説明

堆積ベニヤ単板群からのベニヤ単板分離方法及びその装置

【課題】少なくとも最上層の単板を保持した保持部材を上方へ移動する際の移動距離や移動時間を短くして最上層の単板から、同時に保持された次層以下の単板を確実に分離させる。最上層の単板に対する次層の単板の分離作業を効率的に行い、合板製造を効率化する。
【解決手段】単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動するまでに、規制部材により最上層から2層目の単板が上方へ移動されるのを規制し、次いで該保持部材を回動して堆積単板群から最上層の単板のみを分離可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数枚のベニヤ単板(以下、単板と称する。)を、繊維方向が一致した状態で、かつ繊維方向端縁を所要の幅で交互にずらして堆積された堆積単板群から最上層の単板のみを分離させる堆積単板群からの単板分離方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維方向幅が一定の長さで、繊維直交方向幅が所要の長さで定尺切断された単板(本発明において単板とは、繊維直交方向に連続する一枚状のワンピース単板の他に、繊維直交方向幅が所要の長さに満たない複数の短尺単板相互を隣接して繊維直交方向幅を所要の長さになるように整列して1枚とした短尺単板群も含む。)を、例えば昇降作動する堆積台上に堆積する際には、次の処理作業を円滑に行う必要から多数枚の単板を、繊維方向を一致させた状態で、かつ繊維方向の端縁を所要の幅で交互にずらして堆積している。
【0003】
上記のように堆積された堆積単板群から最上層の単板を順に取出すには、例えば特許文献1に示すように、最上層の単板を吸着保持して上方へ持ち上げる際に、後端縁係止手段及び前端縁係止手段を選択的に作動して最上層の単板の下層に位置する単板で、最上層の単板の端からはみ出した端縁を押圧した状態で吸着保持された最上層の単板を所定の方向へ送出すことにより上層側に位置する複数枚の単板が同時に取出されるのを防止している。
【0004】
特許文献1に示す方法にあっては、最上層の単板と次層の単板とを分離する際には、両者間に空気を流入させる構成しているが、両者間に空気を流入させるには、次層の単板に対する最上層の単板の持ち上げ距離や角度を大きくしたり、上方への移動速度を遅くする必要がある。このため、堆積単板群から最上層の単板のみを確実に分離して取出すのに時間がかかり、合板の製造効率が悪くなる問題を有している。
【特許文献1】特公平6−43保持部材216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、堆積単板群から最上層の単板を確実に分離するのに時間がかかり、合板の製造効率を悪くする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は、単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動するまでに、規制部材を、堆積単板群の最上層から2層目で、最上層の単板で覆われていない繊維方向端縁側へ移動して上記2層目の単板が上方へ移動されるのを規制し、次いで該保持部材を、繊維方向と直交する方向の軸中心線を回動中心として保持された単板の規制部材と反対側が下がるように回動して堆積単板群から最上層の単板のみを分離可能にしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動するまでに、規制部材を、堆積単板群の最上層から2層目で、最上層の単板で覆われていない繊維方向端縁側へ移動して上記2層目の単板が上方へ移動されるのを規制すると共に当接部材を、保持部材に保持された最上層の単板における規制部材と反対側の繊維方向端縁に当接し、次いで該保持部材を、繊維方向と直交する方向の軸中心線を回動中心として保持された単板の当接部材側が下がるように回動して堆積単板群から最上層の単板のみを分離可能にしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、堆積単板群における最上層の単板に対し、少なくとも昇降可能に設けられ、少なくとも上記最上層の単板を保持する保持部材と、単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、堆積単板群の最上層から2層目で、最上層の単板で覆われていない繊維方向端縁側へ移動して上記2層目の単板が上方へ移動されるのを規制する規制部材と、単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、保持部材を、繊維方向と直交する方向の軸中心線