説明

基礎構造

【課題】
構造躯体や外壁の主材として木材を使用しない上部構造を有する建物において、可及的少ない防蟻剤を用いて効果的に白蟻を駆除することができる基礎構造及び防蟻剤の配置方法を提供することを目的とする。
【解決方法】
少なくとも構造躯体が鉄骨又は鉄筋コンクリートにより構成され、内装材及び下地材の全部又は一部に木材を用いる上部構造を支持する基礎構造であって、前記上部構造下方の空間の一部又は全部を包囲した状態で前記上部構造を支持する連続壁部を備え、前記連続壁部により包囲される床下空間には、当該連続壁部から所定間隔だけ離れた1又は複数位置に、固形の防蟻剤が配置されていることを特徴とする基礎構造が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の基礎構造に関する。また、住宅等の建物の基礎構造における防蟻剤の配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の基礎及び1階床部に包囲される床下空間は、外環境よりも温度環境及び湿度環境が良好に保たれるため、当該床下空間に白蟻の侵入があると、継続的な白蟻コロニーが形成されてしまう虞がある。これに対し、床下空間に薬剤を散布することが考えられるが、当該薬剤は僅かな隙間でも通過することが考えられるため、1階床部よりも上方で生活する居住者等に悪影響を及ぼしかねない。
【0003】
これに対し、特許文献1には、基礎の立上りと土間コンクリートの継ぎ目周囲に防蟻剤を配し、当該防蟻剤を断熱材で包囲する構成が開示されており、これによって、防蟻剤の床下空間内での拡散が可及的防止され、1階床部よりも上方にて生活する居住者への悪影響が回避されるものとなっている。
【0004】
また、白蟻を駆除する方法として、従来は現場での薬液を使用した土壌処理や木部処理が主体として行われて来た。しかし、使用される薬液は人体に有害なものが多く、処理の際の安全性にも問題があった。
【0005】
そこで最近では環境対策、安全対策、効率化の観点から、木材の工場処理、シート工法、ベイト工法などが普及しつつある。特に、ベイト剤(毒餌)を使用したベイト工法は米国に始まり、我国でも4〜5年前から実施され始め、安全でクリーンな工法であって、効率の良い駆除法として注目されている。
【0006】
このベイト法では、白蟻が好む木材等の餌を入れた容器を埋設して白蟻を誘引し、この餌木を白蟻が食していることが分ったら、餌木の一部を毒餌と交換する。この毒餌には遅効殺虫性の成分が含まれているが、基材の非毒性部分は白蟻が好むもので作られているので、白蟻はこの毒餌を少しずつコロニーに運ぶこととなり、結果的にコロニー内の白蟻を全滅に導くのである。
【0007】
この種のベイト法を白蟻駆除に用いる際には、家屋の外側の地面に、3〜5mの間隔で点状にステーションを埋設して当該家屋を包囲し、隣り合うステーション間は当該ステーションのいずれかの効能領域(影響領域)として残置しておく構成が公知である(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-213837号公報
【特許文献2】特開2003-137705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の構成においては、基礎の立上りと土間コンクリートの継ぎ目に沿って線状に防蟻剤を配置する必要があり、防蟻剤の使用量が過大となってしまう問題があった。特に、鉄骨部材を構造躯体とする建物等、木材を主材として使用しない建物においては、白蟻の食害は木造の建物に比べると比較的軽微である一方、内装等の木材を狙って白蟻が基礎から上部構造に向けて上がってくることも考えられるが、かかる軽微な食害を防止するためのみに上記特許文献1の如き大掛かりな対応は実際上取り難い。
【0010】
また、特許文献2においても、上記特許文献1の場合と同様、木材を構造躯体や外壁の主材として採用しない建物においては、白蟻の食害は軽微である一方、当該食害を防止するための構成が大掛かりであって、手間やコストの観点から見ても採用し難いという問題がある。のみならず、当該特許文献2の構成においては、白蟻は防蟻ステーションに360度の方向からアクセスすることが可能であるにもかかわらず、隣接する防蟻ステーションとの設置状態の関係から、各ステーションは、実質的には建物とは反対方向の180度の領域のみを効能領域とするものであって、各ステーションの能力を充分に生かすことができていないという問題があった。
