説明

基材を撥油性および/または撥水性にするためのフルオロケミカル組成物

本発明は、フルオロケミカル化合物およびカチオン性界面活性剤の水性分散体を含む組成物を提供し、この組成物は、コロイド状無機粒子をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、特に、テキスタイル、不織物、および皮革などの繊維性基材を撥油性および/または撥水性にするように処理するためのフルオロケミカル組成物に関する。本発明は、さらに該組成物による基材の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材、特に織物などの繊維性基材、を撥油性および撥水性にするための組成物は、当技術分野で知られて久しい。フルオロケミカル化合物は、撥油性および撥水性を基材、特に織物基材に提供する上で非常に有効であることがよく知られている。様々なフルオロケミカル組成物は、基材を撥油性および/または撥水性にすることが知られており、そのために使用されている。例えば、フルオロケミカル組成物は、フッ素化基、および任意に1つまたは複数の非フッ素化モノマーを有するアクリレートまたはメタクリレートモノマーの重合から誘導されるフルオロケミカルアクリレートまたはメタクリレートをべースとすることがある。このような組成物は、例えば米国特許第3,660,360号明細書、米国特許第5,876,617号明細書、米国特許第4,742,140号明細書、米国特許第6,121,372号明細書、および米国特許第6,126,849号明細書、およびEP 1 329 548号明細書に記載されている。
【0003】
あるいは、例えば米国特許第5,910,557号明細書に開示するように、フルオロケミカル組成物に含まれるフルオロケミカル化合物は、例えばヒドロキシ基などのイソシアネート反応性基を有するフルオロケミカル化合物、およびポリイソシアネート化合物、および任意選択の非フッ素化共反応物質の縮合反応から誘導することができる。
【0004】
米国特許第6,525,127号明細書は、完全フッ素化末端基をそれぞれ有し、かつ有機結合基を介してそれぞれ独立に脂肪族主鎖の炭素原子に結合されたペンダントフルオロ脂肪族基を複数有する脂肪族主鎖を含むフルオロケミカルオリゴマー部分;脂肪族部分;およびフルオロケミカルオリゴマー部分を脂肪族部分に結合させる結合基を含むフルオロケミカル化合物をベースとするフルオロケミカル組成物を開示している。該組成物は、望ましい撥油性、撥水性、および撥汚性を繊維性基材に提供すると教示されている。
【0005】
知られているフルオロケミカル組成物は、有機溶媒中の溶液または分散体としても、フルオロケミカル組成物を水性媒体に分散させた水系組成物としても利用可能である。水系組成物は、環境の点から見て一般に好ましく、フルオロケミカル化合物を、フルオロケミカル化合物の化学構造に応じた様々な方式で水に分散させることができる。
【0006】
例えば、フルオロケミカル化合物は、化合物を自己水分散性にする水可溶化基を含むことができる。その一例として、米国特許第5,370,919号明細書は、繊維性基材を撥油性および撥水性にし、耐汚染性を基材に提供するように繊維性基材を処理するための、水溶性または分散性フルオロ脂肪族基を含むポリ(オキシアルキレン)化合物を有する組成物を開示している。該組成物は、コロイドシリカやアルミナゾルなどの耐汚れ剤も含む。
【0007】
あるいは、フルオロケミカル化合物は、界面活性剤を用いて水に分散することができる。例えば、米国特許第5,760,126号明細書は、組成物中の界面活性剤として使用するためのアニオン性部分を有するポリマーを含む組成物を開示している。組成物は、さらに低い表面エネルギー、および高い耐磨耗性を有する硬質コーティングを生じることができる組成物を提供するためのコロイドシリカも含む。同様な組成物が、米国特許第5,888,290号明細書、および米国特許第6,201,056号明細書に開示されている。
【0008】
多数の市販水性フルオロケミカル組成物では、フルオロケミカル化合物は、カチオン性界面活性剤を用いて水に分散されている。このような組成物は、ある種の塗布方法において問題を生じることが判明している。特に、基材を浴中で組成物と接触させ、次いで基材を1組のロールを通して導くことによってフルオロケミカル組成物を塗布する塗布方法では、しばらく組成物を基材に塗布した後、ロール上で被着が起こるおそれがある。これは、ロールを清浄にするため塗布を中断する必要があり、処理された基材の製造コストを増大させるので、望ましくない。この問題は、さらにフルオロケミカルの性質、および処理する基材の性質に依存し、いくつかの基材およびフルオロケミカル組成物は、他のものよりこの問題を速く生じさせる。この問題は、それへの組成物中の界面活性剤の量を増大させることによって低減することができる。しかし、界面活性剤レベルを増大させると、組成物の忌避性能に悪影響を及ぼすことが判明している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上記の問題を低減、またさらにはなくすことが望ましいはずである。問題の解決策は、環境に優しく、費用効果が高いことが好ましい。好ましくは、組成物によって基材が得ることができる撥油性および/または撥水性は、ロール被着の問題を低減またはなくす場合悪影響を受けるべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、本発明は、フルオロケミカル化合物およびカチオン性界面活性剤の水性分散体を含む組成物を提供し、この組成物は、コロイド状無機粒子をさらに含む。
