説明

埋設トロイダル誘導器

トロイダル誘導器は、基板(100)と、基板内に定められるトロイダルコア領域(434)と、トロイダルコア領域の周りに形成される第一の複数の回と、トロイダルコア領域の周りに形成される第二の複数の回とを含むトロイダルコイルとを含む。第二の複数の回は、第一の複数の回によって定められる断面積(442)よりも大きい断面積(440)を定める。基板及びトロイダルコイルは、トロイダルコイルが少なくとも部分的に基板に埋設された一体型基板構造を形成するよう、同時焼成プロセスにおいて形成され得る。第一及び第二の複数の回は、交互連続で配置され得る。トロイダルコア領域は、基板の少なくとも他の部分よりも大きい透磁率を有する基板材料で形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
周知であるように、導体内に電流が存在する毎に磁界が生成される。誘導器(inductor)は、一連の導体巻線又はコイル(以下「回」という)受動電気構成部品であり、回は、電流が回に構築されるときに、特定の領域内に磁界を定めるよう協働する。磁界内にエネルギーを蓄える誘導器の能力は、インダクタンスLによって記載され、インダクタンスは、回の数の二乗N及び磁界が構築される領域の透磁率μに概ね比例する。透磁率μは、しばしば、非透磁率μに関して議論され、非透磁率は、自由空間μの透磁率に対する透磁率μの比率、即ち、
【0002】
【数1】

である。
【背景技術】
【0003】
誘導器は、所与数の回のためにより大きなインダクタンスをもたらすために、空気よりも大きい透磁率(即ち、>1.0)を有する強磁性コアの上に巻回されている。そのようなコアは、単純な円筒形ロッドからドーナッツ形状トロイドに亘る多様な形状で入手可能である。トロイドは、所与の透磁率及び数の回のために、ソレノイド(ロッド形状)コアに比べ、より高いインダクタンスをもたらすので、トロイドは、特定の利点をもたらすことが知られている。トロイドは、RF漏れを制限し且つ他の隣接する構成部品との干渉を最小限化するよう、コア領域内の誘導器によって生成される磁界を実質的に含むという利点も有する。典型的なトロイド誘導器のために、インダクタンスは以下の等式によって与えられる。
【0004】
【数2】

ここで、hは、誘導器の高さであり、aは、誘導器の内部半径であり、bは、誘導器の外部半径である。
【0005】
しかしながら、小型RF回路構成において、トロイド誘導器の実装は特に困難である。従って、小型RF回路構成中の誘導器は、しばしば、表面実装構成部品として、或いは、FR基板の表面の上に直接的に形成される平面渦巻線として実装されがちである。平面渦巻線誘導器は、トロイド誘導器と対称的に、それらが生成する磁界を実質的に含まないという点で、重大な欠点を被る。表面実装トロイド誘導器は良好に作動するが、そのような構成部品のために必要とされる回路板不動産(real estate)は、RF系の全体的サイズに寄与する顕著な要因である。まさに、受動表面実装装置の使用は、しばしば、回路板が、回路素子を含むためにさもなければ必要とされるであろうよりも大きくあることを要求する。
【0006】
Kron, et alに発効した米国特許第5,781,091号は、電子誘導装置、並びに、電子誘導装置を剛的な銅張エポキシ積層板中に製造する方法を開示している。方法は、エポキシ積層板中に一連の離間した孔を穿孔するステップと、板から完全に外れて銅張りをエッチング処理するステップと、エポキシ積層板を第二積層板の上に位置付けるステップと、離間した孔のそれぞれの内側にトロイダル強磁性コアを位置付けるステップと、各孔の残部を繊維充填エポキシで充填するステップとを含む。この技法は、従来的なエポキシ回路板を形成するのに含まれる従来的なステップの通常の一部ではない多数の追加的な処理ステップを含む。これらの追加的なステップは、本来的に、さらなる費用を包含する。また、そのような技法は、以下に記載されるセラミック型のような他の種類の基板との使用のために十分に適していない。
【0007】
850〜1000度でか焼されるガラスセラミック基板は、低温同時焼成セラミック(LTCC)と一般的に呼ばれる。この等級の材料は、それらをRF系の基板として特に有用にする多数の利点を有する。例えば、Dupont(登録商標)からの低温951同時焼成Green Tape(TM)は、Au及びAg適合性を有し、多くの用途に適する熱膨張係数(TCE)及び比強度を有する。他のLTCCセラミックテープ製品が、416 East Church Road, king of Prussia, PA 19406−2625, USAのElectro−Science Laboratories, Inc.から入手可能である。LTCC製品の製造業者は、典型的には、金属トレース及びビアを定めるために、それらのLTCC製品と適合性を有する金属ペーストも提供する。
