説明

培養システム

本明細書において、少なくとも1つのウエルが内部に形成されているプレート本体を有するマイクロプレートを提供し、ウエルは、第1の開口端、第2の端部、第2の端部中に形成されるアパーチャ、および第1の開口端と第2の端部との間に延在する側壁を有する。このマイクロプレートは、第2の端部中に形成されるアパーチャに少なくとも部分的に広がる透過性メンブランをさらに有する。溶液からの特定の溶質(高分子量または低分子量の溶質)の除去だけでなく、巨大分子混合物の分離およびそれ自体の分解をも可能にする透過性メンブランをマイクロプレートは備える。このマイクロプレートは、一体化上部アセンブリまたは一体化挿入部をさらに備える。また、本明細書において、上記のマイクロプレートにおける培養システムの方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2008年10月22日出願の米国仮特許出願第61/107,640号の利益を主張し、その出願の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ある容器の使用および培養システムのためのそれらの容器の使用に関する。
【0003】
発明の概要
本明細書において、三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるためのデバイスを提供し、このデバイスは、少なくとも1つの容器(マイクロプレートウエル)によって受容されて容器(マイクロプレートウエル)内部に少なくとも部分的に収容されるように構成されている少なくとも1つの挿入部を備え、各挿入部が、分解性、透過性の底壁と、個別の流体コンパートメントを画定する、底壁に接続された少なくとも1つの側壁とを含み、前記底壁のそれぞれが、各挿入部と容器(マイクロプレートウエル)の下位部との間の流体連通が可能になるように構成されている多孔性マトリックスを含み、前記少なくとも1つの挿入部のそれぞれが、前記底壁の上部に足場をさらに備える。
【0004】
一つの態様では、挿入部は、流体を保持することができ、前記流体は、前記各挿入部とマイクロプレートウエルの下位部との間で連通している。
【0005】
このデバイスは、マルチウエル挿入部を備えることができる。
【0006】
一つの態様では、この足場は、三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるための三次元の足場を備える。
【0007】
分解性、透過性の底壁は、限定されないが、細胞性メッシュ、デキストラノマーマイクロスフェア、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、Matrigel、綿、セルロース、顆粒、シート、布、生分解性マイクロスフェア、ヒドロゲル、ガーゼ、改変多(糖類)、キトサン、デンプン、ゼラチンコポリマー製フィルム、生体適合性充填剤、コラーゲン、アルギン酸、フィブリン、アガロース、改変アルギン酸、エラスチン、キトサン、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、プルロニック、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(無水物)、ポリ(プロピレンフマレート)、ネコガット縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストラン、混合セルロースエステル、ポリエステルで覆われた混合セルロースエステル、カルボン酸基強化ポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのマルチブロックコポリマー、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エステル)、ポリ乳酸(PLA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリグリコール酸(PGA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLG)のコポリマーもしくはそのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)もしくはそのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含む。
【0008】
一側面では、少なくとも1つの挿入部は、前記デバイスから取外し可能である。例えば、取外し可能な挿入部は、接続されていない挿入部であっても、または複数の接続されている挿入部(一体化上部アセンブリ)の部分であってもよい。
【0009】
一つの態様では、1つまたは2つ以上の挿入部は、デバイスに溶接されていてもよい。
【0010】
一つの態様では、細胞が前記足場に付着し、および/または三次元の培養物を生成した後に、底壁は分解する。例えば、底壁は、約10分〜約1年の時間をかけて分解することができる。あるいは、底壁は、約48時間超〜約1年の時間をかけて分解することができる。
【0011】
一つの態様では、前記挿入部中で培養した細胞は、前記足場に付着することができる。あるいは、前記挿入部中で培養した細胞は、前記足場に付着しない。さらに別の態様では、前記挿入部中で培養した細胞は、前記足場内に組み込まれる。
【0012】
本明細書において、マルチウエルプレート器具を提供し、前記器具は、第1のアレイを形成する複数の第1の容器(ウエル)と、前記第1の容器(ウエル)の第1のアレイと整列させた第2のアレイを形成する複数の第2の容器(ウエル)とを備え;前記第1のアレイの容器(ウエル)と前記第2のアレイの容器(ウエル)とが一緒になって連結され、前記複数の第2の容器(ウエル)のそれぞれが、前記第1のアレイの容器(ウエル)と前記第2のアレイの容器(ウエル)との間の界面において、分解性、透過性の底壁、および前記メンブランの上部の足場を有する。
【0013】
一つの態様では、この器具は、流体を保持することができ、前記流体は、前記複数の第1および第2の容器(ウエル)と連通している。
【0014】
一つの態様では、分解性、透過性の底壁は、マルチウエル挿入部を備える。
【0015】
前記器具の足場は、三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるためのマトリックスを備えることができる。
【0016】
分解性、透過性の底壁は、限定されないが、細胞性メッシュ、デキストラノマーマイクロスフェア、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、Matrigel、綿、セルロース、顆粒、シート、布、生分解性マイクロスフェア、ヒドロゲル、ガーゼ、改変多(糖類)、キトサン、デンプン、ゼラチンコポリマー製フィルム、生体適合性充填剤、コラーゲン、アルギン酸、フィブリン、アガロース、改変アルギン酸、エラスチン、キトサン、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、プルロニック、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(無水物)、ポリ(プロピレンフマレート)、ネコガット縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストラン、混合セルロースエステル、ポリエステルで覆われた混合セルロースエステル、カルボン酸基強化ポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのマルチブロックコポリマー、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エステル)、ポリ乳酸(PLA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリグリコール酸(PGA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLG)のコポリマーもしくはそのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)もしくはそのコポリマー、および/またはそれらの混合物を含む。
【0017】
一つの態様では、挿入部は、取外し可能であり得る。取外し可能な挿入部は、接続されていない挿入部であっても、または複数の接続されている挿入部(一体化上部アセンブリ)の部分であってもよい。
【0018】
一つの態様では、挿入部は、器具に溶接されていてもよい。
【0019】
別の態様では、細胞が前記足場に付着し、および/または三次元の培養物を生成した後に、底壁は分解する。例えば、底壁は、約10分〜約1年の時間をかけて分解することができる。あるいは、底壁は、約48時間超〜約1年の時間をかけて分解することができる。
【0020】
一つの態様では、前記第2のアレイの容器(ウエル)中で培養した細胞は、前記足場に付着することができる。あるいは、前記第2のアレイの容器(ウエル)中で培養した細胞は、前記足場に付着しない。さらに別の態様では、前記第2のアレイの容器(ウエル)中で培養した細胞は、前記足場内に組み込まれる。
【0021】
本明細書において、(a)細胞支持手段;(b)酸素および栄養素の輸送手段;(c)分解性、透過性のメンブラン;ならびに(d)足場手段を提供する、経時的に分解する透過性メンブランと細胞を三次元の配置で培養するための足場との使用を提供する。
【0022】
分解性、透過性のメンブランは、挿入部の部分を含むことができる。一つの態様では、挿入部は、取外し可能であり得る。取外し可能な挿入部は、接続されていない挿入部であっても、または複数の接続されている挿入部(一体化上部アセンブリ)の部分であってもよい。
【0023】
一つの態様では、器具の前記第2のアレイのウエルを、第1のアレイのウエルに溶接することができる。
【0024】
別の態様では、細胞が前記足場に付着し、および/または三次元の培養物を生成した後に、底壁は分解する。例えば、底壁は、約10分〜約1年の時間をかけて分解することができる。あるいは、底壁は、約48時間超〜約1年の時間をかけて分解することができる。
【0025】
一つの態様では、前記第2のアレイのウエル中で培養した細胞は、前記足場に付着することができる。あるいは、前記第2のアレイのウエル中で培養した細胞は、前記足場に付着しない。さらに別の態様では、前記第2のアレイのウエル中で培養した細胞は、前記足場内に組み込まれる。
【0026】
参照による組込み
本明細書において言及する刊行物、特許および特許出願は全て、個々の刊行物、特許および特許出願がそれぞれ、参照により組み込まれることが具体的かつ個々に示されるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
本発明の詳細な説明
組織培養の器具(例えば、挿入部ウエル)においては、細胞試料または組織試料が、栄養培地から、透過性メンブランによって分離される。そこでは、栄養素の濃度勾配が発生し、この透過性メンブランを通して細胞を養うことができる。この配置は、in vivoにおける状況をより厳密に反映する。この透過性メンブランは、管状の支持体の底部末端につながり、一方、この支持体はその上端において、栄養素を含有するウエルの上部から、フランジによって垂れ下がる。支持体のフランジによって、支持体およびメンブランは、ウエルの中心に位置する。支持体の側壁中の開口部が、ウエルに流体を添加し、そこから流体を取り出すためのピペットの接近手段を提供する。
【0028】
本発明は、多様な異なる細胞および組織をin vitroにおいてより長期間にわたり培養するために用いることができる三次元細胞培養システムに関する。所望の組織から得られた細胞を、あらかじめ確立された間質性支持体マトリックス上に接種し、生育せしめる。この間質性支持体マトリックスは、三次元マトリックス上でサブコンフルエンスに生育した、線維芽細胞等の間質細胞を含む。また、間質細胞は、緩い結合組織中に見出されるその他の細胞、例として、骨髄間質等中に見出される内皮細胞、マクロファージ/単核球、脂肪細胞、周皮細胞、細網細胞も含むことができる。この間質性マトリックスは、培養物中で細胞の活性な増殖を長期に維持するのに必要である支持体、増殖因子および調節因子を提供する。この三次元のシステム中で生育せしめると、増殖細胞が成熟し、適切に分かれて、in vivoにおいて見出される対応物に類似する成体組織の構成成分を形成する。
