説明

基地局及び無線リソースの割り当て方法

【課題】無線リソースを有効利用しつつ、通信端末に対するデータの送信遅延を低減することが可能な技術を提供する。
【解決手段】有線側通信部13は、通信端末に送信すべきデータを受信する。受信スループット算出部16は、有線側通信部13での単位時間当たりの受信データ量を受信スループットとして算出する。無線リソース割り当て部12は、割り当てタイミングごとに、当該割り当てタイミングにおける通信端末への送信待ちのデータのデータ量と、受信スループットとに基づいて、当該通信端末に無線リソースを割り当てる。無線通信部10は、無線リソース割り当て部12において通信端末に割り当てられた無線リソースを用いて、有線側通信部13で受信されたデータを当該通信端末に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末と通信を行う基地局及び通信端末に対する無線リソースの割り当て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2にも記載されているように、通信端末と通信を行う基地局に関して、従来から様々な技術が提供されている。また非特許文献1には、次世代PHS(Personal Handyphone System)についての規格が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−244480号公報
【特許文献2】特開2007−235782号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“OFDMA/TDMA TDD Broadband Wireless Access System(Next Generation PHS) ARIB STANDARD”、ARIB STD-T95 Version1.1、平成20年6月6日、社団法人電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、基地局では、ネットワークから受信する通信端末向けのデータを送信するための無線リソースを、所定時間ごとに、通信対象の各通信端末に対して割り当てている。基地局においては、無線リソースの割り当てタイミングになった際に、その時点での通信端末への送信待ちのデータを送信できるだけの無線リソースを当該通信端末に割り当てると、次の割り当てタイミングまでにネットワークから受信されるデータを送信することができなくなる。その結果、通信端末に対するデータ送信の遅延が大きくなる。特にネットワークと基地局とがTCP(Transmission Control Protocol)を用いて通信を行う場合には、基地局において通信端末に対するデータ送信の遅延が大きくなって基地局内に通信端末向けのデータが滞留すると、ネットワークと基地局との間の通信スループットが低下する。
【0006】
このような問題を解決するために、割り当てタイミングにおける通信端末への送信待ちのデータのデータ量よりも多めのデータ量、例えば2.5倍のデータ量を送信できる無線リソースを当該通信端末に割り当てる方法が考えられる。これにより、次の割り当てタイミングまでに受信されるデータについても通信端末に送信することが可能となり、基地局から通信端末に対するデータ送信の遅延を低減することができる。
【0007】
しかしながら、この場合には、通信端末に対して必要以上の無線リソースが割り当てられる可能性が高くなり、無線リソースの有効利用が図れない。基地局において、ある通信端末に関して必要以上に無線リソースが確保されると、他の通信端末の無線リソースが確保できなくなる。また、隣接する複数の基地局において互いに異なる無線リソースを使用するような場合においては、ある基地局において必要以上の無線リソースが確保されると、それに隣接する他の基地局が使用できる無線リソースが減少することになり、当該他の基地局の通信スループットが低下する。
【0008】
また、基地局において、ある割り当てタイミングにおいて必要以上の無線リソースが確保された場合には、次の割り当てタイミングにおける送信待ちのデータが零となる。したがって、その割り当てタイミングでは、通信端末に対して無線リソースが割り当てられず、それ以降に受信されるデータは基地局内で滞留することになる。その後、次の割り当てタイミングになると、その時点では通信端末への送信待ちのデータが存在することから、通信端末に対して無線リソースが割り当てられるようになる。そして、さらに次の割り当てタイミングになると、その時点では送信待ちのデータが零となり、通信端末に対して無線リソースが割り当てられず、その後に受信するデータは基地局内で滞留することになる。
【0009】
