基地局装置、移動通信システム、およびハンドオーバ制御方法
【課題】端末の移動速度に応じて良好にハンドオーバを実行することを可能にする技術を提供する。
【解決手段】速度取得手段は、自装置に接続している端末装置の移動速度を取得する。判定手段は、自装置である移動元の基地局装置からの信号の端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の端末装置での受信信号強度とのレベル差と、端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、レベル差が第1の閾値以上であれば、端末装置を移動元の基地局装置から移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する。
【解決手段】速度取得手段は、自装置に接続している端末装置の移動速度を取得する。判定手段は、自装置である移動元の基地局装置からの信号の端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の端末装置での受信信号強度とのレベル差と、端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、レベル差が第1の閾値以上であれば、端末装置を移動元の基地局装置から移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局に接続した端末の移動が可能な無線通信システムにおいてハンドオーバによって端末と接続する基地局を切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
端末が基地局と無線回線で接続する無線通信システムでは、安定した通信を可能にするために、基地局からの信号の端末での受信信号強度をある一定レベル以上に保つことが要求される。しかし、端末の移動によって無線回線の環境が変化し、端末での受信信号強度が劣化してしまうことがある。接続中の基地局から他の基地局に接続先を切り替えることにより受信信号強度が改善される場合、端末は接続先の基地局の切り替え(ハンドオーバ)を実行する。
【0003】
ハンドオーバは、受信信号強度を有意に改善するとともに、基地局間の境界付近でハンドオーバが繰り返されることを防止するために、移動先基地局からの受信レベルと移動元基地局の受信レベルの差が、ある閾値以上であることを条件に実行される。
【0004】
特許文献1には、移動端末がGPS(Global Positioning System)を用いて自装置の位置情報を取得し、自装置と各基地局との距離を算出し、その距離に基づいて適切なセルに対してハンドオーバを行う技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、端末の位置情報から移動速度および移動方向を検出し、その情報を基に算出した基地局毎のオフセットと、各基地局からの信号の受信レベルとを基に接続先の基地局を選択する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3では、接続中の基地局から他の基地局へハンドオーバするか否かを判断するための閾値として、接続中の基地局からの受信レベルについての閾値が用いられる。そして、その閾値は端末の移動速度に基づいて変更される。
【0007】
また、特許文献4では、端末が複数の基地局と同時に接続するハンドオーバにおいて、接続中の基地局からの受信レベルに近い受信レベルの基地局を、端末と接続する基地局に含めるために閾値が用いられる。そして、その閾値は端末の移動速度に基づいて変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−199428号広報
【特許文献2】特開2005−012429号広報
【特許文献3】特開2000−197093号公報
【特許文献4】特開2002−10313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、移動先基地局からの受信レベルと移動元基地局の受信レベルの差が閾値以上であることを条件にハンドオーバを実行するのには基地局間でハンドオーバが繰り返されるのを防止するという意味がある。境界付近でハンドオーバが繰り返されれば、無線周波数や装置の処理能力などのリソースが無駄に浪費されることとなるからである。
【0010】
ところが、端末が移動したときのハンドオーバの起こりやすさは端末の移動速度によって異なる。端末での受信信号強度は、基地局から端末までの距離に依存する信号の減衰と、フェージングなどの無線環境の変動の影響を受けるからである。端末の移動速度が速い場合、基地局からの受信信号強度の変化は、端末と基地局の距離の変化への依存度が高い。一方、端末の移動速度が遅い場合、基地局からの受信信号強度の変化は、フェージングなどの無線環境の変動への依存度が高い。
【0011】
図7A〜7Cは、端末の移動速度が低い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【0012】
端末の移動速度が低い場合、図7Aに示すように、移動元基地局と移動先基地局からの受信信号の信号強度の変化が鈍い。
【0013】
移動先基地局からの受信レベルと移動元基地局の受信レベルの差に対する閾値が小さければ、移動元基地局から移動先基地局への切り替えを迅速に行うことができる。しかし、図7Bに示すようにフェージングの影響があると、小さい閾値(図中のα)では、移動元基地局と移動先基地局の間で不要にハンドオーバの繰り返しが発生する場合がある。
【0014】
これに対して、図7Cに示すように閾値(図中のβ)が大きければ、上述のような不要なハンドオーバを削減することができる。
【0015】
図8A〜8Cは、端末の移動速度が高い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【0016】
端末の移動速度が高い場合、図8Aに示すように、移動元基地局と移動先基地局からの受信信号の信号強度の変化が鋭い。
【0017】
図8Bに示すように閾値が大きければ上述したように不要なハンドオーバは削減されるが、端末の移動速度が高い場合は、もともと不要なハンドオーバの発生は起こりにくい。その一方、閾値が大きければハンドオーバの起動が遅れる。本来であれば移動先基地局へ切り替えれば良好な信号強度で信号を受信できるにも関わらず、移動元基地局との接続を継続してしまうことがある。そのため、信号強度が劣化して接続が切れる可能性が高くなる。
【0018】
それに対して、端末の移動速度が高い場合、図8C示すように閾値を小さくすればハンドオーバを迅速に実行することができ、また不要なハンドオーバの発生も少ない。
【0019】
上述したように、特許文献2−4には、端末の移動速度を考慮したハンドオーバ技術が開示されている。しかし、特許文献2、3において移動速度に応じて変更される閾値は、移動元基地局の受信レベルに対するものなので、移動先基地局からの受信レベルの変動によってはハンドオーバの繰り返しを有効に低減することができない場合もあった。また、特許文献4において移動速度に応じて変更される閾値は、接続中の基地局からの受信レベルに近い受信レベルの基地局を選択するためのものなので、ハンドオーバの繰り返しを低減することには寄与しないものであった。