【0008】
伝統的なLTCC処理のための処理フローは、(1)未処理(未焼成)セラミックテープをロールから切断するステップ、(2)未処理テープから下地を除去するステップ、(3)電気ビアのために孔を穿孔するステップ、(4)孔を導体ペースト及びスクリーン印刷パターン化された導体で充填するステップ、(5)個々のテープ層を積み重ね、整列し、且つ、積層するステップ、(6)粉末を焼結するために積重ねを焼成し、緻密化するステップ、及び、(7)焼成セラミックを個々の基板に引き切るステップを含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
LTCC処理は、同時焼成される材料が化学的に並びに熱膨張係数(CTE)に関して適合することを必要とする。典型的には、商業的に入手可能なLTCC材料の範囲は、かなり限定的である。例えば、LTCC材料は、限定的な範囲の透磁率値のみにおいて入手可能であり、1よりも大きい比透磁率を備える材料を一般的に含まなかった。しかしながら、最近、メタマテリアルの開発が、LTCCと共に使用され得る材料の可能な範囲を拡大し始めた。さらに、標準的なLTCCプロセスに適合する新しい高透磁率セラミックテープ材料が、商業的に入手可能になった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、基板内に一体化されるトロイダル誘導器、並びに、それを製造する方法に関する。方法は、第一内部周縁を定めるよう、中心軸から第一距離で径方向に離間される第一の複数の伝導性ビアを基板内に形成するステップを含み得る。第二内部周縁を定めるよう、第二の複数の伝導性ビアが、中心軸から第二距離で径方向に離間されて基板内に形成され得る。第二距離は第一距離よりも大きい。外部周縁を定めるよう、第三の複数の伝導性ビアが、中心軸から第三距離で径方向に離間されて基板内に形成され得る。第三距離は第二距離よりも大きい。
【0011】
第一の複数の伝導性トレースが、中心軸に対して直交して定められる第一平面内に配置され得る。第一の複数の伝導性トレースは、第一及び第三の複数の伝導性ビアの実質的に径方向に隣接するものの間に電気接続を形成し得る。第二の複数の伝導性トレースが、第一平面内に配置され得る。第二の複数の伝導性トレースは、第二及び第三の複数の伝導性ビアの実質的に径方向に隣接するもののの間に電気接続を形成し得る。第一及び第三の複数の伝導性ビアの円周方向に偏心(offset)されるものの間に電気接続を定めるよう、第三の複数の伝導性トレースが、第一平面から離間され且つ中心軸に対して直交して定められる第二平面の内部に配置され得る。最後に、三次元トロイダルコイルを定めるために、第二及び第三の複数の伝導性ビアの円周方向に偏心されるものの間に電気接続を定めるよう、第四の複数の伝導性トレースが、第二平面内に配置され得る。
【0012】
方法は、トロイダルコイルが基板内に少なくとも部分的に埋設された一体型基板構造を形成するために、基板及びトロイダルコイルを焼成するステップをさらに含む。本方法は、基板の少なくとも他の部分と異なる少なくとも1つの電気特性を有する材料の、トロイダルコイル内に定められる、基板の少なくともトロイド形状コア領域を形成するステップをさらに含み得る。例えば、材料は、基板の他の領域を含む材料よりも大きな透磁率の値を有する低温同時焼成セラミック(LTCC)であり得る。一体型基板構造を形成するために、基板及びトロイダル形状コア領域内の材料は同時焼成され得る。基板は、複数の基板層を積み重ね、且つ、トロイダルコイル内に定められる基板のトロイド形状コア領域内に少なくとも含まれるものよりも大きい非透磁率を有するよう基板層の少なくとも1つを選択することによって形成され得る。
【0013】
1つの構成において、方法は、第三の内部周縁を定めるよう、中心軸から第四距離で径方向に離間される第四の複数の伝導性ビアを基板内に形成するステップを含み得る。第四の複数の伝導性トレースが、第一平面内に配置され得る。第五の複数の伝導性トレースは、第四及び第五の複数の伝導性ビアの実質的に径方向に隣接するものの間に電気接続を形成する。第四及び第三の複数の伝導性ビアの円周方向に偏心されるものの間に電気接続を定めるよう、第六の複数の伝導性トレースが、第二平面内に配置され得る。
【0014】
本発明は、さらにプリント回路板に関し、基板を含み、基板内に定められるトロイダルコア領域と、トロイダルコイルとを有する。トロイダルコイルは、トロイダルコア領域の周りに形成される第一の複数の回と、トロイダルコア領域の周りに形成される第二の複数の回とを含み、第二の複数の回は、第一の複数の回によって定められる断面積(断面地域)よりも大きい断面積(断面地域)を定める。