【0029】
間質細胞を三次元で生育せしめると、単層システムよりも長い期間にわたって培養物中の細胞の活発な増殖が維持される。このことは部分的に、三次元マトリックスの表面積の増加に起因するものである可能性があり、その結果として、サブコンフルエントな状態がより長い期間にわたり生じ、その間に、間質細胞が活発に増殖する。これらの増殖しているサブコンフルエントな間質細胞は、間質細胞、および間質性マトリックス上に接種した組織特異的細胞の両方の長期の増殖をサポートするのに必要であるタンパク質、増殖因子および調節因子を作り上げる。さらに、このマトリックスの三次元性によって、in vivoにおける条件をより厳密に近似する空間分布が可能になり、そのため細胞の成熟および遊走の助けとなる微小環境を形成することも可能になる。タンパク質、糖タンパク質、グルコサミノグリカン、細胞マトリックスおよびその他の材料を支持体それ自体に添加するか、またはこれらの材料を用いて支持体を被覆することによって、この支持体の存在下における細胞の生育をさらに増大せしめることができる。
【0030】
三次元の支持体を用いることによって、細胞を複数の層として生育せしめること、そのため本発明の三次元細胞培養システムを創出することが可能になる。骨髄、皮膚、肝臓、膵臓および多くのその他の細胞型および組織を、三次元培養システム中で生育せしめることができる。また、不死化細胞系(例えば、Caco−2、MDCK等)も、三次元培養システム中で生育せしめることができる。得られた培養物は、培養物中で生育した細胞のin vivoにおける移植または埋込みから、in vitroにおける細胞傷害性の試験および化合物のスクリーニング、およびin vitroにおいて生物学的な材料を産生するための「バイオリアクター」の設計にまで及ぶ多様な用途を有する。
【0031】
本明細書で用いる以下の用語は、以下に示す意味を有するものとする。
【0032】
付着層:三次元マトリックスに直接付着している細胞、またはマトリックスにそれ自体が直接付着している細胞に対する付着によって間接的に接続している細胞。
【0033】
間質細胞:線維芽細胞であり、緩い結合組織中に見出されるその他の細胞および/または要素を有するか有さないもの。限定されないが、内皮細胞、周皮細胞、マクロファージ、単核球、血漿細胞、肥満細胞、脂肪細胞等を含む。
【0034】
組織特異的な細胞または実質細胞:ある器官の必須の特徴的な組織を形成する、その支持フレームワークとは区別される細胞。
【0035】
三次元マトリックス:(a)細胞がそれに付着するのを可能にし(または細胞がそれに付着するのが可能になるように改変することができ)、かつ(b)細胞を2つ以上の層として生育せしめるのを可能にする任意の材料および/または形状から構成される三次元マトリックス。この支持体に間質細胞を接種して、三次元の間質性マトリックスを形成する。
【0036】
三次元の間質性マトリックス:マトリックス上に間質細胞を接種して、サブコンフルエンスに生育した状態にした三次元マトリックス。この間質性マトリックスは、後に接種する組織特異的細胞の生育をサポートして、三次元の細胞培養物を形成する。
【0037】
三次元細胞培養物:組織特異的細胞を接種し、培養した三次元の間質性マトリックス。一般に、三次元の間質性マトリックスに接種するために用いる組織特異的細胞は、その組織にとっての「幹」細胞(または「補充」細胞)、すなわち、組織の実質を形成する特殊化した細胞に成熟する新しい細胞を形成する細胞を含むべきである。
【0038】
三次元の間質性支持体上で生育せしめた細胞は、複数の層として生育して、細胞マトリックスを形成する。このマトリックスシステムは、単層の組織培養システムよりin vivoにおいて見出される生理的条件に大幅に近い。この三次元の細胞培養システムは、異なる型の細胞の増殖、ならびに限定されないが、例を挙げると、骨髄、皮膚、肝臓、膵臓、腎臓、副腎および神経学的組織を含めたいくつかの異なる組織の生成に適用できる。
【0039】
本培養システムは、多様な適用法(applications)を有する。例えば、組織、例として、皮膚、腺等の場合、三次元培養物それ自体を、生存している生物体内に移植するかまたは埋め込むことができる。あるいは、骨髄等のびまん性組織の場合、増殖細胞を、この培養システムから単離して、移植することもできるであろう。また、三次元培養物を、in vitroにおいて細胞傷害性の試験および化合物のスクリーニングのために用いることもできる。さらに別の適用例では、この三次元培養システムを、多量の細胞性産物を産生するための「バイオリアクター」として用いることができる。
【0040】
本発明によれば、所望の組織(本明細書では、組織特異的細胞または実質細胞と呼ぶ)から得られた細胞を、あらかじめ確立された三次元の間質性マトリックス上に接種し、培養する。この間質性マトリックスは、三次元のマトリックスまたはネットワーク上でサブコンフルエンスに生育した間質細胞を含む。間質細胞は、線維芽細胞として本明細書においてより詳細に(fully)記載する追加の細胞および/または要素を有する場合も有さない場合もあるものを含む。線維芽細胞ならびに間質を含むその他の細胞および/または要素は、胎性であってもまたは成体起源であってもよく、それらは好都合な供給源、例えば皮膚、肝臓、膵臓等から得てよい。そのような組織および/または臓器は、適切な生検によって、または剖検時に得ることができる。実際のところ、死体臓器を用いて、間質の細胞および要素を供給して頂くことができる。
【0041】
胎性線維芽細胞は、この三次元培養システムにおいて、多くの異なる細胞および組織の生育をサポートし、したがって、「ジェネリックな」間質性の支持体マトリックスを形成するためにマトリックス上に接種して、多様な細胞および組織のうちのいずれかを培養することができる。しかし、特定の場合には、「ジェネリックな」間質性の支持体マトリックスではなく、「特定の」間質性の支持体マトリックスを用いるのが好ましい場合があり、その場合には、間質の細胞および要素を、特定の組織、臓器または個体から得ることができる。例えば、三次元培養物を、in vivoにおいて移植または埋込みの目的で使用しようとする場合、間質の細胞および要素を、移植または埋込みを受けようとする個体から得るのが好ましいかもしれない。このアプローチは、移植片の免疫学的拒絶および/または移植片対宿主病の可能性が高い場合にはとくに好ましいかもしれない。さらに、線維芽細胞ならびにその他の間質の細胞および/または要素を、この三次元のシステム中で培養しようとする組織の同じ型から得ることもできる。このことは、その中で、特殊化した間質細胞が特定の構造的/機能的な役割を担うことができる組織を培養する場合には好ましいかもしれない。それらは、例えば神経学的組織のグリア細胞、肝臓のクッパー細胞等を包含する。
【0042】
三次元マトリックス上に接種されると、間質細胞はこのマトリックス上で増殖しサブコンフルエンスを達成し、本発明の三次元培養システム中に接種した組織特異的細胞の生育をサポートする。実際のところ、三次元のサブコンフルエントな間質性の支持体マトリックスは、組織特異的細胞を接種すると、培養物の活発な増殖を長期にわたり維持する。増殖因子および調節因子を培養物に添加することができるが、そうすることは必ずしも必要ではない。それらの因子は、間質性の支持体マトリックスによって産生されるからである。
【0043】
三次元における間質細胞の生育によって、培養物中の間質細胞および組織特異的細胞の両方の活発な増殖が、単層システムよりもはるかに長期にわたり維持される。さらに、この三次元のシステムは、in vitroにおいて培養物中の細胞の成熟、分化および分離をサポートして、in vivoにおいて見出される対応物に類似する成体組織の構成成分を生成させる。
【0044】
三次元細胞培養システム
三次元の間質性支持体、培養システム自体、およびその維持、ならびに三次元培養物の種々の用途は、それらのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,963,489号および第5,624,840号に、より詳細に記載されている。
【0045】
三次元培養システムの多くの要素は以下のとおりである:
(a)三次元マトリックスは、タンパク質の付着のため、およびその結果として、間質細胞の接着のためのより大きな表面積をもたらす。
(b)マトリックスが三次元であるため、間質細胞はコンフルエンスに到達するまで単層における細胞よりも長期にわたり活発に生育する。この長期間のサブコンフルエントな状態の間に複製する間質細胞によって産生される増殖因子および調節因子は、培養物中の増殖の刺激および細胞分化の調節に部分的に関与することができる。
(c)三次元マトリックスにより、in vivoにおいて対応する組織中に見出されるものにより類似する細胞要素の空間分布が可能になる。
(d)三次元のシステム中では、細胞を生育せしめるための潜在的な体積が増加することによって、細胞の成熟の助けとなる微小環境の局在化を確立することが可能になり得る。
(e)三次元マトリックスによって、付着層中のマクロファージ、単核球、およびおそらくリンパ球等の遊走細胞の動きについての可能性がより大きくなることにより、細胞間相互作用が最大となる。
【0046】
三次元マトリックス(足場)
本明細書で用いる場合、三次元マトリックス(足場)は、(a)細胞が、それに付着するのを可能にし(もしくは細胞がそれに付着するのが可能になるように改変することができ)、その中に組み込まれることを可能にし、またはその上部上に置かれる(付着しない)ことを可能にし、かつ(b)細胞が、二層以上に生育するのを可能にする任意の材料および/または形状から構成される。この支持体に間質細胞を接種して、三次元の間質性マトリックスを形成することができる。
【0047】
該三次元の支持体は任意の材料および/または形状であってよく:(a)細胞がそれに付着することを可能にし(または細胞がそれに付着するのを可能ならしめるように改変することができること)、(b)細胞二層以上に生育することを可能にし、および(c)経時的に分解性である。一つの態様では、該マトリックスは分解性である。種々の天然ポリマー、合成ポリマーおよび生合成ポリマーが、生分解性でありかつ環境分解性である。分解性マトリックスは、1つの合成材料の合成材料から形成することができる。あるいは、分解性マトリックスは1種または2種以上の生物学的構成成分、とくに1種または2種以上の細胞外マトリックス構成成分を含むことができ、例えばとりわけタンパク質および/またはグリカンを含むこともできる。
【0048】
マルチウエル挿入部またはウエル挿入部は、生物学的耐性である(分解性/生分解性)材料のうちの1種または2種以上を含んでよい。
【0049】
ポリマーならびにそれらの関連のコポリマーおよびブレンドは、足場および/または細胞外マトリックスとして、細胞の浸透およびポリマーの分解のための多孔性構造を与える。組織の再生のために、十分な細胞の増殖および適切な分化を、三次元の細胞性複合材料中で達成してよい。不織布が、組織への適用例において足場として使用されており、Aigner,Jら、“Cartilage Tissue Engineering with Novel Nonwoven Structured Biomaterial Based on Hyaluronic Acid Benzyl Ester”、J.Biomed.Mater.Res.、1998、42、172〜181;Bhat,G.S.、“Nonwovens as Three−Dimensional Textiles for Composites”、Mater.Manuf.Process、1995、10、67〜688;Ma,T.、“Tissue Engineering Human Placenta Trophoblast Cells in 3−D Fibrous Matrix:Spatial Effects on Cell Proliferation and Function”、Biotechnol.Prog.、1999、15、715〜724、およびBhattarai,S.R.ら、“Novel Biodegradable Electrospun Membrane:Scaffold for Tissue Engineering”、Biomaterials、2004、25、2595〜2602に記載されている。それらのそれぞれの開示全体は、本明細書に組み込まれる。
