説明

基板検査装置

【課題】低コストで、しかも短時間で基板の検査を実施し得る基板検査装置を提供する。
【解決手段】基板10に実装または形成されたフィルタ11について予め規定された4つの周波数に試験信号S1の周波数を設定してフィルタ11に供給する試験信号供給部2と、試験信号S1が供給されているときにフィルタ11を通過して出力される出力信号S2のレベルを測定する測定部3と、フィルタ11について4つの周波数に対応して予め規定された良否判別用データD2と測定部3によって測定された各周波数における出力信号S2の各測定データD1とを比較してフィルタ11の良否を判別する制御部4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装または形成された検査対象体の伝送特性などを検査し得る基板検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板検査装置として、特開2000−28551号公報において開示された基板検査装置が知られている。この基板検査装置では、検査対象の試験基板(基板)についての伝搬特性(伝送特性)をネットワークアナライザを使用して測定し、この測定結果に基づいて試験基板の不良の有無を判定している。この場合、ネットワークアナライザは、例えば、特開平11−174104号公報に開示されているように、所定の周波数領域に掃引した周波数信号を検査対象に供給することで、検査対象の伝送特性を測定するように構成されている。
【特許文献1】特開2000−28551号公報(第3−7頁、第1図)
【特許文献2】特開平11−174104号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の基板検査装置には、以下のような問題点がある。すなわち、この基板検査装置では、ネットワークアナライザを使用して、所定の周波数領域に掃引した周波数信号を基板に供給しつつ、基板の伝送特性を測定している。このため、高価なネットワークアナライザを必要とする結果、測定コストが上昇するという問題点が存在している。また、周波数の掃引にある程度長い時間を必要とする結果、検査に要する時間が長時間化するという問題点も存在している。
【0004】
本発明は、上記の問題を解決すべくなされたものであり、低コストで、しかも短時間で基板の検査を実施し得る基板検査装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成すべく請求項1記載の基板検査装置は、基板に実装または形成された検査対象体について予め規定された複数の周波数に試験信号の周波数を設定して当該検査対象体に供給する試験信号供給部と、前記試験信号が供給されているときに前記検査対象体を通過して出力される出力信号のレベルを測定する測定部と、前記検査対象体について前記複数の周波数に対応して予め規定された基準レベルと前記測定部によって測定された当該各周波数における前記出力信号の各レベルとを比較して前記検査対象体の良否を判別する判別部とを備えている。
【0006】
また、請求項2記載の基板検査装置は、請求項1記載の基板検査装置において、前記検査対象体は、フィルタであり、前記試験信号供給部は、前記フィルタの通過域における遷移域の近傍に設定された1つの周波数、および前記フィルタの減衰域における当該遷移域の近傍に設定された1つの周波数の前記試験信号を供給する。
【0007】
また、請求項3記載の基板検査装置は、請求項1記載の基板検査装置において、前記検査対象体は、フィルタであり、前記試験信号供給部は、前記フィルタの通過域および減衰域にそれぞれ1つずつ設定された周波数の前記試験信号を供給する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の基板検査装置では、試験信号供給部が基板に実装または形成された検査対象体について予め規定された複数の周波数に試験信号の周波数を設定して検査対象体に供給し、試験信号が供給されているときに検査対象体を通過して出力される出力信号のレベルを測定部が測定し、判別部が検査対象体について複数の周波数に対応して予め規定された基準レベルと測定部によって測定された各周波数における出力信号の各レベルとを比較して検査対象体の良否を判別する。したがって、この基板検査装置によれば、高価なネットワークアナライザを使用することなく検査することができるため、検査コストを大幅に低下させることができる。また、試験信号の周波数を予め規定された複数の周波数に設定するだけでよいため、ネットワークアナライザを使用して所定の周波数領域で掃引した周波数信号を検査対象体に供給する構成と比較して、極めて短時間に検査対象体の検査を完了させることができる。
【0009】
