堆肥散布機及び堆肥散布方法
【課題】堆肥の散布中、散布制御板が走行の妨げにならないにように改良・工夫され、しかも、堆肥の性質によって生じる散布量のむらを解消できる堆肥散布機及び堆肥散布方法を提供する。
【解決手段】本堆肥散布機1では、散布口4の両側部に夫々立設された支柱25に、回動自在及び上下摺動自在に一対の散布制御板7a、7bを設け、しかも、各散布制御板7a、7bは、各支柱25上に任意角度及び任意高さで固定でき、また、堆肥が積載される荷台3と、ビータが配置されるケーシング5との間を開閉可能に上下動するパワーゲート8は、その上限高さを任意高さに調節可能であるので、散布中、各散布制御板7a、7bが走行の妨げにならず、堆肥の性質によって生じる散布量のむらを解消することができる。
【解決手段】本堆肥散布機1では、散布口4の両側部に夫々立設された支柱25に、回動自在及び上下摺動自在に一対の散布制御板7a、7bを設け、しかも、各散布制御板7a、7bは、各支柱25上に任意角度及び任意高さで固定でき、また、堆肥が積載される荷台3と、ビータが配置されるケーシング5との間を開閉可能に上下動するパワーゲート8は、その上限高さを任意高さに調節可能であるので、散布中、各散布制御板7a、7bが走行の妨げにならず、堆肥の性質によって生じる散布量のむらを解消することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥をビータの回転により散布口から散布する堆肥散布機及び堆肥散布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、堆肥散布機はトラック等に搭載されて、トラックの後端部から堆肥を散布させるもので、トラック等に搭載可能で堆肥を積載する荷台と、堆肥を散布口から散布するビータと、散布口を開閉する一対の散布制御板と、荷台とビータが配置されるケーシングとの間を開閉可能に上下動するパワーゲートとから概略構成される。
そこで、従来の堆肥散布機に採用されている一対の散布制御板はそれぞれ、上下方向に延びる各支柱を中心に回動自在に構成されており、一対の散布制御板が各支柱を中心に回動されることで散布口を開閉可能にしている。
しかしながら、堆肥を散布口から放射状に散布する際、一対の散布制御板を各支柱を中心に回動させて散布口を全開にすると、各散布制御板が、荷台の両側面よりも外方にはみ出すようになり、走行する際の妨げになっていた。
【0003】
一方、従来の堆肥散布機に採用されているパワーゲートは、堆肥が積載される荷台と、ビータが配置されるケーシングとの間を開閉可能に上下動するものであるが、このパワーゲートの作動は、運転席で上昇または下降操作を行っており、運転席にて、パワーゲートの上昇または下降操作が行われると、該パワーゲートは、上限または下限リミットスイッチが作動されるまで上昇または下降されて、上限または下限リミットスイッチが作動された位置で停止される。
また、荷台に積載される堆肥を散布口から散布する際には、パワーゲートは、荷台とビータが配置されるケーシングとの間が全開されるまで上昇した位置で停止した状態となっている。
【0004】
しかしながら、パワーゲートが、荷台とケーシングとの間が全開される位置で停止されると、例えば、堆肥が低水分で粉状の場合には、散布中に、荷台に積載されている堆肥が崩れ、ビータが配置されるケーシング内に一気に流れ込むような事態が発生し、多量の堆肥が散布口から散布されることがあり、堆肥の散布量にむらが生じる。
そのために、堆肥の性質に合わせてパワーゲートの上昇位置を調節すべく電動シリンダの駆動を制御することは可能であるが、運転席からでは、パワーゲートの上昇位置を視認することができず、その位置制御が困難になっている。
【0005】
特に、堆肥散布機に採用される散布制御板の従来技術として特許文献1には、トラクタで牽引される荷箱の後端部に形成される散布口から互いに反対方向に内側から外側に回転する一対のディスク型ビータにより後方に堆肥を散布する堆肥散布機において、上記散布口の左右両縁部に着脱自在にかつ水平方向に回動自在に角度調節可能に取り付けられ、先端部が上記ビータの回転軌跡に沿って散布方向後方に延出される一対の内側規制板と、その内側規制板の外側に内側規制板と同軸上に着脱自在にかつ水平方向に回動自在に角度調節可能に取り付けられ、先端部が内側規制板の先端部よりも散布方向後方に延出されて上記ビータにより後方に散布される堆肥の散布幅を規制する一対の外側規制板とから構成した堆肥散布機が開示されている。
【特許文献1】実開平06−81206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された堆肥散布機の一対の内側規制板及び外側規制板においても、支柱に水平方向に回動自在に角度調節可能に取り付けられているために、堆肥を散布口から放射状に散布しようとすると、一対の内側規制板及び外側規制板が荷箱の両側面から外方にはみ出ししまい、上述した問題を解決することができない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、堆肥の散布中、散布制御板が走行の妨げにならないにように改良・工夫され、しかも、堆肥の性質によって生じる散布量のむらを解消できる堆肥散布機及び堆肥散布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した堆肥散布機の発明は、堆肥をビータの回転により、荷台後方の散布口から散布する堆肥散布機であって、前記散布口の両側部に夫々立設された支柱に、回動自在及び上下摺動自在に散布制御板を夫々設け、しかも、各散布制御板は、各支柱上に任意角度及び任意高さで固定できることを特徴とするものである。
従って、請求項1の発明では、堆肥を散布口から放射状に散布する際には、各散布制御板を最大限上昇させ、各支柱に固定することにより散布口が全開される。また、各散布制御板を共にまたはいずれか一方を、上下方向に延びる支柱を中心に開放方向に回動させ、任意角度(90°以内)で固定すれば、散布口からの散布幅を変化させることができる。
【0009】
請求項2に記載した堆肥散布機の発明は、請求項1に記載した発明において、前記堆肥散布機は、堆肥が積載される荷台と、前記ビータが配置されるケーシングとの間を開閉可能に上下動するパワーゲートを備えており、該パワーゲートの上昇に伴って互いに近接する、該パワーゲートの高さ方向における上限リミットスイッチと、該上限リミットスイッチを押圧する押圧部材との離間距離の初期設定を調節することにより、該パワーゲートの上限高さを調節可能にすることを特徴とするものである。
従って、請求項2の発明では、パワーゲートの上昇に伴って互いに近接する、パワーゲートの高さ方向の上限リミットスイッチと、該上限リミットスイッチを押圧する押圧部材との離間距離の初期設定を調節することにより、パワゲートの上限高さを任意高さに調節できるので、堆肥の性質によって、パワーゲートによる荷台とケーシングとの間の開口量を変化させることができる。
【0010】
請求項3に記載した堆肥散布方法の発明は、荷台後方に配置される堆肥の散布口の両側部に夫々立設された支柱に、散布制御板を回動自在及び上下摺動自在に夫々設け、しかも、各散布制御板を、散布制御板を上昇させて、前記散布口を開放する第1姿勢と、散布制御板を回動して、前記散布口を開放すると共に散布幅を制御するために回動角度を維持する第2姿勢と、散布制御板を動作させずに前記散布口を閉鎖状態に維持する第3姿勢とのいずれかを組み合わせて構成することで、堆肥の前記散布口からの散布幅及び散布高を変化させることを特徴とするものである。
従って、請求項3の発明では、特に、堆肥を散布する場所によって、堆肥の散布口からの散布幅を容易に変化させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載した堆肥散布機の発明によれば、堆肥を散布口から放射状に散布する際には、各散布制御板を最大限上昇させることで散布口が全開されるので、従来のように散布制御板が荷台の側面からはみ出すことはない。また、各散布制御板を共にまたはいずれか一方を、上下方向に延びる支柱を中心に開放方向に回動させて、任意角度(90°以内)で固定すれば、各散布制御板が荷台の側面から外方にはみ出すことなく、散布口からの散布幅を変化させることもできる。
【0012】
請求項2に記載した堆肥散布機の発明によれば、堆肥の性質によってパワーゲートの上限高さを調節して、パワーゲートによる荷台とケーシングとの間の開口量を変化させることができるので、特に、堆肥が低水分で粉状である場合には、パワーゲートの上限高さを、荷台とビータが配置されるケーシングとの間を全開しない程度の高さに設定して、前記開口量を縮小させれば、散布中に荷台に積載されている堆肥が崩れてケーシング内に一気に流れ込むことを防ぎ、堆肥の性質によって生じる堆肥の散布量のむらを解消することができる。
【0013】