【0050】
その他の生物学的耐性である材料として、限定されるものではないが、細胞性メッシュ、デキストラノマーマイクロスフェア、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、Matrigel、綿、セルロース、顆粒、シート、布、生分解性マイクロスフェア、ヒドロゲル、ガーゼ、改変多(糖類)、キトサン、デンプン、ゼラチンコポリマー製フィルム、生体適合性充填剤、コラーゲン、アルギン酸、フィブリン、アガロース、改変アルギン酸、エラスチン、キトサン、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、プルロニック、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(無水物)、ポリ(プロピレンフマレート)、ネコガット縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストラン、混合セルロースエステル、ポリエステルで覆われた混合セルロースエステル、カルボン酸基強化ポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのマルチブロックコポリマー、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エステル)、ポリ乳酸(PLA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリグリコール酸(PGA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLG)のコポリマーもしくはそのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)もしくはそのコポリマー、および/またはそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
生分解性材料は、例えば、コラーゲン、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールまたはそれらの混合物からなる群から選択される化学的なポリマーまたはモノマーであってよい。
【0052】
あるいは、生分解性材料は、例えば、アルギン酸、キトサン、サンゴ、アガロース、フィブリン、コラーゲン、骨、シリコーン、軟骨、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される天然の材料であってもよい。
【0053】
一つの態様では、生体材料は、ポリ乳酸(PLA)ポリマー、ポリグリコール酸(PGA)ポリマー、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLG)コポリマー生体材料またはそれらの混合物を含む。別の態様では、生体材料は、約85パーセントのラクチド対約15パーセントのグリコリドの比を有するPLGコポリマー生体材料を含む。
【0054】
一つの例では、生体材料ポリマーは、ポリ乳酸−コ−グリコール酸コポリマー生体材料であり、このコポリマー組成物内のラクチド構成成分とグリコリド構成成分との比を変化させる。別の例では、このポリマー組成物のうちの少なくとも第1の表面特性を変化させる。前述のうちのいずれもが、事実上いずれの生体適合性の材料もしくはデバイスと共に直接用いるのに、またはそれと共に用いるために適合させるのに適している。これらの生体適合性材料は、相互接続構造または開口孔構造を有する少なくとも第1の部分を含むことができる。
【0055】
とりわけ有用な脂肪族ポリエステルは、半結晶性のポリ乳酸から誘導されるものを含む。ポリ乳酸(またはポリラクチド)は、乳酸がその原則的な分解産物であり、乳酸は、天然に通常見出され、無毒性であり、医薬業界およびメディカル業界において広く用いられている。該ポリマーは、乳酸の二量体、すなわち、ラクチドの開環重合によって調製してよい。乳酸は、光学的に活性であり、この二量体は、4つの異なる形態、すなわち、L,L−ラクチド、D,D−ラクチド、D,L−ラクチド(メソラクチド)、ならびにL,L−およびD,D−のラセミ混合物として出現する。これらのラクチドを、純粋な化合物またはブレンドとして重合することによって、異なる立体化学、および結晶化密度を含めて異なる物性を有するポリラクチドポリマーを得てよい。
【0056】
ヒドロゲルポリマーは、多量の水または生物学的流体を吸収し、かつそれらに特徴的な三次元構造を維持する親水性の三次元ネットワークをなす。被覆は、光分極性のヒドロゲルポリマーまたは水和ポリ乳酸−コ−グリコール酸であってよい。
【0057】
ポリ乳酸−コ−グリコール酸に基づくヒドロゲルポリマーには、生物学的に適用するのに特定の利点がある。これは、それらの生体適合性が証明されており、細胞の生育および場合によっては(例えば、多重多能性(multipluripotent)幹細胞(MSC)の、骨等の複数の系列への)細胞の分化をサポートするそれらの能力が実証されていることによる。
【0058】
ポリマーの前記組合せ中のポリマーの型もしくはポリマーの比を改変して、または異なる分子量を有するポリマーもしくはそれらの混合物を用いて、分解速度を増加または減少させるように、生分解性メンブランを改変してよい。
【0059】
1つの非限定的な例では、ポリマーの組合せの改変は、ポリマーの前記組合せ中のポリマーの型の改変を含む。
【0060】
別の非限定的な例では、ポリマーの組合せの改変は、異なる分子量を有するポリマーの活用を含む。
【0061】
別の非限定的な例では、第1のポリマーの改変は、前記第1のポリマー組成物中のポリマーを活用して、前記第2のポリマー組成物を調製することを含み、前記第2のポリマー組成物中の前記ポリマーは、前記第1のポリマー組成物中の前記ポリマーとは異なる分子量を有する。
【0062】
さらに別の非限定的な例では、第1のポリマーの改変は、前記第1のポリマー組成物中の各ポリマーを活用して、前記第2のポリマー組成物を調製することを含み、前記第2のポリマー組成物中の各ポリマーが、前記第1のポリマー組成物中の前記同じポリマーとは異なる分子量を有する。
【0063】
ポリラクチドは、高い鏡像異性体の比を有して、このポリマーの固有の結晶化密度を最大にしてよい。ポリ(乳酸)の結晶化密度の程度は、ポリマー骨格の規則性およびその他のポリマー鎖と共に線状に結晶化する能力に基づく。比較的少量の1つの鏡像異性体(D−等)が、反対の鏡像異性体(L−等)と共重合すると、このポリマー鎖は、不規則な形状をとり、結晶性が低下する。これらの理由から、結晶化密度を最大にするためには、1つの異性体が、少なくとも85%、好ましくは、少なくとも90%、最も好ましくは、少なくとも95%をなすポリ(乳酸)を用いることが望ましい場合がある。
【0064】
また、本発明においては、D−ポリラクチドとL−ポリラクチドとのおよそ等モルのブレンドも有用である。このブレンドは、D−ポリラクチド単独およびL−ポリラクチド単独のいずれかの場合(約190℃)よりも高い融点(約210℃)を有するユニークな結晶構造を形成し、熱安定性の改善を示す。H.Tsujiら、Polymer、1999、40 6699〜6708を参照することができる。
【0065】
ブロックコポリマーおよびランダムコポリマーを包含する、ポリ(乳酸)とその他の脂肪族ポリエステルとのコポリマーを用いてもよい。有用なコ−モノマーは、グリコリド、ベータ−プロピオラクトン、テトラメチルグリコリド、ベータ−ブチロラクトン、ガンマ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、2−ヒドロキシ酪酸、アルファ−ヒドロキシイソ酪酸、アルファ−ヒドロキシ吉草酸、アルファ−ヒドロキシイソ吉草酸、アルファ−ヒドロキシカプロン酸、アルファ−ヒドロキシエチル酪酸、アルファ−ヒドロキシイソカプロン酸、アルファ−ヒドロキシ−ベータ−メチル吉草酸、アルファ−ヒドロキシオクタン酸、アルファ−ヒドロキシデカン酸、アルファ−ヒドロキシミリスチン酸およびアルファ−ヒドロキシステアリン酸を包含する。
【0066】
本発明においては、ポリ(乳酸)と、1種または2種以上のその他の脂肪族ポリエステルまたは1種または2種以上のその他のポリマーとのブレンドを用いてもよい。有用なブレンドの例は、ポリ(乳酸)と、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール/ポリコハク酸、ポリエチレンオキシド、ポリカプロラクトンおよびポリグリコリドとのブレンドを包含する。
【0067】
脂肪族ポリエステルと第2の非結晶性または半結晶性のポリマーとのブレンドにおいては、第2のポリマーが比較的少量で存在する場合、第2のポリマーは一般に、脂肪族ポリエステルの連続相内部に分散する個別の相を形成する。ブレンド中の第2のポリマーの量を増加させると、第2のポリマーを、分散相または個別の相として容易に同定することがもはやできない組成範囲に到達する。ブレンド中の第2のポリマーの量をさらに増加させると2つの共連続相(co−continuous phase)がもたらされ、次いで、相反転がもたらされ第2のポリマーが連続相になる。一つの態様では、脂肪族ポリエステル構成成分が連続相を形成し、一方、第2の構成成分が、第1のポリマーの連続相内部に分散する不連続相もしくは個別の相を形成するか、または両方のポリマーが共連続相を形成する。第2のポリマーが共連続相を形成するのに十分な量で存在する場合、それに続く配向および微細線維化の結果として、両方のポリマーの微細線維を含む複合品を生じる場合がある。
【0068】
米国特許第6,111,060号(Gruberら);米国特許第5,997,568号(Liu);米国特許第4,744,365号(Kaplanら);米国特許第5,475,063号(Kaplanら);WO98/24951(Tsaiら);WO00/12606(Tsaiら);WO84/04311(Lin);米国特許第6,117,928号(Hiltunenら);米国特許第5,883,199号(McCarthyら);WO99/50345(Kolstadら);WO99/06456(Wangら);WO94/07949(Gruberら);WO96/22330(Randallら);WO98/50611(Ryanら);米国特許第6,143,863号(Gruberら);米国特許第6,093,792号(Grossら);米国特許第6,075,118号(Wangら)、および米国特許第5,952,433号(Wangら)の記載に従って、有用なポリラクチドを調製することができる。それぞれの米国特許の開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。また、J.W.Leenslagら、J.Appl.Polymer Science、1984、29、2829〜2842、およびH.R.Kricheldorf、Chemosphere、2001、43、49〜54も参照することができる。これらのそれぞれの開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
最大の物性を得て、前記ポリマー製のフィルムを細繊維化に適するようにするために、前記ポリマー鎖は2つの主要な軸に沿って配向する(二軸配向)必要がある。分子の配向の程度は一般に、延伸比、すなわち、機械の元々の長さに対する最終的な長さの比、および左右軸寸法によって定義される。該配向は、カレンダ加工のステップおよび長さの配向のステップを含む手法の組み合わせによってもたらされてよい。
