説明

基材表面の改質方法およびそれから得られた物品

基材表面の改質方法は、材料をインクジェット印刷する工程を含み、材料は基材表面の不揮発性成分を含み、不揮発性成分は式(A)


(式中、Rfは1〜22個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、Zは二価の結合基または共有結合であり、Xは−PO3H、−CO2Hおよびこれらの塩からなる群から選択される)を有する少なくとも1種類の化合物を含み、この化合物が不揮発性成分の10重量パーセント超を構成している。様々な物品をこの方法に従って作成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材表面の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面の液体の濡れ挙動は、一般的に、基材表面の表面エネルギーと液体の表面張力の関数である。液体と基材表面の界面で、液体の分子が互いによりも基材表面の分子により強く引き寄せられる(接着力が凝集力より強い)場合、通常、基材表面の濡れが生じる。あるいは、液体の分子が基材表面の分子よりも互いにより強く引き寄せられる(凝集力が接着力より強い)場合、液体は通常丸まり、基材表面は濡れない。
【0003】
基材表面の液体の表面濡れ特性を定量する1つの方法は、その表面にある液滴の接触角を測定するものである。接触角は、液体側から測定した固体/液体界面と液体/蒸気界面により形成される角度である。液体は、一般的に、接触角が90度未満になると表面を濡らす。一般的に、液体と表面の間の接触角の減少は、濡れの増大と相互に関連している。ゼロの接触角は、通常、基材表面の液体の自然な広がりに一致している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの用途について、正確な高解像度パターンに従って基材表面の液体の濡れを正確に制御できることが重要である。すなわち、かかる制御を行うことのできる更なる方法および材料が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、第1の材料を基材表面の一部にインクジェット印刷する工程を含み、材料が不揮発性成分を含み、不揮発性成分が、式
f−Z−X
(式中、
fは1〜22個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
Zは二価のアルキレン結合基または共有結合であり、
Xは−PO3H、−CO2H、
【化1】

およびこれらの塩からなる群から選択される)
を有する少なくとも1種類の化合物を含み、この化合物が、不揮発性成分の10重量パーセント超を構成している、基材表面の改質方法を提供する。一実施形態において、第1の材料はさらに、揮発性液体成分を含む。
【0006】
他の態様において、本発明は、表面を有する基材を含む物品であって、表面はコーティングを有し、コーティングはドットの配列を含み、配列の少なくとも1つの寸法における解像度は、1インチ当たり少なくとも300ドットであり、コーティングが、式
f−Z−X
(式中、
fは1〜22個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
Zは二価のアルキレン結合基または共有結合であり、
Xは−PO3H、−CO2H、
【化2】

およびこれらの塩からなる群から選択される)
を有する少なくとも1種類の化合物を含む物品を提供する。
【0007】
本発明による方法は、高解像度のパターンを提供することができ、一般的に、短期適用に好適である。
【0008】
さらに、本発明による方法は、金属性基材を用いる場合に好適である。
【0009】
本出願において、
水との接触角とは、特に断りのない限り、22℃で求められる。
「揮発性」という用語は、1気圧で160℃未満の沸点を有することを意味する。
「不揮発性」という用語は、「揮発性」でない化合物のことを指す。
【化3】

は、原子価がアリール炭素原子のいずれかにある一価のベンゾトリアゾール基を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施において、第1の材料は、不揮発性成分と任意で揮発性液体成分とを含む第1の材料の表面を有し、基材表面の一部にインクジェット印刷されている。
【0011】
不揮発性成分は、式
f−Z−X
(式中、
fは1〜22個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
Zは二価の結合基または共有結合であり、
Xは−PO3H、−CO2H、
【化4】