【0015】
基板及びトロイダルコイルは、トロイダルコイルが少なくとも部分的に基板内に埋設される一体型基板構造を形成するよう、同時焼成プロセスにおいて形成され得る。第一及び第二の複数の回は、相互連続に配置され、且つ、全ての地点で基板内に含まれ得る。トロイダルコア領域は、基板の少なくとも1つの他の部分の第二基板材料よりも大きい透磁率を有する基板材料から成り得る。トロイダルコイルは、さらに、トロイダルコア領域の周りに形成される第三の複数の回を含み得る。第三の複数の回は、第二の複数の回によって定められる断面積(断面地域)よりも大きい断面積(断面地域)を定め得る。
【0016】
本発明は、さらに、基板と、基板内に定められるトロイダルコア領域と、トロイダルコア領域の周りに形成される第一の複数の回と、トロイダルコア領域の周りに形成される第二の複数の回とを含むトロイダルコイルとを含むトロイダル誘導器に関する。第二の複数の回は、第一の複数の回によって定められる断面積(断面地域)よりも大きい断面積(断面地域)を定める。基板及びトロイダルコイルは、トロイダルコイルが少なくとも部分的に基板内に埋設される一体型基板構造を形成するよう、同時焼成プロセスにおいて形成され得る。第一及び第二の複数の回は、相互連続に配置され得る。トロイダルコア領域は、基板の少なくとも1つの他の部分よりも大きい透磁率を有する基板材料で形成され得る。第三の複数の回はが、トロイダルコア領域の周りに形成され得る。第三の複数の回は、第二の複数の回によって定められる断面積(断面地域)よりも大きい断面積(断面地域)を定め得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、基板内に一体化されるトロイダル誘導器、並びに、それを製造する方法に関する。ここに定義されるように、トロイダル誘導器は、誘導器によって生成される束を実質的に含む閉塞経路を定める巻線を有する誘導器である。よって、誘導器巻線によって定められる領域はドーナッツ形状に限定されず、ディスク形状であり得るし、或いは、誘導器によって生成される磁束をを実質的に含むための閉塞経路を定めるのに適した如何なる他の形状をも有し得る。
【0018】
図1及び2並びに図15中のフロー図を参照して方法を記載する。方法は、適切な大きさとされた基板層100を形成することによって、ステップ1502で開始し得る。基板層100は、如何なる適切な基板材料からも形成され得るし、所望の基板厚さを得るために適切な如何なる数の副層をも含み得る。例えば、基板層100は、1つ又はそれよりも多くの層の未焼結セラミックテープを含み得る。セラミックテープは、多様な商業的に入手可能なガラスセラミック基板のいずれでもあり得る。例えば、セラミックテープは、800℃〜1050℃でか焼されるよう設計されたガラスセラミック基板であり得る。この等級の材料は、低温同時焼成セラミック(LTCC)と一般的に呼ばれる。そのようなLTCC材料は、それらをRF系のための基板として特に有用にする多数の利点を有する。例えば、Dupont(登録商標)からの低温951同時焼成Green Tape(TM)は、Au及びAg適合性を有し、且つ、多くの用途に適した熱膨張係数(TCE)及び比強度を有する。他の類似の種類のセラミックテープを使用され得る。セラミックテープのサイズは、特定の用途に依存して、様々な要因によって決定され得る。例えば、もしトロイダル誘導器が、より大きなRF回路の一部を形成するならば、セラミックテープは、トロイダル誘導器が構成部品を構成するRF回路を収容する大きさであり得る。
【0019】
ステップ1504に示されるように、第一の複数の伝導性ビア102が、基板層100内に形成され得る。このステップは、如何なる適切な技法をも使用して遂行され得る。例えば、ビアは、基板層100にボアを穿孔し、レーザ切断し、或いは、エッチング処理することによって形成され得る。ステップ1510で、ボアは、伝導性ペースト及び/又は任意の他の適切な伝導性素子で充填され得る。
【0020】
図1及び2に示されるように、第一の複数の伝導性ビア102は、トロイダル誘導器の内部周縁を定めるよう、中心軸212から第一距離で径方向に離間され得る。ステップ1506及び1510において、第二の複数の伝導性ビア104が、中間周縁を定めるよう、中心軸について第二距離で径方向に離間されて同様に形成され得る。同様に、ステップ1508及び1510において、第三の複数の伝導性ビア106が、外部周縁を定めるよう、中心軸から第三距離cで径方向に離間されて形成され得る。図2に示されるように、ビアは、基板層100の対向表面214,216の間に実質的に延在し得る。1つ又はそれよりも多くのビア108が、トロイダル誘導器のための一組の電気接点を定めるために設けられ得る。