また、請求項2記載の基板検査装置によれば、フィルタが検査対象体のときに、試験信号供給部が、フィルタの通過域における遷移域の近傍に設定された1つの周波数、およびフィルタの減衰域における遷移域の近傍に設定された1つの周波数の試験信号をフィルタに供給することにより、ネットワークアナライザを使用することなく、フィルタの検査、具体的には、通過域における利得の検査、減衰域における減衰量の検査、および周波数域上における遷移域(さらには遷移域に含まれているカットオフ周波数)の位置の検査を低コストで、しかも短時間で完了させることができる。
【0010】
また、請求項3記載の基板検査装置によれば、フィルタが検査対象体のときに、試験信号供給部がフィルタの通過域および減衰域にそれぞれ1つずつ設定された周波数の試験信号をフィルタに供給することにより、試験信号の周波数を通過域および減衰域の数と同数の周波数に設定するだけでよいため、ネットワークアナライザを使用することなく、フィルタの検査、具体的には、通過域における利得の検査、および減衰域における減衰量の検査を低コストで、しかも短時間で完了させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る基板検査装置の最良の形態について説明する。
【0012】
最初に、本発明に係る基板検査装置1について、図面を参照して説明する。
【0013】
基板検査装置1は、図1に示すように、基板10に実装または形成された検査対象体11の伝送特性を実行する装置であって、試験信号供給部2、測定部3、制御部4、記憶部5および出力部6を備えて構成されている。本例では、基板10の一例として、抵抗、コンデンサおよびインダクタなどの電気的素子が内部に形成されたいわゆる「部品内蔵基板」を例に挙げて説明する。また、この種の基板10では、上記の電気的素子によって内部にフィルタが構成されることが多く、この基板検査装置1は、基板10の検査に際して、このフィルタを検査対象体11としてその伝送特性を検査する。したがって、以下では、検査対象体11であるフィルタを「フィルタ11」ともいう。なお、本例では、良品の基板10内に構成されるフィルタ11は、一例としてバンドパスフィルタであり、図2において矢印Aで示す伝送特性(破線で示す特性)を備えているものとする。
【0014】
試験信号供給部2は、このフィルタ11に対して予め設定された複数(一例として4つの)の周波数f1,f2,f3,f4(f1<f2<f3<f4)の試験信号S1を生成可能に構成されている。この場合、図2に示すように、周波数f1,f2は、低域側の遷移域(低域側のカットオフ周波数を含む帯域)22を挟むようにして設定されている。つまり、周波数f1は、低域側の減衰域21に含まれる周波数であって、遷移域22の近傍の周波数に設定され、周波数f2は、通過域23に含まれる周波数であって、低域側の遷移域22の近傍の周波数に設定されている。他方、周波数f3,f4は、高域側の遷移域(高域側のカットオフ周波数を含む帯域)24を挟むようにして設定されている。つまり、周波数f3は、通過域23に含まれる周波数であって、高域側の遷移域24の近傍の周波数に設定され、周波数f4は、高域側の減衰域25に含まれる周波数であって、遷移域24の近傍の周波数に設定されている。また、試験信号供給部2は、出力プローブ7を介してフィルタ11の一端に接続される。また、試験信号供給部2は、制御部4の制御下で、各周波数f1〜f4のうちの制御部4によって選択された1つの周波数に試験信号S1の周波数を設定して生成し、生成した試験信号S1を出力プローブ7を介してフィルタ11に供給(出力)する。
【0015】
測定部3は、増幅器およびA/D変換器(いずれも図示せず)を備えて構成されている。また、測定部3は、入力プローブ8を介してフィルタ11の他端に接続される。また、測定部3は、試験信号S1が供給されているときにフィルタ11の内部を通過してその他端から出力される試験信号S1、つまりフィルタ11を通過して出力される出力信号S2のレベルを測定する。具体的には、測定部3は、入力プローブ8を介して出力信号S2を入力して、出力信号S2のレベル(電圧振幅)を測定データD1に変換して出力する。
【0016】
制御部4は、CPUなどで構成されて、本発明における判別部を構成する。また、制御部4は、試験信号供給部2に対する制御、および測定データD1に基づくフィルタ11に対する検査処理などを実行する。記憶部5は、ROMやRAMなどで構成されて、良否判別用データD2(本発明における基準レベル)、および制御部4の動作プログラムを記憶している。この場合、良否判別用データD2は、良品の基板10内に構成されたフィルタ11(良品のフィルタ11)に対して、周波数を各周波数f1〜f4に設定した試験信号S1を供給したときに測定部3から出力される測定データD1に基づいて決定されている。具体的には、良否判別用データD2は、図2に示すように、周波数f1,f4の試験信号S1を供給したときに良品のフィルタ11から出力される出力信号S2のレベルが含まれる範囲を示す下限値Daおよび上限値Dbと、周波数f2,f3の試験信号S1を供給したときに良品のフィルタ11から出力される出力信号S2のレベルが含まれる範囲を示す下限値Dcおよび上限値Ddとで構成されている。また、記憶部5は、制御部4による検査処理の結果などを一時的に記憶する。
