説明

基礎断熱構造

【課題】基礎断熱層に覆われてしまう基礎立上げ部の表面、或いは断熱材の内部などに、蟻道が形成されていないかを目視によって、簡単確実にチェックして蟻害を早期に除去しうる基礎断熱構造を提供する。
【解決手段】地盤から壁状に立設するとともに、建物躯体を支持する基礎立上げ部の少なくとも一方の表面に、板状断熱材が設置された基礎断熱構造において、板状断熱材は、少なくとも上下二列に分割され、左右に帯板状に設置される断熱材を上下に並設して構成され、かつ、板状断熱材は横に連続する少なくとも一列の板状断熱材が、基礎立上げ部に対して着脱可能に取り付けられることにより、基礎立上げ部の蟻道の有無を目視検査できる点検部が形成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎立上げ部に沿って形成される蟻道を、簡単かつ確実にチェックできるとともに早期にこれを排除できる基礎断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
予てから住宅を含む建築物の床部の断熱方法としては、床面に断熱材を施工する床断熱工法が一般に行なわれてきた。近年、高断熱化の要求が高まるにつれて、これに代えて、基礎の内側、或いは外側に押出法ポリスチレンフォームなどの断熱ボードを添設することにより、屋内の熱エネルギーが、床下空間を介して屋外に逃げることを防止する基礎断熱工法の採用が増加している。これは寒冷地向けのに建築物において特に有効である。
【0003】
しかしながら、床下を断熱空間にして、寒冷期でも一定以上の温度が維持される環境が形成されるようになると、従来は特別な白蟻対策は必要とされなかった寒冷地においても、白蟻の被害が発生することがある。
【0004】
さらには、基礎と断熱ボードとの隙間に蟻道が形成されたり、或いは柔らかくて暖かいために白蟻が好む断熱材の内部に穴をあけて蟻道が形成されると、断熱ボードに隠れることから発見が困難となる。そのため建物本体への食害が進行して、羽蟻が飛び交うようになって、気付いたときには手遅れという状況が多く発生し、大きな問題となっている。
【0005】
そこでこの対策として、基礎断熱に使用する断熱ボードにおける白蟻の食害を防止するために、断熱ボードを構成する押出法ポリスチレンフォームなどの製造時に、防蟻剤を配合しておく技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2002−88185−号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に断熱ボードは、高い断熱性を得るために、樹脂の発泡倍率を十分に高くしなければならない。しかし、樹脂に大量の防蟻剤を配合した場合、高い発泡倍率で発泡成形することができないという問題がある。例えば、前記特許文献1においては、発泡倍率20〜50倍程度の発泡樹脂に対して、0.01〜5%程度までしか防蟻剤が配合されていない。この程度の防蟻剤では、十分な防蟻性能を得ることができない場合がある。
【0008】
更には、発泡樹脂は、非発泡樹脂と比べて、白蟻が好んで食害を及ぼす物質である。そのため、防蟻剤の配合量が前記のように少なく抑制された発泡樹脂では、時間とともに防蟻剤の効力が低下した段階においては、却って白蟻の食害を受け易くなることもある。
【0009】
本発明は、横に連続する少なくとも一列の板状断熱材を、基礎立上げ部に着脱可能に取り付けて、基礎立上げ部の蟻道の有無を目視検査できる点検部を形成することを基本とし、断熱材に覆われてしまう基礎立上げ部の表面、或いは断熱材の内部などに、蟻道が形成されていないかを目視によって、簡単確実にチェックして蟻害を早期に除去しうる基礎断熱構造の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明では、地盤から壁状に立設するとともに、建物躯体を支持する基礎立上げ部の少なくとも一方の表面に、板状断熱材が設置された基礎断熱構造において、板状断熱材は、少なくとも上下二列に分割され、左右に帯板状に設置される断熱材を上下に並設して構成され、かつ、板状断熱材は横に連続する少なくとも一列のものが、基礎立上げ部に対して着脱可能に取り付けられることにより、基礎立上げ部の蟻道の有無を目視検査できる点検部が形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明では、少なくとも上下二列に分割され