説明

基体に親水性被膜を形成する方法およびこのような被膜を備えた基体、特に医療用装置

【課題】水性流体と接触した際に滑性となる親水性被膜を、基体、特に人体内に導入するための医療用装置または該装置の部品に形成する方法、並びにこのような親水性被膜を備えた基体、特に医療用装置を提供する。
【解決手段】有機酸官能基を有するポリマーと、有機酸基と反応することのできる官能基をもつ多官能性架橋剤との水性分散液またはエマルションを含む、第一の水性被覆組成物で、該基体を被覆し、該第一の被覆組成物を乾燥して、有機酸基と反応性の官能基を依然として含む実質的に水−不溶性の被膜層を得る。次いで、該乾燥した第一の被覆層を、有機酸官能基をもつ親水性ポリマーの水性溶液または分散液を含む第二の水性被覆組成物と接触させ、これらの組み合わせた被膜を乾燥して、該架橋剤を介して、該親水性ポリマーと該第一被覆組成物のポリマーとを結合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性流体と接触した際に滑性となる親水性被膜を、基体、特に人体内に導入するための医療用装置または該装置の部品に形成する方法、並びにこのような親水性被膜を備えた基体、特に医療用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基体、例えば医療用装置または該装置の部品に、該装置を人体等の湿った環境内に導入された場合に、その摩擦を減じるために、親水性の被膜を形成することが一般的に知られている。このような親水性被膜は、また滑性または「つるつるした」被膜とも呼ばれている。
血管、尿道、身体管状路等に導入するために使用されるカテーテルおよび他の医療用装置並びに該装置と共に使用されるガイドワイヤが、親水性の被膜を備えることのできる医療用装置の例である。気球血管形成術およびバイオプシー用のカテーテルが、このようなカテーテルの特殊な例である。
親水性の被膜を備えることが望ましい可能性のある基体並びに医療用物品または装置、およびこのような基体および物品または装置に、親水性被膜を形成する方法は多数の参考文献に記載されており、その例を以下に述べる。
【0003】
米国特許第4,119,094 号は基体をポリビニルピロリドン−ポリウレタン共重合体(interpolymer)で被覆する方法を記載している。この方法においては、溶媒、例えばメチルエチルケトン中のポリイソシアネートおよびポリウレタンを、基体に適用し、該溶媒を蒸発させ、その後溶媒中のポリビニルピロリドンを該処理された基体に適用し、かつ該溶媒を蒸発させている。
米国特許第5,091,205 号は、基体に親水性の滑性被膜を形成する方法を記載している。該方法においては、該基体を、まずポリイソシアネート溶液と接触させて、カップリングを生成し、次いでポリ(カルボン酸)溶液と接触させて、被膜を形成し、最後にオーブン乾燥している。メチルエチルケトンが該ポリイソシアネートにとって好ましい溶媒であり、またジメチルホルムアミドがポリ(カルボン酸)にとって好ましい溶媒である。このポリイソシアネートを乳化させて、水中油型エマルションを形成することができるが、この場合には該反応性のイソシアネート基を適当な化学基によって保護する必要があると述べられている。
【0004】
欧州特許第0 106 004 B1号は、基体上に親水性の被膜を形成する方法を記載しており、該方法では、溶媒にポリイソシアネートを溶解した溶液由来の被膜を基体に適用して、カップリング被膜を形成し、次いでビニルピロリドン、ビニルメチルエーテルまたはビニルピリジンから選ばれたモノマーと、イソシアネート基と反応する活性水素を含有するモノマーとから作成した親水性コポリマーを溶媒に溶解した溶液を適用して、該カップリング被膜と該親水性コポリマーとの間に共有結合を形成することによって、該被膜を形成している。
欧州特許第0 166 998 B1号は、医療器具表面の処理方法を開示している。この方法では、該器具表面を、有機溶媒中の、反応性官能基をもつポリマーの溶液で処理し、無水マレイン酸ポリマー、セルロースポリマー、ポリエチレンオキシドポリマー、および水溶性ナイロンまたはその誘導体から選ばれる水溶性ポリマーで処理して、該反応性官能基と該水溶性ポリマーとを共有結合によって結合し、その後該処理した表面を、場合によって水と接触させている。
米国特許第5,077,352 号は、可撓性の滑性な有機ポリマー被膜を、担体液体中のイソシアネート、ポリオールおよびポリ(エチレンオキシド)を含む混合物を被覆すべき表面に適用することによって形成する方法を開示している。該方法においては、この担体を除去し、かつ該混合物を反応させて、結合したポリ(エチレンオキシド)を含むポリウレタン被膜を形成している。塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、アセトニトリル、ジクロロエチレン、および臭化メチレンが、適当な担体液体として挙げられる。
【0005】
国際特許出願PCT/EP92/00918、PCT/EP92/00919およびPCT/DK92/00132は、ポリウレタン表面を有する種々の医療用装置に、親水性ポリ(メタ)アクリルアミドの被膜を形成する方法を開示している。該親水性被膜を適用する前に、有機溶媒中で、該ポリウレタンおよびポリ(メタ)アクリルアミドそれぞれと反応できる官能基をもつ化合物、典型的には2官能性またはそれ以上の官能性のイソシアネートで、該基体を処理している。
上記参考文献の方法の一欠点は、該親水性被膜の形成が、通常有機溶媒または有害な化学物質、例えばポリイソシアネートの使用を包含し、これらが環境問題を引起しおよび/または健康を害する恐れがあることにある。溶媒の使用を回避するために、幾つかの無溶媒法が開発されている。
EP特許出願第92100787.8号、公開番号EP 0 496 305 A2 は、滑性被膜を備え、成形された医療用物品を調製する方法を開示している。ポリウレタンとポリビニルピロリドンとのブレンドを含む被覆組成物と、基体ポリマーとを同時に押出して、水と接触した際に滑性となる該被覆組成物の層を有する成形物品を得る。
