説明

基板温度測定方法とその装置及びプロセス制御方法とそのシステム

【課題】基板に紫外光及びオゾン含有ガスが供されるプロセスにおいて基板の表面温度及びその変化をリアルタイムで把握する。
【解決手段】プロセス制御システム1は、基板10に対してオゾン含有ガスが供されると共に紫外光が照射されるオゾン処理炉2と、これから排出されたオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき基板10の温度を検出するオゾン濃度測定部3を備える。基板10に紫外光及びオゾン含有ガスを供するプロセスの開始前にオゾン処理炉2はオゾン含有ガスを間欠的に導入し、この導入毎にオゾン濃度測定部3によって測定されたオゾン濃度に基づきプロセス開始前の基板10の温度を検出する。前記測定されたオゾン濃度に基づきオゾン処理炉2に供されるオゾンガスの流量または圧力、前記紫外光の照射強度のいずれかを調整することで基板10の温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は紫外光とオゾン含有ガスを用いて任意の基板表面の酸化や改質を行なうプロセスにおいて、プロセス炉の下流側の排気ガスのオゾン分圧をプロセス中にリアルタイムでモニターすることにより基板表面の温度を把握し、制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は波長が短く大きなエネルギーを有しているため、化学合成、微細加工、基板の改質(例えば基板表面の洗浄やアモルファスシリコンの結晶化)等、様々な分野で用いられている。特にオゾンガス雰囲気下で処理基板表面に向けて紫外線を照射する方法(以下、UV+O3)法は、紫外線を照射することでオゾンよりも様々な有機ガス分子、無機ガス分子との反応性が高く酸化力が大きい励起状態の酸素原子を気相で生成、処理基板表面に供給すること及び紫外光を基板表面に到達させることで基板表面を活性化させる。特に、紫外光を吸収する材料の処理である場合(波長250nm付近の紫外光は大部分の材料が程度の差こそあれ吸収する)。例えば、シリコン(プラスチックやガラス基板上にシリコン薄膜を堆積した構造なども含む)など、基板表面部を除く基板のバルクの温度(例えば基板の裏側に接触させた熱電対で計測した温度に相当する)が低温であっても、基板表面のみが加熱活性化されるので効率よく基板表面の酸化、有機物の除去などの改質が可能となる(特許文献1〜3等参照)。
【0003】
オゾン雰囲気中で処理基板に向け紫外光照射を行なうプロセスにおいては、処理する基板材料によっては、基板が紫外線を浴びることで損傷を受けて特性が劣化する場合がある。
【0004】
例えば特許文献1ではITOやSnO等の透明電極用の金属酸化膜にUV+O3処理(洗浄)を行なう場合、特定のプロセス条件(オゾン濃度と紫外光照射条件)では、金属酸化膜が紫外線を浴びることで膜中表面の金属と酸素との結合が切れ、膜の透過性が失われると報告されている。また、紫外光照度やオゾン雰囲気圧力等のプロセス条件の最適化で問題は低減されるとも報告されている。
【0005】
但し、基板により紫外光の反射率、吸収率、透過率が異なるため、ダメージを与えず最大の効果を実現できる最適なプロセス条件(紫外光強度やオゾン濃度と圧力、オゾンガス流量)は処理基板により変わることになる。例えば、同じオゾンガス供給条件(オゾン濃度、処理圧力、オゾンガス流量)で比較すると、照射する紫外光の強度は大きければ大きいほど基板表面に供給できる励起状態酸素原子の数及び基板表面に到達する光子の数(基板表面の温度)は上昇するため、処理の効果は増大すると予想されるが、基板へのダメージも増大する。一方、オゾン圧力(オゾン分圧)を高めると、紫外線の一部は基板に到達する前に気相で吸収されるため、基板表面に到達する紫外線は減少するため、基板への光ダメージは減少するが、一般に表面に達する励起状態酸素原子の数は減少する。なぜなら、基板から離れた場所で励起状態酸素原子が多数発生するが、この酸素原子はオゾン雰囲気での寿命が極めて短いため、基板表面に到達できないからである。
【特許文献1】特開2000−178777号公報
【特許文献2】特開平11−297781号公報