【0020】
本発明の目的は、端末の移動速度に応じて良好にハンドオーバを実行することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の基地局装置は、複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムに含まれる基地局装置であって、
自装置に接続している端末装置の移動速度を取得する速度取得手段と、
前記自装置である移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する判定手段と、
を有する。
【0022】
本発明の移動通信システムは、複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムであって、
基地局装置間をハンドオーバすることが可能な端末装置と、
自装置に接続している端末装置の移動速度を取得し、前記自装置である移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する基地局装置と、
を有する。
【0023】
本発明のハンドオーバ制御方法は、複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法あって、
端末装置の移動速度を取得し、
移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基地局装置が端末装置の移動速度に応じて異なる第1の閾値を用いるので、端末装置の移動速度が様々であっても良好にハンドオーバを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態によるWiMAXシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるネットワーク接続のシーケンスチャートである。
【図3】基地局110の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態におけるハンドオーバ処理における通信制御の一例を示すフローチャートである。
【図5A】端末100の移動速度を算出する方法について説明するための図である。
【図5B】端末100の移動速度を算出する方法について説明するための図である。
【図6】本実施形態におけるハンドオーバ処理における通信制御の他の例を示すフローチャートである。
【図7A】端末の移動速度が低い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図7B】端末の移動速度が低い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図7C】端末の移動速度が低い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図8A】端末の移動速度が高い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図8B】端末の移動速度が高い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図8C】端末の移動速度が高い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
ここでは本発明を適用したWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)システムを例示する。
【0028】
図1は、本実施形態によるWiMAXシステムの構成例を示すブロック図である。図1を参照すると、WiMAXシステムは、端末100、基地局110、ASN−GW120、およびCSN130を有している。
【0029】
端末(MS:Mobile Station)100は、パーソナルコンピュータなどのWiMAXクライアントまたは宅内に設置するCPE(customer premises equipment)デバイスである。端末100は基地局110間でハンドオーバすることができる。
【0030】
基地局110は、それぞれにセルを形成して端末100と無線回線で接続し、端末100による通信を可能にする。端末100による基地局110への接続には、新規にその基地局110に接続する場合と、他の基地局110からのハンドオーバにより、その基地局110に接続する場合とがある。
【0031】
図2は、本実施形態におけるネットワーク接続のシーケンスチャートである。
【0032】
端末100および基地局110は、端末100の基地局110への接続を開始するためレンジング処理を実行する(ステップS101)。レンジング処理にはCDMAコードが用いられる。
【0033】
続いて、端末100および基地局110は、端末100の送信電力を調整するための処理を実行する(ステップS102)。この処理により、端末100の送信電力は、端末100と基地局110の距離に対応するように調整される。
【0034】
更に、端末100および基地局110は、端末100の送信タイミングを調整するための処理を実行し、端末100と基地局110との同期をとる(ステップS103)。
【0035】
以上の処理が完了した後、端末100の機能登録や認証手続きを経て端末100のネットワーク接続が可能な状態となる。
【0036】
また、基地局110は端末100と連携することにより、端末100による基地局110間のハンドオーバを制御する。
【0037】
ハンドオーバ処理においては、基地局110は、端末100と基地局110の間の受信信号強度を取得し、また端末100の移動速度を算出する。更に、基地局110は、端末100を移動元の基地局から移動先の基地局にハンドオーバすべか否か判定するために、端末100における移動元の基地局110からの信号の受信信号強度と移動先の基地局110からの信号の受信信号強度とのレベル差と、端末100の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較する。
【0038】
移動元の基地局110とは、端末100が現在接続している基地局110である。移動先の基地局110とは、端末100がハンドオーバしようとするターゲットの基地局110である。
【0039】
そして、基地局110は、レベル差が第1の閾値以上であれば、端末100を移動元の基地局110から移動先の基地局110にハンドオーバすべきと判定する。
【0040】
ハンドオーバ処理の更に詳細や、それに関連する基地局110の構成については後述する。
【0041】
ASN(Access Service Network)−GW(Gateway)120は、基地局110に接続されている端末100の通信をCSN130に中継するためのゲートウェイである。
【0042】
基地局110とASN−GW120はASNに含まれる。ASNは、単一または複数の基地局110と、単一または複数のASN‐GW120を含むWiMAXシステムにおけるアクセスネットワークであり、携帯電話ネットワークにおける無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)と同様にQoS(Quality of Service)管理や無線リソース管理などの機能を提供する。
【0043】
