説明

培養におけるバクテリアの増殖の迅速検出法

【課題】酸素消光性燐光化合物及びその様な酸素消光性燐光化合物の樹枝状ポリマー誘導体を使用する微生物の増殖検出並びに同定方法を提供する。
【解決手段】1)可溶性の酸素消光性の燐光化合物を含む培地を用意し、2)前記培地に、一種以上の微生物を有するか、さもなければ関連する事が疑われる基質を接種し、そして、3)前記燐光化合物を発光させて、前記化合物の前記培地中における酸素の消光を観察する事によって微生物増殖を検出し前記微生物を同定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地中の微生物の増殖を観察し測定する方法に関し、特に、酸素消光性燐光化合物及びその様な酸素消光性燐光化合物の樹枝状ポリマー誘導体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な微生物の存在及び増殖過程の検出及び正確な測定の為の方法は、工業的醗酵方法での微生物の産生収率を観察したり、病原微生物の早期の検出といった様々な目的の為に有用である。
【0003】
幾つかの方法が知られており、一例として米国特許第5,523,214号に記載の方法が在る。この特許には、例えば、菌類、イースト及びミコバクテリア、ツベルクロシス(M.tuberculosis)、アビウム及びボビス(M.avium and M.bovis)、非醗酵体、球菌、バチルス、球状バチルス及び尿検体から得られる腸内細菌、傷及び膿瘍からの物質、血液及び痰、及びブロス又はゲル中の増殖バクテリアの様なブロス又はゲル中の微生物の増殖を視覚的に示す方法が記載されている。
【0004】
この特許では、相対的に迅速に増殖するミコバクテリアは、増殖を証明する為には約一周間を要し、相対的にゆっくりと増殖する、エイズ患者の中に出現する事が知られているツベルクロシス及びボビス及びアビウムの様なツベルクロシス媒介物(agent)は、培養に少なくとも8〜10週間を必要とする事が推定されている。この方法で増殖を検出する為には、指示薬メチレンブルーとレサズリンの混合物が、微生物にとって有毒とならない様に注意しながら基質又は環境に添加される。基質は、K3Fe(CN)6と混合した鉄(III)塩、K4Fe(CN)6又はタングステン酸ナトリウム(Na2WO4)と混合した鉄(II)塩である。この特許に示されている様に、指示薬メチレンブルーとレサズリンの混合物は、レサズリン単独よりも急速に青から赤へ変色する事によってバクテリアの増殖を証明するものと言える。この方法は、又、カリウムヘキサシアノフェレート(K4Fe(CN)6)の様なレドックス安定剤の添加によって改善されるものと言える。
【0005】
又、この方法に関して言えば、NH4Fe(SO4)2及びK3Fe(CN)6の様な鉄(III)、又は、K4Fe(CN)6の様な鉄(II)の無機塩、又はそれ自身のNa2WO4の様な無機塩が、微生物の増殖を証明する為に、レドックス指示薬として培地中で使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その様な方法は、微生物の増殖を証明する為に必要とされるレドックス指示薬の量が非有毒性とは一致せず、及び/又は偽の否定的な結果を防ぐ為に有毒な量を排除する為の注意を過度に超える量を必要とするので、商業的に実用的ではない。その様な方法は、全ての従来の方法同様に、数週間から数日の微生物の増殖の証明の為に必要とされる時間を減少させるのに十分に敏感ではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、微生物の増殖は、溶解された酸素消光性燐光化合物を含む培地を、一種以上の微生物を運ぶか或いは結合する事の疑いのある基質で接種するかさもなければ接触させ、次いで、燐光化合物を発光させ事によって微生物の増殖を検出し、微生物を同定し、燐光の酸素依存性消光によって微生物の存在と増殖を測定する事によって迅速に且つ正確に証明される。
【0008】
本発明によれば、光源手段、好ましくは変調光源が、微生物含有媒体中の可溶性燐光物質の燐光の励起及び燐光の強度及び、励起光強度と燐光放射との間の時間的遅れの双方を決定する為に使用される。測定された遅れ及び/又は強度から燐光寿命が計算され、燐光寿命の酸素依存性と適当な調整定数、即ち、消光定数及び酸素の不存在での寿命から、培地中の酸素分圧(濃度)の計算によって計算される。
【0009】
本発明は、更に、次の好ましい実施態様の詳細な記述、図面及び実施例から十分に理解されるであろう。これらの全ては、例示する事が目的であって、本発明のクレームの範囲又は精神を限定する事を意図するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
本発明は、培地中における燐光の酸素依存性消光によって酸素含有量(分圧)を測定する、一種以上の非毒性、水溶性及び/又は生理的媒体可溶性燐光化合物を培地中に包含させる事によって、培地中の微生物の増殖を迅速且つ正確に証明する方法を提供するものである。
【0011】
微生物を増殖させる為の最も有効な方法の一つは培地中である。培地中の酸素消耗の速度の正確な測定は、増殖する微生物が接種に続いて培地中に存在しているかどうかだけでなく、培養中のその微生物の増殖速度を決定する為に使用する事が出来る。
【0012】
本発明の方法では、ミコバクテリアの様な微生物の存在の極めて迅速な決定が提供され、同時に存在する微生物のタイプの早期の指示が提供される。例えば、疑似ツベルクロシス患者の場合では、病気を治療する為と、その他の患者及び医療スタッフの保護の為の隔離が必要かを決定する為に、出来る限り早期に伝染性微生物の増殖を検出する事が重要である。
【0013】
培地中で増殖する微生物の存在は、一般に、無菌の培地中の酸素消費速度以上の速度で酸素を消費する結果となる。従って、培地中の微生物の存在又は増殖は、培地の単位容積当りに存在する微生物の数が、その媒体からの酸素の消耗速度に比例する関係から決定する事が出来る。
【0014】
(燐光測定)
本発明によれば、水溶性、非毒性燐光化合物は、培地と混合されるか或いは培地中に溶解される。培地は、次いで、微生物で接種され(inoculate)、その後、燐光強度及び、励起光強度と燐光放射の間の時間的遅れの両方を決定する為の燐光の為の燐光物質の励起の為の変調光源に暴露される。測定された遅れ及び/又は強度から燐光寿命が計算され、同時に消光定数に関する燐光寿命の酸素依存性及び酸素の不存在での寿命から、培地中の酸素分圧(濃度)が計算される。
【0015】
従って、本発明方法は、高い正確性及び精度で以って、培地中の酸素濃度を測定する為の光学的方法を提供するものである。