このように、基地局においては、必要以上の無線リソースが確保される場合には、通信端末に対する無線リソースの割り当て量が大きく変動することがある。このような場合においては、基地局があるタイミングで他の基地局では未使用であると判断した無線リソースを、その後に使用してデータを送信しようとした際には、その無線リソースが実は他の基地局で使用されているという状況が生じやすくなる。その結果、隣接基地局間において送信信号の干渉が生じる可能性が高くなる。
【0010】
また、基地局において、通信端末に無線リソースを割り当てた後にネットワークから送信される当該通信端末向けのデータの受信スループットが増加した場合には、割り当てタイミングにおける送信待ちのデータのデータ量よりも多めのデータ量を送信できるような無線リソースを確保したとしても、次の割り当てタイミングまでに受信するデータをすべて送信できないことがある。したがって、多めの無線リソースを確保した場合であっても、基地局から通信端末に対するデータ送信の遅延が生じることがある。
【0011】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、無線リソースを有効利用しつつ、通信端末に対するデータの送信遅延を低減することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る基地局は、通信端末と通信を行う基地局であって、前記通信端末に送信すべきデータを受信する受信部と、前記受信部での単位時間当たりの受信データ量を算出する算出部と、割り当てタイミングごとに、当該割り当てタイミングにおける前記通信端末への送信待ちのデータのデータ量と、前記単位時間当たりの受信データ量とに基づいて、前記通信端末に無線リソースを割り当てる割り当て部と、前記割り当て部において前記通信端末に割り当てられた無線リソースを用いて、前記受信部で受信されたデータを前記通信端末に送信する送信部とを備える。
【0013】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記割り当てタイミングにおける前記通信端末への送信待ちのデータについての平均データ量を算出する平均データ量算出部がさらに設けられており、前記割り当て部は、前記割り当てタイミングごとに、前記平均データ量にも基づいて、前記通信端末に無線リソースを割り当てる。
【0014】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記算出部は、前記割り当てタイミングごとに、前記単位時間当たりの受信データ量を算出する。
【0015】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記算出部は、前記割り当てタイミングごとに、当該割り当てタイミングの直前での前記単位時間当たりの受信データ量を算出する。
【0016】
また、本発明に係る無線リソースの割り当て方法は、(a)通信端末に送信すべきデータを受信する工程と、(b)前記工程(a)での単位時間当たりの受信データ量を算出する工程と、(c)割り当てタイミングごとに、当該割り当てタイミングにおける前記通信端末への送信待ちのデータのデータ量と、前記単位時間当たりの受信データ量とに基づいて、前記工程(a)で受信されたデータを前記通信端末に送信する際に使用する無線リソースを前記通信端末に割り当てる工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、無線リソースを有効利用しつつ、通信端末に対するデータの送信遅延を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る基地局を含む無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る基地局の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るTDMA/TDDフレームの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る基地局の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る基地局の動作を示すグラフである。
【図6】比較対象基地局の動作を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係る基地局の変形例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態に係る基地局1を含む無線通信システム100の構成を示す図である。無線通信システム100は、例えば次世代PHSである。無線通信システム100では、基地局1が、TDMA/TDD方式(Time Division Multiple Access/Time Division Duplexing)で複数の通信端末2と無線通信を行う。このTDMA/TDD方式では、4つのスロットで構成された受信期間と4つのスロットで構成された送信期間とが交互に現れるようになっている。
