説明

基板シート上に製品特徴を印刷する方法

本発明は、基板シート(5)の表面(7)上に配置された製品特徴(3)のアレイを含む製品を製造する方法及びそのような製品を製造するための装置を提供する。かかる方法において、硬化性化合物(13)は、マトリックス(8)の凹部に充填されて予め硬化され、その後、基板シート(5)上に印刷されることによって、印刷製品特徴(3)を形成する。基板シート(5)の反対側に配置された、これらの印刷製品特徴(3)及び更なる製品特徴(2)は、それぞれ、合成画像デバイスの画像オブジェクト及びフォーカス素子を形成する。例として、鋳造硬化工程は、更なる製品特徴(2)を形成するために使用される。製品は、連続したロールツーロール処理において製造されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷製品特徴が基板シートの表面上に配置された製品に関し、特に、そのような印刷製品特徴を製造する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの適応例において、可能であれば3次元の合成統合画像を観察者に提供する光学装置が望ましい。図1a及び図1bは、マイクロレンズ2のアレイ及び透明な基板シート5の反対側に配置された、関連づけられた画像オブジェクト3のアレイを含む、そのような光学装置を概略的に示す。図1aにおいて、マイクロレンズ2のアレイからの距離に位置した観察者が閲覧する場合に合成統合画像10が知覚されるように、各マイクロレンズ2(円)は、関連付けられた画像オブジェクト3(正方形)の幅wを有する小さな部分4を拡大するように配置される。このように実現される、当技術分野において一般に「モアレ拡大」と呼ばれる拡大の効果は、マイクロレンズ及び画像オブジェクトのアレイの繰り返しのサイズ及び周期に依存して数倍〜最大数千倍である。しかしながら、適切な総合表示を得るために、画像オブジェクトに対するマイクロレンズの位置合わせが非常に重要である。
【0003】
国際公開第2009/085004号パンフレットは、この種の光学装置、微細構造製品の基板シートの反対側の画像オブジェクト及びマイクロレンズなどの製品特徴の互いの位置合わせを登録する手段、及び、位置合わせ誤差を回避するのを補助する微細構造製品の連続したロールツーロール処理のための装置を含む微細構造製品を製造する方法を開示する。画像オブジェクトは、基板シートの空胴に対してエンボス加工を行うか又は基板シートの表面上に印刷することで形成される。
【0004】
位置合わせに加えて、画像オブジェクトの分解能及び寸法精度が画質に対して重要である。例えば、エッジ解像力の不足又は画像オブジェクトの他の寸法許容差は、全て知覚された合成画像において拡大される。更に、画像オブジェクトは、白黒画像、グレースケール画像又はカラー画像を取得するために、或いは、単に適切な光学的特性を提供するために着色される。μm〜cmのサイズのエンボスされた空胴は中間表面上に残留インクを残さずに同等に充填されるべきであるため、このような着色は、特に上述のロールツーロール装置などを使用する大量製造において、困難な動作である上述したようなエンボスされた空胴をインクで充填することで行われる。中間表面上の不完全な充填及び残留インクは、知覚された画質に対して好ましくない。
【0005】
上述したように、エンボス加工及び充填加工の代わりとして、例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの従来の印刷方法があらゆる色の画像オブジェクトを基板シートの表面上に直接形成するために使用される。しかしながら、これらの従来の印刷技術は、合成画像装置に必要な高分解能オブジェクト又は同一の要件を有する製品特徴を含む他の製品を簡単に提供することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/085004号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの目的は、基板シートの表面上に高精度の製品特徴を印刷することである。
【0008】
上記の目的は、本発明の第1の側面において基板シートの表面上に配置された製品特徴を含む製品を製造する方法により達成され、本発明の第2の側面において独立請求項で規定される、そのような製品を製造する装置により達成される。
【0009】
本発明によれば、基板シートの表面上に配置された複数の印刷製品特徴を含む製品を製造する方法であって、
−複数の凹部を有する表面を含むマトリックスを提供する基本工程と、
−硬化性化合物で凹部を充填するように、硬化性化合物をマトリックス表面及び凹部に塗布する基本工程と、
−硬化性化合物の粘度を高める基本工程と、
−凹部の外側から余分な硬化性化合物を除去する基本工程と、
−マトリックスを基板シートの表面と接触させて凹部における硬化性化合物を基板シートの表面に移す(transferring)ことにより、硬化性化合物が基板シートの表面上に印刷製品特徴を形成する基本工程とを備える。
【0010】
しかしながら、これらの工程は、基本的に、印刷物、即ち、印刷製品特徴の分解能及び寸法精度が改善された状態で印刷する方法を構成する。これらの利便性の1つの理由は、凹部を充填する場合に比較的低い粘度が使用され、余分な硬化性化合物を除去する場合に比較的高い粘度が使用されることにより、これらの種々の工程に対する硬化性化合物の粘度を最適化することである。比較的高い粘度の別の利点は、マトリックスから基板シートに硬化性化合物をより簡単に移すことができるように、硬化性化合物の接着性が向上することである。
【0011】
粘度は、硬化性化合物を少なくとも部分的に硬化することで高くなる。
【0012】
硬化性化合物を基板シートに接着することは、基板シートをマトリックスロールと転がり接触させる前に、基板シート上に表面層を堆積することで改善される。そして、表面層は、硬化性化合物を移す間において、接着剤層として機能するか、或いは、接着性を向上させるように基板シートの表面を改質する。接着剤層は、オプションとして、予め硬化された硬化性化合物を含むことが好ましい。表面層は、更に、製品の高さの方向に印刷製品特徴の位置を調整できるオフセット層として機能する。
【0013】
各々が基板シートの反対側の印刷製品特徴と関連付けられるべき更なる製品特徴は、印刷製品特徴を印刷する前に更なる工程に提供される。印刷製品特徴及び更なる製品特徴は、それぞれ、合成画像デバイスに対する画像オブジェクト及びフォーカス素子を形成する。また、更なる製品特徴又は横方向に位置合わせを可能にする登録構造として機能する製品特徴などのこれらの製品特徴と関連付けられた製品特徴群は、同一の処理工程又は異なる処理工程を使用して更に提供される。