およびこれらの塩からなる群から選択される)
を有する自己組織化化合物を含む。
【0012】
有用なパーフルオロアルキル基Rfとしては、鎖状パーフルオロアルキル基(例えば、パーフルオロメチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロオクチル、パーフルオロデシル、パーフルオロヘキサデシルおよびパーフルオロエイコシル)および分岐パーフルオロアルキル基(例えば、パーフルオロイソプロピル、パーフルオロイソオクチルおよびパーフルオロ(1,1,2−トリメチルペンチル))が挙げられる。
【0013】
有用な二価の結合基としては、例えば、共有結合、1〜22個の炭素原子を有する鎖状または分岐の二価のアルキレン(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、デシレン)または6〜10個の炭素原子を有する二価のアリーレンのような有機基、二価の芳香族炭化水素(例えば、フェニレン)、硫黄、酸素、アルキルイミノ(例えば、−NR−、式中、Rは低級アルキル基)、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルアミノ、カルボニルジオキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、スルホンアミド、カルボンアミド、スルホンアミドアルキレン(例えば、−SO2NR1(CH2x−、式中、xは1〜6、R1は1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル)、カルボンアミドアルキレン、カルボニルオキシ、ウレイレンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。その他の二価の結合基を用いてもよい。ある実施形態においては、Zは、活性水素原子(例えば、水酸基または酸性水素原子)のないもの、またはその他親水性基のないものを選択する。かかる材料から作成したコーティングの水との前進接触角が減じる傾向があるからである。ある実施形態においては、Zは比較的小さくてもよい(例えば、骨格結合RfおよびXにおいて20個未満の原子を有する)。
【0014】
有用なX基としては−PO3H、−CO2H、
【化5】

