説明

堆肥製造装置および堆肥製造方法

【課題】廃棄農産物を簡易に堆肥化する堆肥製造装置および堆肥の製造方法を提供する。
【解決手段】生ごみ等の堆肥の原料を入れる原料挿入袋11と、原料挿入袋11を配置し、この原料挿入袋11を回転させる回転台12とを有している。回転台12の下部には、配設台15が配設されており、振動モーターなどの振動部材17が取り付けられている。原料挿入袋11に堆肥の原料を挿入しながら、回転台12を回転させると共に、振動部材17により振動させる。そののち、原料挿入袋11を密閉して嫌気性発酵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみなどを堆肥化する堆肥製造装置および堆肥の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農産物は、天候などの諸状況により、外観が良くなくなってしまうことがある。これらの農産物は、そのまま販売するには向いていないので、ジュースや漬け物などに加工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−57453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、天候不良などの特殊な事情により、外観の良くない農産物が大量に発生してしまった場合には、一部の農産物は加工品とすることができるが、残りの農産物は、そのまま廃棄することになり、多大な費用が発生してしまう。よって、これらの廃棄農産物を堆肥として再利用する簡易な技術の開発が望まれている。
【0005】
なお、特許文献1には、好気性菌を利用して生ゴミを処理する技術が記載されている。
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、廃棄農産物を簡易に堆肥化する堆肥製造装置および堆肥の製造方法を提供することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の堆肥製造装置は、堆肥の原料を入れる原料挿入袋と、この原料挿入袋を配置させると共に回転させる回転台と、原料挿入袋に振動を加える振動部材とを備えたものである。
【0008】
本発明の堆肥製造方法は、堆肥の原料を原料挿入袋に挿入する原料挿入工程と、原料挿入袋を回転して原料を混合する原料回転工程と、原料挿入袋に振動を加えて原料から空気を除去する原料振動工程と、原料を挿入した原料挿入袋を密閉して原料を嫌気性発酵させる嫌気性発酵工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の堆肥製造方法によれば、堆肥の原料を原料挿入袋に挿入する工程と、原料挿入袋を回転する原料回転工程を含むようにしたので、原料を原料挿入袋内で混合することができる。また、原料挿入袋に振動を加える原料振動工程を含むようにしたので、原料を圧縮して空気を除去することができる。更に、原料挿入袋を密閉して原料を嫌気性発酵すること工程を含むようにしたので、悪臭の発生を抑制しつつ、嫌気性発酵を、例えば、畑などの肥料の使用場所において行なうことができ、大規模な保管場所の確保による費用の発生を抑制することができる。よって、悪臭の発生を抑制しつつ、安価で簡易に堆肥を製造することができる。
【0010】
また、原料挿入袋を略水平方向に回転するようにすれば、より混合しやすくすることができる。
【0011】
更に、原料の含水率を、50質量%以上55質量%以下とするようにすれば、発酵をより促進することができる。また、水分調整剤として、もみがらまたはバークを含むようにすれば、水分を容易に調整することができると共に、これらも堆肥化することができる。
【0012】
更にまた、原料を加温するようにすれば、例えば、冬などの寒い季節であっても、発酵を促進することができる。
【0013】
本発明の堆肥製造装置によれば、堆肥の原料を入れる原料挿入袋と、この原料挿入袋を配置させると共に回転させる回転台と、原料挿入袋に振動を加える振動部材とを備えるようにしたので、例えば、本発明の堆肥の製造方法により、簡易に堆肥を製造することができる。
【0014】
また、回転台を略水平に配置すると共に、略水平方向に回転するようにすれば、原料をより混合しやすくすることができる。
【0015】
更に、振動部材を原料挿入袋の下部に備えるようにすれば、原料をより容易に圧縮して空気を除去することができる。
【0016】
