埋設物浮上防止構造
【課題】地震時における液状化現象時の過剰間隙水圧の上昇を防ぎ、かつ地下埋設物の外部の土砂を地下埋設物の内部に流入させない埋設物浮上防止構造を提供すること。
【解決手段】地中11に埋設されたマンホール本体2の壁部には、地中側11とマンホール本体2の内部を連通する孔12,13を形成し、孔12,13に地中11側からマンホール本体2内への水の流れを許容し、マンホール本体2内から地中11側への水の流れを遮断する弾性部材で作動する逆止弁14を配設した。
【解決手段】地中11に埋設されたマンホール本体2の壁部には、地中側11とマンホール本体2の内部を連通する孔12,13を形成し、孔12,13に地中11側からマンホール本体2内への水の流れを許容し、マンホール本体2内から地中11側への水の流れを遮断する弾性部材で作動する逆止弁14を配設した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道用のマンホールや共同溝などの地下埋設物が地震時における地盤の液状化現象によって、マンホールや共同溝などの浮上がりを防止する埋設物浮上防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震時には地盤の液状化現象が生じることがあり、マンホールなどの地下埋設物が、液状化現象によって浮上する現象が生じている。浮上の原因は、マンホールの見かけの比重が小さいため、液状化の程度に応じて浮き上がるからである。マンホールが浮上すると、下水管路の流水勾配が損われるばかりでなく、浮上が甚だしい場合には管路の機能を失ってしまうという問題があった。
【0003】
従来、マンホールなどの浮上を防止するため、マンホールの底部や側部を砕石などの材料で囲む方法や、地盤にドレーンを施して、過剰間隙水圧の上昇を抑制する方法がある。
特開平8−170349号公報(以下、特許文献1とする)に開示された技術では、マンホールの周壁に外水をマンホール内に流入させる通水孔を設け、マンホールの周囲の埋め戻し土砂を充填する位置の周囲に、マンホールと埋め戻し土砂を囲むようにしてジオテキスタイルを埋設している。そして、ジオテキスタイルとマンホールとの間に、埋め戻し土砂を十分に締め固めるようにしている。
こうした技術は、埋め戻し土砂に含まれる地盤中の水が通水孔を通ってマンホール内に流入するため地盤が締め固まる一方、地震時の振動によって地盤の間隙水圧の上昇があっても、マンホールの周囲は液状化が生じ難く、また液状化が生じても、ジオテキスタイルに囲まれた土砂は流動が阻止され、これらの相互作用によって、マンホールの浮き上がりが防止される。
【特許文献1】特開平8−170349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の工法では、大規模の工事を必要とし、費用が高額になり、既設のマンホールに対しては適用できなかった。また、マンホールの壁部に孔を設ける方法では、液状化現象の発生時にマンホール内部に外部からの砂が流入する問題点がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、マンホールなどの地下埋設物の底壁部又は側面に、埋設物の内部(あるいは外部)からの小規模の工事で取付けることができ、また製品の製造時に組込むことができる構造であって、液状化現象時の地中における過剰間隙水圧の上昇を防ぎ、かつ地下埋設物の外部にある土砂を地下埋設物の内部に流入させることのない埋設物浮上防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、地中に埋設された、または地中に埋設される前のマンホール(以下、これらを単にマンホールという)の壁部に地中側とマンホール内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側からマンホール内への水の流れを許容し、マンホール内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、前記逆止弁の弁体に弾性部材を設け、弾性部材が地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにした。
また、本発明はマンホールの底壁部に地中側とマンホール内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側からマンホール内への水の流れを許容し、マンホール内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、前記逆止弁の弁体が流通路に載置された重量物であって、弾性部材が地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにした。
さらに、本発明はマンホール、共同溝などの埋設物の壁部に地中側とマンホール内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側からマンホール内への水の流れを許容し、マンホール内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、前記逆止弁の弁体が流通路を閉塞する栓状物あって、前記逆止弁と前記弁体とが地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにした。
上記発明は、前記逆止弁の地中側に土砂の流入を遮断するフィルターを設けることができ、また、前記逆止弁を着脱可能にする保持部材を前記壁部に設けることができる。
本発明は、上記目的を達成するために、地中に埋設されたマンホールの壁部に水に含まれた土砂の侵入を抑止するフィルター部を設け、該フィルター部に排水管の一端を接続し、該排水管の他端をマンホールの壁部に通し、マンホール内に向けて配設するとともに前記排水管の他端側先端部を地下水面位置よりも高く配置するようにした。
該発明は、前記排水管の全体をマンホールの前記底壁部から側壁部にわたって埋設することができ、また、前記排水管の一端側がマンホールの底壁部を貫通し、前記排水管の他端側がマンホールの内壁部に沿って配設することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、地中に埋設された、又は埋設されるべきマンホール、共同溝などの埋設物の壁部に地中側と埋設物内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側から埋設物内への水の流れを許容し、埋設物内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、前記逆止弁の弁体に弾性部材を設け、前記逆止弁と前記弁体とが地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにしたので、地震で液状化現象が生じても、逆止弁が作動してマンホールの浮力を小さくしマンホールの浮上を抑制することができる。また、逆止弁にフィルターを配設することで、粒子の大きい土砂をマンホール内に流入させることを防止する。