【0011】
コロイド状無機粒子が存在すると、上記に記載したロール被着の問題を低減し、いくつかの実施形態ではさらにはそれをなくすことが判明した。また、コロイド状無機粒子は、一般に組成物で処理された基材に付与することができる撥油性および/または撥水性に悪影響を与えない。
【0012】
別の態様では、本発明は、上記に記述するような組成物をテキスタイル、不織物、または皮革などの繊維性基材に塗布するステップを含む処理方法を提供する。特に、該組成物は、基材がロールを通して導かれる塗布方法での使用に適していることが判明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に使用するためのコロイド状無機粒子は、通常は、1〜200nm、通常は2〜100nm、好ましくは2〜50nmの平均粒径(一般に数平均)を有する。「無機粒子」という用語は、粒子が、無機性を有することを意味しているが、疎水性にするため炭化水素基などの有機基で例えば無機粒子の表面を部分改質された粒子を排除しない。適切なコロイド状無機粒子には、カチオン性コロイド状無機粒子が含まれる。「カチオン性コロイド状無機粒子」という用語は、コロイド状無機粒子が、通常はその表面のカチオン電荷によって分散体中で安定化されることを意味する。一実施形態では、これらのカチオン電荷は、無機粒子に含まれている正に帯電した金属イオンに起因することがある。別の実施形態では、カチオン電荷は、カチオン性基、例えばアンモニウム基を有する有機部分を無機粒子に化学的に結合させる無機粒子の有機的改質に起因することがある。さらに別の実施形態では、無機粒子を、例えば1〜30個の炭素原子を有する線状または分枝状脂肪族基を含めて、炭化水素基など1つまたは複数の有機基で改質することにより疎水化することができ、次いでカチオン性界面活性剤で安定化することができる。あるいは、疎水改質された無機粒子を、非イオン性界面活性剤で安定化することができる。一般には、コロイド状無機粒子を、粒子に化学的に結合させたカチオン電荷で安定化する。
【0014】
特に適切なカチオン性コロイド状無機粒子には、アルミニウム酸化物を含むコロイド状シリカ粒子が含まれる。コロイド状シリカ粒子中のアルミニウム酸化物は、アルミニウム原子を経由して正電荷を提供すると考えられる。市販のカチオン性コロイド状シリカ粒子には、ナルコケミカル(Nalco Chemical Co.)からNALCO(登録商標)1056として入手可能なものが含まれる。使用することができるさらに別のカチオン性無機粒子には、アルミナゾル、ジルコニアゾル、カチオン乳化したシリルセスキオキサン、およびカチオン性界面活性剤で乳化させた疎水改質コロイド状シリカ粒子が含まれる。
【0015】
コロイド状無機粒子は、組成物中のフルオロケミカル化合物100重量部当たり通常は0.25〜25部、好ましくは0.5〜10重量部の量で使用する。
【0016】
撥水性および撥油性を付与することができる周知のフルオロケミカルのいずれでも、本発明の組成物で使用することができる。適切なフルオロケミカルには、撥水性および撥油性を基材に付与することが当技術分野で知られているポリマーおよびオリゴマーの化合物を含めて、フルオロケミカル基を含む有機化合物のいずれも含まれる。これらのポリマーおよびオリゴマーのフルオロケミカル処理は、通常は3〜約20個の炭素原子、通常は約4〜約14個の炭素原子を有する過フッ素化炭素鎖を含む1つまたは複数のフルオロケミカル基を含む。これらのフルオロケミカル基は、直鎖、分枝鎖、もしくは環状フッ素化アルキレン基、またはその任意の組合せを含むことができる。フルオロケミカル基は、好ましくは重合可能なオレフィン性不飽和を含まないが、カテナリー型(すなわち、鎖内で、炭素にしか結合していない)酸素、2価もしくは6価硫黄、または窒素などのヘテロ原子を任意に含むことができる。完全フッ素化基が好ましいが、水素または塩素原子は、炭素原子2個に対して、どちらかの原子が1個以下しか存在しないことを条件として置換基として存在することもできる。フルオロケミカル基は、約40重量%〜約80重量%のフッ素、より好ましくは約50重量%〜約78重量%のフッ素を含むことがさらに好ましい。基の末端部分は、一般に完全フッ素化され、好ましくは少なくとも7個のフッ素原子を含む。過フッ素化脂肪族基(すなわち、式Cn2n+1-のもの)は、最も好ましいフルオロケミカル基である。
【0017】
適切なフルオロケミカルの代表例には、フルオロケミカルウレタン、ウレア、エステル、エーテル、アルコール、エポキシド、アロファネート、アミド、アミン(およびその塩)、酸(およびその塩)、カルボジイミド、グアニジン、オキサゾリジノン、イソシアヌラート、ビウレット、アクリレートおよびメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにその混合物が含まれる。
【0018】
