖具の概略を示す正面図である。
【図3】同養殖具の網袋を示し、(a)は網袋の全体斜視図、(b)は網袋の目合いを示す拡大図である。
【図4】同養殖具の網篭を示し、(a)は網篭の平面図、(b)は網篭の側面図、(c)は網篭の正面図、(d)は網篭の底面図である。
【図5】(a)〜(d)は同網袋を閉塞するための閉塞具をそれぞれ示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る埋在性二枚貝の養殖方法の各工程を示し、(a)は網袋に養殖基質と二枚貝を収容する状態を示す斜視図、(b)は網袋を閉塞した状態を示す斜視図、(c)は網袋を網篭に収容した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る埋在性二枚貝の養殖方法と従来の埋在性二枚貝の養殖方法を実施したアサリの生育状況の実験データを示し、(a)はアサリの成長の推移を示す図、(b)はアサリの生存率の推移を示す図である。
【図8】本発明に係る網袋の他の実施形態を示し、(a)は網袋を裏返した状態の斜視図、(b)は網袋を表側に反転させた状態の斜視図、(c)は養殖基質と二枚貝を収容した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の他実施形態に係る養殖具を示し、(a)は養殖具の正面図、(b)は養殖具を垂下した状態の斜視図である。
【図10】本発明の他実施形態に係る養殖具の概略を示す正面図である。
【図11】本発明の他実施形態に係る養殖装置の概略を示す断面正面図である。
【図12】本発明の他実施形態に係る養殖具を示し、(a)は網袋の斜視図、(b)は養殖基質と二枚貝が収容された網袋を紐で縛る状態を示す斜視図、(c)は網袋を垂下した状態の斜視図である。
【図13】(a)は図12に示した実施形態における網袋を垂下した状態の斜視図、(b)は二枚貝の収穫時において網袋を反転させた状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の他実施形態に係る埋在性二枚貝の養殖方法の各工程を示し、(a)は網袋に養殖基質と二枚貝を収容する以前を示す網袋の斜視図、(b)は網袋に養殖基質と二枚貝を収容した状態を示す網袋の斜視図、(c)は網袋を垂下した状態の網袋の斜視図である。
【図15】本発明の他実施形態に係る埋在性二枚貝の養殖具の概略を示す斜視図である。
【図16】従来例を示し、(a)は養殖具の正面図、(b)は養殖具の平面斜視図、(c)は養殖具の平面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図6は、本発明の一実施の形態を示す。
【0023】
先ず、本発明の埋在性二枚貝の養殖方法に使用される養殖具について説明する。
【0024】
本養殖具1は、養殖基質5および二枚貝7を収容する網状の袋(以下、網袋という。)2と、この網袋2を単数または複数個収容できる飼育容器としての網篭3とを備えている。
【0025】
網袋2は、図3(a)に示すように、合成繊維(例えば、0.2mm径のナイロン線)を網状に形成した可撓性シート(網生地)を、袋状に形成したしたものである。網袋2は、偏平にした状態において、横寸法Wが300mm〜500mm、縦寸法Hが400mm〜600mmに設定されている。好ましくは、横寸法Wが400mm、縦寸法Hが500mm(網袋寸法が400mm×500mm)に設定されている。
【0026】
しかも、網袋2の目開きLは1.5mm〜2,0mm(好ましくは1.7mm)に設定されている。ここで、目開きLをこのように設定するのは、養殖基質5および二枚貝7を収容した際に、それらが網袋2から流出しない目合いとするためである
網袋2の上部は開口されおり、その開口部周縁には、開口部20を閉塞するための閉塞手段としての紐21が取付けられている。その結果、網袋2の開口部20は、巾着構造になっており、紐21で開口部20を絞った後に縛って閉じることができる。
【0027】
網篭3は、図4(a)〜(d)に示すように、有底筒状の可撓性を有する網生地からなる網篭本体部30と、この網篭本体部30の底周縁に設けられた円形の下枠体31と、この下枠体31と所定の間隔を有して設けられた上枠体32と、網篭本体部30の底部30aを下方から支持する十字状の補強枠体33と、ロープの両端を上枠体32に連結することにより形成された一対の取っ手35、35とを備えている。
【0028】
また、網篭3は、直径が450mmで、且つ上下枠体31、32の高さ寸法H1が150mmに設定されている。また、網篭本体部30の上部は開口されており、その開口部31は、巾着構造になっており、紐36で開口部30bを絞った後に縛って閉じることができる。また、網篭本体部30は、付着生物の影響による、網篭3の通水性の悪化を防止するため、目開きが10mm〜30mm(好ましくは、21mm)の網生地が採用されている。また、この網生地は0.6mm径のナイロン線が採用されている。なお、この網生地の目開きは特に限定されないが、網袋2の目開きLよりも大きく、且つ、網篭本体部30に収容される網袋2が落ちない程度の大きさの目合いに適宜設定されている。
【0029】
上下枠体31、32および補強枠体33は、ビニルでコーティングされた鉄線から構成されている。
【0030】
本実施の形態の養殖具1は以上の構成からなり、次に、かかる養殖具1を使用したアサリ等の二枚貝7の養殖方法について説明する。
【0031】
1 養殖開始時の工程(図6参照)
先ず、網袋2を開口させ、その開口部20から、粒状の養殖基質5と複数個の二枚貝7としてのアサリ種苗を収容する。養殖基質5としては、アンスラサイト、カキ殻等が採用され、その粒径は、網袋2の目開きLよりも十分に大きく設定されているため、養殖基質5が網袋2から不用意に流出することはない。また、アサリ種苗7の適宜個数を網袋2に収容する(同図(a)参照)。
【0032】
なお、アサリ種苗7の平均殻長は、例えば5mmに設定する。また、養殖基質5の粒径は3mm以上(3mm〜5mm)に設定されている。
【0033】