を回動中心として保持された単板の当接部材と反対側が下がるように回動させる回動部材とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項4は、堆積単板群における最上層の単板に対し、少なくとも昇降可能に設けられ、少なくとも上記最上層の単板を繊維方向中間部にて繊維直交方向にわたって保持する保持部材と、単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、堆積単板群の最上層から2層目で、最上層の単板で覆われていない繊維方向端縁側へ移動して上記2層目の単板が上方へ移動されるのを規制する規制部材と、単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、保持部材に保持された最上層の単板における規制部材と反対側の繊維方向端縁に当接する当接部材と、単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、保持部材を、繊維方向と直交する方向の軸中心線を回動中心として保持された単板の当接部材側が下がるように回動させる回動部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、少なくとも最上層の単板を保持した保持部材を上方へ移動する際の移動距離や移動時間を短くして最上層の単板から、同時に保持された次層以下の単板を確実に分離させることができる。最上層の単板に対する次層の単板の分離作業を効率的に行い、合板製造を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動するまでに、規制部材により最上層から2層目の単板が上方へ移動されるのを規制し、次いで該保持部材を回動して堆積単板群から最上層の単板のみを分離可能にすることを最良の形態とする。
【実施例1】
【0012】
以下に実施形態を示す図に従って本発明を説明する。
先ず、本発明方法を具体化した単板分離装置を説明すると、図1乃至図2において、単板分離装置1の本体フレーム(図示せず)下部には堆積台5が配置され、該堆積台5は載置された堆積単板群7の最上層に位置する単板9が、常に一定の高さ位置になるように昇降駆動される。また、堆積台5上の堆積単板群7は、多数枚の単板9を、それぞれの繊維方向が一致し、かつそれぞれの繊維方向端が所要の幅で交互にずれた状態で堆積されている。
【0013】
上記したように単板9としては、所要の繊維方向幅で繊維直交方向が所要の幅に定尺切断された連続する一枚状のワンピース単板、または所要の繊維方向幅で、繊維直交方向が上記所定尺に満たない複数枚の短尺単板を、相互が隣接するように整列して上記所定尺とした短尺単板群の何れであってもよい。図は説明の便宜上、単板9としてワンピース状単板を示す。
【0014】
本体フレームの図示する左側には単板9の搬出手段11が、堆積台5に載置された堆積単板群7の最上層位置より若干上方の位置に設けられている。該搬出手段11は単板9の繊維直交方向に軸線を有し、かつ単板9の繊維直交方向幅より若干長い軸線長さで、電動モータ(図示せず)に連結されて所定の方向へ回転する駆動回転体13と、駆動回転体13の外周面に対して近接するように揺動されて駆動回転体13との協働により単板9を搬出する押圧回転体15とから構成される。
【0015】
堆積台5上方の本体フレームには単板9の繊維方向と一致し、搬出手段11側へ所要の長さで延出する2本のレール15が単板9の繊維直交方向中央部にて適宜の間隔をおいて取付けられ、各レール15には本体フレームに取付けられたエアーシリンダー等の移動部材17に連結されたスライダー19が、レール15の長手方向(繊維方向)へ移動するように支持されている。
【0016】
各スライダー19には、例えば2段エアーシリンダー等のように選択的に上下方向の3位置にて昇降作動する昇降部材23の基端部がそれぞれ揺動するように支持され、各昇降部材23の作動軸23aには後述する保持部材21がチェーン等の連結部材25を介して回動するように取付けられている。該保持部材21は、昇降部材23の昇降作動に伴って最上方の分離位置、上記分離位置より若干下方で保持部材21に保持された単板9を上記搬出手段11へ供給可能な単板取出し位置及び堆積単板群7における最上層の単板9の上面に当接して保持可能な保持位置へ選択的に昇降される。
【0017】
上記保持部材21は、図示する左右(繊維方向)の幅が単板9の繊維方向中央部を保持して持ち上げ可能な幅で、図示する前後(繊維直交方向)の幅が単板9の繊維直交方向幅にほぼ一致する長さで、例えばブロアー装置等の排気装置(図示せず)が接続され、単板9を負圧により吸引して保持する。具体的には単板9の繊維直交方向に軸線を有し、単板9の繊維方向に適宜の間隔をおいて隣接配置された2本の吸引パイプ21aと、各吸引パイプ21aの外周下部に多数の吸盤21bを単板9の繊維直交方向へ適宜の間隔をおいて取付けた構成で、上記各吸引パイプ21aは排気装置に接続されている。
