説明

埋設配管探査装置及び埋設配管探査方法

【課題】ガス配管等、地中や建築躯体内等に埋設された配管の位置探査に好適な埋設配管探査装置及びその方法を提供する。
【解決手段】音波発信装置2から発信される音波は、周波数帯400〜600Hz、周期0.5秒を以って連続的に変化するものである。音響合成部2bにおいて合成される上記音波信号は、増幅部2cにおいて増幅され、スピーカ2aから管内に発信される。受信装置3側では、予め埋設位置と予測される場所の地表面にピックアップ3aを置き、管内から地表面に伝わる音波振動を探査する。具体的には、推定埋設位置周囲をピックアップ3aでスキャンして、表示部3eのレベル表示が最高値を示す位置を埋設位置と特定する。当該位置を道路にマークするとともに、マップに落とし込む。この工程を順次、道路上の所定の間隔で行うことにより、全長にわたり埋設位置を把握することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は埋設配管位置の探査技術に関し、特に、ガス配管等、地中や建築躯体内等に埋設された配管の位置探査に好適な埋設配管探査装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス配管等の非開削探査工法としては、電磁式ロケータの利用が一般的であった。しかし、近年、普及拡大が著しいポリエチレン管(PE管)については、位置探査用のロケータ・ワイヤーが、電食等により配線接続部において断線する例が多く、探査の障害となっていた。また、鋼管についても、配管途中に絶縁継手やバルブ絶縁が介在している場合には探査精度が低下するという問題があった。さらに、大口径管については比較的探査しやすいものの、支管(供内管)等の小口径管では感度が低下するという問題があった。
これらの問題に対応するため、支管の地上部立管などの開口端に音源を取り付けて、ここから配管内部に音波を発信し、推定埋設位置の地表面において管内を伝播する音響振動を検知し、位置特定する音響式探査技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、発信音波について、異なる複数の周波数(例えば、150Hz〜300Hz)の音波を同時に発信する技術が開示されている(特許文献2)。さらに、周波数300Hz〜1100Hzの中から適宜選択した音波を、断続的に発信する技術が開示されている(特許文献3)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−146218号公報
【特許文献2】特開2005−308445号公報
【特許文献3】特開平8−271370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記音響式探査技術においては、発信される音波は、複数種類の周波数を発信するものにあっても、全て周波数が固定されている。しかしながら、地表面における検知感度は、埋設配管の管種、検知位置の土質、舗装状態等の埋設環境により大きく異なり、従来の周波数固定方式ではこれらに適切に対応することが難しいという問題がある。また、現場の暗騒音と検知振動とを識別することが困難という問題もある。このような理由から、音響式探査方式は普及が進んでいないのが実情である。
本発明はこのような課題を解決するものであって、探査精度が高く、また暗騒音と識別が容易で実用性の高い埋設配管探査装置及びその方法を提供するものである
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の内容を要旨とする。すなわち、本発明に係る燃料ガスの埋設配管位置探装置は、
(1)配管開口部に設置した音源から信号音を配管内部に伝播させて、埋設層外において検出手段を用いて伝播振動を検出することにより、配管埋設位置を探査する埋設配管探査装置であって、該信号音が、所定の周期を以って所定の周波数帯内で、連続的に変化する音波であることを特徴とする。
本発明によれば、音源から伝播する音波の周波数が連続的に変化しているため、検出手段を用いてスキャンする際に追尾が容易、かつ、暗騒音との識別が容易という特徴を有する。
なお、周波数帯内の連続的変化は滑らかな変化に限らず、ステップ状に変化するものであってもよい。
(2)前記所定の周波数帯が、400Hz乃至600Hzであることを特徴とする。
(3)前記所定の周期が、0.25秒乃至0.75秒の範囲内であることを特徴とする。
【0006】
(4)前記検出手段は、検出位置の微小変化に伴う検出伝播振動のレベル変化を視覚確認可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
(5)前記検出手段は、検出位置の微小変化に伴う検出伝播振動のレベル変化を聴覚確認可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
視覚確認可能とすることにより、デジタル表示又はアナログ表示では捉えられない微小変化をも識別可能になるという特徴がある。
(6)前記聴取手段は、複数人による聴覚確認を可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする。
複数人により視覚確認可能とすることにより、より客観的な判定が可能になるという特徴がある。
(7)前記検出手段は、前記音源に対して、前記所定の周波数帯及び/又は前記所定の周期を、適宜変更指示可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする埋設配管探査装置。
本発明により、管種、検知位置の土質、舗装状態等の配管埋設環境に合わせて、最適の周波数帯、周期を選択することができ、常に高い検出性能を確保することが可能となる。
【0007】
また、本発明に係る燃料ガスの埋設配管位置探査装置は、
(8)配管開口部から配管内部に信号音を伝播させて、埋設層外の位置で信号音を検出することにより、配管埋設位置を探査する埋設配管探査方法であって、該信号音が、400Hz乃至600Hzの周波数帯、かつ、0.25秒乃至0.75秒の周期で変化する音波であることを特徴とする。
(9)上記(8)において、さらに、検出位置の微小変化に伴う検出伝播振動のレベル変化に対応して、前記信号音の周波数帯及び/又は周期を適宜変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、埋設配管の管種、検知位置の土質、舗装状態等の埋設環境に関わらず、検知感度を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至4を参照してさらに詳細に説明する。なお、本発明の範囲は特許請求の範囲記載のものであって、以下の各実施形態に限定されるものではない。