【0021】
基板層100がセラミックテープ層のような複数の副層を含む構成において、ステップ1504乃至1510は、各個別の副層上で遂行され得る。それぞれの伝導性ビアは整列され得るし、副層はステップ1520で基板層100を形成するよう積み重ねられ得る。さらに、ステップ1504,1506、及び、1508は、図15中で分離されているが、そのようなステップは単一の処理ステップでも遂行され得ることも理解されるべきである。同様に、ステップ1512及び1514、並びに、ステップ1516及び1518も、単一の処理ステップで遂行され得る。
【0022】
図3及び4を今や参照すると、プロセスは、基板層100上に第一の複数の伝導性トレース320及び第二の複数の伝導性トレース322を配置することによって、ステップ1512及び1514で継続され得る。表面214上の伝導性トレース320は、実質的に径方向に隣接する第一及び第三の複数の伝導性ビアのそれぞれ1つの間の電気接続を形成し得る。同様に、表面214上の伝導性トレース322は、実質的に径方向に隣接する第二及び第三の複数の伝導性ビアのそれぞれ1つの間の電気接続を形成し得る。
【0023】
ステップ1516及び1518において、第三の複数の伝導性トレース324及び第四の複数の伝導性トレース326が、第二基板層430の表面432上に設けられ得る。第二基板層430も、任意の適切な基板材料、例えば、LTCCから成り得る。第三の複数の伝導性トレース324は、2つの基板層が図示のように整列され積み重ねられるとき、表面432上のトレース324が第一の複数の伝導性ビア102と第三の複数の伝導性ビア106の円周方向に偏心(offset)されたものの間に電気接続をもたらす。同様に、表面432上のトレース326は、第二の複数の伝導性ビア104と第三の複数の伝導性ビア106の円周方向に偏心されたものの間に電気接続をもたらす。加えて、トロイダル誘導器のための組の電気接点を定めるために、ビア108と接触するトレース328が設けられ得る。
【0024】
伝導性トレース320,322,324,326,328は、選択的な基板材料のための同時焼成プロセスと適合性を有する如何なる適切な伝導性ペースト又はインクからも形成され得る。そのような材料は、多様な源から商業的に入手可能である。さらに、基板層100及び430の2つの層は、伝導性トレースが各テープの片側上にのみ配置された状態で、図4に示されているが、本発明は、これに関して、限定されないことが留意されるべきである。当業者であれば、伝導性トレース320,322,324,326、328が、代わりに、基板層100の単一層の対向面上に配置されることも可能であること、並びに、そのような代替的配置が、本発明の範囲内にあることが意図されていることを理解しよう。
【0025】
追加的な基板層(図示せず)も基板層100の表面214上に及び/又は第二基板層430の表面438上に積み重ねられ得ることも留意されるべきである。例えば、基板層100及び430は、伝導性ビア102,104,106及び伝導性トレース320,322,324,326が最終基板構造内に埋設されるよう、複数の追加的な基板層の間に挟装され得る。ステップ1520では、従来的な処理技法を用いて、様々な基板層が互いに積み重ねられ且つ整列され得る。
【0026】
伝導性ビア102,104,106及び伝導性トレース320,322,324,326は、三次元の伝導性トロイダルコイル540を共に定め、それは図5に例証されている。トロイダルコイルは、ビア102,104,106及び伝導性トレース320,322,324,326の三次元の組み合わせによって形成され、図1乃至4に関して記載された構成から得られるトロイダルコイル構造を理解するために有用である。この関係で、本発明は、ここでは、図1乃至4に例証されるビア102,104,106及びトレース320,322,324,326の正確な配置又はパターンに限定されないことが理解されるべきである。代わりに、図5に例証されるものに類似する種類の実質的にトロイドコイル配置を実質的にもたらすならば、基板層に形成される如何なるパターンのビア及びトレースも使用されることができ、多くの変形が可能であることが理解されよう。
【0027】
