説明

基礎隙間防止用保持具、基礎隙間防止具セット、建築物の基礎構造、及び、建築物の基礎の施工方法

【課題】 ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間から白蟻や水分、湿気が侵入することを容易に且つ長期間に亘って防止することが可能な基礎隙間防止用保持具、基礎隙間防止具セット、建築物の基礎構造、及び、建築物の基礎の施工方法を提供すること。
【解決手段】 ベタ基礎と布基礎との境界面に対して交差する面を形成するための隙間防止板材を、前記境界面を横断する位置に配筋される鉄筋に保持するための基礎隙間防止用保持具であって、前記鉄筋を把持するための把持部と、前記隙間防止板材を保持するための保持部とを有することを特徴とする基礎隙間防止用保持具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に隙間が生じるのを防止するために用いられる保持具、これを用いた基礎隙間防止具セット、建築物の基礎構造、及び、建築物の基礎の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎構造として、ベタ基礎の上面に布基礎を立設する構造(以下では、単に「基礎」とも言う。)がよく用いられている。この基礎構造の標準的な施工方法としては、先ず、床下となる領域の周縁を囲むように型枠を組み、鉄筋を配筋し、ベタ基礎用コンクリートを流し込み硬化させてベタ基礎を設け、次に、ベタ基礎上に型枠を組み、布基礎用コンクリートを流し込んで硬化させて布基礎を立設するようにしている。
【0003】
このようにベタ基礎と布基礎とを別々に打設して設けるために、コンクリートの経時的な収縮変形もあって、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に隙間が生じることがある。隙間が生じると、この隙間から白蟻が床下へ侵入したり、雨水などの水分、湿気が床下へ侵入するといった問題が生じる。
【0004】
上記の問題に対して、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じた隙間を通って白蟻や水分が床下に侵入しないように、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目を屋外側から止水機能を有する防蟻剤によって塞ぐ構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目を屋外側又は屋内側(床下空間側)から止水シートにより塞ぐ構造が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−40791号公報
【特許文献2】特開2009−221814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、止水機能を有する防蟻剤によってベタ基礎と布基礎との継ぎ目を塞ぐ場合、防蟻剤は、時間の経過とともに防蟻効果が減衰するために、所定の期間経過すると取り替える必要が生じる。また、防蟻剤は、環境に対しても好ましいものとは言えず、更に、止水機能を持たせるためには、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に屋外側から隙間なく覆う必要があるが、この防蟻剤は、基礎が完成した後に塗りつけるものであるために、その際、基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要があり、その作業が煩わしく、作業者による出来栄えのムラが生じることが危惧される。
【0007】
また、止水シートを、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に隙間なく覆うように貼り付ける場合も、予め基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要があり、その作業が煩わしく、作業者による出来栄えのムラが生じることが危惧される。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間から白蟻や水分、湿気が侵入することを容易に且つ長期間に亘って防止することが可能な基礎隙間防止用保持具、基礎隙間防止具セット、建築物の基礎構造、及び、建築物の基礎の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) ベタ基礎と布基礎との境界面に対して交差する面を形成するための隙間防止板材を、前記境界面を横断する位置に配筋される鉄筋に保持するための基礎隙間防止用保持具であって、前記鉄筋を把持するための把持部と、前記隙間防止板材を保持するための保持部とを有することを特徴とする基礎隙間防止用保持具。