次に、網袋2の開口部20を閉じる。具体的には、網袋2の上部を紐21で絞り、その紐21を巻き結び(クラブヒッチ)で縛る(図5(a)参照)。網袋2が複数個の場合には、かかる養殖基質5とアサリ種苗7の網袋2への収容作業を、各網袋2毎に行う。
【0034】
次に、養殖基質5とアサリ種苗7とが収容された網袋2を、網篭3に収容する。このとき、各網袋2は網篭3内部に固定しない。
【0035】
さらに、網篭3の開口部30bを紐36で閉じた後に、この網篭3の上部に、直径が6mmのポリエチレン製ロープ40の一端側を連結し、このロープ40の他端を、フロ一ト式の筏8(図1(a)参照)、または、延縄式の垂下養殖施設9(図1(b)参照)に連結することにより、アサリ種苗7を海中10に垂下する。なお、このときのアサリ種苗7の垂下水深は、水面下1〜3mに設定するのが好ましい。
【0036】
なお、本実施の形態では、図1および図2において、2個の網袋2を網篭3に収容した場合を例示するが、その網袋2の個数は特に限定されるものではなく、単体の網袋2を網篭3に収容することも可能である。
【0037】
2 洗浄作業工程
前記のように、アサリ種苗7を海中10で長期間飼育していると、網袋2および網篭3の付着生物の除去が必要な場合がある。そこで、次に網袋2および網篭3から付着生物を除去する作業工程について説明する。
【0038】
先ず、網篭3を海中10から引き上げた後に、網篭3の開口部30bを閉じている紐36を緩めて開放する。この網篭3を海中10から引き上げる際に、網篭3は、比較的大きな目合いに形成されているため、通水性が良く、網篭3内の海水を迅速に排出することができる。
【0039】
また、養殖基質5にアンスラサイト等の軽量の粒状基質を採用し、しかも、網袋2を採用しているため、通水性が良好となり、その結果、引き上げる際の重量を軽くすることができ、作業者の負担を軽減できる。さらに、開放された網篭3から各網袋2を取り出す。
【0040】
網篭3の付着生物は、日干しにするか、または、手作業や高圧洗浄機により取り除くことができる。
【0041】
各網袋2の付着生物は、手作業か高圧洗浄により取り除くことができる。かかる各網袋2の付着生物の除去作業は、養殖基質5とアサリ種苗7とを収容した状態で行うことが可能であるが、養殖基質5とアサリ種苗7とを一旦取り出した状態で行っても良い。
【0042】
各網袋2および網篭3の洗浄作業を終了した後に、再び、網篭3に各網袋2を収容して網篭3を閉塞する。さらに、網袋2および網篭3を海中10に垂下する。
【0043】
3 二枚貝の成長に伴う網袋の交換工程
アサリ種苗7の成長に伴い、網袋2の交換が必要となる場合がある。なお、かかる交換工程は、網袋2の目合い交換が求められる場合において実行するものである。
【0044】
先ず、前記と同様に、網篭3を海中10から引き上げ、その引き上げられた網篭3から網袋2を取り出す。さらに、二枚貝が収容されている使用中の網袋2と、新しい網袋2の開口部20同士を接合させて、使用中の網袋2を口部が下方を向くように逆さま状態にし、養殖基質5とアサリ種苗7を、上向きの新しい網袋2に入れ替える。網袋2の開口部20同士を接合させるとは、上向きの新しい網袋2の開口部20に、下向きの使用中の網袋2の開口部20を挿入する。
【0045】
このように、目合いの大きい新しい網袋2に、養殖基質5とアサリ種苗7とを入れ替えるととにより、網袋2に適度な透水性を持たせることが可能となる。また、網袋2に付着生物が付着するのを防止することもできる。なお、かかる場合において、網袋2の目合いは、養殖基質5が流出しない大きさのものが使用される。
【0046】
4 水揚げ時(収穫時)の工程
二枚貝を網袋2内で所定期間養殖した後に、前記同様に網篭3を引き上げて、その網篭3から網袋2を取り出す。具体的には、先ず、網袋2を開放し、内容物である養殖基質5とアサリ種苗7を取り出す。次に、網袋2のアサリ種苗7を目開き10mm程度のフルイにかけて、アサリ種苗7を養殖基質5から分離する。
【0047】
以上に示した本実施形態は、以下のような効果を奏する。
【0048】
網袋2の数を複数個に設定し、各網袋2を網篭3内に収容するに際して、それらは網篭3に固定せず、網篭3内でそれぞれ可動できるようにしている。すなわち、可撓性を有し且つ可動式の網袋2を採用することで、養殖基質5と二枚貝7とが一緒に動くようにすることができるため、波浪等の影響により網篭3が傾いた際に、網袋2内の養殖基質5と二枚貝7とが分離してしまう危険性を軽減することができる。
【0049】
網篭3を洗浄する際には、養殖基質5と二枚貝7とは、網袋2に収容された状態で網篭3から取り出せるため、網袋2から養殖基質5と二枚貝7とがこぼれることなく、網袋2と網篭3とを容易に分離することができ、かかる作業を簡単且つ迅速に行える。
【0050】
網袋2を交換する際には、使用中の網袋2と新しい網袋2との開口部同士を接合させて、養殖基質5と二枚貝7と入れ換えることにより、内容物である養殖基質5と二枚貝7とを溢れることなく、迅速に移し換えることができる。
【0051】
少量の二枚貝7を育成したい場合であっても、網袋2のサイズを小さく設定するだけで、少量の養殖基質で二枚貝の潜砂に必要な厚み(深さ)を確保できる。すなわち、二枚貝7の飼育量に応じて、網袋2のサイズを低コストのものに自在に変えることができ、その網袋2のサイズに合わせて養殖基質量も自在に変えることができ、非常に経済的である。
【0052】
可撓性を有する網袋2を複数枚重ねることで、低コストで且つ容易に強度調節ができるため、飼育対象に応じて、高コストな網篭3を何種類も用意する必要が無い。また、可撓性を有する網袋2を採用することにより、飼育容器は網篭3以外でも使用することが可能になった。すなわち、網袋2を収容するものは、網篭3だけではなく、必要とする強度に応じて、任意の材質および形状からなる容器を選択することも可能である。
【0053】