また、本発明によれば、マンホール、共同溝など埋設物の壁部に水に含まれた土砂の侵入を抑止するフィルター部を設け、該フィルター部に排水管の一端を接続し、該排水管の他端をマンホールの壁部に通し、マンホール内に向けて配設するとともに前記排水管の他端側先端部を地下水面位置よりも高く配置するようにしたので、地震で液状化現象が生じても、配管を介して液状化水がマンホール内に流入しマンホールの浮力を小さくし、マンホールの浮上を抑制することができる。また、逆止弁にフィルター配設することで、粒子の大きい土砂をマンホール内に流入させることを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の埋設物浮上防止構造の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、地中に埋設されるマンホール1を示す。
マンホール1のコンクリート部分であるマンホール本体2は、例えば、円筒状のプレキャストコンクリートブロックを積み上げて構成する。マンホール本体2は底部に底版3を設け、底版3上にインバートブロック4を設け、インバート4aの両端部には、下水道管5(図10参照)を接続し、排水を流通させる。
【0008】
マンホール本体2は、円筒状の胴部ブロック6を複数(図面では1つ)積み上げ、その上に、片側をテーパー状に傾斜させた筒状の上部ブロック7を積み上げている。上部ブロック7の上部にリング状の開口部ブロック8を載置し、この開口部ブロック8の上端開口部に上蓋9が嵌められる。マンホール本体2は、胴部ブロック6、上部ブロック7及び開口部ブロック8により、側(周)壁2aが形成され、上蓋9の上面が地表面10と同じ高さになるように地中11に埋設される。
【0009】
胴部ブロック6には、マンホール本体2内と地中11とを連通する複数の横孔12が形成されている。マンホール本体2の底版3及びインバートブロック4を貫通し、マンホール本体2と地中11とを連通する複数の縦孔13が形成されている。これらの孔12,13は、地盤の状況に応じて、任意の位置に任意の数が設けられる。その形状は、円断面としたが、角形など形状はこだわらない。
これらの横孔12及び縦孔13には、地中11からマンホール本体2内に水の流通を許容し、マンホール本体2内から地中11への水の流通を遮断する逆止弁14(図2〜図9参照)が設置される。孔12,13の位置、すなわち逆止弁14を配置する場所は、側壁2aにあっては、上下に整列させて等角度間隔に配置してもよいし、例えば、下側に逆止弁14を多く配置し、上側を少なく配置してもよい。また、マンホール本体2の底部では、インバート4aの両側に沿って、1列又は2列以上に配置してもよい。
【0010】
図2〜図4は、そのマンホール本体2に配設される逆止弁14を示す。図2は、逆止弁14のマンホール本体2内に向けて配設される側の平面図であり、図3は断面図であり、図4は地中11に向けて配設される側の逆止弁14の底面図である。
逆止弁14は、横孔12及び縦孔13の内径にほぼ等しい外径を有する円筒状のケース16を設け、ケース16の一端側には、多数の開口17aを有するフィルター17を設けている。開口17aの大きさ、一定以上の粒径の土砂を通さず水を通す大きさと形状にする。逆止弁14の弁構造は、ケース16の他端側に配設される基台19と、弁体20と、弁座21と、バネ22とから構成される。弁体20は、フィルター17に対向して配置され、弁体20の先端周囲と弁座21とが密着して当接ができる。基台19とケース16は固定され、基台19には排水口19aを形成している。
【0011】
基台19と弁体20との間には、バネ22が設けられ、通常時における無負荷状態では、弁体20がバネ22の付勢力によって、弁座21に着座した状態となる。逆止弁14は、フィルター17側から水が浸入し、大きな水圧が弁座21に負荷すると、弁体20がバネ22の付勢力に抗して基台19側に押圧されて、弁体20と弁座21が離間して開弁状態となる。この逆止弁14が開弁すると、地中11から、マンホール本体2内への水が流入する。バネ22のバネ常数は、マンホール本体2の高さや、その土地の土砂中の間隙水の静水圧や地盤環境などにより設定される。
具体的には、マンホール本体2を埋設した状態で、マンホール本体2が通常時に受ける静水圧力では逆止弁14が開状態とならず、地震により地中11が液状化した状態で逆止弁14が開く圧力にバネ常数を設定する。また、マンホール本体2の胴部ブロック6では上側に配置した逆止弁14よりも下側に配置した逆止弁14では、高さの相違により各々の位置で受ける圧力が異なるので、下側に配置した逆止弁14のバネ常数を大きく設定するのが好ましい。
【0012】
逆止弁14のマンホール本体2への組込みは、マンホール本体2の底版3や各ブロック6〜8を製造するときに、逆止弁14を組込むことができる。地中11に埋設されている既存のマンホール本体2については、コンクリートカッタでマンホール本体2の側壁2aなどに横孔12を空けて、逆止弁14を横孔12に配設したあと、モルタルなどで逆止弁14と横孔12のシールや抜け止めを行う。縦孔13についても同じである。
【0013】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
通常時、逆止弁14は、静水圧などの圧力が弁体20に負荷するが、逆止弁14のバネ22の付勢力が大きく、逆止弁14は開弁しない。
地震などで、液状化現象が生じた場合は、マンホール本体2を浮上させる浮力がマンホール本体2にかかり、土砂流による液状化水圧が、マンホール本体2の底版3及び側壁2aに負荷する。このさい、弁体20にかかる水圧がバネ22の付勢力に抗して押圧され、弁体20と弁座21から離れ、逆止弁14が開く。すると、横孔12及び縦孔13がマンホール本体2と地中11側を連通し、地中11側からマンホール本体2へと水が流入する。この際、フィルター17の開口17aが篩いの役割を果たし、粒子の大きい土砂のマンホール本体2への流入を防止する。
逆止弁14が開くことにより、マンホール本体2にかかる浮力は小さくなり、加えてマンホール本体2に流入する水によって、マンホール本体2の見かけの重さが大きくなり、浮力を抑制する力が生じる。よって、マンホール本体2の浮上が防止される。
【0014】
図5〜図8は、逆止弁の変形例を示す。なお、上記実施の形態と同一名称のものについて、同一符号を付す。
逆止弁14のバネ22は、「引っ張り形式」と「圧縮形式」の両者が適用できる。
「引っ張り形式」の構造は次のとおりである。