、左右に帯板状に並設された板状断熱材のうち、少なくとも横に並ぶ一列の板状断熱材が、防蟻性を有する断熱材を用いて構成され、請求項3に係る発明においては、防蟻性を有する板状断熱材が、最も下位の列に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明においては、少なくとも上下二列に分割され、左右に帯板状に並設された板状断熱材のうち、着脱可能に取り付けられる板状断熱材を除く板状断熱材が、基礎立上げ部に防蟻性を有する接着剤を用いて接着されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、前記点検部の下位の列に配置される板状断熱材の上端面、及び点検部で露呈する基礎立上げ部の表面で前記上端面奥部から、30〜150mmの高さL1の領域に連続して、防蟻性を有するシートが貼着されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明においては、防蟻性を有するシートが、点検部の下位に配される板状断熱材の上端面の前端縁から、該板状断熱材の表面に沿って、30〜150mmの幅L2で垂れ下がる垂れ部を有することを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明において、最も下位に配置される板状断熱材は、その下部が防蟻性を有するシートで覆われ、請求項8に係る発明において、板状断熱材は、その表面に外装板が一体に積層されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明においては、横一列に連続する板状断熱材を、布基礎立上げ部に対して着脱可能に取り付けているため、この板状断熱材を取り外して蟻道の有無を確認できる。従って、断熱材に覆われてしまう布基礎立上部の表面、或いは断熱材の内部などに、蟻道が形成されていないかを目視によって、簡単確実にチェックできる。そして蟻道が発見された場合は、点検部上下の断熱材の蟻道部分を除去して、蟻道を完全に撤去するとともに、その箇所に防蟻剤を散布するなど、完全な防蟻処理をすることができる。
【0017】
請求項2に係る発明のように、少なくとも横に並ぶ一列の板状断熱材を、防蟻性を有する断熱材を用いて構成すると、例え途中まで蟻道が出来ても、防蟻性を有する板状断熱材よりも上には、蟻道が延びることができない。また請求項3に係る発明のように、防蟻性を有する板状断熱材を、最も下位の列に配置すると、地盤面から立ち上がる蟻道の形成を効果的に抑制できる。
【0018】
請求項4に係る発明のように、着脱可能に取り付けられる板状断熱材を除く板状断熱材を、基礎立上げ部に防蟻性を有する接着剤を用いて接着すると、基礎立上げ部と板状断熱材との間を立ち上がる蟻道の形成を抑制できる。
【0019】
請求項5に係る発明のように、点検部下位の板状断熱材の上端面と、基礎立上げ部の表面で前記上端部奥部から一定の高さの領域とに連続して防蟻性を有するシートを貼着すると、地盤から点検部の下縁部まで蟻道が形成されても、更に上に向けは防蟻性を有するシートによって封止されるため、建築物本体に蟻害を及ぼすことがない。しかも、防蟻性を有するシートの立上げ高さL1を30〜150mmとすることから、蟻道が上に延びる隙間が完全に封止されるため、防蟻の信頼性が高い。
【0020】
請求項6に係る発明のように、点検部下位の板状断熱材の上端面の前端縁から、この板状断熱材の表面に沿って、防蟻性を有するシートが垂れ下がる垂れ部を設けると、地盤から断熱材の表面に沿って立ち上がる蟻道に対する蟻返しが形成される。そのため蟻道は、それよりも上に成長できないことから、建築物矩体に蟻害を及ぼすことがない。しかも前記垂れ部の幅L2を、30〜150mmとすることからと、完全な蟻返しが形成されるため、防蟻の信頼性が高い。
【0021】
請求項7に係る発明のように、最も下位の板状断熱材の下部を防蟻性を有するシートで覆うと、地盤から上向きに形成される蟻道の起点部分において、蟻の忌避効果が得られることから、防蟻効果が大きい。また請求項8に係る発明のように、外装板が一体に積層された板状断熱材を用いると、基礎外表面の仕上げと同時に基礎防蟻できることから、基礎の見栄えを向上できるとともに施工性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1に示すように、基礎断熱構造1は、基礎立上げ部4の一方の表面に添着された基礎断熱層5と、この基礎断熱層5部分に形成された点検部7とを含み構成される。