例えば、表面214上の伝導性トレース320は、実質的に径方向に隣接する第一及び第三の複数の伝導性ビアのそれぞれ1つの間の電気接続を形成することが上述された。しかしながら、径方向に隣接する伝導性ビアは、その用語がここで使用されるとき、正確に径方向に整列されることは必ずしも必要ではない。そのような径方向に隣接するビアは、ある程度互いに円周方向に偏心されたビアも含み得る。円周方向に偏心されたビアは、径方向に整列されない。よって、本発明は、これらの素子の組み合わせが連続的なトロイダルコイルを定めるならば、伝導性トレース320,322,324,326及びビア102,104,106の如何なる特定の幾何に限定されることも意図されていないことが理解されよう。
【0028】
ビア102,104,106及びトレース320,322,324,326、328の全てが完成されるや否や、基板層100及び430、ビア、及び、トレースは、基板層の積重ねを焼結し且つ緻密化するために、ステップ1522において共に焼成され得る。焼成操作は、使用される基板材料の具体的な種類に適した温度及び時間に従って遂行され得る。
【0029】
図1乃至4に示されるように、ビア102は、伝導性トレース320の数を最大限化するために、トロイダル誘導器の内部周縁の周りに緻密に離間され得る。顕著に、ビア1−4及び伝導性トレース322は、ビア102の配置と干渉せずに、伝導性トレース320の隣接するものの間に位置付けられ得る。この配置は、トロイダル誘導器のために、さもなければ得られるであろうよりも大きな数の回をもたらし、それによって、トロイダル誘導器のために増大されたレベルのインダクタンスをもたらす。
【0030】
例えば、図6及び7を参照すると、もしトロイダル誘導器が、伝導性トレース620,624が内部ビア702及び外部ビア704の間に配置された状態で、内部ビア702及び外部ビア704によって定められる回を含むだけならば、インダクタンスは、以下の等式によって与えられる。
【0031】
【数3】

ここで、μは、基板100の透磁率であり、Nは、ビア702及び704並びにそれぞれの伝導性トレース620及び624によって定められる回の数であり、hは、誘導器の高さ(基板100の厚さ)であり、aは、図2に示される第一径方向距離と等しい図7に示される第一径方向距離であり、cは、図2に示される第三径方向距離と等しい図7に示される第二径方向距離である。
【0032】
等式(1)は、トロイダルコイルの各回が、一定であるトロイダル誘導器のトロイダルコア領域を通じる断面地域706を定めると想定している。しかしながら、図1乃至4に示される実施態様のために、ビア102及び106並びに伝導性トレース320及び324を含む回によって定められる断面地域440は、ビア104及び106伝導性トレース322及び326を含む回によって定められる断面地域442よりも大きい。従って、等式(1)は、図1乃至4に示されるトロイダル誘導器のインダクタンスを正確に演算し得ない。この実施態様のためのインダクタンスは、以下のように表現され得る。
【0033】
【数4】

ここで、bは、図2に示される第二径方向距離であり、Nは、ビア102及び106並びに伝導性トレース320及び336によって定められる回の数であり、Nは、ビア104及び106並びに伝導性トレース322及び336によって定められる回の数である。本来的に、図1乃至4に示され且つ等式(2)によって記載される誘導器は、図6及び7に示され且つ等式(1)によって記載される誘導器よりも高いインダクタンスを有する。
【0034】
プロセスは、基板層の少なくとも1つの他の部分と異なる少なくとも1つの電気特性を有するよう、基板層100の1つ又はそれよりも多くの選択領域を提供するステップも含み得る。そのような領域を提供するための例示的なプロセスが、同一出願人に譲渡された2003年9月5日に出願された米国特許出願第10/657,054号に記載されており、それは参照としてここに引用される。例えば、トロイダルコイルの伝導性ビア及び伝導性トレースによって定められるトロイダル形状コア領域434の透磁率は、そのような材料の非透磁率が1よりも大きいよう、コア領域の少なくとも一部を強磁性又は常磁性の特性を有する材料で形成することによって選択的に調整され得る。等式(2)から明らかであるように、1よりも大きい非透磁率を備える領域434を設けることは、1と等しい透磁率を有するコア領域434に比べトロイダル誘導器の増大されたインダクタンスをもたらす。
【0035】
1よりも大きい透磁率を有するコア領域434を形成するために、如何なる適切な手段をも使用し得る。例えば、基板層100は、所望の透磁率を有する材料として提供され得る。代替的な実施態様において、基板100は、高透磁率領域がトロイダルコア領域434を含むよう形成され得る。領域434の電気特性を調整するようために使用され得る材料の実施例は、1よりも大きい非透磁率を有するメタマテリアル及びLTCC材料を含み得る。依然として、1よりも大きい非透磁率を有する無数の他の材料が、当業者に既知であり、本発明は、この点について、限定されない。