二枚貝の成長に応じて、網袋2の網目の大きさを変更する場合に、網篭3の種類を交換するよりも低コストで簡単に網袋2の目合いを変えることができる。この結果、常時、養殖基質5が流出しない程度に、大きい目合いの網生地を用いることで、網袋2内に海水が流入しやすくし、餌料環境を良好に維持することができる。
【0054】
また、養殖具1は、餌料環境等を良好に維持して飼育環境が向するため、単位面積あたりの養殖量を効率よく向上させることが可能である。しかも、養殖具1は複数段に連接することも可能である。かかる場合には、一段篭だけではなく、既存の多段篭を用いることで、単位面積あたりの収穫量を高めることも可能である。
【0055】
次に、前記二枚貝の養殖方法によるアサリ種苗7の養殖実験を行ったので、その生育状況の実験結果を図7に示す。かかる実験は、前記実施形態にかかる本願発明の養殖方法(新方法)と従来の養殖方法(従来方法)とを行い、両者を比較した。
【0056】
具体的には、新方法は、アサリ種苗(殻長5mm)7を、網袋2に160個体収容し、その網袋2を網篭3に収容した。
【0057】
従来方法は、図16に示した目合いの細かい網篭に養殖基質と二枚貝とを直接入れる方法を採用した。
【0058】
そして、新方法および従来方法において、それぞれ3篭ずつ準備し、アサリ種苗7を所定期間飼育した。
【0059】
同図(a)に新方法と従来方法とにおけるアサリ種苗の成長の推移(アサリ種苗の殻長と飼育日数との関係)を示す。各アサリ種苗7の平均殻長のデータは、各篭から30個体ずつランダムサンプリングにより計測し、3篭の平均殻長と標準偏差とをそれぞれ示している。
【0060】
それぞれの養殖方法の実験結果より、新方法は従来方法と比較して成長が早い傾向であることが確認できた。
【0061】
同図(b)は、アサリ種苗の生存率の推移(アサリ種苗の生存率と飼育日数との関係)を示す。アサリの生存推移を、本願発明に係る方法と従来方法で比較した。その結果、新方法と従来方法の生存率の推移には、大きな相違は見られなかった。
【0062】
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではない。例えば、網袋2を閉塞する閉塞手段は、紐21に限らず、網袋2の開口部20を面テープ21A(図5(b)参照)、結束バンド21B(図5(c)参照)やクリップ21C(図5(d)参照)等であってもよい。かかる閉塞手段により、網袋2の開口部20を解除自在に閉じる作業を迅速且つ容易に行うことができる。
【0063】
また、網袋2下部の両側角部を縫製等し(図8(a)参照)、この網袋2を裏返すことにより(図8(b)参照)、網袋2の両側にマチ2aを形成するようにしてもよい(図8(c)参照)。このように、網袋2の両側にマチ2aを形成することにより、網袋2の強度を高めるとともに、網篭3の中で、立体的な構造を維持し易くすることができる。
【0064】
また、網篭3の形状は前記のものに限定されることはない。例えば、図9に示すように、上下方向に複数段の収容室38を設けた多段式の網篭3を製作する。そして、各収容室38に前記養殖基質5と二枚貝7とが収容された網袋2を収容する。多段式の網篭3の底面と上面の両方に、筏8や垂下養殖施設9等に吊り下げることの出来るロープ40等の吊下部材を取付けることで、二枚貝7の養殖中に、網篭3の上下を容易に反転させることができる。
【0065】
水深により、水中餌料濃度や付着生物の幼生浮遊量が異なるため、網篭3の上下を反転させることで、二枚貝7の水深調整を適宜行い、二枚貝7の成長率や付着生物量を平均化することができる。なお、各収容室38に網袋2を収容できるように、網篭3の周部で且つ各収容室38に対応する部分には、開口(図示省略)が形成されており、各開口は紐等により適宜閉塞される。本実施の形態では、3段の場合を例示するが収容室38の段数は特に限定されるものではない。
【0066】
図10に示す本実施形態の網篭3は、その篭内部の低面に仕切部37を立設させる。そして、網篭3内部に収容された網袋2を、仕切部37に上方から載置する。これにより、網袋2は、仕切部37により下方から食い込むように押圧されるため、網袋2の下部側が変形する。この結果、網袋2内の養殖基質5が暴露する表面積を大きくでき、二枚貝7の餌料捕食を促す。また、この仕切部37は網篭3の補強リブの機能も備えている。
【0067】
図11に示す本実施形態は、養殖基質5と二枚貝7とを収容した網袋2を、フラプシー(海面筏式飼育装置(Floating Up Weller System))のカラム3A内部に垂下し、育成することで、カラム内部の空間を効率良く利用することができる。すなわち、フロ一ト式の筏8や垂下養殖施設9等にカラム3Aを固定し、このカラム3Aの底面を網状にする。カラム3Aの側面に水路3Bを設け、この水路3B内にポンプPを設置する。そして、ポンプPを作動させて、カラム3Aの底面、カラム3A内部、水路3B、海面へと海水が流れる水流を強制的に発生させる。この結果、かかる水流により、二枚貝7の餌の補足を促進させることができる。
【0068】
前記実施形態の養殖具1は、網袋2と網篭3とを備えたものを例示したが、図12〜図15に示す養殖具1は、容器を使用することなく、網袋2で構成したものである。食害生物量や波浪等の物理的衝撃の少ない海域では、延縄式の幹ロープに網袋2を直接垂下して養殖することも可能である。
【0069】
図12および図13に示す養殖具1は、縦に長尺状の網袋2を製造し(図12(a)参照)、この網袋2の複数箇所を紐43等で順次縛り(図12(b)参照)、養殖基質5と二枚貝7とが入った多段式飼育ネットを形成する(図12(c)参照)。
【0070】
さらに、二枚貝7を収穫する際は、養殖していた状態(図13(a)参照)に対して、網袋2を上下反転させた状態で、フック45等を介して吊下部46に垂下させる。そして、網袋2の下部側から順次紐43を解いて、網袋2を開放させることにより、養殖基質5と二枚貝7とを順次落下させて取り出す(図13(b)参照)。
【0071】