本発明に有用なフルオロケミカル基を含む代表的ポリマーには、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクタデシルメタクリレート;オキシアルキレンおよびポリオキシアルキレンポリオールオリゴマーのアクリル酸およびメタクリル酸エステル(例えば、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレンオキシドジアクリレート、およびポリエチレングリコールモノアクリレート)、グリシジルメタクリレート、エチレン、ブタジエン、スチレン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリロニトリル、クロロ酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルアルキルエーテル、ビニルアルキルケトン、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルメタクリレート、および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などのモノマーと共重合させたフルオロケミカルアクリレートモノマーを含むフルオロケミカルアクリレートおよびメタクリレートホモポリマーまたはコポリマーが含まれる。使用する様々なコモノマーの相対的量は、処理対象の基材、所望の特性、および基材への塗布モードに応じて一般に経験的に選択することができる。有用なフルオロケミカル処理には、上記に記述する様々なフルオロケミカルのブレンドも含まれる。
【0019】
特定の一実施形態では、フルオロケミカル化合物は、次式に対応するフッ素化モノマーから誘導されるフッ素化繰返し単位を含むフッ素化ポリマーを含む。
f−X−OC(O)−C(R)=CH2 (I)
式中、Rfは、3個または4個の炭素原子を有する過フッ素化脂肪族基を表し、Xは、2価の有機結合基であり、Rは、水素、または1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基を表す。
【0020】
結合基Xは、パーフルオロ脂肪族基Rfをラジカル重合可能な基に結合させる。結合基Xは、一般にフッ素化されておらず、好ましくは1〜約20個の炭素原子を含む。Xは、任意に酸素、窒素、もしくは硫黄を含有する基、またはその組合せを含むことができ、Xは、ラジカル重合に実質的に干渉する官能基を含まない(例えば、重合可能なオレフィン性二重結合、チオール、および当業者に知られている他のこのような官能基)。適切な結合基Xの例には、直鎖、分枝鎖、または環状アルキレン、アリーレン、アラルキレン、スルホニル、スルホキシ、スルホンアミド、カルボンアミド、カルボニルオキシ、ウレタニレン、ウレイレン、およびスルホンアミドアルキレンなどその組合せが含まれる。
【0021】
フッ素化モノマーの具体例には、
CF3CF2CF2CF2CH2CH2OCOCR1=CH2
CF3(CF23CH2OCOCR1=CH2
CF3(CF23SO2N(CH3)CH2CH2OCOCR1=CH2
CF3(CF23SO2N(C25)CH2CH2OCOCR1=CH2
CF3(CF23SO2N(CH3)CH2CH(CH3)OCOCR1=CH2
(CF32CFCF2SO2N(CH3)CH2CH2OCOCR1=CH2
(ただし、R1は、水素またはメチルである)が含まれる。
【0022】
式(I)によるフッ素化モノマーまたはその混合物は、通常はポリマー中の対応するその単位量が、10〜97モル%、好ましくは25〜97モル%、より好ましくは25モル%〜85モル%、最も好ましくは25モル%〜75モル%であるような量で使用する。
【0023】
式(I)によるフッ素化モノマーを、一般に1つまたは複数の非フッ素化モノマーと共重合する。一実施形態では、非フッ素化モノマーの少なくとも一部分は、塩化ビニルや塩化ビニリデンなどの塩素含有モノマーから選択される。このような塩素含有モノマーの繰返し単位は、存在する場合、フッ素化ポリマー中に、3〜75モル%の量で含まれることが好ましい。
【0024】
上記の塩素含有モノマー以外の別の非フッ素化コモノマーには、次式で表すことができるモノマーなどの炭化水素基含有モノマーが含まれる。
h−L−Z (II)
式中、Rhは、4〜30個の炭素原子を有する脂肪族基を表し、Lは、2価の有機結合基を表し、Zは、エチレン性不飽和基を表す。炭化水素基は、好ましくは線状、分枝状、または環状のアルキル基、アラルキル基、アルキルアリール基、およびアリール基からなる群から選択される。別の非フッ素化モノマーには、式(II)中の炭化水素基が、オキシアルキレン基、またはヒドロキシ基などの置換基、および/または硬化部位を含むものが含まれる。
【0025】
非フッ素化コモノマーの例には、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の炭化水素エステルが含まれる。例には、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、3,3−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、(2,2−ジメチル−1−メチル)プロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、4−エチル−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、およびテトラヒドロピラニルアクリレートが含まれる。