【特許文献3】特開2005−315827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板に必要以上の紫外線(熱)ダメージが入っていないかを評価するための指標として、基板の最表面の局所的な温度がある。シリコンのような紫外光の吸収が大きい材料では表面から10nm程度の薄い領域で紫外線の大部分が吸収される(オゾンの励起に用いる波長250nmの紫外光に対し、石英ガラスなどの一部の材料を除くと大部分の材料は程度の差こそあれ吸収を有する)ため、表面温度は局所的に上昇していると予想されるが、領域が局所的であるため熱電対などの一般的な接触型の温度センサーでは正確な温度の計測は不可能である。
【0007】
紫外光励起オゾン処理プロセス中の処理基板表面の温度(あるいはそれに関連した物理量)がリアルタイムでモニターできれば、プロセス中の基板への照射負荷が許容される範囲内であるかを知ることができる。基板の耐熱温度以下でできる限り高い温度で一定に保持できるプロセス条件(紫外光照度、プロセス圧力、オゾン濃度、オゾンガス流量)とすることで、低ダメージと処理効果の最大化が両立できる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、前記課題を解決するための基板温度測定方法とその装置及びプロセス制御方法とそのシステムは基板に紫外光及びオゾン含有ガスが供されるプロセスにおいて前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を検出している。
【0009】
すなわち、請求項1の基板温度測定方法は、オゾン含有ガスを基板に供給すると共に前記基板の表面に紫外光を照射するプロセスにおける前記基板の温度測定方法であって、前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を測定する。
【0010】
請求項2の基板温度測定装置は、オゾン含有ガスが供給すると共に紫外光が照射される炉内に格納された基板の温度測定装置であって、前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を検出する測定部を備える。
【0011】
請求項3のプロセス制御方法は、オゾン含有ガスを基板に供給すると共に前記基板の表面に紫外光を照射するプロセス制御方法において、前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を検出する工程を有する。
【0012】
請求項4のプロセス制御方法は、請求項3のプロセス制御方法において、基板に紫外光及びオゾン含有ガスを供するプロセスの開始前に前記基板に対してオゾン含有ガスを間欠的に導入し、この導入毎に前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づきプロセス開始前の基板の温度を検出する。
【0013】
請求項5のプロセス制御方法は、請求項3また4のプロセス制御方法において、前記測定されたオゾン濃度に基づき前記基板に供されるオゾンガスの流量または圧力、前記紫外光の照射強度のいずれかを調整することで前記基板の温度を制御する。
【0014】
請求項6のプロセス制御方法は、請求項3から5のいずれかのプロセス制御方法において、前記基板に紫外光を照射する光源は間欠的に照射できる光源を用い、前記測定されたオゾン濃度が一定となるように紫外光の繰り返し周波数、繰り返しパルス間の時間間隔を前記光源によって調整することで前記基板の温度を制御する。
【0015】
請求項7のプロセス制御システムは、基板に対してオゾン含有ガスが供されると共に紫外光が照射される炉と、この炉から排出されたオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を検出する測定部を備える。
【0016】
請求項8のプロセス制御システムは、請求項7のプロセス制御システムにおいて、基板に紫外光及びオゾン含有ガスを供するプロセスの開始前に前記炉はオゾン含有ガスを間欠的に導入し、この導入毎に前記測定部によって測定された前記オゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づきプロセス開始前の基板の温度を検出する。
【0017】
請求項9のプロセス制御システムは、請求項7または8のプロセス制御システムにおいて、前記測定部によって測定されたオゾン濃度に基づき前記炉に供されるオゾンガスの流量または圧力、前記紫外光の照射強度のいずれかを調整することで前記基板の温度を制御する。
【0018】
