説明

基材付き成形品及びその製造方法

【課題】 ホログラム装飾層付きの基材をインサートして成形しても、基材と樹脂とを一体化することのできる基材付き成形品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 金型1の成形部2にシート4をインサートして溶融した成形用の樹脂3を射出充填し、シート4と樹脂3とを一体化して成形品を得る製造方法であり、シート4を、光透過性の表面フィルム41と、表面フィルム41に対向して充填された樹脂3と一体化するバックアップフィルム42と、表面フィルム41とバックアップフィルム42との間に介在されるホログラム装飾層43と、表面フィルム41とバックアップフィルム42、及びバックアップフィルム42と樹脂3を接着する接着層48・48Aとから構成する。バックアップフィルム42がホログラム装飾層43を成形用の樹脂3の熱圧から有効に保護するので、金属箔46の微細な凹凸が損傷したり、金属箔46にマイクロクラックやシワが生じ、ホログラムが機能しなくなるのを抑制防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム装飾層を用いる基材付き成形品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シートアウトサイト成形法やインサート成形法は、金型内にシートをインサートして溶融した成形用の樹脂を射出し、シートと樹脂とを一体化して基材付きの成形品を製造する方法であるが、近年、インサートされるシートにホログラム(レーザ箔ともいう)を予め形成し、複合された多彩な色彩が見る角度や光の状態により可変するようにし、三次元的形状を有する成形品の意匠性、高級感、上質感、あるいは偽造防止性等を向上させたいという要望が少なくない(特許文献1参照)。
【0003】
この種のホログラムは、例えばベースフィルムに薄い金属箔が積層接着されることにより形成され、金属箔に光の回析格子として機能する微細な凹凸が所定のパターンに形成される。
【特許文献1】特開平10‐180801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金型にホログラム付きのシートを単にインサートしてシートと樹脂とを一体化しようとすると、溶融した樹脂の熱圧により金属箔の微細な凹凸が損傷したり、金属箔にマイクロクラックやシワが生じるので、ホログラムが機能しなくなる。したがって、成形品の意匠性、高級感、上質感等の向上を図りたい場合には、インサートされるシートに、ホログラムの代わりに装飾用の色彩や模様を形成したり、あるいは成形法の代わりにフォイルスタンピング法(ホットスタンピングともいう)を採用して成形後に装飾せざるを得ないという大きな問題がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、ホログラム装飾層付きの基材をインサートして成形しても、基材と樹脂とを一体化することのできる基材付き成形品及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、金型に基材をインサートして溶融(加熱して溶かす)した樹脂を射出充填し、これら基材と樹脂との一体化により得られるものであって、
基材は、光透過性の本体層と、この本体層に対向して樹脂と一体化する耐熱性のバックアップ層と、これら本体層とバックアップ層との間に介在され、光回析用の凹凸の形成されたホログラム装飾層とを含んでなることを特徴としている。
【0007】
なお、本体層を10〜1000μmの厚さを有する樹脂フィルムとし、バックアップ層をガラス転移温度が60〜160℃で25〜2000μmの厚さを有する樹脂フィルムとすることができる。
また、ホログラム装飾層を、本体層に重ねて形成される光透過性の着色膜と、バックアップ層に重ねて形成される反射膜と、これら着色膜と反射膜との間に介在されるホログラムとから形成することができる。
【0008】
また、本発明においては上記課題を解決するため、金型に基材をインサートして溶融した樹脂を射出充填し、これら基材と樹脂とを一体化して成形品を得る製造方法であって、
基材は、光透過性の本体層と、この本体層に対向して樹脂と一体化する耐熱性のバックアップ層と、これら本体層とバックアップ層との間に介在され、光回析用の凹凸の形成されたホログラム装飾層とを含んでなることを特徴としている。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における基材には、本体層、バックアップ層、ホログラム装飾層の他、単数複数の接触層や加飾層等を適宜加えることができる。基材の本体層は、その全部が光透過性を有しているのが好ましいが、ホログラム装飾層の視認に支障を来たさないのであれば、一部のみが光透過性を有していても良い。また、バックアップ層は、透明、不透明、半透明、単数、複数を特に問うものではない。
【0010】
