説明

基板検査装置及び基板検査プログラム

【課題】検査対象の基板内に専用の回路等を設ける必要がなく、無人で基板の検査を行うことができる基板検査装置を提供する。
【解決手段】検査対象の音声基板に対してDTMF信号による所定の音声信号を出力する指示を行う発音指示手段と、音声基板より出力される音声信号を入力して、該音声信号を文字コードに変換して出力するDTMFレシーバと、DTMFレシーバから出力される文字コードが出力されるべき文字コードであるか否かを判定することにより音声基板の良否判定を行い、該良否判定結果を出力する判定手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声基板等の製造検査を行う基板検査装置及び基板検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、音声信号を生成可能であるが表示手段を有さない音源基板の信号経路の検査を簡便に行うために、電源投入時に取得した所定のコマンドでテストモードになり、テスト開始のコマンドの後、所定のスイッチがオンにされると、それに対応する音階の発音を開始し、オペレータは、スイッチを操作しながら、それに対応して出力される音声を聞き取ることによって、ハーネスが正常に接続されているか否かを判断する音源基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。この音源基板によれば、検査のために表示手段の接続を行うことなく検査を行うことができる。
【0003】
また、装置の正常性確認をトーン発生回路とトーン受信回路を用いて行うことにより、試験時の保守者を不要とし、障害発生を即時に通知可能とするために、試験トーンを発生するトーン発生回路と、外部からのアナログ音声信号とトーン発生回路からのトーン信号とをPCM符号に変換するPCM変換回路と、PCM変換回路の出力を外部からの指示により順次メモリに格納するメモリ回路と、メモリ回路の出力をトーン信号かどうか判定するトーン受信回路とから構成される音声蓄積装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この音声蓄積装置によれば、自立で正常性確認が可能となるため、保守員が不要となる。
【特許文献1】特開2001−034264号公報
【特許文献2】特開平05−056161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す音源基板にあっては、音源基板が出力する音声をオペレータが聞き取らなければならないため、検査のためにオペレータが必要であるという問題がある。
【0005】
一方、特許文献2に示す音声蓄積装置にあっては、自律的に試験を行うことができるものの専用のトーン発生回路とトーン受信回路を備えなければならないため、試験に必要な装置構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、検査対象の基板内に専用の回路等を設ける必要がなく、無人で基板の検査を行うことができる基板検査装置及び基板検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、検査対象の音声基板に対してDTMF信号による所定の音声信号を出力する指示を行う発音指示手段と、前記音声基板より出力される音声信号を入力して、該音声信号を文字コードに変換して出力するDTMFレシーバと、前記DTMFレシーバから出力される文字コードが出力されるべき文字コードであるか否かを判定することにより前記音声基板の良否判定を行い、該良否判定結果を出力する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、前記音声基板は、所定の識別コードが内部に保持されており、前記発音指示手段からの指示に応じて、前記識別コードをDTMF信号化した音声信号を出力し、前記判定手段は、前記DTMFレシーバから出力される文字コードが前記識別コードと一致するか否かに基づいて前記音声基板の良否判定行うことを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記判定手段は、前記DTMFレシーバから出力される文字コードのうち、「*」と「#」のそれぞれを「E」と「F」の文字に置き換えて、前記音声基板の良否判定を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明は、検査対象の音声基板より出力される音声信号を入力して、該音声信号を文字コードに変換して出力するDTMFレシーバを備えた基板検査装置上のコンピュータにより基板検査処理を行う基板検査プログラムであって、前記音声基板に対してDTMF信号による所定の音声信号を出力する指示を行う発音指示処理と、前記DTMFレシーバから出力される文字コードが出力されるべき文字コードであるか否かを判定することにより前記音声基板の良否判定を行い、該良否判定結果を出力する判定処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検査対象の音声基板に対してDTMF信号による所定の音声信号を出力する指示を出力し、これに応じて音声基板より出力される音声信号をDTMFレシーバへ入力して、この音声信号を文字コードに変換して出力し、この出力された文字コードが出力されるべき文字コードであるか否かを判定することにより音声基板の良否判定を行うようにしたため、検査対象の基板内に専用の回路等を設けることなく、無人で基板の自動検査を行うことができるという効果が得られる。