米国特許第5,041,100 号は、ポリ(エチレンオキシド)と、構造用プラスチック材料、例えばポリウレタンの水性分散液との混合物で、基体を被覆する方法を開示している。その第2欄の15〜21行に示されているように、このポリ(エチレンオキシド)は、架橋なしに、該構造用のプラスチック材料と緊密に分散された関係で混合されて、親水性成分を該系に形成し、該成分はその表面に達するか、あるいは該表面近傍に捕獲されて、特に水和した場合に、該表面に親水性を与えかつ摩擦を低減することができる。
【0006】
上記の参考文献に記載された方法は、該親水性ポリマーを該基体に物理的に付着している該共重合体網状構造が、長時間に渡り乱流に暴露されまたは浸漬された場合に破壊され、また該親水性種が洗い流されて、該物品の滑性が不十分になるという欠点をもつ。
最後に、国際特許出願PCT/DK91/00163は、医療用装置に親水性で低摩擦性の被膜を形成する方法を開示しており、該方法は水性ポリマーエマルションから内部層を形成し、水溶性親水性ポリマーの水性溶液から外部層を形成し、該外部層の適用後に、100 ℃以上の温度に加熱することにより、これら2つの層を同時に硬化する工程を含む。
上記方法は、有機溶媒の使用を回避し、かつ該基体に強力に付着している被膜を与える。しかしながら、100 ℃以上の硬化温度の使用は、この方法の利用を制限する。というのは、多くの装置、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)気球カテーテルは、このような温度に耐えることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は基体、特に医療用装置または人体に導入するためのかかる装置の部品に、水性液体と接触した際に滑性となる親水性被膜を形成する方法を提供することを目的とする。この方法は、特に高い処理温度に敏感な装置、例えば(PET) 気球カテーテルを被覆することを可能とする。該親水性ポリマーは該第一被覆のポリマーと共有結合的に結合される。
PCT/DK91/00163に記載の方法と同様に、本発明による方法は、水性被覆組成物を使用するが、本発明の方法はより一層低い温度、例えば室温にて実施することができる。
更なる利点の一つとして、本発明の方法は、極めて耐磨耗性の高い被膜を与える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の方法は以下の工程を含む。即ち、
a) 有機酸官能基を有するポリマーと、有機酸基と反応することのできる官能基をもつ多官能性架橋剤との水性分散液またはエマルションを含む、第一の水性被覆組成物で、基体を被覆し、該被膜を乾燥して、有機酸基と反応性の官能基を依然として含む、実質的に水−不溶性の被膜層を得る工程、および
b) 該工程a)で得られた、該乾燥した被覆層を、有機酸官能基をもつ親水性ポリマーの水性溶液または分散液を含む第二の水性被覆組成物と接触させ、これらの組み合わせた被膜を乾燥して、該架橋剤を介して、該親水性ポリマーと該第一被覆組成物のポリマーとを結合させる工程。
【0009】
本発明の一局面として包含されるものは、身体に導入するための医療用装置であり、該装置は身体に導入するのに適した基体を含み、該基体の表面は硬化されたポリマー組成物で被覆されており、該組成物は反応性の有機酸官能基をもつポリマーと、共存する、該有機酸官能基と反応し得る多官能性架橋剤とを含む水性分散液またはエマルションの少なくとも部分的な反応により形成される第一のポリマー層と、該架橋剤と反応できる有機酸官能基を有する第二の親水性ポリマー層とを含む。本明細書に更に説明されるように、該第一のポリマー層は、該第二のポリマー層の適用前に実質的に架橋される。十分な該架橋剤由来の官能基が残されていて、該第二のポリマー層との共有結合に関与する。この共有結合は、該滑性で親水性の層の、該第一のポリマー層への十分な付着を可能とする。該被膜は優れた磨耗抵抗、潤滑性を有し、かつ該被膜が適用される該基体の機械的特性に影響を与えないように、極めて薄い層として適用できる。該被膜を、血管形成術で使用する気球カテーテル上の肉厚の薄いふくらますことのできる気球に適用する場合に、このことは特に重要である。
【0010】
有機酸官能基をもつ親水性ポリマーを結合するのに有用な反応性のフィルム被覆も、意図された本発明の一部であり、該フィルム被覆は、有機酸官能基をもつポリマーと、該有機酸官能基と反応できる多官能性の架橋剤とを含む水性分散液またはエマルションの反応生成物であって、該反応生成物は依然として該多官能性の架橋剤由来の反応性官能基を含む。本発明のこの局面は、潤滑性を得るために適用される、該親水性の第二の被膜と更に反応させる前の、該被膜の該当部分に及ぶものである。かくして、該第一の被膜のみで被覆されており、かつ水と接触した際に滑性を付与することのできる親水性被膜の適用のために準備された物品がこの態様に含まれる。
本発明の更なる局面は、水性媒体と接触した際に滑性となり得る親水性ポリマー被膜を包含し、この被膜は共有結合的に結合されて、架橋された網状構造を形成する少なくとも2種のポリマー層を含んでおり、該架橋網状構造は、
a) 有機酸官能基をもつポリマーと、該有機酸官能基と反応し得る多官能性架橋剤との水性分散液またはエマルションを含む第一のポリマー層、および
b) 有機酸官能基をもつ親水性ポリマーの水性溶液または分散液を含む第二の水性ポリマー層、
の反応生成物である。該第一ポリマー層の該親水性ポリマー被膜は、本明細書に挙げられた任意の数のポリマーから選択することができる。しかしながら、特に好ましいものは水性ポリウレタンポリマー類およびポリアクリル酸ポリマー類である。該第二のポリマー層も、有機酸官能基の存在により該第一の被覆層と共有結合的に結合できる広範なポリマーから選択できる。最も好ましいポリマーは、ポリアクリル酸ポリマー類およびアクリルアミド−アクリル酸コポリマー類である。