ホログラム装飾層は、少なくとも金箔、銀箔、銅箔、アルミ箔、錫、インジウム等からなる光反射性の金属薄膜やホログラム片に光の回析用の凹凸(溝を含む)が形成された層であれば良く、ベース層に単数複数蒸着されたり、単数複数接着されるものでも良いし、そうでなくても良い。
【0011】
ホログラム装飾層は、例えば剥離可能なベースフィルムと、このベースフィルムに剥離可能に形成される透明な保護層と、この保護層に形成される凸凹の金属箔と、この金属箔に選択的に形成される接着剤層とから形成しても良いし、透明な保護層と、この保護層に形成される凸凹の金属箔と、この金属箔に選択的に形成される接着剤層とから形成しても良い。また、透明な保護層と、この保護層に形成される凸凹の金属箔とから形成することも可能である。
【0012】
ホログラム装飾層には、赤、青、緑、黄色、黒色等の着色タイプや透明タイプ等があるが、いずれのタイプでも良い。さらに、基材付き成形品には、少なくとも各種の電気機器や電子機器、携帯電話の筐体、自動車のメータパネル、OA機器の外装、屋内の装飾体、缶等が含まれる。
【0013】
上記構成によれば、成形時にバックアップ層がホログラム装飾層を成形用の樹脂から保護するので、ホログラム装飾層が損傷したり、マイクロクラックやシワが生じ、ホログラム装飾層が機能しなくなるのを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ホログラム装飾層付きの基材をインサートして成形しても、基材と樹脂とを一体化することができ、これを通じて成形品の意匠性、高級感、上質感等を向上させることができるという効果がある。
【0015】
また、本体層を10〜1000μmの厚さを有する樹脂フィルムとすれば、ホログラム装飾層にシワやスジ等が入りにくく、ホログラム装飾層の高輝度を容易に得ることができる。また、市販の樹脂フィルムを本体層として使用することができるので、コストダウンを実現することができる。さらに、バックアップ層をガラス転移温度が60〜160℃で25〜2000μmの厚さを有する樹脂フィルムとすれば、成形時の熱でバックアップ層が変形しにくくなり、ホログラム装飾層の高輝度を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における基材付き成形品は、図1や図2に示すように、金型1の成形部2に可撓性のシート4をインサートして溶融した成形用の樹脂3を射出充填し、これらシート4と樹脂3との一体化により得られる成形品であり、インサートされるシート4を、光透過性の表面フィルム41と、この表面フィルム41の裏面に対向して充填された樹脂3と一体化する耐熱・耐圧のバックアップフィルム42と、これら表面フィルム41とバックアップフィルム42との間に介在されるホログラム装飾層43と、表面フィルム41とバックアップフィルム42、及びバックアップフィルム42と成形用の樹脂3を接着する接着層48・48Aとから構成するようにしている。
【0017】
金型1は、射出成形用の2プレートタイプ、3プレートタイプ、スライドコアタイプ、割金型タイプが適宜選択して使用される。この金型1には、冷却機構、取り出し機構、エアーベント機構等が適宜設けられる。
【0018】
成形用の樹脂3は、熱可塑性能樹脂であれば、特に限定されるものではない。具体的な熱可塑性樹脂としては、例えばABS系、AS系、スチレン系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリカーボネート系(PC)、PC/ABS系のアロイ系樹脂、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリブテン系、ポリメチルペンテン系、エチレン‐プロピレン系共重合系、エチレン‐プロピレン‐ブテン系共重合系、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系の樹脂があげられる。
【0019】
シート4の表面フィルム41は、熱可塑性の樹脂フィルムが使用され、10〜1000μm、好ましくは25〜500μm、より好ましくは75〜200μmの厚さに形成される。熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系、ポリカーボネート系、ポリカーボネート系とポリエステル系樹脂からなるアロイ、ABS系、AS系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、PET系の樹脂が使用される。
【0020】
表面フィルム41の厚さが10〜1000μmの範囲なのは、10μm未満の場合には、表面フィルム41が薄すぎてホログラム装飾層43にスジやムラが生じ、高品質の成形品を得ることができないからである。これに対し、1000μmを超える場合には、小型、軽量、薄型の電子機器に対処できないおそれがあり、コストダウンを図ることができないからである。
【0021】