【0011】
また、白蟻に対する毒性成分を含んだ断熱材が存在するが、通常の断熱材と比較すると何倍もの値段であり、そのような高価な部材を基礎の外周を囲むように配置するのでは費用対効果が著しく低くなる。また、外境界に近い過酷な環境下では、成分の有効期限が著しく減縮することが懸念され、その工法にも制限がある。
【0012】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、構造躯体や外壁の主材として木材を使用しない上部構造を有する建物において、可及的少ない防蟻剤を用いて効果的に白蟻を駆除することができる基礎構造を提供することを目的とする。また、可及的少ない防蟻剤を用いて効果的に白蟻を駆除することができる防蟻剤の配置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記課題を解決する具体的手段として、本発明は、少なくとも構造躯体が鉄骨又は鉄筋コンクリートにより構成され、内装材及び下地材の全部又は一部に木材を用いる上部構造を支持する基礎構造であって、前記上部構造下方の空間の一部又は全部を包囲した状態で前記上部構造を支持する連続壁部を備え、前記連続壁部により包囲される床下空間には、当該連続壁部から所定間隔だけ離れた1又は複数位置に、固形の防蟻剤が配置されていることを特徴としている。
これによれば、上記防蟻剤はいずれの方向からも白蟻のアクセスを許容するものとなり、これによって、一旦床下空間に入り込んだ白蟻は、いずれの方向からであっても防蟻剤に到達することができる。これによって、1つの防蟻剤による防蟻の効果を及ぼす領域を少なくとも平面視180度以下の領域から180度以上の領域、最大では360度の面状に拡大させることができ、防蟻剤の使用量を著しく減じることができるものとなる。
【0014】
(2)また、前記連続壁部は、前記上部構造を支持する基礎躯体部と、該基礎躯体部の内側又は外側の一方或いは両方に張設されて前記床下空間を包囲する断熱材とを備えていることが好ましい。
これによれば、床下空間の温湿度環境を屋外空間よりも床部上方の室内空間に近づけることができ、これによって、一階床の上下間での温度勾配を緩慢なものとして、一階床部の冷え等を抑制することができる。一方、床下空間は室内空間に近づくため、白蟻にとっては好適な空間となり、白蟻がより集合する虞があるものの、当該空間に防蟻剤を設けることで、白蟻をより確実に退治することができる。
【0015】
(3)また、少なくとも前記床下空間の下方に敷設される基礎スラブをさらに備え、前記連続壁部の基礎躯体部は、該基礎スラブ上の複数位置に設けられる支柱と、前記基礎スラブ上面から所定間隔離間した状態で隣り合う支柱間に架設される基礎梁とを備えていることが好ましい。
これによれば、各基礎梁下方を通じて床下空間全体を連結させることができるため、基礎梁によって防蟻剤の効能領域を妨げられる虞はなく、これによって、床下空間全体で1又は複数基の防蟻剤を設置するだけで、充分な防蟻効果を発揮させることができるものとなる。
【0016】
(4)また、前記防蟻剤は、前記床下空間を平面視したときの面積25mないし100m当り1個の防蟻剤が配置されていることが好ましい。このような割合で防蟻剤を配置することにより、最小の防蟻剤で十分な駆除の効果を奏することができる。
【0017】
(5)また、前記基礎スラブは、少なくとも前記支柱を支持する上面が前記建物の外周の地盤よりも高い位置に設けられていることが好ましい。
これによれば、基礎スラブ上に屋外からの雨水が流れ込む虞は可及的防止され、防蟻剤が雨水の浸漬を受けることによって性能劣化を生じてしまうことを防止することができる。
【0018】
(6)さらに、前記支柱の近傍には、前記防蟻剤による防蟻効果を補強するサブ防蟻剤をさらに設けることが好ましい。
これによれば、屋外から上部構造に移動するための略唯一といえる蟻道と言える支柱の近傍にサブの防蟻ステーションをさらに設けるので、より確実に上部構造への白蟻被害を防止することができる。
【0019】
(7)さらに、上記課題を解決する他の具体的手段として、本発明は、基礎構造内部における防蟻剤の配置方法であって、少なくとも構造躯体が鉄骨又は鉄筋コンクリートにより構成され、内装材及び下地材の全部又は一部に木材を用いる上部構造を支持する基礎を有し、該基礎は、前記上部構造下方の空間の一部又は全部を包囲した状態で前記上部構造を支持す連続壁部を備え、前記連続壁部により包囲される床下空間に、当該連続壁部から所定間隔だけ離して1又は複数の固形の防蟻剤を配置することを特徴としている。