【0014】
支持構造は、充填特性を向上するために凹部において使用される。合成画像デバイスの場合、これらの支持構造は、これらの支持構造から発生する印刷製品特徴におけるあらゆる繰り返し可能なアーチファクトを再現することを回避するために、不規則に分配されることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、基板シートの表面上に配置された印刷製品特徴を含む製品の連続的な製造のための装置は、
−基板シートと転がり接触しているように配置された複数の凹部を有する周方向表面を含むマトリックスロールと、
−マトリックスロール上に硬化性化合物を塗布するように配置されたアプリケータと、
−アプリケータで硬化性化合物を塗布した後、マトリックスロールの周方向表面から凹部の外側の余分な硬化性化合物を除去するように配置された除去手段と、
−余分な硬化性化合物を除去する前に硬化性化合物の粘度を高める、少なくともアプリケータと除去手段との間に配置された硬化手段とを備え、
凹部を充填する残りの硬化性化合物が転がり接触中に基板シートに移されるように配置される。
【0016】
本発明によれば、高い寸法精度、高い繰り返し精度で、且つ、基板シートの中間表面上に残留物を残さずに、基板シートの表面上に印刷製品特徴を提供することが可能である。
【0017】
本発明の1つの利点は、空胴に対してエンボス加工の代わりに製品特徴を印刷し、その後、インクなどでそれらを充填することによって、余分なエンボス加工工程を回避できることである。また、エンボス加工を行う場合、基板シートの厚さ方向にエンボスされた製品特徴を位置合わせするためには、通常、基板シートの厚みに対するオフセットを考慮する必要がある。従って、製品特徴を含む印刷される基板シートの表面は、ほぼ平坦で平滑であることが好ましい。製品特徴を基板シートに直接印刷することによって、基板シートの反対側の製品特徴の相対位置は、単に、印刷前に基板シートの厚みを決定することで決定される。オプションとして基板シートの厚みは、上述したように、印刷前に基板シート上にオフセット層を堆積することで製造中に調整される。
【0018】
本発明の更なる利点は、基板シートの表面上に印刷製品特徴が配置された製品の連続的な処理のための方法及び装置を提供することである。
【0019】
更に別の利点は、寸法公差が改善され、且つ、製品特徴の間の残留インクなどのアーチファクトがより少ない製品特徴を有する製品を本発明の方法及び装置が提供することによって、モアレ拡大を可能にし、合成画像デバイスを生成できるようにし、レンチキュラレンズを使用できるようにすることである。これらを使用することは、寸法におけるあらゆるアーチファクト又は偏差が拡大され、観察者によって知覚される可能性があることを意味するため、これらは全て正確に印刷された製品特徴を必要とする。
【0020】
従って、本発明の方法及び装置は、従来の印刷技術では実現不可能な3次元の方位分解能、エッジ解像力及び寸法公差に対する印刷精度で印刷製品特徴を基板シート上に印刷できる。
【0021】
本発明の実施形態は、従属請求項において規定される。本発明の他の目的、利点及び新規の特徴は、添付の図面及び特許請求の範囲を共に考慮して、本発明の以下の詳細な説明から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
次に、添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【図1a】図1aは、従来技術におけるモアレ型の画像表示の背後の原理を概略的に示す図である。
【図1b】図1bは、従来技術におけるモアレ型の画像表示の背後の原理を概略的に示す図である。
【図2】図2は、本発明における印刷画像オブジェクトのアレイを含む製品を概略的に示す図である。
【図3】図3は、本発明における製品を製造するためのロールツーロール装置の1つの実施形態を概略的に示す図である。
【図4】図4は、本発明における製品を製造するためのロールツーロール装置の別の実施形態を概略的に示す図である。
【図5】図5は、本発明における大きな凹部の支持構造を概略的に示す図である。
【図6】図6は、本発明におけるサイズが変動する印刷製品特徴を概略的に示す上面図である。
【図7a】図7aは、本発明における印刷基板シートを製造するための装置の別の例を示す図である。
【図7b】図7bは、本発明における印刷基板シートを製造するための装置の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明における製品は、製品又は中間製品において、直交方向の拡張に対して限られた厚みを含み、且つ、基板シートの一方又は双方の主面上、或いは、主面に配置された製品特徴を有する基板シートを構成する本体を含む。例えば、製品の1つの実施形態は、基板シートの第1の側に主製品特徴を含み、基板シートの反対側に副製品特徴を含む。主製品特徴は、副製品特徴と関連付けられる。製品の他の実施形態は、3つ以上の製品特徴の集合を含む。最も基本的な形態において、製品は、一方の表面にだけ製品特徴が印刷された基板シートを含む。
【0024】
例えば、製品特徴は、上述したような合成画像デバイス、又は、光学デバイス、電子デバイス、マイクロ流体デバイス、表示デバイス、電気化学デバイス、エレクトロクロミックデバイス、生物検定デバイスなどの他のデバイスにおける構造要素及び/又は機能要素として、或いは、単に印刷物に印刷されたインクとして、種々の目的のために使用される。これらの適応例の大部分において、製品の機能性が製品特徴の寸法及び/又は分配に結合されるため、製品特徴に高分解能及び高寸法公差を提供しなければならないことが多い。更に、製品特徴は、所望の効果を得るために、小さくなければならないことが多い。
【0025】
例示として、図2は、本発明の1つの実施形態において、マイクロレンズ2のアレイ及びそれぞれ透明な基板シート5の反対側に配置された、関連付けられた画像オブジェクト3のアレイを含む製品を示す。本発明は、主に、そのような装置に関して説明されるが、これに限定されない。これは、図1の従来技術の微細構造製品に類似するが、本発明において、画像オブジェクト3は、充填のために基板シート5又は表面層6を予め構成せずに、基板シート5の表面又は基板シート5に配置された1つ以上の表面層6(第1の点線で示された、1つのそのような層が示される)上に直接印刷される。マイクロレンズは、基板シートにおけるエンボス加工又は基板シート5上の分離層(第2の点線で示される)における鋳造硬化処理によって形成されている。本発明の実施形態は、マイクロレンズを用いて説明されるが、関連付けられた画像オブジェクトの部分において、フォーカス作用を有し、及び/又は、関連付けられた画像オブジェクトの視野を制限できる他の要素が総合的な表示を得るために使用されることが理解されるべきである。そのようなフォーカス素子の例は、マイクロレンズ、開口部(絞り)及びレンチキュラレンズである。