請求項3に記載した堆肥散布方法の発明によれば、特に、堆肥を散布する場所によって、堆肥の散布口からの散布幅を変化させることができるので、散布すべきでない場所への散布を規制でき、効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図13に基いて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1は、図1に示すように、トラック2に搭載可能であり、底部にフロアコンベア10が備えられ、堆肥(図2の斜線部)を積載する荷台3と、荷台3の後端部に連結され、後面の下部に幅方向の全域に亘って開口された散布口4を有するケーシング5と、該ケーシング5内に配置され、堆肥を散布口4から散布するビータ6(図2参照)と、散布口4を開閉する一対の散布制御板7a、7b(図10参照)と、荷台3とケーシング5との間を開閉可能に上下動するパワーゲート8とから概略構成されている。
【0015】
荷台3は、図1に示すように、堆肥を積載すべく形成された、両側壁及び前壁からなるコ字状の枠体と、床面に相当する箇所に設けたフロアコンべア10とから構成されている。フロアコンベア10は、荷台2の前方下部に設けたアイドラローラ10aと、下部ケーシング5bの対向する側壁間に設けた駆動ローラ10bとの間に渡架されたベルトコンベアにて構成されている。
【0016】
ケーシング5は、図1及び図2に示すように、荷台3の後端部に連結されており、後述する破砕ビータ6aを収容する上部ケーシング5aと、該上部ケーシング5aから下方に連続し、荷台3のフロアコンベア10から一段下がった床面に配置される後述する散布ビータ6bを収容する下部ケーシング5bとから構成されている。この下部ケーシング5bの後面全域が開口されて散布口4が形成される。
なお、散布口4の上方には、図10及び図11に示されているように、上部ケーシング5aの下端から連続して散布方向に幅狭で突設する略梯形状の上側鍔部11が形成されると共に、散布口4の下方には、下部ケーシング5bの床面から連続して散布方向に幅狭で突設する略梯形状の下側鍔部12が形成されている。また、上側鍔部11には、2個のゴムバンド13、13が幅方向に沿ってそれぞれ離間して備えられている。
また、図1に示す、ケーシング5の上部ケーシング5aと下部ケーシング5bの両側面を跨ぐ位置に設けた略楕円状の突設部位15の内部には、エンジン16からの駆動力を破砕ビータ6aや散布ビータ6b等に伝達するプーリやチェーン等が配置されている。
【0017】
ビータ6は、図2に示すように、上部ケーシング5a内に備えられた破砕ビータ6aと、下部ケーシング5b内に備えられた散布ビータ6bとから構成されている。
破砕ビータ6aは、ビータ本体19が上部ケーシング5a内で幅方向に延びる回転可能な軸部17に沿って間隔をおいて複数設けられて構成され、各ビータ本体19は、軸部17に複数の羽根部18が放射状に固定されて構成されている。
散布ビータ6bは、2個のディスク型ビータ本体20が下部ケーシング5bの床面にその幅方向に沿って載置されて構成され、各ディスク型ビータ本体20は、回転可能な円板21にその径方向に複数の羽根部22が放射状に固定されて構成されている。
【0018】
また、図6及び図10に示すように、散布口4の両側部、すなわち、下部ケーシング5bの後部の幅方向両端部に、支柱25、25が上下方向にそれぞれ延びており、これら各支柱25はパイプ状に形成されている。各支柱25には、図6から解るように、その上部及び中間部のそれぞれに荷台3の幅方向に向って開口される貫通孔26、27が形成されている。なお、後で詳述するが、各支柱25に設けた上部の貫通孔26は、一対の散布制御板7a、7bを上昇させて散布口4を全開できる位置に固定するためのものであり、中間部の貫通孔27は、一対の散布制御板7a、7bにより散布口4を全閉できる位置に固定するためのものである。
【0019】
各散布制御板7a、7bは、図7及び図10に示すように、散布口4の上方の上側鍔部11及び下方の下側鍔部12の外縁の形状と一致するように、傾斜板部30と、傾斜板部30の他端部から連続する水平板部31とからなり、これら傾斜板部30及び水平板部31の上端にはフランジ部32が形成されている。各散布制御板7a、7bの各水平板部31のフランジ部32の幅方向略中央のそれぞれにピン33が立設されている。
また、一対の散布制御板7a、7bの高さは、図10(c)に示すように、散布口4の上方の上側鍔部11と下方の下側鍔部12との間の距離よりも若干高く設定されており、散布口4を全閉する際には、一対の散布制御板7a、7bの上端が上側鍔部11の外縁に当接すると共に、一対の散布制御板7a、7bの下端が下側鍔部12よりもやや下方に位置し、各散布制御板7a、7bの下部の内面が下側鍔部12の外縁に当接することになる。
さらに、図6及び図7に示すように、各散布制御板7a、7bの傾斜板部30の一端部には、略全高に亘ってパイプ部材35が一体的に溶着されており、このパイプ部材35は、傾斜板部30及び水平板部31の上端よりも若干上方に突設している。また、図6及び図7に示すように、このパイプ部材35の、傾斜板部30及び水平板部31の上端よりも上方に突設された部分に、水平板部31が延設される方向と略同方向に開口される一方の貫通孔36と、該一方の貫通孔36と同じ高さに形成され、一方の貫通孔36と直交する方向に開口される他方の貫通孔37とが形成されている。
【0020】
そして、図6及び図7に示すように、各支柱25に一対の散布制御板7a、7bのパイプ部材35が挿入されると、一対の散布制御板7a、7bは各支柱25に対して上下方向に移動自在で、且つ各支柱25を中心に回動自在になり、しかも、図9に示すように、一対の散布制御板7a、7bのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36または他方の貫通孔37と、各支柱25に設けた上部の貫通孔26または中間部の貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通することで一対の散布制御板7a、7bを各支柱25に対して任意高さで、且つ任意角度で固定することができる。
なお、固定ピン40は、図8に示すように、軸部41と、該頭部42の両側面に連結され、該連結部位を中心に回動するストッパ43とからなる。ストッパ43は、細棒を折り曲げて形成され、その両端部が頭部42の両側面に回動自在に取り付けられている。ストッパ43は、図9から解るように、上面視で、支柱25及び散布制御板7a、7bのパイプ部材35との干渉を避けるように略コ字状に形成され、その長さは軸部41の長さ相当に形成されている、
【0021】
パワーゲート8は、図3〜図5に示すように、荷台3とケーシング5との間を開閉可能に上下動するものであり、詳しくは、荷台3とケーシング5との間を開閉可能に上下動するゲート45と、該ゲート45の上部両端に接続され、下端部を中心に回動自在なく字状の一対の回動アーム46と、該一対の回動アーム46の内、一方の回動アーム46の中間部位に連結されるピストンロッド47を有し、該ピストンロッド47と反対側端部(支持アーム51との連結位置)を中心に回動自在な電動シリンダ48(押圧部材)と、電動シリンダ48の下方で該電動シリンダ48の回動範囲に備えられ、ゲート45の高さ方向の上限リミットスイッチ49と、一方の回動アーム46の下方で、該回動アーム46の回動範囲に備えられ、ゲート45の高さ方向の下限リミットスイッチ50とから構成されている。
【0022】
また、電動シリンダ48の下方には、一端部に一方の回動アーム46の下端部が回動自在に連結されると共に、他端部に電動シリンダ48の端部が回動自在に連結される支持アーム51が配設されている。この支持アーム51で外方に露出する一側面に、後述するリミットスイッチブラケット52の側板部52aに設けた長孔53に挿通されるネジロッド55aが該一側面に対して略垂直方向に延びている。
【0023】
リミットスイッチブラケット52は、側板部52aと上板部52bとからなるL字状に形成され、その側板部52aの一端側下部に、電動シリンダ48に向かって延びる長孔53が形成されている。また、リミットスイッチブラケット52には、その側板部52aの一端側上辺から折曲されて設けた上板部52bに、電動シリンダ48側に突出するように上限リミットスイッチ49が固定されている。
そして、支持アーム51の一側面から略垂直方向に延びるネジロッド55aがリミットスイッチブラケット52の側板部52aの長孔53に挿通された状態で、支持アーム51の一側面に、リミットスイッチブラケット52の側板部52aが当接されると共に、リミットスイッチブラケット52の側板部52aの他端部が支持アーム51に回動自在に連結される。
【0024】
これにより、リミットスイッチブラケット52が、その他端部を中心に長孔53の範囲で回動自在となり、リミットスイッチブラケット52をその他端部を中心に回動させて所望の位置に配置し、該位置において支持アーム51からのネジロッド55aにアイナット55bを螺着することにより、リミットスイッチブラケット52を支持アーム51に固定することができる。この結果、上限リミットスイッチ49と、電動シリンダ48との離間距離の初期設定をリミットスイッチブラケット52の長孔53の範囲内で調節することが可能になる。
