説明

埋設管改築用掘進機

【課題】高価な材料を用いることなく、少ない消費動力で既設埋設管のコンクリートと鉄筋を効率よく細断することができ、低コストの埋設管改築工事が可能な埋設管改築用掘進機を提供することを目的とする。
【解決手段】埋設管改築用掘進機1において、セミシールドジャッキ7により切羽側に押圧されるセミシールド6と、前記セミシールドの前端部に配置した方向制御ジャッキ5を介して推進方向が制御される外径が既設埋設管31の外径より大きな内径の中空円筒形の外殻2と、前部楔状刃部13aと後部平板状切断刃部13bとを有し前記外殻内に放射状に固定される固定カッター13と、前記固定カッターの後部の前記外殻内に配置される回転カッター14を備え、押圧力を付与された前記前部楔状刃部の楔作用で前記既設埋設管のコンクリート破砕、螺旋筋の切断及び前記既設埋設管外側地山の圧密掘削をし、前記後部平板状切断刃と前記回転カッターとのせん断力により前記既設埋設管の軸筋を切断することを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されて老朽化した既設埋設管を新しい埋設管に改築するための推進掘進機に関し、特に、鉄筋コンクリート製の既設埋設管を構成する補強鉄筋を効率良く細断可能な埋設管改築用掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道等を含む各種用途に供される地中埋設管は、経年変化によって老朽化が進むため、適切な時期に新しい埋設管に交換する必要がある。この場合、既設埋設管が埋設されている個所の地盤を地表面から開削して既設埋設管を掘り出した後に新たな管を吊り込んで埋設し直す方法、あるいは掘設した立坑から水平方向に掘進しつつ既設埋設管を撤去して更新管に交換する方法が用いられる。
【0003】
既設埋設管がコンクリートおよび補強用の鉄筋から成る場合には、コンクリートの破砕と補強用鉄筋の切断を効率よく行う必要がある。そこで、下記特許文献1には、回転駆動される掘進機の先端の面板に超硬チップを埋め込んだ複数のカッターを配置し、既設埋設管のコンクリートと鉄筋を破砕するようにした埋設管改築用掘進機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−203775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている埋設管改築用掘進機は、埋設管のコンクリートと鉄筋を破砕するため、掘進機の先端のカッターヘッドの回転駆動に大きな動力を必要とし、さらに高価な超硬チップを多く埋め込んだカッターを配列する必要があるため掘進機の価格が高価になるという問題と、カッターにより切断した鉄筋がカッターに絡みつき、絡みついた鉄筋を除去するのに多くの時間を必要となるため、掘進効率が悪く、改築工事が高コストになるという問題を有するものであった。
【0006】
本発明は、前記従来技術の持つ課題を解決するもので、高価な材料を用いることなく、少ない消費動力で既設埋設管のコンクリートと鉄筋を効率よく細断することができ、低コストの埋設管改築工事が可能な埋設管改築用掘進機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の埋設管改築用掘進機は、前記課題を解決するために、セミシールドジャッキにより切羽側に押圧されるセミシールドと、前記セミシールドの前端部に配置した方向制御ジャッキを介して推進方向が制御される外径が既設埋設管の外径より大きな外径の中空円筒形の外殻と、前部楔状刃部と後部平板状切断刃部とを有し前記外殻内に放射状に固定される固定カッターと、前記固定カッターの後部の前記外殻内に配置される回転カッターを備え、押圧力を付与された前記前部楔状刃部の楔作用で前記既設埋設管のコンクリート破砕、螺旋筋の切断及び前記既設埋設管外側地山の圧密掘削をし、前記後部平板状切断刃と前記回転カッターとのせん断力により前記既設埋設管の軸筋を切断することを特徴する。
【0008】
また、本発明の埋設管改築用掘進機は、前記外殻内に先端部を固定した中空外管内に螺旋羽根を外周に設置した中空回転軸を配置し、前記中空回転軸を駆動手段により回転駆動して掘削物搬送用スクリュウコンベアとし、前記固定カッターの内側端を前記中空回転軸に回転自在に嵌挿したリング部材に固定し、前記回転カッターを前記中空回転軸に連結して回転駆動することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の埋設管改築用掘進機は、前記中空回転軸の先端にスイベルジョイントを介して前記既設埋設管に残った汚水を吸引する汚水吸引管を連結し、前記中空回転軸にポンプを連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
