説明

基材成形装置

【課題】生産設備の改装や生産品種の変更等に伴ってラインレイアウトを変更する場合に短時間且つ容易にレイアウト変更を行うことができ、またこのためラインの稼働停止、レイアウト変更、ラインの再稼働を行うために要する時間を短縮することにより生産効率を高く維持することができる基材成形装置を提供する。
【解決手段】基材1を周回軌道上で搬送する搬送装置2と、この搬送装置2に対して位置決めされた状態で着脱自在に連結される着脱付帯設備3とを具備する。前記着脱付帯設備3として、前記搬送装置2の周回軌道上に基材1を成形して供給する基材成形設備3aと、前記周回軌道上の基材1に型成形を施す型成形設備3bとを備える。ラインレイアウトを変更する場合には、着脱付帯設備3を搬送装置2から取り外して別の構成を有する着脱付帯設備3を連結すれば良く、ラインレイアウトの変更を短時間で容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に無機質成形体等の基材を成形し、これに型成形を施す基材成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントを主成分とし、これにパルプ、ポリプロピレン繊維やビニロン繊維等の繊維、珪砂、珪石粉、フライアッシュ等のシリカ成分、その他各種添加成分と水とを混合した材料を押出成型機により押し出してグリーンシートを形成し、これを養生することで建築用材などとして使用される無機質成形体を製造することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような無機質成形体の成形装置においては、図6に示すように、下型を兼ねる搬送用のトレー10を移載して供給するトレー供給装置40、前記トレー供給装置40からのトレー10の供給を受けて、コンベアベルト等で搬送しながらこのトレー10上に基材1(グリーンシート)を押出成形して供給する押出成形装置41、押出成形装置41において基材1が供給される前の前記トレー10の表面に離型剤を塗布する離型剤塗布装置42、前記押出成形装置41からのトレー10の供給を受けてこのトレー10をコンベアベルト等で搬送しながら基材に対してプレス成形器等で型成形を行う型成形装置43、前記型成形後の基材1を型成形装置43から取り出す取出装置44、前記取出装置44から基材1が供給されてこの基材1を次工程へと搬送する次工程搬送装置45等が設けられており、これらの設備が直列に連結した長大な生産ラインが構成されていた。
【0004】
このような無機質成形体の製造設備では、生産設備の改装や生産品種の変更等に伴ってラインレイアウトを変更する必要が生じる場合がある。このとき、上記のように独立した各種設備を直列に連結して配設する場合には、各設備間の連結を切断し、必要に応じて設備の移動、交換等を行った後、再び各設備間を組み付けて連結する作業を行う必要があり、膨大な手間と時間とを要するという問題があった。またこのように生産ラインの停止、レイアウト変更、ラインの再稼働を行うまでに多大な時間を要することから、ラインの稼働率の低下による生産効率の低下も問題となるものであった。
【特許文献1】特開平10−146812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、グリーンシート等の基材を搬送しながら成形するための基材成形装置に関し、生産設備の改装や生産品種の変更等に伴ってラインレイアウトを変更する場合に短時間且つ容易にレイアウト変更を行うことができ、またこのためラインの稼働停止、レイアウト変更、ラインの再稼働を行うために要する時間を短縮することにより生産効率を高く維持することができる基材成形装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る基材成形装置は、基材1を周回軌道上で搬送する搬送装置2と、この搬送装置2に対して位置決めされた状態で着脱自在に連結される着脱付帯設備3とを具備し、前記着脱付帯設備3として、前記搬送装置2の周回軌道上に基材1を成形して供給する基材成形設備3aと、前記周回軌道上の基材1に型成形を施す型成形設備3bとを備えることを特徴とするものである。このため、この基材成形装置を用い、成形した基材1を周回軌道上に供給して更に型成形設備3bにて型成形を行うことができる。また、基材1の寸法を変更する場合や、型成形により形成する基材1の意匠模様を変更する場合などに、ラインレイアウトを変更する場合には、着脱付帯設備3を搬送装置2から取り外して別の構成を有する着脱付帯設備3を連結すれば良く、ラインレイアウトの変更を短時間で容易に行うことができる。また搬送装置2の配置位置を変更する必要がある場合も、搬送装置2から着脱付帯設備3を取り外してこれら搬送装置2と着脱付帯設備3を移動し、再び搬送装置2に着脱付帯設備3を連結すれば良く、このようなラインレイアウトの変更も短時間で容易に行うことができる。