【0025】
次に、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1のパワーゲート8の作用を図3〜図5に基いて説明する。
パワーゲート8を、堆肥の性質に合わせてその上限高さを設定する。
すなわち、堆肥が低水分で粉状の場合で、パワーゲート8の上限高さを、荷台3とケーシング5との間を全開しない高さに設定する時には、図3及び図5に示すように、リミットスイッチブラケット52をその他端部を中心に時計回り方向に、支持アーム51からのネジロッド55aがリミットスイッチブラケット52の長孔53の下端に当接するまで最大限回動させた位置に配置する。この位置においてリミットスイッチブラケット52の長孔53から突出しているネジロッド55aにアイナット55bを螺着して、リミットスイッチブラケット52を支持アーム51に固定し、上限リミットスイッチ49と電動シリンダ48との離間距離の初期設定を最小に設定しておく。
【0026】
その後、電動シリンダ48を駆動させると、図3及び図5に示すように、シリンダロッド47が延出し、一対の回動アーム46がその下端部を中心に反時計回り方向に回動すると共にゲート45が上昇し、電動シリンダ48が支持アーム51との連結位置を中心に上限リミットスイッチ49側(反時計回り方向)に回動する。そして、最終的に電動シリンダ48が上限リミットスイッチ49を押圧すると、電動シリンダ48の駆動が停止されると共にゲート45が停止される。その時、ゲート45の下端が、荷台3とケーシング5との間を全開しない適宜高さに位置するようになる。
【0027】
一方、堆肥が低水分で粉状ではなく、パワーゲート8の上限高さを、荷台3とケーシング5との間を全開する高さに設定する時には、図4に示すように、リミットスイッチブラケット52をその他端部を中心に反時計回り方向に、支持アーム51からのネジロッド55aがリミットスイッチブラケット52の長孔53の上端に当接するまで最大限回動させた位置に配置する。この位置においてリミットスイッチブラケット52の長孔53から突出しているネジロッド55aにアイナット55bを螺着して、リミットスイッチブラケット52を支持アーム51に固定し、上限リミットスイッチ49と電動シリンダ48との離間距離の初期設定を最大に設定しておく。
【0028】
その後、電動シリンダ48を駆動させると、図4に示すように、シリンダロッド47が延出し、一対の回動アーム46がその下端部を中心に反時計回り方向に回動すると共にゲート45が上昇し、電動シリンダ48が支持アーム51との連結位置を中心に上限リミットスイッチ49側(反時計回り方向)に回動する。そして、最終的に電動シリンダ48が上限リミットスイッチ49を押圧すると、電動シリンダ48の駆動が停止されると共にゲート45が停止される。その時、ゲート45の下端が、荷台3とケーシング5との間を全開する高さに位置するようになる。
【0029】
次に、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1の破砕ビータ6a及び散布ビータ6b等の作用を図2に基いて説明する。
パワーゲート8を上述したように所定位置まで上昇させると共に、一対の散布制御板7a、7bを、後述する各開放形態のいずれかに設定した後、破砕ビータ6a、散布ビータ6b及びフロアコンベヤ10が駆動される。
すると、フロアコンベヤ10によりケーシング5側に送られてきた堆肥は、破砕ビータ6aを構成する各ビータ本体19により掻き出され破砕されて散布ビータ6b上に落下する。その後、堆肥は、散布ビータ6bを構成する各ディスク型ビータ本体20により散布口4から散布される。
【0030】
次に、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1を使用した堆肥散布方法で、特に、一対の散布制御板7a、7bの姿勢(散布制御板の第1〜第3姿勢の組み合わせによる姿勢)を変化させることにより、散布口4からの堆肥の散布幅及び散布高(本実施の形態では散布幅のみ)を変化させる堆肥散布方法を図11〜図13に基いて図9も参照しながら説明する。
まず、図10に示すように、堆肥の運搬時等、散布口4を全閉する場合には、一対の散布制御板7a、7bを散布口4を塞ぐように配置し、図6及び図7に示すように、一対の散布制御板7a、7bのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36と、各支柱25の中間部に設けた貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通して一対の散布制御板7a、7bを各支柱25に固定する。すると、図10に示すように、一対の散布制御板7a、7bの上端が上部ケーシング5aの下端から連続する上側鍔部11の外縁に当接されると共に、一対の散布制御板7a、7bの下端が下部ケーシング5bの床面から連続する下側鍔部12よりもやや下方に位置し、各散布制御板7a、7bの下部の内面が下側鍔部12の外縁に当接される。その後、上側鍔部11に設けた2個のゴムバンド13を、一対の散布制御板7a、7bのそれぞれの上面に設けた各ピン33に連結し、一対の散布制御板7a、7bにより散布口4が全閉される。
【0031】
そして、例えば、散布口4を全開し、堆肥を散布口4の幅方向全域から放射状に散布するには、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの各ピン33に連結された各ゴムバンド13をそれぞれ取り外す。
その後、図11に示すように、各散布制御板7a、7bをそれぞれ各支柱25に沿って最大限上昇させて、図9(a)に示すように、各散布制御板7a、7bのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36と、各支柱25の上部に設けた貫通孔26とを連通させて固定ピン40を挿通して、各散布制御板7a、7bを各支柱25に固定する。(第1姿勢+第1姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4が全開されて、堆肥が散布口4の幅方向全域から放射状に散布される。
【0032】
また、例えば、散布口4を全開し、堆肥が荷台3の一側面を境界とした幅方向外側に散布されないようにするには、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの各ピン33に連結された各ゴムバンド13をそれぞれ取り外す。
その後、図12に示すように、一対の散布制御板7a、7bの内、一方の散布制御板7bを、該散布制御板7bが対応する支柱25を中心に開放方向に90°回動させ、図9(b)に示すように、該散布制御板7bのパイプ部材35に設けた他方の貫通孔37と、対応する支柱25の中間部に設けた貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通して、該散布制御板7bを支柱25に固定する。一方、一対の散布制御板7a、7bの内、他方の散布制御板7aは、支柱25に沿って最大限上昇させて、図9(a)に示すように、該散布制御板7aのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36と、支柱25の上部に設けた貫通孔26とを連通させて固定ピン40を挿通して、該散布制御板7aを支柱25に固定する。(第1姿勢+第2姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4は全開されるが、散布口4からの散布幅が図11の形態よりも縮小され、堆肥が荷台3の一側面を境界とした幅方向外側に散布されるのを防ぐ。
【0033】
さらに、例えば、散布口4を全開し、堆肥が荷台3の両側面を境界とした幅方向外側に散布されないようにするには、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの各ピン33に連結された各ゴムバンド13をそれぞれ取り外す。
その後、図示はしていないが、各散布制御板7a、7bを各支柱25を中心にそれぞれ開放方向に90°回動させ、図9(b)に示すように、各散布制御板7a、7bのパイプ部材35に設けた他方の貫通孔37と、各支柱25の中間部に設けた貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通して、各散布制御板7a、7bを各支柱25に固定する。(第2姿勢+第2姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4は全開されるが、散布口4からの散布幅が図12の形態よりもさらに縮小され、堆肥が荷台3の両側面を境界とした幅方向外側に散布されるのを防ぐ。
【0034】