【0011】
前に述べた如く、本発明の被膜で少なくとも部分的に被覆されている医療用装置は、該外部被膜の滑性特性のために、低い摩擦抵抗の下で、身体内に容易に挿入できる点で、公知技術を越える特別の利点をもつ。更に、該外部被膜の接着性は、該2種の被覆層間に生ずる共有結合の存在ために、公知技術を越えて改良される。本明細書に記載した如く、血管形成術用の気球カテーテルの一体化部分である血管形成術用のふくらますことのできる気球の被膜は、本発明の被膜の意図する特定の用途の一つである。更に、本発明では、他の医療用装置、例えばガイドワイヤ等も意図している。該装置は、必ずしも身体内で使用するものである必要はなく、体外での使用も意図している。
本発明は、また第一の要素としての、有機酸官能基をもつポリマーの水性分散液と、第二の要素としての、該第一の要素の該有機酸官能基と反応性の多官能性架橋剤と、第三の要素としての、有機酸官能基をもつ親水性ポリマーの水性溶液または分散液(これは硬化され、水と接触状態に置かれた場合に、滑性を付与する)を含むキットをも意図する。
この文脈において、「有機酸基」なる用語は、有機酸型のイオン化可能な水素原子を含む任意の基を包含することを意味する。有機酸型のイオン化可能な水素原子を含む官能基の例は、カルボン酸基およびスルホン酸基である。「有機酸官能基」なる表現は、反応条件下で有機酸基と同様に機能する任意の基、例えば該酸基の金属塩、特にリチウム、ナトリウムおよびカリウム塩等のアルカリ金属塩およびカルシウムまたはマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、および上記酸基の四級アミン塩、特に四級アンモニウム塩を包含することを意味する。
【0012】
該第一の水性被覆組成物中に含まれる、有機酸官能基をもつ該ポリマーは、被覆すべき該基体の性質に十分に注意を払って選択されるであろう。典型的には、該第一の被覆組成物中の該ポリマーはビニルモノマー単位を含むホモポリマー類およびコポリマー類、ポリウレタン類、エポキシ樹脂類およびその組み合わせから選択されるであろう。該第一の被覆組成物中の該ポリマーは、好ましくは有機酸官能基を有する、ポリウレタン類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリイソクロトネート類、エポキシ樹脂類、アクリレート−ウレタンコポリマー類およびその組み合わせから選択される。本発明の方法の特に好ましい態様においては、該第一の被覆組成物中の該ポリマーは、構造中に実質的な量の有機酸官能基をもつ、ホモポリマーおよびコポリマーから選択され、これは内部乳化剤として機能し得る。該第一の被覆組成物中で使用できる特定の組のポリウレタンは、所謂水性(water-borne) ポリウレタンであり、中でもカルボン酸基および/またはスルホン酸基、場合によりこれら基の塩を含む、所謂内部乳化された水性ポリウレタンである。というのは、内部乳化剤が特に好ましいからである。
水性ポリウレタンの例は、ゼネカレジンズ(Zeneca Resins) からネオレッズ(NeoRez)なる商品名の下で市場に出されているもの、例えばネオレッズ-940、ネオレッズ-972、ネオレッズ-976およびネオレッズ-981;サンコール(Sanncor) により商品名サンキュア(Sancure) の下で市販されているもの、例えばサンキュア2026、サンキュア2710、サンキュア1601およびサンキュア 899;B.F.グッドリッチ(Goodrich)により商品名U21 およびU21Xの下で市販されているもの、およびバイエル(Bayer) AG. から商品名バイヒドロール(Bayhydrol) LS-2033 、バイヒドロールLS-2100 、バイヒドロールLS-2952 およびバイヒドロールLS-2990 の下で市販されているものである。
【0013】
該第一の被覆組成物において特に有用であることが示されているポリマーのもう一つの特定の組は、アクリレート−ウレタンコポリマー、例えばゼネカレジンズ(Zeneca Resins) からネオパック(Neopac) E-106、ネオパック E-121、ネオパック E-130およびネオレッズ(NeoRez) R-973なる商品名の下で市販されている、アクリル酸−ウレタンコポリマー分散液である。
該第一の被覆組成物中の該ポリマー濃度は、該第一の被覆組成物の全重量を基準とするポリマー固体の量で計算して、通常約2〜約60重量%、および好ましくは約5〜約40重量%である。
有機酸基をもつ1またはそれ以上のポリマーに加えて、該第一の水性被覆組成物は、該有機酸基と反応し得る官能基をもつ多官能性の架橋剤1種以上を含む。
該有機酸基と反応し得る官能基をもつ多官能性の架橋剤は、当分野において公知である。例えば、このような多官能性架橋剤は、ポリウレタンの外部架橋のために使用されている。
本発明の方法において使用するのに特に好ましい多官能性架橋剤は、多官能性アジリジン類および多官能性カルボジイミド類である。
多官能性アジリジン類および多官能性カルボジイミド類並びにその架橋剤としての使用は当分野において公知である。
【0014】
ゼネカレジンズ(Zeneca Resins) からネオクリル(NeoCryl) CX 100なる商品名の下で供給されている架橋剤およびEIT インダストリーズ(EIT Industries)から商品名XAMA-7の下で供給されている架橋剤が、本発明の方法において使用することのできる多官能性アジリジン架橋剤の特定の例であり、ユニオンカーバイド(Union Carbide) から商品名ユーカーリンク(Ucarlink) XL-29SEの下で市販されている架橋剤が、本発明の方法で使用することのできる多官能性カルボジイミド架橋剤の特定の例である。