図14(a)〜(c)に示す実施形態は、垂下ロープ47を網袋2に上下方向に貫通させ、網袋2から下方に突出する垂下ロープ47の下端にストッパ部材48を設け、この垂下ロープ47が網袋2から上方に抜けないようにしたものである。そして、網袋2に養殖基質5と二枚貝7とを収容した後に、垂下ロープ47を介して海中10に垂下する。このように、網袋2を垂下したときに自重により、網袋2を前記図10と同様に自重で変形させるようにすることで、養殖基質が暴露する表面積を広げ、二枚貝の餌料捕食を促することができる。
【0072】
また、本実施の形態は、図15に示すように、延縄式の幹ロープ41に養殖基質5と二枚貝7とを収容した網袋2を、直接垂下させて養殖することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 養殖具
2 網袋
2a マチ
3 網篭
3A カラム
5 養殖基質
7 アサリ種苗(二枚貝)
8 フロ一ト式の筏
9 垂下養殖施設
10 海中
21 紐
30 網篭本体部
【技術分野】
【0001】
本発明は、アサリ、ハマグリ、アカガイ、ミルクイ、トリガイ、ウチムラサキ、ホンビノス、エゾイシカゲガイ等(以下、アサリ等という。)の埋在性二枚貝の養殖方法および養殖具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砂泥中に埋在して生活するアサリ等の埋在性二枚貝は、潜入すべき砂床が必要であることから、養殖方法としては一般に地蒔き式養殖が採用されていた。なお、埋在性二枚貝とは、アサリ等のように砂地や砂泥地に生息する貝類のことをいう。
【0003】
しかし、沿岸水域の海底環境の悪化によって、種苗放流の効果が期待できなくなったため、地蒔き式養殖に代わるものとして垂下式養殖方法が開発されている。
【0004】
かかる垂下式養殖方法としては、図16(a)〜(c)に示すように、適度の目合いを有するコンテナ等の平面積の大きな剛性を有する飼育容器100に、アンスラサイト、カキ殻等からなる養殖基質101を敷き詰めた後に、この養殖基質101内に二枚貝(種苗)102を埋める。そして、かかる養殖基質101と二枚貝種苗102とを収容した飼育容器100を海中に垂下する方法が公知である。
【0005】
また、他の垂下式養殖方法としては、プラスチック製の小容器内に砂又は泥を容れ、この砂又は泥中に二枚貝の種苗を埋める。そして、複数個の小容器をポッケ式ネットに入れ、これら小容器とポッケ式ネットを海中に垂下させる方法が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−266736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記図16に示した垂下式養殖方法においては、飼育容器が海中に垂下された状態であるため、波浪によって飼育容器が垂直移動や揺動を受け易く、海中で不安定になり易い。これらの現象が複合して砂床の砂が激しく流動し、容器の片側に移動する。このような砂床の不安定な状態を埋在性二枚貝は嫌い、二枚貝が養殖基質の表面に出てしまう問題があった。養殖基質と二枚貝が分離してしまうと、二枚貝の成長や生残に悪影響が生じる。
【0008】
また、二枚貝の飼育には、一定の養殖基質深度が必要なため、少量の二枚員を飼育する場合でも飼育容器内に敷設する養殖基質の量を少なくできない。このため、養殖基質から二枚貝が出てしまわないように、大量の養殖基質が必要となっていた。
【0009】
また、特許文献1に記載の垂下式養殖方法は、小容器内に砂又は泥を容れ、この砂又は泥中に二枚貝を埋めるものである。すなわち、小容器の周壁全面は海水と区画されており、この周壁内外に海水の流通性がないため、通水性が悪い。この結果、二枚貝は、海水とともに飼料を十分に補給することができず、飼料環境が悪化する問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、海中に埋在性二枚貝を垂下養殖するに際して、養殖基質と二枚貝が不用意に分離してしまうことがなく、しかも、通水性を良好に維持して埋在性二枚貝の成長や生残に悪影響が生じることがない埋在性二枚貝の養殖方法及びその養殖具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために、埋在性二枚貝の養殖方法及びその養殖具としてなされたもので、本発明に係る埋在性二枚貝の養殖方法としての特徴は、埋在性二枚貝と、粒状の養殖基質とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網袋に収容し、前記網袋を、網袋が流出しない目合いを有する飼育容器に収容し、前記飼育容器を海中に垂下することにある。
【0012】
前記本願発明は、網袋2は、網篭3側には固定せず、形状が任意に変形できる可変式になっている。また、海中に埋在性二枚貝を垂下養殖するに際して、養殖基質と二枚貝が網袋2に収容されているため、養殖基質と二枚貝が不用意に分離してしまうことがない。しかも、網袋2および網袋が流出しない目合いを有する飼育容器を採用することにより、通水性を良好に維持して埋在性二枚貝の成長や生残に悪影響が生じるのを防止できる。
【0013】
また、埋在性二枚貝の養殖方法としての特徴は、埋在性二枚貝と、粒状の養殖基質とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網生地からなる網袋に収容し、前記網袋の開口部を閉塞手段で閉塞した後に、前記網袋を海中に垂下することにある。
【0014】
前記埋在性二枚貝の養殖方法において、養殖途中に前記使用中の網袋を目合いの大きな網袋に交換することが好ましい。
【0015】
本発明に係る養殖具としての特徴は、埋在性二枚貝と粒状の養殖基質とが収容可能で且つそれらが流出しない目合いを有する網袋と、前記埋在性二枚貝と養殖基質とが収容された網袋が収容可能で且つ有底筒状の網生地からなる網篭本体を有する飼育容器とを備え、前記網篭本体の目合いは、前記網袋の目合いよりも大きく設定されていることにある。
【0016】
前記本発明に係る養殖具は、網袋と網篭とを備えた簡単な構造により、前記埋在性二枚貝の養殖方法を実施することが可能である。
【0017】