請求項10のプロセス制御システムは、請求項7から9のいずれかのプロセス制御システムにおいて、前記基板に紫外光を照射する光源は間欠的に照射できる光源であり、この光源は前記測定部で測定されたオゾン濃度が一定となるように紫外光の繰り返し周波数、繰り返しパルス間の時間間隔を調整することで前記基板の温度を制御する。
【発明の効果】
【0019】
したがって、以上の発明によれば基板に紫外光及びオゾン含有ガスが供されるプロセスにおいて基板の表面温度及びその変化をリアルタイムで把握できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は発明の実施形態に係るプロセス制御システムの概略構成図である。
【0021】
本実施形態のプロセス制御システム1は、基板表面を酸化、改質するためのプロセス制御システムであって、オゾン処理炉2とオゾン濃度測定部3とを備える。
【0022】
オゾン処理炉2はオゾン含有ガスの雰囲気のもとで基板10の表面に対して光照射窓4を介して光源5から紫外光を照射する。光源5としては例えば高圧水銀ランプが挙げられる。光透過窓4はオゾン処理炉2の天井部に設置されている。光透過窓4は石英ガラスに例示される紫外線を透過させる材料からなる。オゾン処理炉2にはオゾン含有ガスを導入するためのガス導入管6とオゾン含有ガスを排出するためのガス排出管7が接続されている。ガス排気管7の一端にはガス流を制御するためのバルブV1、ガスを吸引する排気ポンプ8が接続されている。オゾン処理炉2内に格納される基板10はステージ9上の保持されている。
【0023】
プロセス制御システム1では基板10の温度を把握するための指標として基板10に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度を適用している。そして、前記オゾン濃度の具体的な指標としてオゾン処理炉2の下流側のオゾン含有ガスをサンプリングして採り出し、このガスを含む一定のオゾンガス流路長(図1に記載の長さL)を有する空間に紫外光を照射したときの紫外光の透過度を用いている。後述のオゾン濃度測定部3は基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき基板10の温度を検出する基板温度測定装置としての役割を担う。
【0024】
オゾン濃度測定部3はオゾン処理炉2の下流側に設置されている。すなわち、オゾン濃度測定部3はオゾン処理炉2から排出されたガスの一部を測定セル部11内にサンプリングする。そして、測定セル部11に光源12の紫外光(代表的には波長254nmの発光がある低圧水銀ランプの光)を照射したときの測定セル部11内における紫外光の透過率から測定セル部11の光路(L)内のオゾン数密度を評価する。測定セル部11はガス排気管7と並列に設置されている。測定セル部11の上流側及び下流側の端部には光照射窓13が設置されている。また、測定セル部11の上流側には光源12が配置されている。一方、測定セル部11の下流側には光検出部14及び信号処理部15が配置されている。信号処理部15は、光検出部14で検出した紫外光透過量を増幅し、測定セル部11を透過した紫外光の割合(透過率)を計算する。また、測定セル部11は内圧を検出する圧力計16が備えており、必要に応じオゾン濃度に変換できるようになっている。前記内圧からオゾン濃度への変換は例えば特開2003−262627号公報に示された演算によって行なえる。
【0025】
図2は紫外光照射直後の下流側の測定セル部の紫外光透過度の時間的変化を示す。
【0026】
この特性図はオゾン処理炉2内に基板10として8インチのシリコンウェハを設置し、一定の流量(150sccm)で一定の圧力雰囲気のオゾンガスに紫外光を導入(紫外ランプON)したときに下流側のオゾン濃度測定部3の紫外光透過率の時間変化をリアルタイムに測定した結果に基づく。前記オゾンガスは明電舎製のオゾン発生装置(MPOG−SM1C1)で製造されたオゾン濃度90vol%以上のオゾンガスを用いた。オゾン処理炉2における紫外光オゾン処理に供する紫外光の光源5はウシオ電機製の高圧水銀ランプ(UVX−02528S1APA02)を用いた。また、オゾン濃度測定部3において、光源12には浜松ホトニクス製の低圧水銀ランプ(型番L937−04)を用いた。光検出部14及び信号処理部15の機能を有する計装機器にはウシオ電機製の紫外線積算光量計(UIT−150)を用いた。
【0027】
