説明

堆肥の製造方法

【課題】抗生物質を使わない天然資材のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を完熟させてなる発酵鶏糞と茸栽培に使用した不純物の無い培養基とを所定割合で混合し、混合原料に微生物及び抗生物質を使わない天然資材を所定割合で添加混合し、混合物を所定の発酵条件下において完熟発酵させてなるから、この堆肥は人間、植物、動物に無害であり、健全な作物栽培を行うことができる。
【解決手段】抗生物質を使わない天然資材5のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を完熟させてなる発酵鶏糞1と茸栽培に使用した不純物の無い培養基2とを所定割合で混合し、混合原料3に微生物4及び抗生物質を使わない天然資材を所定割合で添加混合し、混合物6を所定の発酵条件下において完熟発酵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば米、野菜等の各種農作物の栽培に用いられる堆肥の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の堆肥の製造方法として、牛糞、豚糞、鶏糞などの畜糞に調整材を配合し、畜糞及び調整材の種類や配合割合、外気温、水分含有率などの発酵条件に応じて発酵させて堆肥を製造する堆肥の製造方法が知られている。
【特許文献1】特開2000−169273
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の堆肥の製造方法の場合、元々原料の悪臭が堆肥中に残っていたり、或いは、不十分な発酵により悪臭を発生する堆肥が多く、このため、堆肥中に土壌を混ぜたり、大型の脱臭装置により脱臭処理しなければならず、又、発酵が不十分であると腐敗を招き易く、有害物質の発生が生じ易く、又、土が痩せ、作物の連作障害が生ずることもあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、抗生物質を使わない天然資材のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を完熟させてなる発酵鶏糞と茸栽培に使用した不純物の無い培養基とを所定割合で混合し、該混合原料に微生物及び抗生物質を使わない天然資材を所定割合で添加混合し、該混合物を所定の発酵条件下において完熟発酵させることを特徴とする堆肥の製造方法にある。
【0005】
又、請求項2記載の発明は、上記発酵鶏糞の水分含有率は15重量%〜18重量%であることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記発酵鶏糞と培養基との混合割合は発酵鶏糞が20重量%〜60重量%、培養基が40重量%〜80重量%であることを特徴とするものであり、又、請求項4記載の発明は、上記発酵鶏糞と培養基とからなる混合原料に対して、上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を0.001重量%〜0.003重量%添加することを特徴とするものである。
【0006】
又、請求項5記載の発明は、上記混合原料に上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を添加してなる混合物を野積みで積算温度が1800℃〜2100℃程度に達するまでは内部温度を60℃〜80℃、水分含有率を45重量%以下に保持し、その後、水分含有率を15重量%〜18重量%程度に保持して積算温度が2400℃〜2600℃程度に達するまで完熟自然発酵させることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記混合原料に上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を添加してなる混合物を発酵装置で60℃〜80℃の温度で30時間〜36時間発酵させ、その後、野積みで3日〜5日程度完熟自然発酵させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述の如く、請求項1記載の発明にあっては、抗生物質を使わない天然資材のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を完熟させてなる発酵鶏糞と茸栽培に使用した不純物の無い培養基とを所定割合で混合し、該混合原料に微生物及び抗生物質を使わない天然資材を所定割合で添加混合し、該混合物を所定の発酵条件下において完熟発酵させてなるから、この堆肥は人間、植物、動物に無害であり、特に、混合原料に微生物及び抗生物質を使わない天然資材を所定割合で添加混合することにより、微生物の繁殖を盛んにすると共に土壌改良を進める作用をなし、土壌の理化学性が向上し、土壌の保肥力の増大により、作物への肥料要素の利用度が向上し、根圏微生物が増え、健全な土壌微生物相になることが期待され、土壌の緩衝能を高め、作物へのストレスを緩和することができ、堆肥の臭いが少なく、堆肥の作物への使用により作物の活性化や害虫の被害、風水害などには倒れにくく落ちにくい作物を作ることができ、野菜などの連作障害も防ぐことができ、健全な作物栽培を行うことができる。
【0008】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記発酵鶏糞の水分含有率を15重量%〜18重量%にしてあるから、微生物の活性化を図ることができ、良好な堆肥を得ることができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記発酵鶏糞と培養基との混合割合を発酵鶏糞が20重量%〜60重量%、培養基が40重量%〜80重量%にしているから、発酵鶏糞と培養基の成分を有効に活用することができ、又、請求項4記載の発明にあっては、上記発酵鶏糞と培養基とからなる混合原料に対して、上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を0.001重量%〜0.003重量%添加するようにしているから、上記微生物の活性化を図ることができ、良好な堆肥を得ることができる。