【0018】
分離位置より若干下方に位置する本体フレームには保持部材21を回動させる回動部材29が設けられている。該回動部材29は保持部材21が上記分離位置へ移動する際に、該保持部材21の図示する繊維方向の左側及び右側の各吸引パイプ21aに対して選択的に当接して保持部材21を、単板9の繊維直交方向を軸中心線として所要の方向へ選択的に回動させるストッパー29aと、該ストッパー29aを上記した保持部材21の各吸引パイプ21aに対して選択的に相対させて当接するように移動するエアーシリンダー等の作動部材29bにより構成される。
【0019】
堆積台5の図示する左側及び右側に応じた本体フレームの両側面には本発明の規制部材及び当接部材を構成する第1及び第2アーム31・33が、載置された堆積単板群7の繊維方向の各端縁側(図示する単板9の繊維方向左側端縁側及び右側端縁側)を繊維直交方向にわたって跨ぐように設けられている。第1及び第2アーム31・33は図示する堆積台5の前後側面の左側及び右側にて単板9の繊維方向へ延出するように取付けられたレール31a・33a上を移動するように支持され、エアーシリンダー等の作動部材31c・33cに連結されたスライダー31b・33bに上下方向に軸線を有して取付けられた2段エアーシリンダー等のように異なる3位置に選択的に移動させる上下移動部材31d・33dの作動軸31e・33eに固定される。
【0020】
そして上記第1及び第2アーム31・33は、作動部材31c・33c及び上下移動部材31d・33dの選択的作動により、堆積単板群7の繊維方向各端縁側で、最上層から2層目に位置し、最上層の単板9に覆われていない単板9の繊維方向端縁の上面に当接したり、近づく規制位置、該規制位置より上方で、単板9の繊維方向へ移動する保持部材21に対して干渉しない退避位置と、上記規制位置より堆積単板群7の繊維方向中央部寄りで、かつ上記規制位置及び退避位置間で、上方へ移動する保持部材21に保持された単板9の繊維方向の中央部寄りの上面に当接可能な当接位置に選択的に移動される。
【0021】
次に、単板分離装置1による単板分離方法及び作用を説明する。
先ず、初期状態を説明すると、図3に示すように堆積台5に堆積された堆積単板群7は、例えば最上層の単板9が図示する左寄りに位置すると共に2層目の単板9が右寄りに位置するように、多数の単板9が繊維方向へ所要の幅分、交互にずれた状態で堆積されている。この状態では、上記2層目の単板9は、図示する繊維方向右端縁が最上層の単板9に覆われずに露出した状態になっている。また、保持部材21は、移動部材17の作動により堆積単板群7における単板9の繊維方向中央部で、かつ昇降部材23の選択作動により搬出手段11における駆動回転体13の搬送面とほぼ一致する高さの単板取出し位置に移動して待機している。更に、回動部材29のストッパー29aは、作動部材29bの作動により2本の吸引パイプ21aの内、図示する左側の吸引パイプ21aに当接可能な位置に移動待機している。また、更に、一方の第1アーム31は、作動部材31c及び上下移動部材31dの作動により上記した当接位置の上方に、また他方の第2アーム33は作動部材33c及び上下移動部材33dの作動により上記した規制位置の上方に移動待機している。
【0022】
この状態で、昇降部材23を作動して単板取出し位置に待機していた保持部材21を、堆積単板群7における最上層に位置する単板9の繊維方向中央部上面に吸盤21bが当接するように下降し、該箇所を繊維直交方向にわたって吸着保持させた後、昇降部材23を復動して少なくとも最上層の単板9を上方へ移動させる。
【0023】
上記した保持部材21の下降動作開始後のタイミング、保持部材21が下降して吸盤21bが最上層の単板9を吸着するタイミング、少なくとも最上層の単板9を保持した保持部材21が上昇を開始した後のタイミング等のように、上記保持部材21が予め設定された所定の位置まで上昇するまでのタイミングで、先ず、一方の作動部材31c及び上下移動部材31dをそれぞれ作動して一方の第1アーム31を、上昇する保持部材21に保持された最上層の単板9における図示する繊維方向左側の中央部寄り上面に当接可能な当接位置へ移動させる。また、他方の作動部材33c及び上下移動部材33dをそれぞれ作動して他方の第2アーム33を、上記2層目の単板9における図示する繊維方向右端縁の上面に当接、または近づく規制位置へ移動させる。(図4参照)
【0024】