<第一の実施形態>
図1は、本実施形態に係る埋設配管探査装置1の全体構成を示す図である。埋設配管探査装置1は、土中に埋設されているガス導管4経路中の分岐管5の立管部6(位置A)に設けた音波発信装置2と、位置Aから離隔した配管埋設推定位置(位置B)の地表面に配置される受信装置3と、を主要構成として備えている。
音波発信装置2は、所定の信号を発振する信号発振部2bと、電力増幅部2cと、出力調整部2dと、立管部6の開口部に取り付けられたスピーカ2aと、を備えている。これらにより音波発信装置2は、信号発振部2bにおいて所望の周波数帯、周期を以って連続的に変化する信号波を発振し、電力増幅部2cにおいてこれを増幅して、音波としてスピーカ2aから管内に発信するように構成されている。また、スピーカ2aから管内に発信された音波の出力は、探査に最適なレベルになるよう出力調整部2dで調整される。
受信装置3は、ピックアップ3aと、電圧増幅部3c、フィルター部3d、感度調整部3g、電力増幅部3h、表示部3e、を備えた受信装置本体3bと、を主要構成として備えている。これにより、受信装置3は、音波発信装置2から音波として発信され、埋設ガス導管1内部を伝播し、さらに地表面位置Bに到達する振動波を、ピックアップ3aで検知して電気信号として出力する。さらに、本体3bにおいて電圧増幅、フィルタリングして表示部にレベル表示するように構成されている。さらに、受信装置3は受信した振動波を電力増幅部3hで増幅した後、外部ヘッドホン3fに出力可能に構成されている。また、受信装置3の感度は感度調整部3gで探査に適切な感度に調整される。
【0010】
次に、本実施形態における埋設配管探査方法について説明する。音波発信装置2から発信される音波は、図2に示すように周波数帯400〜600Hz、周期0.5秒を以って連続的に変化する波である。信号発振部2bにおいて合成される上記音波は、増幅部2cにおいて増幅され、スピーカ2aにより管内に発信される。
受信装置3側では、予め配管埋設予想位置の地表面にピックアップ3aを置き、管内から地表面に伝わる音波振動を探査する。具体的には、推定埋設位置周囲をピックアップ3aでスキャンして、 受信装置3の表示部3eのレベル表示の動きを追尾し、最高レベルを示す位置を埋設位置と特定する。当該位置を道路にマークするとともに、マップに落とし込む。この工程を順次、道路上において所定の間隔で行うことにより、道路全長にわたり埋設位置を把握することができる。
なお、本実施形態では、表示部3eのレベル表示を目視により追尾して判定する例を示したが、ヘッドホン3fを用いた聴覚判定とすることもできる。さらに、スピーカに接続することにより、複数人で判定する形態とすることもできる。
【0011】
<第二の実施形態>
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態に係る埋設配管探査装置の構成は、上述の実施形態と同一であるので説明を省略する。上述の実施形態との相違点は、発信する音波の周波数帯及び周期を、受信装置側の検知状態に対応して変化させることである。
図3は、周波数帯変更の一例を示した図である。第一ステップでは、発信装置側から最大周波数f1、最小周波数f1’、周期t1で連続的に変化する音波が発信される。ここに、f1≦600Hz、f1’≧400Hz、かつ、0.25sec<t1<0.5secに調整されている。この設定で、受信装置側においてピックアップをスキャンして表示レベルを追尾し、埋設位置探査を行う。この設定による判定が困難な場合には、次に第二ステップとして発信装置側から最大周波数f2、最小周波数f2’、周期t2で連続的に変化する周波数帯音波に変更し、同様の探査を行う。なお、第二ステップの音波の周波数帯、周期は第一ステップと異なるが、f2≦600Hz、f2’≧400Hz、かつ、0.25sec<t2<0.5secに調整されている点に関しては同一である。
このようにして位置特定ができるまで周波数帯、周期を変更していく。位置特定できたときは、別地点に移動して上記工程を繰り返し行う。
これにより、土質等、埋設環境に適合した周波数帯、周期を用いた探査が可能となる。
【0012】
<第三の実施形態>
さらに、本発明の他の実施形態について説明する。図4は、本実施形態に係る埋設配管探査装置20の全体構成を示す図である。埋設配管探査装置20が上述の埋設配管探査装置1と異なる点は、受信装置22に周波数帯変更を指示する周波数帯指示部22a、選択周波数帯を無線送信する送信部22bが付設されていること、及び、発信装置21に受信装置側から送信される選択周波数帯を受信する受信部21aが付設されていることである。その他の構成については埋設配管探査装置1と同一であるので、説明を省略する。
このような構成により、上述の第二の実施形態では、周波数帯変更に際してステップごとに測定者が発信装置側に連絡する必要があるのに対して、本実施形態では測定者が所望する周波数帯を受信装置側から無線指令することにより、直ちに発信装置側から選択された周波数帯の音波が発信されることになる。これにより探査効率のさらなる促進が図られる。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の効果を確認するため行った試験の内容について説明する。
(試験方法)
全長44mの50φPE管を深さ60cmの土中に埋設し、一端側の立管開口部に音源を取り付けた。音源から順に2.5m、5.0m、7.5m、・・・のように、2.5mごとの位置、P1〜P17に受信装置を置き、音源から周波数100〜1000Hzの範囲の音波を発信し、地表面に伝播する振動音を測定した。図5(a)、図5(b)は、それぞれP1〜P9、P10〜P17における周波数−音圧レベル(dB)特性をプロットしたものである。
これらの図から、400〜600Hzの範囲において比較的音圧レベルが高く、また音源からの距離によらず音圧レベルの減衰が小さいことから、測定のばらつきを排除でき、検知精度が高いことが分かる。
【実施例2】
【0014】
実施例1の試験装置を用いて、さらに聴覚による官能試験を行った。250〜350Hz、450〜550Hz、650〜750Hzの音波を、周期0.5秒で連続的に音源から発信し、受信装置側において被験者 3人がヘッドホンを用いて聴取して、伝達特性(音源からの距離による検知レベル変化)及び聴き易さについて判定した。表1にその結果を示す。
【表1】