図2によると、紫外光の照射前はオゾン分子の分圧が高ければ高いほど(50Pa→110Pa→220Pa)紫外光の透過度が減少しており、ランベルト・ベアの法則を反映しており、オゾン濃度測定部3はオゾン濃度計として機能しているのがわかる。一方、紫外光を照射後は下流側のオゾン濃度が減衰するが、濃度(紫外光透過度)が安定するまで30秒から200秒かかっているのがわかる。
【0028】
図2の実験ではオゾンガス流がオゾン処理炉2からこの下流側のオゾン濃度計測部3まで到達する時間は5秒以内であること、また、光によるオゾン分解反応は瞬時に起こる。したがって、このオゾン濃度のゆっくりとした(5秒以上遅れる時定数の長い)時間変化は気相(ガス層)でのオゾンの紫外光による分解を反映しているのではなく、基板表面が紫外光を吸収することによる温度上昇、それに伴う表面近傍を流れるオゾン分子の熱分解を反映していると予想される。
【0029】
実際、図3に示すように、図2の実験と同プロセス条件で、基板10としてイオン注入したシリコンウェハを処理した際のシート抵抗の変化からオゾン雰囲気圧力220Paでは紫外光の照射から180秒後も温度は300℃前後と完全には上がりきっていない。一方、50Paの圧力ではすでに飽和温度である400℃に近いことがわかった。すなわち、下流側のオゾン濃度が高い(あるいはオゾン濃度が変化している)うちは基板表面温度が十分に上昇していない(安定していない)といえる。
【0030】
換言すると、オゾン分子の寿命は300℃以上ではガス温度に強く依存すること(100℃の温度上昇で約1桁半減期が短くなること)を利用し(Nishiguchi et al.,JJAP 44 2005(118))、下流側のオゾン濃度の(時定数の長い)時間変化から基板表面の温度(の時間的変化)がリアルタイムで推定できる。
【0031】
図4はオゾンガスをオゾン処理炉2へ導入するタイミングを一定の強度の紫外光照射の開始(紫外ランプON)のタイミングに対しずらす時間を変化させたときの下流側での測定セル部11での紫外光透過度を示す。一定のオゾンガス流量、圧力をオゾン処理炉2に導入し安定した後に紫外光を照射した場合、図2にも示したように、圧力が高ければ高いほど基板10の表面温度が安定するのに30秒以上の時間かかる。一方、オゾンガスの導入を紫外光照射から10秒後とした場合(照射前の処理炉でのオゾン分圧は10Pa以下)、さらに90秒後とした場合、オゾン含有ガス導入後も、オゾン処理炉2の下流側のオゾン濃度は低いままである(オゾンガス導入直後も紫外光透過度が低下しない)。これは紫外光をオゾン分圧の低い環境下で基板10に向けて事前に10秒あるいは90秒照射しておくことで基板10温度をオゾン導入前からオゾンの寿命が短くなる温度(例えば300℃以上の)高い温度に保持できたことを意味している。気相でオゾンガスに吸収されずダイレクトに基板10に紫外光が届くので加熱効果が大きいと思われる。
【0032】
一方、図5は紫外光照射(紫外ランプON)、オゾンガス導入後の安定した後の測定セル部11の紫外光透過度を示す。処理に供される基板10がシリコンウェハの場合、シリコンは可視光も吸収するので、可視光をカットするフィルターにより(光のスペクトル中の可視成分を遮断することにより)、若干、基板10の表面温度が低下させることができることが確認できる。また、紫外光の強度により前記表面温度が敏感に反応しているのも分かる。同じ表面温度で化学的反応性を優先させたい場合は、温度上昇の原因となる可視光をフィルター等でカットし、紫外光強度を高めること(あるいはそのようなスペクトルを有する光源を用いること)で実現できる。
【0033】
以上のことからプロセス条件が時間的に頻繁に変わるプロセス(例えば原子層状成長法(ALD)のようにガスが間欠的に照射される場合や、光ALD法のように紫外光が間欠的に照射される場合、また光源としてパルス的に発振するフラッシュランプやレーザ光を用いる場合)でも、オゾン処理炉2の下流側(オゾン濃度測定部3)で検出されるオゾン濃度変化(ガスが到達する時間に比べ時定数の長い成分)を一定にするようプロセス条件(オゾンガス流量や処理圧力)を時間的に適宜制御することで、基板10表面の温度を所定の範囲に収めることができる。これにより基板10に必要以上の光、熱ダメージが導入されることを防ぐことができる。
【0034】
以上説明した実験例を総括すると以下の知見となる。
【0035】