第1及び第2アーム31・33を移動開始する際の上記した「上記保持部材21が予め設定された所定の位置まで上昇するまで」とは、保持部材21が上方へ移動開始される前に第1及び第2アーム31・33を所定の位置へ移動させる態様の他に、保持部材21が上方へ移動開始した後に第1及び第2アーム31・33を所定の位置へ移動させる態様を含み、いずれの場合も規制位置に移動される第2アーム33により2層目の単板9における繊維方向右端部が最上層の単板9と共に持ち上げられるのを規制すればよく、また当接位置に移動される第1アーム31により上方へ移動される少なくとも最上層の単板9における繊維方向左側を屈曲させればよい。
【0025】
保持部材21が最上層の単板9を吸着保持して堆積単板群7から持ち上げる際には、例えば最上層の単板9に厚さ方向で貫通する大きな割れがあることによって生じる保持部材21による吸引力や単板9相互間の負圧、または単板9の樹液による粘着力等により最上層の単板9と共に次層以下の単板9が同時に保持されて取出される恐れがある。
【0026】
このような場合にあっては、図5(図5は最上層と共に2層目の単板9の2枚が同時に吸引保持されて取出される例を示すが、3層目以下の3枚以上の単板9が同時に取出される場合をも含む。)に示すように、保持部材21の上昇途中においては、上記したように遅くとも保持部材21が予め設定された所定の位置まで上昇するまでのタイミングで規制位置に移動された第2アーム33が、最上層の単板9に覆われていない上記2層目に位置する単板9の図示する繊維方向右端縁の上面に当接して該2層目の単板9が持ち上げられるのを規制し、保持部材21に吸着保持された最上層の単板9下面から2層目の単板9を強制的に剥がして、吸盤21bより第2アーム33側で側両者間に空隙を形成させる。
【0027】
また、保持部材21の上昇途中においては、図6に示すように、上記第2アーム33による作用と共に、または該作用とは別に上記当接位置に移動された第1アーム31が、保持部材21に吸着保持された最上層の単板9の図示する繊維方向左側上面に当接して最上層の単板9と共に2層目の単板9を、図示する繊維方向左端が斜め下方を向くように屈曲させる。
【0028】
そして保持部材21が更に上昇位置に向かって移動されると、最上層と共に2層目の単板9を吸着保持する吸盤21bが取付けられた2本の吸引パイプ21aの内、図示する左側の吸引パイプ21aの上部にストッパー29aが当接することで左側の吸引パイプ21aの上昇が阻止され、その結果、保持部材21が、単板9の繊維方向と直交する方向を軸中心線として図示する右側が斜め上方を向くように回動させられる。
【0029】
この回動において、最上層の単板9には第1アーム31が上方から当たっているだけであるため、図7に示すように最上層の単板9は、保持部材21に従って第1アーム31が当たっている箇所を中心として反時計回りに回動させられる。
【0030】
一方、2層目の単板9は最上層の単板9を介して第1アーム31により、また第2アーム33からは直接に、それぞれ上方への移動が妨げられるため、図7のように、保持部材21からの力により屈曲させられるだけとなる。
【0031】
その結果、両単板9・9の間の空隙を更に拡大させることとなり、保持部材21に吸着された最上層の単板9が2層目の単板9から分離される。
【0032】
上記動作後においては、昇降部材23を選択的に復動して保持部材21を取出し位置へ下降させると共に作動部材31c・33c、上下移動部材31d・33dを選択的に作動して第1及び第2アーム31・33をそれぞれの退避位置へ移動し、図8に示すように保持部材21に吸着保持された最上層の単板9をほぼ水平状態の姿勢にさせる。次に、図9に示すように移動部材17を作動して保持部材21を搬出手段11側へ移動し、吸着保持された最上層の単板9における図示する繊維方向左端側を駆動回転体13上に移載させるタイミングで保持部材21による最上層の単板9の吸着を解除させると共に押圧回転体15を駆動回転体13に向かって揺動し、回転駆動する駆動回転体13とにより挟持して単板9を排出させる。尚、最上層の単板9を搬出する際に、退避位置へ移動した第2アーム33を、当接位置の上方へ移動して待機させる。
【0033】
上記動作後、次に堆積単板群7の最上層に位置する単板9は、上記とは反対に2層目の単板9に対し、図示する繊維方向右寄りにずれており、これにより2層目の単板9は、図示する繊維方向左端縁が、最上層の単板9に覆われずに露出している。また、上記状態においては、回動部材29のストッパー29aは、作動する作動部材29bにより2本の吸引パイプ21aの内、図示する右側の吸引パイプ21aに当接可能な位置に移動して待機している。(図10参照)
【0034】