【0070】
適切であり得る細胞外マトリックスの構成成分または混合物のさらなる側面は、米国特許公開第20030104494号公報および第20030166015号公報に記載されている。それらのそれぞれの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
生分解性の調節を、ポリマーのC−C骨格に化学的な連結を付加することによって調整してよく、該連結は無水物、エステル、アミドによる結合等である。PLA、PGAもしくはPCL(またはそれらのコポリマー)が分解すると、対応するヒドロキシ酸が生じ、それらは、in vivoにおける使用に安全である。その他の生分解性/環境劣化性のポリマーには、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカノエート)、追加のポリ(エステル)があり、限定されないが、改変多(糖類)(例えば、デンプン、セルロースおよびキトサン)を含めた、天然のポリマーを用いることができる。キトサンは、技術的に重要な生体材料である。キチンは、セルロースに次いで、世界で2番目に豊富に存在する天然のポリマーである。キチンを脱アセチル化すると、キトサンが生じ、さらに加水分解すると、極めて低い分子量のオリゴ糖が生じる。キトサンは、例えば、生分解性フィルムとしての特性を含めて、広い範囲の有用な特性を有する。
【0072】
また、本明細書においては、三次元の分解性マトリックス中で用いるための、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのマルチブロックコポリマーも企図する。分解速度は、PEOの分子量および含有量の影響を受ける。さらに、これらのコポリマーを改変して、分解速度を調節することもできる。例えば、水の取り込みが最も多いコポリマーは、最も迅速に分解する。
【0073】
1つの非限定的な態様では、三次元マトリックスを、PGAとPLAとから作製してよい。PGAとPLAとの比を調節して、このマトリックスの分解速度を増加または減少させることができる。
【0074】
これらの材料はいずれもメッシュに織って、例えば三次元マトリックスを形成することができる。
【0075】
生分解性マトリックスは、この三次元培養物自体がin vivoにおいて埋め込まれる場合に用いてよい。
【0076】
三次元マトリックス上への組織特異的細胞の接種、および培養物の維持
線維芽細胞を含む間質細胞を、以下に記載するその他の細胞および要素を有しても有さなくても、該マトリックス上に接種してよい。これらの線維芽細胞は、臓器、例として、皮膚、肝臓、膵臓等から得てよい。それらの臓器は、(適切な場合には)生検によってか、または剖検時に得ることができる。実際に、任意の適切な死体臓器から、線維芽細胞を多量にかなり好都合に得ることができる。先に説明したように、胎性線維芽細胞を、多様な異なる細胞および/または組織の生育をサポートする「一般的な」三次元の間質性マトリックスを形成するために用いることができる。しかし、培養しようとする組織の同じ型から得た線維芽細胞、ならびに/または本発明の三次元のシステムによる培養物中で生育される細胞および/もしくは組織を後に受容しようとする特定の個体から得た線維芽細胞を、この三次元マトリックスに接種することによって、「特定の」間質性マトリックスを調製することができる。
【0077】
線維芽細胞の供給源になり得る適切な臓器または組織を解体することによって、線維芽細胞を容易に単離することができる。これは当業者に既知の手法を用いて容易に達成することができる。例えば、組織または臓器を、機械的に解体し、および/または隣接細胞間のつながりを弱め、感知され得る細胞の破損を生じることなく、組織を分散させて、個々の細胞の懸濁液となすことを可能にする消化酵素および/もしくはキレート剤を用いて処理する。酵素による解離は、組織を刻み、この刻んだ組織を、いくつかの消化酵素のうちのいずれかの単独または組合せのいずれかを用いて処理することによって達成することができる。これらの酵素として、トリプシン、キモトリプシン、コラーゲナーゼ、エラスターゼ、および/またはヒアルロニダーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、プロナーゼ、ディスパーゼ等が挙げられるが、これらに限定されない。また、機械的な破壊も、例を挙げると、限定されないが、グラインダー、ブレンダー、ふるい、ホモジナイザー、圧力セルまたは超音波処理デバイスの使用を包含するいくつかの方法により達成することができる。組織の解体の手法の総説については、Freshney、Culture of Animal Cells.A Manual of Basic Technique、2版、A.R.Liss,Inc.、New York、1987、9章、107〜126頁を参照されたい。
【0078】
組織を個々の細胞の懸濁液にまで破壊すれば該懸濁液は亜集団に分割してよくそこから線維芽細胞ならびに/またはその他の間質の細胞および/もしくは要素を得てよい。これは細胞の分離のための標準的な手法を用いても達成することができるところ、それらの手法として、限定されないが、特定の細胞型のクローニングおよび選択、望まれない細胞の選択的破壊(陰性選択)、混合性集団中の示差的な細胞の凝集能に基づく分離、凍結解凍法、混合性集団中の細胞の示差的な接着特性、ろ過、従来のゾーン遠心分離、遠心分離による水簸(centrifugal elutriation)(逆流遠心分離(counter−streaming centrifugation))、単位重力分離(unit gravity separation)、向流分配、電気泳動、および蛍光活性化細胞分取が挙げられる。クローン選択の手法および細胞分離の手法の総説については、Freshney、Culture of Animal Cells.A Manual of Basic Techniques、2版、A.R.Liss,Inc.、New York、1987、11章および12章、137〜168頁を参照されたい。
【0079】
線維芽細胞の単離は、例えば以下のように実施してよい:新鮮な組織試料を、血清を除去するために、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)中で十分に洗浄し、刻む。この刻んだ組織を、トリプシン等の解離酵素の新たに調製した溶液中で1〜12時間インキュベートする。インキュベーションの後、解離した細胞を懸濁させ、遠心分離によりペレット化し、培養皿上に蒔く。線維芽細胞はいずれもその他の細胞より先に付着し、したがって、適切な間質細胞を選択的に単離し、生育せしめることができる。次いで単離した線維芽細胞を、コンフルエントな状態まで生育せしめ、それを、このコンフルエントな培養物から取り出し、三次元マトリックス上に接種する(Naughtonら、1987、J.Med.18(3&4):219〜250を参照されたい)。この三次元マトリックスに、高い濃度、例えば、およそ10〜5×10細胞/mlの間質細胞を接種すると、三次元の間質性支持体がより短い期間のうちに確立する。
【0080】
線維芽細胞に加えて、その他の細胞も添加して、培養物中の長期の生育をサポートするのに必要である三次元の間質性マトリックスを形成してもよい。例えば、緩い結合組織中に見出されるその他の細胞を、三次元支持体上に線維芽細胞とともに接種してよい。そのような細胞として、限定されないが、内皮細胞、周皮細胞、マクロファージ、単核球、血漿細胞、肥満細胞、脂肪細胞等が挙げられる。これらの間質細胞は、適切な臓器、例として、皮膚、肝臓等から、上記で論じた方法等の当技術分野で既知の方法を用いて容易に得てよいものである。三次元の組織培養システム中における肝臓細胞の使用が、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,624,840号により詳細に記載されている。本発明の一つの態様では、特定の組織を培養するために特殊化した間質細胞を、線維芽細胞間質に添加することができる。例えば、限定されないが、線維芽細胞、内皮細胞、マクロファージ/単核球、脂肪細胞および細網細胞を包含する造血組織の間質細胞を用いて、三次元のサブコンフルエントな間質を生成して、in vitroにおいて骨髄を長期に培養することが可能である。造血間質細胞は、骨髄懸濁液中の、低い力、例えば3000×gの遠心分離によって生成される「バフィーコート」から容易に得てよい。肝臓の間質細胞は、線維芽細胞、クッパー細胞ならびに血管および胆管の内皮細胞を包含してよい。同様にグリア細胞も間質として用いて、神経学的な細胞および組織の増殖をサポートすることができるであろう。この目的のグリア細胞は、胚性または成体の脳のトリプシン処理またはコラーゲナーゼ消化によって得ることができる(PontenおよびWestermark、1980、Federof,S.Hertz,L.編、“Advances in Cellular Neurobiology”、Vol.1、New York、Academic Press、209〜227頁)。
【0081】
培養細胞がin vivoにおける移植または埋込みのために用いられる場合には、間質細胞を患者自身の組織から得てよい。タンパク質(例えば、コラーゲン、弾性線維、細網線維)、糖タンパク質、グルコサミノグリカン(例えば、ヘパラン硫酸、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸等)、細胞マトリックス、および/またはその他の材料をマトリックスに添加するか、またはそれらを用いてマトリックス支持体を被覆することによって、三次元の間質性支持体マトリックスの存在下における細胞の生育をさらに増強してよい。
【0082】
間質細胞の接種後、三次元マトリックスを適切な栄養培地中でインキュベートし、細胞をサブコンフルエンスに生育せしめてよい。多くの市販されている培地、限定されないが、RPMI1640培地、Fisher培地、Iscove培地、McCoy培地等の培地が用いるのに適していると思われる。増殖活性を増加させるために、この三次元の間質性マトリックスを、インキュベーション期間の間、培地中に懸濁または浮遊させることができる。さらに、使用済み培地を除去し放出された細胞を減らし、新鮮な培地を添加するために培地に定期的な「給餌」も行われるべきである(should be fed)。
【0083】
インキュベーション期間の間には、間質細胞は、この三次元マトリックスに沿って線形に、かつこのマトリックスを包み込んで生育させてよく、その後このマトリックスの開口部内に生育し始める。細胞をサブコンフルエンスの適切な程度まで生育させてから、この間質性マトリックスに組織特異的細胞を接種することは重要である。一般に、サブコンフルエンスの適切な程度は、付着した線維芽細胞が、マトリックスの開口部内への生育およびコラーゲンの平行な束の沈着を開始する時期として認識することができる。
【0084】
マトリックスの開口部は、間質細胞が開口部を越えて広がり、長期にわたりサブコンフルエントな状態を維持することを可能にするのに適したサイズであるべきである。このマトリックスを越えて広がるサブコンフルエントな間質細胞を維持することによって、間質細胞によって作り上げられる増殖因子の産生が増強され、そのため長期の培養がサポートされる。例えば、開口部が小さ過ぎると間質細胞はコンフルエンスを迅速に達成し、そのため増殖をサポートし長期の培養を維持するのに必要である適切な因子の産生を停止することがある。開口部が大き過ぎると間質細胞は開口部を越えて広がることができないかもしれないし、このことによって、増殖をサポートし長期の培養を維持するのに必要である適切な因子の間質細胞による産生も減少する。本明細書に例示するように、マトリックスのメッシュ型を用いる場合、約150μm〜約220μmの範囲に及ぶ開口部を用いてよい。しかし、このマトリックスの三次元構造および複雑さに応じて、その他のサイズも等しく良好に機能し得る。実際に、間質細胞が広がりサブコンフルエンスを長期にわたり維持することを可能にする形状または構造であればいずれも本発明に従って機能するであろう。細胞をこのマトリックス内に組み込んでよく、このマトリックスに付着させてもマトリックスに付着させなくてもよい。