【0017】
出力部6は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)を有する表示装置で構成されて、制御部4が実行した検査処理の検査結果を含む表示データD3を入力して表示する。なお、出力部6は、表示装置に代えて、印字装置や、検査結果を外部装置に出力するための出力インターフェース回路で構成することもできる。
【0018】
次に、基板検査装置1による基板10に形成されたフィルタ11に対する検査動作について、図面を参照して説明する。
【0019】
まず、図1に示すように、フィルタ11の一端に出力プローブ7を接続し、フィルタ11の他端に入力プローブ8を接続する。
【0020】
続いて、制御部4は、検査処理を実行する。この検査処理では、最初に、制御部4は、試験信号供給部2を制御して、4つの周波数f1〜f4のうちの1つの周波数(例えばf1)の試験信号S1を生成させる。これにより、フィルタ11の一端には出力プローブ7を介して試験信号S1が供給され、フィルタ11の他端から測定部3には入力プローブ8を介して出力信号S2が出力される。測定部3は、この出力信号S2を入力して測定データD1に変換して制御部4に出力する。次いで、制御部4は、測定データD1を入力して、周波数f1に対応させて測定データD1を記憶部5に記憶させる。なお、以下では、周波数f1に対応させて記憶部5に記憶させた測定データD1については、「測定データD11」ともいう。
【0021】
続いて、制御部4は、試験信号供給部2を制御して、周波数がf2,f3,f4の試験信号S1をフィルタ11に順次供給させつつ、各周波数f2,f3,f4のときの測定データD1を各周波数f2,f3,f4に対応させて記憶部5にそれぞれ記憶させる。なお、以下では、周波数f2,f3,f4に対応させて記憶部5に記憶させた測定データD1については、それぞれ「測定データD12」、「測定データD13」、「測定データD14」ともいう。
【0022】
続いて、制御部4は、各周波数f1,f2,f3,f4での各測定データD1(D11,D12,D13,D14)と良否判別用データD2とを記憶部5から順次読み出して比較することにより、各周波数f1,f2,f3,f4における測定データD1の良否を判別する。具体的には、制御部4は、周波数f1,f4の各測定データD11,D14については、記憶部5から読み出した周波数f1,f4に対応する良否判別用データD2である下限値Daおよび上限値Dbと、測定データD11,D14とを比較し、測定データD11,D14が下限値Da以上で、かつ上限値Db以下のときに、測定データD11,D14が良であると判別する。他方、測定データD11,D14が下限値Da未満のとき、または上限値Dbを超えているときには、測定データD11,D14が不良であると判別する。また、制御部4は、各周波数f1,f4での判別結果を各周波数f1,f4に対応させて記憶部5に記憶させる。
【0023】
また、制御部4は、周波数f2,f3の各測定データD12,D13については、記憶部5から読み出した周波数f2,f3に対応する良否判別用データD2である下限値Dcおよび上限値Ddと、測定データD12,D13とを比較し、測定データD12,D13が下限値Dc以上で、かつ上限値Dd以下のときに、測定データD12,D13が良であると判別する。他方、測定データD12,D13が下限値Dc未満のとき、または上限値Ddを超えているときには、測定データD12,D13が不良であると判別する。また、制御部4は、各周波数f2,f3での判別結果を各周波数f2,f3に対応させて記憶部5に記憶させる。
【0024】
一例を挙げて具体的に説明すると、各測定データD11〜D14と良否判別用データD2(下限値Daおよび上限値Dbと、下限値Dcおよび上限値Dd)との関係が図2に示す状態のときには、制御部4は、測定データD11については下限値Da以上で、上限値Db以下の良品となる範囲内に含まれ、同様にして測定データD13については下限値Dc以上で、上限値Dd以下の良品となる範囲内に含まれているため、両測定データD11,D13は共に良と判別する。他方、制御部4は、測定データD12については下限値Dc未満となって良品の範囲内から外れ、測定データD14については上限値Dbを超えて良品の範囲内から外れているため、両測定データD12,D14は共に不良と判別する。したがって、制御部4は、各周波数f1,f2,f3,f4での判別結果(「良」、「不良」、「良」、「不良」)を各周波数f1,f2,f3,f4に対応させて記憶部5に記憶させる。