バックアップフィルム42は、耐熱性を有する熱可塑性の樹脂フィルムが使用される。熱可塑性樹脂は、耐熱性があれば、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系、ポリカーボネート系、ポリカーボネート系とポリエステル系樹脂からなるアロイ、ABS系、AS系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、塩化ビニル系、PET系の樹脂が使用される。
但し、加工性、加飾性、機械的特性、透明性の観点からすると、アクリル系、ポリカーボネート系、ABS系の樹脂の選択が好ましい。
【0022】
バックアップフィルム42のガラス転移温度(Tg)は60〜160℃の範囲とされる。これは、ガラス転移温度(Tg)が60℃未満の場合には、溶融した成形用の樹脂3によりバックアップフィルム42が容易に変形し、ホログラム装飾層43にマイクロクラックやシワが生じて高品質の成形品を得ることができないからである。これに対し、ガラス転移温度(Tg)が160℃を超える場合には、射出成形前のプレフォーム時の加熱温度、加熱時間の短縮を図ることができずに作業効率が低下するからである。また、ホログラム装飾層43の高輝度(Gs=130以上)を得にくくなるからである。
【0023】
バックアップフィルム42の厚さは、25〜2000μm、好ましくは50〜1000μm、より好ましくは75〜500μmの範囲とされる。これは、バックアップフィルム42の厚さが25μm未満の場合には、バックアップフィルム42が薄すぎて射出成形時の熱に耐えることができず、ホログラム装飾層43にスジやムラが生じるおそれがあるという理由に基づく。逆に、バックアップフィルム42の厚さが2000μmを超える場合には、射出成形前のプレフォーム時の熱がバックアップフィルム42に十分に伝わらず、ホログラム装飾層43にマイクロクラックやシワが生じるという理由に基づく。
【0024】
ホログラム装飾層43は、図2に示すように、キャリアテープとして機能するベースフィルム44と、このベースフィルム44の表面に剥離可能に積層形成される透明な保護層45と、この保護層45の表面に形成される光反射性の金属箔46と、この金属箔46の表面に選択的に積層される接着剤層47とを備え、表面フィルム41の裏面に転写薄膜を用いたホットスタンプ法や熱転写印刷法により形成される。
【0025】
ホログラム装飾層43のベースフィルム44は、例えば厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム等からなり、ホログラム装飾層43の形成後に保護層45から剥離除去される。また、保護層45は、ベースフィルム44の表面にグラビア印刷法等により厚さ1〜2μm程度の厚さに形成され、表面に微細な凹凸の模様が所定のパターン、例えば波形、山形、無地、砂地、ブロック、水玉、玉虫模様、各種のキャラクターにパターン形成されており、金属箔46を保護するよう機能する。この保護層45の微細な凹凸は、その表面に微細な凹凸の模様を備えた転写紙の凹凸が転写されることにより形成される。
【0026】
金属箔46は、保護層45の凹凸付きの表面に、アルミ、錫、インジウム等からなる金属が50〜800オングストロームの厚さに蒸着されることにより形成され、この金属の蒸着により、光の回析機能を有する微細な凹凸46aを有する。また、接着剤層47は、各種の接着剤からなり、金属箔46の凸凹の表面にグラビア印刷法等により1〜2μm程度の厚さに形成されるが、必要がなければ省略される。
【0027】
接着層48は、表面フィルム41とバックアップフィルム42の接着に最適な接着剤、粘着剤、樹脂製の両面テープからなり、表面フィルム41とバックアップフィルム42を接着するよう機能する。具体的には、ドライラミネート用粘着剤、感圧性粘着剤、ホットメルト系粘着剤、UV硬化型粘着剤、湿気硬化型反応性ホットメルト系接着剤、シリコーン系接着剤等が接着層48として使用される。
【0028】
接着層48は、例えば表面フィルム41とバックアップフィルム42がアクリル系の熱可塑性樹脂フィルムの場合には、アクリル系やポリエステル系の接着剤や粘着剤が使用される。また、表面フィルム41がアクリル系の熱可塑性樹脂フィルムでバックアップフィルム42がポリカーボネート系の熱可塑性樹脂フィルムの場合には、アクリル系、ウレタン系の単独又は混合、あるいはシリコーン系の接着剤や粘着剤が使用される。また、表面フィルム41がポリカーボネート系の熱可塑性樹脂フィルムでバックアップフィルム42がABS系の熱可塑性樹脂フィルムの場合には、アクリル系、スチレン系、ブタジエン系、ウレタン系の単独又は混合、あるいはシリコーン系の接着剤や粘着剤が使用される。
【0029】
