説明

基礎用ブロックとこれを用いた基礎工法

【課題】 建築および土木工事の基礎工事において、施工対象地盤に対してブロック単体で自立させることができ、容易にブロックを平坦にすることが可能で、地盤の耐荷力を強化させる際に好適に利用することができる基礎用ブロックとこれを用いた基礎工法の提供を目的としている。
【解決手段】 天地方向に貫通する貫通孔22が設けられた天板20と、天板20の端縁部に設けられ、天板20と一体に形成された脚部30とを有する基礎用ブロック10であって、天板20の下面は、隣り合う脚部30間が逆U字状の曲面状に形成されていることを特徴とする基礎用ブロック10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築および土木の基礎工事において用いられる基礎用ブロックと、これを用いた基礎工法に関し、より詳細には、重機や薬品を用いることなく、軟弱地盤における地盤支持力を向上させることが可能な基礎用ブロックと、これを用いた基礎工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築および土木工事において、軟弱地盤上に重量構造物を建造する際には、地盤の支持力を向上させるための地盤対策工を施す必要がある。従来は、軟弱地盤の下方に存在する支持地盤に杭を打ち込んで支持力を得る杭打ち工法や、軟弱地盤と良質土を置き換えする置換工法の他、セメント系の地盤改良剤を混入させる等の方法によって軟弱地盤対策工が施されていた。これらの軟弱地盤対策工は、重機の使用や薬品の使用が必須であるため、総じて施工費用は高コストであった。
近年においては、例えば、特許文献1に示すようなコマ型のコンクリートブロックを用いた地表層の強化安定化方法及びこれに用いる地表層の強化安定化用ブロックが提案されている。
【特許文献1】特公昭63−55565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1の地表層の強化安定化方法およびこれに用いる地表層の強化安定化用ブロックは、コマ型(円錐形の本体部分に、円錐の中心軸を通り、円錐の高さ方向に貫通して設けられた脚部を有する形状)に形成されたブロックであるため、施工対象地盤にブロック単体のみでは自立させることができず、脚部を地中に差し込むようにしてブロックを立てながら施工しなければならないという課題や、多数のブロックを配設する際においては、地中への脚部の差し込み量にばらつきを生じるため、ブロックの上面を平坦に並べることが困難であるといった課題がある。
【0004】
本発明は、建築および土木工事の基礎工事において、施工対象地盤に対してブロック単体で自立させることができ、容易にブロックの上面どうしを平坦にすることが可能で、地盤の耐荷力を強化させる際に好適に利用することができると共に、安価な基礎用ブロックとこれを用いた基礎工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、天地方向に貫通する貫通孔が設けられた天板と、天板の端縁部に設けられ、前記天板と一体に形成された脚部とを有する基礎用ブロックであって、前記天板の下面は、隣り合う脚部間が逆U字状の曲面状に形成されていることを特徴とする基礎用ブロックである。
【0006】
また、前記天板の側壁面には、前記基礎用ブロックを隣接させて配置する際に、隣接する前記天板間を凹凸嵌合によって連結する連結部が形成されていることを特徴とする。
さらにまた、前記天板と前記脚部とが一体に樹脂成形されてなることを特徴とする。
【0007】
また、他の発明は、地盤の支持力を強化する基礎工法であって、地盤に基礎用ブロックを、前記天板を上向きとして該基礎用ブロックの側壁を隣接させながら多数個設置する工程と、前記天板に設けられた貫通孔から、前記地盤と前記基礎用ブロックとの間の間詰め材充てん用空間に、間詰め材を充てんする工程とを含むことを特徴とする基礎工法である。
【0008】
また、他の発明は、地盤の支持力を強化する基礎工法であって、前記天板を上向きとして隣接させると共に、前記天板に形成した連結部どうしを互いに凹凸嵌合させながら多数個設置する工程と、前記天板に設けられた貫通孔から、前記地盤と前記基礎用ブロックとの間の間詰め材充てん用空間に、間詰め材を充てんする工程とを含むことを特徴とする基礎工法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る基礎用ブロックとこれを用いた基礎工法によれば、施工対象地盤に対してブロック単体で自立させて設置することができる。また、脚部が天板の端縁部に設けられているので、基礎用ブロックを配設する際において、配設範囲の端縁部に脚部を配設することができ、貫通孔からの間詰め材の充てんや基礎用ブロックの配設が容易に行える。また、複数の脚部となるため、基礎用ブロックの側方変移や不等沈下の防止にも有効である。加えて、施工対象地盤の表面を平坦にしておくだけで、ブロックの上面どうしを平坦に設置することができる。これらにより、効率的に基礎用ブロックを配設することができる。
【0010】