【0010】
(1)の発明によれば、基礎隙間防止用保持具が保持する隙間防止板材によって、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間が遮断される。その結果、外部から白蟻や水分、湿気が床下へ侵入するのを防止できる。また、隙間防止板材は、基礎隙間防止用保持具を介して、ベタ基礎の内部及び布基礎の内部の鉄筋に取り付けられる。すなわち、隙間防止板材は、ベタ基礎及び布基礎の形成過程内で配置される。その結果、ベタ基礎及び布基礎を形成した後に、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に防蟻剤を塗布したり、止水シートを貼り付けたりする場合よりも、予め基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要がないので、取り付け作業が簡単である。更に、隙間防止板材等が外観に現れないので、作業者による出来栄えの差が軽減される。加えて、隙間防止板材をベタ基礎及び布基礎の内部に埋め込んで一体的にすることで、防蟻剤や止水シートが露出したり、土と接触する場合よりも、止水効果、防蟻効果などの経時的な劣化が格段に軽減される。
【0011】
更に、本発明は、以下のようなものを提供する。
(2) 前記(1)に記載の基礎隙間防止用保持具と、該基礎隙間防止用保持具に保持される隙間防止板材とを含むことを特徴とする基礎隙間防止具セット。
【0012】
(2)の発明によれば、隙間防止板材によって、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間が遮断される。その結果、外部から白蟻や水分、湿気が床下へ侵入するのを防止できる。また、隙間防止板材は、ベタ基礎及び布基礎の内部に配置される。すなわち、隙間防止板材は、ベタ基礎及び布基礎の形成過程内で配置される。その結果、ベタ基礎及び布基礎を形成した後に、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に防蟻剤を塗布したり、止水シートを貼り付けたりする場合よりも、予め基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要がないので、取り付け作業が簡単である。更に、隙間防止板材等が外観に現れないので、作業者による出来栄えの差が軽減される。加えて、隙間防止板材をベタ基礎及び布基礎の内部に埋め込んで一体的にすることで、防蟻剤や止水シートが露出したり、土と接触する場合よりも、止水効果、防蟻効果などの経時的な劣化が格段に軽減される。
【0013】
更に、本発明は、以下のようなものを提供する。
(3) ベタ基礎と、前記ベタ基礎の上面に立設される布基礎と、前記ベタ基礎と前記布基礎との境界面に対して交差する面を形成するように前記ベタ基礎及び前記布基礎の内部に配置される隙間防止板材と、前記ベタ基礎の内部から前記布基礎の内部まで前記境界面を突き抜けて延びる鉄筋と、前記鉄筋に取り付けられるとともに前記隙間防止板材を保持する基礎隙間防止用保持具とを備えることを特徴とする建築物の基礎構造。
【0014】
(3)の発明によれば、基礎隙間防止用保持具が保持する隙間防止板材によって、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間が遮断される。その結果、外部から白蟻や水分、湿気が床下へ侵入するのを防止できる。また、隙間防止板材は、基礎隙間防止用保持具を介して、ベタ基礎の内部及び布基礎の内部の鉄筋に取り付けられる。すなわち、隙間防止板材は、ベタ基礎及び布基礎の形成過程内で配置される。その結果、ベタ基礎及び布基礎を形成した後に、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に防蟻剤を塗布したり、止水シートを貼り付けたりする場合よりも、予め基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要がないので、取り付け作業が簡単である。更に、隙間防止板材等が外観に現れないので、作業者による出来栄えの差が軽減される。加えて、隙間防止板材をベタ基礎及び布基礎の内部に埋め込んで一体的にすることで、防蟻剤や止水シートが露出したり、土と接触する場合よりも、止水効果、防蟻効果などの経時的な劣化が格段に軽減される。
【0015】
更に、本発明は、以下のようなものを提供する。