別の非フッ素化コモノマーには、酢酸アリルやヘプタン酸アリルなどのアリルエステル;セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルまたはアルキルアリルエーテル;アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和酸、およびその無水物、およびビニル、アリル、メチル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル、イソボルニル、またはアルコキシエチルアクリレートおよびメタクリレートなどそのエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレート、アルキルシアノアクリレートなどのα−β不飽和ニトリル;アリルアルコール、グリコール酸アリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ジイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのα,β−不飽和カルボン酸誘導体、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート;式X-3+−Ra−OC(O)−CR1=CH2の(メタ)アクリレート(式中、X-は、例えば塩素アニオンなどのアニオンを表し、Rは、水素またはアルキル基を表し、Rはそれぞれ、同じでも、異なってもよく、Raは、アルキレンを表し、R1は、水素またはメチルを表す)などアンモニウム基を有するアルキル(メタ)アクリレート;ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−シアノメチルスチレンなどのスチレンおよびその誘導体;エチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、イソプレン、クロロおよびジクロロブタジエン、ならびに2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどハロゲンを含むことができる低級オレフィン系炭化水素、ポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのブロックコポリマーの(メタ)アクリレート、アミノまたはジアミノを末端基とするポリエーテルの(メタ)アクリレート、およびメトキシポリエチレングリコールの(メタ)アクリレートを含めて(ポリ)オキシアルキレン基を含む炭化水素モノマー、ならびにヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどヒドロキシル基を含む(メタ)アクリレートを含めて、ヒドロキシル基を含む炭化水素モノマーが含まれる。
【0026】
本発明の特定の実施形態では、式(I)によるモノマーから誘導される単位を含むフッ素化ポリマーには、1つまたは複数の硬化部位を有する単位がさらに含まれる。これらの単位は、通常は1つまたは複数の硬化部位を含む対応するコモノマーから誘導される。「硬化部位」の用語は、処理対象の基材との反応に従事することができる官能基を意味する。硬化部位の例には、カルボン酸基などの酸基、ヒドロキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基またはブロックイソシアネート基が含まれる。硬化部位単位が誘導されることがあるコモノマーの例には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アリルメタクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、グルシジルメタクリレート、およびα,α ジメチル m. イソプロペニルベンジルイソシアネートが含まれる。他の例には、重合可能なモノ−イソシアネートとイソシアネートブロッキング剤との反応によって、あるいはジ−またはポリ−イソシアネート、およびヒドロキシまたはアミノ−官能化アクリレートまたはメタクリレート、およびイソシアネートブロッキング剤の反応によって得ることができる重合可能なウレタンが含まれる。イソシアネートブロッキング剤は、イソシアネート基と反応すると、通常は室温でイソシアネートと反応する化合物と室温で反応しないが、イソシアネート反応性化合物と高温で反応する基を生じる化合物である。一般に、高温で、ブロッキング基は、ブロック(ポリ)イソシアネート化合物から放出され、それによってイソシアネート基が再び生成され、次いでイソシアネート反応性基と反応することができる。ブロッキング剤およびその機構は、ダグラス・ウィックス(Douglas Wicks)およびゼノ・W・ウィックスJr.(Zeno W. Wicks Jr.)による「ブロックイソシネートIII.パートA、機構と化学(Blocked isocyanates III.: Part. A, Mechanisms and chemistry)」、有機コーティングの進歩(Progress in Organic Coatings)、36巻(1999年)、14〜172頁に詳細に記載されている。
【0027】
ブロックイソシアネートは、芳香族、脂肪族、環状、または非環状とすることができ、一般にブロックジ−またはトリイソシアネート、またはその混合物であり、イソシアネートを、イソシアネート基と反応することができる少なくとも1つの官能基を有するブロッキング剤と反応させることによって得ることができる。好ましいブロックイソシアネートは、好ましくは高温でブロッキング剤を脱ブロックすることにより、150℃未満の温度で、イソシアネート反応性基と反応することができるブロックポリイソシアネートである。好ましいブロッキング剤には、フェノールなどのアリールアルコール、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、アセトフェノンオキシム、ベンゾフェノンオキシム、2−ブタノンオキシム、またはジエチルグリオキシムなどのオキシムが含まれる。ブロックイソシアネート基を硬化部位として有するコモノマーの特定の例には、ジ−イソシアネート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および2−ブタノンオキシムの反応生成物、またはジ−イソシアネート、ポリエチレングリコールと2−ブタノンオキシムのモノ(メタ)アクリレートの反応生成物、ならびにトリイソシアネート、1当量の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および2当量の2−ブタノンオキシムの反応生成物、ならびにα,α−ジメチル m. イソプロペニルベンジルイソシアネートと2−ブタノンオキシムとの反応生成物が含まれる。
