説明

埋設機の実回転トルクの測定方法及び測定部材並びに測定装置

【課題】鋼管杭に付与されている実回転トルクを容易に測定する。
【解決手段】実回転トルクの測定方法は、鋼管杭を回転させて埋設する埋設機の実回転トルクを測定する方法であって、胴部1cに歪みゲージ5を取り付けた測定部材Aを有し、測定部材Aの下端部1aを固定すると共に起立させ、起立させた測定部材Aの上端1bに埋設機の鋼管杭を回転させる駆動装置Bを装着し、駆動装置Bを駆動して測定部材Aに回転トルクを付与しつつ、歪みゲージ5によって検出した測定部材Aの歪み量から該測定部材に付与されている回転トルクを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭を回転させながら埋設する埋設機が埋設される鋼管杭に対して付与している実回転トルクを測定する方法と、この測定方法を実施する際に用いて有利な測定部材及び測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼管杭の場合、鋼管杭の上端部に設けた係合部に埋設機の駆動装置を係合させ、該駆動装置によって回転させつつ推力を付与して地中に埋設している。このように回転により埋設される鋼管杭では、過大な回転トルクが付与された場合に過大なねじれが生じる虞があるため、実際に鋼管杭に付与されている回転トルクを管理することが重要である。
【0003】
このため、トルクセンサ(例えばトルクデューサー(登録商標))を装備した埋設機を利用して鋼管杭を埋設することが行われている。またこのようなトルクセンサを装備した埋設機を利用しない場合には、鋼管杭に回転トルクを付与する駆動装置に供給する作動油の圧力及び鋼管杭の径からトルクを計算して回転トルクを管理している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記トルクセンサは価格が高く、全ての埋設機に装備するのでは経済的な負担が大きくなり過ぎるという問題がある。またこのようなトルクセンサを実稼動する埋設機に着脱させることで稼働率を向上させて経済的な負担を少しでも軽減することも考慮し得るが、この場合、トルクセンサの着脱に多くの時間を要するという問題が派生する。
【0005】
また駆動装置に供給する作動油の圧力からトルクを計算する場合、鋼管杭に付与している回転トルクを正確に計算することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、鋼管杭に付与されている実回転トルクを容易に測定することが可能な測定方法と、この測定方法を実施する際に用いて有利な測定部材と、測定装置と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の説明に於いて、「実回転トルク」とは、現実に鋼管杭に付与されているトルク、及び現実に測定部材に付与されているトルク、更に、測定装置の出力部から出力され実回転トルクとして見なされて表示部に表示されたトルク、をいい、前記以外を単に回転トルクというものとする。
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る実回転トルクの測定方法は、鋼管杭を回転させて埋設する埋設機の実回転トルクを測定する方法であって、胴部に歪みゲージを取り付けた測定部材を有し、前記測定部材の下端を固定すると共に起立させ、起立させた測定部材の上端に埋設機の鋼管杭を回転させる駆動装置を装着し、前記駆動装置を駆動して測定部材に回転トルクを付与しつつ、歪みゲージによって検出した測定部材の歪み量から該測定部材に付与されている回転トルクを測定することを特徴とするものである。
【0009】
上記実回転トルクの測定方法に於いて、駆動装置の表示出力と、前記測定部材の歪み量から測定された測定部材に付与されている回転トルクと、を対応させつつ測定することが好ましい。
【0010】
また本発明に係る測定部材は、鋼管杭を回転させて埋設する埋設機の実回転トルクを測定する際に用いる測定部材であって、鋼管からなり、下端部に地中に埋設された回転トルク支持用の固定部材に係合する係合部が形成され、上端部に測定すべき埋設機の鋼管杭の駆動装置を装着する装着部が形成され、下端部と上端部の間の胴部に歪みゲージが取り付けられたものである。
【0011】