図5に示すように、逆止弁14のケース16が外筒16aと内筒16bとで構成され、内筒16bの一端側にフィルター17を固定し、内筒16bの他端側開口部に弁座21を形成し、弁座21に弁体20を着座させている。そして、フィルター17と弁体20との間にバネ22を引っ張り状態で取付け、弁体20を弁座21に着座させる方向に弁体20を引き寄せている。フィルター17側から液状化水が浸入して所定以上の水圧が負荷すると、バネ22が、引っ張られ逆止弁14が開弁する。
【0015】
「圧縮形式」の構造は次のとおりである。
図6に示すように、逆止弁14のケース16が外筒16aと内筒16bとで構成され、内筒16bの一端側にフィルター17を固定し、内筒16bが一端開口側に向かうほど先細となるテーパー部を形成し、テーパー部の先端部に弁座21を形成し、弁体20が弁座21に着座するように構成されている。内筒16bの他端側では、蓋28が外筒16a及び内筒16bに固定されている。弁体20には、ケース16の軸方向に延びるシャフト27の一端部を固定し、シャフト27の他端部は蓋28に形成した挿通孔29を貫通して、シャフト27の端部にストッパ材としてのナット30を螺着している。弁体20と蓋28との間にバネ22を圧縮状態で取付け、バネ22が弁体20を弁座21側に付勢させている。フィルター17側から所定以上の水圧が負荷すると、シャフト27が蓋28の挿通孔29を左方に突き抜けるようにして、バネ22が圧縮されて逆止弁14が開弁する。
【0016】
次に、バネを用いない逆止弁14について、「重力式」と「摩擦式」を説明する。
「重力式」の構造は次の通りである。
図7に示す逆止弁14は、マンホール本体2の底部(底版3及びインバートブロック4)に用いるものである。逆止弁14のケース16は、外筒16aと内筒16bとで構成され、内筒16bの一端側にフィルター17を固定し、内筒16bの他端側開口部に弁体20(蓋)を配設する。そして、フィルター17を下側に弁体20を上側に配置する。弁体20は、内筒16bに形成された段部に載置されるが、重量の重いものを使用する。重量の調整は、上述のバネと同じであり、通常の埋設時では弁体20が外れず、液状化時における水圧で弁体20が外れるように形成する。フィルター17側から所定以上の液状化水圧が負荷すると、弁体20が持ち上げられて逆止弁14が開弁する。このように、縦孔13を閉塞する重量物が弁体20となって逆止弁14を形成する。
【0017】
「摩擦式」の構造は次のとおりである。
図8に示す摩擦式の逆止弁14は、マンホール本体2の底部と側壁の両者に使用できる。逆止弁14のケース16は、外筒16aと内筒16bとで構成され、内筒16bの一端側にフィルター17を固定し、内筒16bの他端側開口部に弁体(栓)20を配設する。弁体20の周囲と、内筒16bの拡径部との接触部21aには摩擦が発生するようにする。摩擦力の調整は、上述のバネ22と同じであり、通常の埋設時では弁体20が外れず、液状化時における水圧で弁体20が外れるように形成する。フィルター17側から所定以上の水圧が負荷すると、弁体20が押圧されて逆止弁14が開弁する。すなわち、栓状物が横孔12又は縦孔13を閉塞する弁体20となって、逆止弁14を形成する。
【0018】
マンホール本体2は長期にわたって使用されるものであるため、逆止弁14は一定期間経過した場合に、交換する必要が生じる。そのため、以下のように、逆止弁14をマンホール本体2から着脱できるようにするとよい。着脱方式については、「ボルト連結式」と「ネジ込み式」などがある。
「ボルト連結式」の構造は次のとおりである。
図5に示すように、逆止弁14のケース16を外筒16aと内筒16bとに分割し、フィルター17及び弁体20などの逆止弁としての機能部は、全て内筒16b側に取付ける。外筒16aと内筒16bとは、密着して脱着できるように形成する。そして、外筒16aと内筒16bの弁体20がある側の端部にネジ孔(図示せず)を穿設し、固定プレート33とボルト34によって、外筒16aと内筒16bを連結させる。マンホール本体2には、外筒16aのみ固定させ、交換時にはボルト34を外すことにより、マンホール本体2から内筒16bを抜き出して交換する。なお、図2〜図4、図6〜図8に示す逆止弁14も、ボルト連結式にして内筒16bを外すことができる。
【0019】
「ねじ込み式」の構造は次のとおりである。
図9に示すように、逆止弁14のケース16を外筒16aと内筒16bとに分割し、外筒16aの内周面には雌ネジ31を形成し、内筒16bの外周面には雄ネジ32を形成している。フィルター17及び弁体20などの逆止弁としての機能部は内筒16b側に取付ける。マンホール本体2には、外筒16aのみ固定させ、交換時には内筒16bを外すことにより、内筒16bを抜き出す。なお、図2〜図4、図5〜図8に示す逆止弁14も、ネジ込み式にしてマンホール本体2から内筒16bを外すことができる。
【0020】
次に、埋設物浮上防止構造の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
上記第1の実施の形態では、逆止弁14を用いてマンホール本体2の浮き上がりを抑制するようにしたが、本実施の形態では、配管を用いてマンホール本体2の浮き上がりを抑制する。
図10に示すマンホール本体2の構造は、図1に示すマンホール本体2と比べて、横孔12及び縦孔13を形成しないことが異なり、底版3,インバートブロック4,胴部ブロック6、上部ブロック7、開口部ブロック8は同じ構造であるので、その説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0021】
マンホール本体2の底版3には、底版3を貫通する底面削孔35を形成し、底版3からインバートブロック4にわたって、空所を設け空所にスクリーン部41を配設する。スクリーン部41はフィルターの役割を果たし、濾過材を充填し、スクリーン部41では、水を通過させ粒子の大きな土砂の流通を阻止できるようにする。スクリーン部41には、一端がスクリーン部41に接続され、インバートブロック4を貫通してマンホール本体2の内部で、上方へ延びる複数本の配管42を配設している。配管42はマンホール本体2の内壁に沿って配置し、かつ内壁にクランプさせ、配管42の先端(上端)開口部42aは、そのマンホール本体2を埋設した場所の地下水面43よりも高い位置に配置する。配管42は、金属製のパイプや樹脂製のパイプを使用できる。
マンホール本体2には、インバート4aの上流側及び下流側水路に沿って下水道管5が配設される。
【0022】
本実施の形態のマンホール浮上防止構造は、逆止弁がないので、地下水は底面削孔35からスクリーン部41に入り込む。この際、粒子の大きな土砂などはスクリーン部41で配管42への流入が阻止される。
通常時、配管42の開口部42aが地下水面43の位置よりも高い位置にあるので、配管42から地下水が溢れることはない。この際、透明の配管42を使用すれば、地下水位を見れるので、配管42に目盛りを表示してもよい。
【0023】