【0028】
本発明に関連してさらに別の実施形態では、組成物で使用するフルオロケミカル化合物は、米国特許第6,525,127号明細書で開示されるようなアルキル化フルオロケミカルオリゴマーである。この米国特許で開示されるアルキル化フルオロケミカルオリゴマーは、
(i)脂肪族主鎖と、それに結合させた複数のフルオロ脂肪族基を含むフルオロケミカルオリゴマー部分であって、フルオロ脂肪族基がそれぞれ、完全フッ素化末端基を有し、それぞれ独立に、有機結合基を介して、脂肪族主鎖の炭素原子に結合されているフルオロケミカルオリゴマー部分;
(ii)少なくとも12個の炭素原子を有する脂肪族部分;および
(iii)フルオロケミカルオリゴマー部分を脂肪族部分に結合させる結合基を含む。
【0029】
一般に、処理用組成物に含まれるフッ素化化合物の量は、フルオロケミカル組成物の全重量を基準として0.1〜4重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。特に基材によるフルオロケミカル組成物の取り込みが低い場合、4重量%超、例えば10重量%までのより多い量のフッ素化化合物も使用することができる。一般に、より濃縮されたフルオロケミカル組成物を、処理用組成物中で所望のレベルのフッ素化化合物に希釈することによってフルオロケミカル処理用組成物を調製する。濃縮されたフルオロケミカル組成物は、フッ素化化合物を、70重量%まで、通常は10重量%〜50重量%の量で含むことができる。
【0030】
カチオン性基を含む他の界面活性剤も使用することができるが、組成物に使用するためのカチオン性界面活性剤は、通常はアンモニウム基を含む界面活性剤である。本発明に関連して特定の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、次式に対応する。
【化1】

式中、R3およびR4はそれぞれ独立に、1〜30個の炭素原子、好ましくは4〜18個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、R3およびR4の少なくとも一方が、少なくとも6個の炭素原子を有し、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素、1〜3個の炭素原子を有するアルキル基、またはポリオキシアルキレン基を表し、あるいはR1およびR2はN+と一緒になって、環を形成することがあり、M-は、例えばCl-、Br-、OH-、または1/2SO42-などの対イオンを表す。
【0031】
炭化水素基R3および/またはR4は、線状、分枝状、または環状の脂肪族基とすることができ、あるいは炭化水素基は、例えばベンジル基などの芳香族基を含むことができる。R1および/またはR2は、ポリオキシアルキレン基を表すことができる。このようなポリオキシアルキレン基は、ポリオキシエチレンなどのホモ−ポリオキシアルキレンとすることができ、あるいはオキシエチレンおよびオキシプロピレン単位からなるポリオキシアルキレン基などのコポリオキシアルキレンとすることができる。一般に、ポリオキシアルキレン基のオキシアルキレン基は、2、3、または4個の炭素原子を有し、ポリオキシアルキレン基中のオキシアルキレン単位の数は、1〜15、好ましくは1〜8単位である。式(III)による単一のカチオン性界面活性剤を、式(III)によるカチオン性界面活性剤の混合物、または他のカチオン性界面活性剤との混合物と同様に使用することができる。
【0032】
使用することができる市販のカチオン性界面活性剤には、アクゾ・ノベル(Akzo−Nobel)からのアーカード(Arquad)(登録商標)T−50、アーカード(Arquad)(登録商標)MCB−50、エソクエッド(Ethoquad)(登録商標)C−12、およびエソクエッド(Ethoquad)(登録商標)18−25が含まれる。一般に、カチオン性界面活性剤を、水性組成物の全量を基準として0.01%〜1%の量で、好ましくは0.05〜0.5%の量で使用する。
【0033】
フルオロケミカル化合物、カチオン性界面活性剤、およびコロイド状無機粒子に加えて、組成物は、任意選択のさらなる添加剤を含有することができる。例えば、組成物は、いわゆる延長剤化合物を含有することができる。延長剤は、通常は、より少ない量のフルオロケミカル化合物を使用することができ、または改善された忌避特性が得られるような所望の忌避特性を提供するように組成物中のフルオロケミカル化合物の効率を改善する非フッ素化化合物である。延長剤化合物の例には、シロキサン、(メタ)アクリレート、および置換アクリレートポリマーおよびコポリマー、N−メチロールアクリルアミドを含むアクリレートポリマー、ウレタン、ブロックイソシアネートを含むポリマーおよびオリゴマー、ウレアもしくはメラミンとホルムアルデヒドの縮合物または初期縮合物、グリオキサール樹脂、脂肪酸とメラミンもしくはウレア誘導体の縮合物、脂肪酸とポリアミドの縮合物およびそのエピクロルヒドリン付加物、ワックス、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アルキルケテンダイマー、エステル、およびアミドが含まれる。これらのフッ素を含まない延長剤化合物のブレンドを使用することもできる。延長剤化合物は存在する場合、組成物中に0.1〜10%、一般に0.5〜5%の量で含まれることがある。