【0007】
このような基材成形装置においては、上記搬送装置2が、周回軌道上を周回する搬送台4と、前記搬送台4の水平方向の向きが周回軌道上の所定位置において所定の向きとなるように搬送台4の向きを制御する制御機構とを備えるものであることが好ましい。このようにすると、基材1を基材成形設備3aにて成形して周回軌道上の搬送台4に供給した後、周回軌道上で型成形設備3bにて型成形する際に、基材1の向きを一定の向きに制御することができ、基材1の向きを一定の向きとした状態で正確に型成形を行うことができるものである。
【0008】
また、上記搬送装置2と上記着脱付帯設備3とが、それぞれ互いに水平方向位置と上下方向位置が規制された状態で着脱自在に連結する連結部6を備えるものであることも好ましい。このようにすると、搬送装置2と着脱付帯設備3とは容易に且つ正確に位置合わせした状態で着脱することができ、基材成形設備3aによる周回軌道への基材1の供給や型成形設備3bによる基材1の型成形を正確に行うことができる。
【0009】
また、上記搬送装置2が水平回転駆動することにより上面に配置されている基材1を周回軌道上で搬送する回転駆動部5を備え、前記回転駆動部5にこの回転駆動部5の外周側に突出する突出状態と、前記突出状態よりも回転駆動部5側に引き込まれた後退状態との間で進退駆動可能な位置決め部材7を設け、且つ突出状態にある前記位置決め部材7を所定位置で係止する係止部材8を具備するものであることも好ましい。このようにすると、回転駆動部5を停止する際に位置決め部材7を突出状態として係止部材8に係止させることで、回転駆動部5の駆動機構に遊びがある場合にも回転駆動部5を正確な位置に停止させることができ、このように回転駆動部5が正確な位置に停止した状態で周回軌道への基材1の供給や基材1の型成形を行うことできて、基材1の成形を更に正確に行うことができるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産設備の改装や生産品種の変更等に伴ってラインレイアウトを変更する必要がある場合に、搬送装置から着脱付帯設備を取り外し、必要に応じて搬送装置や着脱付帯設備の移動や着脱付帯設備の交換を行った後に再び搬送装置に着脱付帯設備を連結するだけで、短時間且つ容易にレイアウト変更を行うことができるものであり、またこのためラインの稼働停止、レイアウト変更、ラインの再稼働を行うために要する時間を短縮することにより生産効率を高く維持することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
本発明に係る基材成形装置は、図1,2に示すように搬送装置2と着脱付帯設備3とを具備する。
【0013】
搬送装置2は基材1を周回軌道上で搬送するものである。図示の例では基台部22の上方に前記基台部22に対して水平回転駆動する平面視円形状の回転駆動部5を設けることで搬送装置2が構成されている。回転駆動部5の駆動機構は適宜のものが設けられるが、本実施形態では回転駆動部5の側周面の全周に亘り歯溝23を設けると共に図3に示すようにこの歯溝23に噛合する歯車24及びこの歯車24を回転駆動する駆動モータ25が設けられており、前記駆動モータ25を駆動することで回転駆動部5を回転駆動することができる。
【0014】
また、回転駆動部5は所定量だけ回転駆動した後に停止する動作を繰り返すように駆動制御されるものとすることができ、本実施形態では回転駆動部5が1/4回転するごとに停止するように上記駆動モータ25が制御される。
【0015】
上記回転駆動部5の上面には、その周縁に沿って四個の搬送台4が等間隔に円周状に並んで設けられており、回転駆動部5が回転駆動することにより各搬送台4が円周軌道上を周回移動するようになっている。また、図示の搬送台4は円盤状に形成されており、回転駆動部5に対して水平回転可能に形成されている。
【0016】