気相でのオゾンの光吸収による分解と基板に紫外光が照射されることによる基板の温度上昇がもたらすオゾンの熱分解反応は、照射する紫外光強度を変化させたときに下流側で測定されるオゾン濃度の変化の時間応答で区別できる。時間的に瞬時(ガス輸送時間のみ)に反応するのが、気相でのオゾンの光吸収による分解、それより時定数の長いゆるやかな濃度変化は基板表面が加熱されることによるオゾンガスの熱分解に起因するものである。そこで、基板が供されたオゾン処理系の下流側でのオゾン濃度の時定数が長い成分を一定となるように制御することで、前記基板の表面の温度を一定とすることができる。
【0036】
また、オゾン濃度測定部3のようにオゾン分圧をオゾン処理炉2の下流側で常時監視することによりプロセス前後の基板10の最表面の温度変化を測定セル部11へのガスの到達時間の遅れのみでリアルタイムに把握できる。これによりプロセス中の基板10へのダメージ軽減、プロセス中の意図的な基板10の表面温度の制御が可能となる。
【0037】
図6は発明の第二の実施形態に係る紫外光照射とオゾンガス導入のタイムシーケンスを示す。本実施形態では基板10の予備加熱及び紫外光の照射タイミングの最適化を図っている。
【0038】
すなわち、プロセス制御システム1において、紫外光を照射するタイミング以降に最短の時間でオゾン濃度が安定するようなオゾンガスを導入するタイミングと紫外光を照射するタイミングの時間差を調整している。
【0039】
予め処理する基板10に対し、処理効果が期待でき且つ基板10に対する熱ダメージが許容範囲となる条件(オゾン処理炉2の下流側のオゾン濃度の許容範囲、前記下流側の測定セル部11での紫外透過度の許容範囲)を決定する。最初に紫外光を照射し、その後、一定周期でオゾン含有ガスをパルス的に導入する。導入に応じ下流側の測定セル部11での紫外光透過度が低下するが、基板10の表面温度が十分に上がっていないうちは紫外光透過度が許容下限より低くなる時間帯が出現する。但し、オゾンガスをパルス的に導入すること繰り返すうちに基板10の表面が紫外光で温められるため表面近傍でのオゾンの熱分解が激しくなり紫外光透過度は許容範囲の下限を超えてくる。このタイミングでオゾンガスの連続供給を開始し、プロセスの開始とする。
【0040】
すなわち、オゾン含有ガスの導入前に基板10の表面温度を知るために基板10に紫外光を間欠的に入れることで、基板10の表面温度を逐次確かめながら最短時間で求める温度まで上げることができる。また、基板10の表面温度を所定の温度(範囲)にプロセス初期から設定でき、プロセス中でも下流側のオゾン濃度をモニターすることで安定させることができるので、処理時間も最短にでき、結果、オゾン含有ガスの無駄な消費や紫外光ダメージの過剰な導入もさけることができる。そして、プロセス中の基板10の温度が下がりすぎた場合(オゾン処理炉2の下流側のオゾン濃度が許容範囲より高くなった場合)は紫外光強度を上げる、オゾン圧力を下げる、オゾンガス流量を下げることで、基板10の温度を上昇させることができる。逆に、プロセス中の基板10の温度が上昇すぎた場合(オゾン処理炉2の下流側のオゾン濃度が許容範囲より低くなった場合)は、紫外光強度を下げること、オゾン圧力を高めること、オゾンガス流量を増大させることで、基板温度が下がることができる。
【0041】
すなわち、以上の方法で基板表面温度を最短の時間で任意の望む温度に設定でき、その後のプロセス中もオゾン処理系の下流側のオゾン濃度を一定にするようにプロセスにフィードバックをかけることで基板表面温度を一定に維持できる。その結果、任意の基板に熱ダメージを最小で済む処理が実現する。
【0042】
図7は図6のタイムチャートでシリコンを熱酸化した場合の製膜速度を示す。オゾンガス導入後に紫外光を照射する場合に比べ、10秒、30秒程度の短い処理時間で紫外光オゾン処理の効果をあげることができるが確認された。
【0043】
以上説明したように発明の実施形態に係るプロセス制御システム1によれば、オゾン含有雰囲気に紫外光を基板10の表面に向けて照射し、任意の基板10の表面の改質、酸化、洗浄を行なうプロセスにおいて、オゾン処理炉2の下流側でサンプリングした任意のセル長を有する測定セル部11へ紫外光を照射したときの紫外光の透過度の時間的挙動をモニターすることで、基板10の表面の温度(の変化)をリアルタイムで知ることができる。処理する基板10の材質、物性(特に紫外光反射率、屈折率や光吸収係数)によって表面の温度が決まるため、熱電対等の通常用いられる温度センサーでの温度の評価は困難であり、また紫外光系内に導入され表面で反射散乱するため放射温度計等の表面から輻射信号から温度を推定することも困難であるが、オゾン処理炉2の下流側のオゾン濃度が敏感であることから、前記下流側のオゾン濃度が正確な基板の温度モニターになる。