上記構成からなる防蟻剤の配置方法によれば、可及的少量の防蟻剤を用いて効果的に白蟻を駆除することができる
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、構造躯体や外壁の主材として木材を使用しない上部構造を有する建物において、可及的少ない防蟻剤を用いて効果的に白蟻を駆除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る基礎構造の縦断面図である。
【図2】図1の基礎構造の側断面図である。
【図3】図1の基礎構造の支柱と基礎梁の接合部の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る防蟻ステーションの一例である。
【図5】本発明の一実施形態に係る防蟻剤の配置を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る防蟻剤の配置を説明する図である。
【符号の説明】
【0022】
A 基礎構造
B 上部構造
C 床下空間
D 居室空間
E 空隙
1 外壁
2 アングル
3 床スラブ
4 連続壁部
5 基礎スラブ
6 基礎躯体部
7 断熱材
8 支柱
9 基礎梁
10 プレート
11 防湿材
12 コンクリート板
13 嵩上げ部材
14 支持体
15 シーリング材
16 保護塗装層
17 防蟻剤
18 防蟻ステーション
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、実施形態に基づいて本発明に係る基礎構造ならびに防蟻剤の配置方法について詳細に説明するが、これらの実施形態は本発明の理解を助けるために記載するものであって、本発明を記載された実施形態に限定するものではない。
【0024】
本実施形態に係る基礎構造Aは、少なくとも構造躯体が鉄骨又は鉄筋コンクリートにより構成され、内外装材及び下地材の全部又は一部に木材を用いる上部構造Bを支持する基礎を有する基礎構造である。
そして、基礎の連続壁部及び上部構造により包囲される床下空間Cには、該連続基礎部から所定間隔だけ離れた1又は複数位置に、後述する固形の防蟻剤が配置されていることを特徴としている。
床下空間Cに配置された上記防蟻剤は、いずれの方向からも白蟻のアクセスを許容するものとなり、これによって、一旦床下空間に入り込んだ白蟻は餌を求めて徘徊した後、いずれの方向からであっても防蟻剤に到達することができる。これによって、1つの防蟻剤による防蟻の効果を及ぼす領域を拡大させることができ、防蟻剤の使用量を著しく減じることができる。
【0025】
ここで、本実施形態に係る基礎構造Aを説明する前に、先ず上部構造Bについて簡単に説明する。上部構造Bは、基礎構造A上に立設される鉄骨柱と、該鉄骨柱間に架け渡される鉄骨梁と、基礎構造Aや鉄骨梁に支持される一階等の床構造と、基礎構造Aや鉄骨梁に上下端部が支持されて内部に居室を形成する外壁1とを具備する。
【0026】
図1に示す如く、外壁1は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート(ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concreteの略))製の外壁パネルを並べて配設し、アングル2を介して基礎構造Aに支持させることにより形成されており、外壁パネルの内側(室内側)には、断熱材と内装部材が順に敷設されている(図示略)。
【0027】
一階床部は、複数枚の平板状の軽量気泡コンクリート製の床スラブ3を並べて配設することにより形成されており、該床スラブ3の上面にセルフレベリング材を介して床仕上げ材が敷設されている(図示略)。そして、一階床部を介して包囲される床下空間Cと、外壁に包囲される一階居室空間Dとが形成されている。尚、一階床部には断熱層が設けられていてもよい。
【0028】
また、一階床部には床下空間Cにアクセスするためのハッチが設けられていてもよい。このようにすれば、防蟻剤の減少を視認することができ、白蟻の侵入を認識することができる。また、防蟻剤の効能期間が過ぎた場合でも、容易に交換が可能となる。
【0029】
本実施形態に係る基礎構造Aは、上部構造の外周に沿って設けられて1階床部下方の床下空間Cを包囲しつつ当該上部構造Bを支持する連続壁部4と、該連続壁部4の下方に位置する基礎スラブ5とを備えている。