【0026】
本発明によれば、基板シート5の表面7上に配置された複数の印刷製品特徴3を含む製品を製造する方法であって、
−複数の凹部12を有するマトリックス表面9を含むマトリックス8を提供する基本工程と、
−硬化性化合物13で凹部12を充填するように、硬化性化合物13をマトリックス表面9及び凹部12に塗布する基本工程と、
−凹部(12)の外側から余分な硬化性化合物(13)を除去する基本工程と、
−基板シート5からマトリックスを解放する場合に、基板シート5の表面7上に印刷製品特徴3を形成するために硬化性化合物13が基板シート5に取り付けられるように、マトリックス8を基板シート5の表面7と接触させることで凹部12における硬化性化合物13を基板シート5の表面7に移す基本工程とを備える。
【0027】
これらの工程は、基板シート5の表面7上に複数の製品特徴3を印刷する方法を形成し、かかる方法は、従来の凹版印刷と何らかの類似性を有する。但し、凹版印刷は、高分解能で高精度な製品特徴を簡単に提供できないため、本発明における方法は、凹版印刷とは大きく異なる。
【0028】
基板シートの中間表面上、即ち、印刷製品特徴の間及びそれらの外側に硬化性化合物を印刷することを回避するために、凹部12の外側のマトリックス8のマトリックス表面9の領域におけるあらゆる余分な硬化性化合物13は、基板シート5に移された硬化性化合物13が実質的に凹部12から発生するように、除去される。例えば、スクイージなどは、あらゆる余分な硬化性化合物13をマトリックス表面から拭き取るために使用される。更に、余分な硬化性化合物13は、研磨によって除去される。余分な硬化性化合物を除去する異なる手段が更に組み合わされる。
【0029】
硬化性化合物13は、製品の処理のある段階において、少なくとも部分的に硬化されることが好ましい。硬化性化合物13は広範な材料であるため、硬化は種々の機構によって行われる。硬化という用語は、一般的に、紫外(UV)線による照射などの照射及び/又は加熱によって起こる高分子材料の重合と関連付けられる。赤外線照射、電子ビーム照射及び化学添加剤の添加は、硬化のための手段の他の例である。硬化性化合物13は、非硬化性成分も含む。この適応例のために、硬化という用語は、乾燥も含む。多くの従来の印刷技術のように、硬化性化合物13に対して種々のインクが使用される。染料を含むインクが使用されることが好ましい。通常、顔料粒子のサイズは大きすぎ、印刷製品特徴の分解能及び色濃度に悪影響を及ぼすため、小さな製品特徴を印刷する場合に、顔料が問題を引き起こす。
【0030】
硬化性化合物13は、小さな凹部12を充填できるように、最初は低粘度を有することが理想である。この低粘度は、一般的に、100mPas〜600mPasである。しかしながら、スクイージ手段又は研磨手段などを使用して余分な硬化性化合物を除去する場合、硬化性化合物13は、低粘度の硬化性化合物上で作用する毛管力のために、凹部12、特に、深度と比較して比較的大きな開表面を有する凹部から除去される。従って、余分な硬化性化合物13を除去する際には、より高い粘度の硬化性化合物が望ましい。粘度が凹部のサイズに合わせて変えられるため、硬化性化合物の粘度に関するこれらの矛盾する要件は、等しい大きさの凹部を有する場合に克服される。しかしながら、広範囲にわたって変動するサイズを有する凹部を使用する場合、特に、マトリックス8が大きな開表面、即ち、大きな幅又は直径及び比較的浅い深度を有する凹部を含む場合、問題が増加する。従って、本発明の方法は、凹部12を充填した後で硬化性化合物13の粘度を高める工程を備えることが好ましい。換言すれば、粘度は、余分な硬化性化合物を除去する間より充填する間の方が低い。硬化性化合物が毛管力による大きな影響を受けないペーストのように機能するように、余分な硬化性化合物を除去する前に硬化性化合物の粘度を高めることが好ましい。
【0031】
マトリックス8に塗布された硬化性化合物13の粘度は、硬化性化合物13を少なくとも部分的に硬化することで高くなる。更に、粘度は、硬化性化合物13の温度を低下させるなどの他の手段によって制御される。
【0032】
硬化性化合物13の硬化の程度は、凹部12における硬化性化合物13を基板シート5に移す機能、即ち、凹部12から硬化性化合物13を取り出す機能にも影響を及ぼす。硬化の程度は、除去する前に制御されるが、余分な硬化性化合物を除去した後で凹部12に依然として存在する硬化性化合物13は、基板シート5と接触する前に、及び/又は、接触している間に更に硬化される。いくつかの例において、硬化性化合物13を部分的に未硬化のままにすることによって、基板シート5への接着が改善される。
【0033】
本発明の1つの実施形態において、凹部における硬化性化合物13は、基板シート5と接触させられる前に実質的に完全に硬化される。
【0034】
上述したように、中間表面上の余分な硬化性化合物を除去する工程は、硬化性化合物13の特性による影響を受ける。除去工程は、繊維布などの孔又は空胴を含む研磨手段を使用して、除去された余分な硬化性化合物を集めながら行われる。硬化性化合物の粘度が小さな凹部を充填するほど十分に低い場合、研磨中に毛管力が凹部から硬化性化合物13の一部を取り除くこと(これは「ディンプリング」として既知である)が可能である。これは望ましくない。毛管力による取り除きが排除されるため、本発明によれば、研磨する前に粘度を高めることによって正確に除去できるようになる。また、硬化性化合物は、強化され、予備硬化後に剛性が高くなる。これにより、硬化性化合物は、研磨手段によって加えられた力により適切に耐えられるため、ディンプリングは最小限になる。スクイージを使用して余分な硬化性化合物を除去することは、硬化性化合物を凹部から中間表面上にドラッグする毛管力による影響を更に受け、適切な高粘度を得るための動作を取ることによって回避される。
【0035】
従来技術の製品において、基板シートにエンボスされた空胴又は鋳造硬化された空胴をインクで充填する際に実行された同様の充填加工と比較して、マトリックスは、より高い剛性、即ち、余分な硬化性化合物を除去する新規な機会を提供する。従来技術で使用された基板シートは、単に弱すぎるため、研磨中に加えられた力に耐えられない。
【0036】