【0016】
励起が停止された後も持続する励起種からの放射光は、燐光又は残光と言われる。或る種の化学的化合物(燐光物質)の燐光は、次の様に述べられるスターン−ボルマー関係式(Stern-Volmer relationship)により、酸素で消光される:
0/t=1+kQ*t0*PO2 (1)
ここで、t0及びtは、酸素不存在での燐光寿命であり、PO2は、tの寿命の間の酸素圧であり、kQは、消光定数である。定数kQは、励起された三重項状態分子と分子状酸素との間の衝突頻度と、それらの分子が衝突する時に生起するエネルギー移動の可能性に関係する。
【0017】
燐光は、本発明に関して利用できる如何なる方法で測定しても良い。一般に、燐光寿命(又は消滅時間)を測定する為の二つの通常の方法は、時間領域での「パルス法」と、周波数領域での「位相法」である。パルス法では、サンプルは短い光パルスで励起され、得られる長波長の燐光発光は、測定可能な減退速度との指数関数的に減衰する関数である。パルス法は、酸素測定の為に現存する装置の殆どの装置で使用される。
【0018】
位相法では、サンプルは、いくらかの遅れ期間の後に燐光として再発光される吸収光を伴う変調光で励起される。結果として、燐光発光は、又、同じ周波数で変調されるが、励起正弦(excitation sinusoid)に関しては時間的に遅れる(位相移動される)。実験的に見出されたこの位相移動は、燐光寿命を計算する為に使用される。
【0019】
位相法は、(i)周波数ロック増幅が、感度を大いに増加させる為に使用できる事、及び(ii)励起光と同じ変調周波数の信号だけが増幅され、従ってその他の周囲光源による干渉を大いに排除するので、周囲光からの干渉が大いに減少されると言う利点があるので本発明に使用するのが好ましい。
【0020】
位相方法では、位相移動と燐光寿命との間の数学的関係を次の様に記述する事が出来る: tanΦ=2πft (2)
ここで、Φ=変調周波数fにおける励起と発光正弦波との間の位相差(位相移動)、
t=燐光減衰の寿命、である。
【0021】
与えられた信号対ノイズ比に対して、燐光寿命の推定で最も少ないエラーは、位相移動が約35.3°の時に得る事が出来る事を示す事が出来る。
【0022】
例えば、ウシの血清アルブミンに結合した燐光物質Pd−メソ−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン(燐光物質は、以下において詳細に検討される)では、38℃でのt0は、646マイクロ秒に等しく、空気飽和での寿命は16マイクロ秒である。酸素濃度の生理学的に重要な範囲は、0〜約199.5x102Pa(0〜約150Torr)(空気飽和)に広がる。スターン−ボルマー関係式(1)及び式(2)に従えば、その範囲において全ての酸素濃度に対して約35.5°の位相移動を維持する為には、変調周波数を100Hz〜2000Hzに変動させる事ができる事が必要である。変調周波数を20Hz〜20,000Hzに調節する事、及び与えられた固定周波数及び/又は位相移動(35.5°)の与えられた値に対する最初の推定最適周波数での燐光寿命を測定する事のできる計測を採用し、次いで実際の寿命測定に取り掛かる事が好ましい。
【0023】
酸素測定を確実にする事は、空気飽和及び以上(寿命<30ミリ秒)にとって正確なものであり、燐光信号は、37.5kHz以上で採取される(デジタル化される)のが好ましい。
【0024】
本発明の実施の為に好ましい装置は、アナログデバイス(Analog Device)ADSP−2181及びステレオ高精度48kHz、16ビット、64xオーバーサンプリングを持つデルタ−シグマ(Delta-Sigma)ADCを持つAD1847ステレオコーディックから構成する事が出来る。
【0025】
光放射ダイオードからの光出力の可変周波数(20Hz〜20kHz)
正弦変調の発生
【0026】
所望の周波数の正弦波信号は、16ビットDACを使用する、ステレオコーディックの回路を平滑にするDSPによって発生させる事ができ、この信号はLED又はレーザーダイオード駆動回路の電流を調節する。LED駆動回路は、光出力の90%より大きい変調を用意する為に設計される。これは、DC信号を、最小電流が光放射の為の閾値以上である様な正弦信号に加える事によって達成される。この閾値以上では、光出力は、LEDを通過する電流のほぼ直線的関数である。
【0027】
光放射ダイオード(LED)は、励起源として使用する事が出来る。LEDは、比較的広いバンド幅を持つ単色光を用意する。この光は、干渉フィルターを優先的に通過して、測定を邪魔するかも知れないLEDの発光中の長波長「尾部」をブロックする。
【0028】
燐光は、収束され、適当なフィルターを通して検出器に運ばれる。光検出器(PD)は、プリアンプを内蔵したシリコン光ダイオード又は光電子倍増管である事が出来る。光検出器出力は、ADCによってデジタル化する為に最適な電圧の信号を用意する為に増幅される。内部増幅器を持つ光ダイオードは、最適な光感応表面及び最低ノイズ水準の為に選択される。OPT202装置(Burr-Brown)は、適当な表面積(5mm2より広い)、及び優れた光感応性(600〜850nmの波長範囲に対して約500mV/mW)を有し、本発明での使用にとって好ましい。光ダイオードからの信号は、更に、AC−結合操作増幅器で増幅する事が出来る。位相検出の品質は、光ダイオード出力信号中のノイズ水準の減少に依存する。増幅後、光ダイオード出力信号は、アナログマルチプレクサ(analog multiplexer)に送達され、次いで、16ビット、48kHzデルタ−シグマデジタイザー、例えば、16ビットアナログ対デジタルコンバーター(ADC)の入ロへ送達されてデジタル化される。デジタル信号は、信号強度(大きさ)及び励起光に関する位相を抽出する為に処理される。燐光寿命及び酸素圧の計算は、上記の方法に従う。
【0029】
(微生物)