【0044】
前記リアルタイムの変化からオゾンガス流量、処理圧力、紫外光照射強度等のプロセス条件を制御することで、基板10の表面温度を一定に制御できるので、基板10の表面に必要以上の紫外線、熱負荷をかけないようにすることができる。すなわち、プロセス中の排気ガス中のオゾン濃度が一定となるように処理中のオゾンガス流量、オゾンガス圧力、紫外線強度等のプロセスパラメータをリアルタイムで制御できる。
【0045】
また、オゾン処理炉2の光源5は時間的に間欠的に照射できる光源である場合(例えばフラッシュランプ、パルス発振レーザ光をオゾンガス励起用の光源として用いる場合)、オゾン処理炉2の下流側(オゾン濃度測定部3)のオゾン濃度が一定となるように光の繰り返し周波数、繰り返しパルス間の時間間隔を調整すれば、基板10の表面温度をリアルタイムで一定(所定の温度)に制御できる。
【0046】
そして、プロセス制御システム1では、処理プロセス(オゾン含有ガス導入)前に(前のオゾン分圧が低い環境下で)紫外光を基板10に前もって照射することで、オゾン含有ガス導入後に紫外光を照射する場合に比べ、短時間で基板10の温度を望む温度に加熱することができる。このとき、オゾンガスを間欠的にオゾン処理炉2に導入することで、基板10の表面温度をその都度知ることができる。すなわち、基板10の予備加熱中の温度変化をモニターすることができ、プロセス開始前に基板10の表面温度が所定温度に到達しているか確認できる。
【0047】
すなわち、プロセス開始から基板10の温度が安定した温度であるように、紫外光をオゾン含有ガスの導入によりも時間的に先に行なうことで、基板10をオゾン導入前に予備加熱しておけば、プロセス時間の短縮化が可能となる。この際、オゾン含有ガス導入前の処理炉のオゾン分圧は10Pa以下としておくとより確実となる。そして、オゾン含有ガスをパルス的に導入しながらオゾン処理炉2の下流側(オゾン濃度測定部3)で検出されたオゾン濃度をそのつど評価、前記検出されたオゾン濃度から基板10が所定の表面温度となったと予想されるタイミングからプロセスを開始すればよい。
【0048】
また、プロセス制御システム1では、プロセス中の基板10の温度が急激に変化していないか、表面の物性(紫外光反射特性、吸収特性)が変わっていないかをモニターできる。すなわち、プロセスの異常を検知できる。
【0049】
処理開始から終了まで基板を所定の温度に設定制御できる。プロセス中の表面温度を任意のプロファイルに制御することも可能である。
【0050】
ALD法や光ALD法など間欠的にオゾン含有ガスを導入、紫外光を照射するプロセス、ガス導入や光照射条件が時間的に刻々と変化するプロセスのなど場合においても、オゾン処理炉2の下流側のオゾン濃度変化をモニターすることで基板表面温度の変化を知ることができる(オゾン含有ガスがオゾン濃度測定部3の測定セル部11に到達するだけの時間は基板10の表面温度の情報が遅延して伝わる)。
【0051】
また、プロセス制御システム1は時間分解能が高い。特にオゾン濃度(基板の基板10の表面温度)の変化に対する追随が一秒以内であり早い。
【0052】
さらに、プロセス制御システム1ではオゾン濃度測定部3でオゾン濃度の測定に用いるガスは処理室を経由後のガスであるため、処理プロセスに影響を与えない。
【0053】
尚、プロセス制御システム1では、気相でオゾンが紫外光を吸収して光分解する成分が基板10の表面の熱でオゾンが熱分解する成分に比べて無視できるほど小さい場合(紫外光の照射後のオゾン処理炉2下流側のオゾン濃度の変化において、時定数の短い成分(光照射後ガスが到達する時間と同等の時間で変化する成分)に比べ時間的にゆっくり変化する成分が支配的である場合)、事前にプロセス条件と同じ条件(オゾンガス流量、処理圧、オゾン濃度、紫外光のみなし)で基板表面の温度と下流側のオゾン濃度の関係を取得しておき、プロセス中に基板10の表面を任意の表面温度を実現するための検量線として用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】発明の実施形態に係るプロセス制御システムの概略構成図。
【図2】紫外光照射直後の下流側の測定セル部の紫外光透過度の時間的変化。
【図3】イオン注入ウェハのシート抵抗の変化から推定した表面温度の時間的変化。