【0085】
細胞がメンブランに10分未満のうちに付着する場合があることが認識されるであろう。したがって、分解性メンブランとして約10分という短時間のうちに分解するものを用いてよい。一つの態様では、分解性メンブランとして約10分、20分、30分、60分、3時間、5時間、10時間、15時間、24時間、48時間、72時間、1週間、2週間、4週間、2カ月、3カ月、6カ月、8カ月、10カ月もしくは最長約1年またはその間のいかなる時間の範囲の間に分解するものを用いてよい。好ましくは、分解性メンブランとして約72時間、1週間、2週間、4週間、2カ月、3カ月、6カ月、8カ月、10カ月もしくは最長約1年またはその間の任意の時間の範囲のうちに分解するものを用いてよい。
【0086】
生分解性マトリックス(メンブラン)の設計を、該メンブランの分解速度が細胞の型、培養細胞の最終的な用途、培養時間等に基づいて調節されるように行ってよい。メンブランが長期の培養期間(例えば1カ月〜約1年)にわたり実質的に未変化の状態を維持するために、細胞および組織の培地に曝されたときの分解が緩やかであるように該メンブランを製造してよいことが理解されるであろう。あるいは、メンブランの実質的に未変化の状態の維持を短期間(例えば10分〜1カ月)にするため細胞および組織の培地に曝されてより速く分解するように、該メンブランを製造してよい。分解速度を調節するために、メンブランの1種または2種以上の要素を追加または除去することについては上記でより詳細に論じられている。
【0087】
本発明のメンブランは、細胞の実質的に全てが10分後に内部ウエル中に留まるような速度で分解することができる。一つの態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約50%が10分後に内部ウエル中に残る速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約50%が10分後に内部ウエル中に残る速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約60%が10分後に内部ウエル中に残るような速度で分解してよい。別の態様では、メンブランは接種した細胞の少なくとも約70%が10分後に内部ウエル中に残る速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約80%が10分後に内部ウエル中に残る速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約90%以上が10分後に内部ウエル中に残る速度で分解する。
【0088】
本発明のメンブランは、細胞の実質的に全てが48時間後に内部ウエル中に留まるような速度で分解することができる。一つの態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約50%が48時間後に内部ウエル中に残る速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約60%が48時間後に内部ウエル中に残る速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約70%が48時間後に内部ウエル中に残る速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約80%が48時間後に内部ウエル中に残る速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約90%以上が48時間後に内部ウエル中に残る速度で分解する。
【0089】
本発明のメンブランは、実質的に全ての細胞が、メンブランが分解する前に足場上に三次元の培養物を確立するような速度で分解してよい。
【0090】
本発明のメンブランは、接種した細胞の少なくとも約70%が足場上に三次元の培養物を確立し始めるまで、メンブランが分解を開始しないような速度で分解することができる。一つの態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも70%が足場上に三次元の培養物を確立し始めるような速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約75%が足場上に三次元の培養物を確立し始めるような速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約80%が足場上に三次元の培養物を確立し始めるような速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約85%が足場上に三次元の培養物を確立し始めるような速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約90%が足場上に三次元の培養物を確立し始めるような速度で分解する。別の態様では、メンブランは、接種した細胞の少なくとも約95%以上が足場上に三次元の培養物を確立し始めるような速度で分解する。
【0091】
マトリックス上に沈着する種々の型のコラーゲンの異なる比率が、後に接種する組織特異的細胞の生育に影響を及ぼす場合がある。例えば、造血細胞の最適な生育のためには、このマトリックスは、好ましくは、最初のマトリックス中に、コラーゲンのIII型、IV型およびI型をおよそ6:3:1の比で含有すべきである。三次元の皮膚培養システムの場合には、コラーゲンのI型およびIII型を、好ましくは最初のマトリックス中に沈着させる。適切なコラーゲンの型を作り上げる線維芽細胞を選択することによって、沈着するコラーゲンの型の比率を操作または増強することができる。このことは、補体を活性化することができ、特定のコラーゲンの型を定義する適切なアイソタイプまたはサブクラスのモノクローナル抗体を用いて達成することができる。これらの抗体および補体を用いて、望まれるコラーゲンの型を発現する線維芽細胞を陰性に選択することができる。あるいは、マトリックスに接種するために用いる間質は、望まれる適切なコラーゲンの型を合成する細胞の混合物であってもよい。コラーゲンの5つの型のより詳細な分布および起源は、米国特許第第5,624,840号の表Iに。
【0092】
このように、培養しようとする組織および望まれるコラーゲンの型に応じて適切な間質細胞(単数または複数)を選択して、該三次元マトリックスに接種することができる。
【0093】
三次元の間質性支持体のインキュベーションの間に、増殖細胞がマトリックスから放出されることがある。これらの放出された細胞は培養槽の壁に付着し増殖を続け、コンフルエントな単層を形成することがある。これを防ぐかまたは最小限に留めるために、例えば放出された細胞を供給の間に除去することまたは三次元の間質性マトリックスを新しい培養槽に移動させてよい。槽中のコンフルエントな単層の存在によって、この三次元のマトリックスおよび/または培養物中の細胞の生育が中断されることがある。コンフルエントな単層を除去することまたはこのマトリックスを新しい槽中の新鮮な培地に移動させることによって、この三次元の培養システムの増殖活性を修復することができる。25%を越えるコンフルエンスの間質性の単層を有する培養槽ではいずれにおいても、そのような除去または移動を行うべきである。あるいは、培養システムを撹拌して放出した細胞が張り付くのを阻止してもよく、または培地を定期的に供給する代わりに、新鮮な培地がこのシステムを通って連続的に流れるように培養システムを設定してもよい。流速を調節して三次元培養物内部における増殖を最大にしてよく、かつマトリックスから放出する細胞を洗い流し除去し、槽の壁に付着しコンフルエンスに生育しないようにしてもよい。いずれの場合も、放出した間質細胞を将来の使用のために、回収し凍結保存することができる。
【0094】
三次元の間質性マトリックスがサブコンフルエンスの適切な程度に到達したら、培養することが望まれる組織特異的細胞(実質細胞)を間質性マトリックス上に接種する。接種材料中の細胞の濃度が高ければ、低い濃度の場合よりはるかに早く培養物中の増殖を増大させることができることは好都合である。接種のために選ばれる細胞は、培養しようとする組織に依存してよく、限定されないが、骨髄、皮膚、肝臓、膵臓、腎臓、神経学的組織、副腎が挙げられる。一般に、この接種材料はその組織にとっての「幹」細胞(「補充」細胞とも呼ばれる)、すなわち組織の種々の構成成分を形成する特殊化した細胞に成熟する新しい細胞を形成する細胞を包含するべきである。
【0095】
接種材料中で用いる実質細胞または組織特異的細胞は、上記で記載した間質細胞を得るための標準的な手法を用いて望まれる組織を解体することによって調製した細胞懸濁液から得てよい。細胞懸濁液そのもの全体を用いて、この三次元の間質性支持体マトリックスに接種してよい。その結果としてホモジネート内部に含有される再生細胞がこのマトリックス上で適切に増殖、成熟および分化するが、非再生細胞は、増殖、成熟および分化しない。あるいは、細胞懸濁液の適切な画分から上記した間質細胞を分割するための標準的な手法を用いて、特定の細胞型を単離してよい。「幹」細胞または「補充」細胞を容易に単離することができる場合、これらの細胞を用いて三次元の間質性支持体に優先的に接種してよい。例えば骨髄を培養する場合三次元の間質に、骨髄細胞すなわち新鮮な骨髄細胞または凍結保存試料から得た骨髄細胞のいずれかを接種してよい。皮膚を培養する場合三次元の間質に、メラニン形成細胞および角化細胞を接種してよい。肝臓を培養する場合三次元の間質に、肝細胞を接種してよい。膵臓を培養する場合三次元の間質に、膵臓の内分泌細胞を接種してよい。種々の組織から実質細胞を得るために活用することができる方法の総説については、Freshney、Culture of Animal Cells.A Manual of Basic Technique、2版、A.R.Liss,Inc.、New York、1987、20章、257〜288頁を参照されたい。
【0096】
インキュベーションの間三次元の細胞培養システムは、栄養培地中に懸濁または浮遊させてよい。培養物に新鮮な培地を定期的に供給してよい。培養物から放出された細胞が槽の壁に付着し増殖し、コンフルエントな単層を形成するのを防ぐ注意を払うべきである。三次元の培養物からの細胞の放出は、びまん性組織を培養する場合により容易に起こるようであり、構造組織の場合と対照的をなす。例えば本発明の三次元の皮膚培養物が組織学的かつ形態学的に正常である場合には、特徴的な皮膚層および上皮層は細胞を周囲の培地中に放出しない。対照的にin vivoにおいて骨髄中で細胞が放出されるのと同様な形で、本発明の三次元の骨髄培養物は成熟した非付着性の細胞を培地中に放出する。
【0097】
増殖因子および調節因子を培地に添加する必要はない。これらのタイプの因子は三次元のサブコンフルエントな間質細胞によって産生されるからである。しかし、そのような因子の添加またはその他の特殊化した細胞の接種を用いて、培養物中の増殖および細胞の成熟を増強、変化または調節してよい。培養物中の細胞の生育および活性は、例えばインスリン、成長ホルモン、ソマトメジン、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、上皮増殖因子、肝臓の造血促進因子(ヘパトポイエチン)および肝細胞増殖因子等の多様な増殖因子の影響を受ける場合がある。増殖および/または分化を調節するその他の因子には、例えばプロスタグランジン、インターロイキンおよび天然に存在するケイロンを包含する。
【0098】
デバイス
本発明は一側面では、分解性、多孔性のメンブランを有する挿入ウエルデバイスである。挿入ウエルデバイスはマルチウエル挿入プレートとしても知られ、これら2つのデバイスを本明細書では互換的に指す。細胞の生育をサポートするために用いられるデバイスの部分は典型的にはメンブランであるところ、生育培地を含有するウエル内部にメンブランをぶら下げるために用いられるデバイスの部分に着脱可能に固定される。この配置によって、培養した細胞の操作が容易になる。