【0030】
連続壁部4は、基礎スラブ5上に設けられて上部構造Bを支持する基礎躯体部6と、該基礎躯体部6の外側に張設される断熱材7とを備えている。
基礎躯体部6は、建物の外周に沿って設けられる所謂外通りに設けられて上部構造Bを支持するものであって、基礎スラブ5上の複数位置に設けられる支柱8と、隣り合う支柱8間に架設される基礎梁9とを備えている。
基礎梁9は、図2及び図3に示す如く、H型鋼により形成されてり、基礎スラブ4から離間した状態で両端部がプレート10を介して支柱8にボルト等によって締結されている。本実施形態においては、基礎スラブ5と基礎梁9との間には少なくとも5cm程度の高さの空隙Eが形成されている(図2)。
なお、当該空隙Eの高さは適宜変更可能であって、例えば40cm程度の高さを確保すると、当該基礎梁9下方を通じて人が床下空間C内を移動することができ、後述の防蟻剤への人のアクセスが簡易なものとなってこれら防蟻剤の確認作業やその他の一階床及び基礎等のメンテナンスの容易化が図られる。
【0031】
基礎スラブ5は、上部構造Bの底面全体に対向する板状に形成された鉄筋コンクリート製で、厚さは120〜200mmが好ましく、例えば160mm程度である。図1から分かるように、基礎スラブ5の外周部の上面は、建物外周の地盤面GLより高位になるように施工される。なお、外周の地盤面とは、当該上部構造Bを支持する基礎構造Aの周囲の地盤面のことであって、当該上部構造B及び基礎構造A直下の地盤を除くものである。また、図1のように、基礎スラブ5上には防湿材11がほぼ全面に敷設されていてもよい。
【0032】
図1〜図3に示すように、基礎スラブ5の上面で支柱8が配設される部位には、該支柱8の投影面積よりも大なる領域にわたってPC板等のコンクリート板12が埋設施工されており、該コンクリート板12の上に鋼材製の嵩上げ部材13がアンカーボルトによって固定され、該嵩上げ部材13上に鋼材製の支柱8がボルト等の締結手段によって締結されている。
【0033】
また、基礎スラブ5の上面で基礎梁9の配設位置に対応する部位にもその長手方向に所定の間隔をあけて複数のコンクリート板12が埋設施工されており、該コンクリート板12の上に鋼材製の複数の支持体14がアンカーボルトによってそれぞれ固定され、該支持体11の上に基礎梁9が載置されている。尚、基礎梁9の長手方向における支持体14の設置間隔は任意であるが、例えば900〜2000mm程度の間隔で設置されるのが好ましい。また、基礎梁9は支持体14上に載置されているもので支持体14には接合はされていない。
【0034】
上記において、連続する立上り部を形成する基礎躯体部6、つまり、支柱8、基礎梁9、嵩上げ部材13、及び支持体14を構成する鋼材としては、通常の床下空間Cに使用される溶融亜鉛めっきなどの防錆処理が施された鋼材を用いることもできるが、本実施形態の構造では、上部構造Bの施工に使用されるものと略同様の簡略な防錆処理を施した鋼材が使用される。
尚、嵩上げ部材13と支持体14のいずれか一方又は両方について溶融亜鉛めっきなどの防錆処理が施された鋼材を用い、支柱8、基礎梁9についてのみ簡略な防錆処理を施した鋼材を使用することとしてもよい。また、基礎躯体部6を全て簡略な防錆処理を施した鋼材によって形成した場合でも、一定期間の居住後、部材の劣化が認められる場合には、嵩上げ部材13及び/又は支持体14のみを交換することもできる。
【0035】
また、上記連続壁部4を構成する断熱材7は、本実施形態においては基礎躯体部6の外周に沿って張設されており、その外周面は上部構造の外壁よりも僅かに床下空間C側にセットバックした位置に設定されている。
かかる位置で張設されることにより、該断熱材7は、床下空間Cのみならず、基礎躯体部6及び基礎スラブ5を包囲する状態となる。また、断熱材は7、基礎スラブ5の下面と同程度まで没入して設けられており、基礎梁9に沿って自立している。これにより地面よりも熱伝達率が高いコンクリート製の基礎スラブ5の側面を断熱材7で保護されるものとなり、当該基礎スラブ5の側面を迂回して熱流の経路が形成されるため、当該熱流の経路が長くなって断熱上有利となる。
また、断熱材7は、基礎梁9とは接触させないか、接触させるにしても部分的に接触させるのが好ましい。熱の輸送経路を少なくして断熱効果を高めるためである。
【0036】
断熱材7は、床下空間Cから外気方向に積層して複数層(図示例では2層)で設置されている。これは、各層における継ぎ目をずらして設置することで、当該継ぎ目を通じて外気が床下空間C内に進入するのを防ぐためである。