また、音声出力の確認検査とROMバージョン情報等の基板固有の情報の確認検査を同時に行うことが可能となるという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による基板検査装置を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、基板検査装置の検査対象である音声基板である。符号2は、音声基板1に接続され、音声基板1が備えるアンプの出力の負荷となる基準抵抗器であり、例えばスピーカである。符号3は、音声基板1を製造する製造ライン全体を管理する製造ラインホストシステムであり、例えば、コンピュータシステムで構成する。符号4は、音声基板1を検査する検査システムである。符号41は、音声基板1の検査処理を実行する専用のコントローラであり、製造ラインホストシステム3と情報通信が可能なように構成されている。符号42は、音声基板1が出力する音声信号を入力し、入力した音声信号をDTMF(Dual-Tone Multi-Frequency)コードに変換して出力するDTMFレシーバである。
【0013】
ここで、図3を参照して、DTMF音とDTMFコードについて説明する。DTMF音は、図3に示す4つ高音系の周波数(1209,1336,1477,1633Hz)の音のうちの1音と、4つの低音系の周波数(697,770,852,941Hz)の音のうちの1音とを組み合わせて発音することで、16種類(0〜9、A〜D、*、#)のDTMFコードを表現することができるものである。DTMFレシーバ42は、音声基板1が出力する音声信号を入力し、入力した音声信号(高音系と低音系の組み合わせの音)に対応する16種類(0〜9、A〜D、*、#)のDTMFコード(文字コード)のいずれかを出力するものである。音声基板1のROM(Read Only Memory;図示せず)には、DTMFコードを用いて表現することができる情報に対応するDTMF音の音声信号データが予め記憶されている。記憶されているDTMF音の音声信号データは、例えば、ROMのバージョン情報、音声基板の型番情報、音声基板の製造番号情報(音声基板固有の情報)等をDTMFコードで表現した場合に対応するDTMF音の音声信号データである。
【0014】
次に、図2を参照して、図1に示すコントローラ41が音声基板1を検査する動作を説明する。図2は、図1に示すコントローラ41が音声基板1を検査する動作を示すフローチャートである。まず、製造ラインホストシステム3は、コントローラ41に対して、検査するべき音声基板1の固有識別コード(アスキーコードで表現されたROMのバージョン情報、音声基板の型番情報、音声基板の製造番号情報等)を出力し、検査の開始を指示する。ここでは、固有識別コードとして、音声基板1のROMバージョン情報が用いられ、ROMバージョン情報はアスキーコードで表現されているものとして説明する。
【0015】
これを受けて、コントローラ41は、製造ラインホストシステム3から出力された固有識別コード(ROMバージョン情報)を取得する(ステップS1)。続いて、コントローラ41は、音声基板1に対して、DTMF音の発音を指示する(ステップS2)。
【0016】
音声基板1は、DTMF音の発音指示を受けると、ROMに予め記憶されているDTMF音の音声信号データを読み出して、この音声信号データに基づいて、音声信号をスピーカ2に出力する。これによって、スピーカ2から音声基板11のROMバージョンに対応したDTMF音が発音することになる。DTMFレシーバ42は、音声基板1が出力する音声信号を入力して、この音声信号からDTMFコード列に変換してコントローラ41へ送信する。
【0017】
これと並行して、コントローラ41は、発音指示を出力した(ステップS2)後、DTMFレシーバ42の出力を監視して、所定時間内にDTMFレシーバ42からDTMFコードを受信できたか否かを判定する(ステップS3)。この判定の結果、所定時間内にDTMFレシーバ42からDTMFコードが受信できなければ、コントローラ41は、製造ラインホストシステム3に対して、検査結果としてNG判定を出力する(ステップS7)。
【0018】
一方、所定時間内にDTMFレシーバ42からDTMFコードが受信できた場合、受信したDTMFコード(0〜9、A〜D、*、#)列をアスキーコード列に変換する(ステップS4)。これにより、音声基板1のROMバージョン情報がアスキーコードで表現された文字列コードとして得られることになる。
【0019】
次に、コントローラ41は、ステップS1において製造ラインホストシステム3から取得した検査するべき音声基板の固有識別コードと、DTMFレシーバ42から受信し、アスキーコードに変換した文字列とが一致したか否かを判定する(ステップS5)。この判定の結果、製造ラインホストシステム3から取得した固有識別コードと、アスキーコードに変換した文字列とが一致しなかった場合、コントローラ41は、製造ラインホストシステム3に対して、検査結果としてNG判定を出力する(ステップS7)。
【0020】
一方、固有識別コードとアスキーコードに変換した文字列とが一致した場合、コントローラ41は、製造ラインホストシステム3に対して、検査結果としてOK判定を出力する(ステップS6)。
【0021】