また、波浪の強さや養殖具を破壊する可能性のあるフグ、ブダイ、クロダイ、カニ類等の生息状況は各海域により異なるため、養殖する海域によって、様々な強度、剛性を持った網篭を用意する必要があった。
【0018】
本発明の養殖具は、網袋と網篭とで二枚貝を保護しているので、網篭は既存の剛性を有するものが採用でき、各海域に応じた専用の網篭を用意する必要はない。
【0019】
前記埋在性二枚貝の養殖具において、前記網袋の両側にマチを形成することにより、前記網袋を立体的な構造とするのが好ましい。かかる場合には、網袋の両側にマチを形成することにより、網袋の強度を高めるとともに、網篭の中で、立体的な構造を維持し易くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、海中に埋在性二枚貝を垂下養殖するに際して、養殖基質と二枚貝が不用意に分離してしまうことがなく、しかも、通水性を良好に維持して埋在性二枚貝の成長や生残に悪影響が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る養殖具を使用して埋在性二枚貝を養殖する状態を示し、(a)はフロ一ト式の筏での養殖状態を示す斜視図、(b)は延縄式の垂下養殖施設での養殖状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る養殖具の概略を示す正面図である。
【図3】同養殖具の網袋を示し、(a)は網袋の全体斜視図、(b)は網袋の目合いを示す拡大図である。
【図4】同養殖具の網篭を示し、(a)は網篭の平面図、(b)は網篭の側面図、(c)は網篭の正面図、(d)は網篭の底面図である。
【図5】(a)〜(d)は同網袋を閉塞するための閉塞具をそれぞれ示す斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る埋在性二枚貝の養殖方法の各工程を示し、(a)は網袋に養殖基質と二枚貝を収容する状態を示す斜視図、(b)は網袋を閉塞した状態を示す斜視図、(c)は網袋を網篭に収容した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る埋在性二枚貝の養殖方法と従来の埋在性二枚貝の養殖方法を実施したアサリの生育状況の実験データを示し、(a)はアサリの成長の推移を示す図、(b)はアサリの生存率の推移を示す図である。
【図8】本発明に係る網袋の他の実施形態を示し、(a)は網袋を裏返した状態の斜視図、(b)は網袋を表側に反転させた状態の斜視図、(c)は養殖基質と二枚貝を収容した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明の他実施形態に係る養殖具を示し、(a)は養殖具の正面図、(b)は養殖具を垂下した状態の斜視図である。
【図10】本発明の他実施形態に係る養殖具の概略を示す正面図である。
【図11】本発明の他実施形態に係る養殖装置の概略を示す断面正面図である。
【図12】本発明の他実施形態に係る養殖具を示し、(a)は網袋の斜視図、(b)は養殖基質と二枚貝が収容された網袋を紐で縛る状態を示す斜視図、(c)は網袋を垂下した状態の斜視図である。
【図13】(a)は図12に示した実施形態における網袋を垂下した状態の斜視図、(b)は二枚貝の収穫時において網袋を反転させた状態を示す斜視図である。
【図14】本発明の他実施形態に係る埋在性二枚貝の養殖方法の各工程を示し、(a)は網袋に養殖基質と二枚貝を収容する以前を示す網袋の斜視図、(b)は網袋に養殖基質と二枚貝を収容した状態を示す網袋の斜視図、(c)は網袋を垂下した状態の網袋の斜視図である。
【図15】本発明の他実施形態に係る埋在性二枚貝の養殖具の概略を示す斜視図である。
【図16】従来例を示し、(a)は養殖具の正面図、(b)は養殖具の平面斜視図、(c)は養殖具の平面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図6は、本発明の一実施の形態を示す。
【0023】
先ず、本発明の埋在性二枚貝の養殖方法に使用される養殖具について説明する。
【0024】
本養殖具1は、養殖基質5および二枚貝7を収容する網状の袋(以下、網袋という。)2と、この網袋2を単数または複数個収容できる飼育容器としての網篭3とを備えている。
【0025】
網袋2は、図3(a)に示すように、合成繊維(例えば、0.2mm径のナイロン線)を網状に形成した可撓性シート(網生地)を、袋状に形成したしたものである。網袋2は、偏平にした状態において、横寸法Wが300mm〜500mm、縦寸法Hが400mm〜600mmに設定されている。好ましくは、横寸法Wが400mm、縦寸法Hが500mm(網袋寸法が400mm×500mm)に設定されている。
【0026】
しかも、網袋2の目開きLは1.5mm〜2,0mm(好ましくは1.7mm)に設定されている。ここで、目開きLをこのように設定するのは、養殖基質5および二枚貝7を収容した際に、それらが網袋2から流出しない目合いとするためである
網袋2の上部は開口されおり、その開口部周縁には、開口部20を閉塞するための閉塞手段としての紐21が取付けられている。その結果、網袋2の開口部20は、巾着構造になっており、紐21で開口部20を絞った後に縛って閉じることができる。
【0027】
網篭3は、図4(a)〜(d)に示すように、有底筒状の可撓性を有する網生地からなる網篭本体部30と、この網篭本体部30の底周縁に設けられた円形の下枠体31と、この下枠体31と所定の間隔を有して設けられた上枠体32と、網篭本体部30の底部30aを下方から支持する十字状の補強枠体33と、ロープの両端を上枠体32に連結することにより形成された一対の取っ手35、35とを備えている。
【0028】