上に示した様に、本発明は、培地中に存在する微生物の存在及び量を決定する為に、培地中において利用できる酸素の分圧(酸素濃度)の消光効果の測定に基づくものである。本発明の方法は、酸素を消耗する微生物の存在及び増殖を証明する事、その微生物の同定及びそれらを、可溶性酸素消光性燐光化合物(燐光物質)によって放射される燐光を介して酸素分圧の測定により、抗生物質に対する感応性をテストするのに有用である。微生物は、尿検体、傷及び膿瘍からの物質、血液、組織及び痰のサンプルの様な源からのものであっても良く、一種以上の燐光物質と共に様々な基質のゲル又はブロス中に存在しても良い。バクテリアの例としては、バチルス(Bacillus)属、ミコバクテリア(Mycobacterium)属、アクチノマイセス(Actinomyces)属、ノカルデイア(Nocardia)属、スードモナス(Pseudomonas)属、メタノモナス(Methanomonas)属、プロタミノバクター(Protaminobacter)属、メチロコッカス(Methylococcus)属、アースロバクター(Arthrobacter)属、メチロマナス(Methylomanas)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、アセトバクター(Acetobacter)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロードスードモナス(Rhodopseudomonas)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、メチロバクター(Methylobacter)属、メチロシナム(Methylosimum)属、メチロシスチス(Methylocystis)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、及びそれらの混合物由来の種が挙げられる。本発明の迅速検出特性は、一般的に、例えば、約数週間〜一週間未満又は数日のミコバクテリアの増殖の証明/同定に必要とされる時間を減少させる。本発明方法は、通常の方法では増殖の証明の為の培養に少なくとも8〜10週間を必要とする、エイズ患者に発現するM.ツベルクロシス及びM.ボビス及びM.アビウムの様なゆっくりと増殖するツベルクロシス媒介物の約数日の迅速増殖証明に特に適合する。
【0030】
本発明方法は、又、米国特許第4,226,989号明細書に記載されている化学転換、蛋白合成、化学反応/化学化合物製造等の様々な目的の為に広く使用される醗酵方法における微生物の産生を観察するのに有用である。
【0031】
(水溶性酸素消光性燐光化合物)
本発明において有用な水溶性酸素消光性燐光化合物(燐光物質)であり、有機化合物の燐光分子上の酸素の消光効果を測定する事により、組織酸素濃度/酸素分圧を決定する為の方法において現に使用される燐光化合物は、例えば、米国特許第4,947,850号明細書に記載されており、ここに参照によって導入される。その様な燐光物質では、燐光発色団、例えば、PdPorph及びptporphは、光の吸収によって三重項状態(T.)に、次いで、光の放出によって基底状態に戻る事の出来る燐光物質の燐光部分又は燐光である。
【0032】
使用に適する燐光物質に対して、中でも、本発明での微生物の増殖及び同定の決定においては、燐光物質は、微生物に対して非毒性でなければならず、或いは無視し得る毒性のものでなければならず、又、確実且つ正確な酸素測定及び微生物増殖の測定を用意する為の有効な消光の為に酸素分子が十分近くに接近する事が出来る様に、培地中において十分溶解性のものでなければならない。
【0033】
本発明による酸素測定及び同時の微生物増殖同定の為に特に適した燐光物質の新しいクラスは、最近、ビノグラドフとウイルソン(Vinogradov and Wilson)(J. Chem. Soc., Perkin Trans.2:103-111(1995))及び米国特許出願第08/137,624号(1993年10月15日出願)において報告されており(ここに、参照によって導入される)、VIII族金属、例えば、Pd及びPtと、拡張されたポルフィリン、例えば、テトラベンゾポルフィリン、テトラナフタロポルフィリン、テトラアントラポルフィリン及びそれらの様々な誘導体との錯体である。テトラベンゾポルフィリンとテトラナフタロポルフィリンのPd錯体が特に好ましい。更に、Pdテトラベンゾポルフィリン(PdTBP)及びそれらの誘導体は、8〜10%の量子収率で長寿命燐光(〜250ミリ秒)を有する事が示されている。
【0034】
本発明の使用において更に好ましいものは、前述の燐光物質の樹枝状誘導体であり、この物は、不活性な球状構造によって包囲されている極めて有効で極めて溶解性の燐光化合物であり、その一例が、デンドリマーとして知られる三次元超分子構造によって包囲されている誘導体化されたPdTBPである。
【0035】
その様な化合物は、米国特許出願第08/767,158号(1996年12月16日出願)に記載されており、ここに参照によって導入される。
【0036】
本発明において有用なデンドリマー燐光物質は、開始体官能化コアとして含まれる三次元超分子放射状対称分子であり、本発明においては、そのコアに結合した、例えば、それぞれの腕が繰返し単位から成る3又は4個の腕から成る内部層及びデンドリマーの一世代と認められる各腕における繰返し単位の層を持つ、酸素測定燐光物質である。最も外側の世代は、一般に、末端官能基、例えば、その最も外側の世代に結合した第一級アミンを含む。デンドリマー分子のサイズ及び形状、及びそこに存在する官能基は、開始体コア、世代の数、及び各世代において使用される繰返し単位の性質の選択によって調節する事が出来る。例えば、内部層中の繰返し単位の化学的官能性は、アミドアミン、例えばジエチレンジイミン、及び末端官能性、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、カルボキシレート等を持つアミドアミンである事が出来る。ウルデア等(Urdea et al., Science 261:534(1993)and Frechet,263:1710-1715(1994))参照。従って、デンドリマーは、重合の各段階で分岐する事が許されるモノマー単位の組合せである。例えば、ブルーメン等(Blumen et al.))によって示された様に(Angewandte Chemie, Int., Ed. Eng. 29:113-125(1990))、デンドリマーは、モノマー単位の数を増加させながら球状構造を形成する傾向に在り、モノマー単位は、最終的には、中央に集められた官能的存在物全体即ち化合物を覆う。例えば、ウイニック等(Winnik et al.)の米国特許第5,256,193号明細書参照。
【0037】
デンドリマーポリマー構造の合成の為には、少なくとも二つの方法が知られている:それぞれ、収束性及び分散性生長アプローチである。両方共に、本発明において使用される燐光物質の製造の為に使用することが考えられる。収束性デンドリマー合成ルートにおいては、ポリマー合成は周辺から開始して、分岐フラグメントを中心コアに結合する事によって終了する。収束性合成方法の詳細については、ハウカー等(Hawker et al., J. Am. Chem. Soc. 114:8405-8413(1992))、ウーリー等(Wooley et al.,J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1:1059-1076(1991))及びフレチェット等(Frechet et al.,U.S.Patent No.5,041,516))を参照。これらは全て参照によってここに導入される。