【0009】
又、請求項5記載の発明にあっては、上記混合原料に上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を添加してなる混合物を野積みで積算温度が1800℃〜2100℃程度に達するまでは内部温度を60℃〜80℃、水分含有率を45重量%以下に保持し、その後、水分含有率を15重量%〜18重量%程度に保持して積算温度が2400℃〜2600℃程度に達するまで完熟自然発酵させるようにしているから、微生物の活性化を図ることができ、良好な堆肥を得ることができ、又、請求項6記載の発明にあっては、上記混合原料に上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を添加してなる混合物を発酵装置で60℃〜80℃の温度で30時間〜36時間発酵させ、その後、野積みで3日〜5日程度完熟自然発酵させるようにしているから、短時間で堆肥を得ることができ、製造能率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1、図2は本発明の実施の形態例を示し、図1は自然発酵による第一形態例、場合、図2は発酵装置を用いる第二形態例である。
【0011】
図1の第一形態例において、抗生物質を使わない天然資材のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を完熟させてなる発酵鶏糞1と茸栽培に使用した不純物の無い培養基2とを所定割合で混合する。
【0012】
この抗生物質とは、例えば、放射菌、細菌等で作られた微生物抑制剤を指し、天然資材とは米ヌカ、フスマ、サンゴカルシュウム、籾殻を指し、又、完熟とは、糞の原形はなくなり、水分が15重量%〜18重量%、雑菌を無くし、周期を減らし、さらさらした状態を指し、これら抗生物質を使わない天然資材のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を例えば完熟させてなる発酵鶏糞1を用いることになる。
【0013】
又、上記茸栽培に使用した不純物の無い培養基2とは、例えば、椎茸栽培に使用した広葉樹のおがくずからなる床くずであって、不純物の無いものをいい、勿論、他の茸栽培に使用した培養基を用いることもできる。
【0014】
又、上記発酵鶏糞1と培養基2との混合割合は、例えば、発酵鶏糞が20重量%〜60重量%、培養基が40重量%〜80重量%、この場合、発酵鶏糞が50重量%、培養基が50重量%の1:1の割合で混合している。この混合割合は、微生物の活動並びに培養基の成分活用を考慮したものである。
【0015】
次いで、上記発酵鶏糞1と培養基2とを混合した混合原料3に微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5を所定割合で添加混合することになる。
【0016】
この微生物4としては、例えば、枯草菌、乳酸菌、酵母菌を指し、又、この天然資材とは米ヌカ、フスマ、サンゴカルシュウム、籾殻をいう。
【0017】
この混合原料3に対する微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5の添加量は、例えば、0.001重量%〜0.003重量%であって、この添加量は、微生物4の活動を可能な限り発揮させることを考慮したものである。
【0018】
次いで、上記混合原料3に上記微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5を添加してなる混合物6を所定の発酵条件下において完熟自然発酵7させ、堆肥8を製造することになる。
【0019】
この場合、野積みで、積算温度(一日の平均外気温度℃×日数)が1800℃〜2100℃程度に達するまでは、内部温度を60℃〜80℃、水分含有率を45重量%以下に保持し、その後、水分含有率を15重量%〜18重量%程度に保持して積算温度が2400℃〜2600℃程度に達するまで(目安として、90日〜120日前後)完熟自然発酵7させ、堆肥8を製造するようにしている。
【0020】
この積算温度が1800℃〜2100℃程度に達するまでは内部温度を60℃〜80℃、水分含有率を45重量%以下に保持するようにしているのは、微生物4の活動を考慮したものであり、又、水分含有率を15重量%〜18重量%程度に保持して積算温度が2400℃〜2600℃程度に達するまで完熟自然発酵させるようにしているのは、微生物4の活動並びに完熟度を高めることを考慮したからである。
【0021】
この実施の第一形態例にあっては、抗生物質を使わない天然資材のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を完熟させてなる発酵鶏糞1と茸栽培に使用した不純物の無い培養基2とを所定割合で混合し、該混合原料3に微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5を所定割合で添加混合し、該混合物6を所定の発酵条件下において完熟発酵させてなるから、この堆肥は人間、植物、動物に無害であり、特に、混合原料3に微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5を所定割合で添加混合することにより、微生物の繁殖を盛んにすると共に土壌改良を進める作用をなし、土壌の理化学性が向上し、土壌の保肥力の増大により、作物への肥料要素の利用度が向上し、根圏微生物が増え、健全な土壌微生物相になることが期待され、土壌の緩衝能を高め、作物へのストレスを緩和することができ、堆肥の臭いが少なく、堆肥の作物への使用により作物の活性化や害虫の被害、風水害などには倒れにくく落ちにくい作物を作ることができ、野菜などの連作障害も防ぐことができ、健全な作物栽培を行うことができる。