また、網篭3は、直径が450mmで、且つ上下枠体31、32の高さ寸法H1が150mmに設定されている。また、網篭本体部30の上部は開口されており、その開口部31は、巾着構造になっており、紐36で開口部30bを絞った後に縛って閉じることができる。また、網篭本体部30は、付着生物の影響による、網篭3の通水性の悪化を防止するため、目開きが10mm〜30mm(好ましくは、21mm)の網生地が採用されている。また、この網生地は0.6mm径のナイロン線が採用されている。なお、この網生地の目開きは特に限定されないが、網袋2の目開きLよりも大きく、且つ、網篭本体部30に収容される網袋2が落ちない程度の大きさの目合いに適宜設定されている。
【0029】
上下枠体31、32および補強枠体33は、ビニルでコーティングされた鉄線から構成されている。
【0030】
本実施の形態の養殖具1は以上の構成からなり、次に、かかる養殖具1を使用したアサリ等の二枚貝7の養殖方法について説明する。
【0031】
1 養殖開始時の工程(図6参照)
先ず、網袋2を開口させ、その開口部20から、粒状の養殖基質5と複数個の二枚貝7としてのアサリ種苗を収容する。養殖基質5としては、アンスラサイト、カキ殻等が採用され、その粒径は、網袋2の目開きLよりも十分に大きく設定されているため、養殖基質5が網袋2から不用意に流出することはない。また、アサリ種苗7の適宜個数を網袋2に収容する(同図(a)参照)。
【0032】
なお、アサリ種苗7の平均殻長は、例えば5mmに設定する。また、養殖基質5の粒径は3mm以上(3mm〜5mm)に設定されている。
【0033】
次に、網袋2の開口部20を閉じる。具体的には、網袋2の上部を紐21で絞り、その紐21を巻き結び(クラブヒッチ)で縛る(図5(a)参照)。網袋2が複数個の場合には、かかる養殖基質5とアサリ種苗7の網袋2への収容作業を、各網袋2毎に行う。
【0034】
次に、養殖基質5とアサリ種苗7とが収容された網袋2を、網篭3に収容する。このとき、各網袋2は網篭3内部に固定しない。
【0035】
さらに、網篭3の開口部30bを紐36で閉じた後に、この網篭3の上部に、直径が6mmのポリエチレン製ロープ40の一端側を連結し、このロープ40の他端を、フロ一ト式の筏8(図1(a)参照)、または、延縄式の垂下養殖施設9(図1(b)参照)に連結することにより、アサリ種苗7を海中10に垂下する。なお、このときのアサリ種苗7の垂下水深は、水面下1〜3mに設定するのが好ましい。
【0036】
なお、本実施の形態では、図1および図2において、2個の網袋2を網篭3に収容した場合を例示するが、その網袋2の個数は特に限定されるものではなく、単体の網袋2を網篭3に収容することも可能である。
【0037】
2 洗浄作業工程
前記のように、アサリ種苗7を海中10で長期間飼育していると、網袋2および網篭3の付着生物の除去が必要な場合がある。そこで、次に網袋2および網篭3から付着生物を除去する作業工程について説明する。
【0038】
先ず、網篭3を海中10から引き上げた後に、網篭3の開口部30bを閉じている紐36を緩めて開放する。この網篭3を海中10から引き上げる際に、網篭3は、比較的大きな目合いに形成されているため、通水性が良く、網篭3内の海水を迅速に排出することができる。
【0039】
また、養殖基質5にアンスラサイト等の軽量の粒状基質を採用し、しかも、網袋2を採用しているため、通水性が良好となり、その結果、引き上げる際の重量を軽くすることができ、作業者の負担を軽減できる。さらに、開放された網篭3から各網袋2を取り出す。
【0040】
網篭3の付着生物は、日干しにするか、または、手作業や高圧洗浄機により取り除くことができる。
【0041】
各網袋2の付着生物は、手作業か高圧洗浄により取り除くことができる。かかる各網袋2の付着生物の除去作業は、養殖基質5とアサリ種苗7とを収容した状態で行うことが可能であるが、養殖基質5とアサリ種苗7とを一旦取り出した状態で行っても良い。
【0042】
各網袋2および網篭3の洗浄作業を終了した後に、再び、網篭3に各網袋2を収容して網篭3を閉塞する。さらに、網袋2および網篭3を海中10に垂下する。
【0043】
3 二枚貝の成長に伴う網袋の交換工程
アサリ種苗7の成長に伴い、網袋2の交換が必要となる場合がある。なお、かかる交換工程は、網袋2の目合い交換が求められる場合において実行するものである。
【0044】
先ず、前記と同様に、網篭3を海中10から引き上げ、その引き上げられた網篭3から網袋2を取り出す。さらに、二枚貝が収容されている使用中の網袋2と、新しい網袋2の開口部20同士を接合させて、使用中の網袋2を口部が下方を向くように逆さま状態にし、養殖基質5とアサリ種苗7を、上向きの新しい網袋2に入れ替える。網袋2の開口部20同士を接合させるとは、上向きの新しい網袋2の開口部20に、下向きの使用中の網袋2の開口部20を挿入する。
【0045】
このように、目合いの大きい新しい網袋2に、養殖基質5とアサリ種苗7とを入れ替えるととにより、網袋2に適度な透水性を持たせることが可能となる。また、網袋2に付着生物が付着するのを防止することもできる。なお、かかる場合において、網袋2の目合いは、養殖基質5が流出しない大きさのものが使用される。
【0046】
4 水揚げ時(収穫時)の工程
二枚貝を網袋2内で所定期間養殖した後に、前記同様に網篭3を引き上げて、その網篭3から網袋2を取り出す。具体的には、先ず、網袋2を開放し、内容物である養殖基質5とアサリ種苗7を取り出す。次に、網袋2のアサリ種苗7を目開き10mm程度のフルイにかけて、アサリ種苗7を養殖基質5から分離する。
【0047】
以上に示した本実施形態は、以下のような効果を奏する。
【0048】
網袋2の数を複数個に設定し、各網袋2を網篭3内に収容するに際して、それらは網篭3に固定せず、網篭3内でそれぞれ可動できるようにしている。すなわち、可撓性を有し且つ可動式の網袋2を採用することで、養殖基質5と二枚貝7とが一緒に動くようにすることができるため、波浪等の影響により網篭3が傾いた際に、網袋2内の養殖基質5と二枚貝7とが分離してしまう危険性を軽減することができる。
【0049】
網篭3を洗浄する際には、養殖基質5と二枚貝7とは、網袋2に収容された状態で網篭3から取り出せるため、網袋2から養殖基質5と二枚貝7とがこぼれることなく、網袋2と網篭3とを容易に分離することができ、かかる作業を簡単且つ迅速に行える。