接着層48の厚さは、3〜100μm、好ましくは5〜80μm、より好ましくは10〜50μmの範囲とされる。これは、接着層48の厚さが3μm未満の場合には、接着剤や粘着剤を塗布する際に厚みムラやスジが生じ易く、ホログラム装飾層43に凹凸が生じるおそれがあるからである。逆に、接着層48の厚さが100μmを超える場合には、ホログラム装飾層43の伸び率の相違を接着層48が吸収しにくくなり、ホログラム装飾層43と接着層48にズレが生じてホログラム装飾層43にマイクロクラックやシワの発生するおそれがあるからである。
【0030】
接着層48Aは、例えばバインダーインキからなり、バックアップフィルム42の裏面に5〜200μmの厚さにスクリーン印刷されたり、グラビア印刷され、バックアップフィルム42と樹脂3を接着するよう機能する。この接着層48Aは、バックアップフィルム42と成形用の樹脂3がアクリル系の熱可塑性樹脂の場合には、アクリル系や塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体系のバインダーインキが好適に使用される。また、バックアップフィルム42と成形用の樹脂3がポリカーボネート系の熱可塑性樹脂の場合には、ポリカーボネート系のバインダーインキが好適に使用される。
【0031】
上記において、シート4を製造する場合には、先ず、表面フィルム41の裏面にホログラム装飾層43をホットスタンプするとともに、両面テープを粘着して接着層48を形成し、この接着層48にバックアップフィルム42を積層して接着し、その後、バックアップフィルム42の裏面にバインダーインキをスクリーン印刷して接着層48Aを形成すれば、シート4を製造することができる。
【0032】
こうして製造したシート4を使用して基材付き成形品、例えば携帯電話の筐体を製造する場合には、先ず、金型1の成形部2にシート4をインサートして成形部2にシート4の表面フィルム41を直接接触させ、金型1を型締めして成形用の樹脂3を射出充填し、シート4の接着層48Aに樹脂3を接着して基材付き成形品を一体成形し、シート4と樹脂3とを十分に冷却固化させ、その後、金型1を型開きして基材付き成形品を取り出せば、基材付き成形品を製造することができる。
なお、シート4を一度プレフォームしてからトリミングしたものを用いても良い。
【0033】
上記構成によれば、表面フィルム41と共にバックアップフィルム42がホログラム装飾層43を成形用の樹脂3の熱圧から有効に保護するので、金属箔46の微細な凹凸46aが損傷したり、金属箔46にマイクロクラックやシワが生じ、ホログラムが機能しなくなるのを抑制防止することができる。したがって、成形品の意匠性、高級感、上質感等の向上を図りたい場合に、シート4に、ホログラムの代わりに装飾用の色彩や模様を形成したりする必要が全くない。また、成形法の代わりにフォイルスタンピング法を採用し、成形後にわざわざ装飾する必要もない。
【0034】
次に、図3は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、表面フィルム41の裏面に光透過性の加飾層49を形成し、表面フィルム41とホログラム装飾層43との間に加飾層49を介在させるようにしている。
【0035】
加飾層49は、例えば各種の色彩の施された文字、模様、記号、図柄等からなり、表面フィルム41の裏面に各種のインキを使用してスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等により形成される。また、プリンタのインクジェットや熱転写により形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、複雑で豊かな意匠性を得ることができるのは明らかである。
【0036】
次に、図4は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、ホログラム装飾層43を、表面フィルム41の裏面に積層形成される光透過性の黒色膜50と、バックアップ層に積層形成される銀色層からなる反射膜51と、これら黒色膜50と反射膜51との間に介在される光透過性のホログラム52とから形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、さらなる装飾の多彩化が期待できるのは明らかである。
【0037】
なお、上記実施形態では表面フィルム41とバックアップフィルム42、及びバックアップフィルム42と成形用の樹脂3を接着する接着層48・48Aを用いたが、何らこれに限定されるものではなく、接着層48・48Aを省略することもできる。また、接着層48・48Aは、ラミネートフィルムでも良いし、そうでなくても良い。さらに、金属箔46の複数の凹凸46aは、同じ形状や高さでも良いし、そうでなくても良い。
【実施例】
【0038】
以下、本発明に係る基材付き成形品及びその製造方法の実施例を比較例と共に説明する。
実施例1
シートを製造してデジタルカメラの筐体からなる基材付き成形品をインサート成形し、この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察・評価した。