また本発明に係る実回転トルクを測定するための第1の測定装置は、鋼管杭を回転させて埋設する埋設機の実回転トルクを測定する装置であって、鋼管からなり下端部に地中に埋設された回転トルク支持用の固定部材に係合する係合部が形成され上端部に測定すべき埋設機の鋼管杭の駆動装置を装着する装着部が形成され下端部と上端部の間の胴部に歪みゲージが取り付けられた測定部材と、前記測定部材の胴部に取り付けられた歪みゲージに接続され該歪みゲージから出力された歪み量に基づいて測定部材に付与されている回転トルクを演算する演算装置と、を有するものである。
【0012】
また第2の測定装置は、上記第1の測定装置に於いて、駆動装置の表示出力と前記演算装置によって演算された回転トルクとを対応させて記録する記録装置を有するものである。
【0013】
また第3の測定装置は、上記第2の測定装置に於いて、予め上記駆動装置の表示出力に対応する前記演算装置で演算された測定部材に付与された回転トルクを表示出力・回転トルク対応情報として記憶させた記憶部と、駆動装置の表示出力を入力したとき、前記表示出力・回転トルク対応情報を用いて入力された表示出力に対応する回転トルク情報を出力する出力部と、を有するものである。
【0014】
また第4の測定装置は、上記第1の測定装置に於いて、駆動装置の表示出力と前記測定部材に取り付けた歪みゲージから出力された歪み量とを対応させて記録する記録装置を有するものである。
【0015】
また第5の測定装置は、上記第4の測定装置に於いて、予め上記駆動装置の表示出力に対応する前記測定部材に取り付けた歪みゲージから出力された歪み量を表示出力・歪み量対応情報として記憶させた記憶部と、駆動装置の表示出力を入力したとき、前記表示出力・歪み量対応情報を用いて入力された表示出力に対応する回転トルク情報を出力する出力部と、を有するものである。
【0016】
また第6の測定装置は、上記第3の測定装置又は第5の測定装置に於いて、出力部から出力された前記回転トルク情報を前記駆動装置から出力されている実回転トルクとして表示する表示部、を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る実回転トルクの測定方法では、胴部に歪みゲージを取り付けた測定部材を利用して埋設機の実回転トルクを測定するので、簡単に実回転トルクを測定することができる。即ち、測定部材の下端を固定して起立させ、上端に埋設機の駆動装置を装着して該駆動装置を駆動すると、測定部材に駆動装置の実回転トルクが付与されて捻り歪みが生じる。このときの歪み量は歪みゲージによって検出されるため、検出された歪み量と測定部材の捻り剛性から計算された測定部材に作用している回転トルク、即ち、実回転トルクを測定することができる。
【0018】
従って、予め設定された捻り剛性を発揮し得る断面形状と寸法、材質等の条件を設定して測定部材を製作するか、測定部材として例えば既存のヤットコを利用するような場合には該ヤットコの断面形状と寸法及び材質等を厳密に測定して捻り剛性を計算しておくことで、これらの測定部材の胴部に取り付けた歪みゲージによって検出した測定部材の歪み量に基づいて回転トルクを計算して測定部材に付与されている実回転トルクを測定することができる。
【0019】
上記の如く、測定部材として既存のヤットコを利用することもできるので、このようなヤットコを利用した場合には、埋設機の実回転トルクを容易に測定することが可能となり、実際に埋設される鋼管杭に付与されている実回転トルクを容易に測定することができる。
【0020】
特に、駆動装置の表示出力と、前記測定部材の歪み量から測定された測定部材に付与されている実回転トルクと、を対応させつつ測定することによって、埋設機の駆動装置の表示出力と実回転トルクを対応させることができる。このため、一度両者を対応させた後は、駆動装置の表示出力を監視することによって鋼管杭に付与されている実回転トルクの値を管理することができる。
【0021】
また本発明に係る測定部材では、下端部に形成された係合部を介して地中に埋設された固定部材に係合することができ、上端部に形成された装着部を介して埋設機の駆動装置に装着することができる。このため、駆動装置を駆動したとき、測定部材は下端部が回転トルク支持用の固定部材に係合して固定されることから、下端部を固定点とした捻り歪みが発生し、この歪み量を胴部に取り付けた歪みゲージによって検出することができる。
【0022】
