説明

埋在性二枚貝の養殖方法

【課題】比較的簡便な設備で、埋在性二枚貝、特に、汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝を効率よく養殖する方法を提供する。
【解決手段】通水性の容器に、埋在性二枚貝の稚貝を収容し、これを、養殖場の水中に垂下保持して養殖することを特徴とし、効率的に養殖を行うことができる。さらに養殖時において、埋在性二枚貝にストレス処理を与えることにより、貝の成長を著しく高めることができる。ストレス処理としては、紫外線照射処理、表面張力変動処理、水圧変動処理、微量放射線照射処理、及び振動処理から選ばれる少なくとも1以上の処理を挙げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋在性二枚貝の養殖方法に関し、更に詳しくは、汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝を効率よく養殖する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日本には、ヤマトシジミ、セタシジミ、マシジミという3種類のシジミが生存している。例えば、ヤマトシジミは、汽水域に生息する二枚貝であって、その成長様式は、受精後、短期間の浮遊生活を経た後に着底し、底質中に埋在して、水中の有機懸濁物を餌として成長を続けるというものである。
【0003】
ヤマトシジミの代表的産地である宍道湖において、受精から1年で殻長が約7mmに成長し、2年で殻長が約15mmに成長し、その後殻長が約20mm以上になると成長速度が緩やかになることが報告されており、一般に、商品として出荷できるような大きさまで成長させるには、3〜4年の年月が必要と言われている。
【0004】
湖水における汚染ないし底質のヘドロ化、乱獲等によって、このようなシジミの収穫量は年々減少の一途をたどっており、早急な資源維持、増大のための方策が望まれるところである。
【0005】
例えば、その養殖方法としては、養殖水域をいくつかに区画して、地蒔き式養殖を行うことが考えられるが、上記したように商品として出荷できる大きさに成長させるには3〜4年の年月を要することから、水域を最低でも4区画以上に区画する必要があり、広い面積の水域を必要とし、その管理等が困難となるものである。
【0006】
また、近年の生活排水、農業排水、工業排水等の流入によって、養殖水域の富栄養化が進み、底部付近に貧酸素水塊が発生し貝類の生息を脅かす事態が発生しており、このような地蒔き式養殖によっては、その効果があまり期待できないものとなっていた。
【0007】
ところで、海水域に生息し、基物に付着して成長する、例えば、カキ、ホタテガイ、アコヤガイ等のいわゆる表在型の二枚貝の養殖方法としては、網籠に入れたり、あるいは貝殻に付着した種苗をそのまま網等で被覆することなく水中に垂下したりする養殖方法が広く普及している。
【0008】
しかしながら、埋在性二枚貝に関しては、砂泥中に埋在して成長するゆえに、一般に、貝類が潜入すべき砂床が必要と考えられており、このような水中に垂下する養殖方法は適用されていない。
【0009】
海水域に生息する埋在性二枚貝の養殖方法として、特許文献1には、小容器内に砂又は泥を入れ、この砂又は泥中に埋在性二枚貝の種苗を埋め、海中に垂下する方法が開示されている。
【0010】
しかしながら、この方法においては、小容器内の砂又は泥中に種苗を埋める必要があるため、大量の個数の貝を養殖するという効率的な生産が行えず、特に、小さな貝類の養殖方法としてはあまり適したものではない。また、海水域に生息する埋在性二枚貝の養殖方法として提唱されているものであり、汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝の養殖方法として直ちに応用できるものかどうかは不明なところであった。
【0011】
また、特許文献2においては、微細藻を生産するとともに稚貝を種苗生産する生産センターと、前記生産センターで生産された稚貝を放流して成長させる複数箇所の海浜栽培サイトと、前記生産センターで生産された微細藻を給餌して前記海浜栽培サイトで栽培された成貝を清浄化するため短期栽培する複数箇所の地区センターを組み合わせたことを特徴とする二枚貝の生産システムが提唱されており、このシステムはハマグリの養殖方法として実用化されている。
【0012】