さらにまた、例えば、散布口4の幅方向略半分の範囲を開放し、堆肥を散布口4の幅方向略半分の範囲から放射状に散布する際には、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの内、一方の散布制御板7bのピン33に連結されたゴムバンド13だけを取り外す。
その後、図13に示すように、該散布制御板7bを支柱25に沿って最大限上昇させて、図9(a)に示すように、該散布制御板7bのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36と、支柱25の上部に設けた貫通孔26とを連通させて固定ピン40を挿通して、該散布制御板7bを支柱25に固定する。(第1姿勢+第3姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4の幅方向略半分の範囲だけが開放され、堆肥が散布口4の幅方向略半分の範囲から放射状に散布される。
【0035】
さらにまた、例えば、散布口4の幅方向略半分の範囲を開放し、堆肥を散布口4の幅方向略半分の範囲から散布し、荷台3の一側面を境とした幅方向外側に散布されないようにするには、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの内、一方の散布制御板7bのピン33に連結されたゴムバンド13だけを取り外す。
その後、図示はしてしないが、一対の散布制御板7a、7bの内、一方の散布制御板7bを、該散布制御板7bが対応する支柱25を中心に開放方向に90°回動させ、図9(b)に示すように、該散布制御板7bのパイプ部材35に設けた他方の貫通孔37と、対応する支柱25の中間部に設けた貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通して、該散布制御板7bを支柱25に固定する。(第2姿勢+第3姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4の幅方向略半分の範囲だけが開放され、散布口4からの散布幅が図13の形態よりも縮小され、堆肥が荷台3の一側面を境界とした幅方向外側に散布されるのを防ぐ。
【0036】
なお、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1では、各支柱25には、散布口4を全閉する位置に各散布制御板7a、7bを固定する中間部の貫通孔27と、散布口4を全開する位置に各散布制御板7a、7bを固定する上部の貫通孔26との2箇所の貫通孔が形成されているが、その他、貫通孔26と貫通孔27との間に、各散布制御板7a、7bを任意高さに固定する貫通孔を複数設けても良い。これにより、堆肥の散布口4からの散布高を変化させることが可能となる。
また、各散布制御板7a、7bのパイプ部材35には、一方の貫通孔36と、該一方の貫通孔36に直交する方向に開口された他方の貫通孔37との2箇所の貫通孔が形成されているが、その他に、各散布制御板7a、7bを各支柱25に対して任意角度で固定する貫通孔を複数設けても良い。これにより、堆肥の散布口4からの散布方向又は散布域を細かく制御することが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施の形態では、散布口4を開閉する一対の散布制御板7a、7bを、各支柱25に沿って上下方向に移動自在で、且つ上下方向に延びる各支柱25を中心に回動自在で、しかも、一対の散布制御板7a、7bを所望位置に配置した後、固定ピン40により各支柱25に固定できる構成が採用されている。
これにより、堆肥を散布口4から放射状に散布する際には、一対の散布制御板7a、7bを散布口4を全開させる位置まで上昇させた位置で固定するので、従来のように散布制御板が荷台3の側面から外方にはみ出し走行の妨げになるようなことはない。
しかも、堆肥の散布幅を変化させる際には、一対の散布制御板7a、7bを共にまたはいずれか一方を、支柱25を中心に開放方向に回動させて、任意角度(90°以内)で固定すれば、一対の散布制御板7a、7bが荷台3の側面から外方にはみ出すことなく、散布口4からの散布幅を適宜変化させることができる。
【0038】
また、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1では、パワーゲート8の上限リミットスイッチ49が固定されるリミットスイッチブラケット52を、その他端部を中心に長孔53の範囲で回動自在とし、且つ位置が決定されたリミットスイッチブラケット52を、その長孔53から突出した支持アーム51からのネジロッド55aにアイナット55bを螺着することで支持アーム51に固定でき、上限リミットスイッチ49と、ゲート45の上昇に伴って上限リミットスイッチ49側に回動し、上限リミットスイッチ49を押圧する押圧部材である電動シリンダ48との離間距離の初期設定を適宜調節することができるので、パワーゲート8の上限高さ、すなわち、パワーゲート8による荷台3とケーシング5との間の開口量を堆肥の性質によって適宜調節することが可能になる。
これにより、特に、堆肥が低水分で粉状である場合には、パワーゲート8の上限高さを、荷台3とケーシング5との間を全開しない適宜高さに設定すれば、散布中に、荷台3に積載されている堆肥が崩れて、ケーシング5内に一気に流れ込むことを防ぎ、堆肥の性質による生じる堆肥の散布量のむらを解消することができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1は、トラック2に搭載されて使用されているが、トラクタに牽引される堆肥散布機にも採用でき、また、自走式の堆肥散布機にも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機を示す側面図である。
【図2】図2は、本堆肥散布機のケーシング内の側面図で、破砕ビータ及び散布ビータの配置及びその構成を示す図である。
【図3】図3は、本堆肥散布機のケーシングの側面図で、パワーゲートの上限高さを荷台とケーシングとの間を全開しない高さに設定した図である。
【図4】図4は、本堆肥散布機のケーシングの側面図で、パワーゲートの上限高さを荷台とケーシングとの間を全開させる高さに設定した図である。
【図5】図5は、図3の拡大図である。
【図6】図6は、支柱に散布制御板が固定されている後面図である。
【図7】図7は、図6のA−A矢視図である。
【図8】図8は、固定ピンの上面図である。
【図9】図9は、散布制御板が支柱に固定ピンにより固定されている上面図で、(a)は、散布制御板が散布口を全閉する方向に位置した図であり、(b)は、散布制御板が散布口に対して直交する位置に回動された図である。
【図10】図10は、一対の散布制御板により散布口を全閉させた図であり、(a)は上面図で、(b)は後面図で、(c)は側面図である。
【図11】図11は、一対の散布制御板をそれぞれ最大限上昇させて、散布口を全開させた図であり、(a)は後面図で、(b)は側面図である。
【図12】図12は、一対の散布制御板の内、一方の散布制御板は支柱を中心に開放方向に90°回動させると共に、他方の散布制御板を最大限上昇させた図であり、(a)は上面図で、(b)は後面図である。
【図13】図13は、一対の散布制御板の内、一方の散布制御板だけを最大限上昇させた図であり、(a)は上面図で、(b)は後面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 堆肥散布機,3 荷台,4 散布口,5 ケーシング,5a 上部ケーシング,5b 下部ケーシング,6 ビータ,6a 破砕ビータ,6b 散布ビータ,7a、7b 散布制御板,8 パワーゲート,25 支柱,26、27 貫通孔,35 パイプ部材,36 一方の貫通孔,37 他方の貫通孔,40 固定ピン,45 ゲート,48 電動シリンダ(押圧部材),49 上限リミットスイッチ,51 支持アーム,52 リミットスイッチブラケット,53 長孔,55a ネジロッド,55b アイナット
【技術分野】
【0001】
本発明は、堆肥をビータの回転により散布口から散布する堆肥散布機及び堆肥散布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、堆肥散布機はトラック等に搭載されて、トラックの後端部から堆肥を散布させるもので、トラック等に搭載可能で堆肥を積載する荷台と、堆肥を散布口から散布するビータと、散布口を開閉する一対の散布制御板と、荷台とビータが配置されるケーシングとの間を開閉可能に上下動するパワーゲートとから概略構成される。
そこで、従来の堆肥散布機に採用されている一対の散布制御板はそれぞれ、上下方向に延びる各支柱を中心に回動自在に構成されており、一対の散布制御板が各支柱を中心に回動されることで散布口を開閉可能にしている。
しかしながら、堆肥を散布口から放射状に散布する際、一対の散布制御板を各支柱を中心に回動させて散布口を全開にすると、各散布制御板が、荷台の両側面よりも外方にはみ出すようになり、走行する際の妨げになっていた。