【0099】
二部構成の挿入ウエルは、2つの構成成分、すなわち細胞保持要素とウエル内部の事前選択された場所で細胞保持要素をぶら下げるためのハンガーとを有する。保持要素はハンガーの底部分に着脱可能に固定される。細胞保持要素は多孔性メンブランの生育表面を含む。ハンガーは壁の周囲からぶら下がることができるように構築および配置され、ハンガーの底部分はウエル内に延在する。ハンガーが壁の周囲からぶら下がると、保持要素はウエル内部の事前選択された場所でウエル内部に水平にぶら下がる。
【0100】
一つの態様では保持要素はハンガーの底部に摩擦適合(friction fit)によって固定される。別の態様では保持要素はハンガーから垂れ下がる。
【0101】
ハンガーは好ましくは外向きに延在するフランジを含み、該フランジには組織培養クラスター皿中のウエルの上部末端に垂れ下がることができるように段がある。段のあるフランジによって、ハンガーがウエル内部で横方向にシフトするのが防がれ、それにより側壁間の流体の毛細管作用を防ぐようにハンガーの側壁とウエルの側壁との間隔が開いた状態が維持される。一つの態様では毛細管作用は漏斗形状のハンガーの使用によって一層防がれるところ、ハンガーの側壁がウエルの側壁からさらに隔てられるからである。フランジは不連続で開口部を提供し、ハンガーとウエルの側壁との間の空間内にピペットを挿入してウエル内部の培地に到達することが可能である。
【0102】
本発明の別の側面は前記保持要素自体である。保持要素は好ましくは側壁を有し、該側壁から延在する内側および周囲の縁を画定する。メンブランは側壁の底部表面につながり、組織または細胞の生育支持体を形成する。周囲の縁によって保持要素の操作が簡単になり特定の流動デバイス中での保持要素の使用を可能にする構造が提供されるところ、より詳細に下に記載する。
【0103】
本発明の別の側面によれば、保持要素およびハンガーの底部の両方が多孔性メンブランを担持する。この場合隔離された生育チャンバーが、一対のメンブランの間に提供される。
【0104】
本発明の別の側面は上記の組織培養デバイスを収容する複数のウエルを有するクラスター皿である。
【0105】
本発明のある目的は、クラスター皿中に置くことができる組織または細胞の培養デバイスとして、栄養素を組織または細胞に与えかつ培地の追加または除去のためにクラスター皿中のウエルに到達することを可能とするものを提供することである。
【0106】
本発明の別の目的は、ヒト身体内で栄養素が通過して組織または細胞に達する機序に類似する形で、栄養素が通過して組織または細胞に達するのを可能にすることができるデバイスとして、例えば生育表面に付着している細胞表面が生育表面を介して栄養素を受容するのを可能にするデバイスを提供することである。
【0107】
本発明の別の目的は、挿入ウエルから簡単に着脱することができる生育表面を有する挿入ウエルを提供することである。
【0108】
本発明のさらに別の目的は細胞または組織の培養デバイスとして、流動デバイス中で取り外したり置いたりすることができる保持要素を有するものを提供することである。
【0109】
本明細書の一側面では、第2のチャンバーから分離している細胞または組織を生育せしめるための第1のチャンバーを形成するための1つのメンブランを有するデバイスを提供する。本明細書の別の側面では、第2のチャンバーから分離している細胞または組織を生育せしめるための第1のチャンバーを形成するための2つ以上のメンブランを有するデバイスを提供する。一つの態様では、これら2つ以上のメンブランは空間的に離れている。別の態様では、これら2つ以上のメンブランは空間的に離れていない。この形で用いる場合には、1つまたは2つ以上のメンブランを改変することができる。例えば真空を用いてよく、チャンバー中の細胞または組織を撹乱することなく前記チャンバーから流体を吸引することができるようにメンブランを改変してよい。
【0110】
本発明により、例えば保持要素の側壁とクラスター皿中のウエルの側壁とを十分な距離で空間的に離すことによって、毛細管作用によりそれぞれの側壁の間に流体が浸入するのを防ぐことができるデバイスを提供する。
【0111】
メンブランの足場の切断は通常の手段を用いて行えるところ、限定されないが穴開け器とハンマー、レーザー、またはメンブランを切断するためのあらゆるその他の手段が包含される。メンブランの直径は挿入ウエルの内径より若干大きくても等しくても、または若干小さくてもよい。メンブランは、凸形状を有するウエル内に圧入することができる。あるいは、O−リングを挿入ウエル内部に適合するように作製することもできる。O−リングによってメンブラン(足場)が挿入ウエルの底部に保持される。該O−リングは丈高に直角切断し挿入ウエルの側壁に対して押し付け、メンブラン上に押し下げて足場が動くのを防ぐことができる。O−リングの選択は、外周/挿入ウエルの内部領域の円表面積が可能な限り小さくなるように行うことができる。
【0112】
挿入ウエルは、この挿入ウエルの底部に溶接された薄いメンブランを有してよい。一つの態様では、2片の三次元の足場を一緒にスポット溶接してよい。1つまたは2つ以上の溶接部を用いて足場の片を一緒にスポット溶接してよく、溶接部の数は当業者であれば決定することができる。一つの態様では、1つまたは2つ以上の足場を挿入ウエル(挿入部)の底部に溶接する。別の態様では、メンブランを足場の底部に成型してよい。第2の溶接部は足場から剥離可能であってよいところ、細胞/組織の生育の終了時には試験を実施するためまたはin vivoにおいて埋め込むために第2の溶接部を分離することが望ましい場合があるからである。
【0113】
一側面では、デバイス中で用いるメンブランの孔径を細胞がメンブランを越えて動く場合がないものにする。別の側面では、デバイス中で用いるメンブランの孔径を細胞がメンブランを越えて動くことができるものにする。細胞が動くか動かないかは、メンブランの孔径によって決定されてよい。一つの態様では、孔径は約10μm〜約20μm、またはそれらの間のいかなる量であってよい。一つの態様では、孔径は約12μm〜約18μmまたはそれらの間のいかなる量であってよい。
【0114】
メンブランの多孔率(porosity)は多様であってよい。多孔率として、例えば、約0.1μm〜約100μm、またはそれらの間の任意の量が挙げられる。
【0115】
一つの態様では、挿入ウエルプレートを、挿入ウエル(挿入部)を1つずつ取り外すように設計する。あるいは挿入ウエルプレートを一体化上部アセンブリを用い、ロボット等を用いて(ハイスループットスクリーニング(HTS)と呼ばれる)全てのウエルを一度に取り外すことが可能となるように設計する。
【0116】
プレートは、限定されないが1ウエルプレート、6ウエルプレート、12ウエルプレート、24ウエルプレート、32ウエルプレート、48ウエルプレートまたは96ウエルプレートを包含するあらゆるウエルの配置とすることができる。
【0117】
本発明において用いることができるその他のデバイスおよびそれらの部分として、例えば、米国特許第6,972,184号;第5,037,656号;第7,338,773号;第7,429,492号;第5,763,255号;第5,741,701号;第5,139,951号;第5,272,083号;第7,128,878号;第4,828,386号;および第5,731,417号、米国特許出願公開第2004/0091397号;第2007/0280860号;第2007/0269850号;ならびにPCT公開第WO04044120号;WO920927063号;第WO08005244号;第2008/0003670号;第WO04044120号に記載されているものが挙げられる。それらのそれぞれの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。また、本明細書において具体的には開示されていないが、三次元の細胞培養のために用いることができるその他のデバイスも、本発明では企図されている。
【0118】
本発明のさらに別の目的は、懸濁液中で細胞を前記メンブランに付着させるかまたは前記メンブラン内部に組み込ませて生育せしめることができる、細胞または組織のデバイスを提供することである。
【0119】
本発明において提供されるデバイスは、三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるためのものであって、少なくとも1つの容器(マイクロプレートウエル)によって受容されて容器(マイクロプレートウエル)内部に少なくとも部分的に収容されるように構成されている少なくとも1つの挿入部を備え、各挿入部が分解性、透過性の底壁と個別の流体コンパートメントを画定する底壁に接続された少なくとも1つの側壁と含み、前記底壁のそれぞれは各挿入部と容器(マイクロプレートウエル)の下位部との間の流体連通が可能になるように構成されている多孔性マトリックスを含み、前記少なくとも1つの挿入部のそれぞれは前記底壁の上部に足場をさらに備える。
【0120】
一つの態様では、挿入部は流体を保持することができ、前記流体は前記各挿入部と容器(マイクロプレートウエル)の下位部との間で連通している。
【0121】
このデバイスはマルチウエル挿入部を備えることができる。
【0122】
一つの態様では、この足場は三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるための三次元の足場を備える。
【0123】
分解性、透過性の底壁は限定されないが、細胞性メッシュ、デキストラノマーマイクロスフェア、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、Matrigel、綿、セルロース、顆粒、シート、布、生分解性マイクロスフェア、ヒドロゲル、ガーゼ、改変多(糖類)、キトサン、デンプン、ゼラチンコポリマー製フィルム、生体適合性充填剤、コラーゲン、アルギン酸、フィブリン、アガロース、改変アルギン酸、エラスチン、キトサン、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、プルロニック、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(無水物)、ポリ(プロピレンフマレート)、ネコガット縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストラン、混合セルロースエステル、ポリエステルで覆われた混合セルロースエステル、カルボン酸基強化ポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのマルチブロックコポリマー、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エステル)、ポリ乳酸(PLA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリグリコール酸(PGA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLG)のコポリマーもしくはそのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)もしくはそのコポリマー、および/またはそれらの混合物を包含する。
【0124】
一側面では、少なくとも1つの挿入部は前記デバイスから取外し可能である。例えば取外し可能な挿入部は接続されていない挿入部であっても、または複数の接続されている挿入部(一体化上部アセンブリ)の部分であってもよい。
【0125】
一つの態様では、1つまたは2つ以上の挿入部をデバイスに溶接することができる。
【0126】
一つの態様では、細胞が前記足場に付着しおよび/または三次元の培養物を生成した後に底壁は分解する。例えば底壁は、約10分〜約1年の時間をかけて分解することができる。あるいは、底壁は約48時間超〜約1年の時間をかけて分解することができる。
【0127】
一つの態様では、前記挿入部中で培養した細胞は前記足場に付着することができる。あるいは、前記挿入部中で培養した細胞は前記足場に付着しない。さらに別の態様では、前記挿入部中で培養した細胞は前記足場内に組み込まれる。