およびこれらの塩が挙げられる。有用な塩としては、アルキル金属塩(例えば、ナトリウム、リチウムおよびカリウム塩)、アンモニウム塩およびその誘導体(例えば、アンモニウム、アルキルアンモニウムおよび第四級アンモニウム塩)および第四級ホスホニウム塩(例えば、テトラメチルホスホニウムおよびフェニルトリブチルホスホニウム塩)が挙げられる。
【0015】
場合によっては、RfとZで併せて少なくとも7個の炭素原子を含むRfおよびZを選択するのが望ましい。
【0016】
本発明の実施に有用な自己組織化化合物(SAM)は、様々な方法に従って調製してよい。例えば、パーフルオロアルキルヨウ化物を、末端オレフィン置換基を有するカルボン酸、ホスホン酸またはベンゾトリアゾールと結合させてもよく、ヨウ素は、実施例に示した一般的なやり方に従って、亜鉛により後に除去する。本発明の実施に有用なSAMを調製する方法に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第6,376,065号明細書(コーバら(Korba et al.))、本出願の譲受人に譲渡された同時係属中の米国特許出願第10/161,258号明細書(ボードマンら(Boardman et al.、2002年5月31日出願)および米国特許第6,632,872号明細書(ペラライトら(Pellerite et al.))にある。
【0017】
不揮発性成分はさらに、例えば、不揮発性流体材料(例えば、高沸点溶剤)のような不揮発性化合物およびその他添加剤を含んでいてもよい。一般的なフッ素化材料のインクジェット印刷とは対照的に、本発明の実施に用いる自己組織化化合物は、特定の基材に高い親和性を有していてもよい(例えば、X基の性質に応じて)。この場合、インクジェット印刷および後の溶剤による濯ぎは、自己組織化化合物を基材表面に有効に接合するように適用する有効なやり方である。
【0018】
印刷後に有用な濡れ特性を得るためには、自己組織化化合物は、不揮発性成分の少なくとも10、20、30、40重量パーセント、さらには少なくとも50重量パーセント、100重量パーセントまでを構成する。同様に、不揮発性成分は、第1の材料の総重量に基づいて、0.001、0.01、0.1または1重量パーセント〜5、10、20、30、40、50、さらには100重量パーセントまで含まれる。例えば、不揮発性成分は、第1の材料の0.01〜100重量パーセントまで含まれる。
【0019】
一般的に、自己組織化材料は、印刷される基材表面を少なくとも単層被覆するのに十分な量で適用しなければならない。ただし、表面を単層被覆する量未満の量で用いてよい。単層被覆は、例えば、所望により、一回通過または複数回通過で印刷することにより得られる。
【0020】
他の実施形態において、例えば、溶剤や溶剤混合物のような揮発性成分を不揮発性成分と組み合わせて、溶液または分散液を形成してもよい。この実施形態において、組成物は、基材に正確に印刷され、その後、揮発性成分の除去(例えば、減圧での蒸発をはじめとする蒸発)により単離される。有用な溶剤としては、非フッ素化有機および無機溶剤(例えば、アルコールと水)およびフッ素化有機溶剤が挙げられる。フッ素化有機溶剤は高コストであるので、揮発性形態成分が、少なくとも1種類の非フッ素化揮発性有機液体を含むこと、さらには、非フッ素化揮発性有機液体から本質的になることが望ましい(すなわち、一般製造許容値内で自由)。任意の揮発性成分の相対量は、一般的に、所望の濃度に応じて異なる。
【0021】
第1の流体材料は、例えば、染料、増粘剤、香料等といった添加剤を任意で含有していてもよい。かかる添加剤の量は、基材のインクジェット印刷表面の濡れ挙動に深刻な悪影響を与えない一般的にあるレベルに保たれなければならない。
【0022】
一般的に、任意の固体基材を本発明の実施に用いてよい。例えば、有用な基材は、不透明、半透明、透明、テキスチャ加工、パターン化、粗、平滑、剛性、可撓性、処理済、下塗り済みまたはこれらの組み合わせとしてよい。基材は、一般的に、有機および/または無機材料を含む。基材は、例えば、熱可塑性、熱硬化性またはこれらの組み合わせとしてよい。基材としては、フィルム、板、テープ、ロール、鋳型、シート、ブロック、成形物品、布帛およびファイバー複合体(例えば、回路基板)が例示され、ポリイミド、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン)、ポリアミドおよびこれらの組み合わせのような少なくとも1種類の有機ポリマーを含んでいてもよい。基材としては、金属(例えば、クロム、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、金およびこれらの合金)、セラミック、ガラス、陶磁器、石英、ポリシリコンおよびこれらの組み合わせが例示される。
【0023】
インクジェット印刷方法としては、サーマルインクジェット、連続インクジェット、ピエゾインクジェット、音響インクジェットおよびホットメルトインクジェット印刷が例示される。サーマルインクジェットプリンタおよび/または印刷ヘッドは、例えば、ヒューレットパッカードコーポレーション(Hewlett−Packard Corporation )(カリフォルニア州、パロアルト(Palo Alto,California))およびレックスマークインターナショナル(Lexmark International)(ケンタッキー州、レキシントン(Lexington,Kentucky))から市販されている。連続インクジェット印刷ヘッドは、例えば、ドミノプリンティングサイエンス(Domino Printing Sciences)(英国、ケンブリッジ(Cambridge,United Kingdom))のような連続プリンタメーカより市販されている。ピエゾインクジェット印刷ヘッドは、例えば、トライデントインターナショナル(Trident International)(コネチカット州、ブルックフィールド(Brookfield, Connecticut))、エプソン(Epson)(カリフォルニア州、トーランス(Torrance,California))、日立データシステムズ社(Hitachi Data Systems Corporation(カリフォルニア州、サンタクララ(Santa Clara,California))、ザール(Xaar)PLC(英国、ケンブリッジ(Cambridge,United Kingdom))、スペクトラ(Spectra)(ニューハンプシャー州、レバノン(Lebanon,New Hampshire))およびアイダニットテクノロジーリミテッド(Idanit Technologies,Limited)(イスラエル、リション・レ・シオン(Rishon Le Zion,Israel))より入手可能である。ホットメルトインクジェットプリンタは、例えば、ゼロックスコーポレーション(Xerox Corporation)(コネチカット州、スタンフォード(Stamford,Connecticut))から市販されている。