この方法は、人工的に生産される微細藻を用いて稚貝を育成することによって、成貝の生存率を高め、養殖の歩留まりを高めると共に、最終的に成貝を人工的貯槽にて短期間飼育して砂抜きを行うというシステムであるが、基本的には、その稚貝から成貝への成長は、従来の地蒔き式養殖法と何ら変わりなく、稚貝を海浜域に放流し所定時期後にこれを採取するという工程を含むものであって、地蒔き式養殖法と同様、養殖水域の富栄養化、底質の汚染等といった影響を受けるものであった。さらに、この方法は、微細藻を生産するとともに稚貝を種苗生産する生産センター、稚貝を放流して成長させる海浜栽培サイト、及び成貝を清浄化するための地区センターという、3箇所の場所を必要とするため、生産効率は高まるものの、これらの間における商品搬送等にコスト、労力等を要するものであった。また、このシステムも海水域に生息する埋在性二枚貝の養殖方法として提唱されているものであり、汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝の養殖方法として直ちに応用できるものかどうかは不明なところであった。
【特許文献1】特開平9−266736号公報
【特許文献2】特開2002−125507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明は、比較的簡便な設備で、埋在性二枚貝、特に、汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝を効率よく養殖する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明の埋在性二枚貝の養殖方法は、通水性の容器に、埋在性二枚貝の稚貝を収容し、これを、養殖場の水中に垂下保持して養殖することを特徴とする。
【0015】
本発明の埋在性二枚貝の養殖方法においては、前記埋在性二枚貝にストレス処理を与えることが好ましい。
【0016】
本発明の埋在性二枚貝の養殖方法においては、前記ストレス処理が、紫外線照射処理、表面張力変動処理、水圧変動処理、微量放射線照射処理、及び振動処理から選ばれる少なくとも1以上の処理であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の埋在性二枚貝の養殖方法においては、埋在性二枚貝が、汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝であり、飼育場が汽水又は淡水の湖、池、沼、人工プール、人工水槽、又は河川域であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の埋在性二枚貝の養殖方法によれば、砂泥中に埋在して成長させる一般的な場合と比較して、驚くべきことに、非常に短期間において、汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝を成長させることができ、かつその生育度合いも非常に優れたものであることがわかった。具体的には、例えば、ヤマトシジミを養殖した場合、従来、商品として出荷できるサイズに成長するまでに3〜4年程度かかっていたものが、2年程度で成長し、しかもそのサイズも大型化するものである。特に、一定の大きさ以上に成長した後に、成長が緩やかとなる傾向もあまり見られず大型化するため、養殖方法として非常に優れたものであることがわかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体的実施形態に基づき具体的に説明する。本発明の上記埋在性二枚貝の養殖方法は、通水性の容器に、埋在性二枚貝の稚貝を収容し、これを、汽水又は淡水の飼育場の水中に垂下保持して養殖することを特徴とする。
【0020】
対象となる貝類としては、埋在性二枚貝であれば特に限定されるものではなく、各種のも貝類に適用可能であるが、特に汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝が好ましい対象となる。
【0021】
汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝としては、具体的には、例えば、ヤマトシジミ、セタシジミ、マシジミ等を好ましく例示できる。
【0022】
また、これらの食用とされる埋在性二枚貝のみならず、例えば、タナゴ等の魚類の産卵母貝となる、環境破壊により生息数が減少しているといった自然環境保護の立場等から個体の増加が求められるその他の貝類、例えば、ドブガイ、ヌマガイ、タガイ等のドブ貝類、カラス貝類、メンカラス貝類、イシ貝類、マツカサ貝類、ニセマツカサ貝類、タテボシ貝類、ヨコハマシジラ貝類、カタハ貝類、イケチョウ貝類、カワシンジュ貝類、オバエボシ貝類、ササノハ貝類、トンガリササノハ貝類を用いることもできる。
【0023】