【0038】
最近、収束性合成ルートはポルフィリンの変性に、即ち、光化学的官能性を有するコアを持つ樹枝状分子を製造するのに有用である事が報告されている。ジン等(Jin et al., J. Chem. Soc. Chem. Commun. 1260-1262(1993))参照。この文献は、樹枝状のケージ(cage)中に封入されたZnポルフィリンの蛍光の消光を測定する事、及びデンドリマーポリマー構造が、巨大分子の為のバリヤーとして役立つ一方で小さな種へのアクセスを許す、ポルフィリンコアの為の良好な保護を用意する事を記載している。
【0039】
より一般的に使用される分散性合成方法は、モノマーと開始体コアとの初期反応、続いて、得られる官能基と二官能性化合物、例えば、ジアミンとの逐次反応のよって、モノマー単位の層が順次に中心コアに加えられて分岐の所望の程度が達成される様に反応性アミノ基の次の世代を用意する事を含む合成の逆順を採用する。この方法の詳細は、例えば、トマリア等(Tomalia et al., Angewandte Chemie, Int., Ed. Eng. 29:138-175(1990))及びトマリア等(Tomalia et al., Macromolecules 19:2466-2468(1986))において記載されており、これらは、ここに参照によって導入される。
【0040】
樹枝状マクロ分子及びその製造方法に関するその他の文献としては、米国特許第5,418,301号明細書、第4,568,737号明細書、第5,393,795号明細書、第5,256,193号明細書、第5,393,797号明細書、第5,393,795号明細書、第5,393,797号明細書、第5,098,475号明細書、第5,041,516号明細書、及び第4,568,737号明細書が挙げられ、これらの全体の記述がここに参照によって導入される。
【0041】
以下に記述される様に、本発明の一つの観点においては、新規な誘導体化された金属拡張ポルフィリン酸素測定燐光物質化合物の周りに分散的に合成された一、二及び三層ポリグルタメート樹枝状ケージが、広範囲のpHにおいて非常に水溶性であり、脱酸素水溶液中において燐光寿命の狭い分布を示す燐光物質をもたらす。
【0042】
更に、以下に示される様に、燐光物質の周囲環境として使用されるデンドリマーを伴う新規な燐光物質誘導体は、確実にして素早い培養増殖証明及び同定の為の培地中の正確且つ確実な酸素測定の為の燐光プローブの新規なクラスを提供する。
【0043】
樹枝状燐光物質は、同時出願の米国特許出願番号第08/137,624号及びビノグラドフとウイルソン(J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2:103-111(1995))に記載されている燐光物質から、好ましくは次式の燐光物質から調製される。
【化1】

(ここで、R1は、水素又は置換又は非置換アリール、R2及びR3は、独立的に水素、又は置換又は非置換アリールを形成する為に一緒に結合される、及びMはH2又は金属である)。R2とR3は、共に結合してアリール系を形成し、このアリール系は、それぞれのピロール基体に対して縮合関係にある。
【0044】
Mは、Lu、Pd、Pt、Zn、Al、Sn、Y及びLaから成る群から選ばれる金属が好ましく、Pd、Pt及びLuを伴うそれらの誘導体が最も好ましい。適当な金属誘導体の例としては、Pdテトラベンゾポルフィリン(PdTBP)、Pdテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(PdTPTBP)及びPtTBP、PtTPTBP、LuTBP及びLuTPTBP及びナフタロポルフィリン、例えば、LuTNP、及びPdTPTNPが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、これらの全ては、米国特許出願番号第08/137,624号に記載されている。
【0045】
幾つかの好ましい実施態様では、燐光物質は、テトラベンゾポルフィリン(以後「TBP」と称する)化合物であり、これは上記式Iの化合物において、隣接するR2とR3基が共に結合してベンゼン環を形成し、これはそれぞれのピロール環に縮合する化合物に相当する。又、隣接するR2とR3基が共に結合してナフタレンとアントラセン環系をそれぞれに形成する、テトラナフトポルフィリン(以後「TNP」と称する)及びテトラアントラポルフィリン(以後「TAP」と称する)化合物が好ましい。縮合ベンゼン環を持つ事によって、ナフタレンとアントラセン環系は、それぞれのピロール環に縮合する。
【0046】
特に指示しない限り、或いは記載から明らかでない限り、「TBP」化合物に対するここでの更なる参照は、又、TNPとTAP化合物にも適用されるものと理解される。
【0047】
好ましいTBP化合物は、次式を有する。
【化2】


(ここで、R1及びMは、上で定義されたものである)。特に、好ましいTBP化合物は、メタロテトラベンゾポルフィリン(以後「MTBP」と称する)(ここでMは、前述の金属又は金属誘導体である)である。TBP化合物の中でも特に好ましい化合物は、上記式IIの化合物であり、式中のR1の少なくとも一つは置換又は非置換フェニルである。これらの化合物は、以後、フェニルテトラベンゾポルフィリン(以後「PhTBP」と称する)として参照される。好ましいPhTBP化合物としては、次式を有する、メソ−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(以後「m−TPhTBP」と称する)を含む、置換又は非置換テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン(以後「TPTBP」と称する)化合物である。
【0048】
【化3】


(ここで、R2、R3及びMは、上に定義したものであり、R4は、置換基であり、xは0〜3の整数である)。特に好ましいTPTBP化合物は、式III(ここで、xは1〜3の整数である)の置換化合物である。
【0049】
本発明の好ましい置換化合物に関して、置換基は、非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン及びクロロホルム(CHCl3)及び水の様なプロトン溶媒を含む極性溶媒における溶解性を、その化合物の為の望ましい性質として与える事が望ましい。置換の程度及び置換基の性質は、溶解性の所望程度及び所望の溶媒又は溶媒混合物における溶解性を得る為に誂えても良い。