また本発明に係る第1の測定装置では、鋼管からなり下端部に係合部が形成され、上端部に埋設機の駆動装置を装着する装着部が形成され、胴部に歪みゲージが取り付けられた測定部材と、歪みゲージに接続され該歪みゲージから出力された歪み量に基づいて測定部材に付与されている回転トルクを演算する演算装置と、を有するので、埋設機の駆動装置を測定部材に装着して駆動することで、測定装置に実回転トルクを付与することができ、付与された実回転トルクに応じて測定部材に生じた歪みを歪みゲージによって検出すると共に演算装置によって回転トルクを演算して実回転トルクを測定することができる。
【0023】
また本発明に係る第2の測定装置では、上記駆動装置の表示出力と上記演算装置によって演算された回転トルクとを対応させて記録する記録装置を有するので、駆動装置を駆動させたときの表示出力と、演算された回転トルクを対応させて記録することができる。
【0024】
また本発明に係る第3の測定装置では、予め駆動装置の表示出力に対応する演算装置で演算された測定部材に付与された実回転トルクを表示出力・回転トルク対応情報として記憶させた記憶部と、駆動装置の表示出力を入力したとき、前記表示出力・回転トルク対応情報を用いて入力された表示出力に対応する回転トルク情報を出力する出力部と、を有するので、駆動装置の表示出力を入力することによって、記憶部に記憶させた表示出力・回転トルク対応情報に基づいて出力部からは回転トルク情報を出力することができ、この回転トルク情報を利用して埋設機の制御や他の機器類の制御に利用することができる。
【0025】
また本発明に係る第4の測定装置では、駆動装置の表示出力と前記測定部材に取り付けた歪みゲージから出力された歪み量とを対応させて記録する記録装置を有するので、駆動装置を駆動させたときの表示出力と、歪みゲージから出力された歪み量を対応させて記録することができる。
【0026】
また本発明に係る第5の測定装置では、予め駆動装置の表示出力に対応する測定部材に取り付けた歪みゲージから出力された歪み量を表示出力・歪み量対応情報として記憶させた記憶部と、駆動装置の表示出力を入力したとき、前記表示出力・歪み量対応情報を用いて入力された表示出力に対応する回転トルク情報を出力する出力部と、を有するので、駆動装置の表示出力を入力することによって、記憶部に記憶させた表示出力・歪み量対応情報に基づいて出力部からは回転トルク情報を出力することができ、この回転トルク情報を利用して埋設機の制御や他の機器類の制御に利用することができる。
【0027】
また本発明に係る第6の測定装置は、出力部から出力された回転トルク情報を駆動装置から出力されている実回転トルクとして表示する表示部、を有するので、駆動装置の表示出力を入力することによって、測定装置の歪み量から演算された回転トルク、或いは歪み量から、回転トルクを駆動装置から出力されている実回転トルクとして表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る実回転トルクの測定方法、測定部材、測定装置の好ましい実施の形態について説明する。図1は実回転トルクを測定する測定方法を模式的に説明すると共に測定部材の構成を説明する図である。図2は歪みゲージの取付方を説明する図である。図3は測定装置の構成を説明する図である。図4は測定装置の他の構成を説明する図である。図5は測定装置の更に他の構成を説明する図である。
【0029】
先ず、図1により実回転トルクの測定方法と測定部材の構成について説明する。本発明に係る実回転トルクの測定方法は、下端を固定して起立させた測定部材Aに対し、上端に埋設機の駆動装置Bを装着して実回転トルクを付与し、付与された実回転トルクによって生じた測定部材Aの歪み量を検出して実回転トルクを測定するようにしたものである。
【0030】
特に、本発明に係る実回転トルクの測定方法を実施する場合、埋設すべき鋼管杭と駆動装置Bとの間に測定部材Aを介在させた状態で鋼管杭を回転させて埋設することで、鋼管杭毎に付与される実回転トルクを監視することが可能である。従って、埋設機毎に測定部材Aを用意しておくことで、実際に埋設する鋼管杭に付与される実回転トルクを管理することが可能である。
【0031】