(4) 基礎形成領域に鉄筋を配筋する工程と、隙間防止板材を、該隙間防止板材を保持するための基礎隙間防止用保持具を介して前記鉄筋に取り付けることにより、前記隙間防止板材を前記基礎形成領域の周縁に配設する工程と、前記隙間防止板材の一部が埋設するようにベタ基礎を形成する工程と、前記ベタ基礎の上面に、前記ベタ基礎から突出する前記隙間防止板材の残りの一部を埋設するように布基礎を形成する工程とを有することを特徴とする建築物の基礎の施工方法。
【0016】
(4)の発明によれば、基礎隙間防止用保持具が保持する隙間防止板材によって、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間が遮断される。その結果、外部から白蟻や水分、湿気が床下へ侵入するのを防止できる。また、隙間防止板材は、基礎隙間防止用保持具を介して、ベタ基礎の内部及び布基礎の内部の鉄筋に取り付けられる。すなわち、隙間防止板材は、ベタ基礎及び布基礎の形成過程内で配置される。その結果、ベタ基礎及び布基礎を形成した後に、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に防蟻剤を塗布したり、止水シートを貼り付けたりする場合よりも、予め基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要がないので、取り付け作業が簡単である。更に、隙間防止板材等が外観に現れないので、作業者による出来栄えの差が軽減される。加えて、隙間防止板材をベタ基礎及び布基礎の内部に埋め込んで一体的にすることで、防蟻剤や止水シートが露出したり、土と接触する場合よりも、止水効果、防蟻効果などの経時的な劣化が格段に軽減される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベタ基礎と布基礎との継ぎ目に生じる隙間から白蟻や水分、湿気が侵入することを容易に且つ長期間に亘って防止することが可能な基礎隙間防止用保持具、基礎隙間防止具セット、建築物の基礎構造、及び、建築物の基礎の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る基礎を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具の斜視図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具に隙間防止板材を取り付けた状態を示す基礎隙間防止具セットの上面図であり、(c)は、(b)に示した基礎隙間防止具セットの正面図であり、(d)は、(b)に示した基礎隙間防止具セットの右側面図である。
【図3−1】本発明に係る建築物の基礎の施工方法を説明するための図である。
【図3−2】本発明に係る建築物の基礎の施工方法を説明するための図である。
【図3−3】本発明に係る建築物の基礎の施工方法を説明するための図である。
【図3−4】本発明に係る建築物の基礎の施工方法を説明するための図である。
【図4】本発明に係る建築物の基礎の施工方法を説明するための図である。
【図5】(a)は、本発明の他の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具の斜視図であり、(b)は、その上面図であり、(c)は、その右側面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具の斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係る隙間防止板材の斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る隙間防止板材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
勿論、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【0020】
まず、図1を用いて、本発明の実施形態に係る基礎の概略について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る基礎を模式的に示す断面図である。
【0021】
まず、建築物を建てるべき土地(基礎形成領域)の外殻部や内殻部が所定の幅及び深さに掘り下げられ、その上に割栗石20が敷設され、割栗石20の間に砕石が敷設される。次に、割り栗石20の上に捨てコンクリート21が打設され、捨てコンクリート21の上にスペーサーブロック25を介して、捨てコンクリート21に略平行な鉄筋と略垂直な鉄筋とからなる鉄筋3が配筋される。割栗石20及び捨てコンクリート21は、外縁部分が一段低く形成され、内側の高い部分との間には、内側から外側に向かって次第に低くなるようにスロープが形成されている。