地震などで、液状化現象が生じる場合は、液状化による土砂流による水圧が、マンホール本体2の底版3に負荷してマンホール本体2を上方に押し上げようとする。この際、スクリーン部41が篩いの役割を果たし、粒子の大きい土砂の配管42への流入を防止する。配管42へ流入した水は、先端の開口部42aから、マンホール本体2内に流出する。
スクリーン部41から配管42へ水を流出させることにより、マンホール本体2にかかる浮力は小さくなり、加えてマンホール本体2に流入する水によって、マンホール本体2の見かけの重さが大きくなり、浮力を抑制する力が生じる。よって、マンホール本体2の浮上を防止できる。
【0024】
図11に示すマンホール1は、図10に示す埋設物浮上防止構造の変形例であり、マンホール本体2の基本的構造は、図1に示すマンホール本体2と同じである。
マンホール本体2の底版3には、空所を設け空所にスクリーン部41を配設し、スクリーン部41にはフィルター材を充填する。スクリーン部41に配管42の一端を接続し、配管42の中間部はマンホール本体2の側壁2a内に配設し、他端側の開口部42aは、マンホール本体2内に向けて配設される。開口部42aは、そのマンホール本体2を埋設した場所の地下水面43よりも高い位置に配置する。
このような構造でも、図10に示すマンホール本体2と同様に、浮き上がりを防止できる。
この図11に示すマンホール本体2は、マンホール本体2の製造時に、配管42及びスクリーン部41を組込むことができる。図10に示すマンホール本体2は、既に埋設されているマンホール本体2に適用が可能であるが、製造時に予め組込むこともできる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明の技術的思想に基づき、勿論、本発明は、種々の変形が可能である。
例えば、上記第1の実施の形態では、逆止弁14を用い、第2の実施の形態では、配管42を用いてマンホール本体の浮上を防止したが、両者を併用してもよい。
第1の実施の形態では、コイルバネを用いて説明したが、コイルバネに代えて板バネなどの他の弾性部材を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態における逆止弁方式を採用したマンホール本体の断面図である。
【図2】図1のマンホール本体に組込まれる逆止弁の平面図である。
【図3】図2のX−X線方向の断面図である。
【図4】図1のマンホール本体に組込まれる逆止弁の底面図である。
【図5】図2〜図4の逆止弁の変形例(バネ引っ張り式及びボルト連結式)であり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図6】図2の逆止弁の変形例(バネ圧縮式)あり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図7】図2の逆止弁の変形例(重力式)であり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図8】図2の逆止弁の変形例(摩擦式)であり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図9】図2の逆止弁の変形例(ネジ込み式)であり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における配管方式を採用したマンホール本体の断面図である。
【図11】本発明における第2の実施の形態の変形例によるマンホール本体の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 マンホール
2 マンホール本体
3 底版
4 インバートブロック
6 胴部ブロック
7 上部ブロック
8 開口部ブロック
11 地中
12 横孔
13 縦孔
14 逆止弁
16a 外筒
16b 内筒
17 フィルター
21 弁座
26 内筒
41 スクリーン部
42 配管
42a 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水道用のマンホールや共同溝などの地下埋設物が地震時における地盤の液状化現象によって、マンホールや共同溝などの浮上がりを防止する埋設物浮上防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地震時には地盤の液状化現象が生じることがあり、マンホールなどの地下埋設物が、液状化現象によって浮上する現象が生じている。浮上の原因は、マンホールの見かけの比重が小さいため、液状化の程度に応じて浮き上がるからである。マンホールが浮上すると、下水管路の流水勾配が損われるばかりでなく、浮上が甚だしい場合には管路の機能を失ってしまうという問題があった。
【0003】
従来、マンホールなどの浮上を防止するため、マンホールの底部や側部を砕石などの材料で囲む方法や、地盤にドレーンを施して、過剰間隙水圧の上昇を抑制する方法がある。
特開平8−170349号公報(以下、特許文献1とする)に開示された技術では、マンホールの周壁に外水をマンホール内に流入させる通水孔を設け、マンホールの周囲の埋め戻し土砂を充填する位置の周囲に、マンホールと埋め戻し土砂を囲むようにしてジオテキスタイルを埋設している。そして、ジオテキスタイルとマンホールとの間に、埋め戻し土砂を十分に締め固めるようにしている。
こうした技術は、埋め戻し土砂に含まれる地盤中の水が通水孔を通ってマンホール内に流入するため地盤が締め固まる一方、地震時の振動によって地盤の間隙水圧の上昇があっても、マンホールの周囲は液状化が生じ難く、また液状化が生じても、ジオテキスタイルに囲まれた土砂は流動が阻止され、これらの相互作用によって、マンホールの浮き上がりが防止される。
【特許文献1】特開平8−170349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の工法では、大規模の工事を必要とし、費用が高額になり、既設のマンホールに対しては適用できなかった。また、マンホールの壁部に孔を設ける方法では、液状化現象の発生時にマンホール内部に外部からの砂が流入する問題点がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、マンホールなどの地下埋設物の底壁部又は側面に、埋設物の内部(あるいは外部)からの小規模の工事で取付けることができ、また製品の製造時に組込むことができる構造であって、液状化現象時の地中における過剰間隙水圧の上昇を防ぎ、かつ地下埋設物の外部にある土砂を地下埋設物の内部に流入させることのない埋設物浮上防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、地中に埋設された、または地中に埋設される前のマンホール(以下、これらを単にマンホールという)の壁部に地中側とマンホール内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側からマンホール内への水の流れを許容し、マンホール内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、前記逆止弁の弁体に弾性部材を設け、弾性部材が地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにした。