【0039】
シートの製造に際しては、先ず、表面フィルムとしてA4サイズのアクリル樹脂フィルム〔三菱レイヨン株式会社製:製品名アクリプレンHBS006〕を用意し、このアクリル樹脂フィルムに、ホログラム装飾層としてホログラム箔〔カタニ産業株式会社製〕をホットスタンプ法により形成した。アクリル樹脂フィルムは、75μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が90℃である。
【0040】
ガラス転移温度(Tg)については、レオメトリック・サイエンティフィック株式会社製の動的粘弾性測定装置〔RSAII型〕を使用し、貯蔵率弾性率の変位点をガラス転移温度(Tg)とした。測定条件は、測定温度領域を−40〜250℃とし、昇温速度を5℃/分とした。
【0041】
ホログラム装飾層を形成したら、アクリル樹脂フィルムの裏面に、両面テープ〔株式会社寺岡製作所製:テープ番号7641〕を貼着して接着層を形成し、この接着層に、バックアップフィルムとしてA4サイズのポリカーボネート樹脂フィルム〔三菱エンジニアプラスチック株式会社製:製品名ユーピロン〕を積層し、その後、シリコンゴムの表面温度を60℃にセットしたラミネータ〔フジプラ株式会社製〕に通してホログラム装飾層付きのシートを製造した。
【0042】
アクリル系の両面テープは、50μmの基材を備え、アクリル系粘着剤の厚さが片面25μmに形成されている。また、ポリカーボネート樹脂フィルムは、75μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が150℃である。
【0043】
こうしてシートを製造したら、80℃に加熱したデジタルカメラの筐体用金型の成形部にシートをインサートして成形部にシートの表面フィルムを直接接触させ、金型を型締めして熱可塑性の樹脂を射出充填し、シートの接着層に樹脂を接着して基材付き成形品を一体成形した。射出成形機は日精樹脂工業株式会社製〔製品名HS40‐5A型〕を使用し、成形用の樹脂はポリカーボネート/ABS系ポリマーアロイ〔帝人化成株式会社製:製品名マルチロンT‐2711〕を使用した。また、射出成形は、シリンダーの温度255℃、射出圧力115MPa、スクリュー回転数68rpmの条件で実施した。
【0044】
そして、シートと樹脂とを十分に冷却固化させ、金型を型開きして基材付き成形品を取り出した後、ダイセットを使用してシートの不要部分を除去し、基材付き成形品を製造した。
この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したところ、ホログラム装飾層は均一に伸びており、マイクロクラックやシワの存在を全く認めなかった。
【0045】
実施例2
バックアップフィルムであるポリカーボネート樹脂フィルムの厚さを500μmに変更した以外は、実施例1と同様とした。
本実施例2における基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したところ、ホログラム装飾層は均一に伸びており、マイクロクラックやシワの存在を全く認めなかった。
【0046】
実施例3
バックアップフィルムであるポリカーボネート樹脂フィルムの厚さを2000μmに変更した以外は、実施例1と同様とした。
本実施例3における基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したところ、ホログラム装飾層は均一に伸びており、マイクロクラックやシワの存在を全く認めなかった。
【0047】
実施例4
バックアップフィルムとしてA4サイズのABS樹脂フィルム〔日本エイアンドエル株式会社製:製品名ST‐120〕を積層した。このABS樹脂フィルムは、75μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃である。
本実施例4における基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したところ、ホログラム装飾層は均一に伸び、マイクロクラックやシワを全く確認しなかった。
【0048】
実施例5
バックアップフィルムとしてA4サイズのABS樹脂フィルム〔日本エイアンドエル株式会社製:製品名ST‐120〕を積層した。このABS樹脂フィルムは、250μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃である。
本実施例5における基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したが、ホログラム装飾層は均一に伸び、マイクロクラックやシワを全く確認しなかった。
【0049】
実施例6
バックアップフィルムとしてA4サイズのABS樹脂フィルム〔日本エイアンドエル株式会社製:製品名ST‐120〕を積層した。このABS樹脂フィルムは、2000μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃である。