有用な該多官能性アジリジンとしては、以下の式で示される三官能性のアジリジンを含む。
【0015】
【化1】

【0016】
この多官能性架橋剤は、一分子当たり2を越える官能基をもつ架橋剤であることが好ましい。更に、多官能性架橋剤の組み合わせを、本発明の方法において使用可能であることに注意すべきである。
この架橋剤上の該官能基は、少なくとも2つの目的を果たす。その第一の目的は該第一のポリマー被膜を架橋することである。その第二の目的は、該第二の(親水性)ポリマー被膜中に存在する該有機酸基との共有結合に関与することである。それ故に、これら目的両者を達成するために、該架橋剤中に十分な官能基が存在する必要がある。即ち、使用する架橋剤の量は、実質的に該第一のポリマー被膜を架橋するのに十分な官能基が存在して、該第二の親水性層と共有結合するのに十分な量の未反応官能基が残されている必要がある。
不十分な該架橋剤由来の官能基しか存在しないことの一つの指針は、該第二層の不十分な結合である。これは耐磨耗性の欠如により立証され、またこのような被膜は、これらが適用された該基体から容易に剥離してしまう可能性がある。
該第一被覆組成物中の該架橋剤の濃度は、通常約0.2 〜約30重量%の範囲および好ましくは約0.5 〜約20重量%の範囲である。
当分野において知られているように、該第一の水性被覆組成物は、該被覆基体の利用目的と一致する場合には、他の公知の添加剤、例えば均展剤、種々の安定化剤、pH調節剤、消泡剤、補助溶媒等を含むことができる。
【0017】
該第一の水性被覆組成物の該被膜を乾燥して、有機酸基と反応性の官能基を依然として含む、実質上水−不溶性の被覆層を得る。その後、かくして生成し、乾燥した該被膜を、有機酸官能基をもつ親水性ポリマーの水性溶液または分散液を含む第二の水性被覆組成物と接触させ、その後該第二の被膜を乾燥して、該親水性ポリマーを、該架橋剤を介して、該第一の被覆組成物の該ポリマーと結合させる。
親水性で滑性の被膜において使用する親水性ポリマーは当分野で公知である。
本発明の方法においては、任意の親水性ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマーまたはかかるポリマー1種以上の混合物)を使用できるが、該ポリマーはその構造中に、有機酸基と反応できる官能基をもつ該多官能性架橋剤と反応性であって、水性流体と接触した際に滑性となる親水性被膜を形成することのできる、有機酸官能基を含まなければならない。
この親水性ポリマーは有機酸官能基をもつ1種以上のモノマー由来のモノマー単位を含むことができる。このようなモノマーの好ましい例はアクリル酸、メタクリル酸およびイソクロトン酸を包含する。
【0018】
有機酸官能基をもつ少なくとも1種のモノマー由来のモノマー単位を含むことに加えて、該親水性ポリマーは、如何なる有機酸官能基をももたない少なくとも1種の親水性モノマー、例えばビニルピロリドンおよびアクリルアミド由来のモノマー単位を含むことができる。本発明の方法において、該親水性ポリマー中であるいは該親水性ポリマーとして使用するコポリマーの好ましい例は、アクリル酸−アクリルアミドコポリマーである。アライドコロイド(Allied Colloids) 社からバーシコル(Versicol) WN 33なる商品名の下で入手できるアクリルアミド−アクリル酸コポリマーが、このようなコポリマーの特定の一例である。
水和した際に滑性となる該能力は、本発明の重要な局面である。水性媒体と接触した際に生じる滑性の程度は、親水性ポリマーの型、その分子量、該水性媒体への暴露の程度、並びに湿潤を容易にする薬剤の存在を包含する多数のファクタに依存するであろう。これらの中で、該ポリマーの分子量が最も重要なファクタである。本発明において有用な分子量範囲は、選択されたポリマーの特定の型に依存するであろう。該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーの分子量は、典型的には約100,000 〜約15,000,000、特に約150,000 〜約10,000,000の範囲内にあるであろう。約400,000 〜約10,000,000の範囲および特に約7,500,000 の分子量をもつ親水性ポリマーが、本発明の方法において使用するのに、特に適していることが分かった。上記のアクリルアミド−アクリル酸コポリマーは、この好ましい分子量の範囲内に入る。
【0019】
該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーの濃度は、典型的には、該第二の被覆組成物の全重量基準での親水性ポリマー固形分として計算して、約0.1 〜5重量%、好ましくは約0.5 〜約3重量%の範囲であろう。
本発明の方法の好ましい態様においては、該架橋剤の該官能基は、該第一の被覆組成物中のポリマーの該有機酸官能基および該親水性ポリマーの有機酸官能基と、120 ℃以下の温度、好ましくは100 ℃以下の温度にて反応性である。該第二の被膜の乾燥工程は、120 ℃以下の温度、好ましくは100 ℃以下の温度にて実施可能であるが、勿論望ましい場合および被覆すべき基体の性質と矛盾しない場合には、より高い乾燥温度を使用することができる。例えば、金属基体はより高温度の下で乾燥することができる。
しかしながら、本発明は比較的低温、特に周囲温度または室温において有効なものとし、熱感受性の基体の使用を可能とする、特殊な目的に沿うように工夫されている。本発明の方法の更に好ましい態様においては、該架橋剤の官能基は、10-70 ℃の範囲の温度、好ましくは15-35 ℃の範囲内の温度にて、該第一の被覆組成物中のポリマーの該有機酸官能基および該第二の被膜(親水性ポリマー)の該有機酸官能基と反応できる。該架橋剤のこのような反応性は、10-70 ℃の範囲の温度、好ましくは15-35 ℃の範囲内の温度、例えば室温にて、該基体を被覆することを可能とするが、勿論必要ならばより高い乾燥温度を利用することも可能である。
【0020】