【0003】
一方、従来の堆肥散布機に採用されているパワーゲートは、堆肥が積載される荷台と、ビータが配置されるケーシングとの間を開閉可能に上下動するものであるが、このパワーゲートの作動は、運転席で上昇または下降操作を行っており、運転席にて、パワーゲートの上昇または下降操作が行われると、該パワーゲートは、上限または下限リミットスイッチが作動されるまで上昇または下降されて、上限または下限リミットスイッチが作動された位置で停止される。
また、荷台に積載される堆肥を散布口から散布する際には、パワーゲートは、荷台とビータが配置されるケーシングとの間が全開されるまで上昇した位置で停止した状態となっている。
【0004】
しかしながら、パワーゲートが、荷台とケーシングとの間が全開される位置で停止されると、例えば、堆肥が低水分で粉状の場合には、散布中に、荷台に積載されている堆肥が崩れ、ビータが配置されるケーシング内に一気に流れ込むような事態が発生し、多量の堆肥が散布口から散布されることがあり、堆肥の散布量にむらが生じる。
そのために、堆肥の性質に合わせてパワーゲートの上昇位置を調節すべく電動シリンダの駆動を制御することは可能であるが、運転席からでは、パワーゲートの上昇位置を視認することができず、その位置制御が困難になっている。
【0005】
特に、堆肥散布機に採用される散布制御板の従来技術として特許文献1には、トラクタで牽引される荷箱の後端部に形成される散布口から互いに反対方向に内側から外側に回転する一対のディスク型ビータにより後方に堆肥を散布する堆肥散布機において、上記散布口の左右両縁部に着脱自在にかつ水平方向に回動自在に角度調節可能に取り付けられ、先端部が上記ビータの回転軌跡に沿って散布方向後方に延出される一対の内側規制板と、その内側規制板の外側に内側規制板と同軸上に着脱自在にかつ水平方向に回動自在に角度調節可能に取り付けられ、先端部が内側規制板の先端部よりも散布方向後方に延出されて上記ビータにより後方に散布される堆肥の散布幅を規制する一対の外側規制板とから構成した堆肥散布機が開示されている。
【特許文献1】実開平06−81206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された堆肥散布機の一対の内側規制板及び外側規制板においても、支柱に水平方向に回動自在に角度調節可能に取り付けられているために、堆肥を散布口から放射状に散布しようとすると、一対の内側規制板及び外側規制板が荷箱の両側面から外方にはみ出ししまい、上述した問題を解決することができない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、堆肥の散布中、散布制御板が走行の妨げにならないにように改良・工夫され、しかも、堆肥の性質によって生じる散布量のむらを解消できる堆肥散布機及び堆肥散布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した堆肥散布機の発明は、堆肥をビータの回転により、荷台後方の散布口から散布する堆肥散布機であって、前記散布口の両側部に夫々立設された支柱に、回動自在及び上下摺動自在に散布制御板を夫々設け、しかも、各散布制御板は、各支柱上に任意角度及び任意高さで固定できることを特徴とするものである。
従って、請求項1の発明では、堆肥を散布口から放射状に散布する際には、各散布制御板を最大限上昇させ、各支柱に固定することにより散布口が全開される。また、各散布制御板を共にまたはいずれか一方を、上下方向に延びる支柱を中心に開放方向に回動させ、任意角度(90°以内)で固定すれば、散布口からの散布幅を変化させることができる。
【0009】
請求項2に記載した堆肥散布機の発明は、請求項1に記載した発明において、前記堆肥散布機は、堆肥が積載される荷台と、前記ビータが配置されるケーシングとの間を開閉可能に上下動するパワーゲートを備えており、該パワーゲートの上昇に伴って互いに近接する、該パワーゲートの高さ方向における上限リミットスイッチと、該上限リミットスイッチを押圧する押圧部材との離間距離の初期設定を調節することにより、該パワーゲートの上限高さを調節可能にすることを特徴とするものである。
従って、請求項2の発明では、パワーゲートの上昇に伴って互いに近接する、パワーゲートの高さ方向の上限リミットスイッチと、該上限リミットスイッチを押圧する押圧部材との離間距離の初期設定を調節することにより、パワゲートの上限高さを任意高さに調節できるので、堆肥の性質によって、パワーゲートによる荷台とケーシングとの間の開口量を変化させることができる。
【0010】
請求項3に記載した堆肥散布方法の発明は、荷台後方に配置される堆肥の散布口の両側部に夫々立設された支柱に、散布制御板を回動自在及び上下摺動自在に夫々設け、しかも、各散布制御板を、散布制御板を上昇させて、前記散布口を開放する第1姿勢と、散布制御板を回動して、前記散布口を開放すると共に散布幅を制御するために回動角度を維持する第2姿勢と、散布制御板を動作させずに前記散布口を閉鎖状態に維持する第3姿勢とのいずれかを組み合わせて構成することで、堆肥の前記散布口からの散布幅及び散布高を変化させることを特徴とするものである。
従って、請求項3の発明では、特に、堆肥を散布する場所によって、堆肥の散布口からの散布幅を容易に変化させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に記載した堆肥散布機の発明によれば、堆肥を散布口から放射状に散布する際には、各散布制御板を最大限上昇させることで散布口が全開されるので、従来のように散布制御板が荷台の側面からはみ出すことはない。また、各散布制御板を共にまたはいずれか一方を、上下方向に延びる支柱を中心に開放方向に回動させて、任意角度(90°以内)で固定すれば、各散布制御板が荷台の側面から外方にはみ出すことなく、散布口からの散布幅を変化させることもできる。
【0012】
請求項2に記載した堆肥散布機の発明によれば、堆肥の性質によってパワーゲートの上限高さを調節して、パワーゲートによる荷台とケーシングとの間の開口量を変化させることができるので、特に、堆肥が低水分で粉状である場合には、パワーゲートの上限高さを、荷台とビータが配置されるケーシングとの間を全開しない程度の高さに設定して、前記開口量を縮小させれば、散布中に荷台に積載されている堆肥が崩れてケーシング内に一気に流れ込むことを防ぎ、堆肥の性質によって生じる堆肥の散布量のむらを解消することができる。
【0013】
請求項3に記載した堆肥散布方法の発明によれば、特に、堆肥を散布する場所によって、堆肥の散布口からの散布幅を変化させることができるので、散布すべきでない場所への散布を規制でき、効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図13に基いて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1は、図1に示すように、トラック2に搭載可能であり、底部にフロアコンベア10が備えられ、堆肥(図2の斜線部)を積載する荷台3と、荷台3の後端部に連結され、後面の下部に幅方向の全域に亘って開口された散布口4を有するケーシング5と、該ケーシング5内に配置され、堆肥を散布口4から散布するビータ6(図2参照)と、散布口4を開閉する一対の散布制御板7a、7b(図10参照)と、荷台3とケーシング5との間を開閉可能に上下動するパワーゲート8とから概略構成されている。
【0015】
荷台3は、図1に示すように、堆肥を積載すべく形成された、両側壁及び前壁からなるコ字状の枠体と、床面に相当する箇所に設けたフロアコンべア10とから構成されている。フロアコンベア10は、荷台2の前方下部に設けたアイドラローラ10aと、下部ケーシング5bの対向する側壁間に設けた駆動ローラ10bとの間に渡架されたベルトコンベアにて構成されている。
【0016】
ケーシング5は、図1及び図2に示すように、荷台3の後端部に連結されており、後述する破砕ビータ6aを収容する上部ケーシング5aと、該上部ケーシング5aから下方に連続し、荷台3のフロアコンベア10から一段下がった床面に配置される後述する散布ビータ6bを収容する下部ケーシング5bとから構成されている。この下部ケーシング5bの後面全域が開口されて散布口4が形成される。
なお、散布口4の上方には、図10及び図11に示されているように、上部ケーシング5aの下端から連続して散布方向に幅狭で突設する略梯形状の上側鍔部11が形成されると共に、散布口4の下方には、下部ケーシング5bの床面から連続して散布方向に幅狭で突設する略梯形状の下側鍔部12が形成されている。また、上側鍔部11には、2個のゴムバンド13、13が幅方向に沿ってそれぞれ離間して備えられている。
また、図1に示す、ケーシング5の上部ケーシング5aと下部ケーシング5bの両側面を跨ぐ位置に設けた略楕円状の突設部位15の内部には、エンジン16からの駆動力を破砕ビータ6aや散布ビータ6b等に伝達するプーリやチェーン等が配置されている。