【0022】
次に、捨てコンクリートと略垂直な鉄筋3に基礎隙間防止用保持具1が取り付けられ、基礎隙間防止用保持具1に隙間防止板材2が取り付けられる。基礎隙間防止用保持具1は、隙間防止板材2を保持するための部材であり、隙間防止板材2は、後述するベタ基礎4と布基礎5との隙間から白蟻や水分、湿気が侵入することを防止する部材である。したがって、基礎隙間防止用保持具1及び隙間防止板材2は、組み合わせて用いられるものであり、基礎隙間防止具セット6を構成するものである。基礎隙間防止用保持具1が取り付けられる位置は、ベタ基礎4が形成される高さによって決まる。具体的には、基礎隙間防止用保持具1によって保持される隙間防止板材2のおよそ半分がベタ基礎4に埋まる位置に基礎隙間防止保持具1は取り付けられる。図1では、隙間防止板材2は鉄筋3よりも屋外側に取り付けられているが、屋内側に取り付けられていてもよい。
【0023】
次に、捨てコンクリート21の外殻部に巾止金具22が取り付けられ、巾止金具22を介して外側化粧型枠23が取り付けられる。外側化粧型枠23は、基礎形成後そのまま基礎の外側表面に残されるため、色彩、模様、凹凸形状等やこれらを結合したものが施された、見栄えのよいものであることが好ましい。
【0024】
外側化粧型枠23が取り付けられた後、基礎形成領域にベタ基礎4が形成される。鉄筋3、基礎隙間防止用保持具1、及び、隙間防止板材2は、それぞれ一部がベタ基礎4に埋設され、残りの一部がベタ基礎4の上部から突き出ることとなる。
【0025】
次に、ベタ基礎4の上部の外側化粧型枠23と対向する位置に巾止金具26が取り付けられ、巾止金具26を介して内側型枠24が取り付けられる。更に、内側型枠24の上部と外側化粧型枠23の上部とが巾止金具27により固定され、内側型枠24と外側化粧型枠23との間に布基礎5が形成される。ベタ基礎4の上部から突き出た鉄筋3、基礎隙間防止用保持具1、及び、隙間防止板材2は、布基礎5に埋設される。その結果、隙間防止板材2の主面は、ベタ基礎4と布基礎5との境界面に対して交差する。
【0026】
以上、本発明の実施形態に係る基礎の概略について説明した。
次に、図2を用いて本発明の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具について説明する。図2(a)は、本発明の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具の斜視図であり、(b)は、本発明の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具に隙間防止板材を取り付けた状態を示す基礎隙間防止具セットの上面図であり、(c)は、(b)に示した基礎隙間防止具セットの正面図であり、(d)は、(b)に示した基礎隙間防止具セットの右側面図である。
【0027】
基礎隙間防止用保持具1は、鉄筋3を把持するための把持部10と、隙間防止板材2を保持するための保持部11とを含む。すなわち、基礎隙間防止用保持具1を介して、鉄筋3に隙間防止板材2は保持される。
【0028】
図2に示されるように、把持部10は、保持部11から突出し、かつ円柱状の鉄筋3の断面形状に合わせた形にカーブした2つの脚部から構成されている。一対の脚部は、互いに対称な構造を有し、鉄筋3を把持した状態では、脚部と脚部との間(把持空間)に鉄筋3が配置され、鉄筋3の外周面と脚部の内側の面とが接し合う。一対の脚部の間隔は拡張可能であり、基礎隙間防止用保持具1を鉄筋3に押し込むことにより、鉄筋3を把持する。把持空間に鉄筋3を押し込むことが容易となるように、脚部の先端には、鉄筋3を押し付け可能な受け部が設けられている。本実施形態の基礎隙間防止用保持具1によれば、押し込むことにより鉄筋3に容易に取り付けることができる。また、基礎隙間防止用保持具1を取り付ける位置がずれたり、取り付ける場所を間違った場合に容易に取り外すこともできる。
【0029】
また、保持部11は、基体部と、該基体部の上下端から突出した一対の鉤状部とから構成され、全体として「コ」の字の両端が隙間防止板材2を包むように折り曲げられた形状を有する。基体部は、隙間防止板材2の裏面に対向し、一対の鉤状部は、隙間防止板材2の上下面、及び、隙間防止板材2の正面の上下端に対向する。そして、隙間防止板材2は、正面方向から押し込んで取り付けることができる。これにより、紐で縛ったりネジ留めしたりせずに隙間防止板材2を鉄筋3に取り付けることが可能となるため、隙間防止板材2の取り付けの微調整ややり直しを容易に行うことができる。