このように図示する繊維方向右寄りにずれた最上層の単板9を堆積単板群7から取出す場合にあっては、最上層の単板9と共に2層目の単板9を同時に吸着保持した保持部材21を上方へ移動させる際に、図11に示すように上記とは反対に、遅くとも保持部材21が予め設定された所定の位置まで上昇するまでのタイミングで第1アーム31を規制位置へ移動して同時に保持された2層目の単板9における図示する繊維方向左端側が最上層の単板9と共に持ち上げられるのを規制して分離させることにより両者間に空隙を形成させる。
【0035】
また、当接位置に移動した第2アーム33が、保持部材21に吸着保持された最上層の単板9の図示する繊維方向右側上面に当接して最上層の単板9と共に2層目の単板9を、図示する繊維方向右端が斜め下方を向くように屈曲させながら、上方へ移動する保持部材21の図示する右側に位置する吸引パイプ21aの上部に、図示する右側へ移動されたストッパー29aを当接して保持部材21を、単板9の繊維方向と直交する方向を軸中心線として単板9の図示する繊維方向左側が斜め上方を向くように回動させる。(図12参照)
【0036】
これにより保持部材21に吸着保持された最上層の単板9における図示する繊維方向左側と第1アーム31により上方への移動が規制された2層目の単板9における繊維方向左側の間に形成された間隙41を更に拡大させることにより保持部材21に吸着保持された最上層の単板9から2層目の単板9を強制的に分離させる。
【0037】
尚、以後の動作に付いては、図8及び図9に示すのと同様であるため、詳細な説明を省略する。また、上記の方法及び作用を繰り返すことにより堆積単板群7に堆積された多数枚の単板9を順次取出して次工程へ供給する。
【0038】
本実施例方法及び装置は、以下のような場合であっても最上層の単板9から次層の単板9を分離して最上層の単板9のみを確実に取出すことができる。
上記したように堆積台5に堆積される単板9としては、繊維直交方向が所要の長さに定尺切断されて連続するワンピース状単板の他に、繊維直交方向が上記所定尺に満たない複数枚の短尺単板を、相互が隣接するように平面状に整列して上記所定尺とした短尺単板群であっても適用できるが、図13に示すように堆積台5に短尺単板群51を堆積した際には、繊維直交方向端側に位置する短尺単板51aが、堆積時の衝撃や振動等により落下する場合がある。
【0039】
このように繊維直交方向端側の短尺単板51aが落下して欠落した最上層の短尺単板群51を保持部材21により吸引して保持すると、最上層の短尺単板群51において欠落した短尺単板51a箇所に応じた2層目の短尺単板51aが保持部材21に直接保持されて最上層の短尺単板群51と共に上方へ持ち上げられることになる。
【0040】
このような場合であっても、最上層の短尺単板群51と共に2層目の短尺単板51aを直接保持した保持部材21が所要の位置へ持ち上げられるまでに、図14に示すように2層目の短尺単板51aの繊維方向端縁に対して、例えば他方の第2アーム33を当接させて該短尺単板51aが上方へ持ち上げられるのを規制すると共に一方の第1アーム31を最上層の短尺単板群51の第2アーム33と反対側の上面に当接して最上層の短尺単板51aと共に2層目の短尺単板51aが上方へ持ち上げられるのを規制し、この状態で図15に示すように保持部材21を第2アーム33側が上方を向くように回動させることにより2層目の短尺単板51aに対する保持部材21の吸着を解除して堆積状態に戻させる。
【0041】
本実施例は、堆積単板群7から単板9を順次取出す際に保持部材21に最上層の単板9と共に次層の単板9が同時に吸着保持された場合であっても、第1及び第2アーム31・33を選択的に規制位置へ移動して次層の単板9における繊維方向端縁側が最上層の単板9と共に持ち上げられるのを規制した状態で所要の位置に上昇した保持部材21を回動させることにより最上層の単板9から次層の単板9を分離して最上層の単板9のみを確実に取出すことができる。
【0042】
上記説明においては、保持部材21により単板9を吸引保持して堆積単板群7から最上層の単板9を取出す方法及び装置としたが、本発明の保持部材は、少なくとも単板、1枚分の厚さに突出量が設定された突刺体により最上層の単板のみを刺着保持して取出す構成であってもよい。
【0043】
この場合、最上層の単板9を取出し、突刺体を搬出手段11側へ移動した後、突刺体に接近した箇所に設けた剥がし部材の上下往復移動により突刺体から単板9を剥がして駆動回転体13上へ移載させる。
【0044】