【0036】
RF回路板の場合、1つ又はそれよりも多くの接地平面を含むことがしばしば望ましい。例えば、少なくとも1つの伝導性層436が、基板層430の下に配置され得る。しかしながら、本発明は、そのように限定されない。例えば、伝導層(図示せず)は、基板100よりも上に配置され得る。1つ又はそれよりも多くの基板層(図示せず)が、伝導性層を伝導性トレース320,322,324,326,328から絶縁し得る。
【0037】
図8は、本発明を理解するのに有用な基板内に一体化されたトロイダル誘導器の他の実施態様を描写している。図9は、線9−9に沿って取られた、図8の基板の断面図であり、図10は、線10−10に沿って取られた、図8の断面図である。図8乃至10のそれぞれを参照すると、伝導性ビアは、任意の適切な技法を使用して基板層800に形成され得る。具体的には、第一の複数の伝導性ビア802は、トロイダル誘導器の内部周縁を定めるよう、中心軸810から第一半径距離aで径方向に離間され得る。第二の複数の伝導性ビア804が、第一中間周縁を定めるよう、中心軸810から第二距離bで半径方向に離間され得るし、第三の複数の伝導性ビア806が、第二中間周縁を定めるよう、中心軸810から第三距離cで径方向に離間され得る。最後に、第四の複数の伝導性ビア808が、外周を定めるよう、中心軸810から第四距離dで径方向に離間され得る。
【0038】
図11は、トロイダル誘導器を形成するために伝導性トレース及び第二層が加えられた後の図8の基板の上面図である。図12は、線12−12に沿って取られた、図11中の基板の断面図であり、図13は、線13−13に沿って取られた、図11中の基板の断面図である。図11乃至13を参照すると、第一の複数の伝導性トレース11−2、第二の複数の伝導性トレース1104、及び、第三の複数の伝導性トレース1106が、基板層800上に配置され得る。実質的に径方向に隣接する第一の複数の伝導性ビア802と第四の複数の伝導性ビア808のそれぞれ1つの間に電気接続をもたらすために、伝導性トレース1102は、基板層100の表面1108上に配置され得る。同様に、表面1108上の伝導性トレース1104は、実質的に径方向に隣接する第二の複数の伝導性ビア804と第四の複数の伝導性ビア808とのそれぞれ1つの間に電気接続を形成し得る。最後に、表面1108上の伝導性トレース1106は、実質的に径方向に隣接する第三の複数の伝導性ビア806と第四の複数の伝導性ビア808とのそれぞれ1つ間に電気接続を形成する。
【0039】
第四の複数の伝導性トレース1110、第五の複数の伝導性トレース1112、第六の複数の伝導性トレース1114、及び、第七の複数の伝導性トレース1116が、第二基板層1200の表面1202上に設けられ得る。第四の複数の伝導性トレース1110は、2つの基板層800,1200が、図示のように整列され且つ積み重ねられるときに、表面1202上のトレース1110が、第一の複数の伝導性ビア802及び第四の複数の伝導性ビア808の円周方向に偏心されたものの間に電気接続をもたらし得る。同様に、表面1202上のトレース1112は、第三の複数の伝導性ビア806及び第四の複数の伝導性ビア808の円周方向に偏心されたものの間に電気接続をもたらし得る。表面1202上のトレース1114は、第二の複数の伝導性ビア804及び第四の複数の伝導性ビア808の円周方向に偏心されたものの間に電気接続をもたらし得る。
【0040】
図14中の概略図も、図8乃至13に関して記載された構成から得られるトロイダルコイル構造1400を理解するために有用である。この点に関して、本発明は、ここでは、図8乃至13に例証されるビア及び伝導性トレースの正確な配置又はパターンに限定されないことが理解されるべきである。代わりに、図14に例証された種類に類似する種類の実質的にトロイダルコイル配置を概ねもたらすならば、基板層に形成されるビア及びトレースの如何なるパターンも使用可能であり、多くの小さな変形が可能であることが理解されよう。
【0041】
図8乃至13に示される実施態様において、ビア802及び808並びに伝導性トレース1102及び1110を含む回によって定められる断面地域1204は、ビア804及び808並びに伝導性トレース1104及び1114を含む回によって定めらえっる断面地域1306よりも大きい。同様に、断面地域1306は、ビア806及び808並びに伝導性トレース1106及び1112を含む回によって定められる断面地域1308よりも大きい。この実施態様のためのインダクタンスは、以下の通り表現され得る。
【0042】
【数5】

