基板への塗布膜形成方法
【課題】基板の厚みに関係なく、端部を含む基板の塗布面に厚さが均一な塗布膜を形成することができる基板への塗布膜形成方法を提供すること。
【解決手段】
基板1への塗布膜形成方法は、
基板1の側面とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤2を塗布する工程と、
前記基板1の塗布面に材料3を塗布して塗布膜4を形成する工程と、
を含む。例えば、前記基板1の側面全周とこれに連なる塗布面の端縁から3mm以内の範囲に前記撥水コート剤2を塗布してこれを乾燥させた後、基板1の塗布面に材料3を塗布して塗布膜4を形成する。
【解決手段】
基板1への塗布膜形成方法は、
基板1の側面とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤2を塗布する工程と、
前記基板1の塗布面に材料3を塗布して塗布膜4を形成する工程と、
を含む。例えば、前記基板1の側面全周とこれに連なる塗布面の端縁から3mm以内の範囲に前記撥水コート剤2を塗布してこれを乾燥させた後、基板1の塗布面に材料3を塗布して塗布膜4を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する基板への塗布膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板への塗布膜形成方法としてスプレーコート法やバーコート法が知られているが、図12及び図13にスプレーコート法による塗布膜形成方法を示す。
【0003】
即ち、図12はスプレーコート法による塗布膜形成方法を示す側面図、図13は同平面図であり、図示のようにガラス等の一定の厚みを有した基板1の上方にはスプレーコート装置5のノズル6が配置されている。スプレーコート法によって基板1にマスキング等の塗り分け処理を施すことなく材料3を塗布して基板1上に塗布膜4を形成する場合、ノズル6から材料3を噴射しながら該ノズル6を図13に矢印にて示す方向に走査して基板1上に材料3を塗布するが、塗布された材料3は図13に示すようにノズル6の走査軌跡の周辺部ほど薄くなる。
【0004】
従って、塗布膜4の厚さが均一となるようにするためには、図14の平面図にその軌跡を示すように、ノズル6を一方向に沿って一定速度で基板1を横断するよう走査し、一定の間隔で折り返して逆方向にノズル6を一定速度で基板1を横断するよう走査する動作を繰り返す必要がある。或いは、基板1を設置した不図示のステージをノズル6の走査軌跡に沿って移動させる必要がある。このようにすることによって基板1上に形成され塗布膜4の厚さのバラツキを最小限に抑えることができる。
【0005】
しかしながら、基板1上に塗布された材料3の乾燥が当該材料3に含まれる溶媒が揮発し易い周辺部から起こり、未乾燥で液体の部分が乾燥が始まった周辺部に毛細管現象によって吸い寄せられるため、図15の断面図に示すように、材料3の乾燥によって基板1上に形成される塗布膜4の厚さが基板1の周辺部で厚くなってしまう。このような現象は、特に光学機能材料膜(ハードコート、反射防止膜、位相差膜等)やレジスト等の膜厚の均一性が要求されるものでは大きな問題となる。
【0006】
そこで、本出願人は、図16の断面図に示すように、基板1の側面に撥水コート剤2を塗布して撥水製膜を形成することによって前記問題を解決する方法を先に提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2010−036129号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基板の側面のみに撥水コート剤を塗布することは難しく、特に厚さが0.5mm未満の薄い基板の側面に撥水コート剤を塗布することは至難である。
【0009】
又、基板の側面と塗布面との間に面取り加工が施されていたり、側面の形状が曲面等で塗布面へと連続的に繋がる場合や、基板の材質が例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等のように柔らかいものである場合には、基板の側面のみに撥水コート剤を塗布することは困難である。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、基板の厚みに関係なく、端部を含む基板の塗布面に厚さが均一な塗布膜を形成することができる基板への塗布膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
基板の側面とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤を塗布する工程と、