また回転駆動部5には回転駆動部5に対する搬送台4の水平回転を制御することでこの搬送台4の水平方向の向きを制御する制御機構が設けられている。例えば図4に示すものでは、回転駆動部5の内部の中心位置に回転駆動部5と一体に回転する中心歯車26が設けられ、中心歯車26の周囲にはこの中心歯車26と噛合し、各搬送台4と連結してこの搬送台4と一体となって回転する遊星歯車27が設けられている。このとき中心歯車26と遊星歯車27のギア比は1としている。このようにして制御機構を構成すると、回転駆動部5が回転駆動して同時に中心歯車26が回転した際、遊星歯車27は回転駆動部5及び中心歯車26が一回転するごとに一回転するものの、見かけ上は回転することなく中心歯車26の周囲を周回することになる。このように回転駆動部5を回転駆動した際には搬送台4は見かけ上水平回転することなく周回軌道を周回することとなり、搬送台4上に配置されたトレー10や基材1は水平方向の向きを一定に保ったまま周回軌道を周回することになるものである。
【0017】
このような制御機構の構成は一例であり、上記のようにして搬送台4の水平方向の向きを制御するほか、中心歯車26と遊星歯車27とのギア比を変更したり、中心歯車26と遊星歯車27との間に適宜別の歯車を介在させたりすることで、周回軌道上の搬送台4の向きを種々制御することもできる。また、制御機構の構成は上記のようなものに限るものではなく、適宜の機構にて周回軌道上の搬送台4の水平方向の向きを制御するものを設けることができる。
【0018】
また、図示の例では、回転駆動部5が停止した状態で遊星歯車27の位置を微調整する位置決め具28が設けられている。図示の位置決め具28は、基部28aの両端から突出部28bを同一方向に突設した平面視略コ字状の部材として形成され、突出部28bの突出方向側が、回転駆動部5が停止した状態において所定位置に配置されている遊星歯車27側に向けて対向するように配設される。また、この位置決め具28は基部28aの背部に連結された連結バー29を介して駆動部30に接続されている。この駆動部30は位置決め具28を遊星歯車27側に向けて付勢した状態と、遊星歯車27とは反対側に向けて引き込んだ状態との間で位置決め具28を進退駆動するものであり、適宜のピストン機構等にて形成される。
【0019】
このような位置決め具28は回転駆動部5が回転駆動している間は上記駆動部30により遊星歯車27とは反対側に引き込まれた状態に配置されており、回転駆動部5の回転駆動が停止した状態では駆動部30は位置決め具28を遊星歯車27側に向けて付勢し、この位置決め具28の開放部分を遊星歯車27に当接させるよう制御される。このとき位置決め具28と遊星歯車27とは、両側の各突出部28b或いはこれら各突出部28bと基部28aにおいて当接することとなり、このため遊星歯車27は所定の位置に強制的に配置されて位置決めされる。このとき突出部28b間の距離が大きすぎると遊星歯車27は基部28aのみ当接して位置決めができなくなるため、遊星歯車27が各突出部28bに当接するように突出部28b間の寸法を調整するものである。
【0020】
このように位置決め具28で遊星歯車27の位置決めを行うと、上記のように歯車26,27間の動力の伝達により搬送台4の水平回転を制御する場合に歯車26,27間の「遊び」に起因して回転駆動部5の停止状態において遊星歯車27に微妙な位置ずれが生じていても、前記位置決め具28により遊星歯車27の配置位置、すなわち搬送台4の配置位置を微調整して正確な位置に配置すると共にこのときの搬送台4の水平方向の向きを正確に調整することが可能となる。
【0021】
上記のような搬送装置2に、搬送装置2において搬送される基材1やトレー10に各種処理を行ったり、搬送装置2の周回軌道上への基材1やトレー10等の供給や搬送装置2の周回軌道上からの基材1やトレー10等の取り出しを行ったりするための付帯設備を設けることにより、本発明の基材成形装置が構成される。
【0022】
本実施形態では、上記付帯設備として、搬送装置2に対して着脱自在に設けられた着脱付帯設備3と、搬送設備に対して固定して設けられた固定付帯設備9とが設けられている。このうち、着脱付帯設備3としては、基材1を成形して搬送装置2の周回軌道上に供給する基材成形設備3aと、周回軌道上の基材1に型成形を施す型成形設備3bと、周回軌道から取り出された基材1を次工程へと送る次工程搬送設備3cとが設けられている。また固定付帯設備9としては、トレー10を搬送装置2上の周回軌道に供給するトレー供給設備9aと、周回軌道上のトレー10の表面に離型剤を塗布する離型剤塗布設備9bと、周回軌道上から基材1をトレー10と共に取り出して次工程搬送設備3cへと送る基材取出設備9cとが設けられている。尚、付帯設備としてはこのようなものに限られず、必要に応じて適宜のものが設けられる。
【0023】
上記の各付帯設備は、搬送装置2の周回軌道の搬送方向に沿って、トレー供給設備9a、離型剤塗布設備9b、基材成形設備3a、型成形設備3b、基材取出設備9c、次工程搬送設備3cの順に設けられている。