【0128】
本発明においてマルチウエルプレート器具が提供されるところ、該器具は第1のアレイを形成する複数の第1のウエルと前記第1のウエルの第1のアレイと整列させた第2のアレイを形成する複数の第2の容器(ウエル)とを備え;前記第1のアレイの容器(ウエル)と前記第2のアレイの容器(ウエル)とが一緒になって連結され、前記複数の第2の容器(ウエル)のそれぞれは前記第1のアレイの容器(ウエル)と前記第2のアレイの容器(ウエル)との間の界面において、分解性、透過性の底壁、および前記メンブランの上部の足場を有する。
【0129】
一つの態様では前記器具は、流体を保持することができ、前記流体は前記複数の第1および第2の容器(ウエル)と連通している。
【0130】
一つの態様では、分解性、透過性の底壁はマルチウエル挿入部を備える。
【0131】
前記器具の足場は、三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるためのマトリックスを備えることができる。
【0132】
分解性、透過性の底壁は限定されないが、細胞性メッシュ、デキストラノマーマイクロスフェア、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、Matrigel、綿、セルロース、顆粒、シート、布、生分解性マイクロスフェア、ヒドロゲル、ガーゼ、改変多(糖類)、キトサン、デンプン、ゼラチンコポリマー製フィルム、生体適合性充填剤、コラーゲン、アルギン酸、フィブリン、アガロース、改変アルギン酸、エラスチン、キトサン、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、プルロニック、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(無水物)、ポリ(プロピレンフマレート)、ネコガット縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストラン、混合セルロースエステル、ポリエステルで覆われた混合セルロースエステル、カルボン酸基強化ポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのマルチブロックコポリマー、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エステル)、ポリ乳酸(PLA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリグリコール酸(PGA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLG)のコポリマーもしくはそのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)もしくはそのコポリマー、および/またはそれらの混合物を包含する。
【0133】
一つの態様では、挿入部は取外し可能であってよい。取外し可能な挿入部は、接続されていない挿入部であってよくまたは複数の接続されている挿入部(一体化上部アセンブリ)の部分であってもよい。
【0134】
一つの態様では、挿入部を器具に溶接することができる。
【0135】
別の態様では、細胞が前記足場に付着し、および/または三次元の培養物を生成した後に底壁は分解する。例えば、底壁は約10分〜約1年の時間をかけて分解してよい。あるいは、底壁は約48時間超〜約1年の時間をかけて分解してよい。
【0136】
一つの態様では、前記第2のアレイの容器(ウエル)中で培養した細胞は前記足場に付着してよい。あるいは、前記第2のアレイの容器(ウエル)中で培養した細胞は前記足場に付着しない。さらに別の態様では、前記第2のアレイの容器(ウエル)中で培養した細胞は前記足場内に組み込まれる。
【0137】
本三次元培養システムの使用
本発明の三次元の肝臓培養システムを、多様な適用例において用いることができる。これらが包含するのは、限定されないが、培養細胞のin vivoにおける移植または埋込み;in vitroにおける細胞傷害性化合物、発癌物質、変異原、増殖因子/調節因子、薬学的化合物等のスクリーニング;特定の疾患の機構の解明;薬物および/または増殖因子が作動する機構の研究;患者の癌の診断およびモニタリング;遺伝子治療;ならびに生物学的活性産物の産生が挙げられる。
【0138】
in vivoにおける移植または埋込みのためには、培養物から得たPCまたは三次元培養物全体を必要に応じて埋め込むことができる。本発明によれば、三次元組織培養物のインプラントを用いて現存する組織を置換するかまたは増大させること、新しいもしくは変化した組織を導入すること、または生物学的な組織もしくは構造を合体させることに用いてよい。例えば、三次元の肝臓組織のインプラントオルニチントランスカルバミラーゼの欠損等、新生児における単一遺伝子の欠陥に起因する代謝欠損を修正すること、または硬変患者の肝機能を増大させることに用いてよい。
【0139】
これらの三次元培養物(例えば、肝臓の培養物)をin vitroにおいて用いて、細胞傷害性化合物、増殖因子/調節因子、医薬品等の多種多様な化合物をスクリーニングすることができる。この目的のためにこれらの培養物をin vitroにおいて維持し、試験しようとする化合物に曝す。細胞傷害性化合物の活性は、培養物中の細胞を傷害するかまたは死滅させるその能力によって測定してよい。これは生体染色の手法によって容易に評価してよい。増殖因子/調節因子の作用は、マトリックスの細胞含有量を全細胞数および示差的細胞数により解析することによって評価することができる。これは、型特異的細胞抗原を定義する抗体を利用する免疫細胞化学的手法の使用を包含する標準的な細胞学的および/または組織学的な手法の使用によって達成することができる。この三次元システム中で培養した正常細胞に対する種々の薬物の作用を評価してよい。例えば、コレステロールの産生を低下させることによってコレステロール代謝に影響を及ぼす薬物を該三次元の肝臓システム上で試験することができる。
【0140】
また、これらの三次元の細胞培養を悪性の腫瘍および疾患の診断および処置の補助に用いてよい。1つの非限定的な例では、肝臓組織の生検標本を悪性腫瘍を有することが疑われる患者から採取してよい。該生検標本の細胞を本発明の三次元のシステム中で培養すると、培養物の増殖の間に悪性細胞のクローンを拡大増殖し得る。これによって悪性腫瘍を検出する機会が増大し、それゆえに診断精度が向上する。肝炎ウイルスに感染している肝臓細胞を、本発明の培養システム中で生育せしめてよい。さらに最も効能を示す化合物、すなわち悪性細胞または病的な細胞を死滅させ正常細胞には影響すること(spare)がない化合物を特定するために、患者から得た培養物をin vitroにおいて用いて細胞傷害性化合物および/または薬学的化合物をスクリーニングしてもよい。次いで、これらの薬剤は患者を処置するために用いることができる。
【0141】
本発明の三次元培養システムによって遺伝子および遺伝子産物をin vivoにおいて導入するために遺伝子治療において用いられるビヒクルが与えられ得る。例えば、組換えDNA手法を用いて患者に欠損している遺伝子をウイルスまたは組織に特異的なプロモーターの制御下で導入する(place)ことができる。該遺伝子を含有する該組換えDNA構築物を宿主細胞の形質転換またはトランスフェクトに用い、クローニングし次いで該三次元培養システム中でクローンを拡大増殖せしめることができる。活性な遺伝子産物を発現する三次元培養物をその産物が欠損している個体中に埋め込むことができる。
【0142】
本発明のさらなる態様では三次元培養物を、遺伝子の形質導入の促進に用いてよい。例えば、限定するものではないが組換えウイルス発現ベクターを含む間質の三次元培養物を該組換えウイルスを間質性組織と接触させた細胞内に移行させ、それによってin vivoにおけるウイルスの伝達を刺激することに用いてよい。該三次元培養システムは、DNAトランスフェクションの現在の手法より遺伝子形質導入を達成する効率が高い方法である。
【0143】
本発明のさらに別の態様では、該三次元培養システムをin vitroにおいて用いて生物学的産物を高い収率で産生することができる。例えば、多量の特定の生物学的産物(例えば、増殖因子、調節因子、ペプチドホルモン、抗体等)を天然に産生する細胞のクローンまたは外来遺伝子産物を産生するように遺伝子操作された宿主細胞のクローンを、該三次元培養システムをin vitroにおいて用いて拡大増殖することができる。形質転換細胞が遺伝子産物を栄養培地中に排出する場合には、該産物を使用済み培地または馴化培地から標準的な分離の手法(例えばHPLC、カラムクロマトグラフィー、電気泳動の手法等)を用いて容易に単離することができる。in vitroにおいて該三次元培養物へのフィード(feed)に連続流動法を用いる「バイオリアクター」を構築することができる。本質的に、新鮮な培地を該三次元培養物を通過せしめる際に、遺伝子産物は該培養物から放出される細胞とともに該培養物から洗い流される。遺伝子産物は使用済み培地または馴化培地の流出物から(例えば、HPLC、カラムクロマトグラフィー、電気泳動等により)単離することができる。
【0144】
本発明の三次元の培養システムの用途は、限定されないが、細胞を得る方法、三次元の間質性マトリックスを確立する方法、細胞の生育を増強する方法、三次元培養物を長期に生育せしめる方法、患者をモニターする方法、化合物のスクリーニング、三次元の皮膚培養、三次元の間質性支持体の確立、ならびに皮膚等価物の生成、上皮細胞を有する皮膚等価物の接種、三次元の皮膚培養物の形態学的特徴付け、ならびにヒト、非ヒト霊長類(マカク)およびラットについての長期の骨髄培養物の移植または生着および確立である。また、本発明は該三次元の皮膚培養物のin vitroにおける使用も提供する。かかるin vivoおよびin vitroにおける方法は、米国特許第4,963,489号および第5,624,840号により詳細に記載されている。それらそれぞれの全体は本明細書に組み込まれる。
【0145】
本発明において提供されるものに経時的に分解する透過性メンブランおよび細胞を三次元の配置で培養するための足場との使用として(a)細胞支持手段;(b)酸素および栄養素の輸送手段;(c)分解性、透過性のメンブラン;ならびに(d)足場手段を提供するものがある。
【0146】
分解性、透過性のメンブランは、挿入部の部分を含んでよい。一つの態様では、挿入部は取外し可能であってよい。取外し可能な挿入部は、一体化上部アセンブリであってよくまたは単一の挿入ウエルであってもよい。
【0147】
一つの態様では、器具の前記第2のアレイのウエルを第1のアレイのウエルに溶接することができる。
【0148】
別の態様では、細胞が前記足場に付着しおよび/または三次元の培養物を生成した後に底壁は分解する。例えば、底壁は約10分〜約1年の時間をかけて分解してよい。あるいは、底壁は約48時間超〜約1年の時間をかけて分解してよい。
【0149】
一つの態様では、前記第2のアレイのウエル中で培養した細胞は、前記足場に付着してよい。あるいは、前記第2のアレイのウエル中で培養した細胞は前記足場に付着しない。さらに別の態様では、前記第2のアレイのウエル中で培養した細胞は前記足場内に組み込まれる。
【0150】
本明細書において本発明の好ましい態様を示し記載したが、かかる態様は例示のためのみに提供されていることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく多数の変種、変更および置換に、当業者であれば思い至るであろう。本発明を実施するにあたっては、本明細書に記載される本発明の態様についての種々の代替形態を用いてよいことを理解すべきである。下記の特許請求の範囲によって本発明の範囲が画定され、これらの請求項およびそれらの均等物の範囲に属する方法および構造を網羅することが企図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるためのデバイスであって、少なくとも1つの容器によって受容されて該容器内部に少なくとも部分的に収容されるように構成されている少なくとも1つの挿入部を備え、前記各挿入部は分解性、透過性の底壁と、個別の流体コンパートメントを画定する前記底壁に接続された少なくとも1つの側壁を含み、前記底壁のそれぞれは前記各挿入部とマイクロプレートウエルの下位部との間の流体連通が可能になるように構成されている多孔性マトリックスを含み、前記少なくとも1つの挿入部のそれぞれは、前記底壁の上部に足場をさらに備えるデバイス。