【0023】
前記基礎立上げ部4は、本形態では布基礎立上げ部が例示され、地盤2内に設けられたフーチング21の略中央から上にのびることにより、地盤2から壁状に立設される。前記フーチング21と基礎立上げ部4とには鉄筋を連続して埋設することにより堅牢な基礎が構成され、上部に土台22が載置されて外壁23、床24などの建物矩体3を支持している。尚基礎立上げ部4は、この他、べた基礎の立上げ部でもよい。
【0024】
前記基礎断熱層5は、前記の如く屋内の熱が、床下空間を介して屋外に逃げることを防止する基礎断熱工法に使用されるもので、板状をなし、外周に配置される基礎立上げ部4の内側表面、或いは屋外側表面に添着される。この基礎断熱層5は、少なくとも地盤2表面から基礎立上げ部4の上端部に至る全領域を覆って取り付けられる。本形態では地盤2中を更に下へのびて、前記フーチング21上面に至る迄の領域を覆う場合が例示される。
【0025】
更に基礎断熱層5は、少なくとも上下二列、本形態では上下三列に分割された板状断熱材6により構成される。この板状断熱材6は、横長の帯状をなし、各々の列において左右に連続している。各列の板状断熱材6は、取扱い性を高める為、所定の単位長さで形成された横長の断熱ボードとして構成され、基礎立上げ部4に隙間無く横に連続して添着して使用される。前記断熱ボードの長さは、例えば、450〜2100mm程度、好ましくは900〜1500mm、本形態では1200mmに形成される。450mm未満では継ぎ部が多くなるため隙間を生じ易く、逆に2100mmを超えると取扱い性が低下する。また板状断熱材6の厚みは、20〜100mm程度に形成される。更に、アルミ蒸着シートを被着した板状断熱材6を用いると、断熱性が更に向上する点で好ましい。
【0026】
前記板状断熱材6は、通常の建築の断熱施工などに利用されている発泡樹脂ボードと同様の材料が使用され、例えばスチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂などを用いることができる。
【0027】
本形態においては、横に並ぶ少なくとも一列の板状断熱材6に、成形工程で防蟻剤が混入された防蟻性を有する板状断熱材6Bが用いられている。防蟻剤としては、建築技術分野で採用されている各種の防蟻剤を使用することができる。例えば、ピレスロイド系(シラフルオフェン、エトフェンプロックス、ビフェントリン等)、クロロニコチニル系(イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン)、カーバメート系、有機リン系など防蟻剤が挙げられる。防蟻剤の配合量は、要求性能や用途によっても異なるが、通常は、0.01〜10.0重量%の範囲で配合することができる。
【0028】
このように、防蟻性を有する板状断熱材6Bを少なくとも一列用いることにより、例えそれ以下の領域には蟻道が出来たとしても、防蟻性を有する板状断熱材6Bよりも上には、蟻道の形成が阻止されるため、建物矩体にシロアリの害が及ぶことを防止できる。
【0029】
更に本形態では、最も下位の板状断熱材6に防蟻性を有する板状断熱材6Bを配している。このように構成すると、地盤2から立ち上がる蟻道の形成をスタートの時点で効果的に抑制できることから、シロアリの繁殖をより効果的に抑制しうる点で好ましい。複数列の板状断熱材6、或いは全ての板状断熱材6に、防蟻性を有する板状断熱材6Bを用いると、防蟻効果の信頼性が一層向上できることは勿論である。
【0030】
成形方法としては、押出成形や注型成形などが採用され、発泡倍率は、15〜50倍に設定される。更にこの発泡倍率は、樹脂材料に配合する発泡剤の量や、加熱条件、押出条件などによって調整される。発泡倍率が大きいほうが、断熱性が向上するが、発泡倍率が大き過ぎると、強度が弱くなり易い。また前記防蟻性を有する板状断熱材6Bの成形においては、発泡倍率を1.5〜5倍の範囲に低く調整する。発泡倍率が低過ぎると、防蟻機能が十分に発揮できない。発泡倍率が高過ぎると、防蟻剤が高濃度で配合された樹脂材料では成形が困難である。
【0031】