【0037】
また、本実施形態において断熱材7は、汎用性及び断熱性能の観点から厚さ20mm程度の発泡プラスチック断熱板を用いている。また、この種の断熱板としては、XPS(押出法ポリスチレンフォーム)が好ましい。XPSは熱伝導率が0.028〜0.040W/mKと小さいため高い断熱効果が期待できる上、液体での水の透過がなく、気体(水蒸気)での透過に対しても透湿比抵抗400〜600mhmmHg/gと大きい。また水分による劣化を生じない材料でもある。よって、土中に没入させる断熱性の断熱材7として最適である。
なお、断熱材7としては、所望の通気性、断熱性を備えると共に充分な耐水性及び止水性を備えた板状材であれば如何なる材料を用いても構わない。よって、木質系以外の無機繊維系、上記以外の有機樹脂系材料を用いることが可能である。
【0038】
また、断熱材7の上端と外壁1の間にはシーリング材15が充填され、これによって床下空間Cへの外気の流入がより確実に防止される。
【0039】
更に断熱材7の外面のうち、外気に露出する面には、主として紫外線劣化防止のために、保護塗装層16が形成される。かかる保護塗装層16の形成には、モルタルの薄塗りが一般的であるが、ポリマーセメントモルタルとエナメル系トップ塗装材からなる複塗装材を塗布することもできる。また、断熱材7に表面強度を付与することが望まれる場合には、断熱材7の外面もしくは内面又は複層とする場合は層間に金属メッシュを設けることもできる。
【0040】
上記構成の基礎構造Aの施工に際しては、先ず、基礎構造Aに合わせて根切り工事を行った後、基礎スラブ5の形成のために配筋を行い、それに前後して断熱材7を設置する。ついで、コンクリートを打設して基礎スラブ5を形成するが、この際、当該コンクリート打設に先んじて設置している断熱材7が型枠としても機能する。基礎スラブ5形成後には、埋め戻しを行い、基礎梁9等の基礎躯体部6を施工して基礎構造Aを完成させる。
【0041】
そして、基礎スラブ5(あるいは防湿材11)上の、基礎躯体部6から所定間隔だけ離れた1又は複数位置に防蟻剤17を配置する。本実施形態に係る基礎構造Aによれば、防蟻剤17は基礎スラブ5、断熱材7、1階床部等で囲まれた床下空間Cに配置されるため、雨水等の環境に晒されず、薬剤の効果を長期に渡り維持することができる。
【0042】
防蟻剤17の設置後、ついで上部構造Bを組み上げる。断熱材7の保護塗装は、埋め戻しの前後に行う。なお、1階床部にハッチなどが設けられている場合には、上部構造Bの組み上げ後に防蟻剤17を設置してもよい。
【0043】
またコンクリート打設のタイミングを基礎躯体部6の施工後にずらすこともできる。すなわち、別法では、基礎構造Aに合わせて根切り工事、配筋を行った時点で、基礎躯体部6を施工する。ついで、断熱材7を設置した後、コンクリートを打設して基礎構造Aを構築し、ついで上部構造Bを組み上げる。このような工程によれば、コンクリート打設前に基礎躯体部6と断熱材7の位置関係を決めてしまうので、高い断熱材7の仕上げ精度を確保することができる。
【0044】
上記構成の基礎構造Aによれば、断熱材7により内側への外気の吹き込みが防止されることとなるため、床下空間Cに配置される防蟻剤17の劣化が抑制される。また、
基礎躯体部6は、基礎スラブ5下方の地盤との接触が防止されることはもちろん、断熱材7により、外気や外気により吹き付けられる雨水等との接触も防止され、また基礎躯体部6は、地盤面GLよりも上方に位置することとなるので、地盤との接触が防止され、さらには、基礎スラブ5上面に水位が達しない程度に地盤上に溜まる雨水との接触も防止される。従って、これらに含まれる水分との接触が可及的に抑制されるため、基礎躯体部6の防錆処理は上部構造Bの鋼材等と略同様の処理で十分となり、このような通常の防錆処理を施された鋼材を基礎に用いる場合であっても、長期にわたって錆等が防止され、これによって高耐久性を長期に亘り維持させることができる。
【0045】
また、XPS等の断熱性能に優れる断熱材7を使用することにより、上部構造Bを支持する基礎躯体部6の外周に断熱層が形成されることとなるため、従来であれば上部構造Bの底面となる一階床下に設けられていた断熱層を省略することができ、床下空間Cを断熱材を介することなく一階床部のみを介して1階室内と対向することとなり、これによって温熱状態をより1階室内に近づけることができるものとなる。