本発明の方法の1つの実施形態において、1つ以上の更なる製品特徴2は、基板シート5にエンボス加工又は基板シート5の表面に被膜6を形成することによって、基板シート5に、或いは、基板シート5上に提供される。更なる製品特徴2の各々が基板シート5の反対側の印刷製品特徴3と関連付けられることによって、合成画像デバイスに対するフォーカス素子2と画像オブジェクト3との対を形成する。製品特徴2及び3は、あらゆる順序で提供可能である。更なる製品特徴2に続いて印刷製品特徴3が提供されるか、印刷製品特徴3に続いて更なる製品特徴2が提供されるか、或いは、製品特徴2及び3の両方が同時に提供される。
【0037】
また、更なる製品特徴は、同一の処理又は異なる処理によって、個別に、或いは、製品特徴2及び3と位置合わせされて更に提供される。基板シート5は、基板シート5に、或いは、基板シート5上に予め形成された製品特徴を更に提供される。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、硬化性化合物13は、オプションとして、余分な硬化性化合物13を中間除去してマトリックス8の表面9に繰り返し塗布される。これにより、先行する塗布工程及び除去工程から凹部12の不十分な充填が改善される。例えば、比較的小さな凹部は、一般的に、1回で完全に充填されるのに対し、凹部12は比較的大きく、硬化性化合物を塗布する工程及び除去する工程を1回繰り返すだけでは完全に充填されない。このような繰り返しの1つの目的は、製品特徴及び中間表面によって表示された画像において知覚されるコントラストを改善することである。
【0039】
本発明の印刷処理は、印刷前に、基板シート5を前処理することで改善される。硬化性化合物13を移す間、硬化性化合物13と基板シート5との接着は、凹部12において硬化性化合物13を保持する力を克服しなければならない。移す工程中における硬化性化合物13と基板シート5との接着は、硬化性化合物13を受け取るはずの基板シート表面7上での表面層6の表面の改質及び/又は堆積を含む前処理によって改善される。表面層6は、移す工程において、接着剤層として機能する。前処理は、一般的に、硬化性化合物の固有の接着特性又は少なくとも湿潤特性を低下させるため、移す前に硬化性化合物を予め硬化する場合により重要である。これらの接着特性又は湿潤特性は、印刷前に、基板シートを適切に前処理することで改善される。
【0040】
基板シートの厚みが基板シート5の反対側の製品特徴の厚さ方向の位置合わせを少なくとも部分的に決定するため、製品特性の重要な側面は基板シートの厚みである。前処理中、基板シートの厚みは、基板シート5上にオフセット層を形成するために基板シート5の片側又は両側に硬化性材料を含む表面層6を堆積することによって変化する。このオフセット層の厚みは、制御され、必要に応じて製造中に変動する。
【0041】
表面層6は、硬化性材料を含み、同様の処理において、多くの場合、ラッカーと呼ばれるのが好ましい。しかしながら、硬化性層6は、非硬化性成分を更に含んでもよい。図2は、第1の点線によって、硬化された表面層6と基板シート5との間のインタフェースを概略的に示す。硬化された表面層6は、基板シート5と実質的に同一の材料であってもいし、異なる材料であってもよい。第2の点線は、図2において、マイクロレンズとして概略的に示された製品特徴2などの更なる製品特徴を形成するためにエンボス処理又は鋳造硬化処理によって規定された層を示す。
【0042】
表面を改質する工程は、基板シート5の表面特性を改質して硬化性化合物13を基板シート5に接着することを改善するために、種々のプライマ又は溶剤の堆積エッチングなどを含む。表面改質は、単独で又は表面層6の堆積に加えて適用される。例えば、表面改質は、表面層6の接着特性又は表面層6への接着を改善するために使用される。接着は、一般的に、基板シート5の表面7の表面エネルギーの増加によって強くなる。
【0043】
本発明の1つの実施形態において、硬化性材料を含む表面層6は、硬化性化合物13を移す場合に、マトリックス8に対向するべき基板シート5の表面7に形成される。表面層6は、マトリックス8及び凹部12の硬化性化合物13と接触させられた後で硬化されることが好ましい。更に、表面層6は、マトリックス8と接触する前にある程度予め硬化され、及び/又は、マトリックス8から取り除かれた後で硬化される。
【0044】
光応用において、表面層6及び基板シート5の表面の改質された部分は、透明であることが好ましい。
【0045】
硬化性化合物を充填すること及び選択的に除去することは、マトリックス8の表面特性を操作すること、即ち、凹部の間に比較的親水性の凹部及び比較的疎水性の中間表面を有することによって補助される。例えば、これは、中間自然表面よりも親水性の高い表面を提供する凹部において表面組織を取得するようにシリコンで充填された空胴を含むNiマトリックスを有すること、凹部をエッチングすること又は疎水性のポリテトラフルオロエチレンなどで中間表面を被覆することなどによって行われる。
【0046】
図3を参照するに、マトリックス8は、ロール上に提供されることが好ましく、少なくとも硬化性化合物13は、少なくとも印刷製品特徴3がマトリックスロール8と転がり接触させられる基板シート5上に連続的に形成されるロールツーロール処理において移される。
【0047】
本発明によれば、基板シート5に沿った連続的な処理において、基板シート5の表面7上に配置された印刷製品特徴3を含む製品を製造する装置であって、
−基板シート5と転がり接触しているように配置され、複数の凹部12を有する周方向表面9を含むマトリックスロール8と、
−マトリックスロール8の周方向表面9及び凹部12上に硬化性化合物13を塗布するように配置されたアプリケータ21と、
−アプリケータ21で硬化性化合物13を塗布した後、マトリックスロール8の周方向表面9から余分な硬化性化合物13を除去するように配置された除去手段22aと、
−硬化性化合物13の粘度を高める硬化手段23aとを備え、
それによって、凹部を充填する残りの硬化性化合物13は、印刷製品特徴3を形成するために、マトリックスロール8と基板シート5との転がり接触中に基板シート5に移される。
【0048】
上述の理論に類似して、連続的な製造のための装置は、印刷のための装置に類似するものとして理解される。
【0049】