また、鋼管杭に代えて、地中に支持体Cを埋設して固定しておき、この支持体Cに測定部材Aを係合させて駆動装置Bによって実回転トルクを付与することで、駆動装置Bから測定部材Aに付与されている実回転トルクを監視することが可能である。このため、駆動装置Bの表示出力と測定された実回転トルクとを比較することで、駆動装置Bの表示出力の補正を行うことが可能である。従って、埋設機の駆動装置Bの表示出力の補正手段としても利用することが可能である。
【0032】
上記の如く、本発明に係る測定方法を利用して埋設機の駆動装置Bの表示出力の補正手段とした場合には、上記支持体Cと測定部材Aを有する場所を用意しておくことで、個々の埋設機毎に測定部材Aを装備することなく、定期的に埋設機を前記した場所に移動させて補正することで、補正後の表示出力から実回転トルクを知ることが可能である。
【0033】
測定部材Aとしては、断面形状、断面寸法、材質が明らかになっているものであれば、断面係数を計算することが可能であり、且つ弾性係数を知ることが可能であるが、回転トルクを測定することから、断面は円形であることが好ましい。
【0034】
特に、測定部材Aが、鋼管杭を地中に深く埋設する際に用いるヤットコと同じ材質と同じ寸法を有するものであると、直接鋼管杭と駆動装置Bとの間に介在させて実回転トルクを測定するような場合に有利である。
【0035】
図1に示す測定部材Aは鋼管を利用して構成されており、長さ以外の外形形状はヤットコと同じように形成されている。測定装置Aを構成する鋼管1の下端部1aには支持体Cと係合する係合部2が形成されており、上端部1bには埋設機の駆動装置Bが装着される装着部3が形成されている。また鋼管1の胴部1cには歪みゲージ5が取り付けられている。
【0036】
本実施例に於いて、測定部材Aを構成する鋼管1は、材質がSTK490(一般構造用炭素鋼鋼管)で、外径Dが26.74cm、内径dが24.2cmに設定されており、この材質の鋼管では弾性係数Eが2100000kg/cm2 として設定されている。また下端部1aの係合部2から上端部1bの端部までの管部分の長さが150cmに設定されている。
【0037】
係合部2は支持体Cの鋼管杭部10の上端部に設けた突起部11に対し着脱可能に係合する機能を有するものであり、該突起部11に係合したとき支持体Cによって固定される。また、この係合部2は埋設すべき鋼管杭の上端部に設けた装着部に対して着脱可能に装着することも可能なように構成されている。即ち、係合部2の構造は埋設すべき鋼管杭の上端部に設けた装着部の構造に対応して構成されており、更に、支持体Cの鋼管杭部10の上端部は鋼管杭の上端部と同じ構造を持って構成されている。
【0038】
本実施例では、係合部2は鋼管杭部10の上端部分を嵌合し得るように構成したキャップ部2aと、該キャップ部2aの外周壁に設けられ鋼管杭部10の上端部に設けた複数の突起部11を嵌合して係合するフック部2bと、を有して構成されている。従って、係合部2のキャップ部2aを鋼管杭部10に被せるようにして嵌合させると共に突起部11をフック部2bに係合させることで、測定部材Aを支持体Cに装着して固定することが可能である。
【0039】
装着部3は駆動装置Bを着脱可能に装着する機能を有するものである。特に、駆動装置Bは鋼管杭の上端部に設けた装着部と係合して該鋼管杭に実回転トルクを付与するものであるため、装着部3は鋼管杭の上端部に設けた装着部と同じ構造(支持体Cの鋼管杭部10の上端部に設けた突起11)で構成されている。即ち、装着部3は鋼管1の上端部1bの外周面に複数の突起を溶接等の手段で固定することで構成されている。
【0040】
駆動装置Bは測定部材Aに装着されて該測定部材Aに実回転トルクを付与し得るように構成されている。特に、駆動装置Bは、鋼管杭の上端部分に装着されて該鋼管杭に実回転トルクと推力を付与することで、鋼管杭を地中に埋設し得るように構成されている。このため、駆動装置Bは埋設機を構成する図示しないリーダに装着され、該リーダに沿って直線的に往復移動し得るように構成されている。
【0041】
駆動装置Bは油圧モーターを駆動源とする油圧機器として構成されているのが一般的であるが、必ずしも油圧機器である必要はなく、電動モーターを駆動源とする電動機器であっても良い。この駆動装置Bでは、該駆動装置Bの出力を表示し得るように構成されており、表示された出力をオペレーターによって監視し得るように構成されている。
【0042】