上記の実施例1では、最上層の単板9を次層の単板9から分離する際に、例えば第1アーム31を規制部材として次層の単板9の露出している端部側に移動して該次層の単板9が上方へ持ち上げられるのを規制すると共に第2アーム33を当接部材として最上層の単板9で規制部材と反対側の上面に当接させるように、第1及び第2アーム31・33を規制部材及び当接部材として交互に切換えて最上層の単板9から次層の単板9を順次分離するようにしたが、図16及び図17(図16は第2アーム33を規制部材とする場合を、また図17は第1アーム31を規制部材とする場合をそれぞれ示す。)に示すように請求項1及び3に記載された発明に対応して第1及び第2アーム31・33を規制部材として用いて対応する次層の単板9の露出している端部側に交互に移動して上方へ持ち上げられるのを規制して堆積単板群7から最上層の単板9のみを順次分離してもよい。
【0045】
このように第1及び第2アーム31・33を規制部材としてのみ用いて当接部材として用いない場合にあっては、例えば図16に示すように第2アーム33を次層の単板9の露出している端部上に移動して上方への移動を規制した状態で、保持部材21を上方へ移動して最上層の単板9と共に次層の単板9を同時に持ち上げると、例えば図7に示す場合に比べて次層の単板9も最上層の単板9に追従して一緒に持ち上げられて最上層の単板9から次層の単板9を分離させることが困難な場合が生じる。この場合にあっては、図7に示す場合より連結部材25を更に上昇させて保持部材21を大きい角度で回動させることにより最上層の単板9と次層の単板9との間の空隙を更に大きく拡大して両者の分離を確実に行うようにすればよい。
【0046】
上記説明は、最上層の単板9を保持部材21により分離した後、保持部材21を搬出手段11側へ移動して取出すようにしたが、次層の単板9から分離された最上層の単板9を、保持部材21とは別の移動体に受け渡して保持させた後、該移動体を搬出手段11側へ移動させて同様に駆動回転体13などにより搬出するようにしてもよい。
【0047】
上記説明は、排気装置に接続された2本の吸引パイプ21aに多数の吸盤21bをその長手方向へ適宜の間隔をおいて取付け、上記したワンピース状単板の他に短尺単板群をも有効に吸引して保持することができる保持部材21としたが、本発明の保持部材は、堆積される単板を、主にワンピース状単板とする場合にあっては、排気装置に接続され、下面に吸引開口部を有したボックス状保持部材であってもよい。
【0048】
上記説明は、堆積台5の上方に単板9の繊維方向へ移動するように支持されたスライダー19に昇降部材23の基端部を揺動するように支持し、該昇降部材23の作動軸23aに保持部材21をチェーン等の連結部材25を介して取付けると共に保持部材21の上昇位置に応じた箇所に、作動部材29bにより選択的に移動されるストッパー29aを設けて保持部材21を回動するように構成したが、図18に示すようにスライダー19に設けられた上下フレーム71に昇降スライダー73を上下方向へ移動するように支持し、該昇降スライダー73を、例えば2段シリンダー等の上下移動部材75により保持部材21の分離位置、単板取出し位置及び保持位置へ選択的に移動させるように構成する。また、昇降スライダー73に、保持部材21を、繊維直交方向端部を揺動するように支持すると共に昇降スライダー73に設けられたエアーシリンダー等の回動部材77により保持部材21を繊維直交方向の軸中心線を中心に回動させるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る堆積単板群からの単板分離方法を具体化した装置例の概略を示す全体斜視図である。
【図2】図1の矢示A方向からの正面図である。
【図3】初期状態を示す説明図である。
【図4】第1及び第2アームの移動状態を示す説明図である。
【図5】第2アームによる2層目の単板の持ち上げ規制状態を示す説明図である。
【図6】第1アームによる保持された単板の屈曲状態を示す説明図である。
【図7】保持部材の回動状態を示す説明図である。
【図8】2層目の単板が分離された最上層の単板の保持状態を示す説明図である。
【図9】搬出手段側への単板移動状態を示す説明図である。
【図10】2層目の単板が最上層に位置した際の説明図である。
【図11】第1アームによる2層目の単板の持ち上げ規制状態及び第2アームによる保持された単板の屈曲状態を示す説明図である。
【図12】保持部材の回動状態を示す説明図である。
【図13】堆積された短尺単板群において繊維直交方向端部の短尺単板が欠落した状態を示す説明図である。
【図14】欠落した短尺単板箇所に応じた2層目の短尺単板の持ち上げ規制状態を示す説明図である。
【図15】保持部材を回動して2層目の短尺単板を分離する状態を示す説明図である。
【図16】第1アームを規制部材として用いた場合の説明図である。
【図17】第2アームを規制部材として用いた場合の説明図である。
【図18】保持部材の回動機構の変更例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 単板分離装置
7 堆積単板群
9 単板
21 保持部材
