説明

基板切断方法及び基板切断装置

【課題】集合基板90の切断領域の近傍に実装された電子部品の破損の発生を抑えることができる基板切断装置を提供する。
【解決手段】電子部品実装済みの複数の電子回路基板が未分割の状態で1枚に繋がっている集合基板90を複数の電子回路基板に分割するための下刃51及び上刃52を有し、集合基板90にそれらの刃を押圧せしめて集合基板90を複数の電子回路基板に分割する基板切断装置において、集合基板90の切断対象箇所における上刃52押圧直前の領域に対して、熱風の吹き付けによる加熱処理を施す送風ノズル4等からなる加熱手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1枚に繋がった複数の電子回路基板を具備する集合基板を、切断刃の押圧によって複数の電子回路基板に分割する基板切断方法及び基板切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板切断装置(例えば特許文献1に記載のもの)としては、互いに刃先を対向させた上刃と下刃との間に集合基板を挿入し、基板上下面にそれぞれ押し当てた刃によって集合基板を切断するものが一般的である。
【0003】
一方、電子機器の小型化が進められる近年の電子回路基板においては、従来では配設しなかった基板縁部にまで電子部品を実装する傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子回路基板を複数具備する集合基板では、個々の電子回路基板の境界となっている切断箇所の近傍に実装された電子部品を、切断処理の際に破損し易くなっている。このことについて、図を用いて詳しく説明する。図1は、集合基板90を部分的に示す拡大側面図である。同図において、集合基板90の樹脂からなる基板91の切断対象箇所には、上下面にそれぞれV溝91aが形成されている。このV溝91aに沿って集合基板90が切断されることで、V溝91aよりも図中右側に位置している電子回路基板と、V溝91aよりも図中左側に位置している電子回路基板とに分割される。図示の集合基板90には、電子部品としてのチップコンデンサ95やIC96などが実装されている。
【0005】
図2は、基板切断装置のワーク載置台50にセットされた集合基板90を部分的に示す拡大側面図である。集合基板90は、図示のように、下面のV溝に対して切断刃としての下刃51を挿入された状態でワーク載置台にセットされる。基板切断装置は、この状態の集合基板90における上面のV溝(図2の91a)に対して図3に示す回転可能な上刃52を押し当てながら溝延在方向に移動させる。すると、図4に示すように、集合基板90の基板91が下刃51と上刃52との間に強く挟まれて、V溝を境にして切断される。
【0006】
図5は、基板91における切断中の箇所を示す拡大側面図である。同図において、集合基板90の基板91における刃押し当て箇所の近傍には、チップコンデンサ95がはんだ92によって基板91の電極パッド93に接合されている。基板91の上下のV溝にそれぞれ刃が強く押し当てられると、その箇所は圧縮変形しながら切断される。このとき、基板91の刃押し当て箇所の近傍にある部品実装箇所は、図中矢印に示すように、上刃52に向けて強く引き伸ばされる。すると、引き伸ばされた部品実装箇所の上にあるチップコンデンサ95は、はんだ92を介して基板面方向に引っ張られて、伸縮性に劣る積層セラミックにクラックを発生させてしまう。このようにして、基板切断処理の際に、チップコンデンサ95が破損してしまうのである。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、集合基板の切断領域の近傍に実装された電子部品の破損の発生を抑えることができる基板切断方法及び基板切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、電子部品実装済みの複数の電子回路基板が未分割の状態で1枚に繋がっている集合基板を、切断刃の押圧によって複数の電子回路基板に分割する基板切断方法において、上記集合基板の切断対象箇所と、上記切断刃とのうち、少なくとも何れか一方を加熱してから該切断刃の押圧による基板切断処理を実施するか、あるいは、少なくとも何れか一方を加熱しながら基板切断処理を実施することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、電子部品実装済みの複数の電子回路基板が未分割の状態で1枚に繋がっている集合基板を複数の電子回