ここで、μは、基板800の透磁率であり、Nは、ビア802及び808並びに伝導性トレース1102及び1110によって定められる回の数であり、Nは、ビア804及び808並びに伝導性トレース1104及び1114によって定められる回の数であり、Nは、ビア806及び808並びに伝導性トレース1106及び1112によって定められるかいの数であり、hは、誘導器の高さ(基板800の厚さ)であり、aは、図9に示される第一半径距離であり、bは、図10に示される第二半径距離であり、cは、図10に示される第三半径距離であり、dは、図10に示される第四半径距離である。再び、図8乃至13に示され且つ等式(3)によって記載される誘導器は、等式(1)によって記載される図6及び7に示される誘導器よりも高いインダクタンスを有する。
【0043】
本発明の好適実施態様が例証され且つ記載されたが、本発明はそのように限定されないことが明らかであろう。数多くの修正、変更、変形、置換、及び、均等物が、請求項に記載される本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、当業者に思い浮かぶであろう。例えば、第一実施態様は、基板表面上に放射線配列に交互嵌合された本質的に2つの長さの伝導性トレースを含む埋設トロイダル誘導器を開示し、第二実施態様は、基板表面上に本質的に3つの長さの交互嵌合された伝導性トレースを含むトロイダル誘導器を開示しているが、本発明は、この点に関して、限定されない。より具体的には、トロイダルコイルは、異なるサイズの断面積を有する4つ又はそれよりも多くの複数の回を有する如何なる数の伝導性トレースをも含み得る。そのような誘導器のインダクタンスを演算するための一般的な等式は、以下のように表現され得る。
【0044】
【数6】

ここで、nは、異なるサイズの断面積を有する回の群の数であり、Nは、それぞれの群の回の回転の数であり、xは、特定のトロイダル地域の内部半径及び外部半径を定めるそれぞれのビアの半径距離である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明、トロイダル誘導器を形成する方法を理解するために有用な、内部にビアが形成されたセラミック基板を示す上面図である。
【図2】線2−2に沿って取られた、図1の基板を示す断面図である。
【図3】トロイダル誘導器を形成するために伝導性トレース及び第二層が追加された後の図1の基板を示す上面図である。
【図4】線4−4に沿って取られた、図3の基板を示す断面図である。
【図5】図1乃至4中のトロイダル誘導器の構造を理解するために有用なトロイダルコイルを示す概略図である。
【図6】本発明を理解するために有用な、トロイダル誘導器を形成するために伝導性トレース及び第二層が追加された後の基板を示す上面図である。
【図7】線7−7に沿って取られた、図6の基板を示す断面図である。
【図8】本発明の代替的な実施態様を理解するために有用なセラミック基板を示す上面図である。
【図9】線9−9に沿って取られた、図8の基板を示す断面図である。
【図10】線10−10に沿って取られた、図8の基板を示す断面図である。
【図11】トロイダル誘導器を形成するために伝導性トレース及び第二層が追加された後の図8の基板を示す上面図である。
【図12】線12−12に沿って取られた、図11の基板を示す断面図である。
【図13】線13−13に沿って取られた、図11の基板を示す断面図である。
【図14】図8乃至12中のトロイダル誘導器の構造を理解するために有用なトロイダルコイルを示す概略図である。
【図15】本発明の製造方法を理解するために有用なフローを示すフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導器を形成する方法であって、
第一内部周縁を定めるよう、中心軸から第一距離で径方向に離間される第一の複数の伝導性ビアを基板の内部に形成するステップを含み、
第二内部周縁を定めるよう、前記中心軸から第二距離で径方向に離間される第二の複数の伝導性ビアを前記基板内に形成するステップを含み、前記第二距離は、前記第一距離よりも大きく、
外部周縁を定めるよう、前記中心軸から第三距離で径方向に離間される第三の複数の伝導性ビアを前記基板内に形成するステップを含み、前記第三距離は、前記第二距離よりも大きく、
前記中心軸に対して直交して定められる第一平面の内部に配置される第一の複数の伝導性トレースを形成するステップを含み、前記第一の複数の伝導性トレースは、前記第一及び第三の複数の伝導性ビアの実質的に径方向に隣接するものの間に電気接続を形成し、
前記第一平面内に配置される第二の複数の伝導性トレースを形成するステップを含み、前記第二の複数の伝導性トレースは、前記第二及び第三の複数の伝導性ビアの実質的に径方向に隣接するもののの間に電気接続を形成し、