【0046】
次に、上記に説明したような基礎構造Aの床下空間Cへ配置する防蟻剤17について説明する。
【0047】
上述の如く、本実施形態の基礎構造Aは、外部よりも温熱環境を良好なものとなるため、たとえ上部構造Aに餌となる木部が少ない場合であっても、白蟻が断熱材7を食い破る等して床下空間Cへ侵入してくることが考えられる。床下空間Cに入り込んだ白蟻は、例えば上部構造Aが木造である建物であれば基礎等を通じて上部構造Aに向けて、床下空間C→支柱8→上部構造Aと移動することが考えられるが、本実施形態に係る基礎構造Aにおいては、床下空間Cには一切の木材が存在しないため、床下空間Cに侵入した白蟻は、床下空間C内から出ることなく餌を探し求めて徘徊した後、殺虫性の防蟻剤17へとたどり着く。
【0048】
防蟻剤17は、固形のものが好ましく、遅効殺虫性(数日あるいは数週間後に殺傷効果を発揮する)の毒物、特に限定されないが、例えばヘキサフロムロン、クロルフルアズロン、スルフルアミド、ヒドラメチルノン等を用いて調製した溶液を、布、繊維、紙等の固形物に含浸又は塗布したものが用いられる。
【0049】
白蟻が防蟻剤17を食べることにより、上記毒物を接種し、数日あるいは数週間後に死に至る。また、毒物の接種により死んだ固体の死骸を他の白蟻が食べることにより、コロニー単位で白蟻が死滅することになる。本実施形態に係る基礎構造においては、床下空間Cにおいて白蟻の餌となるような木材等が防蟻剤17以外には存在しないため、床下空間Cへ入り込んだ白蟻に対して確実に毒物を与えることができる。
【0050】
また、固形の薬剤を基礎スラブ5上に直接配置するのではなく、床下空間C内部に防蟻剤17を内包可能な防蟻ステーション18なる装置を設置するようにしてもよい。本実施形態に係る基礎構造においては、防蟻剤17に対して、あらゆる方向から白蟻がアクセス可能であるため、該防蟻ステーション18は、白蟻があらゆる方向から入り込めるような形状のものが好ましい。
防蟻ステーション18は、例えば図4に示すように、防蟻剤17を設置するための底部、該底部から上方へ延長される柱部、該柱部によって支えられる屋根部を有するような構造のものが好ましい。このような形状の防蟻ステーション18は防蟻剤17の有効範囲を最大限引き出すことができる。また、防蟻ステーション18を使用することにより、基礎スラブ4との接触を防ぎ、湿気等による防蟻剤17の劣化を抑制することができ、かつ防蟻剤17の設置が容易になる。
【0051】
また、図5に示すように、防蟻剤17の設置位置或いは設置方法としては、防蟻剤17は基礎スラブ5を囲む基礎躯体部6から所定間隔だけ離れて配置される。
なお、防蟻剤17は、基礎スラブ5の面積25ないし100m当たり1個のみ配置されていることが好ましい。このような割合で防蟻剤17を配置することにより、最小の防蟻剤17で十分な駆除の効果を奏することができる。即ち、基礎スラブ5の面積が上記範囲内であれば、図5(a)のように、防蟻剤17は一つのみ配置すればよい。あるいは、基礎スラブ5の面積が100mを超える場合には、図5(b)のように、複数の防蟻剤17を所定間隔空けて配置すればよい。また、基礎スラブ5の面積が25mより小さい場合には、防蟻剤17は一つ配置すれば充分である。
【0052】
また、床下空間Cに侵入した白蟻は、支柱8や布基礎の基礎梁9等から上部構造Bへ到達する可能性があるため、支柱8の近傍にサブ防蟻剤を収容したサブ防蟻ステーションを設けてもよい。特に支柱8近傍に固形の薬剤又はサブ防蟻ステーションを配置することにより、上部構造への侵入や白蟻による床材や木製の家財等の食害を防ぐことができる。なお、サブ防蟻ステーションは上記防蟻ステーション18と同様の構成である。
【0053】
本発明によれば、構造躯体が鉄骨又はコンクリートにより構成される非木造建築物や、局所的に木材が使用されるような建物において、可及的少ない防蟻剤を用いて効果的に白蟻を駆除することができ、従来の白蟻の対処方法に比べてコストを著しく削減することが可能となり、その効果も長期的なものとなる。従って、長期間、居住者の不快感を著しく軽減することができるという従来にはない顕著な効果を奏することができる。
【0054】