【0024】
トレー供給設備9aは、図示の例では搬送装置2の基台部22の外周面に固定して設けられたアーム部12と、アーム部12に支持されたクランプ部13にて構成されている。クランプ部13はトレー10を挟持するなどして支持するものであって、アーム部12に設けられた駆動レール14に沿って周回軌道上の所定位置の上方と搬送装置2の外側におけるトレー10を積載したトレー積載部11の上方との間で駆動自在に吊下げ支持されており、且つ上下方向に駆動自在に設けられている。これにより、トレー供給設備9aはトレー積載部11における最上段のトレー10をクランプ部13にて挟持するなどして持ち上げ、これを周回軌道上の搬送台4上に移動させることにより、トレー10を周回軌道上に供給するものである。このトレー供給設備9aの構成は一例であり、適宜の構成のトレー供給設備9aを設けることができる。
【0025】
離型剤塗布設備9bは、図示の例では搬送装置2の基台部22の外周面に固定して設けられたアーム部15によって離型剤を塗布する塗布ノズル16を支持することにより構成されている。塗布ノズル16は周回軌道における上記トレー供給設備9aによるトレー10の供給位置よりも下流側の上方に設けられており、これにより周回軌道上を搬送されるトレー10の表面に基材1が供給される前に塗布ノズル16から噴射した離型剤を塗布するようになっている。この離型剤塗布設備9bの構成は一例であり、適宜の構成の離型剤塗布設備9bを設けることができる。
【0026】
基材成形設備3aは、図示の例では成形材料を周回軌道上に向けて押出成形して、得られた基材1を周回軌道上のトレー10の上面に供給する押出成形器17を備えている。成形材料としては適宜のものが用いられるが、例えばセメントを主成分とし、これにパルプ、ポリプロピレン繊維やビニロン繊維等の繊維、珪砂、珪石粉、フライアッシュ等のシリカ成分、その他各種添加成分と水とを混合したものを用い、このような成形材料を押出成形して基材1として無機質成形体製造のためのグリーンシートを形成することができる。
【0027】
また、特にセメント系成形材料として、油性物質を含有すると共に更に必要に応じて非イオン性界面活性剤、各種アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等の乳化剤(逆乳化剤)を含有させた逆エマルジョン(W/Oエマルジョン)を形成するものを用いることも好ましい。油性物質としては、水と逆エマルジョンを形成しうるものであれば、特に制限はなく、通常疎水性の液状物質が利用され、例えば、トルエン、キシレン、灯油、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。このうち、スチレン、ジビニルベンゼン、メチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、不飽和ポリエステル樹脂等の重合性二重結合を有するもの(ビニル単量体)を使用する場合は、基材1の硬化成形の際に油性物質の重合を促進するために、有機過酸化物や過硫酸塩等の重合開始剤や、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の架橋剤を併用することもできる。
【0028】
この基材成形設備3aは上記のように着脱付帯設備3であり、搬送装置2に対して位置決めされた状態で着脱自在に設けられている。
【0029】
また、型成形設備3bは、ロール成形やプレス成形等により基材1の型成形を行うものなどを設けることができるが、図示の例では上下方向に駆動自在な上型18にてプレス成形を行うものが設けられている。この型成形設備3bの上型18の下面は適宜の凹凸形状を有しており、搬送装置2の周回軌道上において上下駆動自在に形成され、周回軌道上の所定位置に配置された基材1に向けて下降することで基材1の表面に押し当てられ、基材1を押圧すると共にその表面に凹凸形状を転写して型成形するものである。また、このとき基材1が配置されているトレー10は下型として機能し、このトレー10の上面に凹凸形状が形成されている場合にはこのトレー10の凹凸形状が基材1の裏面に転写されるものである。
【0030】
この型成形設備3bは上記のように着脱付帯設備3であり、基材成形設備3aと同様に搬送設備に対して位置決めされた状態で着脱自在に連結されている。
【0031】
また、次工程搬送設備3cは、周回軌道からの基材1の供給を受けて、この基材1を適宜の次工程、例えば基材1の積載工程や養生工程等に搬送するものであり、例えばコンベアベルト等にて基材1を搬送するものを設けることができる。図示の例では次工程搬送設備3cにはトレー10に配置された状態で基材1が供給され、このトレー10ごと基材1を搬送するものが設けられている。