さらにまた、基礎用ブロックの下面側が略逆U字状をなした曲面状に形成されているので、基礎用ブロックに充てんされた間詰め材を拘束し、間詰め材を補強する効果が得られる。これと同時に、基礎用ブロックと地盤との接触面積が大幅に増大するため、上載荷重を広く分散させることができる。
【0011】
また、基礎用ブロックの天板どうしを凹凸嵌合により連結させる連結部が形成されているため、基礎用ブロックどうしの連結が容易に行え、基礎用ブロックの連結後における天板どうしの平坦性の確認が容易に行える。
さらにまた、前記天板と前記脚部とを一体に樹脂成形しているため、地盤強化ブロックを軽量にすることができると共に、安価に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における基礎用ブロックの斜視図である。図2は、図1中のA−A線における断面図である。図3は、図1中のB−B線における断面図である。図4は、図1中のC−C線における断面図である。
【0013】
基礎用ブロック10は、天板20、天板20と一体に形成された脚部30とを有している。
本実施の形態における天板20は平面形状が略正方形状に形成されている。天板20の中央部分には、天板20の天地方向に貫通する貫通孔22が形成されている。天板20の側壁面の辺部分の中間部分には連結部24が形成されている。連結部24には、突起状に形成された嵌合突起部24aと凹型に形成された嵌合凹部24bとが設けられている。嵌合突出部24aと嵌合凹部24bは互いに嵌合することにより上下方向には可動であるが、水平方向には抜け止めされる形状である。具体的には、嵌合突起部24aは、天板20の側壁部分における幅に比べて嵌合突起部24aの先端側部分の幅の方が大きく形成されている。
【0014】
天板20の四隅部分には、天板20と一体に形成され、天板20から下方にのびる脚部30が設けられている。脚部30は、先端部分が徐々に先細になるテーパー状に形成されている。また、図4に示すように脚部30の外側面30a、30aは天板20の側壁面と面一になる平坦面に形成され、脚部30の内側面は断面形状が円弧状に形成されている。
図2、図3に示すように、天板22の下面側は、天板20の中央部分に設けられた貫通孔22と脚部30との中間部分が球面状のアーチにより連続するように形成されている。天板20を単体で見ると、天板20の下面部分の形状は、椀を伏せたような略球面状をなしている。このようにして基礎用ブロック10が形成される。
【0015】
なお、基礎用ブロック10には、廃ペットボトルや廃プラスチック等に代表される使い古しの合成樹脂材を材料として、樹脂成形によって製作する方法が有効である。基礎用ブロック10の材料に廃プラスチック材を用いることで、製造コストが削減できると共に、廃プラスチック材を有効に活用できる。もちろん、新材の合成樹脂材や硬質ゴム等の他の合成樹脂材または所定の強度を有する軽量コンクリートを用いることもできる。
【0016】
次に、基礎用ブロック10を用いた軟弱地盤における基礎工法について説明する。図5は基礎用ブロックの配設状態を示す説明図である。図6は、基礎用ブロック配設後の説明断面図である。
まず、地盤Gの地表面を均した後、嵌合突起部24aを嵌合凹部24bに嵌合させながら、地盤上の所要の範囲に基礎用ブロック10、10、・・・を天板20を上にして配設する。嵌合突起部24aを嵌合凹部24bに嵌合させる際には、図5に示すように、嵌合突起部24aを嵌合凹部24bの上方から差し込んで嵌合させる。このようにして互いに隣接する基礎用ブロック10、10、・・・はそれぞれの連結部24が互いに嵌合することにより連結される。
【0017】
地盤Gは平坦面となるように予め均されているから、基礎用ブロック10、10、・・・を単純に置いていくだけで天板20、20、・・・の上面は平坦となる。天板20、20、・・・により水平面が形成されれば、それぞれの基礎用ブロック10、10、・・・は側面が互いに当接した状態で堅固に一体化され、連結された状態になる。各々の基礎用ブロック10の天板20の下面は、図6に示すように、断面形状が逆U字状のアーチ状に形成されているから、基礎用ブロック10、10、・・・の下面には曲面状となる凹面が多数形成された状態になる。
このように、曲面状の多数の凹部が形成されることによって基礎用ブロック10に作用した荷重の伝達面積を増大させることができる。
【0018】
以上のようにして地盤Gの所要範囲に基礎用ブロック10、10、・・・を配設すると、地盤Gと基礎用ブロック10との間に隙間部分(間詰め材充てん用空間)が形成される。この隙間部分には砕石や砂等の間詰め材50が充てんされる。間詰め材50は、それぞれの天板20、20、・・・に設けられた貫通孔22、22、・・・の各々から充てんする。間詰め材50の充てんにおいては、プレートランマーやバイブレーター等の締め固め機を用いて十分に締め固めを行いながら充てんする。なお、間詰め材50に砂を用いた場合には、水をかけながらの充てんが好適である。
【0019】