セミシールドジャッキにより切羽側に押圧されるセミシールドと、前記セミシールドの前端部に配置した方向制御ジャッキを介して推進方向が制御される外径が既設埋設管の外径より大きな外径の中空円筒形の外殻と、前部楔状刃部と後部平板状切断刃部とを有し前記外殻内に放射状に固定される固定カッターと、前記固定カッターの後部の前記外殻内に配置される回転カッターを備え、押圧力が付与された前記前部楔状刃部の楔作用で前記既設埋設管のコンクリート破砕、螺旋筋の切断及び前記既設埋設管外側地山の圧密掘削をし、前記後部平板状切断刃と前記回転カッターとのせん断力により前記既設埋設管の軸筋を切断する構成により、高価な超硬チップ等の部材を多く用いることなく、少ない動力で既設埋設管の改築が可能となる。
外殻内に先端部を固定した中空外管内に螺旋羽根を外周に設置した中空回転軸を配置し、前記中空回転軸を駆動手段により回転駆動して掘削物搬送用スクリュウコンベアとし、前記固定カッターの内側端を前記中空回転軸に回転自在に嵌挿したリングに固定し、前記回転カッターを前記中空回転軸に連結して回転駆動する構成により、回転カッターの駆動を掘削物搬送用スクリュウコンベアの駆動と兼用することで動力消費を少なくすることが可能となる。
中空回転軸の先端にスイベルジョイントを介して既設埋設管に残った汚水を吸引する汚水吸引管を連結し、前記中空回転軸にポンプを連結した構成により、既設埋設管の汚水が残った状態で埋設管の改築工事を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の埋設管改築用推進掘進機の一実施形態の側面図、図2は、図1のA−A線断面図、図3は、図1のB−B線断面図、図4は、図1のC−C線断面図である。
【0013】
埋設管改築用推進機1は、新設埋設管30の外径とほぼ同じ外径で、既設埋設管31の外径より大きな内径の中空円筒形の外殻2を備えている。既設埋設管31は、軸筋32と螺旋筋33を配筋した鉄筋コンクリート製である。外殻2の先端部には地山への圧入を容易にし、先端部の摩耗を防止するため超硬チップ等を設置しても良い。外殻2内には中央開口部を有する隔壁3が形成される。隔壁3の中央開口部に中空外管4の先端部を固定する。
【0014】
隔壁3の後部に複数の方向制御ジャッキ5を設置する。複数の方向制御ジャッキ5は、セミシールド6の前端部を反力受けとして各々別個に伸張し埋設管改築用掘進機1の推進方向を制御する。セミシールド6の後部にはセミシールドジャッキ7が設置される。セミシールドジャッキ7は、新設管30の前端部を反力受けとして埋設管改築用掘進機1を切羽側に押圧する。新設管30の後端に元押しジャッキ(図示せず)が配置され、埋設管改築用掘進機1と新設管30を切羽側に押圧推進する。
【0015】
隔壁3の中央開口部に先端部を固定した中空外管4内に、外周に螺旋羽根8を設置した中空回転軸9が配置される。中空回転軸8は駆動手段(図示せず)により回転駆動される。中空外管4内で螺旋羽根8を設置した中空回転軸9が回転することで掘削物を搬送する掘削物搬送用スクリュウコンベアを構成する。中空回転軸9は、外殻2の隔壁3から既設埋設管31内に延び、先端部にスイベルジョイント10を介してL字形に下向きに屈曲した汚水吸引管11が連結される。汚水吸水管11に既設埋設管31の内壁に押し付けてシールするゴム堰34aを配置した汚水止め堰34を設置し、既設埋設管31内の汚水35の埋設管改築用掘進機1内への浸入を防止する。中空回転軸9の後部にポンプ(図示せず)が連結され、既設埋設管31に残存する汚水35を汚水吸水管11の先端から吸い込み中空回転軸9を通して排水する。そのため、既設埋設管31内に汚水が残った状態で既設埋設管の改築が可能となる。
【0016】
スイベルジョイント10の後部で外殻2の隔壁3の前部に位置する中空回転軸9の外周に、中空回転軸9に対して軸受けを介して回転自在としたリング部材12が嵌挿される。リング部材12に一端が固定され、他端が外殻2の内壁に固定される固定カッター13が複数放射状に設置される。
【0017】
固定カッター13の先端部の位置は外殻2の先端部より後部の外殻2内に位置する。固定カッター13の既設埋設管31の外側に位置する部分の先端部の位置を他の部分の先端部の位置より切羽側とする。
【0018】
固定カッター13の後部で隔壁3の前部の中空回転軸9に複数の回転カッター14の一端が固定される。回転カッター14は、中空回転軸9の回転駆動により回転する。回転カッター14を安定して回転駆動するために、回転カッターの他端に外殻2の内壁と摺接する部分に低摩擦材を配置した摺接部材15を設置しても良い。回転カッターに摺接部材15を設置することにより、固定カッター13で切削されたコンクリートガラ、土砂、細断された鉄筋を外殻2の底部から掬い取り、掘削物搬送用スクリュウコンベアに効率良く搬送することが可能となる。回転カッターの駆動を掘削物搬送用スクリュウコンベアの駆動と兼用することで動力消費を少なくすることが可能となる。