CSN(Connectivity Service Network)130は、WiMAXサービスにおけるIPコアネットワーク機能を担う。
【0044】
CSN130には、AAA(Authentication, Authorization, and Accounting)機能と、モバイルIPのHA(Home Agent)機能と、他のネットワークとのプロキシ機能および接続機能とを含むコアネットワーク機能が集約されている。
【0045】
CSN130はAAA部131、DNS DHCP部132、およびHA部133を有しており、AAA部131がAAA機能を担い、DNS DHCP部132が他のネットワークとのプロキシ機能および接続機能を担い、HA部133がHA機能を担っている。
【0046】
図3は、基地局110の構成を示すブロック図である。図3を参照すると、信号強度取得部111、速度取得部112、および判定部113を有している。
【0047】
信号強度取得部111は、端末100と基地局110の間の受信信号強度を取得する。例えば、端末100が接続している基地局110から受信する信号の信号強度を計測し、その基地局110に通知する。
【0048】
速度取得部112は、端末100の移動速度を取得する。例えば、速度取得部112は、信号強度取得部111によって取得される信号強度の時間変化から端末100の移動速度を算出すればよい。
【0049】
具体例として、速度取得部112は、信号強度取得部111により取得された端末100の受信信号強度から、自由空間伝播損失の理論式を用いて、端末100と基地局110の距離を算出し、その距離の時間変化から端末100の移動速度を算出する。
【0050】
判定部113は、端末100における移動元の基地局110からの信号の受信信号強度と移動先の基地局110からの信号の受信信号強度とのレベル差と、端末100の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較する。端末100の移動速度が速いほど第1の閾値は小さな値に設定される。
【0051】
なお、判定部113は、例えば端末100からの通知によって、自装置である移動元の基地局110からの信号の端末100での受信信号強度と、他装置である移動先の基地局110からの信号の端末100での受信信号強度とを取得することができる。通常、移動先の基地局110は移動元の基地局110に隣接する基地局である。
【0052】
第1の閾値を定める方法の具体例としては、判定部113に、第1の閾値の候補である複数の閾値候補と、移動速度に基づいて該閾値候補の中から第1の閾値を選択するための少なくとも1つの第4の閾値とが予め与えておけばよい。そして、判定部113は、移動速度を第4の閾値と比較し、その比較結果によって閾値候補のいずれかを第1の閾値として選択すればよい。
【0053】
判定部113は、レベル差を第1の閾値と比較した結果、レベル差が第1の閾値以上であれば、端末100を移動元の基地局110から移動先の基地局110にハンドオーバすべきと判定する。また、レベル差が第1の閾値より小さければ、判定部113は、端末100を移動元の基地局110から移動先の基地局110にハンドオーバすべきでないと判定する。
【0054】
図4は、本実施形態におけるハンドオーバ処理における通信制御の一例を示すフローチャートである。
【0055】
図4を参照すると、まず、端末100が、レンジング処理、端末の機能登録、認証処理を終えて、ある基地局110に接続する(ステップS201)。ここでは、このときに端末100が接続した基地局110がハンドオーバの移動元の基地局となる。
【0056】
次に、基地局110は、端末100と基地局110の間の受信信号強度を閾値(第2の閾値)と比較し、その比較結果から、ハンドオーバ処理を開始するか否か判定する(ステップS202)。
【0057】
ここでは一例として、受信信号強度が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件とすることとする。ここで用いる第2の閾値は、その条件を満たすか否かを判断するための閾値である。
【0058】
受信信号強度が第2の閾値以上であれば、基地局110は、ハンドオーバ処理を開始せずに受信信号強度の監視を継続する。
【0059】
また、受信信号強度が第2の閾値より低ければ、基地局110は、ハンドオーバ処理を開始すると判断し、端末100の移動速度を算出する(ステップS203)。その際、基地局110は、自由空間伝播損失の理論式を用いて、端末100での基地局110からの受信信号強度から端末100の移動速度を算出する。
【0060】
図5Aおよび図5Bは、端末100の移動速度を算出する方法について説明するための図である。図5Aに示すように端末100が移動し、移動元の基地局110から遠ざかり、移動先の基地局110に近づけば、移動元の基地局110からの信号の端末100での受信信号強度が低下し、移動先の基地局110からの信号の端末100での受信信号強度が上昇する。自由空間伝播損失の理論式を用いれば、受信信号強度から、端末100と基地局110の距離を求めることができる。この端末100と基地局110との距離の変化分を時間で除算すれば端末100の移動速度が得られる。
【0061】
その際、基地局110は、基地局110が送信するフレーム毎の受信信号強度を端末100から取得し、そのフレーム毎の受信信号強度と、基地局110が送信するフレームのフレーム周期とを用いて、端末100の移動速度を算出することにしてもよい。例えばWiMAXシステムのフレーム周期は5msecである。
【0062】
これによれば、移動速度の計算に固定値であるフレーム周期を用いるので、演算が容易である。また、基地局110は受信信号強度が計測された時刻の情報がなくても移動速度を算出することができる。
【0063】
図4に戻り、基地局110は、次に、端末100の移動速度が、ある閾値(第4の閾値)以上であるか否か判定する(ステップS204)。ここで用いる第4の閾値は、端末100の移動速度が一定値より速いか遅いかを判定するための閾値である。
【0064】
端末100の移動速度が第4の閾値以上であれば、基地局110は、第1の閾値として比較的小さな値を選択する(ステップS205)。逆に、端末100の移動速度が第4の閾値より遅ければ、基地局110は、第1の閾値として比較的大きな値を選択する(ステップS206)。ステップS205で選択される値よりもステップS206で選択される値の方が大きな値である。
【0065】
なお、ここでは第4の閾値を1つとし、第1の閾値を2つの候補の中から選択する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。第4の閾値を複数することで第1の閾値の候補の数を増やせば、端末100の移動速度に対して第1の閾値をより適切な値に設定することが可能となる。
【0066】
次に、基地局110は、端末100における移動元の基地局110からの信号の受信信号強度と移動先の基地局110からの信号の受信信号強度とのレベル差と第1の閾値とを比較する(ステップS207)。
【0067】