路基板に分割するための切断刃を有し、該集合基板に該切断刃を押圧せしめて該集合基板を複数の電子回路基板に分割する基板切断装置において、上記集合基板の切断対象箇所と、上記切断刃とのうち、少なくとも何れか一方を、該切断刃による基板切断処理の実施前、あるいは実施中に加熱する加熱手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の基板切断装置において、上記加熱手段として、熱風の吹き付け、加熱した加熱部材の押し当て、あるいはレーザー照射により、上記切断対象箇所又は切断刃を加熱するもの、を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
これらの発明においては、集合基板の切断対象箇所を、加熱手段、又は加熱した切断刃によって加熱して変形し易くする。これにより、基板切断処理の際に、集合基板における切断刃押し当て箇所やその周囲を良好に変形させて、切断刃押し当て箇所から少しだけ離れた位置にある電子部品実装箇所を引き伸ばし難くすることで、電子部品の破損の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】集合基板を部分的に示す拡大側面図。
【図2】基板切断装置のワーク載置台にセットされた集合基板を部分的に示す拡大側面図。
【図3】基板切断装置の上刃を示す側面図。
【図4】切断中の集合基板を部分的に示す拡大側面図。
【図5】集合基板の切断箇所を拡大して示す拡大側面図。
【図6】実施形態に係る基板切断装置を示す要部構成図。
【図7】同基板切断装置によって切断されている最中の集合基板を部分的に示す拡大側面図。
【図8】同集合基板の切断箇所を拡大して示す拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した基板切断装置の一実施形態について説明する。
図6は、実施形態に係る基板切断装置を示す要部構成図である。同図において、基板切断装置は、図示しない土台に立設せしめられた支柱1、支柱に固定されたワーク載置台50、スライドレール2、吊り下げ架台3などを備えている。吊り下げ架台3は、スライドレール2に係合して吊り下げられた状態で、図中矢印で示すように、スライドレール2の延在方向にスライド移動するようになっている。
【0012】
吊り下げ架台3の下面には、切断刃としての上刃52と、送風ノズル4とが固定されている。上刃52は、円盤状の形状をしており、回転軸を中心に回転するように支持されている。送風ノズル4には、耐熱チューブ5の一端側が接続されている。そして、この耐熱チューブ5の他端側は、図示しない熱風圧送装置に接続されている。熱風圧送装置から耐熱チューブ5に圧送された130[℃]程度の熱風は、送風ノズル4に送り込まれる。
【0013】
ワーク載置台50の上面には、切断対象となる集合基板90が載置されている。また、ワーク載置台50には、厚み方向に貫通する下刃押し当て用開口が形成されており、この下刃押し当て用開口内には、切断刃としての下刃51が、刃先をワーク載置台50の上面よりも突出させるように固定されている。
【0014】
下刃51は、矩形状の刃であり、長手方向の全域に渡って形成された刃部を上側に向けた姿勢で上記下刃押し当て用開口に固定されている。集合基板90は、その基板下面に設けられたV溝内に、下刃51の刃先を挿入された状態で、ワーク載置台50の上面に載置されている。
【0015】
吊り下げ架台3に固定された上刃52は、その刃先を下刃51の刃先の延在方向に位置させる姿勢になっている。そして、吊り下げ架台3が図中矢印方向にスライド移動されることで、下刃51との間に集合基板90を挟み込みながら、下刃51とともに集合基板90の基板をV溝に沿って切断していく。
【0016】
上述した送風ノズル4は、吊り下げ架台3が図中矢印方向にスライド移動されると、図7に示すように、集合基板90の基板上面における上刃52に押し当てられる前のV溝箇所に対して、約130[℃]の熱風を吹き付ける。つまり、実施形態に係る基板切断装置は、集合基板90の切断対象箇所を加熱しながら、その切断対象箇所に対して切断処理を施すようになっている。
【0017】