本実施例6の基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したが、ホログラム装飾層は均一に伸び、マイクロクラックやシワを全く確認しなかった。
【0050】
実施例7
表面フィルムとしてA4サイズの二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム〔帝人デュポンフィルム株式会社製:製品名テオネックスQ65〕を用意し、この二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムに、ホログラム装飾層としてホログラム箔〔クルツ社製〕をホットスタンプ法により形成した。この二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムは、200μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が121℃である。
【0051】
ガラス転移温度(Tg)については、レオメトリック・サイエンティフィック株式会社製の動的粘弾性測定装置〔RSAII型〕を使用し、貯蔵率弾性率の変位点をガラス転移温度(Tg)とした。測定条件は、測定温度領域を−40〜250℃とし、昇温速度を5℃/分とした。
【0052】
ホログラム装飾層を形成したら、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムの裏面に、両面テープ〔株式会社寺岡製作所製:テープ番号7641〕を貼着して接着層を形成し、この接着層に、バックアップフィルムとしてA4サイズのアクリル系樹脂フィルム〔住友化学株式会社製:製品名テクノロイS001〕を積層した後、シリコンゴムの表面温度を60℃にセットしたラミネータ〔フジプラ株式会社製〕に通してホログラム装飾層付きのシートを製造した。
【0053】
アクリル系の両面テープは、50μmの基材を備え、アクリル系粘着剤の厚さが片面25μmに形成されている。また、アクリル系樹脂フィルムは、75μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が110℃である。
【0054】
シートを製造したら、65℃に加熱したデジタルカメラの筐体用金型の成形部にシートをインサートして成形部にシートの表面フィルムを直接接触させ、金型を型締めして樹脂を射出充填し、シートの接着層に樹脂を接着して基材付き成形品を一体成形した。射出成形機は日精樹脂工業株式会社製〔製品名HS40‐5A型〕を使用し、成形用の樹脂はアクリル系樹脂〔三菱レイヨン株式会社製:製品名アクリペットIR D50〕を使用した。また、射出成形は、シリンダーの温度240℃、射出圧力110MPa、スクリュー回転数65rpmの条件で実施した。
【0055】
そして、シートと樹脂とを十分に冷却固化させ、金型を型開きして基材付き成形品を取り出した後、ダイセットを使用してシートの不要部分を除去し、基材付き成形品を製造した。
この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したところ、ホログラム装飾層は均一に伸びており、マイクロクラックやシワの存在を何ら認めなかった。
【0056】
実施例8
実施例7の成形用の樹脂をABS樹脂〔電気化学工業株式会社製:製品名デンカABSGR‐500〕とした。また、射出成形は、シリンダーの温度220℃、射出圧力105MPa、スクリュー回転数65rpmの条件に変更した。その他の部分は、実施例7と同様とした。
この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したところ、ホログラム装飾層は均一に伸びており、マイクロクラックやシワの存在を何ら認めなかった。
【0057】
実施例9
実施例7の成形用の樹脂をPC樹脂〔帝人化成株式会社製:製品名パンライトG‐3410R〕とした。また、射出成形は、シリンダーの温度250℃、射出圧力125MPa、スクリュー回転数80rpm、金型温度80℃の条件で実施した。その他の部分は、実施例7と同様とした。
この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したが、ホログラム装飾層は均一に伸びており、マイクロクラックやシワが存在しない良好な成形品を得ることができた。
【0058】
比較例1
実施例1のバックアップフィルムをポリプロピレン系フィルム〔シーダム株式会社製:製品名600C(透明)〕に変更した。ポリプロピレンフィルムは、20μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が55℃である。その他の部分については、実施例1と同様とした。