もちろん、上記に例示したものに何ら限定されるものではなく、例えば、我が国において生息する上記に例示した貝類以外に、他国において汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝貝類を対象とすることもできる。
【0024】
さらに海水性の二枚貝として、例えば、ハマグリ、チョウセンハマグリ、ウチムラサキガイアカガイ等のハマグリ類、アサリ、ヒメアサリ、オキアサリ等のアサリ類、サルボウガイ、サトウガイ、ハイガイ等のフネガイ類、イガイ、ムラサキイガイ、エゾヒバリガイ等のイガイ類、ウバガイ、バカガイ、ミルクイガイ、シオフキガイ等のバカガイ類等を対象として用いることも可能である。
【0025】
本発明においては、このような埋在性二枚貝の稚貝を採取により、あるいは別途養殖により用意する。貝の種類によっても異なるが、例えばシジミについていえば、3〜7月齢程度あるいは直径2〜5mm程度の稚貝を用いることができる。なお、それより成長した貝類を、より成長させるために養殖することも可能である。
【0026】
また、本発明の養殖方法を実施する養殖場としては、本来その貝類が生息している、湖池、沼、河川、あるいは海域等といった自然の場所を利用することもできる。また、それ以外にも、人工的に作られた屋外の池やプール、あるいはより小型の屋外ないし屋内水槽等を利用することも可能である。一般的には自然の湖池、沼、河川、あるいは海域等を利用する方が経済的観点から望ましいが、給餌や、水温、水質、水流等の管理を行えば、人工的な養殖場を利用することも、土地の有効利用等の観点からは望ましい。
【0027】
次に、このような埋在性二枚貝の稚貝を収容する通水性の容器としては、十分な通水性を有しかつ、養殖場において安定に貝類を水中に保持できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、各種のネット、篭類等を使用することができる。その大きさとしても、特に限定されるものではないが、例えば、その内容積が1〜2m程度になるものが、養殖時における作業性が容易であることから好ましいものとして例示できる。
【0028】
通水性の容器における埋在性二枚貝の配置方法としては、容器内で、貝があまり重なることがない平置き状態とすることも、またかなりの重なりをもって塊状に配置することも可能であるが、いずれの場合も、ある程度貝が自由に移動できるような状態で保持することが望ましい。
【0029】
また、養殖場として、湖池、沼、河川、あるいは海域等といった自然の場所を利用する場合においては、水域を浮遊する流木、ごみ等の障害物によって、通水性の容器が破損してしまうことを防止する上から、比較的強度のある例えば、金属製フェンスや、金属、プラスチック、木材等の剛性のある材料を少なくとも枠体として有する囲繞体等を防護用外装体とし、その内部に1ないし複数のネット、篭類等の貝収容用の通気性内容器を配するといった、二重ないし多重構造とすることが望ましい。
【0030】
なお、このように外装体を設けると、後述するような振動設備を設ける場合に、この外装体を振動設備の支持体として利用することが可能となる。また、光触媒や低レベル放射性物質等のストレス物質を例えば容器等に入れ、その容器等を外装体に取り付けることもできる。
【0031】
このような通水性容器を養殖場の水中に保持する方法は特に限定されないが、例えば図1に模式的に示すように、養殖場の水面10にいくつかの浮子(フロート)11を浮かべ、この浮子11を、養殖場の底壁13へ錨止あるいは岸壁14から係止等することによって定置し、そしてこの浮子間に張渡された支持索15から、通気性容器16を水中へと垂下させることによって行うことができる。
【0032】
なお、図1に示す実施形態においては、通気性容器16は、上記したように貝収容用の通気性内容器16Aと、その外部を囲繞する防護用外装体16Bとを有する二重構造とされている。
【0033】
また、底部に泥砂床が存在しない人工的プール、水槽等で養殖を行う場合には、単純に通気性容器を水中に沈めてしまう等の態様を採ることも可能である。
【0034】
通水性容器を保持する水中位置としては、通水性容器中に収容された貝類の餌となる、プランクトンや有機懸濁物が十分存在する深さであれば特に限定されず、また、養殖場の地形やその種類、貝類の種類等によってもある程度左右されるが、例えば、通水性容器内に収容される貝の位置を、深度10cm〜250cm程度の水域に保持することができる。
【0035】
本発明の埋在性二枚貝の養殖方法は、上記したように通水性容器に埋在性二枚貝の稚貝を収容し、水中にて所定期間、例えば1〜2年程度保持することによって行うことができるが、貝の成長の度合いをより早める上から、貝にストレス処理を与えることが好ましい。
【0036】