駆動装置Bには鋼管杭の上端部に設けた装着部と係合する係合部20が構成されている。即ち、鋼管杭の上端部に設けた装着部は支持体Cの鋼管杭部10の上端部に設けた突起部11と同じ構造を有しているため、駆動装置Bの係合部20は、測定部材Aの係合部2と同様にキャップ部20aと、フック部20bとを有して構成されている。
【0043】
支持体Cは測定部材Aを固定する機能を有するものであり、固定部13と鋼管杭部10とからなり、固定部13が地中に埋設されて固定され、鋼管杭部10が地上に起立して設けられている。固定部13は地中に埋設され、測定部材Aに対して付与される最大回転トルクが作用したときであっても確実に固定状態を保持し得るように構成されていれば良く、構造を問うものではない。
【0044】
本実施例では、固定部13として矩形状に切断した鋼板を鋼管杭部10の下端部分に溶接し、地中に深さ約260cmに埋設することで構成している。尚、固定部13は必ずしもこの構造である必要はなく、鋼管杭そのものを埋設して固定したものを利用することも可能である。
【0045】
また固定部13を埋設したとき、鋼管杭部10は地上に約50cm〜100cm露出させて起立させることで、支持体Cを構成している。また、実際の鋼管杭を埋設する場合、埋設される鋼管杭は必ずしも垂直であることはない。従って、鋼管杭部10は地上に起立していれば良く、垂直、或いは傾斜していても良い。
【0046】
歪みゲージ5は測定部材Aを構成する鋼管1の胴部1cに取り付けられており、駆動装置Bから付与された実回転トルクに応じて測定部材Aに歪みが生じたとき、この歪みを検出して歪み量に応じた電気的な信号を発生する機能を有するものである。このため、歪みゲージ5は付与された実回転トルクに応じた鋼管1の歪みを正確に検知し得ることが必要である。
【0047】
胴部1cに取り付ける歪みゲージ5の数は特に限定するものではなく、1個の歪みゲージ5を取り付けた場合でも、2個又は4個の歪みゲージ5を取り付けた場合でも同じように測定部材Aの歪みを検出して、該測定部材Aに付与されている実回転トルクを検出することが可能である。特に、複数個の歪みゲージ5を用いた場合には、個々の歪みゲージ5から出力された信号を、平均化して処理したり、最大値と最小値を排除して平均化して処理するなど、取り扱い方法に幾つかの選択肢ができるため有利である。
【0048】
歪みゲージ5の鋼管1の胴部1cに対する取付方式は、1個の歪みゲージ5を鋼管1の軸芯に対し45度傾けて取り付けると共にこの歪みゲージ5を用いてブリッジ(1ゲージ法(2線式))を構成する方式、図2(a)に示すように、2個の歪みゲージ5を鋼管1の軸芯に対し45度傾けて取り付けると共にこれらの歪みゲージ5を用いてブリッジ(2ゲージ法(ハーフブリッジ))を構成する方式、同図(b)に示すように、4個の歪みゲージ5を鋼管1の軸芯に沿って離隔させると共に45度傾けて取り付けると共にこれらの歪みゲージ5を用いてブリッジ(4ゲージ法(フルブリッジ))を構成する方式があり、これらの方式を選択的に採用することが好ましい。
【0049】
歪みゲージ5を鋼管1の胴部1cに取り付ける手段は特に限定するものではなく、該胴部1cに歪みが生じたとき、この歪みを確実に検出するのに必要な取付方法を満足していれば良い。また歪みゲージ5を取り付けた胴部1cには、該歪みゲージ5の更に外周面側に防水加工を施すと共に、緩和材のコーティングを施すことが好ましい。鋼管1の胴部1cをこのように構成しておくことで、測定部材Aを直接図示しない鋼管杭の上端部に取り付けて実回転トルクを測定することが可能である。
【0050】
次に、実回転トルクを測定する際の手順について説明する。図1に示すように、測定部材Aの上端部に設けた装着部3を駆動装置Bに装着し、該駆動装置Bを上昇させる。次に、測定部材Aを支持体Cに対向させ、下端部に設けた係合部2を鋼管杭部10の突起部11に係合させる。
【0051】
上記の如くして、支持体C、測定部材A、駆動装置Bを連結した後、駆動装置Bを駆動して測定部材Aに所定の方向の実回転トルクを付与する。このとき、埋設機には駆動装置Bの出力が表示され、オペレーターによって監視される。このため、オペレーターは表示値を監視しつつ駆動装置Bを制御する。
【0052】
駆動装置Bから実回転トルクが付与されると、測定装置Aは下端部が固定されていることから、ねじれからなる歪みが生じ、この歪みが歪みゲージ5によって検出され、歪み量に応じた信号が発生する。従って、検出された歪み量に基づいて測定部材Aを構成する鋼管1にこの歪み量を生じさせる必要な回転トルクを計算することで、実回転トルクを測定することが可能である。