【0032】
この次工程搬送設備3cは上記のように着脱付帯設備3であり、基材成形設備3aと同様に搬送設備に対して位置決めされた状態で着脱自在に連結されている。
【0033】
また、基材取出設備9cは、図示の例では搬送装置2の基台部22の外周面に固定して設けられたアーム部19と、アーム部19に支持されたクランプ部20にて構成されている。クランプ部20はトレー10を挟持するなどして支持するものであって、アーム部19に設けられた駆動レール21に沿って、周回軌道上の型成形設備3bによる成形位置よりも下流側の所定位置の上方と次工程搬送設備3cの上方との間で駆動自在に吊下げ支持されており、且つ上下方向に駆動自在に設けられている。これにより、トレー供給設備9aは周回軌道上の基材1をトレー10ごとクランプ部13にて挟持するなどして持ち上げて取り出し、これを次工程搬送設備3c上に移載することにより、基材1を周回軌道から取り出して次工程搬送設備3cに供給するものである。この基材取出設備9cの構成は一例であり、適宜の構成の基材取出設備9cを設けることができる。
【0034】
また、上記のような各着脱付帯設備3を搬送装置2に位置決めして着脱自在に設けるにあたり、図示の例では各着脱付帯設備3と搬送装置2にはそれぞれ連結部6が設けられ、この連結部6同士を連結することにより各着脱付帯設備3が搬送装置2に位置決めされて連結されている。
【0035】
上記連結部6としては、各着脱付帯設備3と搬送装置2とをそれぞれ互いに水平方向位置と上下方向位置が規制された状態で連結するものが設けられる。
【0036】
図5(a)(b)に示す例では、搬送装置2における各着脱付帯設備3と連結するための各連結部6aは、基台部22の外周面の所定位置から外周方向に向けて突設され、各着脱付帯設備3における連結部6bは前記基台部22における連結部6aに対向する所定位置に突設されている。各連結部6の突出方向の先端は一側部を平面視L字状に切り欠いた形状を有し、これにより他側部は前記一側部よりも連結部6の突出方向に突出する形状を有している。この連結部6の先端における他側部の先端面、一側部の先端面及び他側部の内側面は、平面視で階段状の形状を有する位置合わせ面32として形成されている。この各連結部6は着脱付帯設備3側の連結部6bと搬送装置2側の連結部6aとを突き合わせた際に互いに他側部の先端面同士、一側部の先端面同士及び他側部の内側面同士が同時に全面に亘って当接するように形成されており、このように各連結部6の位置合わせ面32同士を当接させることで連結部6a,6b間、すなわち搬送装置2と各着脱付帯設備3との間の水平方向位置が規制された状態で配置されることとなる。
【0037】
また、各連結部6の突出する他側部には、その突出方向と直交する水平方向に貫通する貫通孔31が上下に複数(図示では二個)配列して設けられている。この貫通孔31は、上記のように各連結部6を突き合わせて位置合わせ面32同士を当接させると共に連結部6同士の上下方向の位置関係を位置合わせした際に、一方の連結部6の貫通孔31と他方の連結部6の貫通孔31とが全て同時に連通するように形成されている。そしてこの連通する貫通孔31に、この貫通孔31の内周面形状と合致する外周形状を有するピンやネジ等の挿通具30を挿通すると、連結部6同士は互いの上下方向及び水平方向の位置関係が固定された状態で連結されることとなり、これにより各着脱付帯設備3と搬送装置2とがそれぞれ互いに水平方向位置と上下方向位置が規制された状態で連結されることとなる。
【0038】
ここで、着脱付帯設備3と搬送装置2との上下方向の位置合わせは適宜の手法にて行うことができるが、例えば各着脱付帯設備3と搬送装置2の下面にそれぞれ伸縮可能な支持脚33を設け、各支持脚33を伸縮させることにより各着脱付帯設備3と搬送装置2の上下方向の位置合わせを行うことができる。
【0039】
上記の連結部6の構成は一例であり、連結部6としては水平方向位置と上下方向位置が規制された状態で連結される適宜のものを設けることができる。
【0040】
上記の周回軌道上におけるトレー供給設備9aによるトレー10の供給位置と、基材成形設備3aによる基材1の供給位置と、型成形設備3bによる型成形位置と、基材取出設備9cによる基材1の取出位置は、周回軌道上の所定の位置に設定されるものであり、このとき回転駆動部2が停止した際に前記各設定位置にそれぞれ周回軌道上の搬送台4が配置されるようにする。本実施形態では各設定位置は周回軌道を1/4周するごとに順次設定され、搬送装置2の回転駆動部5が1/4回転して停止するごとに、回転駆動部5上の四個の搬送台4が前記設定位置にそれぞれ配置されるようになっている。また、離型剤塗布設備9bによる離型剤の塗布位置は、周回軌道上のトレー10の供給位置と基材1の供給位置との間に設定されている。