【0020】
また、無線通信システム100では、多元接続方式としてOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式も採用されている。OFDMA方式では、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。基地局1は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースを複数の通信端末2のそれぞれに個別に割り当てることによって、当該複数の通信端末2と同時に通信することが可能となっている。
【0021】
基地局1は、光ファイバ等でネットワーク3と有線接続されている。基地局1は、通信端末2から受信するデータをネットワーク3に送信したり、ネットワーク3から受信するデータを通信端末2に送信する。
【0022】
図2は基地局1の構成を示すブロック図である。図2に示されるように、基地局1は、無線通信部10と、当該無線通信部10を制御する無線制御部11と、無線リソース割り当て部12と、有線側通信部13と、当該有線側通信部13を制御する有線側制御部14と、データを一時的に記憶するバッファ15と、受信スループット算出部16とを備えている。
【0023】
無線通信部10は、アンテナ10aが受信した通信端末2からのOFDM信号に対して、増幅処理及びダウンコンバート等を行って、ベースバンドのOFDM信号を生成して無線制御部11に出力する。また、無線通信部10は、無線制御部11で生成される、ベースバンドの送信用のOFDM信号に対して、アップコンバート及び増幅処理などを行い、搬送帯域のOFDM信号を生成してアンテナ10aに入力する。これにより、アンテナ10aからはOFDM信号が無線送信される。
【0024】
無線制御部11は、無線通信部10から出力されるOFDM信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)処理等を行って、当該OFDM信号に含まれるデータを取得する。そして、無線制御部11は、取得したデータのうち、ネットワーク3向けのデータをバッファ15に記憶する。また、無線制御部11は、通信端末2に向けたベースバンドのOFDM信号を生成して無線通信部10に出力する。
【0025】
無線リソース割り当て部12は、通信対象の各通信端末2に対して、当該通信端末2にデータを送信する際に使用される無線リソースを割り当てる。これにより、各通信端末2について、通信に使用される周波数帯域(サブキャリア)及び時間帯(スロット)が決定される。無線制御部11は、無線リソース割り当て部12での無線リソースの割り当て結果に基づいて、送信用のOFDM信号を生成するとともに、無線通信部10を制御してOFDM信号の無線送信タイミングを制御する。これにより、無線通信部10は、各通信端末2に対して、当該通信端末2に割り当てられた無線リソースを用いてデータを送信する。
【0026】
有線側通信部13は、例えばTCPを使用してネットワーク3と通信を行う。有線側通信部13は、ネットワークから受信したデータを有線側制御部14に出力するとともに、有線側制御部14からのデータをネットワーク3に送信する。
【0027】
有線側制御部14は、有線側通信部13が受信したデータのうち、通信端末2に送信すべきデータをバッファ15に記憶する。無線制御部11は、バッファ15内の通信端末2向けのデータを読み出し、当該データを含む送信用のOFDM信号を生成する。また、有線側制御部14は、バッファ15内に記憶されている、ネットワーク3向けのデータを読み出して有線側通信部13に出力する。バッファ15は、通信端末2への送信待ちのデータと、ネットワーク3への送信待ちのデータを記憶する。
【0028】
受信スループット算出部16は、通信対象の各通信端末2について、バッファ15内に記憶される通信端末2向けのデータに基づいて、有線側通信部13において単位時間当たりに受信される当該通信端末2向けのデータのデータ量を算出し、これを受信スループットとする。この受信スループットは、無線リソース割り当て部12が通信端末2に対して無線リソースを割り当てる際に使用される。
【0029】