前記板状断熱材6は、一列のもの(本形態では、中段の板状断熱材6)を残して基礎立上げ部4に接着される。これに用いる接着剤は、一般の発泡樹脂の接着に用いられるものを使用できるが、防蟻剤を配合した防蟻性を有する接着剤を用いると、基礎立上げ部4と板状断熱材6の間を立ち上がる蟻道の形成を抑制できる点で好ましい。この防蟻性を有する接着剤としては、例えばアスファルトもしくは適当なエマルジョン(アクリル系やウレタン系等の合成樹脂のエマルジョンまたはSBRをはじめとする合成ゴムのエマルジョン)接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、変性シリコン系接着剤、湿気硬化型接着剤などの中に、前記と同様の防蟻剤を混入したものが用いられる。より具体的には、アクリル系接着剤に、防蟻剤としてイミダクロプリドを0.1重量%配合した接着剤(商品名:ターマイトグルーIM、オーシカ社製)を使用できる。
【0032】
前記の如く接着された板状断熱材6以外の、残る一列の板状断熱材6は、基礎立上げ部4に対して、着脱可能に取り付けられる。本形態では図1、図2(A)に示すように、中段の横一列の板状断熱材6は、上下に配置されるとともに基礎立上げ部4に固着された板状断熱材6の間に形成される凹部に挿入される。そして上下の板状断熱材6との間にU字釘状の止め具25を打ち込むことによって固定される。
【0033】
従って中断の板状断熱材6は、図1、図2(B)に示すように、止め具25を引き抜くとともに手前に引き出すことにより、基礎立上げ部4から容易に取り外すことができる。このように、基礎立上げ部4の表面に着脱可能に添着した板状断熱材6を取り外すことによって、基礎立上げ部4が部分的に露呈する点検部7が形成される。板状断熱材6を取り外して形成される点検部7を目視でチェックすることにより、蟻道が形成されているか否かを確認することができる。即ち基礎断熱層5に覆われて隠れてしまう基礎立上げ部4の表面、及び基礎断熱層5の内部などに、蟻道が形成されていないかどうかを目視によって、簡単かつ確実にチェックできる。また蟻道を発見した時、点検部7の上下に配置される板状断熱材6の蟻道部分を除去して、蟻道を完全に撤去することができる。さらにその箇所に防蟻剤を散布するなどの防蟻処理をすることにより、再び蟻道が形成されることを予防できる。
【0034】
なお点検部7とは、前記の如く着脱可能な板状断熱材6を取り外すことにより、基礎立上げ部4を直接見ることのできる、上下の板状断熱材6に挟まれた開口部をいうが、横一列の板状断熱材6が着脱可能に取り付けることにより、蟻道の有無をチェックする開口部を簡単に形成することのできる板状断熱材6の領域を指すこともある。
【0035】
前記U字釘状の止め具25を用いる以外、点検部7の板状断熱材6を着脱可能に取り付ける手段としては、例えば小ループを多数設けた雌部と、前記受け部に着脱可能に係合しうる小鍵片を多数設けた雄部とからなる所謂面ファスナーを、基礎立上げ部4及び板状断熱材6の向き合う箇所に各々取り付けて形成することができる。或いは、点検部7の上位の板状断熱材6の下端面、及び下位の板状断熱材6の上端面に各々受段部を形成するとともに、点検部7に配される板状断熱材6の上下端部に、前記受段部に各々嵌り合う段部を設け、この段部を前記受段部に各々係合させるけんどん式の固定手段を用いてもよい。
【0036】
前記蟻道のチェック作業は、点検部7に配置される板状断熱材6を横方向に順次取り外して、基礎立上げ部4を全長に亘り点検する。また浴室、キッチン、トイレなどの水周り箇所、或いは蟻道形成の疑いのある箇所のみを重点的にチェックすることもできる。
【0037】
本形態では、点検部7の下位に配される板状断熱材6の上端部から点検部7において露呈する基礎立上げ部4に表面に連続して上の防蟻性を有するシート8を貼着している。なお上の防蟻性を有するシート8とは、他の部位に使用される防蟻性を有するシートと区別するための名称である。
【0038】
使用される防蟻性を有するシートとしては、ポリプロピレンやポリエチレンやエチレンビニルアセテート等の防湿性を有する合成樹脂製シートに、前記と同様ピレスロイド系、クロロニコチニル系、カーバメート系、有機リン系など防蟻剤のから有効なものを選択して混入したものが好適である。但し、シートの母材として、例えば不織布のように防湿性を有しないものを採用することもできる。貼着に用いる接着剤は、前記板状断熱材6の接着に用いたものと同じものを使用できる。この場合にも防蟻剤を配合した防蟻接着剤を用いることが好ましい。
【0039】
このように上の防蟻性を有するシート8を、点検部7下位の板状断熱材6の上端面と、基礎立上げ部4の表面で前記上端部奥部から一定の高さの領域とに連続して貼着すると、板状断熱材6に隠れて地盤2から点検部7の下縁部まで蟻道が形成されたとしても、更に上に向けは上の防蟻性を有するシート8によって封止されるため、それ以上は蟻道がのびることが抑制される。従って、建物矩体3への蟻害を防止できる。