なお、DTMFコード「*」を「E」、「#」を「F」または、「#」を「E」、「*」を「F」に置き換えて処理するようにしてもよい。この場合、音声基板1のROMの固有識別コードに0〜9、A〜Fの文字を使用した識別コードを用いるようにして、識別コード内に「E」、「F」が含まれていた場合は、DTMFコード「*」、または「#」に対応するDTMF音の音声信号データを記憶しておけばよい。そして、コントローラ41は、DTMFレシーバ42から受信したDTMFコード内に「*」、「#」が含まれていた場合は、それぞれ対応する「E」または「F」に置き換えた後にアスキーコードに変換し、識別コードと変換文字列が一致するか否かを判定すればよい。このようにすることによって、16進数で表現した識別コードを扱うことが可能となる。
【0022】
また、前述した説明においては、音声基板1内のROMにDTMFコードを用いて表現することができる情報に対応するDTMF音の音声信号データが予め記憶されている例を説明したが、ROM内にはROMバージョン情報等の固有情報のみが記憶されており、コントローラ41から発音指示が出された場合に、ROMに記憶されている固有情報に基づいて、DTMF音の音声信号データを生成し、この音声信号データに基づいて音声信号を出力するようにしてもよい。このようにすることによって、音声基板1内に音声信号データを記憶しておく必要がなくなるため、ROMの記憶容量を小さくすることができる。
【0023】
このように、検査対象の音声基板1に対してDTMF信号による所定の音声信号を出力する指示をコントローラ41が出力し、これに応じて音声基板1より出力される音声信号をDTMFレシーバ42へ入力して、この音声信号を文字コードに変換して出力し、コントローラ41がこの出力された文字コードが出力されるべき文字コードであるか否かを判定することにより音声基板1の良否判定を行うようにしたため、検査対象の音声基板1内に専用の回路等を設ける必要がなく、無人で音声基板1の自動検査を行うことができる。
また、音声基板1内に所定の識別コードを内部に保持しておき、コントローラ41からの指示に応じて、内部に保持している識別コードをDTMF信号化した音声信号を出力するようにしたため、音声出力の確認検査とROMバージョン情報等の音声基板固有の情報の確認検査を同時に行うことが可能となる。
また、一般に普及しているDTMFレシーバ42を用いて音声基板1の検査を行うことが可能になるため、検査システム4の構成を簡単にすることができる。
【0024】
なお、図1におけるコントローラ21の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより基板検査処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0025】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すコントローラ41動作を示すフローチャートである。
【図3】DTMF音とDTMFコードの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1・・・音声基板(検査対象)、2・・・スピーカ(基準抵抗器)、3・・・製造ラインホストシステム、4・・・検査システム、41・・・コントローラ、42・・・DTMFレシーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の音声基板に対してDTMF信号による所定の音声信号を出力する指示を行う発音指示手段と、
前記音声基板より出力される音声信号を入力して、該音声信号を文字コードに変換して出力するDTMFレシーバと、
前記DTMFレシーバから出力される文字コードが出力されるべき文字コードであるか否かを判定することにより前記音声基板の良否判定を行い、該良否判定結果を出力する判定手段と
を備えたことを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
前記音声基板は、所定の識別コードが内部に保持されており、前記発音指示手段からの指示に応じて、前記識別コードをDTMF信号化した音声信号を出力し、
前記判定手段は、前記DTMFレシーバから出力される文字コードが前記識別コードと一致するか否かに基づいて前記音声基板の良否判定行うことを特徴とする請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記DTMFレシーバから出力される文字コードのうち、「*」と「#」のそれぞれを「E」と「F」の文字に置き換えて、前記音声基板の良否判定を行うことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の基板検査装置。
【請求項4】
検査対象の音声基板より出力される音声信号を入力して、該音声信号を文字コードに変換して出力するDTMFレシーバを備えた基板検査装置上のコンピュータにより基板検査処理を行う基板検査プログラムであって、
前記音声基板に対してDTMF信号による所定の音声信号を出力する指示を行う発音指示処理と、
前記DTMFレシーバから出力される文字コードが出力されるべき文字コードであるか否かを判定することにより前記音声基板の良否判定を行い、該良否判定結果を出力する判定処理と
をコンピュータに行わせることを特徴とする基板検査プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−45484(P2010−45484A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206745(P2008−206745)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】