前記基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記基板の側面全周とこれに連なる塗布面の端縁から3mm以内の範囲に前記撥水コート剤を塗布してこれを乾燥させた後、基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板の側面とこれに連なる塗布面に僅かの一定幅で撥水コート剤を塗布してこれを乾燥させた後、任意のコート法によって基板の塗布面に液状材料を塗布することによって塗布膜が形成されるが、基板の塗布面に材料が塗布された後、材料は基板の側面とこれに連なる塗布面の僅かな幅に塗布された撥水コート剤の撥水効果によって基板の端部での盛り上がりが防がれ、端部を含む基板の塗布面に厚さが均一な塗布膜を形成することができる。そして、本発明に係る塗布膜形成方法では、撥水コート剤は基板の側面だけでなく、該側面に連なる塗布面の僅かな幅の部分にも塗布されるため、基板の厚さに関係なく、例えば厚さが0.5mm未満の薄い基板であっても、これの側面とこれに連なる僅かな幅の部分に撥水コート剤を容易に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る基板への塗布膜形成方法において基板に撥水コート剤を塗布する工程を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2のB部拡大詳細図である。
【図4】本発明に係る基板への塗布膜形成方法において基板上に材料を塗布した直後の塗布膜を形成する工程を示す断面図である。
【図5】(a)は側面が面取り加工された基板の部分断面図、(b)は側面が曲面形状に成形された基板の部分断面図である。
【図6】本発明に係る塗布膜形成方法によって形成された塗布膜の一部をカットした状態を示す断面図である。
【図7】図6のC部拡大詳細図である。
【図8】本発明に係る塗布膜形成方法によって形成された塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【図9】従来の塗布膜形成方法によって形成された塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【図10】従来の塗布膜形成方法によって形成された塗布膜の一部をカットした状態を示す断面図である。
【図11】図10のD部拡大詳細図である。
【図12】スプレーコート法による塗布膜形成方法を示す側面図である。
【図13】スプレーコート法による塗布膜形成方法を示す平面図である。
【図14】スプレーノズルの走査軌跡を示す平面図である。
【図15】従来の塗布膜形成方法によって形成された塗布膜を示す断面図である。
【図16】基板の側面に撥水コート剤を塗布した後に形成された塗布膜を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る基板への塗布膜形成方法は、
基板の側面とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤を塗布する工程と、
前記基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する工程と、
を含むことを特徴としており、以下、該塗布幕形成方法の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係る基板への塗布膜形成方法において基板に撥水コート剤を塗布する工程を示す平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図2のB部拡大詳細図、図4は基板上に材料を塗布した直後の塗布膜を形成する工程を示す断面図である。
【0017】
本発明に係る基板への塗布膜形成方法においては、図1〜図3に示すように、先ず、基板1の側面(端面)の全周とこれに連なる塗布面(上面)に僅かの一定幅(基板の端縁より3mm以内の範囲)で撥水コート剤2を塗布してこれを乾燥させる。その後、図12に示したスプレーコート法によって図4に示す方法で基板1の塗布面に材料3を塗布して図4に示すように塗布膜4を形成する。
【0018】
上述のように基板1の塗布面に材料3が塗布された後、材料3は基板1の側面の全周とこれに連なる塗布面の僅かな幅に塗布された撥水コート剤2の撥水効果によって基板1の端部(端縁から概ね10mm以内の範囲)での膜厚変化が抑制され、端部を含む基板1の塗布面に厚さが均一な塗布膜4を形成することができる。そして、本発明に係る塗布膜形成方法では、撥水コート剤2は基板1の側面だけでなく、該側面に連なる塗布面の僅かな幅の部分にも塗布されるため、基板1の厚さに関係なく、例えば厚さが0.5mm未満の薄い基板1であっても、これの側面とこれに連なる僅かな幅の部分に撥水コート剤2を容易に塗布することができ、該基板1の塗布面に均一な厚さの塗布膜4を形成することができる。