【0030】
基礎隙間防止用保持具1の形状、すなわち、把持部10及び保持部11の形状は、図2に示された形状に限定されない。把持部10は、ずれることなく鉄筋3を把持する構造を有していればよく、例えば、ネジ留め構造を有していてもよい。保持部11も、又、ずれることなく隙間防止板材2を保持する構造を有していればよく、例えば、ネジ留め構造を有していてもよい。
【0031】
基礎隙間防止用保持具1の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属材料、樹脂材料等を挙げることができる。金属材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス、鋳鉄等を挙げることができる。セラミックを用いることとしてもよい。樹脂材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル、ナイロン等を挙げることができる。また、樹脂材料として、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料を挙げることができる。これらの材料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上述の樹脂材料に加え、例えば、炭酸カルシウム、ガラス繊維等のフィラーを混合したものを用いてもよい。
【0032】
基礎隙間防止用保持具1の大きさは、材料に由来する強度、隙間防止板材2の大きさ、及び、鉄筋3の太さ等により異なってくる。例えば、隙間防止板材2の縦長(ベタ基礎と布基礎の境界面に対して法線方向の長さ)が5cm、厚みが1cmであるとき、保持部11の大きさは、およそ、縦長6cm、横長3cm、幅1.5cm程度となり、このとき、基礎隙間防止用保持具1の大きさは、保持部11の大きさに鉄筋3を把持するための把持部10の大きさを加えた大きさとなる。
【0033】
以上、本実施形態に係る基礎隙間防止用保持具について説明した。
次に、本実施形態に係る隙間防止板材について説明する。
【0034】
隙間防止板材2は、矩形の板材である。隙間防止板材2の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属材料、樹脂材料等を挙げることができる。金属材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス、鋳鉄等を挙げることができる。セラミックを用いることとしてもよい。樹脂材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル、ナイロン等を挙げることができる。また、樹脂材料として、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料を挙げることができる。これらの材料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上述の樹脂材料に加え、例えば、炭酸カルシウム、ガラス繊維等のフィラーを混合したものを用いてもよい。
【0035】
隙間防止板材2の縦長(ベタ基礎と布基礎の境界面に対して法線方向の長さ)は、防水効果、防蟻効果を発揮する程度であれば特に限定されないが、具体的には、3〜8cm程度であることが望ましく、4〜6cm程度であることが更に望ましい。縦長が3cm未満であると、布基礎5に含まれる小石が布基礎5の下部に溜まってできる隙間を完全に塞ぐことができず、防水効果、防蟻効果が充分に発揮されない恐れがある。隙間防止板材2の横長(ベタ基礎と布基礎の境界面に対して交差する面の長さ)は特に限定されないが、具体的には、90〜180cm程度が好ましい。横長が長いと、隙間防止板材2同士の継ぎ目が減るため、継ぎ目を塞ぐ手間を減らすことができる。一方、横長が短いと、隙間防止板材2の取り回しが容易となり、隙間防止板材2を鉄筋3に取り付ける作業の効率を上げることができる。隙間防止板材2の厚みは、材料によって異なるが、耐久性を維持できる程度の厚さであれば特に限定されない。
【0036】
以上、本実施形態に係る隙間防止板材について説明した。
次に図3−1〜図4を用いて、本発明に係る建築物の基礎の施工方法について説明する。図3−1〜図4は、本発明に係る建築物の基礎の施工方法を説明するための図である。
【0037】
まず、図3−1に示すように、基礎隙間防止用保持具1は、把持部10を介して、捨てコンクリート102に対して略垂直に立ち上がる鉄筋3に取り付けられる。図3−1では、基礎隙間防止用保持具1は、全ての鉄筋3に取り付けられているが、全ての鉄筋3に取り付けられる必要は無く、隙間防止板材2を安定して保持することが可能な程度の間隔で鉄筋3に取り付けられていればよい。