また、本発明はマンホールの底壁部に地中側とマンホール内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側からマンホール内への水の流れを許容し、マンホール内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、前記逆止弁の弁体が流通路に載置された重量物であって、弾性部材が地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにした。
さらに、本発明はマンホール、共同溝などの埋設物の壁部に地中側とマンホール内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側からマンホール内への水の流れを許容し、マンホール内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、前記逆止弁の弁体が流通路を閉塞する栓状物あって、前記逆止弁と前記弁体とが地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにした。
上記発明は、前記逆止弁の地中側に土砂の流入を遮断するフィルターを設けることができ、また、前記逆止弁を着脱可能にする保持部材を前記壁部に設けることができる。
本発明は、上記目的を達成するために、地中に埋設されたマンホールの壁部に水に含まれた土砂の侵入を抑止するフィルター部を設け、該フィルター部に排水管の一端を接続し、該排水管の他端をマンホールの壁部に通し、マンホール内に向けて配設するとともに前記排水管の他端側先端部を地下水面位置よりも高く配置するようにした。
該発明は、前記排水管の全体をマンホールの前記底壁部から側壁部にわたって埋設することができ、また、前記排水管の一端側がマンホールの底壁部を貫通し、前記排水管の他端側がマンホールの内壁部に沿って配設することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、地中に埋設された、又は埋設されるべきマンホール、共同溝などの埋設物の壁部に地中側と埋設物内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側から埋設物内への水の流れを許容し、埋設物内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、前記逆止弁の弁体に弾性部材を設け、前記逆止弁と前記弁体とが地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにしたので、地震で液状化現象が生じても、逆止弁が作動してマンホールの浮力を小さくしマンホールの浮上を抑制することができる。また、逆止弁にフィルターを配設することで、粒子の大きい土砂をマンホール内に流入させることを防止する。
また、本発明によれば、マンホール、共同溝など埋設物の壁部に水に含まれた土砂の侵入を抑止するフィルター部を設け、該フィルター部に排水管の一端を接続し、該排水管の他端をマンホールの壁部に通し、マンホール内に向けて配設するとともに前記排水管の他端側先端部を地下水面位置よりも高く配置するようにしたので、地震で液状化現象が生じても、配管を介して液状化水がマンホール内に流入しマンホールの浮力を小さくし、マンホールの浮上を抑制することができる。また、逆止弁にフィルター配設することで、粒子の大きい土砂をマンホール内に流入させることを防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の埋設物浮上防止構造の第1の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、地中に埋設されるマンホール1を示す。
マンホール1のコンクリート部分であるマンホール本体2は、例えば、円筒状のプレキャストコンクリートブロックを積み上げて構成する。マンホール本体2は底部に底版3を設け、底版3上にインバートブロック4を設け、インバート4aの両端部には、下水道管5(図10参照)を接続し、排水を流通させる。
【0008】
マンホール本体2は、円筒状の胴部ブロック6を複数(図面では1つ)積み上げ、その上に、片側をテーパー状に傾斜させた筒状の上部ブロック7を積み上げている。上部ブロック7の上部にリング状の開口部ブロック8を載置し、この開口部ブロック8の上端開口部に上蓋9が嵌められる。マンホール本体2は、胴部ブロック6、上部ブロック7及び開口部ブロック8により、側(周)壁2aが形成され、上蓋9の上面が地表面10と同じ高さになるように地中11に埋設される。
【0009】
胴部ブロック6には、マンホール本体2内と地中11とを連通する複数の横孔12が形成されている。マンホール本体2の底版3及びインバートブロック4を貫通し、マンホール本体2と地中11とを連通する複数の縦孔13が形成されている。これらの孔12,13は、地盤の状況に応じて、任意の位置に任意の数が設けられる。その形状は、円断面としたが、角形など形状はこだわらない。
これらの横孔12及び縦孔13には、地中11からマンホール本体2内に水の流通を許容し、マンホール本体2内から地中11への水の流通を遮断する逆止弁14(図2〜図9参照)が設置される。孔12,13の位置、すなわち逆止弁14を配置する場所は、側壁2aにあっては、上下に整列させて等角度間隔に配置してもよいし、例えば、下側に逆止弁14を多く配置し、上側を少なく配置してもよい。また、マンホール本体2の底部では、インバート4aの両側に沿って、1列又は2列以上に配置してもよい。
【0010】
図2〜図4は、そのマンホール本体2に配設される逆止弁14を示す。図2は、逆止弁14のマンホール本体2内に向けて配設される側の平面図であり、図3は断面図であり、図4は地中11に向けて配設される側の逆止弁14の底面図である。
逆止弁14は、横孔12及び縦孔13の内径にほぼ等しい外径を有する円筒状のケース16を設け、ケース16の一端側には、多数の開口17aを有するフィルター17を設けている。開口17aの大きさ、一定以上の粒径の土砂を通さず水を通す大きさと形状にする。逆止弁14の弁構造は、ケース16の他端側に配設される基台19と、弁体20と、弁座21と、バネ22とから構成される。弁体20は、フィルター17に対向して配置され、弁体20の先端周囲と弁座21とが密着して当接ができる。基台19とケース16は固定され、基台19には排水口19aを形成している。
【0011】