【0024】
インクジェット印刷についての技術および処方ガイドラインは周知であり(例えば、カーク−オスマー化学技術百科事典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版(1996年)、20巻、ジョンウィリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨーク、112−117頁を参照のこと)、当業者であれば行うことができる。例えば、インクジェット印刷可能な組成物は、意図されたジェット温度で約35ミリパスカル−秒以下の粘度を有するように処方されるのが一般的である。
【0025】
第1の材料は、例えば、基材を固定印刷ヘッドに対して動かす、または印刷ヘッドを固定または可動基材に対して動かす等、様々な技術によって、基材表面の任意の部分に適用してよい。
【0026】
第1の材料は、一般的に、所定のパターン(ランダムパターンを用いてもよいが)で基材表面にコーティングとしてインクジェット印刷される。コーティングは、ドットの配列を含み、これは、濡れ性および印刷パスの数に応じて、合体したり、分離されたままとなったり、これらの組み合わせとなる。インクジェットプリンタの解像度に応じて、配列は少なくとも1つの寸法において、1インチ当たり少なくとも300ドット(すなわち、dpi)(120ドット/cm)、600dpi(240ドット/cm)、900dpi(350ドット/cm)、さらには少なくとも1200dpi(470ドット/cm)の解像度を有する。パターンとしては、例えば、多角形や楕円形のような幾何外形を形成する線(例えば、直線、曲線または湾曲線)が例示される。
【0027】
本発明によるある実施形態において、第1の材料を基材表面にインクジェット印刷し、任意の揮発性液体成分を除去した(例えば、蒸発により)後で、基材を化学的に改質することができる。化学的改質としてはエッチング(例えば、酸エッチングおよびプラズマエッチング)が例示される。
【0028】
本発明による方法は、例えば、微細流体素子(例えば、ラボ・オン・チップおよび薬物送達デバイス)、分析試験片(例えば、血糖試験片)をはじめとする様々な物品の製造に有用である。
【0029】
本発明により作成した物品は、それ自身、または第2の材料(一般的には流体)と組み合わせて用いてもよい。かかる場合には、第2の材料は、一般的に、コートされた第1の材料および基材表面のうち少なくとも1つと接触させる。第2の材料としては、水および生物学的流体(例えば、血清、尿、唾液、涙および血液)および溶融有機ポリマー(すなわち、熱可塑性材)が例示される。
【0030】
本発明の目的および利点を以下の限定されない実施例によりさらに説明するが、これらの実施例に挙げられた特定の材料および量、その他条件および詳細は本発明を不当に限定するものではない。
【実施例】
【0031】
特に断りのない限り、実施例で用いた試薬は全て、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)のような一般的な化学会社より入手または入手可能なものであり、公知の方法により合成してもよい。
【0032】
以下の実施例において、インクジェット印刷は次のようにして行った。指示された溶液を、ザール(Xaar)PLC(英国、ケンブリッジ(Cambridge,United Kingdom))より「XJ128−200」という商品名で入手したピエゾインクジェット印刷ヘッドを用いて指示された基材上にインクジェット印刷した。印刷ヘッドを固定位置に装着して、基材をx−y移動可能ステージに装着して、印刷ヘッドとステージの間を一定の距離に保ちながらこれを印刷ヘッドに対して動かした。印刷解像度は、70ピコリットルの公称液滴容積で、1インチ当たり317×295ドット(1cm当たり125×116ドット)であった。
【0033】
以下の実施例において、接触角は脱イオン水およびASTプロタクツ(AST Products)(マサチューセッツ州、ビレリカ(Billerica,Massachusetts))製「VCA 2500XEビデオ接触角測定システム(VIDEO CONTACT ANGLE MEASURING SYSTEM)」という商品名で入手した接触角測定装置を用いて測定した。
【0034】
49CH2CHI(CH28CO2Hの調製
250mLのフラスコに11gのウンデシレン酸、水100ml中6.0gの重炭酸ナトリウム溶液および21gのn−パーフルオロブチルヨウ化物を入れた。この混合物を高剪断攪拌器により室温で攪拌した。この混合物に11gの亜ジチオン酸ナトリウムを徐々に入れた。発泡および熱の発生が即時に観察された。添加完了後、混合物を室温で10分間攪拌し、150mLの水を入れたビーカーに注ぎ入れ、塩酸で酸性化した。水性相から分離されて形成された油性相を、ガスクロマトグラフィーにより分析したところ、パーフルオロブチルヨウ化物の消費に基づいてC49CH2CHI(CH28CO2Hへ90パーセント変換された。全手順を繰り返し、続ける前に生成物を化合した。
【0035】
凝縮器、温度計および攪拌器を備えた三つ口フラスコに、15gの亜鉛粉末、100mLのエタノールおよび触媒量の酢酸を入れた。攪拌した混合物に5gのC49CH2CHI(CH28CO2Hを加えた。20分の導入期間後、反応を開始し、熱を放出した。次に、温度を50〜60℃の範囲に維持しながら、さらに50gのC49CH2CHI(CH28CO2Hを徐々に添加した。添加完了後、反応混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を250mLの水の入ったビーカーに注いだ。水溶液をエーテル150mL×3回抽出した。エーテル抽出物を化合、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過した。エーテルを除去したところ、白色固体が得られ、これをさらに塩化メチレンからの再結晶により精製して33.5gのC49(CH210CH2OHが得られた。
【0036】
11−(パーフルオロブチル)ウンデカンホスホン酸(C49(CH210CH2PO3H)の調製:
凝縮器、温度計および攪拌器を備えた250mLのフラスコに、27gのウンデシレニルアルコール、55gのパーフルオロブチルヨウ化物、80mLのアセトニトリルおよび80mLの水を入れた。混合物を室温で攪拌し、この混合物に27gの亜ジチオン酸ナトリウムおよび15gの重炭酸ナトリウムの固体混合物を徐々に入れた。混合物は即時に発泡し始めて熱を放出した。添加完了後、混合物を室温で一晩攪拌し、300mLの水を入れたビーカーに注ぎ入れ、塩酸で酸性化した。混合物をエーテル150mL×3回抽出した。エーテル抽出物を化合、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。エーテルを除去したところ、74gのC49CH2CHI(CH28CH2OHが粘性液体として得られた。