21a 吸引パイプ
21b 吸盤
23 昇降部材
29 回動部材
29a ストッパー
31 規制部材及び当接部材を構成する第1アーム
31c 作動部材
31d 上下移動部材
33 規制部材及び当接部材を構成する第2アーム
33c 作動部材
33d 上下移動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維方向を一致させた多数のベニヤ単板を、繊維方向端部が所要の幅で交互にずれた状態で堆積した堆積ベニヤ単板群から最上層のベニヤ単板を昇降する保持部材に保持して分離する方法にあって、ベニヤ単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動するまでに、規制部材を、堆積ベニヤ単板群の最上層から2層目で、最上層のベニヤ単板で覆われていない繊維方向端縁側へ移動して上記2層目のベニヤ単板が上方へ移動されるのを規制し、次いで該保持部材を、繊維方向と直交する方向の軸中心線を回動中心として保持されたベニヤ単板の規制部材と反対側が下がるように回動して堆積ベニヤ単板群から最上層のベニヤ単板のみを分離可能にした堆積ベニヤ単板群からのベニヤ単板分離方法。
【請求項2】
繊維方向を一致させた多数のベニヤ単板を、繊維方向端部が所要の幅で交互にずれた状態で堆積した堆積ベニヤ単板群から最上層のベニヤ単板を昇降する保持部材に保持して分離する方法にあって、ベニヤ単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動するまでに、規制部材を、堆積ベニヤ単板群の最上層から2層目で、最上層のベニヤ単板で覆われていない繊維方向端縁側へ移動して上記2層目のベニヤ単板が上方へ移動されるのを規制すると共に当接部材を、保持部材に保持された最上層のベニヤ単板における規制部材と反対側の繊維方向端縁に当接し、次いで該保持部材を、繊維方向と直交する方向の軸中心線を回動中心として保持されたベニヤ単板の当接部材側が下がるように回動して堆積ベニヤ単板群から最上層のベニヤ単板のみを分離可能にした堆積ベニヤ単板群からのベニヤ単板分離方法。
【請求項3】
繊維方向を一致させた多数のベニヤ単板を、繊維方向端部が所要の幅で交互にずれた状態で堆積した堆積ベニヤ単板群における最上層のベニヤ単板に対し、少なくとも昇降可能に設けられ、少なくとも上記最上層のベニヤ単板を繊維方向中間部にて繊維直交方向にわたって保持する保持部材と、ベニヤ単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、堆積ベニヤ単板群の最上層から2層目で、最上層のベニヤ単板で覆われていない繊維方向端縁側へ移動して上記2層目のベニヤ単板が上方へ移動されるのを規制する規制部材と、ベニヤ単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、保持部材を、繊維方向と直交する方向の軸中心線を回動中心として保持されたベニヤ単板の当接部材と反対側が下がるように回動させる回動部材とを備えた堆積ベニヤ単板群からのベニヤ単板分離装置。
【請求項4】
繊維方向を一致させた多数のベニヤ単板を、繊維方向端部が所要の幅で交互にずれた状態で堆積した堆積ベニヤ単板群における最上層のベニヤ単板に対し、少なくとも昇降可能に設けられ、少なくとも上記最上層のベニヤ単板を繊維方向中間部にて繊維直交方向にわたって保持する保持部材と、ベニヤ単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、堆積ベニヤ単板群の最上層から2層目で、最上層のベニヤ単板で覆われていない繊維方向端縁側へ移動して上記2層目のベニヤ単板が上方へ移動されるのを規制する規制部材と、ベニヤ単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、保持部材に保持された最上層のベニヤ単板における規制部材と反対側の繊維方向端縁に当接する当接部材と、ベニヤ単板を保持した保持部材が所定の上方位置へ移動する際に、保持部材を、繊維方向と直交する方向の軸中心線を回動中心として保持されたベニヤ単板の当接部材側が下がるように回動させる回動部材とを備えた堆積ベニヤ単板群からのベニヤ単板分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−69447(P2007−69447A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258677(P2005−258677)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000155182)株式会社名南製作所 (77)
【Fターム(参考)】