基台19と弁体20との間には、バネ22が設けられ、通常時における無負荷状態では、弁体20がバネ22の付勢力によって、弁座21に着座した状態となる。逆止弁14は、フィルター17側から水が浸入し、大きな水圧が弁座21に負荷すると、弁体20がバネ22の付勢力に抗して基台19側に押圧されて、弁体20と弁座21が離間して開弁状態となる。この逆止弁14が開弁すると、地中11から、マンホール本体2内への水が流入する。バネ22のバネ常数は、マンホール本体2の高さや、その土地の土砂中の間隙水の静水圧や地盤環境などにより設定される。
具体的には、マンホール本体2を埋設した状態で、マンホール本体2が通常時に受ける静水圧力では逆止弁14が開状態とならず、地震により地中11が液状化した状態で逆止弁14が開く圧力にバネ常数を設定する。また、マンホール本体2の胴部ブロック6では上側に配置した逆止弁14よりも下側に配置した逆止弁14では、高さの相違により各々の位置で受ける圧力が異なるので、下側に配置した逆止弁14のバネ常数を大きく設定するのが好ましい。
【0012】
逆止弁14のマンホール本体2への組込みは、マンホール本体2の底版3や各ブロック6〜8を製造するときに、逆止弁14を組込むことができる。地中11に埋設されている既存のマンホール本体2については、コンクリートカッタでマンホール本体2の側壁2aなどに横孔12を空けて、逆止弁14を横孔12に配設したあと、モルタルなどで逆止弁14と横孔12のシールや抜け止めを行う。縦孔13についても同じである。
【0013】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
通常時、逆止弁14は、静水圧などの圧力が弁体20に負荷するが、逆止弁14のバネ22の付勢力が大きく、逆止弁14は開弁しない。
地震などで、液状化現象が生じた場合は、マンホール本体2を浮上させる浮力がマンホール本体2にかかり、土砂流による液状化水圧が、マンホール本体2の底版3及び側壁2aに負荷する。このさい、弁体20にかかる水圧がバネ22の付勢力に抗して押圧され、弁体20と弁座21から離れ、逆止弁14が開く。すると、横孔12及び縦孔13がマンホール本体2と地中11側を連通し、地中11側からマンホール本体2へと水が流入する。この際、フィルター17の開口17aが篩いの役割を果たし、粒子の大きい土砂のマンホール本体2への流入を防止する。
逆止弁14が開くことにより、マンホール本体2にかかる浮力は小さくなり、加えてマンホール本体2に流入する水によって、マンホール本体2の見かけの重さが大きくなり、浮力を抑制する力が生じる。よって、マンホール本体2の浮上が防止される。
【0014】
図5〜図8は、逆止弁の変形例を示す。なお、上記実施の形態と同一名称のものについて、同一符号を付す。
逆止弁14のバネ22は、「引っ張り形式」と「圧縮形式」の両者が適用できる。
「引っ張り形式」の構造は次のとおりである。
図5に示すように、逆止弁14のケース16が外筒16aと内筒16bとで構成され、内筒16bの一端側にフィルター17を固定し、内筒16bの他端側開口部に弁座21を形成し、弁座21に弁体20を着座させている。そして、フィルター17と弁体20との間にバネ22を引っ張り状態で取付け、弁体20を弁座21に着座させる方向に弁体20を引き寄せている。フィルター17側から液状化水が浸入して所定以上の水圧が負荷すると、バネ22が、引っ張られ逆止弁14が開弁する。
【0015】
「圧縮形式」の構造は次のとおりである。
図6に示すように、逆止弁14のケース16が外筒16aと内筒16bとで構成され、内筒16bの一端側にフィルター17を固定し、内筒16bが一端開口側に向かうほど先細となるテーパー部を形成し、テーパー部の先端部に弁座21を形成し、弁体20が弁座21に着座するように構成されている。内筒16bの他端側では、蓋28が外筒16a及び内筒16bに固定されている。弁体20には、ケース16の軸方向に延びるシャフト27の一端部を固定し、シャフト27の他端部は蓋28に形成した挿通孔29を貫通して、シャフト27の端部にストッパ材としてのナット30を螺着している。弁体20と蓋28との間にバネ22を圧縮状態で取付け、バネ22が弁体20を弁座21側に付勢させている。フィルター17側から所定以上の水圧が負荷すると、シャフト27が蓋28の挿通孔29を左方に突き抜けるようにして、バネ22が圧縮されて逆止弁14が開弁する。
【0016】
次に、バネを用いない逆止弁14について、「重力式」と「摩擦式」を説明する。
「重力式」の構造は次の通りである。
図7に示す逆止弁14は、マンホール本体2の底部(底版3及びインバートブロック4)に用いるものである。逆止弁14のケース16は、外筒16aと内筒16bとで構成され、内筒16bの一端側にフィルター17を固定し、内筒16bの他端側開口部に弁体20(蓋)を配設する。そして、フィルター17を下側に弁体20を上側に配置する。弁体20は、内筒16bに形成された段部に載置されるが、重量の重いものを使用する。重量の調整は、上述のバネと同じであり、通常の埋設時では弁体20が外れず、液状化時における水圧で弁体20が外れるように形成する。フィルター17側から所定以上の液状化水圧が負荷すると、弁体20が持ち上げられて逆止弁14が開弁する。このように、縦孔13を閉塞する重量物が弁体20となって逆止弁14を形成する。
【0017】
「摩擦式」の構造は次のとおりである。
図8に示す摩擦式の逆止弁14は、マンホール本体2の底部と側壁の両者に使用できる。逆止弁14のケース16は、外筒16aと内筒16bとで構成され、内筒16bの一端側にフィルター17を固定し、内筒16bの他端側開口部に弁体(栓)20を配設する。弁体20の周囲と、内筒16bの拡径部との接触部21aには摩擦が発生するようにする。摩擦力の調整は、上述のバネ22と同じであり、通常の埋設時では弁体20が外れず、液状化時における水圧で弁体20が外れるように形成する。フィルター17側から所定以上の水圧が負荷すると、弁体20が押圧されて逆止弁14が開弁する。すなわち、栓状物が横孔12又は縦孔13を閉塞する弁体20となって、逆止弁14を形成する。
【0018】
マンホール本体2は長期にわたって使用されるものであるため、逆止弁14は一定期間経過した場合に、交換する必要が生じる。そのため、以下のように、逆止弁14をマンホール本体2から着脱できるようにするとよい。着脱方式については、「ボルト連結式」と「ネジ込み式」などがある。
「ボルト連結式」の構造は次のとおりである。
図5に示すように、逆止弁14のケース16を外筒16aと内筒16bとに分割し、フィルター17及び弁体20などの逆止弁としての機能部は、全て内筒16b側に取付ける。外筒16aと内筒16bとは、密着して脱着できるように形成する。そして、外筒16aと内筒16bの弁体20がある側の端部にネジ孔(図示せず)を穿設し、固定プレート33とボルト34によって、外筒16aと内筒16bを連結させる。マンホール本体2には、外筒16aのみ固定させ、交換時にはボルト34を外すことにより、マンホール本体2から内筒16bを抜き出して交換する。なお、図2〜図4、図6〜図8に示す逆止弁14も、ボルト連結式にして内筒16bを外すことができる。