【0041】
また、本実施形態では、回転駆動部5の側周面には位置決め部材7が設けられていると共に、前記位置決め部材7を係止する係止部材8が設けられている。この位置決め部材7と係止部材8とは、駆動機構により回転駆動部5の回転駆動を所定の状態で停止した際の停止位置の微調整を行うものである。
【0042】
図示の例では位置決め部材7は回転駆動部5の外周面から突出するピン状の部材にて構成されており、適宜の駆動機構により回転駆動部5の外周側に突出する突出状態と、前記突出状態よりも回転駆動部5側に引き込まれた後退状態との間で進退駆動可能に形成される。
【0043】
一方、係止部材8は図示の例では着脱付帯設備3から搬送装置2側に突出するように設けられており、突出状態にある位置決め部材7が係止部材8に当接して係止され、また位置決め部材7が後退状態にある場合には位置決め部材7が係止部材8まで届かず位置決め部材7にて係止されないように形成されている。
【0044】
位置決め部材7と係止部材8とは、回転駆動部5が所定量(本実施形態では1/4回転)だけ回転して各搬送台4が周回軌道上におけるトレー10の供給位置、基材1の供給位置、型成形位置、基材1の取出位置にそれぞれ配置されるごとに突出状態の位置決め部材7が係止部材8に係止されるように設けられる。このためには、例えば本実施形態では回転駆動部5の外周面に1/4周ごとの計四箇所に位置決め部材7を設けると共に一又は複数の着脱付帯設備3に係止部材8を設けたり、位置決め部材7を計三箇所に設けると共に二以上の着脱付帯設備3に係止部材8を設けたりするものである。
【0045】
係止部材8は上記のように着脱付帯設備3に設けるほか、固定付帯設備9に設けるようにしたり、或いはこれらの設備とは別途に係止部材8を設けるようにしても良い。
【0046】
このようにして位置決め部材7と係止部材8を設けると、位置決め部材7を突出状態とした状態で回転駆動部5を既述のような駆動機構により回転駆動させ、所定量(本実施形態では1/4回転)だけ回転した時点で回転駆動部5を停止させた場合に、回転駆動部5は位置決め部材7が係止部材8に係止された状態で停止する。このとき、回転駆動部5は位置決め部材7が係止部材8に係止される所定の位置に確実に停止することとなり、既述の回転駆動部5の駆動機構のように歯車間の動力の伝達により回転駆動部5へ駆動力が伝達される場合の歯車間の「遊び」などに起因する回転駆動部5の停止位置の微妙な位置ずれを防止し、回転駆動部5を所定の位置に正確に位置決めして停止させることができるものである。
【0047】
また、このように回転駆動部5を停止させた後、再び回転駆動部5を回転駆動させる場合には、まず位置決め部材7を後退させて後退状態とした後に回転駆動部5を回転させるようにすれば、位置決め部材7と係止部材8との係止状態を解除して回転駆動部5を回転させることができ、位置決め部材7が係止部材8を通過した後は再び突出状態とすれば良い。
【0048】
このようにして形成される基材成形装置を用いた基材1の成形方法について説明する。
【0049】
まず、回転駆動部5を停止状態とする。このとき各搬送台4が、それぞれ周回軌道上におけるトレー供給設備9aによるトレー10の供給位置、基材成形設備3aによる基材1の供給位置、型成形設備3bによる型成形位置、基材取出設備9cによる基材1の取出位置にそれぞれ配置されるようにする。この状態でトレー供給設備9aを作動させてトレー積載部11からトレー10の供給位置にある搬送台4上にトレー10を供給する。
【0050】
次に、位置決め部材7を後退状態としてから、回転駆動部5を所定量(1/4回転)だけ回転させて搬送台4上のトレー10を周回軌道上で搬送する。このときトレー10は離型剤塗布設備9bによる離型剤の塗布位置を通過し、このとき離型剤塗布設備9bによりトレー10の表面に離型剤が塗布される。また、この回転駆動部5の回転中に位置決め部材7を突出状態としておく。
【0051】
このように回転駆動部5を回転させた後、回転駆動部5を停止すると共に係止部材8に位置決め部材7を係止させて回転駆動部5の停止位置の微調整をする。このときトレー10が載置された搬送台4は基材成形設備3aによる基材1の供給位置に正確に配置され、また既述のような制御機構により水平方向の向きが正確に制御されているため、搬送台4上のトレー10は搬送台4上の所定の位置に正確に配置されると共にその水平方向の向きが所定の方向に正確に制御されている。