レベル差が第1の閾値以上であれば、基地局110は、端末100を、自装置である移動元の基地局110から移動先の基地局110にハンドオーバすべきと判定し、ハンドオーバを実行する(ステップS208)。レベル差が第1の閾値より小さければ、基地局110は、ハンドオーバを実行せずにステップS202に戻り、端末100での受信信号強度の監視を継続する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、基地局110が端末100の移動速度に応じて異なる閾値(第1の閾値)を用いるので、端末100の移動速度が様々であっても良好にハンドオーバを実行することができる。本実施形態で具体的には、ハンドオーバの迅速性と不要なハンドオーバの削減とを両立することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、図4に示したように、端末100の受信信号強度が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件としたが、本発明はこれに限定されるものではない。他の例として、基地局110と端末100の間の無線回線の搬送波対雑音(干渉)比が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件としてもよい。更に他の例として、端末100の受信信号強度が一定値より低く、かつ基地局110と端末100の間の無線回線の搬送波対雑音(干渉)比が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件としてもよい。
【0070】
図6は、本実施形態におけるハンドオーバ処理における通信制御の他の例を示すフローチャートである。ここでは、端末100の受信信号強度が一定値より低く、かつ基地局110と端末100の間の無線回線の搬送波対雑音(干渉)比が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件とする場合を例示する。
【0071】
図6を参照すると、図4に示したフローチャートのステップS202とステップS203の間にステップS301が追加されている。それ以外のステップS201〜S208については図6と図4は同じである。
【0072】
ステップS301では、基地局110は、基地局110と端末100の間の搬送波対雑音(干渉)比が、ある閾値(第3の閾値)よりも小さいか否か判定する。搬送波対雑音(干渉)比が第3の閾値よりも小さければ、基地局110はステップS203に進み、搬送波対雑音(干渉)比が第3の閾値以上であれば、基地局110はステップS202に戻る。
【0073】
これによれば、移動元の基地局110において搬送波対雑音(干渉)比が良好であったにも関わらずハンドオーバを行い、搬送波対雑音(干渉)比を劣化させてしまうのを防止することができる。
【0074】
本実施形態では、端末100の移動速度を基地局110からの受信信号強度から算出する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、どのような方法で端末100の移動速度を取得してもよい。例えば、端末100がGPS(Global Positioning System)受信機を備え、そのGPS受信機により自装置の位置を計測するものであってもよい。その場合、端末100が計測した自装置の位置の時間変化から端末100の移動速度を算出することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について述べてきたが、本発明は、この実施形態だけに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において一部の構成を変更してもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 端末
110 基地局
111 信号強度取得部
112 速度取得部
113 判定部
120 GW
130 CSN
131 AAA部
132 DHCP部
133 HA部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局に接続した端末の移動が可能な無線通信システムにおいてハンドオーバによって端末と接続する基地局を切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
端末が基地局と無線回線で接続する無線通信システムでは、安定した通信を可能にするために、基地局からの信号の端末での受信信号強度をある一定レベル以上に保つことが要求される。しかし、端末の移動によって無線回線の環境が変化し、端末での受信信号強度が劣化してしまうことがある。接続中の基地局から他の基地局に接続先を切り替えることにより受信信号強度が改善される場合、端末は接続先の基地局の切り替え(ハンドオーバ)を実行する。
【0003】
ハンドオーバは、受信信号強度を有意に改善するとともに、基地局間の境界付近でハンドオーバが繰り返されることを防止するために、移動先基地局からの受信レベルと移動元基地局の受信レベルの差が、ある閾値以上であることを条件に実行される。
【0004】
特許文献1には、移動端末がGPS(Global Positioning System)を用いて自装置の位置情報を取得し、自装置と各基地局との距離を算出し、その距離に基づいて適切なセルに対してハンドオーバを行う技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、端末の位置情報から移動速度および移動方向を検出し、その情報を基に算出した基地局毎のオフセットと、各基地局からの信号の受信レベルとを基に接続先の基地局を選択する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献3では、接続中の基地局から他の基地局へハンドオーバするか否かを判断するための閾値として、接続中の基地局からの受信レベルについての閾値が用いられる。そして、その閾値は端末の移動速度に基づいて変更される。
【0007】
また、特許文献4では、端末が複数の基地局と同時に接続するハンドオーバにおいて、接続中の基地局からの受信レベルに近い受信レベルの基地局を、端末と接続する基地局に含めるために閾値が用いられる。そして、その閾値は端末の移動速度に基づいて変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−199428号広報
【特許文献2】特開2005−012429号広報
【特許文献3】特開2000−197093号公報
【特許文献4】特開2002−10313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、移動先基地局からの受信レベルと移動元基地局の受信レベルの差が閾値以上であることを条件にハンドオーバを実行するのには基地局間でハンドオーバが繰り返されるのを防止するという意味がある。境界付近でハンドオーバが繰り返されれば、無線周波数や装置の処理能力などのリソースが無駄に浪費されることとなるからである。
【0010】
ところが、端末が移動したときのハンドオーバの起こりやすさは端末の移動速度によって異なる。端末での受信信号強度は、基地局から端末までの距離に依存する信号の減衰と、フェージングなどの無線環境の変動の影響を受けるからである。端末の移動速度が速い場合、基地局からの受信信号強度の変化は、端末と基地局の距離の変化への依存度が高い。一方、端末の移動速度が遅い場合、基地局からの受信信号強度の変化は、フェージングなどの無線環境の変動への依存度が高い。