【0017】
ビータ6は、図2に示すように、上部ケーシング5a内に備えられた破砕ビータ6aと、下部ケーシング5b内に備えられた散布ビータ6bとから構成されている。
破砕ビータ6aは、ビータ本体19が上部ケーシング5a内で幅方向に延びる回転可能な軸部17に沿って間隔をおいて複数設けられて構成され、各ビータ本体19は、軸部17に複数の羽根部18が放射状に固定されて構成されている。
散布ビータ6bは、2個のディスク型ビータ本体20が下部ケーシング5bの床面にその幅方向に沿って載置されて構成され、各ディスク型ビータ本体20は、回転可能な円板21にその径方向に複数の羽根部22が放射状に固定されて構成されている。
【0018】
また、図6及び図10に示すように、散布口4の両側部、すなわち、下部ケーシング5bの後部の幅方向両端部に、支柱25、25が上下方向にそれぞれ延びており、これら各支柱25はパイプ状に形成されている。各支柱25には、図6から解るように、その上部及び中間部のそれぞれに荷台3の幅方向に向って開口される貫通孔26、27が形成されている。なお、後で詳述するが、各支柱25に設けた上部の貫通孔26は、一対の散布制御板7a、7bを上昇させて散布口4を全開できる位置に固定するためのものであり、中間部の貫通孔27は、一対の散布制御板7a、7bにより散布口4を全閉できる位置に固定するためのものである。
【0019】
各散布制御板7a、7bは、図7及び図10に示すように、散布口4の上方の上側鍔部11及び下方の下側鍔部12の外縁の形状と一致するように、傾斜板部30と、傾斜板部30の他端部から連続する水平板部31とからなり、これら傾斜板部30及び水平板部31の上端にはフランジ部32が形成されている。各散布制御板7a、7bの各水平板部31のフランジ部32の幅方向略中央のそれぞれにピン33が立設されている。
また、一対の散布制御板7a、7bの高さは、図10(c)に示すように、散布口4の上方の上側鍔部11と下方の下側鍔部12との間の距離よりも若干高く設定されており、散布口4を全閉する際には、一対の散布制御板7a、7bの上端が上側鍔部11の外縁に当接すると共に、一対の散布制御板7a、7bの下端が下側鍔部12よりもやや下方に位置し、各散布制御板7a、7bの下部の内面が下側鍔部12の外縁に当接することになる。
さらに、図6及び図7に示すように、各散布制御板7a、7bの傾斜板部30の一端部には、略全高に亘ってパイプ部材35が一体的に溶着されており、このパイプ部材35は、傾斜板部30及び水平板部31の上端よりも若干上方に突設している。また、図6及び図7に示すように、このパイプ部材35の、傾斜板部30及び水平板部31の上端よりも上方に突設された部分に、水平板部31が延設される方向と略同方向に開口される一方の貫通孔36と、該一方の貫通孔36と同じ高さに形成され、一方の貫通孔36と直交する方向に開口される他方の貫通孔37とが形成されている。
【0020】
そして、図6及び図7に示すように、各支柱25に一対の散布制御板7a、7bのパイプ部材35が挿入されると、一対の散布制御板7a、7bは各支柱25に対して上下方向に移動自在で、且つ各支柱25を中心に回動自在になり、しかも、図9に示すように、一対の散布制御板7a、7bのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36または他方の貫通孔37と、各支柱25に設けた上部の貫通孔26または中間部の貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通することで一対の散布制御板7a、7bを各支柱25に対して任意高さで、且つ任意角度で固定することができる。
なお、固定ピン40は、図8に示すように、軸部41と、該頭部42の両側面に連結され、該連結部位を中心に回動するストッパ43とからなる。ストッパ43は、細棒を折り曲げて形成され、その両端部が頭部42の両側面に回動自在に取り付けられている。ストッパ43は、図9から解るように、上面視で、支柱25及び散布制御板7a、7bのパイプ部材35との干渉を避けるように略コ字状に形成され、その長さは軸部41の長さ相当に形成されている、
【0021】
パワーゲート8は、図3〜図5に示すように、荷台3とケーシング5との間を開閉可能に上下動するものであり、詳しくは、荷台3とケーシング5との間を開閉可能に上下動するゲート45と、該ゲート45の上部両端に接続され、下端部を中心に回動自在なく字状の一対の回動アーム46と、該一対の回動アーム46の内、一方の回動アーム46の中間部位に連結されるピストンロッド47を有し、該ピストンロッド47と反対側端部(支持アーム51との連結位置)を中心に回動自在な電動シリンダ48(押圧部材)と、電動シリンダ48の下方で該電動シリンダ48の回動範囲に備えられ、ゲート45の高さ方向の上限リミットスイッチ49と、一方の回動アーム46の下方で、該回動アーム46の回動範囲に備えられ、ゲート45の高さ方向の下限リミットスイッチ50とから構成されている。
【0022】
また、電動シリンダ48の下方には、一端部に一方の回動アーム46の下端部が回動自在に連結されると共に、他端部に電動シリンダ48の端部が回動自在に連結される支持アーム51が配設されている。この支持アーム51で外方に露出する一側面に、後述するリミットスイッチブラケット52の側板部52aに設けた長孔53に挿通されるネジロッド55aが該一側面に対して略垂直方向に延びている。
【0023】
リミットスイッチブラケット52は、側板部52aと上板部52bとからなるL字状に形成され、その側板部52aの一端側下部に、電動シリンダ48に向かって延びる長孔53が形成されている。また、リミットスイッチブラケット52には、その側板部52aの一端側上辺から折曲されて設けた上板部52bに、電動シリンダ48側に突出するように上限リミットスイッチ49が固定されている。
そして、支持アーム51の一側面から略垂直方向に延びるネジロッド55aがリミットスイッチブラケット52の側板部52aの長孔53に挿通された状態で、支持アーム51の一側面に、リミットスイッチブラケット52の側板部52aが当接されると共に、リミットスイッチブラケット52の側板部52aの他端部が支持アーム51に回動自在に連結される。
【0024】
これにより、リミットスイッチブラケット52が、その他端部を中心に長孔53の範囲で回動自在となり、リミットスイッチブラケット52をその他端部を中心に回動させて所望の位置に配置し、該位置において支持アーム51からのネジロッド55aにアイナット55bを螺着することにより、リミットスイッチブラケット52を支持アーム51に固定することができる。この結果、上限リミットスイッチ49と、電動シリンダ48との離間距離の初期設定をリミットスイッチブラケット52の長孔53の範囲内で調節することが可能になる。
【0025】
次に、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1のパワーゲート8の作用を図3〜図5に基いて説明する。
パワーゲート8を、堆肥の性質に合わせてその上限高さを設定する。
すなわち、堆肥が低水分で粉状の場合で、パワーゲート8の上限高さを、荷台3とケーシング5との間を全開しない高さに設定する時には、図3及び図5に示すように、リミットスイッチブラケット52をその他端部を中心に時計回り方向に、支持アーム51からのネジロッド55aがリミットスイッチブラケット52の長孔53の下端に当接するまで最大限回動させた位置に配置する。この位置においてリミットスイッチブラケット52の長孔53から突出しているネジロッド55aにアイナット55bを螺着して、リミットスイッチブラケット52を支持アーム51に固定し、上限リミットスイッチ49と電動シリンダ48との離間距離の初期設定を最小に設定しておく。
【0026】
その後、電動シリンダ48を駆動させると、図3及び図5に示すように、シリンダロッド47が延出し、一対の回動アーム46がその下端部を中心に反時計回り方向に回動すると共にゲート45が上昇し、電動シリンダ48が支持アーム51との連結位置を中心に上限リミットスイッチ49側(反時計回り方向)に回動する。そして、最終的に電動シリンダ48が上限リミットスイッチ49を押圧すると、電動シリンダ48の駆動が停止されると共にゲート45が停止される。その時、ゲート45の下端が、荷台3とケーシング5との間を全開しない適宜高さに位置するようになる。
【0027】
一方、堆肥が低水分で粉状ではなく、パワーゲート8の上限高さを、荷台3とケーシング5との間を全開する高さに設定する時には、図4に示すように、リミットスイッチブラケット52をその他端部を中心に反時計回り方向に、支持アーム51からのネジロッド55aがリミットスイッチブラケット52の長孔53の上端に当接するまで最大限回動させた位置に配置する。この位置においてリミットスイッチブラケット52の長孔53から突出しているネジロッド55aにアイナット55bを螺着して、リミットスイッチブラケット52を支持アーム51に固定し、上限リミットスイッチ49と電動シリンダ48との離間距離の初期設定を最大に設定しておく。