【0050】
(デンドリマー燐光物質の調製の実施例)
本発明における使用の為の燐光物質の好ましい合成方法が例示される。最初に、化学的に活性な官能基を持つPdTBPの合成が、更なる樹枝状フラグメントの付加を許す為に行われる。次に、ポルフィリンコアの周りのデンドリマーポリマー構造の実際の層毎の分散性生長が遂行されて、完全なプローブが形成される。
分岐した樹枝状フラグメントの収束性合成の代替実施例、それに続く制御ポルフィリン部分への結合も考えられる。
【0051】
((Pd)TBPの(Pd)MCTBPへの官能化)
本発明での使用の為のTBP及びテトラフェニルテトラベンゾポルフリン(TPTBP)は、コプラネンコフ等(Kopranenkov et al., J. Gen. Chem. (Russ.)51:2165-2168(1981))及びイチムラ等(Ichimura et al., Inorg. Chim. Acta. 182:83-86(1991)によって報告された方法によって、亜鉛塩の存在で、カリウムフタールイミドとフェニルアセテートとのテンプレート縮合(template condensation)によって合成する事が出来る。テトラトルイルテトラベンゾポルフィリンも又、約10%の収率で、縮合剤として4−メチルフェニルアセテートを使用して合成する事が出来る。然しながら、TBPとTPTBPは共に、更なる変性に適する官能基を含まず、官能基は、形成されるTBP及びTPTBP構造の為に付加されなければならない。
【0052】
本発明によるTBP及びTPTBPの変性の為の一般的な方法としては、a)TPTBP中のフェニル環の求電子性置換(クロロスルホン化、ニトロ化等)及びb)非置換TBPのメソ−位置のニトロ化とそれに続く還元及び1,3,5−トリカルボン酸フラグメントの付加の様な求電子性置換が挙げられる。
【0053】
TPTBP及びPdTPTBPのフェニル環が求電子性置換反応において最も活性である事は公知である。例えば、ビノグラドフとウイルソン(Vinogradov and Wilson, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2:103-111(1995))参照。然しながら、その様な反応は、常に必ずしも非常に選択性であるとは限らず、フェニル置換体のオルト−又はパラ−位で起る置換を伴い、反応生成物中に存在する様々なレジオ(regio)及び立体異性体の製造を伴って、非選択的に変性されたプローブとなり得る。図1において以下に例示される様に、PdTPTBPのクロロスルホン化は、テトラ置換クロロスルホネート−PdTPBPの混合物をもたらし、それぞれは、次いで、別々のアミンと反応して分散性デンドリマー生長を開始する事ができる。
【0054】
又、PdTPTBPは、容易にクロロスルホン化されて相当するスルホンアミドとアミノポリエチレングリコールへ転換する事が知られている。ビノグラドフ及びウイルソン(Vinogradov and Wilson(1995))参照。本発明によれば、又、メチル基で置換されたフェニル環の使用が、ステアリン限定(steric restriction)による求電子性置換、特に弱い求電子試薬が変性の為に使用される場合、それによって選択性が増加する場合の求電子性置換で形成される異性体の数を著しく減少させる事が考えられる。従って、本発明によれば、弱ルイス酸、例えば、LuCl3、ZnCl2、又はゼオライトの存在下で、硝酸エステルの様な試薬でのPdテトラトルイルテトラベンゾポルフィリンのニトロ化は、唯一のレジオ異性体(regioisomer)、Pdテトラ(4−メチル−3−ニトロフェニル)テトラベンゾポルフィリンをもたらす事が考えられる。次いで、これは、相当するアミノ誘導体(図2)に還元される。立体異性体の分離は、クロマトグラフ的に行う事が出来、方法は、メタ−及びオルト−テトラアミノフェニルポルフィリンの為に以前に記載されている。ローズ等(Rose et al., "Large-scale preparation of ∝,β,∝’,β’−atropoisomer of meso-tetrakis(o-aminophenyl)porphyrin,J.Org.Chem., 58:5030-5031(1993))参照。
【0055】
モハマジ等(Mohamadi et al., J. Comput. Chem. 11:440(1990))の報告に関してマクロモデル(MacroModel)(Unix (登録商標)Version 3.5,MM2 force field)で行った分子機構シミュレーションは、モノマー単位、例えば、グルタメートの6〜10の層が、最初の官能基がメソ−フェニル環のパラ−位に配置される場合は、分散性合成方法を使用して、ポルフィリンに付加されて、中心のポルフィリンフラグメントの良好な保護を達成する事を示す(図3A参照)。これは、約14,000〜30,000ダルトンの分子量を持つ分子をもたらす。然しながら、その様な大きな種は、血流からの抽出が困難な為に実用上はそんなに有用ではないかも知れない。
【0056】
更なる実験的データは、三つの層が、略15.03/Pa秒〜約5.63/Pa秒(略2x103/Torr秒〜約750/Torr秒)の酸素消光定数を減少させる事を示した。後者は、アルブミンに結合したポルフィリンで観察されたものに類似し、in vivoでの測定に適する。従って、グルタメートの四層までは、最適化された酸素プローブを達成するのに十分である事が望ましい。如何なる場合でも、分子モデル化は、デンドリマー生長がメタ位から出発する場合は、球状構造がより速く形成し、モノマーの3〜5層だけが、完全に球状の構造の発生に必要である事を示す(図3b参照)。この場合、プローブ分子の分子量は約4,000〜5,000ダルトンであり、これは、腎臓フィルターを通る良好な透過にとって望ましいサイズである。従って、官能基が、メソ−フェニル置換体のメター位に選択的に導入される事が好ましい。然しながら、ポルフィリン部分は、求電子性置換をフェニル環のパラ−及びオルト−位置に向けるものと考えられる。
【0057】
本発明の更なる実施態様では、メタ−(又はプソイドメタ−)官能基を持つPdTBPの形成を達成する為のその他の反応経路が提供される。この反応は、非置換TBPのメソ−位置への直接ニトロ化を基本とするものである(図4a参照)。図4aに示される様に、矢印は、求電子性攻撃の最も可能性のある方向を示す。ポルフィリンの直接ニトロ化は公知である。ドラック等(Drach et al., J. Org. Chem. 39:3282-3284(1974))及びボンネット等(Bonnet et al., J. Org. Chem. 30:2791-2798(1965))を参照。ZnTBPの直接ニトロ化も公知である。コプラネンコフ等(Kopranenkov et al., Chem. heter. Comp. (Russ.),960-964(1986))参照。この文献で示される様に、硝酸/酢酸及び亜硝酸/トリフルオロ酢酸を使用する事によって、4個のニトロ基までが、TBP循環(cycle)のメソ−位置に、11%までの収率で導入され得る。