【0053】
そして、駆動装置Bから測定部材Aに付与される実回転トルクを変化させつつ、該駆動装置Bの表示と、歪みゲージ5によって検出された測定部材Aの歪み量に基づいて計算した回転トルクとを比較することによって、駆動装置Bの表示誤差を確認して補正することが可能となる。
【0054】
また、測定部材Aを直接鋼管杭の上端部に接続した場合には、現に埋設されつつある鋼管杭に付与されている実回転トルクをリアルタイムで測定することが可能である。このため、個々の鋼管杭に付与されている実回転トルクを管理することが可能となる。
【0055】
次に、上記した実回転トルクの測定方法を実施して実回転トルクを測定する装置の基本的な構成について説明する。図3は歪みゲージ5によって検出した測定部材Aの歪み量に基づいて回転トルクを演算して測定部材Aに付与されている実回転トルクを測定する装置を説明するブロック図である。
【0056】
図3に於いて、31は演算装置であり、歪みゲージ5と接続され、該歪みゲージ5によって検出した測定部材Aの歪み量に応じた信号が入力されたとき、この歪み量に基づいて回転トルクを演算して測定部材Aに付与されている実回転トルクを測定するものである。
【0057】
本実施例では、演算装置31には、歪みゲージ5によって検出した歪み量をε、ポアソン比をν、円周率:π、ねじり断面係数Zp:π(D−d)/16D、としたとき、トルク:Tを演算する式
T=(ε×E×π(D−d ))/((1+ν)×16×D)
が記憶されており、予め前述した鋼管1の外径D、内径d、弾性係数Eが入力されて記憶されている。またポアソン比:ν、円周率:πの値も予め入力されて記憶されている。従って、変数は歪み量:εのみとなり、歪み量:εが入力されると、実回転トルク:Tを演算することが可能である。
【0058】
また演算装置31をワイヤードロジックとして、歪みゲージからアナログ計器までデジタル信号を介さずにアナログ量−アナログ量への変換を実現することも可能である。この場合、歪み量以外の可変パラメーターの操作は可変抵抗器やスイッチ等を用いて行うことが可能である。
【0059】
次に、他の測定装置Dの構成について図4により説明する。
【0060】
図4に於いて、32は駆動装置Bの表示出力表示部であり、駆動装置Bに供給された作動油の圧力から該駆動装置Bの出力を計算して表示すると共に電気的な信号を発生し得るように構成されている。そして発生した電気信号によって表示出力の値に対応する実回転トルクを確認することが可能である。また前記電気信号を駆動装置Bの制御信号として利用することも可能である。また33は、記憶部34、出力部35を含む記録装置であり、36は入力装置である。
【0061】
演算装置31と表示出力表示部32は記憶装置33と接続されており、駆動装置Bによって測定部材Aに付与する実回転トルクを変化させ、このときの表示出力表示部32に表示された表示出力と、このときの測定部材Aの歪み量から演算装置31によって演算された回転トルクと、を対応させて記録装置33で記録している。
【0062】
上記の如き駆動装置Bの表示出力表示部32の表示出力と該表示出力と対応する演算装置31から演算された回転トルクの値は表示出力・回転トルク対応情報として、記録装置33を構成する記憶部34に記憶されている。
【0063】
従って、例えば、工場等の測定現場で特定の埋設機の駆動装置Bに、支持体Cに接続された測定部材Aを装着して作動油の圧力を変化させつつ、各圧力毎の回転トルクを演算すると共に、表示出力と対応する回転トルクの値を表示出力・回転トルク対応情報として記憶部34に記憶させておくことで、記憶部34には特定の埋設機の駆動装置Bの表示出力と回転トルクとの関係が記憶されることになる。
【0064】
上記表示出力・回転トルク対応情報は、駆動装置Bの出力範囲の全域にわたっており、入力装置36によって表示出力表示部32の表示出力の値を入力したとき、前記表示出力・回転トルク対応情報から、この表示出力の値に対応する駆動装置Bから出力される実回転トルクを出力部35に出力することが可能である。
【0065】
上記の如く、駆動装置Bの表示出力表示部32の表示出力と該表示出力と対応する演算装置31から演算された回転トルクの値を、表示出力・回転トルク対応情報として記憶部34に記憶することが可能である。