乾燥時間は該乾燥温度に依存し、より高い乾燥温度はより短時間の乾燥時間を必要とし、逆もまた真である。しかしながら、特定の被膜に対して、乾燥温度と乾燥時間との適当な組み合わせを決定することは、当業者の裁量の範囲内に入るであろう。
多くの場合において、ほぼ室温にて約12時間の乾燥で十分であろう。
更に、該架橋剤の該官能基は、必ずしも該親水性ポリマーの該有機酸官能基および該第一の被覆組成物の該有機酸官能基に対して同一の反応性をもつ必要はなく、またそれぞれ工程a)およびb)における乾燥条件は、該反応性に関する十分な注意を払って選択されるであろうことに注意すべきである。
本発明の方法は、多くの異なる種類の基体の被覆のために利用できる。特に興味のある利用分野の一つは、身体内または身体上で使用される医療用物品、特にカテーテル、ガイドワイヤまたはこのような物品の部品の被覆である。
【0021】
気球カテーテル、特に経皮血管形成術用の気球カテーテルは、公知の方法で被覆することが困難であることが立証されている繊細な物品である。気球カテーテルの重要な部品の一つは、ふくらますことの可能な気球であり、これは経皮血管形成術用の気球カテーテルにおいては、極めて薄い厚み、即ち約20μm程度をもつことができる。該気球カテーテルを血管内に導入する条件の下では、該気球は多層構造に折り畳まれている。従って、このような気球の壁に適用される親水性被膜は、該気球の壁厚の増加を最小にすることが極めて重要である。更に、該気球が薄い壁厚の気球に加工することのできる材料で作成され、依然として十分な強度を維持し、かつ更に必要とされる生体適合性をもつことが重要である。ポリエチレンテレフタレート(PET) はこの特性の組み合わせを有するが、親水性被膜で被覆することは困難である。しかしながら、本発明によれば、約20μm程度の壁厚を有するPET 気球を損なうことなく、約2〜3μmの厚みをもつ親水性被膜で、該気球を効果的に被覆し、かつ所定の滑性を付与し得ることが開示される。
本発明の方法は、有機溶媒を主体とする系とは逆に、水性被覆組成物を使用して実施でき、かつ乾燥は温和な条件下、例えば室温での簡単な風乾で実施されるので、本発明は上記のような被覆を達成できる。例えば、上記の如く、該複合被膜の乾燥は、室温にて約12〜約24時間実施することができる。
【0022】
しかしながら、上記の如く、本発明の方法は、ポリマー基体、ポリマー以外の基体およびその組み合わせから選ばれる基体を含む、多くの様々な基体の被覆のために利用することができる。
例えば、有用なポリマー基体としては、オレフィンポリマー類、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニルおよびポリスチレン;ポリエステル類、特にポリ(エチレンテレフタレート);ポリウレタン類;ポリウレア類;シリコーンゴム類;ポリアミド類、特にナイロン;ポリカーボネート類;ポリアルデヒド類;天然ゴム類;ポリエーテル−エステルコポリマー類;およびスチレン−ブタジエンコポリマー類から選択されるものを包含する。この例示は、勿論非−限定的なものである。
【0023】
特に、ポリマー基体はポリ(エチレンテレフタレート)、ポリウレタン類、ポリエチレン、ナイロン6、ナイロン11およびポリエーテル−エステルコポリマー類からなる群から選択することができる。
有用なポリマー以外の基体の例は、セラミックス、金属、ガラス等からなる群から選択されるものを包含する。
また、ポリマー基体とポリマー以外の基体との組み合わせ並びに1種以上のポリマー基体および/または1種以上のポリマー以外の基体の組み合わせも、本発明の方法に従って被覆することができる。
本発明は、また本発明の方法によって得ることができるような被覆された基体および本発明の方法によって得ることができるような被膜を備えた医療用装置、特にカテーテルまたはガイドワイヤにも関連する。
特に好ましい本発明による医療用装置は、少なくともこのような被膜を備えた気球部分を有する、経皮血管形成術用の気球カテーテルである。
【実施例】
【0024】
以下本発明を、現時点において本発明の好ましい態様を表す、以下の非−限定的な実施例によって更に説明する。
実施例1
十分に混合されるまで適度に攪拌しつつ、以下の成分を順次ガラスビーカーに添加することによって、第一の被覆組成物を調製した。
ネオレッズ(NeoRez) R981 250 ml
水 250 ml
0.5%フルオラド(Fluorad) FC-129母液(1mlのフ 10 ml
ルオラドFC-129を100 mlの水に希釈して調製)
34% NH4OH 4 ml
ネオクリル(NeoCryl) CX 100 20 ml
ネオレッズR-981(ゼネカレジンズ(Zeneca Resins) から入手)は、内部乳化剤としての、カルボン酸基を含むポリエステルを主成分とする脂肪族水性ポリウレタンであり、これはトリエチルアミン(TEA) によって安定化されており、かつ固形分32% および25℃におけるpH値7.5-9.0 を有する。これは補助溶媒として、5.3%のN-メチルピロリドンを含む。ネオクリル(NeoCryl)CX 100(ゼネカレジンズ(Zeneca Resins) から入手)は、多官能性アジリジン架橋剤である。フルオラド(Fluorad) FC-129(3Mから入手)は、均展剤として添加される。この溶液のpHを調節するために、水酸化アンモニウムを使用した。
【0025】
以下に述べるようにして、第二の被覆組成物を調製した。
バーシコル(Versicol) WN23 の1.2%水性溶液 400 ml
適量のバーシコル(Versicol)WN23粉末を、数時間に渡り、攪拌下に水に添加して、透明な均一溶液とすることによって、上記溶液を調製した。バーシコルWN23(アライドコロイズ(Allied Colloids) から入手)は分子量7.5 ×106 をもつ、アクリル酸−アクリルアミドコポリマーである。