ストレス処理としては、紫外線照射処理、表面張力変動処理、水圧変動処理、微量放射線照射処理、及び振動処理から選ばれる少なくとも1以上の処理を挙げることができる。本発明の養殖方法においては、貝に対して1種又は2種以上のストレス処理を施すことにより、埋在性二枚貝の成長の度合いを急激に早めることができる。なお、複数のストレス処理を与える場合、その組合せは自由である。複数のストレス処理は、それぞれを同時に施してもよいし、交互に施してもよい。
【0037】
紫外線照射処理は、通水性容器内に収容する埋在性二枚貝の位置を、水面からあまり深くない深度10cm〜250cm程度の水域に保持させることにより行うことができる。こうした位置に保持することにより、貝により多くの紫外線を浴びせることができる。
【0038】
表面張力変動処理は、貝の周囲の水の表面張力を変化させる処理のことであり、具体的には、貝の周囲に光触媒や低レベル放射性化合物を設け、その光触媒や低レベル放射性化合物の作用により発生したヒドロキシラジカル(OHラジカル)により、貝の周囲の水の表面張力を変動させることができる。
【0039】
光触媒としては、酸化チタンやその複合化合物等、例えば特開閉10―34143号公報や特開2003−335523号公報等に代表される公知の光触媒を適用することができる。また、低レベル放射性化合物としては、生物に悪影響を及ぼさない程度の放射線を発生する、例えば天然ウラン(例えば日本の人形峠で採取される)の加工材等を用いることができる。この加工材は、ラドン発生セラミクスとして作用するものであり、詳しくは、ウラン(U)からラジウム(Ra)になり、そのラジウムからラドン(Rn)ガスとして出てくるものである。また、ラドン以外の各種の低レベル放射性化合物であっても好ましく適用可能である。
【0040】
なお、低レベル放射性化合物は、前記のようにヒドロキシラジカルを発生させて水の表面張力を変動させるように作用するが、表面張力の変動効果が少なくても、発生したヒドロキシラジカルのみによっても貝にストレスを与えることができる。したがって、低レベル放射性化合物を用いたストレス処理は、微量放射線照射処理ということもできる。
【0041】
これら光触媒や低レベル放射性化合物は容器等に入れられ、その容器を通水性容器に取り付けたり前記外装体に取り付けたりすること等により、貝に表面張力変動処理ないし微量放射線照射処理を施すことができる。
【0042】
水圧変動処理は、例えば通水性容器内の貝の位置を定期的に上下に揺動して水圧を変化させたり、人工の水槽内で水圧を人工的に変化させたりすることにより、貝にストレスを与えることができる。
【0043】
振動処理は、例えば、通水性容器の近傍から容器内部へとエアレーションを行うことにより貝に振動を与える方法等を例示できる。例えば、前記した図1に示す実施形態においては、前記防護用外装体16Bの底面部分近傍に、バブリング装置17が設置されており、このバブリング装置17には、岸壁14に設置された送気ポンプ18より延長された送気ライン19が連結され、圧送されてきた空気によって、通気性内容器16Aに対しエアレーションを行うことが可能とされている。もちろん、このエアレーションのための装置機構としては、図1に例示されるものに何ら限定されるものではなく、各種の形態を採りえるものである。
【0044】
振動処理の一例であるエアレーションの具体的方法としては、特に限定されるものではないが、微細なマイクロバブルを発生できるものであることが望ましい。なお、エアレーションは、連続的に行うことももちろん可能であるが、断続的、例えば30分〜1時間毎に運転と休止を繰り返す、あるいは昼間あるいは夜間の一定時間のみ運転し、残りの時間は休止するといった形態を採ることも可能である。
【0045】
エアレーションを行うための装置としては、例えば、送気ラインの先端部にスポンジ、エアストーン、多孔質セラミックス等の多孔質体を取り付けたものや、超音波振動子、ベンチュリ管等を用いて気液二相流を流体力学的にせん断させたりする構成のもの等を例示できるが、より微細な気泡を発生できる上から超音波振動子を用いた方法が望ましい。
【0046】
なお、エアレーションを行う場合に、例えば、バブリング装置へと送る送気ライン途中に紫外線ランプ等を使用したオゾン発生装置を取り付け、エアレーションを行う気体にオゾンを含ませることも可能である。殺菌作用を有するオゾンを含ませることによって、貝にストレスを与えることができ、その結果、貝の成長を著しく高めることができる。
【0047】
以上説明したようなストレスを貝に与えることによって、貝はそのストレスに抗するようにその成長が著しく速くなり、貝殻が厚くなり、しかも大きさも大きくなる。
【0048】