【0028】
その後、電動シリンダ48を駆動させると、図4に示すように、シリンダロッド47が延出し、一対の回動アーム46がその下端部を中心に反時計回り方向に回動すると共にゲート45が上昇し、電動シリンダ48が支持アーム51との連結位置を中心に上限リミットスイッチ49側(反時計回り方向)に回動する。そして、最終的に電動シリンダ48が上限リミットスイッチ49を押圧すると、電動シリンダ48の駆動が停止されると共にゲート45が停止される。その時、ゲート45の下端が、荷台3とケーシング5との間を全開する高さに位置するようになる。
【0029】
次に、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1の破砕ビータ6a及び散布ビータ6b等の作用を図2に基いて説明する。
パワーゲート8を上述したように所定位置まで上昇させると共に、一対の散布制御板7a、7bを、後述する各開放形態のいずれかに設定した後、破砕ビータ6a、散布ビータ6b及びフロアコンベヤ10が駆動される。
すると、フロアコンベヤ10によりケーシング5側に送られてきた堆肥は、破砕ビータ6aを構成する各ビータ本体19により掻き出され破砕されて散布ビータ6b上に落下する。その後、堆肥は、散布ビータ6bを構成する各ディスク型ビータ本体20により散布口4から散布される。
【0030】
次に、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1を使用した堆肥散布方法で、特に、一対の散布制御板7a、7bの姿勢(散布制御板の第1〜第3姿勢の組み合わせによる姿勢)を変化させることにより、散布口4からの堆肥の散布幅及び散布高(本実施の形態では散布幅のみ)を変化させる堆肥散布方法を図11〜図13に基いて図9も参照しながら説明する。
まず、図10に示すように、堆肥の運搬時等、散布口4を全閉する場合には、一対の散布制御板7a、7bを散布口4を塞ぐように配置し、図6及び図7に示すように、一対の散布制御板7a、7bのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36と、各支柱25の中間部に設けた貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通して一対の散布制御板7a、7bを各支柱25に固定する。すると、図10に示すように、一対の散布制御板7a、7bの上端が上部ケーシング5aの下端から連続する上側鍔部11の外縁に当接されると共に、一対の散布制御板7a、7bの下端が下部ケーシング5bの床面から連続する下側鍔部12よりもやや下方に位置し、各散布制御板7a、7bの下部の内面が下側鍔部12の外縁に当接される。その後、上側鍔部11に設けた2個のゴムバンド13を、一対の散布制御板7a、7bのそれぞれの上面に設けた各ピン33に連結し、一対の散布制御板7a、7bにより散布口4が全閉される。
【0031】
そして、例えば、散布口4を全開し、堆肥を散布口4の幅方向全域から放射状に散布するには、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの各ピン33に連結された各ゴムバンド13をそれぞれ取り外す。
その後、図11に示すように、各散布制御板7a、7bをそれぞれ各支柱25に沿って最大限上昇させて、図9(a)に示すように、各散布制御板7a、7bのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36と、各支柱25の上部に設けた貫通孔26とを連通させて固定ピン40を挿通して、各散布制御板7a、7bを各支柱25に固定する。(第1姿勢+第1姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4が全開されて、堆肥が散布口4の幅方向全域から放射状に散布される。
【0032】
また、例えば、散布口4を全開し、堆肥が荷台3の一側面を境界とした幅方向外側に散布されないようにするには、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの各ピン33に連結された各ゴムバンド13をそれぞれ取り外す。
その後、図12に示すように、一対の散布制御板7a、7bの内、一方の散布制御板7bを、該散布制御板7bが対応する支柱25を中心に開放方向に90°回動させ、図9(b)に示すように、該散布制御板7bのパイプ部材35に設けた他方の貫通孔37と、対応する支柱25の中間部に設けた貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通して、該散布制御板7bを支柱25に固定する。一方、一対の散布制御板7a、7bの内、他方の散布制御板7aは、支柱25に沿って最大限上昇させて、図9(a)に示すように、該散布制御板7aのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36と、支柱25の上部に設けた貫通孔26とを連通させて固定ピン40を挿通して、該散布制御板7aを支柱25に固定する。(第1姿勢+第2姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4は全開されるが、散布口4からの散布幅が図11の形態よりも縮小され、堆肥が荷台3の一側面を境界とした幅方向外側に散布されるのを防ぐ。
【0033】
さらに、例えば、散布口4を全開し、堆肥が荷台3の両側面を境界とした幅方向外側に散布されないようにするには、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの各ピン33に連結された各ゴムバンド13をそれぞれ取り外す。
その後、図示はしていないが、各散布制御板7a、7bを各支柱25を中心にそれぞれ開放方向に90°回動させ、図9(b)に示すように、各散布制御板7a、7bのパイプ部材35に設けた他方の貫通孔37と、各支柱25の中間部に設けた貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通して、各散布制御板7a、7bを各支柱25に固定する。(第2姿勢+第2姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4は全開されるが、散布口4からの散布幅が図12の形態よりもさらに縮小され、堆肥が荷台3の両側面を境界とした幅方向外側に散布されるのを防ぐ。
【0034】
さらにまた、例えば、散布口4の幅方向略半分の範囲を開放し、堆肥を散布口4の幅方向略半分の範囲から放射状に散布する際には、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの内、一方の散布制御板7bのピン33に連結されたゴムバンド13だけを取り外す。
その後、図13に示すように、該散布制御板7bを支柱25に沿って最大限上昇させて、図9(a)に示すように、該散布制御板7bのパイプ部材35に設けた一方の貫通孔36と、支柱25の上部に設けた貫通孔26とを連通させて固定ピン40を挿通して、該散布制御板7bを支柱25に固定する。(第1姿勢+第3姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4の幅方向略半分の範囲だけが開放され、堆肥が散布口4の幅方向略半分の範囲から放射状に散布される。
【0035】
さらにまた、例えば、散布口4の幅方向略半分の範囲を開放し、堆肥を散布口4の幅方向略半分の範囲から散布し、荷台3の一側面を境とした幅方向外側に散布されないようにするには、まず、図10の状態から一対の散布制御板7a、7bの内、一方の散布制御板7bのピン33に連結されたゴムバンド13だけを取り外す。
その後、図示はしてしないが、一対の散布制御板7a、7bの内、一方の散布制御板7bを、該散布制御板7bが対応する支柱25を中心に開放方向に90°回動させ、図9(b)に示すように、該散布制御板7bのパイプ部材35に設けた他方の貫通孔37と、対応する支柱25の中間部に設けた貫通孔27とを連通させて固定ピン40を挿通して、該散布制御板7bを支柱25に固定する。(第2姿勢+第3姿勢の組み合わせ)
これにより、散布口4の幅方向略半分の範囲だけが開放され、散布口4からの散布幅が図13の形態よりも縮小され、堆肥が荷台3の一側面を境界とした幅方向外側に散布されるのを防ぐ。
【0036】
なお、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1では、各支柱25には、散布口4を全閉する位置に各散布制御板7a、7bを固定する中間部の貫通孔27と、散布口4を全開する位置に各散布制御板7a、7bを固定する上部の貫通孔26との2箇所の貫通孔が形成されているが、その他、貫通孔26と貫通孔27との間に、各散布制御板7a、7bを任意高さに固定する貫通孔を複数設けても良い。これにより、堆肥の散布口4からの散布高を変化させることが可能となる。