2種のグレードのポリエーテル−エステルブロックコポリマー、即ちアーニテル(ARNITEL) EM 740およびEM 630(アクゾ(Akzo)から入手)のブレンドを、BaSO4 と共にチューブ状に押出すことにより基体を調製した。このチューブを、上で調製した第一の被覆組成物中に浸漬し、周囲温度(室温)にて40分間乾燥した。
次いで、該チューブを該第二の被覆組成物中に浸漬し、周囲温度にて一夜乾燥した。この被覆表面は、水と接触させた場合に、極めて良好な滑性効果を示した。
更に、この被覆は極めて良好な耐磨耗性および磨耗抵抗を有し、該被膜は強い力の下でさえ、しっかりと該表面上に維持されていた。
【0026】
実施例2
実施例1と同様にして、以下の原料を用いて第一の被覆組成物を調製した。
U21X 250 ml
水 100 ml
ネオクリル(NeoCryl) CX 100 10 ml
U21X(B.F.グッドリッチ(Goodrich)から入手)は、内部乳化剤としての、カルボン酸基を含有する、ポリエステルを主成分とする脂肪族ポリウレタン分散液であり、TEA によって安定化されている。この分散液は固形分約30% 、8.5 のpHおよび75 cpsの粘度を有する。この分散液は補助溶媒として8.3%のN-メチルピロリドンを含む。
実施例1と同様にして、以下のような第二被覆組成物を調製した。
1.2%バーシコル(Versicol) WN23 水性溶液
ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)気球を有する気球カテーテルを、以下のようにして、上記の被覆組成物で被覆した。即ち、該PET 気球をふくらませ、浸漬により該第一の被覆組成物で被覆し、周囲温度にて30分間乾燥した。次いで、該気球を該第二の被覆組成物中に浸漬し、周囲温度にて一夜乾燥した。得られた乾燥被膜を、暴露線量2×25キログレイ(KGray) にて電子ビームによって滅菌した。
得られた被膜は、塩水と接触した際に優れた潤滑性および滑性を示した。この被膜の耐磨耗性および磨耗抵抗も優れたものであった。
【0027】
実施例3
以下の原料を用いて、実施例1に記載の如く第一の被覆組成物を調製した。
バイヒドロール(Bayhydrol) LS-2033 250 ml
水 250 ml
0.5%フルオラド(Fluorad) FC-129母液 10 ml
34% NH4OH 4 ml
ネオクリル(NeoCryl) CX 100 20 ml
バイヒドロール(Bayhydrol) LS-2033(バイエル(Bayer) A.G.から入手)は、スルホネート基によって安定化された、水性ポリウレタンである。入手したこの水性ポリウレタンは6.5-7.5 のpHを有し、かつ該スルホネート基はナトリウム塩形状にある。このポリウレタンは40% の固形分含有率をもつ。この分散液は補助溶媒を含まない。
以下の原料を使用し、実施例1に記載のようにして、第二の被覆組成物を調製した。
バーシコル(Versicol) WN23 溶液(1%(w/w) 400 ml
バーシコルWN23)
ネオレッズ(NeoRez) R960 1.0 ml
ポリウレタンチューブ(サーメディックス社(Thermedics, Inc.)から入手したテコフレックス(Tecoflex) EG-93A)を該第一の被覆組成物中に浸漬し、60℃にて10分間、オーブン中で乾燥した。次いで、このチューブを該第二の被覆組成物中に浸漬し、60℃にて10分間、オーブン中で乾燥し、再度該第二の被覆組成物中に浸漬し、その後周囲温度にて一夜乾燥した。この被膜は、水と接触させた際に優れた潤滑性および滑性を示した。
【0028】
実施例4
以下の被覆組成物を使用し、かつ実施例1におけると同様な被覆手順および乾燥条件を使用して、ガラススライドを被覆した。
第一被覆組成物
ネオレッズ(NeoRez) R940 100 ml
ネオクリル(NeoCryl) CX 100 4 ml
ネオレッズ(NeoRez) R940(ゼネカレジンズ(Zeneca Resins) から入手)は、ポリエーテルを主成分とする芳香族水性ポリウレタンである。
第二被覆組成物
1.2%バーシコル(Versicol) WN23 水性溶液 400 ml
この被膜は、水と接触させた場合に、優れた潤滑性および滑性を示した。
【0029】
実施例5
実施例1に記載したものと同一の被覆手順を利用して、ステンレススチール基体を、以下の被覆組成物で被覆した。
第一被覆組成物
ネオパック(NeoPac) E121 250 ml
水 100 ml
34% NH4OH 2 ml
ネオクリル(NeoCryl) CX 100 16 ml
第二被覆組成物
1%バーシコル(Versicol) WN23 水性溶液 400 ml
第一被覆組成物 1.5 ml
得られた被膜は、水と接触させた際に、優れた潤滑性および滑性を示した。
【0030】
実施例6
実施例1に記載したものと同一の被覆手順を利用して、PET 基体を、以下の被覆組成物で被覆した。
第一被覆組成物
バイヒドロール(Bayhydrol) LS-2033 250 ml
ネオレッズ(NeoRez) R940 100 ml
トリエチルアミン 2 ml
水 200 ml
ネオクリル(NeoCryl) CX 100 10 ml
第二被覆組成物
0.8%バーシコル(Versicol) WN23 水性溶液 400 ml
得られた被膜は、水と接触させた際に、優れた潤滑性および滑性を示した。
【0031】
実施例7
ガラス板を、以下に記載の如くして、以下の被覆組成物で被覆した。
第一被覆組成物
サンキュア(Sancure) 899 200 ml
ネオパック(NeoPac) E121 100 ml
アクリゾル(Acrysol) TT-615(等量の水で予め希釈) 1 ml
SAG 710 1 ml
34% NH4OH 4ml
第二被覆組成物
1%バーシコル(Versicol) WN23 水性溶液 400 ml