【請求項2】
挿入部が流体を保持することができ、前記流体は各挿入部とマイクロプレートウエルの下位部との間で連通している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
容器がマイクロプレートウエルである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
マルチウエル挿入部である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
足場が三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるための三次元の足場を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
分解性、透過性の底壁が細胞性メッシュ、デキストラノマーマイクロスフェア、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、Matrigel、綿、セルロース、顆粒、シート、布、生分解性マイクロスフェア、ヒドロゲル、ガーゼ、改変多(糖類)、キトサン、デンプン、ゼラチンコポリマー製フィルム、生体適合性充填剤、コラーゲン、アルギン酸、フィブリン、アガロース、改変アルギン酸、エラスチン、キトサン、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、プルロニック、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(無水物)、ポリ(プロピレンフマレート)、ネコガット縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストラン、混合セルロースエステル、ポリエステルで覆われた混合セルロースエステル、カルボン酸基強化ポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのマルチブロックコポリマー、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エステル)、ポリ乳酸(PLA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリグリコール酸(PGA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLG)のコポリマーもしくはそのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)もしくはそのコポリマー、および/またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
挿入部がデバイスから取外し可能である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
取外し可能な挿入部が接続されていない挿入部または複数の接続されている挿入部の部分である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
少なくとも1つの挿入部がデバイスに溶接されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
細胞が足場に付着した後に底壁が分解する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
底壁が約10分〜約1年の時間をかけて分解する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
底壁が約48時間超〜約1年の時間をかけて分解する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
挿入部中で培養した細胞が足場に付着する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
挿入部中で培養した細胞が足場内に組み込まれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
挿入部中で培養した細胞が足場に付着しない、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
以下を含むマルチウエルプレート器具:
第1のアレイを形成する複数の第1の容器、
第1のウエルの前記第1のアレイと整列され、第2のアレイを形成する複数の第2の容器、ここで
前記第1のアレイの容器と前記第2のアレイの容器は一緒に連結され、前記複数の第2の容器のそれぞれは前記第1のアレイの容器と前記第2のアレイの容器との間の界面において、分解性、透過性の底壁および前記底壁の上部に足場を有する。
【請求項17】
流体を保持することができ、該流体は複数の第1および第2のアレイの容器と連通している、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項18】
分解性、透過性の底壁がマルチウエル挿入部を備える、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項19】
足場が三次元の細胞培養物または組織培養物を生育せしめるためのマトリックスを備える、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項20】
分解性、透過性の底壁が、細胞性メッシュ、デキストラノマーマイクロスフェア、コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、Matrigel、綿、セルロース、顆粒、シート、布、生分解性マイクロスフェア、ヒドロゲル、ガーゼ、改変多(糖類)、キトサン、デンプン、ゼラチンコポリマー製フィルム、生体適合性充填剤、コラーゲン、アルギン酸、フィブリン、アガロース、改変アルギン酸、エラスチン、キトサン、ゼラチン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(エチレングリコール)、プルロニック、ポリ(ビニルピロリドン)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(無水物)、ポリ(プロピレンフマレート)、ネコガット縫合糸、セルロース、ゼラチン、デキストラン、混合セルロースエステル、ポリエステルで覆われた混合セルロースエステル、カルボン酸基強化ポリマー、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)とポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのマルチブロックコポリマー、PHB−PHVクラスのポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ(エステル)、ポリ乳酸(PLA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリグリコール酸(PGA)のポリマーもしくはそのコポリマー、ポリ乳酸−コ−グリコール酸(PLG)のコポリマーもしくはそのコポリマー、ポリカプロラクトン(PCL)もしくはそのコポリマー、および/またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項21】
挿入部が器具から取外し可能である、請求項18に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項22】
取外し可能な挿入部が接続されていない挿入部、または複数の接続されている挿入部の部分である、請求項21に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項23】
少なくとも1つの挿入部が器具に溶接されている、請求項18に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項24】
細胞が足場に付着した後および/または三次元の培養物を生成した後に、底壁が分解する、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項25】
底壁が約10分〜約1年の時間をかけて分解する、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項26】
底壁が約48時間超〜約1年の時間をかけて分解する、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項27】
器具中で培養した細胞が足場に付着する、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項28】
器具中で培養した細胞が足場内に組み込まれる、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項29】
器具中で培養した細胞が足場に付着しない、請求項16に記載のマルチウエルプレート器具。
【請求項30】
経時的に分解する透過性メンブランと細胞を三次元の配置で培養するための足場の使用であって、以下を提供するもの:
(a)細胞支持手段、
(b)酸素および栄養素の輸送手段、および
(c)分解性、透過性のメンブラン。
【請求項31】
分解性、透過性のメンブランが挿入部の底壁を含む、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
挿入部がデバイスまたは器具から取外し可能である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
取外し可能な挿入部が接続されていない挿入部または複数の接続されている挿入部の部分である、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
挿入部がデバイスまたは器具に溶接されている、請求項31に記載の使用。
【請求項35】
細胞支持手段が分解性、透過性メンブランの上部に足場を備える、請求項30に記載の使用。
【請求項36】
細胞が足場に付着した後および/または三次元の培養物を生成した後に、メンブランが分解する、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
メンブランが約10分〜約1年の時間をかけて分解する、請求項30に記載の使用。
【請求項38】
メンブランが約48時間超〜約1年の時間をかけて分解する、請求項30に記載の使用。
【請求項39】
細胞支持手段において培養した細胞が足場に付着する、請求項35に記載の使用。
【請求項40】
細胞支持手段において培養した細胞が足場内に組み込まれる、請求項35に記載の使用。
【請求項41】
細胞支持手段において培養した細胞が足場に付着しない、請求項35に記載の使用。

【公表番号】特表2012−506258(P2012−506258A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533349(P2011−533349)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061727
【国際公開番号】WO2010/048441
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511102653)リジーンメッド インコーポレイテッド (1)
【出願人】(511102664)
【Fターム(参考)】