【0066】
尚、特に限定するものではないが、測定装置Dの出力部35を介して図示しないディスプレイ、プリンター等の出力装置を接続することも可能である。
【0067】
従って、上記の如く構成された測定装置Dを埋設機に搭載して用いた場合、埋設機を操作するオペレーターは駆動装置Bの表示出力表示部32を監視しつつ、必要に応じて現在の表示出力の値を入力装置36から入力することで、出力部35からは入力された表示出力の値に対応する回転トルク情報が出力され、これにより、表示出力表示部32に表示されている表示出力の値に対応する実回転トルクを確認することが可能である。このように、必ずしも鋼管杭に測定装置Aを接続しなくとも、個々の鋼管杭毎に付与された実回転トルクを管理することが可能である。
【0068】
また表示出力表示部32で発生した電気信号を入力信号とすることによって、出力部35からは入力された電気信号に対応する回転トルク情報が出力され、これにより、表示出力表示部32に表示されている表示出力の値に対応する実回転トルクを確認することが可能であり、鋼管杭に付与される実回転トルクを管理することが可能である。
【0069】
次に、測定装置の変形例にである測定装置Eの構成について図5により説明する。尚、測定装置Eを構成する表示出力表示部32、記録部33を構成する演算部31、記憶部34、出力部35、入力装置36は前述の測定装置Dと同じであるため、説明を省略する。
【0070】
図5に示す測定装置Eは、記憶部34に、駆動装置Bの表示出力表示部32の表示出力と歪みゲージ5から出力された歪み量とを対応させた表示出力・歪み量対応情報を記憶されている点で、前述の測定装置Dと異なっている。
【0071】
すなわち、測定装置Eは、表示出力表示部32で表示した駆動装置Bの表示出力と、このとき駆動装置Bから付与された実回転トルクに応じた歪みゲージ5から出力された歪み量と、を対応させた表示出力・歪み量対応情報を記憶部34に記憶させておき、入力装置36によって表示出力表示部32の表示出力の値を入力したとき、出力部35からは入力された表示出力の値に対応する回転トルク情報が出力され、これにより、表示出力表示部32に表示されている表示出力の値に対応する実回転トルクを確認することが可能である。
【0072】
尚、記録装置33では、歪みゲージ5によって検出した測定部材Aの歪み量に応じた信号が入力されたとき、この歪み量に基づいて演算装置31によって回転トルクを演算している。
【0073】
従って、上記測定装置Eであっても、埋設機に搭載して用いた場合、埋設機を操作するオペレーターが駆動装置Bの表示出力表示部32を監視しつつ、必要に応じて現在の表示出力の値を入力装置36から入力することで、出力部35から表示出力表示部32に表示されている表示出力の値に対応する実回転トルクを確認することが可能であり、鋼管杭に付与される実回転トルクを管理することが可能である。また表示出力表示部32で発生した電気信号を入力信号とすることによって、出力部35からは入力された電気信号に対応する回転トルク情報が出力され、これにより、表示出力表示部32に表示されている表示出力の値に対応する実回転トルクを確認することが可能であり、鋼管杭に付与される実回転トルクを管理することが可能である。
【0074】
上記測定装置D、Eは、出力部35から出力された回転トルク情報を駆動装置Bから出力されている実回転トルクとして表示する表示部(図示せず)を有する。この表示部の構成は特に限定するものではなく、アナログ式或いはデジタル式のメーター、ディスプレイ等を用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る実回転トルクの測定方法は、簡単な設備で埋設機の駆動装置Bから測定部材Aに付与されている実回転トルクを測定することが可能であり、鋼管杭の埋設現場で、或いは工場等で利用して有利である。
【0076】
また本発明に係る測定装置は、埋設機の駆動装置Bから出力されている回転トルクを測定する際に有利であり、且つ埋設機に搭載することによって、埋設しようとする鋼管杭に測定部材Aを接続することなく、表示出力表示部32の表示出力を入力することで、鋼管杭に付与されている実回転トルクを確認することが可能となり有利である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】測定方法と測定部材の構成を説明する図である。