【0025】
最後に、制御部4は、各周波数f1,f2,f3,f4での判別結果を記憶部5から読み出して、表示データD3として出力部6に出力し、この判別結果をフィルタ11に対する検査結果として出力部6に表示させる。これにより、検査処理が完了する。
【0026】
この場合、作業者は、出力部6に表示されている検査結果に基づき、フィルタ11についての伝送特性の概要を判断することができる。つまり、上記した具体例のように、各周波数f1,f2,f3,f4での判別結果が「良」、「不良」、「良」、「不良」となる検査結果は、図2において実線で示すように、検査を実施したフィルタ11の伝送特性が良品の伝送特性(破線で示す特性)に対して高域側にシフトしているときに得られる場合が多い。このため、このような検査結果となったときには、作業者は、検査を実施したフィルタ11が、良品のフィルタ11に対して高域側にシフトした伝送特性を備えているものであると判断することができる。
【0027】
また、図示はしないが、測定データD11については上限値Dbを超え、測定データD12については下限値Dc以上で、上限値Dd以下の範囲内に含まれ、測定データD13については下限値Dc未満となり、測定データD14については下限値Da以上で、上限値Db以下の範囲内に含まれることにより、各周波数f1,f2,f3,f4での判別結果が、「不良」、「良」、「不良」、「良」となる検査結果は、検査を実施したフィルタ11の伝送特性が良品の伝送特性に対して低域側にシフトしているときに得られる場合が多い。このため、このような検査結果となったときには、作業者は、検査を実施したフィルタ11が、良品のフィルタ11に対して低域側にシフトした伝送特性を備えているものであると判断することができる。
【0028】
また、図3に示すように、各周波数f1,f2,f3,f4での判別結果が、測定データD11,D14については共に下限値Da以上で、上限値Db以下の範囲内に含まれ、測定データD12,D13については共に下限値Dc未満となって、「良」、「不良」、「不良」、「良」となる検査結果のときには、フィルタ11は、図3において実線で示す伝送特性、つまり、各遷移域22,24は良品の伝送特性(破線で示す特性)とほぼ同じ周波数であり、かつ減衰域21,25は十分な減衰量を確保できているが、通過域23の利得が不十分であると判断することができる。
【0029】
また、図示はしないが、各周波数f1,f2,f3,f4での判別結果が、逆に、測定データD11,D14については共に上限値Dbを超え、測定データD12,D13については共に下限値Dc以上で、上限値Dd以下の範囲内に含まれて、「不良」、「良」、「良」、「不良」となる検査結果のときには、フィルタ11は、各遷移域22,24は良品とほぼ同じ周波数であり、かつ通過域23は十分な利得を確保できているが、減衰域21,25の減衰量が不十分であると判断することができる。
【0030】
また、図4に示すように、各周波数f1,f3,f4での判別結果は良であるが、周波数f2での判別結果が、測定データD12が下限値Dc未満となって不良となる検査結果のときには、フィルタ11は、同図において実線で示す伝送特性、つまり、通過域23は十分な利得を確保され、減衰域21,25の減衰量も十分であり、かつ高域側の遷移域24は良品の伝送特性(破線で示す特性)とほぼ同じ周波数域であるが、低域側の遷移域22が良品のものと比較して高域側にシフトした伝送特性(つまり通過域23が低域側で狭い伝送特性)を備えていると判断することができる。また、図示はしないが、各周波数f2,f3,f4での判別結果は良であるが、周波数f1での判別結果が、測定データD11が上限値Dbを超えて不良となる検査結果のときには、フィルタ11は、通過域23は十分な利得を確保され、減衰域25の減衰量も十分であり、かつ高域側の遷移域24は良品とほぼ同じ周波数域であるが、低域側の遷移域22が良品のものと比較して低域側にシフトした伝送特性(つまり通過域23が低域側で広い伝送特性)を備えていると判断することができる。
【0031】