図3は、連続的な製造のための装置の1つの実施形態を概略的に示す横断面図である。硬化性化合物を塗布する手段、硬化性化合物23a及び/又は基板シート5の接着剤層を硬化する手段、余分な硬化性化合物13を除去する手段、及び、マトリックスロール8と転がり接触したまま基板シート5を保持する手段は、マトリックスロール8の周囲に配置される。アプリケータ21及び除去手段22aは、ロールとして示されるが、これに限定されない。図3において、基板シート5は、圧力ロール24及び剥離ロール25によって誘導されることが好ましい。当業者によって理解されるように、ロール、除去手段及び硬化手段の厳密な配置は、図3に示された設定に限定されない。また、更なるロール、除去手段及び硬化手段は、上述した方法の実施形態を行うために、マトリックスロールの周囲及び/又は基板シートに配置されてもよい。例えば、更なるアプリケータ及び除去手段は、塗布工程及び除去工程を繰り返すように、マトリックスロールに配置される必要がある。
【0050】
動作中、基板シート5は、圧力ロール24とマトリックスロール8との間、次に、剥離ロール25とマトリックスロール8との間に提供及び供給される。これにより、基板シート5は、マトリックスロール8の周方向表面9の部分の周囲において、マトリックスロール8と転がり接触させられる。マトリックスロール8の周囲の第1の位置において、硬化性化合物13がマトリックスロール8に塗布され、マトリックスロールの表面9における凹部12は、硬化性化合物13で少なくとも部分的に充填される。硬化性化合物の粘度は、最小の凹部を充填できるように構成されることが好ましい。凹部の外側の余分な硬化性化合物13は、マトリックスロール8の周囲の第2の位置に配置された除去手段22aによって除去される。第3の位置において、基板シート5は、マトリックスロール8の表面9及び凹部における硬化性化合物13と接触させられる。硬化性化合物は、基板シート5に接着する。基板シート5が剥離ロール25においてマトリックスロール8の周方向表面9から解放される場合、凹部12における硬化性化合物13は、凹部から急速に剥離され、基板シート5に移されて基板シート5上で製品特徴を形成する。
【0051】
除去手段22a及び22bは、スクイージ及び/又は研磨手段を備える。研磨手段の一例は、マトリックスロール表面に接触するように配置されるロール上に配置された繊維布である。2つ以上の除去手段22a及び22bは、余分な硬化性化合物を効率的に除去するような順番で、例えば、スクイージに続いて研磨手段が配置される。これにより、中間表面上に残された余分な硬化性化合物の量が最小限になり、研磨を改善する。
【0052】
余分な硬化性化合物13を除去する前に硬化性化合物13の粘度を高める硬化手段23aは、少なくともアプリケータ21と除去手段22aとの間に配置されることが好ましい。オプションとして、除去手段22bは、アプリケータ21と硬化手段23aとの間の位置に配置され、余分な硬化性化合物を粗除去できるようにする。例えば、硬化手段23aは、少なくとも部分的に硬化性化合物13に対して使用される。これにより、硬化性化合物13の粘度は、最初に硬化性化合物を凹部12に充填するために最適化され、次に、凹部12から硬化性化合物を除去することなく余分な硬化性化合物13を効率的に除去できるように、少なくとも部分的に硬化されることによって最適化される。硬化性化合物は、この工程で完全に硬化される必要はないが、実際には、他の手段によって粘度が高くなる場合には全く硬化される必要はない。後続の工程で更に硬化されてもよい。粘度を高めるために使用された機構に依存して、ランプ(UV、赤外線など)、熱源、冷却手段又は電子ビームガンなどの種々の硬化手段が使用されてもよい。
【0053】
本発明の1つの実施形態において、硬化手段23bは、マトリックスロール8が基板シート5と転がり接触させられる場所の前の位置において、除去手段22aと順番に更に配置される。この位置において、硬化性化合物13は、硬化される(或いは、前に部分的に硬化されている場合には更に硬化される)が、完全に硬化される必要はない。
【0054】
マトリックスロール8が基板シート5と転がり接触している位置に配置された硬化手段23cは、凹部から基板シート5に硬化性化合物を移す前に、凹部における硬化性化合物13を更に硬化するために、或いは、前に硬化されていない場合には最初の硬化をするために使用される。この硬化手段23cは、基板シート5上で表面層6を硬化するためにも使用される。
【0055】
硬化性化合物の温度を変化させることによって粘度を高める硬化手段23aは、マトリックスロール8にも統合される。
【0056】
本発明の1つの実施形態において、連続的な製造のための装置は、硬化性化合物13を基板シート5に移す前に基板シート5を前処理する手段27を備える。図3に示されたように、アプリケータロール又はスプレー被覆手段などの前処理する手段27は、基板シート5がマトリックスロール8と転がり接触させられる場所の前の位置の基板シート5に配置される。
【0057】
上述したように、製造中、基板シートの厚みは、印刷前に、基板シート5上にオフセット層を堆積することによって制御され、必要に応じて調整される。これは、基板シート5がマトリックスロール8を離れた後の位置において、基板シートの反対側に配置された製品特徴の相互位置合わせを登録する手段を使用して行われる。相互位置合わせを登録する手段の一例は、国際公開第2009/085004号パンフレットに開示されている。
【0058】
図4に概略的に示された本発明の更なる1つの実施形態において、装置は、基板シートの片側又は両側の基板シート5上に更なる製品特徴2を提供する手段28及び29を更に備える。更なる製品特徴を提供する手段は、種々の技術及び種々の印刷、エンボス加工、連続的な鋳造、表面被覆、積層又はそれらの組合せなどの種々の処理に基づいた手段を備える。印刷技術の例は、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷及び本発明の方法における印刷を含む。装置は、互いに関連付けられた製品特徴を位置合わせする手段を更に備えることが好ましい。
【0059】
図4は、本発明におけるマトリックスロールに加えて更なる製品特徴2を提供する手段、及び、硬化性化合物を塗布し、硬化し、且つ、除去する上述した手段を備える装置の1つの実施形態を概略的に示す。基板シート5は、供給ロール30から更なる製品特徴2を提供する第1の手段28に供給される。例えば、第1の手段28は、基板シート5の片側のマイクロレンズの形態の更なる製品特徴2を形成するエンボスロール又は鋳造硬化ステーションであるが、これらに限定されない。その後、基板シート5は、更なる製品特徴を形成する第2の手段27に供給される。本実施形態において、第2の手段27は、圧力ロール24とマトリックスロール8との間のニップに進入する前に、更なる製品特徴2の反対側の基板シート5の表面上に表面層6を形成するために使用される。上述したように、硬化性化合物13は、アプリケータ21によってマトリックスロール8の周方向表面9に塗布される。これにより、マトリックスロール8の表面9における凹部12は、硬化性化合物13で充填される。