【0050】
網袋2を交換する際には、使用中の網袋2と新しい網袋2との開口部同士を接合させて、養殖基質5と二枚貝7と入れ換えることにより、内容物である養殖基質5と二枚貝7とを溢れることなく、迅速に移し換えることができる。
【0051】
少量の二枚貝7を育成したい場合であっても、網袋2のサイズを小さく設定するだけで、少量の養殖基質で二枚貝の潜砂に必要な厚み(深さ)を確保できる。すなわち、二枚貝7の飼育量に応じて、網袋2のサイズを低コストのものに自在に変えることができ、その網袋2のサイズに合わせて養殖基質量も自在に変えることができ、非常に経済的である。
【0052】
可撓性を有する網袋2を複数枚重ねることで、低コストで且つ容易に強度調節ができるため、飼育対象に応じて、高コストな網篭3を何種類も用意する必要が無い。また、可撓性を有する網袋2を採用することにより、飼育容器は網篭3以外でも使用することが可能になった。すなわち、網袋2を収容するものは、網篭3だけではなく、必要とする強度に応じて、任意の材質および形状からなる容器を選択することも可能である。
【0053】
二枚貝の成長に応じて、網袋2の網目の大きさを変更する場合に、網篭3の種類を交換するよりも低コストで簡単に網袋2の目合いを変えることができる。この結果、常時、養殖基質5が流出しない程度に、大きい目合いの網生地を用いることで、網袋2内に海水が流入しやすくし、餌料環境を良好に維持することができる。
【0054】
また、養殖具1は、餌料環境等を良好に維持して飼育環境が向するため、単位面積あたりの養殖量を効率よく向上させることが可能である。しかも、養殖具1は複数段に連接することも可能である。かかる場合には、一段篭だけではなく、既存の多段篭を用いることで、単位面積あたりの収穫量を高めることも可能である。
【0055】
次に、前記二枚貝の養殖方法によるアサリ種苗7の養殖実験を行ったので、その生育状況の実験結果を図7に示す。かかる実験は、前記実施形態にかかる本願発明の養殖方法(新方法)と従来の養殖方法(従来方法)とを行い、両者を比較した。
【0056】
具体的には、新方法は、アサリ種苗(殻長5mm)7を、網袋2に160個体収容し、その網袋2を網篭3に収容した。
【0057】
従来方法は、図16に示した目合いの細かい網篭に養殖基質と二枚貝とを直接入れる方法を採用した。
【0058】
そして、新方法および従来方法において、それぞれ3篭ずつ準備し、アサリ種苗7を所定期間飼育した。
【0059】
同図(a)に新方法と従来方法とにおけるアサリ種苗の成長の推移(アサリ種苗の殻長と飼育日数との関係)を示す。各アサリ種苗7の平均殻長のデータは、各篭から30個体ずつランダムサンプリングにより計測し、3篭の平均殻長と標準偏差とをそれぞれ示している。
【0060】
それぞれの養殖方法の実験結果より、新方法は従来方法と比較して成長が早い傾向であることが確認できた。
【0061】
同図(b)は、アサリ種苗の生存率の推移(アサリ種苗の生存率と飼育日数との関係)を示す。アサリの生存推移を、本願発明に係る方法と従来方法で比較した。その結果、新方法と従来方法の生存率の推移には、大きな相違は見られなかった。
【0062】
本発明は、前記の実施形態に限定されるものではない。例えば、網袋2を閉塞する閉塞手段は、紐21に限らず、網袋2の開口部20を面テープ21A(図5(b)参照)、結束バンド21B(図5(c)参照)やクリップ21C(図5(d)参照)等であってもよい。かかる閉塞手段により、網袋2の開口部20を解除自在に閉じる作業を迅速且つ容易に行うことができる。
【0063】
また、網袋2下部の両側角部を縫製等し(図8(a)参照)、この網袋2を裏返すことにより(図8(b)参照)、網袋2の両側にマチ2aを形成するようにしてもよい(図8(c)参照)。このように、網袋2の両側にマチ2aを形成することにより、網袋2の強度を高めるとともに、網篭3の中で、立体的な構造を維持し易くすることができる。
【0064】
また、網篭3の形状は前記のものに限定されることはない。例えば、図9に示すように、上下方向に複数段の収容室38を設けた多段式の網篭3を製作する。そして、各収容室38に前記養殖基質5と二枚貝7とが収容された網袋2を収容する。多段式の網篭3の底面と上面の両方に、筏8や垂下養殖施設9等に吊り下げることの出来るロープ40等の吊下部材を取付けることで、二枚貝7の養殖中に、網篭3の上下を容易に反転させることができる。
【0065】
水深により、水中餌料濃度や付着生物の幼生浮遊量が異なるため、網篭3の上下を反転させることで、二枚貝7の水深調整を適宜行い、二枚貝7の成長率や付着生物量を平均化することができる。なお、各収容室38に網袋2を収容できるように、網篭3の周部で且つ各収容室38に対応する部分には、開口(図示省略)が形成されており、各開口は紐等により適宜閉塞される。本実施の形態では、3段の場合を例示するが収容室38の段数は特に限定されるものではない。
【0066】
図10に示す本実施形態の網篭3は、その篭内部の低面に仕切部37を立設させる。そして、網篭3内部に収容された網袋2を、仕切部37に上方から載置する。これにより、網袋2は、仕切部37により下方から食い込むように押圧されるため、網袋2の下部側が変形する。この結果、網袋2内の養殖基質5が暴露する表面積を大きくでき、二枚貝7の餌料捕食を促す。また、この仕切部37は網篭3の補強リブの機能も備えている。
【0067】
図11に示す本実施形態は、養殖基質5と二枚貝7とを収容した網袋2を、フラプシー(海面筏式飼育装置(Floating Up Weller System))のカラム3A内部に垂下し、育成することで、カラム内部の空間を効率良く利用することができる。すなわち、フロ一ト式の筏8や垂下養殖施設9等にカラム3Aを固定し、このカラム3Aの底面を網状にする。カラム3Aの側面に水路3Bを設け、この水路3B内にポンプPを設置する。そして、ポンプPを作動させて、カラム3Aの底面、カラム3A内部、水路3B、海面へと海水が流れる水流を強制的に発生させる。この結果、かかる水流により、二枚貝7の餌の補足を促進させることができる。