【0038】
次に、図3−2に示すように、基礎隙間防止用保持具1の保持部11を介して、隙間防止板材2は、鉄筋3に取り付けられる。隙間防止板材2は、捨てコンクリート102に対して略水平に取り付けられる。複数の隙間防止板材2を用いる場合には、隙間防止板材2同士の継ぎ目を塞ぐための手当てがなされることが好ましい。具体的には、継ぎ目を防水テープで塞ぐ等の手当てがなされることが好ましい。また、隙間防止板材2同士の継ぎ目が、基礎隙間防止用保持具1の保持部11で覆われるように基礎隙間防止用保持具1及び隙間防止板材2を配設することで、隙間防止板材2同士の継ぎ目から水分や白蟻が侵入することを防いでもよい。また、図3−1及び図3−2によれば、基礎隙間防止用保持具1を鉄筋3に取り付けた後に、基礎隙間防止用保持具1に隙間防止板材2を取り付けているが、基礎隙間防止用保持具1に隙間防止板材2を取り付けた後に、基礎隙間防止用保持具1を鉄筋3に取り付けてもよい。
【0039】
図4に示すように、隙間防止板材2は、基礎形成領域の外殻に配筋された鉄筋3に取り付けられ、基礎形成領域の外殻と平行な位置に配置される。基礎形成領域を構成する辺が直線とならず、例えば、湾曲している場合には、該湾曲にあわせて、隙間防止板材2を撓ませたり、変形させたりしてもよい。
【0040】
次に、基礎形成領域の、隙間防止板材2が取り付けられた鉄筋3よりも屋外側に、外側化粧型枠23(図示せず)が配設され、図3−3に示すように、隙間防止板材2の一部(下部)が埋設するようにベタ基礎4が形成される。すなわち、隙間防止板材2の一部(上部)は、ベタ基礎4の上面から突出するようにベタ基礎4が形成される。図3−3では、隙間防止板材2のおよそ半分がベタ基礎4から突出している。隙間防止板材2は、少なくとも、布基礎5に用いられる小石の直径よりも長く突出していることが望ましい。隙間防止板材2の突出長が小石の直径よりも短いと、小石の堆積により生じる隙間を隙間防止板材2で完全に塞げず、充分な防水効果及び防蟻効果が発揮されない恐れがある。
【0041】
次に、ベタ基礎4上の、隙間防止板材2が取り付けられた鉄筋3よりも屋内側に、内側型枠24(図示せず)が配設され、図3−4に示すように、形成されたベタ基礎4の上面に、ベタ基礎4から突出する隙間防止板材2を埋設するように布基礎5が形成される。すなわち、隙間防止板材2は、ベタ基礎4と布基礎5との継ぎ目において、基礎形成領域の外周を囲むように連続的に埋設される。
【0042】
以上、図3−1〜図4を用いて、本発明に係る建築物の基礎の施工方法について説明した。
【0043】
本実施形態においては、基礎隙間防止用保持具1が保持する隙間防止板材2によって、ベタ基礎4と布基礎5との継ぎ目に生じる隙間が遮断される。その結果、屋外から白蟻や水分、湿気が床下へ侵入するのを防止できる。また、隙間防止板材2は、基礎隙間防止用保持具1を介して、ベタ基礎4の内部及び布基礎5の内部の鉄筋3に取り付けられる。すなわち、隙間防止板材2は、ベタ基礎4及び布基礎5の形成過程内で配置される。その結果、ベタ基礎4及び布基礎5を形成した後に、ベタ基礎4と布基礎5との継ぎ目に防蟻剤を塗布したり、止水シートを貼り付けたりする場合よりも、予め基礎の表面の汚れや埃を取り除いておく必要がないので、取り付け作業が簡単であり、かつ、隙間防止板材等が外観に現れないので、作業者による出来栄えの差が軽減される。更に、隙間防止板材をベタ基礎4及び布基礎5の内部に埋め込んで一体的にすることで、防蟻剤や止水シートが露出したり、土と接触する場合よりも、止水効果、防蟻効果などの経時的な劣化が格段に軽減される。
【0044】
図5及び図6を用いて、本発明の他の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具について説明する。図5(a)は、本発明の他の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具の斜視図であり、(b)は、その上面図であり、(c)は、その右側面図である。図6は、本発明の他の実施形態に係る基礎隙間防止用保持具の斜視図である。
【0045】
図5に示すように、基礎隙間防止用保持具1は、把持部10と保持部11とを繋ぐ柄部12を有していてもよい。柄部12により、隙間防止板材2を保持する位置を調整することが可能となる。
【0046】