本発明の埋在性二枚貝の養殖方法による養殖期間としては、特に限定されるものではなく、養殖する貝類が十分な大きさに成長するまで行えばよいが、例えば、砂泥中に埋在して成長させる従来の養殖方法においては、商品として出荷できるような大きさまで成長させるに約3〜4年の年月を要していたヤマトシジミ等において、これよりも十分短い約2年程度の養殖期間においても、従来方法で3〜4年かけたよりも十分に大きなものへと成長させることが可能である。また、従来方法では、殻長が一定値以上まで成長させると成長速度が緩やかとなっていたが、本発明方法では、このような大きさとなった以降も、成長速度が実質的に低下することなく、養殖を続けることによって、より大型化した貝類を得ることができる。
【0049】
また、従来の養殖方法においては、養殖に多くの年月を要するため、養殖場の水域を、各年ごとに区画しても、例えば4区画以上という多区画に区画する必要があったが、本発明の養殖方法においては、養殖が短期間で行えるため、各年ごとに区画しても広い面積の水域を必要とせず、その管理等が容易となるものである。
【実施例】
【0050】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
【0051】
(実施例1)
茨城県稲敷市幸田2576番地地先 大湖真珠株式会社が所有する養殖池において採取した直径約5mmのヤマトシジミの稚貝1kgを、網目1mmメッシュの金網からなる容器体に収容し、これを、水深約2.5mの養殖場において、水面下0.1〜1mの深さの水中に保持し、養殖を行ない、貝の成長を定期的に観測した。なお、養殖場は、茨城県稲敷市幸田2576番地地先 新利根川であり、養殖開始時期は平成18年4月であった。その結果、養殖開始から10ヶ月で貝の平均直径は約15mmとなり、その総重量を計ったところ約5kgであった。なお、養殖期間中に病気や死亡する個体は特に観察されなかった。
【0052】
(比較例1)
茨城県稲敷市幸田2576番地地先 大湖真珠株式会社が所有する養殖池において採取した直径約5mmのヤマトシジミの稚貝1kgを、大湖真珠株式会社が所有する深さ40cmの人工プール内で養殖を行った。養殖開始時期は平成18年4月であった。なお、この人工プールには砂泥を厚さ15cm敷き、その砂泥中に稚貝を埋設して養殖を行った。その結果、養殖開始から10ヶ月で貝の平均直径は約7mmとなり、その総重量を計ったところ約1.5kgであった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る埋在性二枚貝の養殖方法の一実施形態において用いられる養殖設備を模式的に示す図面である。
【符号の説明】
【0054】
10 養殖場の水面
11 浮子(フロート)
13 養殖場の底壁
14 養殖場の岸壁
15 支持索
16 通気性容器
16A 貝収容用の通気性内容器
16B 防護用外装体
17 バブリング装置
18 送気ポンプ
19 送気ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水性の容器に、埋在性二枚貝の稚貝を収容し、これを、養殖場の水中に垂下保持して養殖することを特徴とする埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項2】
前記埋在性二枚貝にストレス処理を与えることを特徴とする請求項1に記載の埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項3】
前記ストレス処理が、紫外線照射処理、表面張力変動処理、水圧変動処理、微量放射線照射処理、及び振動処理から選ばれる少なくとも1以上の処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の埋在性二枚貝の養殖方法。
【請求項4】
埋在性二枚貝が、汽水域及び淡水域に生息する埋在性二枚貝であり、養殖場が汽水又は淡水の湖、池、沼、人工プール、人工水槽、又は河川域であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の埋在性二枚貝の養殖方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−193928(P2008−193928A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31107(P2007−31107)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(507046037)明恒パール牛久・観光株式会社 (3)
【出願人】(507046129)大湖真珠株式会社 (3)
【出願人】(502082432)
【Fターム(参考)】