【0068】
前記実施形態の養殖具1は、網袋2と網篭3とを備えたものを例示したが、図12〜図15に示す養殖具1は、容器を使用することなく、網袋2で構成したものである。食害生物量や波浪等の物理的衝撃の少ない海域では、延縄式の幹ロープに網袋2を直接垂下して養殖することも可能である。
【0069】
図12および図13に示す養殖具1は、縦に長尺状の網袋2を製造し(図12(a)参照)、この網袋2の複数箇所を紐43等で順次縛り(図12(b)参照)、養殖基質5と二枚貝7とが入った多段式飼育ネットを形成する(図12(c)参照)。
【0070】
さらに、二枚貝7を収穫する際は、養殖していた状態(図13(a)参照)に対して、網袋2を上下反転させた状態で、フック45等を介して吊下部46に垂下させる。そして、網袋2の下部側から順次紐43を解いて、網袋2を開放させることにより、養殖基質5と二枚貝7とを順次落下させて取り出す(図13(b)参照)。
【0071】
図14(a)〜(c)に示す実施形態は、垂下ロープ47を網袋2に上下方向に貫通させ、網袋2から下方に突出する垂下ロープ47の下端にストッパ部材48を設け、この垂下ロープ47が網袋2から上方に抜けないようにしたものである。そして、網袋2に養殖基質5と二枚貝7とを収容した後に、垂下ロープ47を介して海中10に垂下する。このように、網袋2を垂下したときに自重により、網袋2を前記図10と同様に自重で変形させるようにすることで、養殖基質が暴露する表面積を広げ、二枚貝の餌料捕食を促することができる。
【0072】
また、本実施の形態は、図15に示すように、延縄式の幹ロープ41に養殖基質5と二枚貝7とを収容した網袋2を、直接垂下させて養殖することも可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 養殖具
2 網袋
2a マチ
3 網篭
3A カラム
5 養殖基質
7 アサリ種苗(二枚貝)
8 フロ一ト式の筏
9 垂下養殖施設
10 海中
21 紐
30 網篭本体部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋在性二枚貝と、粒状の養殖基質とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網袋に収容し、
前記網袋を、網袋が流出しない目合いを有する飼育容器に収容し、
前記飼育容器を海中に垂下することを特徴とする埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項2】
埋在性二枚貝と、粒状の養殖基質とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網生地からなる網袋に収容し、前記網袋の開口部を閉塞手段で閉塞した後に、前記網袋を海中に垂下することを特徴とする埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の埋在性二枚貝の養殖方法において、養殖途中に前記使用中の網袋を目合いの大きな網袋に交換することを特徴とする埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項4】
埋在性二枚貝と粒状の養殖基質とが収容可能で且つそれらが流出しない目合いを有する網袋と、
前記埋在性二枚貝と養殖基質とが収容された網袋が収容可能で且つ有底筒状の網生地からなる網篭本体を有する飼育容器とを備え、
前記網篭本体の目合いは、前記網袋の目合いよりも大きく設定されていることを特徴とする埋在性二枚貝の養殖具。
【請求項5】
前記請求項4に記載の埋在性二枚貝の養殖具において、前記網袋の両側にマチを形成することにより、前記網袋を立体的な構造とすることを特徴とする埋在性二枚貝の養殖具。
【請求項1】
埋在性二枚貝と、粒状の養殖基質とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網袋に収容し、
前記網袋を、網袋が流出しない目合いを有する飼育容器に収容し、
前記飼育容器を海中に垂下することを特徴とする埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項2】
埋在性二枚貝と、粒状の養殖基質とを、それらが流出しない目合いを有し且つ可撓性を有する網生地からなる網袋に収容し、前記網袋の開口部を閉塞手段で閉塞した後に、前記網袋を海中に垂下することを特徴とする埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項3】
前記請求項1または2に記載の埋在性二枚貝の養殖方法において、養殖途中に前記使用中の網袋を目合いの大きな網袋に交換することを特徴とする埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項4】
埋在性二枚貝と粒状の養殖基質とが収容可能で且つそれらが流出しない目合いを有する網袋と、
前記埋在性二枚貝と養殖基質とが収容された網袋が収容可能で且つ有底筒状の網生地からなる網篭本体を有する飼育容器とを備え、
前記網篭本体の目合いは、前記網袋の目合いよりも大きく設定されていることを特徴とする埋在性二枚貝の養殖具。
【請求項5】
前記請求項4に記載の埋在性二枚貝の養殖具において、前記網袋の両側にマチを形成することにより、前記網袋を立体的な構造とすることを特徴とする埋在性二枚貝の養殖具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−157294(P2012−157294A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19636(P2011−19636)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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