【図2】歪みゲージの取付方を説明する図である。
【図3】基本的な測定装置の構成を説明する図である。
【図4】他の測定装置の構成を説明する図である。
【図5】他の測定装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0078】
A 測定部材
B 駆動装置
C 支持体
D、E 測定装置
1 鋼管
1a 下端部
1b 上端部
1c 胴部
2 係合部
2a キャップ部
2b フック部
3 装着部
5 歪みゲージ
10 鋼管杭部
11 突起部
13 固定部
20 係合部
20a キャップ部
20b フック部
31 演算装置
32 表示出力表示部
33 記録装置
34 記憶部
35 出力部
36 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭を回転させて埋設する埋設機の実回転トルクを測定する方法であって、胴部に歪みゲージを取り付けた測定部材を有し、前記測定部材の下端を固定すると共に起立させ、起立させた測定部材の上端に埋設機の鋼管杭を回転させる駆動装置を装着し、前記駆動装置を駆動して測定部材に回転トルクを付与しつつ、歪みゲージによって検出した測定部材の歪み量から該測定部材に付与されている回転トルクを測定することを特徴とする埋設機の実回転トルクの測定方法。
【請求項2】
前記駆動装置の表示出力と、前記測定部材の歪み量から測定された測定部材に付与されている回転トルクと、を対応させつつ測定することを特徴とする請求項1に記載した埋設機の実回転トルクの測定方法。
【請求項3】
鋼管杭を回転させて埋設する埋設機の実回転トルクを測定する際に用いる測定部材であって、鋼管からなり、下端部に地中に埋設された回転トルク支持用の固定部材に係合する係合部が形成され、上端部に測定すべき埋設機の鋼管杭の駆動装置を装着する装着部が形成され、下端部と上端部の間の胴部に歪みゲージが取り付けられ、たことを特徴とする測定部材。
【請求項4】
鋼管杭を回転させて埋設する埋設機の実回転トルクを測定する装置であって、鋼管からなり下端部に地中に埋設された回転トルク支持用の固定部材に係合する係合部が形成され上端部に測定すべき埋設機の鋼管杭の駆動装置を装着する装着部が形成され下端部と上端部の間の胴部に歪みゲージが取り付けられた測定部材と、前記測定部材の胴部に取り付けられた歪みゲージに接続され該歪みゲージから出力された歪み量に基づいて測定部材に付与されている回転トルクを演算する演算装置と、を有することを特徴とする埋設機の実回転トルクの測定装置。
【請求項5】
前記駆動装置の表示出力と前記演算装置によって演算された回転トルクとを対応させて記録する記録装置を有することを特徴とする請求項4に記載した埋設機の実回転トルクの測定装置。
【請求項6】
予め前記駆動装置の表示出力に対応する前記演算装置で演算された測定部材に付与された回転トルクを表示出力・回転トルク対応情報として記憶させた記憶部と、駆動装置の表示出力を入力したとき、前記表示出力・回転トルク対応情報を用いて入力された表示出力に対応する回転トルク情報を出力する出力部と、を有することを特徴とする請求項5に記載した埋設機の実回転トルクの測定装置。
【請求項7】
前記駆動装置の表示出力と前記測定部材に取り付けた歪みゲージから出力された歪み量とを対応させて記録する記録装置を有することを特徴とする請求項4に記載した埋設機の実回転トルクの測定装置。
【請求項8】
予め前記駆動装置の表示出力に対応する前記測定部材に取り付けた歪みゲージから出力された歪み量を表示出力・歪み量対応情報として記憶させた記憶部と、駆動装置の表示出力を入力したとき、前記表示出力・歪み量対応情報を用いて入力された表示出力に対応する回転トルク情報を出力する出力部と、を有することを特徴とする請求項7に記載した埋設機の実回転トルクの測定装置。
【請求項9】
前記出力部から出力された前記回転トルク情報を前記駆動装置から出力されている実回転トルクとして表示する表示部、を有することを特徴とする請求項6又は8に記載した埋設機の実回転トルクの測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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