【0034】
本発明の組成物は、通常は固形分全量が0.5〜40重量%である。フルオロケミカル化合物は、一般に25%〜99%の固形分を含む。基材の処理に使用するための準備ができている組成物は、一般に0.25〜10重量%の固形分を有する。より多い量の固形分を有する組成物は、濃縮物として使用することができ、好都合なことには処理方法で使用する前に水で希釈する。
【0035】
本発明の組成物を使用して、基材、特に繊維性基材を撥油性および/または撥水性にするように処理することができる。組成物で処理することができる繊維性基材には、テキスタイル、不織基材、および皮革が含まれる。繊維性基材は、例えばポリエステル繊維、アクリル繊維およびポリアミド繊維を含めて合成繊維、ならびにセルロース繊維などの天然繊維をベースとすることができる。繊維性基材は、例えばポリエステルおよびセルロース繊維の混合物など合成および天然の繊維の混合物、またはポリエステルおよびポリアミド繊維の混合物など合成繊維の混合物を含めて様々な繊維の混合物をさらに含むことができる。
【0036】
組成物は、一般に所望のレベルの撥油性および/または撥水性を得るのに有効な量を基材に塗布する。通常は、組成物は基材上のフルオロケミカル化合物の量が、基材の重量を基準として0.1〜3重量%、好ましくは0.2〜1重量%であるような量で塗布すべきである。組成物は、フルオロケミカル組成物を基材、特に繊維性基材に塗布するために使用する塗布技法のいずれでも塗布することができる。本発明による組成物は、特に基材を組成物が収容されている浴中で組成物と接触させることによって組成物を基材に塗布し、基材を1つまたは複数のロールの上に導く塗布方法での使用に適している。通常は、このようなロールは、基材から過剰の処理組成物を絞り取るように構成されている。
【0037】
組成物を基材に塗布した後、基材を一般に乾燥する。基材は、基材を空気に一定期間曝露させることによって周囲条件で乾燥することができる。あるいは、組成物の塗布のすぐ後に基材を熱に曝露させて、基材の乾燥を加速し、かつ/または所望または必要ならば塗布組成物の硬化を引き起こすことができる。熱温度に曝露した後、基材を、オーブンを通して導くことができ、熱処理の温度は、100〜200℃、通常は120〜180℃とすることができる。
【0038】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明するが、本発明をこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0039】
試験方法
スプレー等級(SR)
処理された基材のスプレー等級は、処理された基材に衝突する水への処理された基材の動的忌避性を示す値である。忌避性は、2001年版Technical Manual of the American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC)で公開された試験方法22−1996により測定し、試験基材の「スプレー等級」によって表した。スプレー等級は、15cmの高さから250mLの水を基材にスプレーすることによって得た。ぬれパターンを、0〜100のスケールを使用して目視で等級付けした。0は、完全なぬれを意味し、100は全くぬれていないことを意味する。
【0040】
撥油性(OR)
基材の撥油性は、American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC) Standard Test Method No. 118−1983により測定し、この試験は、様々な表面張力のオイルの浸透に対する処理された基材の抵抗性に基づくものであった。Nujol(登録商標)鉱物油(試験オイルのうち最も浸透性が低い)にしか抵抗性のない処理された基材を等級1とし、ヘプタン(試験液体のうち最も浸透性が高い)に抵抗性のある処理された基材を等級8とした。他の中間値は、下記の表に示すとおり、他の純オイル、またはオイルの混合物の使用で決定した。
【0041】
【表1】

【0042】
ブンデスマン試験
処理された基材に対する雨の含浸効果は、ブンデスマン試験方法(DIN 53888)を使用して決定した。この試験では、処理された基材をシミュレートした降雨にかけ、この間、基材の背部を摩擦した。上側曝露面の外観を1、5、および10分後に目視検査し、1(完全な表面ぬれ)〜5(水は表面に残存していない)の等級を付与した。ぬれパターンの観察に加えて、吸水率(絶対%)も測定した。十分に処理された試料は、低い吸水結果を示した。
【0043】
撥水性試験(WR)
基材の撥水(WR)は、一連の水−イソプロピルアルコール試験液体を使用して測定し、処理された基材の「WR」等級によって表した。WR等級は、15秒曝露した後、基材表面を浸透しない、またはぬらさない最も浸透性の高い試験液体に対応した。最も浸透性の低い試験液体である100%水(0%イソプロピルアルコール)によって浸透され、またはそれにしか抵抗性のない基材は、等級0とし、最も浸透性の高い試験液体である100%イソプロピルアルコール(0%水)に抵抗性がある基材は、等級10とした。他の中間等級は、試験液体におけるイソプロピルアルコールのパーセントを10で割ることによって算出した。例えば70%/30%のイソプロピルアルコール/水ブレンドに抵抗性であるが、80%/20%のブレンドには抵抗性のない処理された基材であれば、等級7とした。