このように、この基板検査装置1では、フィルタ11がバンドパスフィルタのときに、試験信号供給部2が予め設定された4つの周波数f1〜f4に試験信号S1の周波数を設定してフィルタ11に供給し、試験信号S1が供給されているときにフィルタ11を通過して出力される出力信号S2のレベルを測定部3が測定し、フィルタ11について4つの周波数f1〜f4に対応して予め規定された良否判別用データD2と測定部3によって測定された各周波数f1〜f4における出力信号S2の測定データD11〜D14とを制御部4が比較してフィルタ11の良否を判別する。したがって、この基板検査装置1によれば、高価なネットワークアナライザを使用することなく検査することができるため、検査コストを大幅に低下させることができる。また、試験信号S1の周波数を4つの周波数f1〜f4に設定するだけでよいため、ネットワークアナライザを使用して所定の周波数領域で掃引した周波数信号をフィルタ11に供給する構成と比較して、極めて短時間にフィルタ11の検査を完了させることができる。
【0032】
また、この基板検査装置1によれば、フィルタ11の低域側の減衰域21における低域側の遷移域22の近傍に周波数f1を規定し、フィルタ11の通過域23における低域側の遷移域22の近傍に周波数f2を規定し、フィルタ11の通過域23における高域側の遷移域24の近傍に周波数f3を規定し、フィルタ11の高域側の減衰域25における高域側の遷移域24の近傍に周波数f4を規定したことにより、各減衰域21,25における減衰量の良否判別、および通過域23における利得の良否判別だけでなく、周波数域上における各遷移域22,24(さらには遷移域に含まれているカットオフ周波数)の位置の良否判別(言い換えれば、通過域24のバンド幅の良否判別)を行うことができる。したがって、検査時間を短時間に維持しつつ、フィルタ11の伝送特性をより正確に検査することができる。
【0033】
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、基板10に形成されるフィルタ11としてバンドパスフィルタ(BPF)を例に挙げて説明したが、基板検査装置1で検査できるフィルタはBPFに限定されるものではなく、例えば、図5に示すような伝送特性を示すバンドエリミネーションフィルタ(BEF)や、図6に示すような伝送特性を示す高域周波数通過型フィルタ(HPF)や、図7に示すような伝送特性を示す低域周波数通過型フィルタ(LPF)についても検査できるのは勿論である。
【0034】
この場合、バンドエリミネーションフィルタについては、図5に示すように、試験信号S1用の周波数f1,f4を各通過域31,35に規定すると共に、周波数f2,f3を減衰域33に規定することにより、高価なネットワークアナライザを使用することなく、フィルタの検査、具体的には、各通過域31,35における利得の良否判別、減衰域33における減衰量の良否判別、および周波数域上における各遷移域32,34(さらには遷移域32,34に含まれているカットオフ周波数)の位置の良否判別を低コストで、しかも短時間で完了させることができる。
【0035】
また、高域周波数通過型フィルタについては、図6に示すように、試験信号S1用の周波数f1を減衰域21に規定すると共に、周波数f2を通過域23に規定することにより、また低域周波数通過型フィルタについては、図7に示すように、試験信号S1用の周波数f1を通過域23に規定すると共に、周波数f2を減衰域25に規定することにより、高価なネットワークアナライザを使用することなく、各フィルタの検査、具体的には、通過域23における利得の良否判別、減衰域21,25における減衰量の良否判別、および周波数域上における各遷移域22,24(さらには遷移域22,24に含まれているカットオフ周波数)の位置の良否判別を低コストで、しかも短時間で完了させることができる。なお、各図において、上記のバンドパスフィルタの説明において用いた図2における要素と同等のものについては同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0036】
また、例えば、遷移域(遷移域が複数のときには各遷移域)を挟むようにして減衰域および通過域における遷移域の近傍に試験信号S1用の周波数を一対設定することにより、遷移域の周波数域上での位置についても良否を判断し得るようにした例について説明したが、例えば、減衰域(複数のときには各減衰域)および通過域(複数のときには各通過域)にそれぞれ1つずつ試験信号S1の周波数(各領域内での周波数は任意でよい)を設定する構成を採用することもできる。具体的に図2を参照して説明すると、通過域23に規定した2つの周波数f2,f3のうちのいずれか一方の周波数、および各減衰域21,25に規定した周波数f1,f4の3つの周波数を試験信号S1用の周波数として規定する構成を採用することができる。この構成を採用することにより、遷移域22,24の周波数域上での位置についての良否の判別はできない場合が生じるものの、出力部6に表示されるフィルタ11に対する検査結果に基づき、各減衰域21,25における減衰量の良否、および通過域23における利得の良否を判断することができ、また設定周波数が1つ削減された分だけ、より短時間に、フィルタ11の良否の検査を実施することができる。