該第一の被覆組成物を該ガラス板上に刷毛塗りし、周囲温度にて1時間乾燥した。次いで、該第二の被覆組成物を、該予備被覆したガラス表面上に噴霧し、周囲温度にて一夜乾燥した。得られた被膜は、水と接触させた際に、優れた潤滑性および滑性を示した。
アクリゾル(Acrysol) TT-615は、ロームアンドハース社(Rhome and Haas Company)から入手できる増粘剤であり、またSAG 710 はOSI スペシャルティーズ社(OSI Specialties, Inc.) から入手できる消泡剤である。
【0032】
実施例8
第一被覆組成物
サンキュア(Sancure) 899 250 ml
0.5%フルオラド(Fluorad) FC-129母液 10 ml
34% NH4OH 4 ml
水 200 ml
ユーカーリンク(Ucarlink) XL-29SE 40 ml
第二被覆組成物
1%バーシコル(Versicol) WN23 水性溶液 400 ml
ポリウレタン製の気球(インプラニル(Impranil) ELN、バイエル社(Bayer A.G.)製)を第一の被覆組成物中に浸漬し、周囲温度にて40分間乾燥した。次いで、該気球を該第二の被覆組成物中に浸漬し、周囲温度にて30分間乾燥し、次に再度該第二被覆組成物中に浸漬した。この被膜をEt0(エチレンオキシド)滅菌法によって滅菌した。この被膜は水と接触させた際に、優れた潤滑性および滑性を示した。
ユーカーリンク(Ucarlink) XL-29SEは、ユニオンカーバイド(Union Carbide) 社から入手できる多官能性カルボジイミドである。
【0033】
実施例9
以下に記載するようにして、PET チューブを以下の被覆組成物で被覆した。
第一被覆組成物
ネオパック(NeoPac) E121 250 ml
水 250 ml
ユーカーリンク(Ucarlink) XL-29SE 40 ml
第二被覆組成物
1%バーシコル(Versicol) WN23 水性溶液 400 ml
第一被覆組成物 1 ml
PET チューブを該第一の被覆組成物中に浸漬し、30分間風乾した。次いで、この予備被覆したチューブを該第二の被覆組成物中に浸漬し、30分間風乾し、更に60℃にて24時間乾燥した。この被膜は水と接触させた際に、優れた潤滑性と磨耗抵抗とを示した。
以上、本発明を特定の態様に従って説明したが、種々の変更並びに改良が、本発明の範囲並びに精神を逸脱することなしに、実施できるものと理解すべきである。
ネオレッズ(NeoRez) R-981、ネオレッズ R-940、ネオレッズ R-961、ネオレッズ R-972、ネオレッズ R-976、ネオレッズ R-973、ネオパック(NeoPac) E-106、ネオパック E-130、ネオパック E-121、ネオクリル(NeoCryl) CX-100、フルオラド(Fluorad) FC-129、U21 、U21X、バーシコル (Versicol) WN23、バイヒドロール (Bayhydrol) LS-2033、バイヒドロール LS-2100、バイヒドロール LS-2952、バイヒドロール LS-2990、サンキュア(Sancure) 899 、サンキュア 2710 、サンキュア 1601 、サンキュア 2026 、ユーカーリンク(Ucarlink) XL-29SE、アクリゾル(Acrysol) TT-615およびSAG 710 は1以上の登録国で登録されている可能性のある商標である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性流体と接触した際に滑性となる親水性の被膜を、基体に形成する方法であって、
a) 有機酸官能基を有するポリマーと、有機酸基と反応することのできる官能基をもつ多官能性架橋剤との水性分散液またはエマルションを含む、第一の水性被覆組成物で該基体を被覆し、該第一の被覆組成物を乾燥して、有機酸基と反応性の官能基を依然として含む実質的に水−不溶性の被膜層を得る工程と、
b) 該乾燥した第一の被覆層を、有機酸官能基をもつ親水性ポリマーの水性溶液または分散液を含む第二の水性被覆組成物と接触させ、これらの結合した被膜を乾燥して、該架橋剤を介して、該親水性ポリマーと該第一被覆組成物のポリマーとを結合させる工程、
を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項2】
該親水性ポリマーが、共有結合を通して該第一被覆組成物の該ポリマーと結合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該有機酸官能基が、遊離カルボン酸またはスルホン酸基、これら酸基の金属塩、特にアルカリ金属塩、およびこれら酸基の四級アミン塩から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該多官能性架橋剤が、多官能性アジリジン類、多官能性カルボイミド類およびその組み合わせから選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該多官能性架橋剤が、一分子当たり2を越える官能基をもつ架橋剤である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該第一被覆組成物中の該ポリマーが、ホモポリマーまたはコポリマーであって、その構造中に実質的量の有機酸官能基を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該第一被覆組成物中の該ポリマーが、ポリウレタン類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリイソクロトネート類、エポキシ樹脂類、アクリレート−ウレタンコポリマー類およびその組み合わせからなる群から選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該第一被覆組成物中の該ポリマーが、アクリレート−ウレタンコポリマーおよび/またはポリウレタンを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該親水性ポリマーが、有機酸官能基をもつ少なくとも1種のモノマー由来のモノマー単位を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