また、本実施形態の基礎構造Aは、基礎梁9が基礎スラブ5から離間した状態で設置される構成であるため、外通りの連続壁部4により床下空間Cを包囲すると、中通りに基礎梁9が設けられる場合であっても当該床下空間C全体が基礎梁9に遮断されることなく互いに連通するものとなっているので、当該床下空間Cを一の空間とみなして防蟻剤17を配置することができ、当該床下空間Cに防蟻剤17を数箇所設ければ済み、きわめて効率的である。のみならず、このように床下空間Cが互いに連通されているので、床下空間C内に侵入した白蟻は、当該防蟻剤17にいずれの方向からもアクセス可能となる。すなわち、防蟻剤17の効能領域を全周囲たる360度に亘って及ぼすことができ、かかる点からも効率的な防蟻剤17の配置が可能となっているのである。
【0055】
以上、本発明の特に好ましい実施形態を説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様で実施することが可能である。
【0056】
例えば、通常の鉄筋コンクリート製の布基礎による基礎構造であっても、本発明と同様の効果を奏する。かかる構成においては、図6に示す如く、建物の中通りに形成される布基礎によって床下空間は複数の空間に分割されることが考えられるが、この場合、外通り及び中通りの布基礎により包囲される一つの閉鎖空間を床下空間Cとして、当該床下空間C毎に防蟻剤17を配置する。なお、配置数は分割された基礎スラブ5の各区画の面積に基づく。
【0057】
また、上記の区画が外部に接する区画ではない場合、即ち布基礎の基礎梁によってのみ包囲される区画の場合、白蟻の侵入は無いと考えられるため、このような区画には、防蟻剤17を配置する必要は特にない。また、上部構造Bの下方空間の一部のみを基礎構造Aにより包囲する場合にも、当該包囲した区間を床下空間Cとして防蟻剤17を配置することが可能である。
【0058】
また、断熱材7を基礎梁9よりも屋内側に設ける構成を採用することも可能であるし、当該基礎梁9の内側及び外側に断熱材7を設ける構成も採用する場合も、本発明と同様の効果を奏する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも構造躯体が鉄骨又は鉄筋コンクリートにより構成され、内装材及び下地材の全部又は一部に木材を用いる上部構造を支持する基礎構造であって、
前記上部構造下方の空間の一部又は全部を包囲した状態で前記上部構造を支持する連続壁部を備え、
前記連続壁部により包囲される床下空間には、当該連続壁部から所定間隔だけ離れた1又は複数位置に、固形の防蟻剤が配置されていることを特徴とする基礎構造。
【請求項2】
前記連続壁部は、前記上部構造を支持する基礎躯体部と、該基礎躯体部の内側又は外側の一方或いは両方に張設されて前記床下空間を包囲する断熱材とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
少なくとも前記床下空間の下方に敷設される基礎スラブをさらに備え、
前記連続壁部の基礎躯体部は、該基礎スラブ上の複数位置に設けられる支柱と、前記基礎スラブ上面から所定間隔離間した状態で隣り合う支柱間に架設される基礎梁とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の基礎構造。
【請求項4】
前記防蟻剤は、前記床下空間を平面視したときの面積25mないし100m当り1個の防蟻剤が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の基礎構造。
【請求項5】
前記基礎スラブは、少なくとも前記支柱を支持する上面が前記建物の外周の地盤よりも高い位置に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の基礎構造。
【請求項6】
前記支柱の近傍には、前記防蟻剤による防蟻効果を補強するサブ防蟻剤をさらに設けることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の基礎構造。
【請求項7】
少なくとも構造躯体が鉄骨又は鉄筋コンクリートにより構成され、内装材及び下地材の全部又は一部に木材を用いる上部構造を支持する基礎を有し、該基礎は、前記上部構造下方の空間の一部又は全部を包囲した状態で前記上部構造を支持す連続壁部を備え、
前記連続壁部により包囲される床下空間に、当該連続壁部から所定間隔だけ離して1又は複数の固形の防蟻剤を配置することを特徴とする防蟻剤の配置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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