【0011】
図7A〜7Cは、端末の移動速度が低い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【0012】
端末の移動速度が低い場合、図7Aに示すように、移動元基地局と移動先基地局からの受信信号の信号強度の変化が鈍い。
【0013】
移動先基地局からの受信レベルと移動元基地局の受信レベルの差に対する閾値が小さければ、移動元基地局から移動先基地局への切り替えを迅速に行うことができる。しかし、図7Bに示すようにフェージングの影響があると、小さい閾値(図中のα)では、移動元基地局と移動先基地局の間で不要にハンドオーバの繰り返しが発生する場合がある。
【0014】
これに対して、図7Cに示すように閾値(図中のβ)が大きければ、上述のような不要なハンドオーバを削減することができる。
【0015】
図8A〜8Cは、端末の移動速度が高い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【0016】
端末の移動速度が高い場合、図8Aに示すように、移動元基地局と移動先基地局からの受信信号の信号強度の変化が鋭い。
【0017】
図8Bに示すように閾値が大きければ上述したように不要なハンドオーバは削減されるが、端末の移動速度が高い場合は、もともと不要なハンドオーバの発生は起こりにくい。その一方、閾値が大きければハンドオーバの起動が遅れる。本来であれば移動先基地局へ切り替えれば良好な信号強度で信号を受信できるにも関わらず、移動元基地局との接続を継続してしまうことがある。そのため、信号強度が劣化して接続が切れる可能性が高くなる。
【0018】
それに対して、端末の移動速度が高い場合、図8C示すように閾値を小さくすればハンドオーバを迅速に実行することができ、また不要なハンドオーバの発生も少ない。
【0019】
上述したように、特許文献2−4には、端末の移動速度を考慮したハンドオーバ技術が開示されている。しかし、特許文献2、3において移動速度に応じて変更される閾値は、移動元基地局の受信レベルに対するものなので、移動先基地局からの受信レベルの変動によってはハンドオーバの繰り返しを有効に低減することができない場合もあった。また、特許文献4において移動速度に応じて変更される閾値は、接続中の基地局からの受信レベルに近い受信レベルの基地局を選択するためのものなので、ハンドオーバの繰り返しを低減することには寄与しないものであった。
【0020】
本発明の目的は、端末の移動速度に応じて良好にハンドオーバを実行することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の基地局装置は、複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムに含まれる基地局装置であって、
自装置に接続している端末装置の移動速度を取得する速度取得手段と、
前記自装置である移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する判定手段と、
を有する。
【0022】
本発明の移動通信システムは、複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムであって、
基地局装置間をハンドオーバすることが可能な端末装置と、
自装置に接続している端末装置の移動速度を取得し、前記自装置である移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する基地局装置と、
を有する。
【0023】
本発明のハンドオーバ制御方法は、複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法あって、
端末装置の移動速度を取得し、
移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基地局装置が端末装置の移動速度に応じて異なる第1の閾値を用いるので、端末装置の移動速度が様々であっても良好にハンドオーバを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態によるWiMAXシステムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるネットワーク接続のシーケンスチャートである。
【図3】基地局110の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態におけるハンドオーバ処理における通信制御の一例を示すフローチャートである。
【図5A】端末100の移動速度を算出する方法について説明するための図である。
【図5B】端末100の移動速度を算出する方法について説明するための図である。
【図6】本実施形態におけるハンドオーバ処理における通信制御の他の例を示すフローチャートである。
【図7A】端末の移動速度が低い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図7B】端末の移動速度が低い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図7C】端末の移動速度が低い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図8A】端末の移動速度が高い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図8B】端末の移動速度が高い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【図8C】端末の移動速度が高い場合のハンドオーバにおけるシステムの挙動について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
ここでは本発明を適用したWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)システムを例示する。
【0028】
図1は、本実施形態によるWiMAXシステムの構成例を示すブロック図である。図1を参照すると、WiMAXシステムは、端末100、基地局110、ASN−GW120、およびCSN130を有している。
【0029】
端末(MS:Mobile Station)100は、パーソナルコンピュータなどのWiMAXクライアントまたは宅内に設置するCPE(customer premises equipment)デバイスである。端末100は基地局110間でハンドオーバすることができる。
【0030】
基地局110は、それぞれにセルを形成して端末100と無線回線で接続し、端末100による通信を可能にする。端末100による基地局110への接続には、新規にその基地局110に接続する場合と、他の基地局110からのハンドオーバにより、その基地局110に接続する場合とがある。
【0031】
図2は、本実施形態におけるネットワーク接続のシーケンスチャートである。
【0032】
端末100および基地局110は、端末100の基地局110への接続を開始するためレンジング処理を実行する(ステップS101)。レンジング処理にはCDMAコードが用いられる。