また、各散布制御板7a、7bのパイプ部材35には、一方の貫通孔36と、該一方の貫通孔36に直交する方向に開口された他方の貫通孔37との2箇所の貫通孔が形成されているが、その他に、各散布制御板7a、7bを各支柱25に対して任意角度で固定する貫通孔を複数設けても良い。これにより、堆肥の散布口4からの散布方向又は散布域を細かく制御することが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施の形態では、散布口4を開閉する一対の散布制御板7a、7bを、各支柱25に沿って上下方向に移動自在で、且つ上下方向に延びる各支柱25を中心に回動自在で、しかも、一対の散布制御板7a、7bを所望位置に配置した後、固定ピン40により各支柱25に固定できる構成が採用されている。
これにより、堆肥を散布口4から放射状に散布する際には、一対の散布制御板7a、7bを散布口4を全開させる位置まで上昇させた位置で固定するので、従来のように散布制御板が荷台3の側面から外方にはみ出し走行の妨げになるようなことはない。
しかも、堆肥の散布幅を変化させる際には、一対の散布制御板7a、7bを共にまたはいずれか一方を、支柱25を中心に開放方向に回動させて、任意角度(90°以内)で固定すれば、一対の散布制御板7a、7bが荷台3の側面から外方にはみ出すことなく、散布口4からの散布幅を適宜変化させることができる。
【0038】
また、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1では、パワーゲート8の上限リミットスイッチ49が固定されるリミットスイッチブラケット52を、その他端部を中心に長孔53の範囲で回動自在とし、且つ位置が決定されたリミットスイッチブラケット52を、その長孔53から突出した支持アーム51からのネジロッド55aにアイナット55bを螺着することで支持アーム51に固定でき、上限リミットスイッチ49と、ゲート45の上昇に伴って上限リミットスイッチ49側に回動し、上限リミットスイッチ49を押圧する押圧部材である電動シリンダ48との離間距離の初期設定を適宜調節することができるので、パワーゲート8の上限高さ、すなわち、パワーゲート8による荷台3とケーシング5との間の開口量を堆肥の性質によって適宜調節することが可能になる。
これにより、特に、堆肥が低水分で粉状である場合には、パワーゲート8の上限高さを、荷台3とケーシング5との間を全開しない適宜高さに設定すれば、散布中に、荷台3に積載されている堆肥が崩れて、ケーシング5内に一気に流れ込むことを防ぎ、堆肥の性質による生じる堆肥の散布量のむらを解消することができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機1は、トラック2に搭載されて使用されているが、トラクタに牽引される堆肥散布機にも採用でき、また、自走式の堆肥散布機にも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る堆肥散布機を示す側面図である。
【図2】図2は、本堆肥散布機のケーシング内の側面図で、破砕ビータ及び散布ビータの配置及びその構成を示す図である。
【図3】図3は、本堆肥散布機のケーシングの側面図で、パワーゲートの上限高さを荷台とケーシングとの間を全開しない高さに設定した図である。
【図4】図4は、本堆肥散布機のケーシングの側面図で、パワーゲートの上限高さを荷台とケーシングとの間を全開させる高さに設定した図である。
【図5】図5は、図3の拡大図である。
【図6】図6は、支柱に散布制御板が固定されている後面図である。
【図7】図7は、図6のA−A矢視図である。
【図8】図8は、固定ピンの上面図である。
【図9】図9は、散布制御板が支柱に固定ピンにより固定されている上面図で、(a)は、散布制御板が散布口を全閉する方向に位置した図であり、(b)は、散布制御板が散布口に対して直交する位置に回動された図である。
【図10】図10は、一対の散布制御板により散布口を全閉させた図であり、(a)は上面図で、(b)は後面図で、(c)は側面図である。
【図11】図11は、一対の散布制御板をそれぞれ最大限上昇させて、散布口を全開させた図であり、(a)は後面図で、(b)は側面図である。
【図12】図12は、一対の散布制御板の内、一方の散布制御板は支柱を中心に開放方向に90°回動させると共に、他方の散布制御板を最大限上昇させた図であり、(a)は上面図で、(b)は後面図である。
【図13】図13は、一対の散布制御板の内、一方の散布制御板だけを最大限上昇させた図であり、(a)は上面図で、(b)は後面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 堆肥散布機,3 荷台,4 散布口,5 ケーシング,5a 上部ケーシング,5b 下部ケーシング,6 ビータ,6a 破砕ビータ,6b 散布ビータ,7a、7b 散布制御板,8 パワーゲート,25 支柱,26、27 貫通孔,35 パイプ部材,36 一方の貫通孔,37 他方の貫通孔,40 固定ピン,45 ゲート,48 電動シリンダ(押圧部材),49 上限リミットスイッチ,51 支持アーム,52 リミットスイッチブラケット,53 長孔,55a ネジロッド,55b アイナット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥をビータの回転により、荷台後方の散布口から散布する堆肥散布機であって、
前記散布口の両側部に夫々立設された支柱に、回動自在及び上下摺動自在に散布制御板を夫々設け、しかも、各散布制御板は、各支柱上に任意角度及び任意高さで固定できることを特徴とする堆肥散布機。
【請求項2】
前記堆肥散布機は、堆肥が積載される荷台と、前記ビータが配置されるケーシングとの間を開閉可能に上下動するパワーゲートを備えており、
該パワーゲートの上昇に伴って互いに近接する、該パワーゲートの高さ方向における上限リミットスイッチと、該上限リミットスイッチを押圧する押圧部材との離間距離の初期設定を調節することにより、該パワーゲートの上限高さを調節可能にすることを特徴とする請求項1に記載の堆肥散布機。
【請求項3】
荷台後方に配置される堆肥の散布口の両側部に夫々立設された支柱に、散布制御板を回動自在及び上下摺動自在に夫々設け、しかも、各散布制御板を、散布制御板を上昇させて、前記散布口を開放する第1姿勢と、散布制御板を回動して、前記散布口を開放すると共に散布幅を制御するために回動角度を維持する第2姿勢と、散布制御板を動作させずに前記散布口を閉鎖状態に維持する第3姿勢とのいずれかを組み合わせて構成することで、堆肥の前記散布口からの散布幅及び散布高を変化させることを特徴とする堆肥散布方法。
【請求項1】
堆肥をビータの回転により、荷台後方の散布口から散布する堆肥散布機であって、
前記散布口の両側部に夫々立設された支柱に、回動自在及び上下摺動自在に散布制御板を夫々設け、しかも、各散布制御板は、各支柱上に任意角度及び任意高さで固定できることを特徴とする堆肥散布機。
【請求項2】
前記堆肥散布機は、堆肥が積載される荷台と、前記ビータが配置されるケーシングとの間を開閉可能に上下動するパワーゲートを備えており、
該パワーゲートの上昇に伴って互いに近接する、該パワーゲートの高さ方向における上限リミットスイッチと、該上限リミットスイッチを押圧する押圧部材との離間距離の初期設定を調節することにより、該パワーゲートの上限高さを調節可能にすることを特徴とする請求項1に記載の堆肥散布機。
【請求項3】
荷台後方に配置される堆肥の散布口の両側部に夫々立設された支柱に、散布制御板を回動自在及び上下摺動自在に夫々設け、しかも、各散布制御板を、散布制御板を上昇させて、前記散布口を開放する第1姿勢と、散布制御板を回動して、前記散布口を開放すると共に散布幅を制御するために回動角度を維持する第2姿勢と、散布制御板を動作させずに前記散布口を閉鎖状態に維持する第3姿勢とのいずれかを組み合わせて構成することで、堆肥の前記散布口からの散布幅及び散布高を変化させることを特徴とする堆肥散布方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−72084(P2009−72084A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−242285(P2007−242285)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パワーゲート
【出願人】(390010928)株式会社デリカ (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パワーゲート
【出願人】(390010928)株式会社デリカ (4)
【Fターム(参考)】
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