塗布された硬化性化合物13は、アプリケータ21と除去手段22との間の位置に配置された硬化手段23によって少なくとも部分的に硬化されることが好ましい。このようにして硬化性化合物13が硬化された後、除去手段22は、あらゆる余分な硬化性化合物13、特に、凹部12の間の余分な硬化性化合物13を除去する。図4に示されたように、アプリケータ21及び除去手段22aは、ロールの形態である。例えば、研磨ロールは、最終的な除去のために使用される。スクイージなどの更なる除去手段22bは、余分な硬化性化合物を粗除去するために、アプリケータ21の直後に配置されることが好ましい。余分な硬化性化合物13を除去した後、マトリックスロール8の周方向表面9は、マトリックスロール8に対して基板シート5を強制する圧力ロール24によって表面シート、即ち、その表面上の接着剤層6と転がり接触させられ、マトリックスロール8上に配置された剥離ロール25において解放されるまで転がり接触したままにされる。基板シート5とマトリックスロール8との転がり接触中、凹部12における硬化性化合物13は、基板シート5の接着剤層6に接着する。硬化手段23は、オプションとして、転がり接触している間に、凹部及び/又は基板シート5の表面層6における未硬化の硬化性化合物13又は部分的に硬化された硬化性化合物13を硬化するように配置される。基板シートが剥離ロールにおいてマトリックスロール8との接触から解放される場合、硬化された化合物13は凹部12から取り除かれ、印刷製品特徴3は、更なる製品特徴2を有する反対側の基板シート5の表面7上に印刷される。この例は、例示することを目的とするが、上述した方法及び装置の実施形態に応じた変形が考えられることが理解されるべきである。
【0060】
基板シートは、少なくとも透明又は半透明の合成統合画像の生成に寄与する領域にある。他の領域は、不透明であるか、或いは、透明度が減少している。光応用のために、透明度が最も重要である。基板シートは、紙、フィルム又はアルミニウムなどの金属を含む。上述の実施形態は、主に、単一の層によって構成された基板シートを用いて説明されるが、これに限定されない。2つ以上の層は、当技術分野において既知である技術によって接合され、或いは、1つ以上の表面層は、基板の片側又は両側に堆積され、本発明における製品特徴を印刷する前に必要な表面特性を実現する。基板シートは、鋳造、カレンダ加工、ブロー成形、押出成形及び/又は二軸押出成形される。基板シートは、例えば、ポリエチレンテレフタート、ポリメチレンメタクリレート、ポリプロピレンプロパフィルム(propafilm)、ポリ塩化ビニル、硬質pvc、セルロース、トリアセタート、アセタートポリスチレン、ポリエチレン、ナイロン、アクリル板及びポリエーテルイシド板を含む群から選択された1つ以上の高分子化合物を含む。木材パルプ又はコットン、或いは、合成木材を使用していない繊維などから構成された紙が更に使用される。紙は、コート加工、カレンダ加工又はロール紙加工される。
【0061】
マトリックス又はマトリックスロールを含む製品特徴を提供する手段は、印刷版を含む。このような印刷版は、マイクロシステムの技術及びマイクロエレクトロニクスの分野において既知であるフォトリソグラフィ技術などの微細加工方法を使用して作製されることが好ましい。レーザーライターを使用した直接描画が使用されることが好ましい。これにより、非常に高い分解能、即ち、0.5μm以上が可能になる。マスタ構造は、印刷版のネガコピーであり、多くの印刷版を製造するために使用される。マスタ構造のパターンは、複製によってマトリックスに移される。ニッケル(Ni)は、複製された印刷版に対して適切な材料であり、この材料から構成された版は、マスタ上でめっきされる。微細加工方法で製造された印刷版は、一般的に、本発明における製品特徴を提供する手段に要求される硬度を有する必要はない。従って、印刷版は、必要な硬度を提供するキャリアに取り付けられることが好ましい。上述のロールツーロール処理において、印刷版は、ロールの表面に取り付けられてマトリックスロール8を形成する。
【0062】
上述したように、本発明の方法は、凹版印刷と類似性を有する。凹版印刷において、マトリックスは、一般的に、銅(Cu)製である。凹版印刷において、インクはマトリックスの表面に付着され、余分なインクはスクイージを使用して除去される。Niは、Cuなどよりも摩耗する傾向があるため、余分なインク、即ち、硬化性化合物は、Niマトリックスを使用する場合には研磨することで最終的に除去されることが好ましい。これにより、印刷版の寿命及び製品特徴の再現性が改善される。
【0063】
マトリックスロールの耐摩耗性は、TiNなどの薄い耐摩耗被膜の硬化及び/又は堆積などの表面処理によって向上する。
【0064】
本発明の1つの実施形態において、毛管力を使用して大きな凹部を充填することを改善するために、マトリックス8の凹部12に支持構造が提供される。
【0065】
図5は、本発明における硬化性化合物13で充填されている2つの凹部12a及び12bを概略的に示す。ピラー又はリッジなどの支持構造20は、凹部12a及び12bに提供される。液状硬化性化合物は、小さな凹部12a及びより大きな凹部12bの双方を充填する。支持構造の幅は、小さすぎるために発生した印刷製品特徴のジオメトリにおけるあらゆるアーチファクトが、製品が正常に使用されている場合に観察者によって知覚されないように構成されることが好ましい。支持構造20の高さは、一般的に、製作の問題に起因して凹部の深度に等しいが、これに限定されない。支持構造の間の距離は、毛管力が凹部を完全に充填できるように、凹部に充填された硬化性化合物上で作用するように構成される。印刷製品特徴が光学デバイスに使用される場合、支持構造は、無秩序に分配されて自身が指示されたアレイに配置されるかのようにアーチファクトを減少し、支持構造から発生する印刷製品特徴の小さなアーチファクトは、正常な使用中に知覚されることが好ましい。
【0066】
図7a及び図7bは、本発明における印刷基板シート5を製造するための装置の別の例を示す。製造装置は、印刷すべき製品特徴3の所望のパターンに否定的(negatively)に対応するパターンにおいて、インクなどの硬化性化合物13を受け取る表面9上に形成された凹部12を有するマトリックスロール8を備える。凹部は、トレイ32から硬化性化合物を集め、マトリックス表面と直接接触することによって硬化性化合物をマトリックスロールに移すように配置されたアプリケータロール21によって、硬化性化合物で充填される。硬化性化合物の低粘度に起因して、硬化性化合物は、マトリックス表面上の凹部に簡単に、且つ、完全に流入する。トレイは、凹部の間のリッジ上の余分な硬化性化合物を除去し、除去した硬化性化合物の少なくとも一部をトレイに返すように、硬化性化合物からマトリックス表面を削るように配置されたスクイージ34を更に備える。製造装置は、あらゆる残りの余分な硬化性化合物のマトリックス表面を拭き取る拭き取り装置22dを更に備える。拭き取り装置は、以下で更に詳細に説明する。硬化手段23dは、硬化性化合物の粘度を高めるように、硬化性化合物を部分的に硬化する。