【0052】
この状態で基材成形設備3aにより基材1を押出成形してトレー10の上面に供給する。このとき上記のようにトレー10を載置する搬送台4が正確な位置に配置され、且つトレー10の水平方向の向きが所定の方向に正確に制御されているため、基材1はトレー10上面の所定の位置に正確に供給される。
【0053】
次に、回転駆動部5を所定量(1/4回転)だけ回転させると共に、この間に位置決め部材7を上記と同様に作動させて、回転駆動部5を停止すると共にその停止位置を微調整する。このとき基材1を保持したトレー10が載置された搬送台4は型成形設備3bによる型成形位置に配置され、且つ既述のような制御機構により搬送台4上のトレー10及び基材1は搬送台4上の所定の位置に配置されると共にその水平方向の向きが所定の方向に制御されている。
【0054】
この状態で型成形設備3bを作動させて基材1に型成形を施す。このとき上記のようにトレー10及び基材1は型成形位置において所定の位置に正確に配置されると共にその水平方向の向きが所定の方向に正確に制御されているため、基材1に対して正確に位置決めして型成形が施される。
【0055】
次に、回転駆動部5を所定量(1/4回転)だけ回転させると共に、この間に位置決め部材7を上記と同様に作動させて、回転駆動部5を停止すると共にその停止位置を微調整する。このとき基材1を保持したトレー10が載置された搬送台4は基材取出設備9cによる基材1の取出位置に正確に配置され、且つ既述のような制御機構により搬送台4上のトレー10及び基材1は搬送台4上の所定の位置に正確に配置されると共にその水平方向の向きが所定の方向に正確に制御されている。
【0056】
この状態で基材取出設備9cを作動させて搬送台4上の基材1をトレー10と共に周回軌道上から取り出して次工程搬送設備3cに供給する。このとき上記のようにトレー10及び基材1は取出位置において所定の位置に正確に配置されると共にその水平方向の向きが所定の方向に正確に制御されているため、一定の位置に配置された基材1及びトレー10を基材取出設備9cにより周回軌道から取り出すことができて基材1及びトレー10の取り出しが容易となり、またこの基材1及びトレー10を次工程搬送設備3cにおける所定の位置に正確に供給することができるものである。
【0057】
次に、回転駆動部5を所定量(1/4回転)だけ回転させると共に、この間に位置決め部材7を上記と同様に作動させて、回転駆動部5を停止すると共にその停止位置を微調整する。このとき基材1及びトレー10が取り出された後の搬送台4はトレー供給設備9aによるトレー10の供給位置に正確に配置され、且つ既述のような制御機構により搬送台4はその水平方向の向きが所定の方向に正確に制御されている。
【0058】
次いで、既述の動作を繰り返し行うことにより、周回軌道上で基材1を供給・成形して次工程搬送設備3cに供給するものである。
【0059】
上記のような動作は、回転駆動部5により周回軌道を周回する他の搬送台4に対しても同時に行われ、これにより各搬送台4上において順次トレー10の供給、基材1の成形、基材1の次工程搬送部への搬送がなされる。
【0060】
上記の基材成形装置によるラインレイアウトの変更について説明する。
【0061】
ラインレイアウトを変更する必要が生じる場合とは、例えば成形される基材1の寸法の変更や、型成形時に形成される基材1の意匠模様の変更を行う場合等が挙げられる。
【0062】
すなわち、基材1の寸法、特にその厚みや押出成形時の押出寸法を変更する場合には、基材成形設備3aにおけるラインレイアウトを変更しないと、搬送台4上に供給される基材1の位置が前記変更前とは別の位置となってしまい、型成形時等における基材1の配置位置も変更されてしまって正確な位置に型成形を行うことができなくなるなどの支障をきたす場合がある。また型成形時に形成される基材1の凹凸意匠模様の変更を行う場合は型成形設備3bにおける上型18を別のものに変更する必要があり、また基材1に形成される凹凸模様を凹凸差の大きい意匠性の高いものに変更する場合などには、下型として機能するトレー10もそれに対応するように厚みの異なるものに変更する必要があり、このようにトレー10の厚みが変更されると、基材成形設備3aにより基材1を成形して搬送台4上のトレー10を供給する際の基材1の位置が前記変更前とは別の位置となってしまい、上記と同様に正確な位置に型成形を行うことができなくなるなどの支障をきたす場合がある。特に、基材1を形成するための成形材料として上記のようなW/Oエマルジョンを形成するセメント系成形材料を用いる場合には、押出成形等により基材1を形成する際の成形性が通常のセメント系成形材料よりも高くなり、成形後の形状を保ちやすいために押出成形等により種々の厚みや寸法の基材1に成形したり、この基材1に型成形により彫りの深い凹凸意匠模様を付与することが可能となる一方、このような寸法の変化等に対応するためのラインレイアウトの変更の必要性が特に高くなる。