【0040】
図2(B)に示すように、前記上の防蟻性を有するシート8の立ち上げ高さL1は、例えば、30〜150mm程度、好ましくは50〜120mm、本形態では90mmとしている。30mm未満では、上の防蟻性を有するシート8が剥がれ易いため、突抜けて蟻道が形成される可能性があり、逆に150mmを超えると、防蟻効果に対して過剰な寸法となり、貼着作業の施工性が低下する。
【0041】
また本形態の上の防蟻性を有するシートには、点検部7の下位に配される板状断熱材6の上端面の前端縁から、この板状断熱材6の表面に沿って、一定の幅L2で垂れ下がる垂れ部8Tが連続して形成されている。このような垂れ部8Tを設けると、床下の地盤2から立ち上がり、板状断熱材6の表面に沿って蟻道が形成された場合に、垂れ部8Tが蟻道に対する蟻返しとなって、それよりも上にのびて成長できない。そのため、建物矩体3に蟻害を及ぼすことがない点で好ましい。
【0042】
図2(B)に示すように、前記上の防蟻性を有するシート8の垂れ部8Tの幅L2は、例えば、30〜150mm程度、好ましくは50〜120mm、本形態では90mmとしている。30mm未満では、蟻返しとしての機能が足りない場合があり、垂れ部8Tを越えて更に上へ蟻道が延長する可能性があり、逆に150mmを超えると、蟻返し効果に対しては過剰な長さとなる。
【0043】
更に本形態の上の防蟻性を有するシート8は、透明或いは半透明の合成樹脂製シート基材を用いて形成している。このように上の防蟻性を有するシート8が透明性を有すると、図2(B)に示すように、点検部7を目視チェックする際、基礎立上げ部4と板状断熱材6との境目、及び板状断熱材6の上端面がはっきり確認できて、蟻道の見落としがなくなる為点検作業の信頼性が向上し、しかも一目で点検できるため作業性が高い。
【0044】
本形態では、基礎立上げ部4の基礎断熱層5が添設される表面と、前記フーチング21との交差部に沿って断面L字状に配された下の防蟻性を有するシート9によって、最も下位に配置されて、下端部が地盤2に埋設される板状断熱材6の下部が覆われている。この下の防蟻性を有するシート9は、更に板状断熱材6の外面に沿って立ち上がることにより、横コ字状に板状断熱材6の下部を覆うようにしてもよい。或いは、床下の地盤2面全体に敷設される防蟻シートの端部によって、最も下位の板状断熱材6の下部を覆うように構成することもできる。このように、最も下部の板状断熱材6の下部を下の防蟻性を有するシート9で覆うと、地盤2を起点として上向きに形成される蟻道のその起点箇所において、蟻の忌避効果が得られることから、蟻道の形成を有効の阻止できるため大きな防蟻効果が得られる。
【0045】
図3は他の実施形態を例示している。以下異なる内容について説明し、それ以外は図中に表れた主要構成に同じ符号を付すだけとする。本形態の基礎断熱構造1は、上下二列に分割された板状断熱材6を用いて構成され、上位の板状断熱材6が基礎立上げ部4に対して取り外し可能に取り付けられて、点検部7を形成している。具体的には、大引き26の下部に、基礎立上げ部4との間に小間隔27を隔てて支持桟28が固着されている。前記板状断熱材6の上部は、前記小間隔27に挿入することにより支持され、下端部を下位の板状断熱材6の上端面に載置するとともに、前記と同様のU字釘状の止め具(図示せず)を打ち込むことにより着脱可能に取り付けられ、点検部7を形成している。
【0046】
図4は更に他の実施形態を例示している。本形態では、板状断熱材6を基礎立上げ部4の屋外側に添着して、外断熱された基礎を構成している。各板状断熱材6の外表面には、同大の外装板10が一体に積層されて、耐候性を確保するとともに、基礎の見栄えを向上している。外装板10としては、タイル、各種サイディングボード、アルミなど金属板その他、各種のボードを用いることできる。そして板状断熱材6と外装板10とは、予め接着により一体化している。
【0047】