次に基地局1が通信端末2との通信に使用するTDMA/TDDフレーム200の構成について説明する。図3はTDMA/TDDフレーム200の構成を示す図である。図3に示されるように、TDMA/TDDフレーム200は、横軸及び縦軸に時間及び周波数をそれぞれ示す時間−周波数平面上で特定される。つまり、TDMA/TDDフレーム200は、時間及び周波数の両方で特定される。1つのTDMA/TDDフレーム200は、基地局1が通信端末2からの信号を受信するための受信フレーム200rと、基地局1から通信端末2へ信号を送信するための送信フレーム200sとで構成されている。受信フレーム200r及び送信フレーム200sのそれぞれは、時間方向に4つのスロットSL、周波数方向に複数のサブチャネルSCHを含んでいる。本実施の形態では、受信フレーム200r及び送信フレーム200sのそれぞれは、周波数方向に例えば9個のサブチャネルSCHを含んでいるものとする。
【0030】
TDMA/TDDフレーム200では、1つのスロットSLの時間幅は625μsに設定されている。したがって、受信フレーム200r及び送信フレーム200sのそれぞれの時間長は2.5msとなり、1つのTDMA/TDDフレーム200の時間長は5msとなる。また、1つのサブチャネルSCHの帯域幅は900kHzであって、1つのサブチャネルSCHは24本のサブキャリアで構成されている。
【0031】
1つのスロットSLと1つのサブチャネルSCHとで、1つのPRU(Physical Resourse Unit)210が構成されている。基地局1と通信端末2との通信はこのPRU210単位で行われる。例えば、基地局1では、通信端末2に対する無線リソースの割り当てはPRU210単位で行われ、通信端末2に送信データを送信する際に使用する変調方式はPRU210ごとに決定される。受信フレーム200r及び送信フレーム200sのそれぞれには、時間方向に沿って4つのPRU210が並び、TDMA/TDDフレーム200全体では、時間方向に沿って8つのPRU210が並んでいる。またTDMA/TDDフレーム200では、周波数方向には、サブチャネルの数と同数の9個のPRU210が並んでいる。なお、TDMA/TDDフレーム200を単に「フレーム」と呼ぶことがある。
【0032】
次に、基地局1での通信端末2に対する無線リソースの割り当て方法について詳細に説明する。本実施の形態では、例えば、100msごとに、言い換えれば20フレームごとに、各通信端末2に対して無線リソースが割り当てられる。つまり、基地局1では、100msごとに、無線リソースの割り当てタイミングが発生する。無線リソース割り当て部12は、通信対象の各通信端末2について、割り当てタイミングごとに、当該割り当てタイミングにおける通信端末2への送信待ちのデータのデータ量と当該通信端末2に関する受信スループットに基づいて、当該通信端末2に無線リソースを割り当てる。このように、受信スループットを考慮して通信端末2に無線リソースを割り当てることによって、必要以上の無線リソースが確保されることを防止することができる。
【0033】
図4は、基地局1における、ある通信端末2に対する無線リソースの割り当て動作を示すフローチャートである。基地局1では、図4に示される処理が各通信端末2について行われる。以後、説明対象の通信端末2を「対象通信端末2」と呼ぶ。
【0034】
図4に示されるように、ステップs1において、割り当てタイミングの直前になると、例えば割り当てタイミングの1フレーム前になると、ステップs2において基地局1は無線リソースの割り当て処理を開始する。
【0035】
割り当て処理が開始すると、ステップs3において、受信スループット算出部16は、割り当てタイミング直前の1フレームの間において有線側通信部13で受信される対象通信端末2向けのデータのデータ量を算出する。そして、受信スループット算出部16は、算出したデータ量を受信スループットとする。このように、本実施の形態に係る受信スループット算出部16では、割り当てタイミングの直前における1フレームの間で有線側通信部13が受信する対象通信端末2向けのデータのデータ量が算出される。
【0036】
割り当てタイミングが発生すると(ステップs4)、ステップs5において、無線リソース割り当て部12は、受信スループット算出部16で算出された受信スループットを用いて、当該割り当てタイミングからその次の割り当てタイミングまでに有線側通信部13で受信される対象通信端末2向けのデータのデータ量の予測値(以後、「予測受信データ量」と呼ぶ)を算出する。上述のように、本実施の形態では、100msごとに、つまり20フレームごとに割り当てタイミングが発生し、受信スループット算出部16で求められた受信スループットは1フレーム当たりの受信データ量であることから、無線リソース割り当て部12は、受信スループット算出部16で求められた受信スループットの20倍のデータ量を予測受信データ量とする。
【0037】