【0019】
図5により固定カッター13と回転カッター14の作用を説明する。固定カッター13は、楔状の形状の前部楔状刃部13aと後部平板状切断刃部13bとが一体に形成される。セミシールドジャッキ7の新設管30を反力受けとした駆動により外殻2が切羽側に押圧推進される。
【0020】
外殻2の切羽側への押圧推進により、外殻2の先端部が既設埋設管31の外周部の一部の地山を残して周囲の地山に圧入される。外殻2の先端部には超硬チップ等の部材が設置されているため、外殻2は、既設埋設管31の外周の地山に容易に圧入することが可能となる。外殻2の切羽側への押圧推進により、固定カッター13の前部楔状刃部13aが、既設埋設管31と既設埋設管31の外周地山に圧入する。固定カッター13の先端部位置は、既設埋設管31の外周地山に対応する部分が他の部分より切羽側に位置しているので、先ず、既設埋設管31の外周と外殻2の内壁の間の地山が固定カッター13の前部楔状刃部13aの楔作用により圧密掘削される。続いて、固定カッター13の前部楔状刃部13aが既設埋設管31に圧入する。固定カッター13の前部楔状刃部130aの圧入による楔作用により、既設埋設管31のコンクリートが破砕され、螺旋筋33が切断される。この状態で掘削された地山の土砂、コンクリートガラ、細断された螺旋筋33は外殻2の底部に落下する。
【0021】
固定カッター13の前部楔状刃部13aの圧入によりコンクリートが破砕され螺旋筋33が切断された既設埋設管31は軸筋32が露出する。露出した軸筋32は、固定カッター13の後部平板状切断刃部13bと回転カッター14のせん断力により切断され、外殻2の底部に落下する。固定カッター13の後部の外殻2の底部に落下した土砂、コンクリートガラ、細断された螺旋筋33、軸筋32は、回転カッター14の回転により、中空外管4内で螺旋羽根8を設置した中空回転軸9が回転する掘削物搬送用スクリュウコンベアに掬いあげられ搬送される。
【0022】
以上のように、本発明の埋設管改築用掘進機によれば、高価な材料を用いることなく、少ない動力消費で効率良く既設埋設管31を新設管30に改築することが可能となり、低コストの埋設管改築が可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1: 埋設管改築用掘進機、2:外殻、3:隔壁、4:中空外管、5:方向制御ジャッキ、6:セミシールド、7:セミシールドジャッキ、8:螺旋羽根、9:中空回転軸、10:スイベルジョイント、11:汚水吸水管、12:リング部材、13:固定カッター、13a:前部楔状刃部、13b:後部平板状切断刃部、14:回転カッター、15:摺接部材、30:新設管、31:既設埋設管、32:軸筋、33:螺旋筋、34:汚水止め堰、34a:ゴム堰、35:汚水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セミシールドジャッキにより切羽側に押圧されるセミシールドと、
前記セミシールドの前端部に配置した方向制御ジャッキを介して推進方向が制御される外径が既設埋設管の外径より大きな外径の中空円筒形の外殻と、
前部楔状刃部と後部平板状切断刃部とを有し前記外殻内に放射状に固定される固定カッターと、
前記固定カッターの後部の前記外殻内に配置される回転カッターを備え、
押圧力を付与された前記前部楔状刃部の楔作用で前記既設埋設管のコンクリート破砕、螺旋筋の切断及び前記既設埋設管外側地山の圧密掘削をし、前記後部平板状切断刃と前記回転カッターとのせん断力により前記既設埋設管の軸筋を切断することを特徴する埋設管改築用掘進機。
【請求項2】
前記外殻内に先端部を固定した中空外管内に螺旋羽根を外周に設置した中空回転軸を配置し、前記中空回転軸を駆動手段により回転駆動して掘削物搬送用スクリュウコンベアとし、前記固定カッターの内側端を前記中空回転軸に回転自在に嵌挿したリング部材に固定し、前記回転カッターを前記中空回転軸に連結して回転駆動することを特徴とする請求項1に記載の埋設管改築用掘進機。
【請求項3】
前記中空回転軸の先端にスイベルジョイントを介して前記既設埋設管に残った汚水を吸引する汚水吸引管を連結し、前記中空回転軸にポンプを連結したことを特徴とする請求項1または2に記載の埋設管改築用掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−236563(P2011−236563A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106205(P2010−106205)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(598042574)株式会社推研 (10)
【Fターム(参考)】