【0033】
続いて、端末100および基地局110は、端末100の送信電力を調整するための処理を実行する(ステップS102)。この処理により、端末100の送信電力は、端末100と基地局110の距離に対応するように調整される。
【0034】
更に、端末100および基地局110は、端末100の送信タイミングを調整するための処理を実行し、端末100と基地局110との同期をとる(ステップS103)。
【0035】
以上の処理が完了した後、端末100の機能登録や認証手続きを経て端末100のネットワーク接続が可能な状態となる。
【0036】
また、基地局110は端末100と連携することにより、端末100による基地局110間のハンドオーバを制御する。
【0037】
ハンドオーバ処理においては、基地局110は、端末100と基地局110の間の受信信号強度を取得し、また端末100の移動速度を算出する。更に、基地局110は、端末100を移動元の基地局から移動先の基地局にハンドオーバすべか否か判定するために、端末100における移動元の基地局110からの信号の受信信号強度と移動先の基地局110からの信号の受信信号強度とのレベル差と、端末100の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較する。
【0038】
移動元の基地局110とは、端末100が現在接続している基地局110である。移動先の基地局110とは、端末100がハンドオーバしようとするターゲットの基地局110である。
【0039】
そして、基地局110は、レベル差が第1の閾値以上であれば、端末100を移動元の基地局110から移動先の基地局110にハンドオーバすべきと判定する。
【0040】
ハンドオーバ処理の更に詳細や、それに関連する基地局110の構成については後述する。
【0041】
ASN(Access Service Network)−GW(Gateway)120は、基地局110に接続されている端末100の通信をCSN130に中継するためのゲートウェイである。
【0042】
基地局110とASN−GW120はASNに含まれる。ASNは、単一または複数の基地局110と、単一または複数のASN‐GW120を含むWiMAXシステムにおけるアクセスネットワークであり、携帯電話ネットワークにおける無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)と同様にQoS(Quality of Service)管理や無線リソース管理などの機能を提供する。
【0043】
CSN(Connectivity Service Network)130は、WiMAXサービスにおけるIPコアネットワーク機能を担う。
【0044】
CSN130には、AAA(Authentication, Authorization, and Accounting)機能と、モバイルIPのHA(Home Agent)機能と、他のネットワークとのプロキシ機能および接続機能とを含むコアネットワーク機能が集約されている。
【0045】
CSN130はAAA部131、DNS DHCP部132、およびHA部133を有しており、AAA部131がAAA機能を担い、DNS DHCP部132が他のネットワークとのプロキシ機能および接続機能を担い、HA部133がHA機能を担っている。
【0046】
図3は、基地局110の構成を示すブロック図である。図3を参照すると、信号強度取得部111、速度取得部112、および判定部113を有している。
【0047】
信号強度取得部111は、端末100と基地局110の間の受信信号強度を取得する。例えば、端末100が接続している基地局110から受信する信号の信号強度を計測し、その基地局110に通知する。
【0048】
速度取得部112は、端末100の移動速度を取得する。例えば、速度取得部112は、信号強度取得部111によって取得される信号強度の時間変化から端末100の移動速度を算出すればよい。
【0049】
具体例として、速度取得部112は、信号強度取得部111により取得された端末100の受信信号強度から、自由空間伝播損失の理論式を用いて、端末100と基地局110の距離を算出し、その距離の時間変化から端末100の移動速度を算出する。
【0050】
判定部113は、端末100における移動元の基地局110からの信号の受信信号強度と移動先の基地局110からの信号の受信信号強度とのレベル差と、端末100の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較する。端末100の移動速度が速いほど第1の閾値は小さな値に設定される。
【0051】
なお、判定部113は、例えば端末100からの通知によって、自装置である移動元の基地局110からの信号の端末100での受信信号強度と、他装置である移動先の基地局110からの信号の端末100での受信信号強度とを取得することができる。通常、移動先の基地局110は移動元の基地局110に隣接する基地局である。
【0052】
第1の閾値を定める方法の具体例としては、判定部113に、第1の閾値の候補である複数の閾値候補と、移動速度に基づいて該閾値候補の中から第1の閾値を選択するための少なくとも1つの第4の閾値とが予め与えておけばよい。そして、判定部113は、移動速度を第4の閾値と比較し、その比較結果によって閾値候補のいずれかを第1の閾値として選択すればよい。
【0053】
判定部113は、レベル差を第1の閾値と比較した結果、レベル差が第1の閾値以上であれば、端末100を移動元の基地局110から移動先の基地局110にハンドオーバすべきと判定する。また、レベル差が第1の閾値より小さければ、判定部113は、端末100を移動元の基地局110から移動先の基地局110にハンドオーバすべきでないと判定する。
【0054】
図4は、本実施形態におけるハンドオーバ処理における通信制御の一例を示すフローチャートである。
【0055】
図4を参照すると、まず、端末100が、レンジング処理、端末の機能登録、認証処理を終えて、ある基地局110に接続する(ステップS201)。ここでは、このときに端末100が接続した基地局110がハンドオーバの移動元の基地局となる。
【0056】
次に、基地局110は、端末100と基地局110の間の受信信号強度を閾値(第2の閾値)と比較し、その比較結果から、ハンドオーバ処理を開始するか否か判定する(ステップS202)。
【0057】
ここでは一例として、受信信号強度が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件とすることとする。ここで用いる第2の閾値は、その条件を満たすか否かを判断するための閾値である。
【0058】
受信信号強度が第2の閾値以上であれば、基地局110は、ハンドオーバ処理を開始せずに受信信号強度の監視を継続する。
【0059】
また、受信信号強度が第2の閾値より低ければ、基地局110は、ハンドオーバ処理を開始すると判断し、端末100の移動速度を算出する(ステップS203)。その際、基地局110は、自由空間伝播損失の理論式を用いて、端末100での基地局110からの受信信号強度から端末100の移動速度を算出する。
【0060】