次にステップs6において、無線リソース割り当て部12は、バッファ15内に存在する対象通信端末2向けのデータのデータ量、つまり、発生した割り当てタイミングにおける対象通信端末2への送信待ちのデータのデータ量(以後、「送信待ちデータ量」と呼ぶ)と、予測受信データ量とを足し合わせる。そして、無線リソース割り当て部12は、得られたデータ量を、次の割り当てタイミングまでに対象通信端末2に送信する必要があるであろうデータ量(以後、「予測必要送信データ量」と呼ぶ)とする。このように、ある割り当てタイミングで求められる予測必要送信データ量は、その割り当てタイミングでの対象通信端末2への送信待ちのデータのデータ量と、その割り当てタイミングから次の割り当てタイミングまでにネットワーク3から受信するであろう対象通信端末2向けのデータのデータ量とを足し合わせたものである。上述のように、送信待ちデータ量の2.5倍のデータ量を予測必要送信データ量とした場合には、予測必要送信データ量が、実際に送信する必要があるデータ量と大きく相違する可能性が高くなるが、本実施の形態のように、送信待ちデータ量に対して予測受信データ量を足し合わせて得られるデータ量を予測必要送信データ量とすることによって、予測必要送信データ量を、実際に送信する必要があるデータ量に近づけることができる。
【0038】
次にステップs7において、無線リソース割り当て部12は、変数αの値を零とする。ここで、以下の説明から理解できるように、本実施の形態では、対象通信端末2に対してPRU210を1つ1つ割り当てている。そして、1つのPRU210を対象通信端末2に割り当てるたびに、それまでに割り当てたPRU210で送信可能なデータ量が、予測必要送信データ量を超えるかを判定している。変数αは、この判定を行うために用いられている。
【0039】
ステップs7の後、ステップs8において、無線リソース割り当て部12は、変数αがステップs6で求めた予測必要送信データ量よりも大きいか否かを判定する。ステップs8において、変数αが予測必要送信データ量以下であると判定されると、ステップs9において、無線リソース割り当て部12は、TDMA/TDDフレーム200の送信フレーム200sにおいて、干渉波の信号レベルが所定のしきい値よりも低いPRU210(周波数帯域及び時間帯)を1つ特定する。なお、送信フレーム200sを構成する32(=4×9)個のPRU210のそれぞれについての干渉波の信号レベルは、無線制御部11によって求められる。無線制御部11は、無線通信部10で受信される既知信号に基づいて、各PRU210での干渉波の信号レベルを求める。
【0040】
無線リソース割り当て部12は、送信フレーム200sにおいて干渉波の信号レベルが低い1つのPRU210を特定すると、ステップs4で発生した割り当てタイミングから次の割り当てタイミングまでの20個のTDMA/TDDフレーム200において、特定した1つのPRU210と同じ位置に存在する20個のPRU210を、無線リソースとして対象通信端末2に割り当てる。
【0041】
次にステップs10において、無線リソース割り当て部12は、ステップs9で割り当てたPRU210に対応する変調方式を確認する。具体的には、無線リソース割り当て部12は、対象通信端末2に割り当てたPRU210のサブチャネルに適用される変調方式を確認する。この変調方式は無線制御部11が決定する。無線制御部11は、無線通信部10で受信される既知信号に基づいて受信SINRを求める。そして、無線制御部11は、求めた受信SINRに基づいて、送信フレーム200sにおける各PRU210のサブチャネルに適用される変調方式を決定する。なお、割り当てタイミング間の20個のTDMA/TDDフレーム200において同じ位置に存在する20個のPRU210の間では、サブチャネルに適用される変調方式は同じである。
【0042】
次にステップs11において、無線リソース割り当て部12は、対象通信端末2に割り当てた20個のPRU210で送信可能なデータ量を変数αに加算する。なお、1つのPRU210に対してBPSK(Binary Phase Shift Keying)変調方式が対応付けられている場合には、当該1つのPRU210を用いて200ビット程度のユーザデータを送信することができる。また、1つのPRU210に対して256QAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調方式が対応付けられている場合には、当該1つのPRU210を用いて2800ビット程度のユーザデータを送信することができる。
【0043】
ステップs11が実行されると、無線リソース割り当て部12は、再度ステップs8を実行して、変数αが予測必要送信データ量よりも大きいか否かを判定する。ステップs8において、変数αが予測必要送信データ量以下であると判定されると、ステップs9〜s11が再度実行されて、新たに割り当てられた20個のPRU210で送信可能なデータ量が変数αに加算される。その後、再度ステップs8が実行される。