【0044】
略語
ナルコ(Nalco)(登録商標)1056: ナルコケミカル(Nalco Chemical Co.)から入手可能なAl23殻を有する35%コロイドシリカ水分散体(粒度20nm)
ナルコ(Nalco)(登録商標)2329: ナルコケミカル(Nalco Chemical Co.)から入手可能なアニオン性コロイドシリカ(粒度75nm)
ジスペラル(Disperal)P2: サゾル(Sasol)から入手可能な1次粒度25nmのAl23粉末
VCL2: 塩化ビニリデン
ODMA: オクタデシルメタクリレート
MGLY: メトキシポリエチレングリコール 350 メタクリレート
FC−1: 次のモノマー組成物C49SO2N(CH3)CH2CH2OCOC(CH3)=CH2/VCL2/ODMA/MGLY(重量比:45/25/30/0.1)を有するフルオロケミカルアクリレート、ならびにフルオロケミカルアクリレート固形分を基準として2%アーカード(Arquad)(登録商標)C−12/5.4%タージトール(Tergitol)(登録商標)TMN−6、および2%タージトール(Tergitol)(登録商標)15S30の乳化剤系を含む固形分30%の水性分散体。
MIBK: メチルイソブチルケトン(4−メチル 2−ペンタノン)
PES/CO(2681.4): ベルギーロンセ(Ronse, Belgium)のUtexbel N.V.から得られたグレー(Grey)ポリエステル/コットン 65/35、スタイルNo.2681.4
PAμ (7819.4): ベルギーのSofinalから得られたポリアミドマイクロファイバー、スタイルNo.7819.4
PES(0030.1): ベルギーのSofinalから得られたポリエステル、スタイルNo.0030.1
PESμ: San Laing Surface Fabric co.から入手可能なポリエステルモスマイクロファイバーピーチ効果(サンド仕上げ)
PA: Sunny Specific Millから入手可能な衣料用ポリアミドタフタ(190または210ヤーン繊維)
アーカード(Arquad)(登録商標)C−12: アクゾノベル(Akzo Nobel)からのココビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロリド界面活性剤
タージトール(Tergitol)(登録商標)TMN−6: ローム・アンド・ハース(Rohm & Haas)からのポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル界面活性剤
タージトール(Tergitol)(登録商標)15S30: ローム・アンド・ハース(Rohm & Haas)からのアルコールエトキシレート界面活性剤
【0045】
ジスペラル(Disperal)P2 Al23分散体の調製
90gの脱イオン水に、10gのジスペラル(Disperal)P2 Al23粉末を添加した。混合物を磁気式撹拌棒で1時間撹拌した。わずかに曇った10%Al23粒子分散体が得られた。
【0046】
イソ−オクチル改質シリカ分散体の調製
284グラムのナルコ(Nalco)(登録商標)2329(水中35.2%シリカ)を、3.75グラムのイソオクチルトリメトキシシランと混合した。500グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを、撹拌しながらこの混合物に徐々に添加した。最後に、激しく撹拌しながら、3.0グラムの5%フッ化水素酸水溶液を徐々に添加した。この混合物を250mLのビンに入れ、シールした。ビンを90℃のオーブンに入れ、21時間反応させた。ビンをオーブンから取り出し、内容物をガラストレーに注ぎ入れた。トレーを50℃のオーブンに4時間入れた。乾燥白色粉末が得られた。
【0047】
10gのイソ−オクチル改質シリカ粒子(粒度:75nm)を、75℃で18.6gのMIBKに溶解した。25.8gの脱イオン水中0.27gのエソクエッド(Ethoquad)(登録商標)C−12、0.30gのタージトール(Tergitol)(登録商標)15S30、および0.60gのタージトール(Tergitol)(登録商標)TMN−6の熱水溶液に、撹拌しながらこの溶液を添加した。このプレミックスを、ブランソン(Branson)450ソニファイアーを使用して2分間超音波にかけた。MIBKをビュッヒ(Buechi)ロータリーエバポレータで蒸留して、安定な乳状分散体を得た。
【0048】
実施例1〜3および比較例C−1
実施例1では、処理浴は、150gのFC−1を水道水で5lに希釈することによって調製した。2ml/l 60%酢酸を、0.5g/l ナルコ(Nalco)(登録商標)1056と添加した。PA(タフタ)は、バターワース(Butterworth)パッダで、連続ループを経由して処理浴に通して実施した。浴安定性、および巻取増径を、1時間運転中(速度:25m/分;圧力:80psi)観察した。ロール上の被着物を1時間運転後、観察した。処理浴の配合前に、コロイドシリカを濃縮したFC−1に添加した点以外は同じ方式で、実施例2を行った。巻取増径は観察されなかった。
【0049】
実施例3では、30g/l FC−1、2ml/l 60%酢酸、および1g/l ナルコ(Nalco)(登録商標)1056を含む処理浴を調製した。PESμを、上記に記述するようにバターワース(Butterworth)パッダで処理した。巻取増径は1時間運転後観察されなかった。
【0050】