【0019】
ところで、基板1の側面(端面)は塗布面に対して概ね直角に仕上げられていることが望ましいが、図5(a)に示すような面取り加工が施されていたり、図5(b)に示すような曲面形状に成形されてあっても良い。
【0020】
基板1の材質としては、ガラス等の硬質材料からプラスチック材料(例えばPET)等の比較的軟質な材料を使用することができる。
【0021】
又、撥水コート剤2にはテフロン(登録商標)系の材料が使用され、この撥水コート剤2をシリンジの針先で基板1の側面全面とこれに連なる塗布面の一部(幅約0.2mm〜3mmの範囲)に塗布する。尚、量産時はスタンプ台若しくは硬度の高いスポンジ等に撥水コート剤2を染み込ませ、スタンプ台若しくはスポンジ等に基板1の側面とこれに連なる塗布面の一部を付けることによって撥水コート剤2を容易に塗布することができる。
【0022】
撥水コート剤2を塗布した後は温度約120℃のオーブンに約30分間入れて撥水コート剤2を乾燥させる。その後、ガラス基板1を純水+中性洗剤(約3w%)で15分間超音波洗浄し、水洗した後にスプレーコート装置によって光学材料(粘度60〜150cps、2mL)を基板1の塗布面に噴射によって塗布し、基板1の塗布面に所定厚さの光学膜4を形成した。
【0023】
ここで、本発明の前記効果を確認するため、実際に撥水コート剤を塗布した基板にスプレーコート法によって形成された塗布膜の厚さを測定した。基板としては大きさ150mm×150mm、厚さ0.7mmの青板ガラス(ソーダガラス)を使用し、膜厚の測定には触針式表面形状測定器(Dektak6 M:Veeco 社製)を用いた。尚、ここでは厚さ0.7mmの基板を使用したが、これよりも薄い厚さ0.1mm程度の基板を用いても良い。
【0024】
塗布膜の厚さを測定するため、図6及び図7に示すように、基板1上に形成された塗布膜4の一部をカットした。測定結果を図8に示すが、図8において横軸は走査幅(μm)、縦軸は膜厚(Å)である。尚、図6は塗布膜の一部をカットした状態を示す断面図、図7は図6のC部拡大詳細図である。
【0025】
図8に示すA点(カットした点)の膜厚taが約2.9μmであるのに対して、最大の膜厚を示すB点での膜厚tbは約3.4μmであり、この点での膜厚はA点での膜厚taに対して約0.5μmだけ厚くなって盛り上がっている。塗布膜4の盛り上がりの比率(tb/ta)は約117%となる。又、図8においてC点から右側部分は撥水コート剤2を塗布した部分である。
【0026】
他方、基板1の側面と塗布面の一部に撥水処理を行わないで図12及び図14に示したスプレーコート法によって基板1上に形成された塗布膜4’の厚さを同様の方法によって測定した。その結果を図9に示す。尚、膜厚の測定に際しては、撥水処理を施した場合と同様に、図10及び図11に示すように塗布膜4’の一部をカットした。尚、図10は撥水処理が施されていない基板上に形成された塗布膜の一部をカットした状態を示す断面図、図11は図10のD部拡大詳細図である。
【0027】
図9に示す測定結果によれば、図9のA’点(カットした点)の膜厚ta’が約3.6μmであるのに対して、最大の膜厚を示すB点での膜厚tb’は約5.1μmであり、この点での膜厚tb’はA点での膜厚ta’に対して約1.5μmだけ厚くなって盛り上がっている。塗布膜4’の盛り上がりの比率(tb’/ta’)は約142%となる。従って、本発明によれば、塗布膜4の周辺部における盛り上がりの比率を約25%(=142%−117%)だけ低減することができる。
【0028】
尚、以上の実施の形態では、塗布膜形成方法としてスプレーコート法を採用した場合について説明したが、他の塗布膜形成方法を使用することができる。例えば、バーコート法を用いた場合、バーコートでは材料を基板の塗布面上に塗布していくに従って材料の幅が広がっていったり、逆に狭まっていったりすることがあったが、基板の塗布面積とバーコートと基板との隙間から成る体積に合わせた量の材料を基板上に滴下してバーコートすると、材料の塗布幅は撥水コート剤によって制限されてそれ以上広がらなくなり、材料を最後まで均一な所定幅で塗布することができるという効果が得られた。
【0029】