【0044】
一方で、ステップs8において、変数αが予測必要送信データ量よりも大きいと判定されると、つまり、予測必要送信データ量のデータを送信することができるだけの数のPRU210が対象通信端末2に割り当てられると、ステップs12において、基地局1では対象通信端末2に対する無線リソースの割り当てが終了する。その後、ステップs1において次の割り当てタイミングの直前となると、ステップs2において基地局1では割り当て処理が開始する。以後、基地局1は、同様の動作を行って、対象通信端末2に対して、次の割り当てタイミングからその次の割り当てタイミングまでに使用する無線リソースを割り当てる。
【0045】
なお、上述のステップs7〜s11の方法以外の方法で、予測必要送信データ量のデータを送信することができるだけの数のPRU210を通信端末2に割り当ててもよい。
【0046】
以上のように、本実施の形態に係る基地局1では、送信待ちデータ量だけではなく、単位時間当たりの受信データ量である受信スループットに基づいて通信端末2に対して無線リソースを割り当てているため、無線リソースを有効利用しつつ、通信端末2に対するデータの送信遅延を低減することができる。
【0047】
図5,6は本願発明の効果を説明するための図である。図5は本実施の形態に係る基地局1の動作を示すグラフである。図6は、本実施の形態の基地局1と比較される基地局(以後、「比較対象基地局」と呼ぶ)の動作を示すグラフである。比較対象基地局では、割り当てタイミングが発生すると、送信待ちデータ量の2.5倍のデータ量を送信するために必要な数のPRU210が通信端末2に割り当てられる。
【0048】
図5,6において、グラフ300は、100msの間にネットワークから送られてくる対象通信端末2向けのデータのデータ量の時間変化を示している。グラフ301は、送信待ちデータ量の時間変化を示している。グラフ302は、対象通信端末2に割り当てられたPRU210の数の時間変化を示している。グラフ303は、対象通信端末2に割り当てられたPRU210のうちデータ送信に使用されなかったPRU210、つまり無駄に割り当てられたPRU210の数を示している。グラフ304は、基地局1が受信した対象通信端末2向けのデータに関する送信の遅延量の時間変化を示している。
【0049】
図6に示されるように、単純に送信待ちデータ量の2.5倍のデータ量を送信できるだけのPRU210を対象通信端末2に割り当てる比較対象基地局では、ネットワーク3から対象通信端末2向けのデータがグラフ300で示されるような時間推移で送信されてくると、無駄に割り当てられたPRU210の数が多くなり(グラフ303)、無線リソースの有効利用を図ることができない。さらに、図6のグラフ304に示されるように、対象通信端末2に対するデータ送信の遅延も大きくなる。そして、図6のグラフ302に示されるように、PRU210の割り当て数が大きく変動する。各基地局1においてPRU210の割り当て数が大きく変動する場合においては、ある基地局1にとっては、その周辺の他の基地局1で使用されるPRU210が大きく変化することになる。したがって、基地局1が、他の基地局1での割り当てタイミングの前において当該他の基地局1では未使用であると判断したPRU210を、その割り当てタイミングの後に通信端末2に割り当ててデータ送信しようとした際には、そのPRU210が実は当該他の基地局1で使用されているという状況が生じやすくなる。その結果、隣接基地局間において送信信号の干渉が生じる可能性が高くなる。
【0050】
これに対して、本実施の形態に係る基地局1においては、受信スループットにも基づいて対象通信端末2に対してPRU210を割り当てていることから、図5に示されるように、PRU210の割り当て数(グラフ302)が、ネットワーク3からのデータの受信量(グラフ300)と同じように時間変化するようになる。その結果、無駄に割り当てられたPRU210の数が少なくなり(グラフ303)、無線リソースの有効利用を図ることができる。さらに、図5のグラフ304に示されるように、対象通信端末2に対するデータ送信の遅延も小さくすることができる。そして、図5のグラフ302に示されるように、PRU210の割り当て数の変動を抑えることができ、隣接基地局間において送信信号の干渉が生じる可能性を低減することができる。
【0051】
なお、受信スループットは一定ではないことから、本実施の形態のように、割り当てタイミングごとに受信スループットを求めることが望ましい。このとき、出来るだけ最新の受信スループットを用いて通信端末2に無線リソースを割り当てるために、割り当てタイミングの直前の受信スループットを用いて通信端末2に対する無線リソースを割り当てることが望ましい。