また、図6に示すように、基礎隙間防止用保持具1は、保持部11が直交する2つの基体部の結合から形成されていてもよい。基礎形成領域の外周を形成する2辺が直交するとき、該2辺の交点に配設された鉄筋3に、図6に示された基礎隙間防止用保持具1が取り付けられることにより、交点で接する2つの隙間防止板材2を基礎隙間防止用保持具1を介して容易に接ぐことが可能となる。これにより、基礎の角の部分においても確実に水分や白蟻の侵入を防ぐことが可能となる。
【0047】
更に、図7及び図8を用いて、本発明の他の実施形態に係る隙間防止板材について説明する。図7及び図8は、本発明の他の実施形態に係る隙間防止板材の斜視図である。
【0048】
図7に示すように、隙間防止板材2は、両主面が複数の異なる平面の結合から形成されていてもよい。このような隙間防止板材2を用いると、隙間防止板材2とベタ基礎4及び布基礎5とが接触する面積が増えるため、隙間防止板材2と基礎との接合を一層強固なものとすることができ、隙間防止板材2と基礎との一体性を高めることで、より止水効果及び防蟻効果を高めることが可能となる。
【0049】
また、図8に示すように、隙間防止板材2は、主面の上部及び下部に貫通孔が設けられていてもよい。このような隙間防止板材2を用いると、下部の貫通孔には、ベタ基礎4が入り込み、上部の貫通孔には布基礎5が入り込むこととなる。その結果、隙間防止板材2と基礎との接合を一層強固なものとすることができ、隙間防止板材2と基礎との一体性を高めることで、より止水効果及び防蟻効果を高めることが可能となる。
【0050】
そして、隙間防止板材2の主面の形状は、図7及び図8に示した例に限定されない。例えば、主面の少なくとも一部に窪みや突起、又は、それらの結合が設けられていてもよいし、主面の少なくとも一部が粗面化されていてもよい。これらの形態によっても、隙間防止板材2と基礎との接合を一層強固なものとすることができる。
【0051】
更に、隙間防止板材2は、基礎形成用の生コンクリートを流し込んだときに及ぶ応力によって捲り上がらない程度の硬度を有するものであれば、シート状、フィルム状の構造物から形成されていてもよい。
【0052】
以上、本発明に係る基礎隙間防止用保持具、基礎隙間防止具セット、建築物の基礎構造、及び、建築物の基礎の施工方法の実施形態について説明したが、本発明の基礎隙間防止用保持具、基礎隙間防止具セット、建築物の基礎構造、及び、建築物の基礎の施工方法は、上述した例に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 基礎隙間防止用保持具
2 隙間防止板材
3 鉄筋
4 ベタ基礎
5 布基礎
6 基礎隙間防止具セット
10 把持部
11 保持部
20 割栗石
21 捨てコンクリート
22、26、27 巾止金具
23 外側化粧型枠
24 内側型枠
25 スペーサーブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベタ基礎と布基礎との境界面に対して交差する面を形成するための隙間防止板材を、前記境界面を横断する位置に配筋される鉄筋に保持するための基礎隙間防止用保持具であって、
前記鉄筋を把持するための把持部と、
前記隙間防止板材を保持するための保持部と
を有することを特徴とする基礎隙間防止用保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の基礎隙間防止用保持具と、
該基礎隙間防止用保持具に保持される隙間防止板材と
を含むことを特徴とする基礎隙間防止具セット。
【請求項3】
ベタ基礎と、
前記ベタ基礎の上面に立設される布基礎と、
前記ベタ基礎と前記布基礎との境界面に対して交差する面を形成するように前記ベタ基礎及び前記布基礎の内部に配置される隙間防止板材と、
前記ベタ基礎の内部から前記布基礎の内部まで前記境界面を突き抜けて延びる鉄筋と、
前記鉄筋に取り付けられるとともに前記隙間防止板材を保持する基礎隙間防止用保持具と
を備えることを特徴とする建築物の基礎構造。
【請求項4】
基礎形成領域に鉄筋を配筋する工程と、
隙間防止板材を、該隙間防止板材を保持するための基礎隙間防止用保持具を介して前記鉄筋に取り付けることにより、前記隙間防止板材を前記基礎形成領域の周縁に配設する工程と、
前記隙間防止板材の一部が埋設するようにベタ基礎を形成する工程と、
前記ベタ基礎の上面に、前記ベタ基礎から突出する前記隙間防止板材の残りの一部を埋設するように布基礎を形成する工程と
を有することを特徴とする建築物の基礎の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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