基板に対して撥水処理を行わない場合には、最初に所定量の材料を滴下していてもコーティングと共に塗布幅が広がり、材料は基板の横方向に漏れていき、最後の方では材料が不足してしまうという現象が見られた。従って、基板に対して撥水処理を施さない場合、材料を基板上に最後まで均一に塗布するためには、材料の最初の滴下量を所定の量よりも多くする必要があり、材料の使用効率が悪いという問題があった。又、塗布膜の周縁での断面形状も図10に示すと同様に盛り上がりが見られ、膜厚の均一性に問題があった。
【0030】
これに対して、本発明のように基板の側面全周とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤を塗布した場合、前述の理由によって材料の使用効率が高められるとともに、図9に示すと同様に塗布膜の端面の断面形状の盛り上がりが小さく抑えられ、均一な厚さの塗布膜が形成された。
【0031】
その他、本発明は、スプレーコート法やバーコート法以外の例えばスリットコート法、スリット&スピンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の種々の塗布膜形成方法に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、所定の厚みを有して側面に撥水コート剤を塗布することができる基板上に光学膜(ハードコート、反射防止膜、位相差膜等)やレジスト等の膜厚の均一性が要求される塗布膜を形成する方法に関するものであって、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(テレビ、携帯電話、デジタルカメラ用表示等)のディスプレイ装置全般、レンズ、プリズム等の光学機能部品全般、窓ガラス、自動車用ガラス等のガラス製品全般等に対して利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 基板
2 撥水コート剤
3 材料
4 塗布膜
5 スプレーコート装置
6 スプレーノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する基板への塗布膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板への塗布膜形成方法としてスプレーコート法やバーコート法が知られているが、図12及び図13にスプレーコート法による塗布膜形成方法を示す。
【0003】
即ち、図12はスプレーコート法による塗布膜形成方法を示す側面図、図13は同平面図であり、図示のようにガラス等の一定の厚みを有した基板1の上方にはスプレーコート装置5のノズル6が配置されている。スプレーコート法によって基板1にマスキング等の塗り分け処理を施すことなく材料3を塗布して基板1上に塗布膜4を形成する場合、ノズル6から材料3を噴射しながら該ノズル6を図13に矢印にて示す方向に走査して基板1上に材料3を塗布するが、塗布された材料3は図13に示すようにノズル6の走査軌跡の周辺部ほど薄くなる。
【0004】
従って、塗布膜4の厚さが均一となるようにするためには、図14の平面図にその軌跡を示すように、ノズル6を一方向に沿って一定速度で基板1を横断するよう走査し、一定の間隔で折り返して逆方向にノズル6を一定速度で基板1を横断するよう走査する動作を繰り返す必要がある。或いは、基板1を設置した不図示のステージをノズル6の走査軌跡に沿って移動させる必要がある。このようにすることによって基板1上に形成され塗布膜4の厚さのバラツキを最小限に抑えることができる。
【0005】
しかしながら、基板1上に塗布された材料3の乾燥が当該材料3に含まれる溶媒が揮発し易い周辺部から起こり、未乾燥で液体の部分が乾燥が始まった周辺部に毛細管現象によって吸い寄せられるため、図15の断面図に示すように、材料3の乾燥によって基板1上に形成される塗布膜4の厚さが基板1の周辺部で厚くなってしまう。このような現象は、特に光学機能材料膜(ハードコート、反射防止膜、位相差膜等)やレジスト等の膜厚の均一性が要求されるものでは大きな問題となる。
【0006】
そこで、本出願人は、図16の断面図に示すように、基板1の側面に撥水コート剤2を塗布して撥水製膜を形成することによって前記問題を解決する方法を先に提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2010−036129号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基板の側面のみに撥水コート剤を塗布することは難しく、特に厚さが0.5mm未満の薄い基板の側面に撥水コート剤を塗布することは至難である。
【0009】