図5Aおよび図5Bは、端末100の移動速度を算出する方法について説明するための図である。図5Aに示すように端末100が移動し、移動元の基地局110から遠ざかり、移動先の基地局110に近づけば、移動元の基地局110からの信号の端末100での受信信号強度が低下し、移動先の基地局110からの信号の端末100での受信信号強度が上昇する。自由空間伝播損失の理論式を用いれば、受信信号強度から、端末100と基地局110の距離を求めることができる。この端末100と基地局110との距離の変化分を時間で除算すれば端末100の移動速度が得られる。
【0061】
その際、基地局110は、基地局110が送信するフレーム毎の受信信号強度を端末100から取得し、そのフレーム毎の受信信号強度と、基地局110が送信するフレームのフレーム周期とを用いて、端末100の移動速度を算出することにしてもよい。例えばWiMAXシステムのフレーム周期は5msecである。
【0062】
これによれば、移動速度の計算に固定値であるフレーム周期を用いるので、演算が容易である。また、基地局110は受信信号強度が計測された時刻の情報がなくても移動速度を算出することができる。
【0063】
図4に戻り、基地局110は、次に、端末100の移動速度が、ある閾値(第4の閾値)以上であるか否か判定する(ステップS204)。ここで用いる第4の閾値は、端末100の移動速度が一定値より速いか遅いかを判定するための閾値である。
【0064】
端末100の移動速度が第4の閾値以上であれば、基地局110は、第1の閾値として比較的小さな値を選択する(ステップS205)。逆に、端末100の移動速度が第4の閾値より遅ければ、基地局110は、第1の閾値として比較的大きな値を選択する(ステップS206)。ステップS205で選択される値よりもステップS206で選択される値の方が大きな値である。
【0065】
なお、ここでは第4の閾値を1つとし、第1の閾値を2つの候補の中から選択する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。第4の閾値を複数することで第1の閾値の候補の数を増やせば、端末100の移動速度に対して第1の閾値をより適切な値に設定することが可能となる。
【0066】
次に、基地局110は、端末100における移動元の基地局110からの信号の受信信号強度と移動先の基地局110からの信号の受信信号強度とのレベル差と第1の閾値とを比較する(ステップS207)。
【0067】
レベル差が第1の閾値以上であれば、基地局110は、端末100を、自装置である移動元の基地局110から移動先の基地局110にハンドオーバすべきと判定し、ハンドオーバを実行する(ステップS208)。レベル差が第1の閾値より小さければ、基地局110は、ハンドオーバを実行せずにステップS202に戻り、端末100での受信信号強度の監視を継続する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態によれば、基地局110が端末100の移動速度に応じて異なる閾値(第1の閾値)を用いるので、端末100の移動速度が様々であっても良好にハンドオーバを実行することができる。本実施形態で具体的には、ハンドオーバの迅速性と不要なハンドオーバの削減とを両立することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、図4に示したように、端末100の受信信号強度が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件としたが、本発明はこれに限定されるものではない。他の例として、基地局110と端末100の間の無線回線の搬送波対雑音(干渉)比が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件としてもよい。更に他の例として、端末100の受信信号強度が一定値より低く、かつ基地局110と端末100の間の無線回線の搬送波対雑音(干渉)比が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件としてもよい。
【0070】
図6は、本実施形態におけるハンドオーバ処理における通信制御の他の例を示すフローチャートである。ここでは、端末100の受信信号強度が一定値より低く、かつ基地局110と端末100の間の無線回線の搬送波対雑音(干渉)比が一定値より低いことを、ハンドオーバ処理を開始するための条件とする場合を例示する。
【0071】
図6を参照すると、図4に示したフローチャートのステップS202とステップS203の間にステップS301が追加されている。それ以外のステップS201〜S208については図6と図4は同じである。
【0072】
ステップS301では、基地局110は、基地局110と端末100の間の搬送波対雑音(干渉)比が、ある閾値(第3の閾値)よりも小さいか否か判定する。搬送波対雑音(干渉)比が第3の閾値よりも小さければ、基地局110はステップS203に進み、搬送波対雑音(干渉)比が第3の閾値以上であれば、基地局110はステップS202に戻る。
【0073】
これによれば、移動元の基地局110において搬送波対雑音(干渉)比が良好であったにも関わらずハンドオーバを行い、搬送波対雑音(干渉)比を劣化させてしまうのを防止することができる。
【0074】
本実施形態では、端末100の移動速度を基地局110からの受信信号強度から算出する例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、どのような方法で端末100の移動速度を取得してもよい。例えば、端末100がGPS(Global Positioning System)受信機を備え、そのGPS受信機により自装置の位置を計測するものであってもよい。その場合、端末100が計測した自装置の位置の時間変化から端末100の移動速度を算出することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について述べてきたが、本発明は、この実施形態だけに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において一部の構成を変更してもよい。
【符号の説明】
【0076】
100 端末
110 基地局
111 信号強度取得部
112 速度取得部
113 判定部
120 GW
130 CSN
131 AAA部
132 DHCP部
133 HA部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムに含まれる基地局装置であって、
自装置に接続している端末装置の移動速度を取得する速度取得手段と、
前記自装置である移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する判定手段と、
を有する基地局装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記端末装置の移動速度が速いほど、前記第1の閾値を小さな値に定める、
請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記端末装置と移動元の基地局装置の間の受信信号強度が第2の閾値より低いことを、ハンドオーバを実施するための条件とする、