【図4】オゾン導入のタイミングと下流側の測定セル部の紫外光透過度の変化。
【図5】紫外光強度、スペクトルによる下流側の測定セル部の紫外光透過度の変化。
【図6】発明の第二の実施形態に係る紫外光照射とオゾンガス導入のタイムシーケンス。
【図7】発明の第二の実施形態に係るタイムチャートでシリコンを熱酸化した場合の製膜速度。
【符号の説明】
【0055】
1…プロセス制御システム
2…オゾン処理炉
3…オゾン濃度測定部(基板温度測定装置)、11…測定セル部、12…光源、13…光照射窓、14…光検出部、15…信号処理部、16…圧力計
V1…バルブ
8…排気ポンプ
10…基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン含有ガスを基板に供給すると共に前記基板の表面に紫外光を照射するプロセスにおける前記基板の温度測定方法であって、
前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を測定すること
を特徴とする基板温度測定方法。
【請求項2】
オゾン含有ガスが供給すると共に紫外光が照射される炉内に格納された基板の温度測定装置であって、
前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を検出する測定部を備えたこと
を特徴とする基板温度測定装置。
【請求項3】
オゾン含有ガスを基板に供給すると共に前記基板の表面に紫外光を照射するプロセス制御方法において、
前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を検出する工程を有すること
を特徴とするプロセス制御方法。
【請求項4】
基板に紫外光及びオゾン含有ガスを供するプロセスの開始前に前記基板に対してオゾン含有ガスを間欠的に導入し、この導入毎に前記基板に供された後のオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づきプロセス開始前の基板の温度を検出することを特徴とする請求項3に記載のプロセス制御方法。
【請求項5】
前記測定されたオゾン濃度に基づき前記基板に供されるオゾンガスの流量または圧力、前記紫外光の照射強度のいずれかを調整することで前記基板の温度を制御することを特徴とする請求項3また4に記載のプロセス制御方法。
【請求項6】
前記基板に紫外光を照射する光源は間欠的に照射できる光源を用い、前記測定されたオゾン濃度が一定となるように紫外光の繰り返し周波数、繰り返しパルス間の時間間隔を前記光源によって調整することで前記基板の温度を制御することを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載のプロセス制御方法。
【請求項7】
基板に対してオゾン含有ガスが供されると共に紫外光が照射される炉と、
この炉から排出されたオゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づき前記基板の温度を検出する測定部と
を備えることを特徴とするプロセス制御システム。
【請求項8】
基板に紫外光及びオゾン含有ガスを供するプロセスの開始前に前記炉はオゾン含有ガスを間欠的に導入し、この導入毎に前記測定部によって測定された前記オゾン含有ガス中のオゾン濃度に基づきプロセス開始前の基板の温度を検出することを特徴とする請求項7に記載のプロセス制御システム。
【請求項9】
前記測定部によって測定されたオゾン濃度に基づき前記炉に供されるオゾンガスの流量または圧力、前記紫外光の照射強度のいずれかを調整することで前記基板の温度を制御することを特徴とする請求項7または8に記載のプロセス制御システム。
【請求項10】
前記基板に紫外光を照射する光源は間欠的に照射できる光源であり、この光源は前記測定部で測定されたオゾン濃度が一定となるように紫外光の繰り返し周波数、繰り返しパルス間の時間間隔を調整することで前記基板の温度を制御することを特徴とする請求項7から9のいずれか1項に記載のプロセス制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−281944(P2009−281944A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135963(P2008−135963)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】