【0052】
また、予測必要送信データ量は、あくまでも予測値であるため、無線通信システム100を実際に運用してみて、無駄に割り当てられたPRU210の数やデータ送信の遅延が思った以上に低減されていない場合には、割り当てタイミングごとに予測必要送信データを調整しても良い。このとき、予測必要送信データに直接調整用パラメータを乗算することによって予測必要送信データを調整しても良いし、送信待ちデータ量及び予測受信データ量の少なくとも一方に調整用パラメータを乗算することによって予測必要送信データを調整しても良い。また、予測受信データ量に調整用パラメータを乗算する代わりに、受信スループットに調整用パラメータを乗算して予測受信データ量を調整しても良い。
【0053】
また、TDMA/TDDフレーム200の送信フレーム200sにおいて、すべてのPRU210に同じ変調方式が対応付けられるような場合には、以下の式(1)を使用して、対象通信端末2に割り当てるPRU210の数PN(以後、「割り当てPRU数PN」と呼ぶ)を簡単に求めることができる。
【0054】
PN=(D1+D2)/MI ・・・(1)
ここで、D1は送信待ちデータ量を示し、D2は予測受信データ量を示している。したがって、(D1+D2)は予測必要送信データ量を示すことになる。またMIは、1つのPRU210で送信可能なデータ量を示している。
【0055】
無線リソース割り当て部12は、割り当てタイミングが発生すると、式(1)を用いて割り当てPRU数PNを求めて、当該割り当てタイミングから次の割り当てタイミングまでの20個のTDMA/TDDフレーム200において、求めた割り当てPRU数PNだけのPRU210を対象通信端末2に割り当てる。このとき、上述のステップs9のように、干渉波の信号レベルがしきい値よりも低いPRU210を割り当てることが望ましい。このような場合であっても、無線リソースを有効利用しつつ、通信端末2に対するデータの送信遅延を低減することができる。
【0056】
また、無線通信システム100を実際に運用してみて、無駄に割り当てられたPRU210の数やデータ送信の遅延が思った以上に低減されていない場合には、式(1)において、(D1+D2)に対して調整用パラメータを乗算して割り当てPRU数PNを調整しても良いし、D1及びD2の少なくとも一方に調整用パラメータを乗算して割り当てPRU数PNを調整しても良い。
【0057】
<変形例>
上述のようにして通信端末2に対して無線リソースを割り当てる場合であっても、受信スループットの時間変化の態様によっては、割り当てタイミングにおいてバッファ15内に送信待ちのデータが残りがちになることがある。具体的には、図5における、500ms〜1500msの範囲でのグラフ300に示されるように、受信スループットが増加し続ける場合には、図5における、500ms〜1500msの範囲でのグラフ304に示されるように、バッファ15内に送信待ちのデータが残りがちになってデータ送信の遅延が生じやすくなる。
【0058】
そこで、本変形例においては、割り当てタイミングにおける通信端末2への送信待ちのデータについての平均データ量にも基づいて当該通信端末2に対して無線リソースを割り当てる。図7は本変形例に係る基地局1の構成を示すブロック図である。本変形例に係る基地局1のブロック構成は、図2に係る基地局1のブロック構成において、平均データ量算出部17をさらに設けたものである。
【0059】
平均データ量算出部17は、割り当てタイミングが発生すると、通信対象の各通信端末2について、当該割り当てタイミングとそれよりも前の割り当てタイミングとで構成される複数の割り当てタイミングにおける送信待ちデータ量の平均値を算出する。この平均値を「平均送信待ちデータ量」と呼ぶ。このように、平均データ量算出部17は、割り当てタイミングにおける送信待ちデータ量の移動平均値を算出する。
【0060】
本変形例では、無線リソース割り当て部12は、割り当てタイミングが発生すると、その時点での送信待ちデータ量と、予測受信データ量と、平均データ量算出部17で求められた平均送信待ちデータ量とを足し合わせて、それによって得られるデータ量を予測必要送信データ量とする。そして、無線リソース割り当て部12は、この予測必要送信データ量を用いて、上述と同様にして通信端末2に対してPRU210を割り当てる。
【0061】
このように、平均送信待ちデータ量にも基づいて通信端末2に対して無線リソースを割り当てることによって、通信端末2に対するデータの送信遅延をさらに低減することができる。
【0062】