【0037】
三つ口フラスコに、30gの亜鉛粉末、100mLのエタノールおよび触媒量の酢酸を入れた。この混合物を攪拌し、5gのC49CH2CHI(CH28CH2OHを加えた。20分の導入期間後、熱の放出が観察された。次に、温度を50〜60℃の範囲に維持しながら、69gのC49CH2CHI(CH28CO2Hを徐々に添加した。添加完了後、混合物を室温で一晩攪拌した。反応混合物を250mLの水の入ったビーカーに注いだ。水溶液をエーテル150mL×3回抽出した。エーテル抽出物を化合、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、エーテルを除去したところ、白色固体が得られ、これをさらに塩化メチレンからの再結晶により精製して85パーセントの収率でC49(CH210CO2Hが得られた。
【0038】
9.8gのC49(CH210CH2OHおよび110mLの48パーセントの臭化水素酸の混合物に、12mLの濃縮硫酸を徐々に添加した。反応混合物を100℃で一晩加熱し、反応混合物を500mLの水に注いだ。混合物をヘキサンで抽出し、抽出物を飽和水性重炭酸ナトリウムで洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後、溶液を琥珀色の液体となるまで濃縮し、ヘキサンを用いて3インチ(8cm)のシリカゲルにより溶出した。溶出液の濃縮により、明るい琥珀色の液体が得られ、バルブ・バルブ蒸留により、透明無色の液体として9.5gのC49(CH210CH2Brが得られた。
【0039】
9.5gのC49(CH210CH2Brおよび9gの亜リン酸トリエチルの混合物を150℃で一晩加熱した。さらに5gの亜リン酸トリエチルを添加し、加熱を24時間にわたって続けた。揮発性材料を、減圧下で蒸発により除去し、濃縮物のバルブ・バルブ蒸留により、透明無色の液体として9.0gのC49(CH210CH2PO(OCH2CH3)が得られた。
【0040】
30mLの塩化メチレン中9gのC49(CH210CH2PO32溶液に、7gのブロモトリメチルシランを添加した。混合物を周囲湿度に晒しながら室温で一晩攪拌し、溶液を濃縮したところ淡黄変液体が得られた。これを110mLのメタノールに溶解した。溶液を室温で30分攪拌し、濃縮したところ、白色固体が得られ、この固体をヘプタンから再結晶化して7.1gのC49(CH210CH2PO3H2を得た。
【0041】
1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルベンゾトリアゾール−5−カルボン酸エステルの調製:
1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルベンゾトリアゾール−5−カルボン酸エステルを米国特許第6,376,065号明細書(コーバら(Korba et al.))の実施例3の手順に従って調製した。
【0042】
実施例1
メタノール中1重量パーセントの11−(パーフルオロブチル)ウンデカン酸溶液を、銀箔(厚さ0.125mm、純度99.8%、アルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)より入手したもの)にインクジェット印刷した。基材の印刷領域において22℃で測定した脱イオン水との接触角(静的/前進/後退)は、それぞれ107/113/68度であった。
【0043】
実施例2
エタノール中0.5重量パーセントの11−(パーフルオロブチル)ウンデカンホスホン酸溶液を、銅箔(50mm×50mm×1.0mm、純度99.88%、アルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)より入手したもの)にインクジェット印刷した。基材の印刷領域において22℃で測定した脱イオン水との接触角(静的/前進/後退)は、それぞれ128/134/102度であった。
【0044】
実施例3
エタノール中0.5重量パーセントの11−(パーフルオロブチル)ウンデカンホスホン酸溶液を、ニッケル箔(50mm×50mm×0.125mm、純度99.9%、アルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)より入手したもの)にインクジェット印刷した。基材の印刷領域において22℃で測定した脱イオン水との接触角(静的/前進/後退)は、それぞれ128/134/102度であった。
【0045】
実施例4
酢酸エチル中0.1重量パーセントの1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルベンゾトリアゾール−5−カルボン酸エステルを、銅箔(50mm×50mm×1.0mm、純度99.88%、アルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)より入手したもの)にインクジェット印刷した。基材の印刷領域において22℃で測定した脱イオン水との接触角(静的/前進/後退)は、それぞれ132/137/112度であった。
【0046】
実施例5
酢酸エチル中0.1重量パーセントの1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシルベンゾトリアゾール−5−カルボン酸エステルを、ニッケル箔(50mm×50mm×0.125mm、純度99.9%、アルドリッチケミカルカンパニー(Aldrich Chemical Company)より入手したもの)にインクジェット印刷した。基材の印刷領域において22℃で測定した脱イオン水との接触角(静的/前進/後退)は、それぞれ132/137/112度であった。
【0047】
本発明の様々な予見されない修正および変更は、本発明の範囲および目的から逸脱することなしに当業者には明白であり、本発明はここに規定した説明のための実施形態に不当に限定されないものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料を基材表面の一部にインクジェット印刷する工程を含み、前記材料が不揮発性成分を含み、前記不揮発性成分が、式
f−Z−X
(式中、
fは1〜22個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
Zは二価の結合基または共有結合であり、
Xは−PO3H、−CO2H、
【化1】