又、基板の側面と塗布面との間に面取り加工が施されていたり、側面の形状が曲面等で塗布面へと連続的に繋がる場合や、基板の材質が例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)等のように柔らかいものである場合には、基板の側面のみに撥水コート剤を塗布することは困難である。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とする処は、基板の厚みに関係なく、端部を含む基板の塗布面に厚さが均一な塗布膜を形成することができる基板への塗布膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
基板の側面とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤を塗布する工程と、
前記基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記基板の側面全周とこれに連なる塗布面の端縁から3mm以内の範囲に前記撥水コート剤を塗布してこれを乾燥させた後、基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基板の側面とこれに連なる塗布面に僅かの一定幅で撥水コート剤を塗布してこれを乾燥させた後、任意のコート法によって基板の塗布面に液状材料を塗布することによって塗布膜が形成されるが、基板の塗布面に材料が塗布された後、材料は基板の側面とこれに連なる塗布面の僅かな幅に塗布された撥水コート剤の撥水効果によって基板の端部での盛り上がりが防がれ、端部を含む基板の塗布面に厚さが均一な塗布膜を形成することができる。そして、本発明に係る塗布膜形成方法では、撥水コート剤は基板の側面だけでなく、該側面に連なる塗布面の僅かな幅の部分にも塗布されるため、基板の厚さに関係なく、例えば厚さが0.5mm未満の薄い基板であっても、これの側面とこれに連なる僅かな幅の部分に撥水コート剤を容易に塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る基板への塗布膜形成方法において基板に撥水コート剤を塗布する工程を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2のB部拡大詳細図である。
【図4】本発明に係る基板への塗布膜形成方法において基板上に材料を塗布した直後の塗布膜を形成する工程を示す断面図である。
【図5】(a)は側面が面取り加工された基板の部分断面図、(b)は側面が曲面形状に成形された基板の部分断面図である。
【図6】本発明に係る塗布膜形成方法によって形成された塗布膜の一部をカットした状態を示す断面図である。
【図7】図6のC部拡大詳細図である。
【図8】本発明に係る塗布膜形成方法によって形成された塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【図9】従来の塗布膜形成方法によって形成された塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【図10】従来の塗布膜形成方法によって形成された塗布膜の一部をカットした状態を示す断面図である。
【図11】図10のD部拡大詳細図である。
【図12】スプレーコート法による塗布膜形成方法を示す側面図である。
【図13】スプレーコート法による塗布膜形成方法を示す平面図である。
【図14】スプレーノズルの走査軌跡を示す平面図である。
【図15】従来の塗布膜形成方法によって形成された塗布膜を示す断面図である。
【図16】基板の側面に撥水コート剤を塗布した後に形成された塗布膜を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る基板への塗布膜形成方法は、
基板の側面とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤を塗布する工程と、
前記基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する工程と、
を含むことを特徴としており、以下、該塗布幕形成方法の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明に係る基板への塗布膜形成方法において基板に撥水コート剤を塗布する工程を示す平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図2のB部拡大詳細図、図4は基板上に材料を塗布した直後の塗布膜を形成する工程を示す断面図である。
【0017】