この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したところ、ホログラム装飾層にマイクロクラックやシワが存在し、良好な成形品を得ることができなかった。
【0059】
比較例2
実施例1のバックアップフィルムをポリプロピレン系フィルム〔シーダム株式会社製:製品名600C(透明)〕に変更した。ポリプロピレンフィルムは、2500μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が55℃である。その他の部分については、実施例1と同様とした。
この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したところ、ホログラム装飾層にマイクロクラックやシワが存在し、良好な成形品を得ることができなかった。
【0060】
比較例3
実施例1のバックアップフィルムをポリアリエーテルケトンフィルム〔シーダム株式会社製:製品名600C(透明)〕とした。このフィルムは、20μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が162℃である。その他の部分については、実施例1と同様とした。
この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したが、ホログラム装飾層にマイクロクラックやシワが確認され、良好な成形品を得ることができなかった。
【0061】
比較例4
実施例1のバックアップフィルムをポリアリエーテルケトンフィルム〔シーダム株式会社製:製品名600C(透明)〕とした。このフィルムは、2100μmの厚さを有し、ガラス転移温度(Tg)が162℃である。その他の部分については、実施例1と同様とした。
この基材付き成形品のホログラム装飾層を観察したが、ホログラム装飾層にマイクロクラックやシワが確認され、良好な成形品を得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る基材付き成形品及びその製造方法の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る基材付き成形品及びその製造方法の実施形態におけるホログラム装飾層を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る基材付き成形品及びその製造方法の第2の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図4】本発明に係る基材付き成形品及びその製造方法の第3の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 金型
2 成形部
3 樹脂
4 シート(基材)
41 表面フィルム(本体層、樹脂フィルム)
42 バックアップフィルム(バックアップ層、樹脂フィルム)
43 ホログラム装飾層
44 ベースフィルム
45 保護層
46 金属箔
46a 凹凸
47 接着剤層
48 接着層
48A 接着層
49 加飾層
50 黒色膜(着色膜)
51 反射膜
52 ホログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に基材をインサートして溶融した樹脂を射出充填し、これら基材と樹脂との一体化により得られる基材付き成形品であって、
基材は、光透過性の本体層と、この本体層に対向して樹脂と一体化する耐熱性のバックアップ層と、これら本体層とバックアップ層との間に介在され、光回析用の凹凸の形成されたホログラム装飾層とを含んでなることを特徴とする基材付き成形品。
【請求項2】
本体層を10〜1000μmの厚さを有する樹脂フィルムとし、バックアップ層をガラス転移温度が60〜160℃で25〜2000μmの厚さを有する樹脂フィルムとした請求項1記載の基材付き成形品。
【請求項3】
ホログラム装飾層を、本体層に重ねて形成される光透過性の着色膜と、バックアップ層に重ねて形成される反射膜と、これら着色膜と反射膜との間に介在されるホログラムとから形成した請求項1又は2記載の基材付き成形品。
【請求項4】
金型に基材をインサートして溶融した樹脂を射出充填し、これら基材と樹脂とを一体化して成形品を得る基材付き成形品の製造方法であって、
基材は、光透過性の本体層と、この本体層に対向して樹脂と一体化する耐熱性のバックアップ層と、これら本体層とバックアップ層との間に介在され、光回析用の凹凸の形成されたホログラム装飾層とを含んでなることを特徴とする基材付き成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−240213(P2006−240213A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62052(P2005−62052)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】