本形態では、三列に分割された板状断熱材6の中で、上下に配される外装板付きの板状断熱材6は、各々基礎立上げ部4に接着により固着している。そして中段の板状断熱材6は図5に示すように、外装板10と板状断熱材6との境界面に配されたアンカープレート29から板状断熱材6を貫通してのびる取付脚30が裏面方向に突設している。一方基礎立上げ部4の中位には、小孔31を形成している。この小孔31に前記板状断熱材6の取付脚30を圧入することにより中断の外装板付きの板状断熱材6が着脱可能に取付けられ、基礎立上げ部4の屋外面に点検部7が形成されている。このように外装板10を一体に積層した板状断熱材6を用いると、基礎の外表面の仕上げと同時に基礎防蟻をできることから施工性に優れ、しかも基礎の見栄えを向上することができる。
【0048】
尚、叙上の説明は本発明の実施の形態を例示したものである。従って本発明の技術的範囲はこれに何ら限定されるものではなく、前記した実施の形態の他にも、各種の変形例が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態を例示する分解斜視図である。
【図2】(A)はその縦断面図であり、(B)は点検作業を説明する縦断面図である。
【図3】他の実施形態を例示する縦断面図である。
【図4】更に他の実施形態を例示する縦断面図である。
【図5】板状断熱材の一部切欠き斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1 基礎断熱構造
2 地盤
3 建物矩体
4 基礎立上げ部
5 基礎断熱層
6 板状断熱材
6B 防蟻性を有する板状断熱材
7 点検部
8 上の防蟻性を有するシート
8T 垂れ部
9 下の防蟻性を有するシート
10 外装板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤から壁状に立設するとともに、建物躯体を支持する基礎立上げ部の少なくとも一方の表面に、板状断熱材が設置された基礎断熱構造において、
板状断熱材は、少なくとも上下二列に分割され、左右に帯板状に設置される断熱材を上下に並設して構成され、かつ、板状断熱材は横に連続する少なくとも一列のものが、基礎立上げ部に対して着脱可能に取り付けられることにより、基礎立上げ部の蟻道の有無を目視検査できる点検部が形成されることを特徴とする基礎断熱構造。
【請求項2】
少なくとも上下二列に分割され、左右に帯板状に並設された板状断熱材のうち、少なくとも横に並ぶ一列の板状断熱材が、防蟻性を有する断熱材を用いて構成されることを特徴とする請求項1記載の基礎断熱構造。
【請求項3】
防蟻性を有する板状断熱材が、最も下位の列に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の基礎断熱構造。
【請求項4】
少なくとも上下二列に分割され、左右に帯板状に並設された板状断熱材のうち、着脱可能に取り付けられる板状断熱材を除く板状断熱材が、基礎立上げ部に防蟻性を有する接着剤を用いて接着されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに1項に記載の基礎断熱構造。
【請求項5】
前記点検部の下位の列に配置される板状断熱材の上端面、及び点検部で露呈する基礎立上げ部の表面で前記上端面奥部から、30〜150mmの高さL1の領域に連続して、防蟻性を有するシートが貼着されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の基礎断熱構造。
【請求項6】
防蟻性を有するシートが、点検部の下位に配される板状断熱材の上端面の前端縁から、該板状断熱材の表面に沿って、30〜150mmの幅L2で垂れ下がる垂れ部を有することを特徴とする請求項5に記載の基礎断熱構造。
【請求項7】
最も下位に配置される板状断熱材は、その下部が防蟻性を有するシートで覆われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の基礎断熱構造。
【請求項8】
板状断熱材は、その表面に外装板が一体に積層されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の基礎断熱構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−144369(P2008−144369A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329324(P2006−329324)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(506106866)株式会社自然素材研究所 (21)
【出願人】(000109196)ダウ化工株式会社 (69)
【Fターム(参考)】