【0058】
又、強力なイオン性ニトロ化剤、例えば、BF4NO2又は、極めて活性化された共有結合性ニトロ化系、例えば、AcONO2/BF3・ET2O及びRONO2/TiCl4が、ニトロ化全体の収率とテトラニトロテトラベンゾポルフィリン(TNTBP)の相対収率の両方を増加させる為に使用される。ニトロ化は、TBPがそのZn錯体として存在する時に、変換の初期段階で行う事が出来る。
【0059】
又、Znテトラニトロテトラベンゾポルフィリン(メソ−TNTBP)は、AcOH/H3PO4を使用して容易に脱金属化される事、及びPdのTNTBP中への挿入が、非置換TBP中よりも速く進む事、そしてこれは分子機構計算(マクロモデルV.3.5,MM2 force field)を使用して確認された様に、テトラニトロ化マクロ循環の増加した非平面性(increased non-planarity)によるものである事が分かった。TNTBP(又はPdTNTBP)の相当するテトラアミノテトラベンゾポルフィリン(TATBP又はPdTATBP)への還元は、図4bに示される。本発明によれば、得られるTATBPは、還元活性を増加させる系、例えば、Zn/HCl、SnCl2/AcOH、Na/MeOH、NaBH4/MeOH、LiAlH4/THFを使用する事によって、良好な収率で製造する事が出来る。
【0060】
TATBPの形成後、更なる誘導体化が、高い活性のアミノ基を使用する幾つかの方法によって達成する事が出来る。好ましい方法は、メタ−カルボキシル基を持つプソイドメソ−フェニル置換体を含有するTBP、又はここで命名される様な、メタカルボキシテトラベンゾポルフィリン(MCTBP)を製造する為に、ジクロロヘキシルカルボジイミド(DCCD)の存在下で1,3,5−ベンゼン−トリカルボン酸とTATBP(又はPdTATBP)との間でのアミド形成である。この好ましい例示的実施態様に関しては、MCTBP又はそのPd誘導体が、以下に示される様に樹枝状ポリマー生長の為のコアとして使用できる(図4c参照)。
【0061】
本発明の尚その他の観点においては、化学的に活性な官能性を持ち、樹枝状ポリマー生長の為のコアとして適する置換TPTBPに直接導く、官能化されたポルフィリンの好ましい直接合成が用意される。上記において検討された様に、テトラベンゾポルフィリン、TBP、及びテトラフェニルテトラベンゾポルフィリン、TPTBPは、一般に、Zn塩の存在下で、カリウムフタレートと酢酸ナトリウム又はナトリウムフェニルアセテートとのテンプレート縮合によって合成される。然しながら、このテンプレート縮合に必要とされる厳しい条件の為に、フタールイミド又は酢酸フェニルフラグメントの官能基は生き残れない。本発明によれば、変性条件下において、メソ−p−Br−フェニルテトラベンゾポルフィリン(PdTBrPTBP)及びメソ−p−Cl−フェニルテトラベンゾポルフィリン(PdTClPTBP)は、ブロモ−及びクロロ−酢酸フェニルから直接合成する事が出来る。これらの化合物は、次いで、Pd−触媒化相互結合及び触媒的カルボニル化の方法によって反応性の官能化TPTBPに転換出来る。例えば、Pd触媒で以って、Br−置換体を含むPdTPhTBPが、次の様にして相当するカルボキシル化合物に転換される。
【化4】

【0062】
アリールハライドをより反応性のアリール誘導体へ変換する為の、カルボニル化及び相互結合を含む触媒的反応は、コルグホウン等(Colguhoun et al., "Carbonylation:direct sybthesis of carbonyl compounds",Plenum Press,New York,(1991))及びヘック(Heck,"palladium reagents in organic synthesis",Academic press,New York,(1985))において検討されている。
【0063】
((Pd)MCTBPの周りにデンドリマーの構築)
デンドリマーは、多重置換したコア、例えば、多重置換ポルフィリンから、ポリマー層の増加と組合せなからそれらの異なるそれぞれの性質を伴って増殖する事が出来る。本発明に関する分散性樹枝状生長スキーム例は、官能性(Pd)MCTBPコアのその周りの構築として示される。収束性生長スキームも考えられる一方で、分散性生長は、PdMCTBPのより経済的使用を可能とし、且変性の各工程での光学的及び消光特性のより便利な測定を可能とする事が明らかなので好ましい。ポルフィリンの必要な保護が一度達成されると、酸素消光定数で測定される様に、余分な層の付加は必要なくなる。所望の最適なサイズを有する最終プローブ分子が簡単に合成される。
【0064】
本発明においては、分散性デンドリマーの形成の為の幾つかの公知のモノマー単位のいずれも有用であり、例えば、米国特許第4,507,466号明細書、第4,631,337号明細書、第4,558,120号明細書、第4,568,737号明細書、及び第4,587,329号明細書、及びトマリア等(Tomalia et al., Angewandte Chemie, Int. Ed. Eng. 29:138-175(1990))及びトマリア等(Tomalia et al., MacroMolecu1es, 19:2466-2468(1986))に記載されている。これらの全体の記述は、参照によってここに導入される。ポルフィリンコアの周りのデンドリマー生長を行う為に、本発明において使用するのに適したその他のモノマー単位は、例えば、米国特許第4,289,872号明細書に記述されている∝、ε−L−リシン及び、トワイマン等(Twyman et al., Perkin Trans. 1:407-411(1994))(参照によってここに導入される)に記載されている様な、適当な∝、β−不飽和カルボニル化合物との組合せにおける1,3−ジアミノプロパン−2−オールである事が出来る。
【0065】
本発明の好ましい実施態様においては、グルタミン酸ジアリルエステル(ジアリルグルタメート)が、PdMCTBPの変性の為のモノマー単位として使用される。ジアリルグルタメートは、図5で示される様に、二つの保護されたカルボキシル基と一つのアミノ基を有する。分岐及び樹枝状ポリマー形成は、ポリマー形成の各工程のアミノ結合の形成によって起る。図5での反応スキームは、単純な理由で描かれていて、非保護のグルタミン酸だけを例示するもので、ジアリルグルタメートは例示していない。