【0067】
製造装置は、ロール上に巻き付けられた基板シートを有し、且つ、2つの前処理ロール27及び更にはマトリックスロールに対して基板シートのウェブを供給するように配置された供給ロール30を更に備える。2つの前処理ロールは、マトリックスロール上の基板シートと硬化性化合物との接着を強くするために、硬化性接着剤層を基板シート上に形成する。2つの前処理ロールの間のニップは、接着剤層の適切な厚みを保証する。そして、基板シートは、圧力ロール24によってマトリックスロールと接触させられ、接着剤層は、凹部12において既に部分的に硬化された化合物と接触する。第2の硬化手段38は、硬化性接着剤層及び硬化性化合物を共に硬化し、基板シート上に統合層を形成する。基板シートは、剥離ロール25を含むマトリックスロールから除去され、硬化性化合物は、基板シートに続いて、凹部から抜き取られるか、或いは、剥ぎ取られる。基板シートは、基板シートの反対側に更なる製品特徴を印刷する、又は、新たに形成された製品特徴上に保護層を形成するなどの更なる処理のために、第2の印刷又は処理装置40、或いは、第2のマトリックスロールに搬送される。
【0068】
図7a及び図7bを参照して示されたように、拭き取り装置22dは、ロール上に巻き上げられた拭き取り材料44のウェブを有し、且つ、拭き取りロール上にウェブを供給するように配置された第1の貯蔵用ロール42を備える。第1の拭き取りロール46及び第2の拭き取りロール48は、それらの表面がマトリックス表面9と接触して位置決めされるが、互いに間隔をおいて配置される。従って、拭き取り材料のウェブは、マトリックス表面の曲率に応じて、ロール間の実際の距離と比較して拭き取りロール間のウェブの長さによってほぼ決定された圧力でマトリックス表面に軽くすれ合う。拭き取りロールは、マトリックスロールの回転に対して反対方向に回転するように配置され、拭き取り材料のウェブは、マトリックス表面の移動方向に対して逆方向に進む。これにより、ウェブによって拭い取られた硬化性化合物の量が増加し、クリーンなウェブ部分が拭き取り装置の端部においてマトリックス表面を拭き取る最後の部分であることを保証する。拭き取りロールの回転速度は、マトリックス表面にわたって十分にクリーンな拭き取り材料のウェブを供給することを保証するように十分に速く設定され、ウェブとマトリックスとの間の低接触圧力、硬化性化合物を吸収するために十分な時間、凹部に残された硬化性化合物を妨害する低レベルを保証するように十分に遅く設定される。例示的な供給速度は、約0.5〜2cm/sである。拭き取り装置は、使用済みの汚い拭き取り材料のウェブを巻き上げて貯蔵する第2の貯蔵用ロール50を更に備える。
【0069】
拭き取りロールは、拭き取り材料のウェブを支持し、且つ、マトリックス表面上に押下する支持表面52を備える。本発明によって、マトリックス上に加えられる拭き取りロールの圧力は、硬化性化合物を凹部に残しながら余分な硬化性化合物を拭き取るために非常に低い圧力であることが理解される。従って、支持表面は、図7bのニップの拡大図に示されたように、マトリックス表面の形状になるように十分に柔軟にされる。例えば、支持表面は、軟質ポリマーフォーム材料又は同様の材料特性を有する他のあらゆる材料で構成されてよい。また、拭き取り材料のウェブは、柔軟であり、吸収できるように繊維性及び多孔性であることが更に好ましい。例えば、拭き取り材料は、布、ティッシュペーパーのウェブ、織物又は不織布などである。また、拭き取りロールがマトリックス表面上に押下される圧力は、非常に低い圧力であるべきである。従って、拭き取り部材のウェブが凹部に押し込まれずにマトリックス表面の曲率にならうため、硬化性化合物を引き上げることを回避する。
【0070】
更に、拭き取りロールの直径は、マトリックスロールの直径の少なくとも15%、より好ましくは少なくとも25%である。この例において、直径は、マトリックスロールの直径の約1/3である。これは、拭き取り処理の終わりのマトリックスロールの表面に関して、拭き取り材料のウェブに対して浅いまま残る角度に有利となり、凹部からあらゆる硬化性化合物を引き上げることに関する問題が更に減少する。
【0071】
本発明の方法及び装置によれば、従来の印刷技術では実現不可能な3次元の方位分解能、エッジ解像力及び寸法公差に対する印刷において、正確に印刷製品特徴を基板シート上に印刷できる。更に、かかる方法及び装置は、大きな表面上でこのような精度を得られるようにする連続的な処理を提供する。特に、幅が0.5μm×0.5μmから0.5μm〜5μm、好ましくは、1〜3μmの高さを有するセンチメートルサイズの特徴の印刷製品特徴を含む、即ち、4:1(高さ:幅)から1:10000に変動するアスペクト比を生じる製品が形成される。
【0072】
例えば、最小の特徴は、0.5μm×0.5μm×2μm又は1μm×1μm×1μmと小さい。図6は、本発明においてサイズが変動する印刷製品特徴を概略的に示す上面図である。最小の印刷製品特徴は、0.5μm×0.5μmである。上述したように、横方向の寸法がこのように大きく変動し、製品がμmのサイズの特徴、即ち、凹部を含む場合、硬化性化合物を充填することは困難である。小さな凹部を充填するために、粘度は比較的低くなければならない。毛管力がこれらの大きな構造を充填することを補助できないため、これは大きな凹部に対して問題を課す。代わりに、表面張力が重要な役割を果たす。更に、本発明によって、基板シート上で長い距離にわたって製品特徴を正確に位置合わせできるようになる。
【0073】
高さ、幅、厚さ方向、側部などを全て参照することは、理解しやすくするためだけに与えられ、特定の向きを限定するものとして考えられるべきではない。また、図中の構造の寸法は、必ずしも縮尺通りではない。例えば、製品特徴2及び3のサイズは、かなり誇張されている。
【0074】
現在最も実際的であり、好適な実施形態であると考えられているものに関して本発明を説明したが、本発明は、開示された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内の種々の変形及び同等の装置を範囲に含むことを意図することが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板シート(5)の表面(7)上に配置された印刷製品特徴(3)を含む製品を製造する方法であって、