同表より、450−550Hzにおいて、識別性能が良好であることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、ガス配管のみならず、地上部に開口部を設けることができる配管の位置探査に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一の実施形態に係る埋設配管探査装置1の構成を示す図である。
【図2】音波発信装置2から発信される音波の周波数帯、周期特性を示す図である。
【図3】第二の実施形態における発信される音波の周波数帯、周期特性を示す図である。
【図4】第三の実施形態に係る埋設配管探査装置20の構成を示す図である。
【図5(a)】実施例1において、位置P1〜P9における周波数−音圧レベル(dB)特性をプロットしたものである。
【図5(b)】実施例1において、位置P10〜P17における周波数−音圧レベル(dB)特性をプロットしたものである。
【符号の説明】
【0017】
1、20・・・・埋設配管探査装置
2、21・・・・音波発信装置
2a スピーカ
2b・・・・信号発振部
2c・・・・電力増幅部
2d・・・・出力調整部
3、22・・・・受信装置
3a・・・・ピックアップ
3c・・・電圧増幅部
3d・・・フィルター部
3e・・・表示部
3f・・・ヘッドホン
3g・・・感度調整部
3h・・・電力増幅部
4・・・・ガス導管
5・・・・分岐管
6・・・・立管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管開口部に設置した音源から信号音を配管内部に伝播させて、埋設層外において検出手段を用いて伝播振動を検出することにより、配管埋設位置を探査する埋設配管探査装置であって、
該信号音が、所定の周波数帯内で所定の周期を以って、連続的に変化する音波であることを特徴とする埋設配管探査装置。
【請求項2】
前記所定の周波数帯が、400Hz乃至600Hzであることを特徴とする請求項1に記載の埋設配管探査装置。
【請求項3】
前記所定の周期が、0.25秒乃至0.75秒の範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の埋設配管探査装置。
【請求項4】
前記検出手段は、検出位置の微小変化に伴う検出伝播振動のレベル変化を視覚確認可能とする表示手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1乃至3に記載の埋設配管探査装置。
【請求項5】
前記検出手段は、検出位置の微小変化に伴う検出伝播振動のレベル変化を聴覚確認可能とする聴取手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1乃至4に記載の埋設配管探査装置。
【請求項6】
前記聴取手段は、複数人による聴覚確認を可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項5に記載の埋設配管探査装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記音源に対して、前記所定の周波数帯及び/又は前記所定の周期を、適宜変更指示可能とする手段を、さらに備えて成ることを特徴とする請求項1乃至6に記載の埋設配管探査装置。
【請求項8】
配管開口部から配管内部に信号音を伝播させて、埋設層外の位置で信号音を検出することにより、配管埋設位置を探査する埋設配管探査方法であって、
該信号音が、400Hz乃至600Hzの周波数帯、かつ、0.25秒乃至0.75秒の周期で変化する音波であることを特徴とする埋設配管探査方法。
【請求項9】
請求項8において、さらに、検出位置の微小変化に伴う検出伝播振動のレベル変化に対応して、前記信号音の周波数帯及び/又は周期を適宜変更することを特徴とする埋設配管探査方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5(a)】
image rotate

【図5(b)】
image rotate


【公開番号】特開2009−236691(P2009−236691A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−83372(P2008−83372)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000112691)フジテコム株式会社 (9)
【Fターム(参考)】