【0066】
ポルフィリンPdMCTBP(Pd−メソ−テトラ−(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン)のカルボキシル官能性とジアリルグルタメートとの間の反応は、THF中で、室温で、1.2モル過剰のDCCDの存在下で円滑に進み、実際に計量可能な収率で相当するテトラアミドを製造する。
【0067】
導入されたカルボキシル基上のアリル部分は、このエステルを温苛性ソーダ水溶液で処理する事によって簡単に除去できる。アミド結合は、これらの反応条件下では完全に安定である。従って、加水分解は、新たなグルタメート層の付加或いは第二の発生の為の用意となる二倍のカルボキシル基を持つポルフィリンを与える。全体の反応工程のこの二つの最初の工程は、図6に示される。工程1は、アミド結合形成を示し、一方、工程2は、アリルエステル保護基の塩基触媒加水分解を示す。最終反応生成物の精製は、例えば、「ケージされた」Znポルフィリンの精製に為に使用される、膜フィルター、透析及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用して達成する事が出来る。ジン等(Jin et al., J. Chem. Soc. Chem. Commun. 1260-1262(1993))参照。
【0068】
上記の通り、その他のモノマー単位がデンドリマー形成の為に使用する事が出来る。これらの単位は、例えば、収束性デンドリマー生長スキームでしばしば使用される様な、ハウカー等(Hawker et al., J. Am. Chem. Soc. 112:7683-7647(1990); and J. Am. Chem. Soc. 114:8404-8413(1992))及びウーリー(Wooly et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1:1059-1076(1991),(1992))(これらの全体の記載は、参照によってここに導入される)において記載されている様なエステル又はエステル結合の形成に適当な保護された官能基を有する事が出来る。
【0069】
本発明の更なる観点では、様々な疎水性基を持つ樹枝状ポルフィリンの外側層の変性は、コアポルフィリンの保護を改善する事が分かった。本発明の如何なる観点又は部分をも理論的に制限する積りはないが、表面疎水性基の付加は、水溶液中において一層緻密な構造の形成の原因となり、それによって酸素消光定数を減少させるものと考えられる。又、相対的に緩く充填されたポリアミドデンドリマー内での疎水性の相互作用は、それを、ポルフィリンコアに対する酸素分子の拡散速度を妨げるか少なくとも減少させる、高密度の更に小さなボール状構造へと収縮させる原因となるものと考えられる。例えば、図7に例示される様に、ポルフィリンの著しい保護は、二層化ポリグルタメートデンドリマーがL−ロイシンで表面変性される時に達成する事が出来る。更に、低い消光定数は、16個の11−アミノウンデカン酸残基で変性された二層化ポリグルタメートで観察される。図8参照。
【0070】
(毒性試験)
本発明に関する個々の候補に対する燐光物質の毒性評価は、次の手順で都合良く行う事が出来る。
【0071】
燐光物質粉末、グルタメートデンドリマーの二層を持つPd−メソ−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリンを、蒸留し脱イオン化し、0.2mMフィルターでフィルター滅菌化した水5ミリリットルに溶解して、培地における濃度が4.8と16マイクロモーラーの最終希釈物を用意する為に、8mMの濃度でpH7.4の溶液を用意した。
【0072】
貯蔵溶液を作る為に、そして燐光物質溶液の等量を各試験管に添加する為に三つの希釈物を用意した。対照の試験管には、同じ量の滅菌水が入れられた。
【0073】
それぞれの最終燐光物質希釈物(1:500、1:100.及び1:2000)を重複して調製した。対の試験管は、ミコバクテリウム・ツベルクロシス培養の二つの異なる濃度:1,000,000セル/mlと10,000セル/mlで接種された。同じバクテリア濃度が非燐光物質の対照試験管内に接種された。更に、三つの非接種試験管が、負の対照として、単なる燐光物質希釈物でセットされた。
【0074】
全ての高接種材料試験管は、培養(燐光物質のある場合と無い場合の両方)5日で陽性に転じ、低接種材料試験管は、7日(燐光物質のある場合と無い場合)で陽性となった。非接種対照試験管は無菌で残った。
【0075】
これは、与えられた濃度での燐光物質は、試験された液体媒体中において、M.ツベルクロシスの増殖に影響を与えない事を示す。
【0076】
(燐光測定装置)
好ましい形式では、20〜20,000Hzの周波数において正弦的にウレート(ulate)される励起光が使用される。この光源は、幾つかの異なる源のいずれかである事が出来、変調は、光源の直接的変調でも、或いは光りを透過光の為にスロットで回転する車輪の様な変調装置を通過させる事でも良い。好ましい形式では、光源は光発光ダイオード(LED)又はレーザーダイオードであり、後者は前者の特別な場合である。これらの固体状態光源は、所望の周波数で容易に変調でき、単色、即ち、光発光が、主に、広い帯域(LEDに対して半分の高さで約60nmのバンド幅まで)又は1nm未満(レーザーダイオードに対して)の狭い帯域で起るものである。結果として、燐光寿命の測定の為のこのタイプへの最適な適用の為には、僅かな光学的フィルタリングが必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、分散性デンドリマー生長を開始させる為の、PdTBP及びPdTPTBP官能化誘導体の製造の例示的実施態様を示す。
【図2】図2は、分散性デンドリマー生長を開始させる為の、PdTBP及びPdTPTBP官能化誘導体の製造のその他の例示的実施態様を示す。
【図3】図3aは、メソ−フェニル環のパラ−位置に配置された官能基を持つコア官能化ポルフィリン上でのデンドリマー生長の製造を例示する。図3bは、メソ−フェニル環のメタ−位置に配置された官能基を持つコア官能化ポルフィリンのデンドリマー生長の製造を例示する。
【図4a−4b】図4aは、非置換TBPをメソ−位置に直接ニトロ化して(Pd)テトラニトロテトラベンゾポルフィリン(PdTNTBP)を製造する、メタ−(又はプソイドメタ)官能基を持つ官能化PdTBPの製造の本発明の好ましい実施態様を例示する。図4bは、(Pd)TNTBPを相当するテトラアミノテトラベンゾポルフィリン(TATBP又はPdTATBP)に変換する事による、図4aの官能化コアポルフィリンの好ましい実施態様を更に例示する。