【0063】
また、このようにトレー10や基材1の寸法が変更されると変更前の次工程搬送設備3cでは対応できなくなる場合があり、また成形後の基材1が搬送される次工程を別のものに変更する場合もある。このため次工程搬送設備3cのレイアウトを変更する必要が生じる場合がある。
【0064】
このようにラインレイアウトを変更する必要が生じた場合は、着脱付帯設備3である基材成形設備3a、型成形設備3b、次工程搬送設備3cを適宜搬送装置2から取り外して、構成の異なる別の着脱付帯設備3を連結するだけで対応することができ、ラインレイアウトの変更を短時間で容易に行うことができる。また、このとき新たな着脱付帯設備3として上記のような連結部6を備えるものを搬送装置2に連結する場合には、搬送装置2と新たな着脱付帯設備3とを互いに水平方向位置と上下方向位置が規制された状態で容易に連結することができ、ラインレイアウトの変更後も周回軌道上でトレー10や基材1を所定の正確な位置に配置し、これにより基材1に対する型成形や搬送等の処理を既述のものと同様に正確に行うことができるものである。
【0065】
また、搬送装置2の配置位置を変更する場合にも、搬送装置2から各着脱付帯設備3を取り外し、これらを別の位置に移動させた後、再びこれらを連結することで容易に搬送装置2の配置位置を変更することができるものであり、この場合も短時間で容易にラインレイアウトの変更を行うことができる。また、直線状の長大な搬送ラインを用いる場合とは異なり、本発明では基材1を周回軌道上で搬送する搬送装置2を用いていることから、搬送装置2はコンパクトに形成され、搬送装置2を分割することなく移動することができて分割・再組み立てに要する手間と時間を削減することができ、また搬送装置2の移動に要する労力も削減することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略の平面図である。
【図2】同上の概略の正面図である。
【図3】同上の一部の概略の側面図である。
【図4】同上の搬送装置の内部構造の一例を示す概略の平面図である。
【図5】(a)及び(b)は同上の連結部の構成を示す斜視図である。
【図6】従来技術の一例を示す概略の正面図である。
【符号の説明】
【0067】
1 基材
2 搬送装置
3 着脱付帯設備
3a 基材成形設備
3b 型成形設備
4 搬送台
5 回転駆動部
6 連結部
7 位置決め部材
8 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を周回軌道上で搬送する搬送装置と、この搬送装置に対して位置決めされた状態で着脱自在に連結される着脱付帯設備とを具備し、前記着脱付帯設備として、前記搬送装置の周回軌道上に基材を成形して供給する基材成形設備と、前記周回軌道上の基材に型成形を施す型成形設備とを備えることを特徴とする基材成形装置。
【請求項2】
上記搬送装置が、周回軌道上を周回する搬送台と、前記搬送台の水平方向の向きが周回軌道上の所定位置において所定の向きとなるように搬送台の向きを制御する制御機構とを備えることを特徴とする請求項1に記載の基材成形装置。
【請求項3】
上記搬送装置と上記着脱付帯設備とが、それぞれ互いに水平方向位置と上下方向位置が規制された状態で着脱自在に連結する連結部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の基材成形装置。
【請求項4】
上記搬送装置が水平回転駆動することにより上面に配置されている基材を周回軌道上で搬送する回転駆動部を備え、前記回転駆動部にこの回転駆動部の外周側に突出する突出状態と、前記突出状態よりも回転駆動部側に引き込まれた後退状態との間で進退駆動可能な位置決め部材を設け、且つ突出状態にある前記位置決め部材を所定位置で係止する係止部材を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基材成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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