比較例C−1では、PAタフタの処理について、処理浴にコロイドシリカを追加しない点以外は同じ実験を繰り返した。著しい巻取増径が1時間運転後に観察された。
【0051】
実施例4〜6、および比較例C−2
実施例4〜6では、ポリエステル基材は、バターワース(Butterworth)パッダで、連続ループを経由して、150gのFC−1、4850gの水道水、10mLの60%酢酸、および表1に指示するように様々なレベルのナルコ(Nalco)(登録商標)1056を含む処理浴に通して実施した。SOF(生地上の固形分)0.3%のフルオロケミカル処理剤の含浸量レベルが得られるように、基材を浴に通して実施した。比較例C−2は、コロイドシリカを含まない処理浴で行った。処理された基材を、160℃で1.5分間乾燥し硬化した。撥油性および撥水性を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
結果から結論付けることができるように、カチオン性フルオロケミカル分散体を含む処理浴にカチオン性コロイドシリカを添加すると、それで処理された基材の撥油性および撥水性は影響されなかった。
【0054】
実施例7〜10、および比較例C−3
実施例7〜10では、表2に示すように他の基材を用いて同じ実験を繰り返した。比較例C−3は、コロイドシリカを含まない処理浴で行った。処理された基材を、160℃で1.5分間乾燥し硬化した。処理された基材の撥油性および撥水性を、表2に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
また、これらの実験は、カチオン性フルオロケミカル処理浴にカチオン性コロイドシリカを添加すると、それで処理された基材の撥油性および撥水性が影響されないことを示唆した。
【0057】
実施例11〜12
実施例11では、処理浴は、150gのFC−1を水道水で5lに希釈することによって調製した。2ml/l 60%酢酸を、7g/l ジスペラル(Disperal)P2 固形分10%Al23分散体(25nm;上記に記述するように調製した)と添加した。PA(タフタ)は、バターワース(Butterworth)パッダで、連続ループを経由して処理浴に通して実施した。浴安定性、および巻取増径を、1時間運転中(速度:25m/分;圧力:80psi)観察した。1時間運転後、数個の小さい被着斑点しか観察されなかった。
【0058】
カチオン性イソ−オクチル改質シリカ分散体(1次粒度75nm;上記に記述するように調製した)を使用した点以外は同じ方式で、実施例12を行った。巻取増径は観察され無かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロケミカル化合物およびカチオン性界面活性剤の水性分散体を含む組成物であって、コロイド状無機粒子をさらに含む組成物。
【請求項2】
前記コロイド状無機粒子がカチオン性コロイド状無機粒子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記コロイド状無機粒子が1〜100nmの粒度を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性コロイド状無機粒子がカチオン性コロイド状シリカ粒子を含む、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記コロイド状無機粒子の量が、前記フルオロケミカル化合物100重量部当たり0.25〜25重量部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中の固形分全量が、0.5〜40重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン性界面活性剤がアンモニウム界面活性剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記フルオロケミカル化合物が、(a)非フッ素化エチレン性不飽和基を有する1つまたは複数のフッ素化モノマーのポリマー該モノマーと場合により1つまたは複数の非フッ素化モノマーとのポリマーを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物のpHが7未満である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を繊維性基材に塗布するステップを含む処理方法。
【請求項11】
前記組成物が、組成物を前記繊維性基材に塗布するように前記繊維性基材が導かれて通り抜ける浴に含まれ、前記繊維性基材が、1つまたは複数のロールを通して導かれる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有効量の前記フルオロケミカル化合物を、撥油性および/または撥水性が前記繊維性基材に付与されるように前記繊維性基材に塗布する、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維性基材がテキスタイルまたは不織布を含む、請求項11または12に記載の方法。

【公表番号】特表2007−514017(P2007−514017A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541175(P2006−541175)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/034898
【国際公開番号】WO2005/056711
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】