【0037】
また、測定部3から出力される出力信号S2のレベルと比較する基準レベルとして、図2〜図7に示すように、例えば、下限値および上限値(例えば、下限値Daおよび上限値Db)で規定される範囲(良と判断するレベルの範囲)を規定したが、フィルタとしては、通常、減衰域では所望の減衰量以上の減衰量が確保できればよく、また通過域では所望の利得以上の利得が確保できれば、良品とされる。このため、減衰域については上限値を、通過域については下限値をそれぞれ基準レベルとして規定することができる。この構成を採用することにより、判別に際して実施する比較演算を半分に削減することができ、検査に要する時間をより短時間化できる。
【0038】
また、フィルタ11が図2に示す伝送特性を有するバンドパスフィルタのときには、同図に示すように、低域側および高域側の2つの減衰域21,25に対する基準レベル(下限値Daおよび上限値Db)を共通にし、また図5に示す伝送特性を有するバンドエリミネーションフィルタのときには、同図に示すように、低域側および高域側の2つの通過域31,35に対する基準レベル(下限値Dcおよび上限値Dd)を共通にする例について上記したが、各減衰域21,25に対する基準レベルや、各通過域31,35に対する基準レベルを相違させてもよいのは勿論である。また、基板10の内部に形成されたフィルタ11を例に挙げて説明したが、基板10の表面に実装された電子部品によって基板10の表面上に構成されたフィルタや、基板10に実装された単体部品としてのフィルタについても基板検査装置1で検査することができる。また、試験信号S1の周波数として規定する周波数の数を可能な限り少なくして、検査時間を最小にすべく、フィルタ11がバンドパスフィルタおよびバンドエリミネーションフィルタのときには、規定する周波数を4つまたは3つにし、高域周波数通過型フィルタおよび低域周波数通過型フィルタのときには規定する周波数を2つにした構成を例に挙げたが、遷移域の数の多いフィルタのときには、この遷移域の数に応じて規定する周波数の数を増加させてもよい。
【0039】
さらには、フィルタ以外の検査対象体に対しても、基板検査装置1を使用して検査できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】基板検査装置1のブロック図である。
【図2】フィルタ11(BPF)の伝送特性とそれに対する基準レベルとの関係を示す説明図である。
【図3】フィルタ11(BPF)の他の伝送特性とそれに対する基準レベルとの関係を示す説明図である。
【図4】フィルタ11(BPF)の他の伝送特性とそれに対する基準レベルとの関係を示す説明図である。
【図5】フィルタ11(BEF)の伝送特性とそれに対する基準レベルとの関係を示す説明図である。
【図6】フィルタ11(HPF)の伝送特性とそれに対する基準レベルとの関係を示す説明図である。
【図7】フィルタ11(LPF)の伝送特性とそれに対する基準レベルとの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 基板検査装置
2 試験信号供給部
3 測定部
4 制御部
5 記憶部
10 基板
11 フィルタ
D1 測定データ
D2 良否判別用データ
f1,f2,f3,f4 周波数
S1 試験信号
S2 出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装または形成された検査対象体について予め規定された複数の周波数に試験信号の周波数を設定して当該検査対象体に供給する試験信号供給部と、
前記試験信号が供給されているときに前記検査対象体を通過して出力される出力信号のレベルを測定する測定部と、
前記検査対象体について前記複数の周波数に対応して予め規定された基準レベルと前記測定部によって測定された当該各周波数における前記出力信号の各レベルとを比較して前記検査対象体の良否を判別する判別部とを備えている基板検査装置。
【請求項2】
前記検査対象体は、フィルタであり、
前記試験信号供給部は、前記フィルタの通過域における遷移域の近傍に設定された1つの周波数、および前記フィルタの減衰域における当該遷移域の近傍に設定された1つの周波数の前記試験信号を供給する請求項1記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記検査対象体は、フィルタであり、
前記試験信号供給部は、前記フィルタの通過域および減衰域にそれぞれ1つずつ設定された周波数の前記試験信号を供給する請求項1記載の基板検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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