なお、TDMA/TDDフレーム200の送信フレーム200sにおいて、すべてのPRU210に同じ変調方式が対応付けられるような場合には、以下の式(2)を使用して割り当てPRU数PNを求めても良い。
【0063】
PN=(D0+D1+D2)/MI ・・・(2)
ここで、式(2)のD0は、平均送信待ちデータ量を示している。したがって、(D0+D1+D2)は、本変形例に係る予測必要送信データ量を示す。
【0064】
無線リソース割り当て部12は、割り当てタイミングが発生すると、式(2)を用いて割り当てPRU数PNを求めて、当該割り当てタイミングから次の割り当てタイミングまでの20個のTDMA/TDDフレーム200において、求めた割り当てPRU数PNだけのPRU210を対象通信端末2に割り当てる。
【0065】
また、本変形例においても、予測必要送信データ量を調整しても良い。この場合には、平均送信待ちデータ量に調整用パラメータを乗算して予測必要送信データ量を調整しても良い。
【0066】
以上の実施の形態及びその変形例の説明においては、基地局1と通信端末2との間の多元接続方式として、TDMA方式及びOFDMA方式が使用されていたが、他の多元接続方式、例えばFDMA(Frequency Division Multiple Access)方式やCDMA(Code Division Multiple Access)方式が使用される場合であっても、同様にして通信端末2に無線リソースを割り当てることによって、無線リソースを有効利用しつつ、通信端末2に対するデータの送信遅延を低減することができる。また、本願発明は、次世代PHS以外の他の通信システム、例えばLTE(Long Term Evolution)やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)にも当然に適用することができる。
【0067】
また、上記の実施の形態及びその変形例では、5msや100msなどの具体的数値を挙げて本願発明について説明したが、もちろん他の数値を用いても良く、本願発明は上記の数値を使用する場合には限定されない。
【符号の説明】
【0068】
1 基地局
2 通信端末
10 無線通信部
12 無線リソース割り当て部
13 有線側通信部
16 受信スループット算出部
17 平均データ量算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末と通信を行う基地局であって、
前記通信端末に送信すべきデータを受信する受信部と、
前記受信部での単位時間当たりの受信データ量を算出する算出部と、
割り当てタイミングごとに、当該割り当てタイミングにおける前記通信端末への送信待ちのデータのデータ量と、前記単位時間当たりの受信データ量とに基づいて、前記通信端末に無線リソースを割り当てる割り当て部と、
前記割り当て部において前記通信端末に割り当てられた無線リソースを用いて、前記受信部で受信されたデータを前記通信端末に送信する送信部と
を備える、基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局であって、
前記割り当てタイミングにおける前記通信端末への送信待ちのデータについての平均データ量を算出する平均データ量算出部をさらに備え、
前記割り当て部は、前記割り当てタイミングごとに、前記平均データ量にも基づいて、前記通信端末に無線リソースを割り当てる、基地局。
【請求項3】
請求項1及び請求項2のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記算出部は、前記割り当てタイミングごとに、前記単位時間当たりの受信データ量を算出する、基地局。
【請求項4】
請求項3に記載の基地局であって、
前記算出部は、前記割り当てタイミングごとに、当該割り当てタイミングの直前での前記単位時間当たりの受信データ量を算出する、基地局。
【請求項5】
(a)通信端末に送信すべきデータを受信する工程と、
(b)前記工程(a)での単位時間当たりの受信データ量を算出する工程と、
(c)割り当てタイミングごとに、当該割り当てタイミングにおける前記通信端末への送信待ちのデータのデータ量と、前記単位時間当たりの受信データ量とに基づいて、前記工程(a)で受信されたデータを前記通信端末に送信する際に使用する無線リソースを前記通信端末に割り当てる工程と
を備える、無線リソースの割り当て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−151748(P2011−151748A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13518(P2010−13518)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】