前記第一及び第三の複数の伝導性ビアの円周方向に偏心されるものの間に電気接続を定めるよう、前記第一平面から離間され且つ前記中心軸に対して直交して定められる第二平面の内部に配置される第三の複数の伝導性トレースを形成するステップを含み、
三次元トロイダルコイルを定めるために、前記第二及び第三の複数の伝導性ビアの円周方向に偏心されるものの間に電気接続を定めるよう、前記第二平面内に配置される第四の複数の伝導性トレースを形成するステップとを含む、
方法。
【請求項2】
前記トロイダルコイルが前記基板内に少なくとも部分的に埋設される一体型基板構造を形成するよう、前記基板及び前記トロイダルコイルを焼成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板の少なくとも他の部分と異なる少なくとも1つの電気特性を有する材料の、前記トロイダルコイル内に定められる、前記基板の少なくともトロイド形状コア領域を形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
一体型基板構造を形成するために、前記基板及び前記材料を同時焼成するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第一内部周縁を定めるよう、基板内に形成され且つ中心軸から第一距離で半径方向に離間される第一の複数の伝導性ビアを含み、
第二内部周縁を定めるよう、前記基板内に形成され且つ前記中心軸から第二距離で半径方向に離間される第二の複数の伝導性ビアを含み、前記第二距離は、前記第一距離よりも大きく、
外部周縁を定めるよう、前記基板の内部に形成され且つ前記中心軸から第三距離で径方向に離間される第三の複数の伝導性ビアを含み、前記第三距離は、前記第二距離よりも大きく、
前記中心軸に対して直角に定められる第一平面の内部に配置される第一の複数の伝導性トレースを含み、該第一の複数の伝導性トレースは、前記第一及び第三の伝導性ビアの実質的に径方向に隣接するものの間に電気接続を形成し、
前記第一平面に配置される第二の複数の伝導性トレースを含み、該第二の複数の伝導性トレースは、前記第二及び第三の複数の伝導性ビアの実質的に径方向に隣接するものの間に電気接続を形成し、
前記第一及び第三の複数の伝導性ビアの円周方向に偏心されるものの間に電気接続を定めるよう、前記第一平面から離間され且つ前記中心軸に対して直角に定められる第二平面に配置される第三の複数の伝導性トレースを含み、
三次元トロイダルコイルを定めるために、前記第二及び第三の複数の伝導性ビアの円周方向に偏心されるものの間に電気接続を定めるよう、前記第二平面に配置される第四の複数の伝導性トレースを含む、
誘導器。
【請求項6】
前記基板、前記伝導性ビア、及び、前記伝導性トレースは、前記トロイダルコイルが少なくとも部分的に前記基板内に埋設される一体型基板構造を含む、請求項5に記載の誘導器。
【請求項7】
前記トロイダルコイル内に定められる、前記基板の少なくともトロイド形状コア領域は、前記基板の少なくとも他の部分と異なる少なくとも1つの電気特性を有する材料を含む、請求項5に記載の誘導器。
【請求項8】
前記材料は、前記基板と一体である、請求項7に記載の誘導器。
【請求項9】
基板と、
該基板内に定められるトロイダルコア領域と、
該トロイダルコア領域の周りに形成される第一の複数の回と、前記トロイダルコア領域の周りに形成される第二の複数の回とを含むトロイダルコイルとを含み、
前記第二の複数の回は、前記第一の複数の回によって定められる断面積よりも大きい断面積を定める、
トロイダル誘導器。
【請求項10】
前記基板及び前記トロイダルコイルは、前記トロイダル子コイルが前記基板内に少なくとも部分的に埋設される一体型基板構造を含む、請求項9に記載のトロイダル誘導器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−530799(P2008−530799A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555144(P2007−555144)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2006/003989
【国際公開番号】WO2006/086260
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(594071675)ハリス コーポレイション (287)
【氏名又は名称原語表記】Harris Corporation
【Fターム(参考)】