地盤Gと基礎用ブロック10との間に形成された間詰め材充てん用空間に間詰め材50の充てんが完了すれば、基礎用ブロック10からの荷重は、間詰め材50を介して地盤Gに伝達される。天板20の下面が曲面状に形成されていること、および、脚部30が設けられていることにより、基礎用ブロック10から間詰め材50を介して地盤Gに作用する荷重の伝達面積が増大し、地盤Gに作用する圧力を軽減させることができる。したがって、地盤支持力が小さい軟弱地盤であっても重量構造物を建造することが可能になる。
【0020】
以上に本発明にかかる基礎用ブロックについて図面に基づいて詳細に説明してきたが、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲における各種の改良をしても本発明の技術的範囲に属することはいうまでもない。
例えば、本実施の形態においては、天板20を正方形に形成しているが、長方形や三角形等の他の形状に形成することもできる。また、天板20に形成される貫通孔22についても円形形状に限定されるものではない。貫通孔22の形状は、間詰め材50を充てんすることができればいずれの形状であってもよい。
【0021】
また、天板20の側面に形成された連結部24は、必ずしも、天板20における全ての外周辺に形成しなくても良い。具体的には図5に示すように、基礎用ブロック10の配設範囲の外端縁を構成する基礎用ブロック10については、外端縁部分を構成する外周辺に連結部を設ける必要はないのはもちろんである。
さらには、天板20の下面は単純な球面に限定されるものではなく、基礎用ブロック10からの荷重伝達面積が増やすことが可能な他の曲面形状を採用しても良い。基礎用ブロック10は、金型等の型枠に溶融樹脂等を注入して製造することができるため、複雑な曲線を有する形状であっても、一端金型を形成してしまえば、金型の形状を忠実に反映した基礎用ブロック10の製造は十分可能である。
【0022】
さらにまた、本実施の形態においては、天板20に連結部24を有する基礎用ブロック10を用いているが、連結部24が設けられていない基礎用ブロック10を用いることも可能である。この場合、隣接する基礎用ブロック10どうしは天板20および脚部30をガイドとして配設すれば良い。より好適には、図7に示すように、脚部30の先端部分が差し込み可能な差込部62が単数又は複数個形成されたガイドキャップ60を予め地盤Gに配設し、差込部62に各基礎用ブロック10の脚部30の先端部分をそれぞれ差し込むようにして配設することもできる。これによれば、連結部24が設けられていなくても、基礎用ブロック10は、天板20どうしが平坦になると共に、互いの脚部30どうしが堅固に当接した状態で地盤Gに配設されるため好都合である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施の形態における基礎用ブロックの斜視図である。
【図2】図1中のA−A線における断面図である。
【図3】図1中のB−B線における断面図である。
【図4】図1中のC−C線における断面図である。
【図5】基礎用ブロックの配設状態を示す説明図である。
【図6】基礎用ブロック配設後の説明断面図である。
【図7】ガイドキャップの説明図である。
【符号の説明】
【0024】
10 基礎用ブロック
20 天板
22 貫通孔
24 連結部
30 脚部
50 間詰め材
60 ガイドキャップ
62 差込部
G 地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天地方向に貫通する貫通孔が設けられた天板と、
天板の端縁部に設けられ、前記天板と一体に形成された脚部とを有する基礎用ブロックであって、
前記天板の下面は、隣り合う脚部間が逆U字状の曲面状に形成されていることを特徴とする基礎用ブロック。
【請求項2】
前記天板の側壁面には、前記基礎用ブロックを隣接させて配置する際に、隣接する前記天板間を凹凸嵌合によって連結する連結部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の基礎用ブロック。
【請求項3】
前記天板と前記脚部とが一体に樹脂成形されてなることを特徴とする請求項1または2記載の基礎用ブロック。
【請求項4】
地盤の支持力を強化する基礎工法であって、
地盤に請求項1記載の基礎用ブロックを、前記天板を上向きとして該基礎用ブロックの側壁を隣接させながら多数個設置する工程と、
前記天板に設けられた貫通孔から、前記地盤と前記基礎用ブロックとの間の間詰め材充てん用空間に、間詰め材を充てんする工程とを含むことを特徴とする基礎工法。
【請求項5】
地盤の支持力を強化する基礎工法であって、
地盤に請求項2記載の基礎用ブロックを、前記天板を上向きとして隣接させると共に、前記天板に形成した連結部どうしを互いに凹凸嵌合させながら多数個設置する工程と、
前記天板に設けられた貫通孔から、前記地盤と前記基礎用ブロックとの間の間詰め材充てん用空間に、間詰め材を充てんする工程とを含むことを特徴とする基礎工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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