該親水性ポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、イソクロトン酸およびその組み合わせからなる群から選ばれるモノマー単位を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該親水性ポリマーが、更に何等有機酸官能基をもたないモノマー単位をも含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
該親水性ポリマーが、アクリルアミド−アクリル酸コポリマーを含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーが、約100,000 〜約15,000,000の範囲の分子量をもつ、請求項1記載の方法。
【請求項14】
該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーが、約150,000 〜約10,000,000の範囲の分子量をもつ、請求項13記載の方法。
【請求項15】
該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーが、約400,000 〜約10,000,000の範囲の分子量をもつ、請求項13記載の方法。
【請求項16】
該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーの濃度が、固形分として約0.1 〜約5重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーの濃度が、固形分として約0.5 〜約3重量%である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
該第一の被覆組成物中の該ポリマーの濃度が、固形分として約2〜約60重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
該第一の被覆組成物中の該ポリマーの濃度が、固形分として約5〜約40重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項20】
該第一の被覆組成物中の該架橋剤の濃度が、約0.2 〜約30重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
該架橋剤の官能基が、120 ℃以下の温度にて、該第一の被覆組成物中の該ポリマーおよび該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーの該有機酸官能基と反応できる、請求項1記載の方法。
【請求項22】
該架橋剤の官能基が、10-70 ℃の範囲内の温度にて、該第一の被覆組成物中の該ポリマーおよび該第二の被覆組成物中の該親水性ポリマーの該有機酸官能基と反応できる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
身体に導入するための医療用装置であって、
該身体に導入するのに適した基体を含み、該基体の表面は硬化したポリマー組成物で被覆されており、該組成物は、反応性の有機酸官能基をもつポリマーと、該有機酸官能基と反応し得る、多官能性架橋剤との水性分散液またはエマルションの少なくとも部分的な反応により形成される第一のポリマー層と、該架橋剤と反応し得る有機酸官能基をもつ第二の親水性ポリマー層とを含むことを特徴とする上記医療用装置。
【請求項24】
有機酸官能基をもつ親水性ポリマーを結合するのに有用な反応性フィルム被膜であって、該フィルム被膜は、有機酸官能基をもつポリマーと該有機酸官能基と反応し得る多官能性架橋剤との水性分散液またはエマルションの反応生成物であり、該反応生成物が依然として該多官能性架橋剤由来の反応性官能基を含むことを特徴とする上記反応性フィルム被膜。
【請求項25】
水性媒体と接触した際に滑性となり得る親水性ポリマー被膜であって、該被膜は、共有結合によって相互に結合して、架橋された網状構造を形成する少なくとも2種のポリマー層を含み、該架橋された網状構造が、
a) 有機酸官能基をもつポリマーと、該有機酸官能基と反応し得る多官能性架橋剤との水性分散液またはエマルションを含む第一のポリマー層と、
b) 有機酸官能基をもつ親水性ポリマーの水性溶液または分散液を含む第二の水性ポリマー層、
との反応生成物であることを特徴とする上記親水性ポリマー被膜。
【請求項26】
該第一のポリマー層が水性ポリウレタンおよびアクリル−ウレタンコポリマーからなる群から選ばれ、かつ該第二のポリマー層がポリアクリル酸ポリマーおよびアクリルアミド−アクリル酸コポリマーからなる群から選ばれる、請求項25記載の親水性ポリマー被膜。
【請求項27】
請求項25記載のポリマー被膜で、少なくとも部分的に被覆されている医療用装置。
【請求項28】
請求項25記載のポリマー被膜で、少なくとも部分的に被覆されている血管形成術用気球。

【公開番号】特開2008−119499(P2008−119499A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−24357(P2008−24357)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願平8−33244の分割
【原出願日】平成8年2月21日(1996.2.21)
【出願人】(594197377)ミードックス メディカルズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】