本発明に係る基板への塗布膜形成方法においては、図1〜図3に示すように、先ず、基板1の側面(端面)の全周とこれに連なる塗布面(上面)に僅かの一定幅(基板の端縁より3mm以内の範囲)で撥水コート剤2を塗布してこれを乾燥させる。その後、図12に示したスプレーコート法によって図4に示す方法で基板1の塗布面に材料3を塗布して図4に示すように塗布膜4を形成する。
【0018】
上述のように基板1の塗布面に材料3が塗布された後、材料3は基板1の側面の全周とこれに連なる塗布面の僅かな幅に塗布された撥水コート剤2の撥水効果によって基板1の端部(端縁から概ね10mm以内の範囲)での膜厚変化が抑制され、端部を含む基板1の塗布面に厚さが均一な塗布膜4を形成することができる。そして、本発明に係る塗布膜形成方法では、撥水コート剤2は基板1の側面だけでなく、該側面に連なる塗布面の僅かな幅の部分にも塗布されるため、基板1の厚さに関係なく、例えば厚さが0.5mm未満の薄い基板1であっても、これの側面とこれに連なる僅かな幅の部分に撥水コート剤2を容易に塗布することができ、該基板1の塗布面に均一な厚さの塗布膜4を形成することができる。
【0019】
ところで、基板1の側面(端面)は塗布面に対して概ね直角に仕上げられていることが望ましいが、図5(a)に示すような面取り加工が施されていたり、図5(b)に示すような曲面形状に成形されてあっても良い。
【0020】
基板1の材質としては、ガラス等の硬質材料からプラスチック材料(例えばPET)等の比較的軟質な材料を使用することができる。
【0021】
又、撥水コート剤2にはテフロン(登録商標)系の材料が使用され、この撥水コート剤2をシリンジの針先で基板1の側面全面とこれに連なる塗布面の一部(幅約0.2mm〜3mmの範囲)に塗布する。尚、量産時はスタンプ台若しくは硬度の高いスポンジ等に撥水コート剤2を染み込ませ、スタンプ台若しくはスポンジ等に基板1の側面とこれに連なる塗布面の一部を付けることによって撥水コート剤2を容易に塗布することができる。
【0022】
撥水コート剤2を塗布した後は温度約120℃のオーブンに約30分間入れて撥水コート剤2を乾燥させる。その後、ガラス基板1を純水+中性洗剤(約3w%)で15分間超音波洗浄し、水洗した後にスプレーコート装置によって光学材料(粘度60〜150cps、2mL)を基板1の塗布面に噴射によって塗布し、基板1の塗布面に所定厚さの光学膜4を形成した。
【0023】
ここで、本発明の前記効果を確認するため、実際に撥水コート剤を塗布した基板にスプレーコート法によって形成された塗布膜の厚さを測定した。基板としては大きさ150mm×150mm、厚さ0.7mmの青板ガラス(ソーダガラス)を使用し、膜厚の測定には触針式表面形状測定器(Dektak6 M:Veeco 社製)を用いた。尚、ここでは厚さ0.7mmの基板を使用したが、これよりも薄い厚さ0.1mm程度の基板を用いても良い。
【0024】
塗布膜の厚さを測定するため、図6及び図7に示すように、基板1上に形成された塗布膜4の一部をカットした。測定結果を図8に示すが、図8において横軸は走査幅(μm)、縦軸は膜厚(Å)である。尚、図6は塗布膜の一部をカットした状態を示す断面図、図7は図6のC部拡大詳細図である。
【0025】
図8に示すA点(カットした点)の膜厚taが約2.9μmであるのに対して、最大の膜厚を示すB点での膜厚tbは約3.4μmであり、この点での膜厚はA点での膜厚taに対して約0.5μmだけ厚くなって盛り上がっている。塗布膜4の盛り上がりの比率(tb/ta)は約117%となる。又、図8においてC点から右側部分は撥水コート剤2を塗布した部分である。
【0026】
他方、基板1の側面と塗布面の一部に撥水処理を行わないで図12及び図14に示したスプレーコート法によって基板1上に形成された塗布膜4’の厚さを同様の方法によって測定した。その結果を図9に示す。尚、膜厚の測定に際しては、撥水処理を施した場合と同様に、図10及び図11に示すように塗布膜4’の一部をカットした。尚、図10は撥水処理が施されていない基板上に形成された塗布膜の一部をカットした状態を示す断面図、図11は図10のD部拡大詳細図である。
【0027】
図9に示す測定結果によれば、図9のA’点(カットした点)の膜厚ta’が約3.6μmであるのに対して、最大の膜厚を示すB点での膜厚tb’は約5.1μmであり、この点での膜厚tb’はA点での膜厚ta’に対して約1.5μmだけ厚くなって盛り上がっている。塗布膜4’の盛り上がりの比率(tb’/ta’)は約142%となる。従って、本発明によれば、塗布膜4の周辺部における盛り上がりの比率を約25%(=142%−117%)だけ低減することができる。