請求項1または2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記端末装置と移動元の基地局装置の間の搬送波対雑音比が第3の閾値より低いことを、ハンドオーバを実施するための条件とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記第1の閾値の候補である複数の閾値候補と、前記移動速度に基づいて該閾値候補の中から前記第1の閾値を選択するための少なくとも1つの第4の閾値とが予め定められており、
前記判定手段は、前記移動速度を前記第4の閾値と比較し、その比較結果によって前記閾値候補のいずれかを前記第1の閾値として選択する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記自装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度を取得する信号強度取得手段を更に有し、
前記速度取得手段は、前記信号強度取得手段により取得される前記端末装置の受信信号強度から、自由空間伝播損失の理論式を用いて、前記端末装置と前記基地局装置の距離を算出し、該距離の時間変化から該端末装置の移動速度を算出する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記信号強度取得手段は、前記基地局装置が送信するフレーム毎の受信信号強度を取得し、
前記速度取得手段は、前記信号強度取得手段によって取得されたフレーム毎の受信信号強度と、前記基地局装置が送信するフレームのフレーム周期とを用いて、前記端末装置の移動速度を算出する、
請求項6に記載の基地局装置。
【請求項8】
複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムであって、
基地局装置間をハンドオーバすることが可能な端末装置と、
自装置に接続している端末装置の移動速度を取得し、前記自装置である移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する基地局装置と、
を有する移動通信システム。
【請求項9】
前記基地局装置は、前記端末装置の移動速度が速いほど、前記第1の閾値を小さな値に定める、
請求項8に記載の移動通信システム。
【請求項10】
複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法あって、
端末装置の移動速度を取得し、
移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する、
ハンドオーバ制御方法。
【請求項11】
前記端末装置の移動速度が速いほど、前記第1の閾値を小さな値に定める、
請求項10に記載のハンドオーバ制御方法。
【請求項1】
複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムに含まれる基地局装置であって、
自装置に接続している端末装置の移動速度を取得する速度取得手段と、
前記自装置である移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する判定手段と、
を有する基地局装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記端末装置の移動速度が速いほど、前記第1の閾値を小さな値に定める、
請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記端末装置と移動元の基地局装置の間の受信信号強度が第2の閾値より低いことを、ハンドオーバを実施するための条件とする、
請求項1または2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記端末装置と移動元の基地局装置の間の搬送波対雑音比が第3の閾値より低いことを、ハンドオーバを実施するための条件とする、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記第1の閾値の候補である複数の閾値候補と、前記移動速度に基づいて該閾値候補の中から前記第1の閾値を選択するための少なくとも1つの第4の閾値とが予め定められており、
前記判定手段は、前記移動速度を前記第4の閾値と比較し、その比較結果によって前記閾値候補のいずれかを前記第1の閾値として選択する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記自装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度を取得する信号強度取得手段を更に有し、
前記速度取得手段は、前記信号強度取得手段により取得される前記端末装置の受信信号強度から、自由空間伝播損失の理論式を用いて、前記端末装置と前記基地局装置の距離を算出し、該距離の時間変化から該端末装置の移動速度を算出する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記信号強度取得手段は、前記基地局装置が送信するフレーム毎の受信信号強度を取得し、
前記速度取得手段は、前記信号強度取得手段によって取得されたフレーム毎の受信信号強度と、前記基地局装置が送信するフレームのフレーム周期とを用いて、前記端末装置の移動速度を算出する、
請求項6に記載の基地局装置。
【請求項8】
複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムであって、
基地局装置間をハンドオーバすることが可能な端末装置と、
自装置に接続している端末装置の移動速度を取得し、前記自装置である移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する基地局装置と、
を有する移動通信システム。
【請求項9】
前記基地局装置は、前記端末装置の移動速度が速いほど、前記第1の閾値を小さな値に定める、
請求項8に記載の移動通信システム。
【請求項10】
複数の基地局装置によって通信エリアをカバーする移動通信システムにおけるハンドオーバ制御方法あって、
端末装置の移動速度を取得し、
移動元の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度と移動先の基地局装置からの信号の前記端末装置での受信信号強度とのレベル差と、前記端末装置の移動速度に基づいて定まる第1の閾値とを比較し、該レベル差が前記第1の閾値以上であれば、前記端末装置を前記移動元の基地局装置から前記移動先の基地局装置にハンドオーバすべきと判定する、
ハンドオーバ制御方法。
【請求項11】
前記端末装置の移動速度が速いほど、前記第1の閾値を小さな値に定める、
請求項10に記載のハンドオーバ制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公開番号】特開2011−4127(P2011−4127A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145127(P2009−145127)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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