集合基板90の基板としては、エポキシ樹脂やガラスエポキシなど、加熱によって軟化する材料(例えば熱可塑性樹脂)を主成分とするものが用いられている。このような集合基板90の切断対象箇所(V溝及びその周囲)を、熱風の吹き付けによって切断直前に加熱して変形し易くすると、切断の際に、切断対象箇所やその周囲を良好に変形させる。これにより、図8に示すように、基板91のける上刃52と下刃51とに挟み込まれた局所箇所が自在に伸張することで、チップコンデンサ95の搭載箇所が引き伸ばされ難くなる。すると、チップコンデンサ95におけるV溝側の箇所をV溝に向けて無理に引き伸ばすことがなくなるので、チップコンデンサ95の破損の発生を抑えることができる。
【0018】
下刃51、上刃52は、図示のものに限られるものではない。例えば、下刃51として、上刃52と同様に、回転可能な円盤状のものを用いてもよい。また、上刃、下刃ともに、回転不能なものを用いてもよい。
【0019】
上刃52をV溝延在方向に移動させながら、集合基板90を切断する例について説明したが、下刃51を移動させて切断するようにしてもよい。また、上刃52、下刃51をともに固定した状態で、ワーク載置台50や、ワーク載置台50上の集合基板90を移動させながら、集合基板90を切断するようにしてもよい。
【0020】
集合基板90を加熱しながら切断していく例に限られず、集合基板90を加熱した後、その後の加熱処理を行うことなく、集合基板90を温かいうちに切断してもよい。例えば、本発明者らは、ホットプレート上に集合基板90を載置して130[℃]程度まで予備加熱した後、基板切断装置にセットして切断してみた。すると、集合基板90を全く加熱しない場合に、約9割の確率でチップコンデンサ52にクラックを発生させていたにもかかわらず、ホットプレートによる予備加熱を行った例では、クラックを発生させることがなかった。切断時の集合基板90の温度は、70[℃]程度まで下がっていたが、このような良好な結果が得られた。このことから、集合基板90を、予備加熱したら、その後、全く加熱することなく切断しても、ある程度の温度を維持した状態で切断すれば、良好な結果が得られることが実証された。また、集合基板90の切断対象箇所のみならず、基板全体を加熱しても、良好な結果が得られることが実証された。よって、加熱手段として、基板全体を加熱するものを用いてもよい。
【0021】
また、加熱手段として、熱風の吹き付けによって基板を加熱する例を示したが、他の方法によって加熱するものを用いてもよい。例えば、コテの押し当てや、レーザー光の照射などによって加熱を行うものでもよい。
【0022】
また、基板を加熱する代わりに、上刃52、下刃51の少なくとも何れか一方を加熱しても、ある程度の効果が得られると考えられる。但し、刃だけを加熱する場合には、刃から基板の刃押圧箇所に熱を伝えて、刃押圧箇所を変形し易くするのにある程度の時間を要するため、切断処理速度の高速化が困難になると考えられる。
【符号の説明】
【0023】
1:支柱
2:スライドレール
3:吊り下げ架台
4:送風ノズル(加熱手段の一部)
5:耐熱チューブ(加熱手段の一部)
51:下刃(切断刃)
52:上刃(切断刃)
90:集合基板
95:チップコンデンサ(電子部品)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開平1−115595号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品実装済みの複数の電子回路基板が未分割の状態で1枚に繋がっている集合基板を、切断刃の押圧によって複数の電子回路基板に分割する基板切断方法において、
上記集合基板の切断対象箇所と、上記切断刃とのうち、少なくとも何れか一方を加熱してから該切断刃の押圧による基板切断処理を実施するか、あるいは、少なくとも何れか一方を加熱しながら基板切断処理を実施することを特徴とする基板切断方法。
【請求項2】
電子部品実装済みの複数の電子回路基板が未分割の状態で1枚に繋がっている集合基板を複数の電子回路基板に分割するための切断刃を有し、該集合基板に該切断刃を押圧せしめて該集合基板を複数の電子回路基板に分割する基板切断装置において、
上記集合基板の切断対象箇所と、上記切断刃とのうち、少なくとも何れか一方を、該切断刃による基板切断処理の実施前、あるいは実施中に加熱する加熱手段を設けたことを特徴とする基板切断装置。
【請求項3】
請求項2の基板切断装置において、
上記加熱手段として、熱風の吹き付け、加熱した加熱部材の押し当て、あるいはレーザー照射により、上記切断対象箇所又は切断刃を加熱するもの、を用いたことを特徴とする基板切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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