【0019】
「ねじ込み式」の構造は次のとおりである。
図9に示すように、逆止弁14のケース16を外筒16aと内筒16bとに分割し、外筒16aの内周面には雌ネジ31を形成し、内筒16bの外周面には雄ネジ32を形成している。フィルター17及び弁体20などの逆止弁としての機能部は内筒16b側に取付ける。マンホール本体2には、外筒16aのみ固定させ、交換時には内筒16bを外すことにより、内筒16bを抜き出す。なお、図2〜図4、図5〜図8に示す逆止弁14も、ネジ込み式にしてマンホール本体2から内筒16bを外すことができる。
【0020】
次に、埋設物浮上防止構造の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
上記第1の実施の形態では、逆止弁14を用いてマンホール本体2の浮き上がりを抑制するようにしたが、本実施の形態では、配管を用いてマンホール本体2の浮き上がりを抑制する。
図10に示すマンホール本体2の構造は、図1に示すマンホール本体2と比べて、横孔12及び縦孔13を形成しないことが異なり、底版3,インバートブロック4,胴部ブロック6、上部ブロック7、開口部ブロック8は同じ構造であるので、その説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0021】
マンホール本体2の底版3には、底版3を貫通する底面削孔35を形成し、底版3からインバートブロック4にわたって、空所を設け空所にスクリーン部41を配設する。スクリーン部41はフィルターの役割を果たし、濾過材を充填し、スクリーン部41では、水を通過させ粒子の大きな土砂の流通を阻止できるようにする。スクリーン部41には、一端がスクリーン部41に接続され、インバートブロック4を貫通してマンホール本体2の内部で、上方へ延びる複数本の配管42を配設している。配管42はマンホール本体2の内壁に沿って配置し、かつ内壁にクランプさせ、配管42の先端(上端)開口部42aは、そのマンホール本体2を埋設した場所の地下水面43よりも高い位置に配置する。配管42は、金属製のパイプや樹脂製のパイプを使用できる。
マンホール本体2には、インバート4aの上流側及び下流側水路に沿って下水道管5が配設される。
【0022】
本実施の形態のマンホール浮上防止構造は、逆止弁がないので、地下水は底面削孔35からスクリーン部41に入り込む。この際、粒子の大きな土砂などはスクリーン部41で配管42への流入が阻止される。
通常時、配管42の開口部42aが地下水面43の位置よりも高い位置にあるので、配管42から地下水が溢れることはない。この際、透明の配管42を使用すれば、地下水位を見れるので、配管42に目盛りを表示してもよい。
【0023】
地震などで、液状化現象が生じる場合は、液状化による土砂流による水圧が、マンホール本体2の底版3に負荷してマンホール本体2を上方に押し上げようとする。この際、スクリーン部41が篩いの役割を果たし、粒子の大きい土砂の配管42への流入を防止する。配管42へ流入した水は、先端の開口部42aから、マンホール本体2内に流出する。
スクリーン部41から配管42へ水を流出させることにより、マンホール本体2にかかる浮力は小さくなり、加えてマンホール本体2に流入する水によって、マンホール本体2の見かけの重さが大きくなり、浮力を抑制する力が生じる。よって、マンホール本体2の浮上を防止できる。
【0024】
図11に示すマンホール1は、図10に示す埋設物浮上防止構造の変形例であり、マンホール本体2の基本的構造は、図1に示すマンホール本体2と同じである。
マンホール本体2の底版3には、空所を設け空所にスクリーン部41を配設し、スクリーン部41にはフィルター材を充填する。スクリーン部41に配管42の一端を接続し、配管42の中間部はマンホール本体2の側壁2a内に配設し、他端側の開口部42aは、マンホール本体2内に向けて配設される。開口部42aは、そのマンホール本体2を埋設した場所の地下水面43よりも高い位置に配置する。
このような構造でも、図10に示すマンホール本体2と同様に、浮き上がりを防止できる。
この図11に示すマンホール本体2は、マンホール本体2の製造時に、配管42及びスクリーン部41を組込むことができる。図10に示すマンホール本体2は、既に埋設されているマンホール本体2に適用が可能であるが、製造時に予め組込むこともできる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明の技術的思想に基づき、勿論、本発明は、種々の変形が可能である。
例えば、上記第1の実施の形態では、逆止弁14を用い、第2の実施の形態では、配管42を用いてマンホール本体の浮上を防止したが、両者を併用してもよい。
第1の実施の形態では、コイルバネを用いて説明したが、コイルバネに代えて板バネなどの他の弾性部材を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態における逆止弁方式を採用したマンホール本体の断面図である。
【図2】図1のマンホール本体に組込まれる逆止弁の平面図である。
【図3】図2のX−X線方向の断面図である。
【図4】図1のマンホール本体に組込まれる逆止弁の底面図である。
【図5】図2〜図4の逆止弁の変形例(バネ引っ張り式及びボルト連結式)であり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図6】図2の逆止弁の変形例(バネ圧縮式)あり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図7】図2の逆止弁の変形例(重力式)であり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図8】図2の逆止弁の変形例(摩擦式)であり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図9】図2の逆止弁の変形例(ネジ込み式)であり、Aは逆止弁の平面図、Bは断面図、Cは底面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における配管方式を採用したマンホール本体の断面図である。
【図11】本発明における第2の実施の形態の変形例によるマンホール本体の断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 マンホール
2 マンホール本体
3 底版
4 インバートブロック
6 胴部ブロック
7 上部ブロック
8 開口部ブロック
11 地中
12 横孔
13 縦孔
14 逆止弁
16a 外筒
16b 内筒
17 フィルター
21 弁座
26 内筒
41 スクリーン部
42 配管