【0028】
尚、以上の実施の形態では、塗布膜形成方法としてスプレーコート法を採用した場合について説明したが、他の塗布膜形成方法を使用することができる。例えば、バーコート法を用いた場合、バーコートでは材料を基板の塗布面上に塗布していくに従って材料の幅が広がっていったり、逆に狭まっていったりすることがあったが、基板の塗布面積とバーコートと基板との隙間から成る体積に合わせた量の材料を基板上に滴下してバーコートすると、材料の塗布幅は撥水コート剤によって制限されてそれ以上広がらなくなり、材料を最後まで均一な所定幅で塗布することができるという効果が得られた。
【0029】
基板に対して撥水処理を行わない場合には、最初に所定量の材料を滴下していてもコーティングと共に塗布幅が広がり、材料は基板の横方向に漏れていき、最後の方では材料が不足してしまうという現象が見られた。従って、基板に対して撥水処理を施さない場合、材料を基板上に最後まで均一に塗布するためには、材料の最初の滴下量を所定の量よりも多くする必要があり、材料の使用効率が悪いという問題があった。又、塗布膜の周縁での断面形状も図10に示すと同様に盛り上がりが見られ、膜厚の均一性に問題があった。
【0030】
これに対して、本発明のように基板の側面全周とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤を塗布した場合、前述の理由によって材料の使用効率が高められるとともに、図9に示すと同様に塗布膜の端面の断面形状の盛り上がりが小さく抑えられ、均一な厚さの塗布膜が形成された。
【0031】
その他、本発明は、スプレーコート法やバーコート法以外の例えばスリットコート法、スリット&スピンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の種々の塗布膜形成方法に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、所定の厚みを有して側面に撥水コート剤を塗布することができる基板上に光学膜(ハードコート、反射防止膜、位相差膜等)やレジスト等の膜厚の均一性が要求される塗布膜を形成する方法に関するものであって、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(テレビ、携帯電話、デジタルカメラ用表示等)のディスプレイ装置全般、レンズ、プリズム等の光学機能部品全般、窓ガラス、自動車用ガラス等のガラス製品全般等に対して利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 基板
2 撥水コート剤
3 材料
4 塗布膜
5 スプレーコート装置
6 スプレーノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の側面とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤を塗布する工程と、
前記基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする基板への塗布膜形成方法。
【請求項2】
前記基板の側面全周とこれに連なる塗布面の端縁から3mm以内の範囲に前記撥水コート剤を塗布してこれを乾燥させた後、基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成することを特徴とする請求項1記載の基板への塗布膜形成方法。
【請求項1】
基板の側面とこれに連なる塗布面の一部に撥水コート剤を塗布する工程と、
前記基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする基板への塗布膜形成方法。
【請求項2】
前記基板の側面全周とこれに連なる塗布面の端縁から3mm以内の範囲に前記撥水コート剤を塗布してこれを乾燥させた後、基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成することを特徴とする請求項1記載の基板への塗布膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−81409(P2012−81409A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229293(P2010−229293)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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