【0022】
このようにして得られた堆肥8を肥料分析法で分析した結果、炭素37%、全窒素4.6%、リン酸3.6%、カリウム1.4%、炭素/窒素比率8.0であった。
【0023】
又、この場合、上記発酵鶏糞1の水分含有率を15重量%〜18重量%にしてあるから、微生物4の活性化を図ることができ、良好な堆肥を得ることができ、又、この場合、上記発酵鶏糞1と培養基2との混合割合を発酵鶏糞1が20重量%〜60重量%、培養基2が40重量%〜80重量%にしているから、発酵鶏糞1と培養基2の成分を有効に活用することができ、又、この場合、上記発酵鶏糞1と培養基2とからなる混合原料3に対して、上記微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5を0.001重量%〜0.003重量%添加するようにしているから、上記微生物4の活性化を図ることができ、良好な堆肥を得ることができ、又、この場合、上記混合原料3に上記微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5を添加してなる混合物6を野積みで積算温度が1800℃〜2100℃程度に達するまでは内部温度を60℃〜80℃、水分含有率を45重量%以下に保持し、その後、水分含有率を15重量%〜18重量%程度に保持して積算温度が2400℃〜2600℃程度に達するまで完熟自然発酵させるようにしているから、微生物4の活性化を図ることができ、良好な堆肥を得ることができる。
【0024】
図2の第二形態例は、発酵装置を用いて堆肥を製造する場合を示し、この場合、上記第一形態例の自然発酵7に代えて、上記混合原料3に上記微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5を添加してなる混合物6を発酵装置9で60℃〜80℃の温度で30時間〜36時間発酵させ、その後、野積みで3日〜5日程度完熟自然発酵させるようにしている。
【0025】
この第二形態例により得られる堆肥8についても、上記第一形態例で得られる堆肥8と同様な堆肥を得ることができ、かつ、短時間で堆肥8を得ることができ、製造能率を向上することができる。
【0026】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、上記発酵鶏糞1と培養基2との混合割合、上記微生物4及び抗生物質を使わない天然資材5の添加量、積算温度等については、外気温度等の環境条件に応じて適宜設計して変更されるものである。
【0027】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の第一形態例の製造工程図である。
【図2】本発明の実施の第二形態例の製造工程図である。
【符号の説明】
【0029】
1 発酵鶏糞
2 培養基
3 混合原料
4 微生物
5 天然資材
6 混合物
7 自然発酵
8 堆肥
9 発酵装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗生物質を使わない天然資材のみを使用した飼料で生育された鶏の糞を完熟させてなる発酵鶏糞と茸栽培に使用した不純物の無い培養基とを所定割合で混合し、該混合原料に微生物及び抗生物質を使わない天然資材を所定割合で添加混合し、該混合物を所定の発酵条件下において完熟発酵させることを特徴とする堆肥の製造方法。
【請求項2】
上記発酵鶏糞の水分含有率は15重量%〜18重量%であることを特徴とする請求項1記載の堆肥の製造方法。
【請求項3】
上記発酵鶏糞と培養基との混合割合は発酵鶏糞が20重量%〜60重量%、培養基が40重量%〜80重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の堆肥の製造方法。
【請求項4】
上記発酵鶏糞と培養基とからなる混合原料に対して、上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を0.001重量%〜0.003重量%添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の堆肥の製造方法。
【請求項5】
上記混合原料に上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を添加してなる混合物を野積みで積算温度が1800℃〜2100℃程度に達するまでは内部温度を60℃〜80℃、水分含有率を45重量%以下に保持し、その後、水分含有率を15重量%〜18重量%程度に保持して積算温度が2400℃〜2600℃程度に達するまで完熟自然発酵させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の堆肥の製造方法。
【請求項6】
上記混合原料に上記微生物及び抗生物質を使わない天然資材を添加してなる混合物を発酵装置で60℃〜80℃の温度で30時間〜36時間発酵させ、その後、野積みで3日〜5日程度完熟自然発酵させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の堆肥の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−182579(P2006−182579A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375408(P2004−375408)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(304064687)株式会社イチムラ (2)
【Fターム(参考)】