複数の凹部(12)を有するマトリックス表面(9)を含むマトリックス(8)を提供する工程と、
硬化性化合物(13)で前記凹部(12)を充填するように、前記硬化性化合物(13)を前記マトリックス表面(9)及び前記凹部(12)に塗布する工程と、
前記硬化性化合物(13)の粘度を高める工程と、
前記凹部(12)の外側の前記マトリックス表面から余分な硬化性化合物を除去する工程と、
前記マトリックス(8)を基板シート(5)の前記表面(7)と接触させることで前記凹部(12)における前記硬化性化合物(13)を前記基板シート(5)の前記表面(7)に移すことによって、前記硬化性化合物が前記基板シート(5)の前記表面(7)上に前記印刷製品特徴(3)を形成する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記粘度を高める工程は、余分な硬化性化合物を除去する前に、前記硬化性化合物(13)を少なくとも部分的に硬化することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除去する工程は、研磨することを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化性化合物(13)は、前記基板シート(5)と前記マトリックス(8)との接触中に硬化されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化性化合物(13)を移す前に、前記マトリックス(8)に対向する前記基板シート(5)の前記表面(7)上に表面層(6)を塗布する工程を更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面層(6)は、前記硬化性化合物(13)の前記基板シート(5)への接着を改善するための硬化性化合物を含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記マトリックス(8)は、マトリックスロール上に提供され、少なくとも前記硬化性化合物(13)を移すことは、ロールツーロール処理によって行われることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
各々が前記基板シート(5)の反対側の印刷製品特徴(3)と関連付けられる更なる製品特徴(2)を提供する工程を更に備え、前記印刷製品特徴(3)及び前記更なる製品特徴(2)は、それぞれ、合成画像デバイスに対する画像オブジェクト及びフォーカス素子を形成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記凹部(12)は、前記硬化性化合物(13)の充填を改善するための支持構造(20)を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記マトリックス表面から余分な硬化性化合物を除去する工程は、前記硬化性化合物を少なくとも部分的に吸収できる柔軟な拭き取り材料で前記マトリックス表面を拭き取ることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記拭き取ることは、双方とも前記マトリックス表面と接触している第1の拭き取りロールから第2の拭き取りロールに前記拭き取り材料のウェブを搬送することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基板シート(5)の表面(7)上に配置された印刷製品特徴(3)を含む製品の連続的な製造のための装置であって、
前記基板シート(5)と転がり接触させられるように配置された複数の凹部(12)を有する周方向表面(9)を含むマトリックスロール(8)と、
前記マトリックスロール(8)上に硬化性化合物を塗布するように配置されたアプリケータ(21)と、
前記アプリケータ(21)で硬化性化合物(13)を塗布した後、前記マトリックスロール(8)の前記周方向表面(9)から余分な硬化性化合物を除去するように配置された除去手段(22a)と、
余分な硬化性化合物(13)を除去する前に、前記硬化性化合物(13)の粘度を高める少なくとも前記アプリケータ(21)と前記除去手段(22a)との間に配置された硬化手段(23a)とを備え、
前記凹部(12)を充填する残りの硬化性化合物が前記基板シートと前記マトリックスロールとの転がり接触中に前記基板シート(5)に移されることを特徴とする装置。
【請求項13】
前記硬化手段は、前記硬化性化合物(13)を少なくとも部分的に硬化することで前記硬化性化合物の粘度を高めるように配置されることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
各々が前記基板シート(5)の反対側の印刷製品特徴(3)と関連付けられる更なる製品特徴(2)を提供する手段を更に備え、前記印刷製品特徴(3)及び前記更なる製品特徴(2)は、それぞれ、合成画像デバイスに対する画像オブジェクト及びフォーカス素子を形成することを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
第1の拭き取りロールから第2の拭き取りロールに拭き取り材料のウェブを搬送するために前記マトリックス表面と接触するように配置された前記第1の拭き取りロール及び前記第2の拭き取りロールを更に備えることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記拭き取りロールは、前記マトリックス表面の形状になるように十分に柔軟な前記ウェブを支持する支持表面を含むことを特徴とする請求項15に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2013−520686(P2013−520686A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553851(P2012−553851)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【国際出願番号】PCT/SE2011/050192
【国際公開番号】WO2011/102800
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512210227)ローリング オプティクス エービー (1)
【氏名又は名称原語表記】ROLLING OPTICS AB
【住所又は居所原語表記】Master Samuelsgatan 42, S−111 57 Stockholm, Sweden
【Fターム(参考)】