およびこれらの塩からなる群から選択される)
を有する少なくとも1種類の化合物を含み、前記化合物が、前記不揮発性成分の10重量パーセント超を構成している、基材表面の改質方法。
【請求項2】
前記第1の材料が、揮発性液体成分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Zが、1〜22個の炭素原子を有する二価のアルキレン、6〜10個の炭素原子を有する二価のアリーレン、酸素、硫黄、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルアミノ、カルボニルジオキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、アルキルイミノ、スルホンアミド、ウレイレンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が、前記不揮発性成分の30重量パーセント超を構成している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、前記不揮発性成分の50重量パーセント超を構成している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、前記不揮発性成分の70重量パーセント超を構成している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、前記不揮発性成分の90重量パーセント超を構成している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基材が金属性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基材が、クロム、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、金およびこれらの合金からなる群より選択される1又は複数種類の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基材が、セラミック、ガラス、陶磁器、ポリシリコン、石英またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記揮発性液体成分の少なくとも一部を除去する工程をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記材料が、所定のパターンに従って前記基材表面に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基材が金属ロールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記揮発性液体成分が、少なくとも1種類の非フッ素化揮発性有機液体を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記揮発性液体成分が、非フッ素化揮発性有機液体から本質的になる、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記基材表面の少なくとも一部を改質する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記改質工程が、エッチングまたは濯ぎのうち少なくとも1つを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記インクジェット印刷が、ピエゾインクジェット印刷を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記基材が有機ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記有機ポリマーが、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、ポリエーテル、ポリオレフィンまたはこれらの組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第2の材料を前記基材表面に適用する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の材料が水を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の材料が生体液を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の材料が溶融有機ポリマーを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
表面を有する基材を含む物品であって、前記表面はコーティングを有し、前記コーティングはドットの配列を含み、前記配列の少なくとも1つの寸法における解像度が、1インチ当たり少なくとも300ドットであり、前記コーティングが、式
f−Z−X
(式中、
fは1〜22個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基であり、
Zは二価の結合基または共有結合であり、
Xは−PO3H、−CO2H、
【化2】

およびこれらの塩からなる群から選択される)
を有する少なくとも1種類の化合物を含む、物品。
【請求項26】
Zが、1〜22個の炭素原子を有する二価のアルキレン、6〜10個の炭素原子を有する二価のアリーレン、酸素、硫黄、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボニルアミノ、カルボニルジオキシ、スルホニル、スルホニルオキシ、アルキルイミノ、スルホンアミド、ウレイレンおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記基材が金属性である、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
前記基材が、クロム、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、金およびこれらの合金からなる群より選択される1又は複数種類の金属を含む、請求項25に記載の物品。
【請求項29】
前記基材が、セラミック、ガラス、陶磁器、ポリシリコン、石英またはこれらの組み合わせである、請求項25に記載の物品。
【請求項30】
前記基材が有機ポリマーを含む、請求項25に記載の物品。
【請求項31】
前記有機ポリマーが、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、アクリル、ポリエーテル、ポリオレフィンまたはこれらの組み合わせを含む、請求項30に記載の物品。

【公表番号】特表2007−500076(P2007−500076A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532417(P2006−532417)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/011628
【国際公開番号】WO2004/106076
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】