42a 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホール、共同溝などの埋設物の壁部に地中側と埋設物内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側から埋設物内への水の流れを許容し、埋設物内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、
前記逆止弁の弁体に弾性部材を設け、弾性部材が地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにしたことを特徴とする埋設物浮上防止構造。
【請求項2】
マンホール、共同溝などの埋設物の底壁部に地中側と埋設物内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側から埋設物内への水の流れを許容し、埋設物内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、
前記逆止弁の弁体が流通路に載置された重量物であって、前記弁体が地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにしたことを特徴とする埋設物浮上防止構造。
【請求項3】
マンホール、共同溝などの埋設物の壁部に地中側と埋設物内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側から埋設物内への水の流れを許容し、埋設物内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、
前記逆止弁の弁体が流通路を閉塞する栓状物あって、前記逆止弁と前記弁体とが地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにしたことを特徴とする埋設物浮上防止構造。
【請求項4】
前記逆止弁の地中側に土砂の流入を遮断するフィルターを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の埋設物浮上防止構造。
【請求項5】
前記逆止弁を着脱可能にした保持部材を前記壁部に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の埋設物浮上防止構造。
【請求項6】
マンホール、共同溝などの埋設物の壁部に水に含まれた土砂の侵入を抑止するフィルター部を設け、該フィルター部に排水管の一端を接続し、該排水管の他端を埋設物の壁部に通し、埋設物内に向けて配設するとともに前記排水管の他端側先端部を地下水面位置よりも高く配置するようにした埋設物浮上防止構造。
【請求項7】
前記排水管の全体を埋設物の前記底壁部から側壁部にわたって埋設したことを特徴とする請求項6に記載の埋設物防止構造。
【請求項8】
前記排水管の一端側が埋設物の底壁部を貫通し、前記排水管の他端側が埋設物の内壁部に沿って配設するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の埋設物浮上防止構造。
【請求項1】
マンホール、共同溝などの埋設物の壁部に地中側と埋設物内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側から埋設物内への水の流れを許容し、埋設物内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、
前記逆止弁の弁体に弾性部材を設け、弾性部材が地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにしたことを特徴とする埋設物浮上防止構造。
【請求項2】
マンホール、共同溝などの埋設物の底壁部に地中側と埋設物内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側から埋設物内への水の流れを許容し、埋設物内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、
前記逆止弁の弁体が流通路に載置された重量物であって、前記弁体が地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにしたことを特徴とする埋設物浮上防止構造。
【請求項3】
マンホール、共同溝などの埋設物の壁部に地中側と埋設物内とを連通する貫通孔を形成し、該貫通孔に地中側から埋設物内への水の流れを許容し、埋設物内から地中側への水の流れを常時遮断する逆止弁を配設した埋設物浮上防止構造において、
前記逆止弁の弁体が流通路を閉塞する栓状物あって、前記逆止弁と前記弁体とが地中に生じる一定以上の圧力に抗して逆止弁を開弁するようにしたことを特徴とする埋設物浮上防止構造。
【請求項4】
前記逆止弁の地中側に土砂の流入を遮断するフィルターを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の埋設物浮上防止構造。
【請求項5】
前記逆止弁を着脱可能にした保持部材を前記壁部に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の埋設物浮上防止構造。
【請求項6】
マンホール、共同溝などの埋設物の壁部に水に含まれた土砂の侵入を抑止するフィルター部を設け、該フィルター部に排水管の一端を接続し、該排水管の他端を埋設物の壁部に通し、埋設物内に向けて配設するとともに前記排水管の他端側先端部を地下水面位置よりも高く配置するようにした埋設物浮上防止構造。
【請求項7】
前記排水管の全体を埋設物の前記底壁部から側壁部にわたって埋設したことを特徴とする請求項6に記載の埋設物防止構造。
【請求項8】
前記排水管の一端側が埋設物の底壁部を貫通し、前記排水管の他端側が埋設物の内壁部に沿って配設するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の埋設物浮上防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−124966(P2006−124966A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311818(P2004−311818)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(000230973)日本工営株式会社 (39)
【出願人】(000229667)日本ヒューム株式会社 (70)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000220675)東京都下水道サービス株式会社 (98)
【出願人】(000230973)日本工営株式会社 (39)
【出願人】(000229667)日本ヒューム株式会社 (70)
【Fターム(参考)】
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