【図4c】図4cは、図4bのTATBP又はPdTATBPを1,3,5−ベンゼントリカルボン酸で更に官能化して(Pd)メタカルボキシテトラベンゾポルフィリン(MCTBP又はPdMCTBP)を製造する為の本発明の好ましい実施態様を更に例示する。
【図5】図5は、グルタミン酸を使用して形成されるアミド結合による分散性デンドリマー生長形式における分岐の発生を例示する。
【図6】図6は、コアポルフィリンとしてMCTBP又はその誘導体PdMCTBPと、モノマー単位としてジアリルグルタメートを使用して、二世代にわたる分散性デンドリマー生長の本発明の好ましい実施態様を例示する。
【図7】図7は、樹枝状ポルフィリンの外層の変性の本発明の好ましい実施態様を例示する。
【図8】図8は、樹枝状ポルフィリンの外層の変性の本発明のその他の好ましい実施態様を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地中の微生物の増殖検出並びに同定方法であって、
1)可溶性の酸素消光性の燐光化合物を含む培地を用意すること、
2)前記培地に、一種以上の微生物を有するか、さもなければ関連する事が疑われる基質を接種すること、及び、
3)前記燐光化合物を発光させて、前記化合物の前記培地中における酸素の消光を観察する事によって微生物増殖を検出し前記微生物を同定すること、
を含む方法。
【請求項2】
前記酸素消光性燐光化合物が、次式を有する、請求項1に記載の方法。
【化1】


(ここで、R1は、水素原子又は置換又は非置換アリール基であり、R2及びR3は、独立的に水素であるか、置換又は非置換アリールを形成する為に一緒に結合されるものであり、Mは、H2又は金属である)。
【請求項3】
前記化合物において、Mが、Zn、Al、Sn、Y、La、Lu、Pd、Pt及びそれらの誘導体から成る群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポルフィリンが、テトラベンゾポルフィリン、テトラナフトポルフィリン、テトラアントラポルフィリン及びそれらの誘導体から成る群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物において、金属が、Zn、Al、Sn、Y、La、Lu、Pd、Pt及びそれらの誘導体から成る群から選ばれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物において、誘導体がメソ−テトラフェニル化化合物である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
メタロポルフィリンが、テトラフェニルテトラベンソポルフィリンである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
メタロポルフィリンが、(Lu)テトラフェニルテトラナフトポルフィリンである、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
メタロポルフィリンが、メソ−テトラ−(4−カルボキシルフェニル)ポルフィリンである、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
メソ−テトラフェニルテトラベンゾポルフィリンである、請求項6の化合物。
【請求項11】
メソ−テトラフェニルテトラナフトポルフィリンである、請求項4の化合物。
【請求項12】
ポルフィリンが、テトラベンゾポルフィリンである、請求項4の化合物。
【請求項13】
前記化合物が第一、第二、第三、第四又は第五世代デンドリマーである、請求項6の化合物。
【請求項14】
前記デンドリマーが、ポリグルタメート樹枝状ケージを含む、請求項13の化合物。
【請求項15】
前記微生物が、バチルス(Bacillus)属、ミコバクテリア(Mycobacterium)属、アクチノマイセス属(Actinomyces)、ノカルディア(Nocardia)属、スードモナス(Pseudomanas)属、メタノモナス(Methanomas)属、プロタミノバクター(Protaminobacter)属、メチロコッカス(Methylococcus)属、アースロバクター(Arthrobacter)属、メチロマナス(Methylomanas)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、アセトバクター(Acetobacter)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、ロードスードモナス(Rhodopseudomonas)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、メチロバクター(Methylobacter)属、メチロシナム(Methylosimum)属、メチロシスチス(Methylocystis)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、及びそれらの混合物由来の種から成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物が、ツベルクロシス媒介物M.ツベルクロシス、M.ボリス及びM.アビウムから成る群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記培地中に存在する前記微生物が、ブロス又はゲルから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記培地が、醗酵方法である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a−4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−106291(P2009−106291A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−290799(P2008−290799)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【分割の表示】特願平11−500933の分割
【原出願日】平成10年5月29日(1998.5.29)
【出願人】(504470705)オキシジェン エンタープライジズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】