加えて、回転台と振動部材とを支持する支持部材を有し、この支持部材の一部に、振動を緩和する緩和部材を備えるようにすれば、振動が外部に伝達してしまうことを抑制することができ、騒音が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る堆肥製造装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した堆肥製造装置の一部を拡大した図である。
【図3】図1に示した堆肥製造装置の一部の断面構造を表す図である。
【図4】本発明の第二の実施の形態に係る堆肥製造装置の構成を表す図である。
【図5】図4に示した堆肥製造装置の一部の断面構造を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第一の実施の形態)
図1は、本発明の第一の実施の形態に係る堆肥製造装置10の構成を表すものである。また、図2は、堆肥製造装置10の一部を拡大したものであり、図3は、堆肥製造装置10の一部の断面構造を表すものである。この堆肥製造装置10は、例えば、上部に開口部11aを有し、この開口部11aから堆肥の原料を入れることができる原料挿入袋11と、原料挿入袋11を配置し、この原料挿入袋11を回転させる回転台12とを有している。原料挿入袋11は、例えば、麻布あるいはビニールにより構成されている。原料挿入袋11の開口部11aは、密閉することが可能となっており、開口部11a自体が開閉するようになっていてもよいし、開口部11aを他の蓋により開閉するようになっていてもよい。原料挿入袋11の周りには、この原料挿入袋11を支えるための支持体13が形成されており、例えば、その一部が回転台12に連結されると共に、開閉可能とし、原料挿入袋11を配置したり、あるいは取り出したりできるようになっている。
【0020】
この回転台12は、例えば略水平に配設されており、原料挿入袋11を配置する位置が略水平となっている。回転台12の下部には、複数のローラーなどの回転体12aが配置されている。回転体12aの少なくとも一つは、回転モーター14に連結され、この回転モーター14の駆動と共に、回転体12aが回転し、それに伴い回転台12が、例えば、矢印方向、すなわち、略水平方向に回転するようになっている。
【0021】
回転台12の下部には、例えば、配設台15が配設されており、回転体12aが取り付けられていると共に、中心部には回転軸16が取り付けられている。回転軸16は、回転台12の中心部に挿入されており、回転軸16と回転台12との間にはベアリング12bが介在されている。配設台15の下部には、また、振動モーターなどの振動部材17が取り付けられている。振動部材17は、例えば、配設台15および回転軸16を振動させて回転台12に振動を伝達するようになっている。また、配設台15は、支持部材18により支持されている。
【0022】
この堆肥製造装置10の上部には、堆肥の原料を破砕するスクリューコンベア19が配設されており、破砕された原料は、開口部11aから原料挿入袋11の内部に落ちるようになっている。スクリューコンベア19は、例えば、二重構造となっており、内側に原料を破砕しながら運ぶ原料流路が形成され、外側に水蒸気を流通させる加熱流路が形成されていることが好ましい。加熱により発酵を促進することができるからである。
【0023】
次に、本発明の堆肥の製造方法について説明する。本発明の堆肥の製造方法は、堆肥の原料を原料挿入袋11に挿入する原料挿入工程と、原料挿入袋11を回転して原料を混合する原料回転工程と、原料挿入袋11に振動を加えて原料から空気を除去する原料振動工程と、原料を挿入した原料挿入袋11を密閉して原料を嫌気性発酵させる嫌気性発酵工程とを含むものであり、例えば、上述した堆肥製造装置10を用いることができる。
【0024】
原料挿入工程では、回転台12の上に原料挿入袋11を配置し、原料挿入袋11の中に堆肥の原料を挿入する。堆肥の原料としては、例えば、生ごみ、あるいはおから,りんごの搾りかすなどの産業廃棄物がある。堆肥の原料には水分が含まれていてもよい。また、堆肥の原料に含まれる水分量を調整するために、原料に水分調整剤を混合してもよい。水分調整剤としては、例えば、もみがらや、木の皮,チップ,木屑などのバークが廃棄物の再利用の観点から好ましく挙げられる。これらの堆肥の原料は、例えば、スクリューコンベア19により、破砕・混合されたのち、原料挿入袋11に落下させることが好ましい。なお、堆肥の原料は、原料挿入袋11に単に詰め込むようにしてもよいが、徐々に落下させるようにすれば、より均等に混合されるので好ましい。また、原料は、例えば、スクリューコンベア19で破砕・混合している際に、例えば、水蒸気により加温するようにしてもよい。冬などの寒い季節であっても、発酵を促進することができるからである。
【0025】
原料回転工程では、回転台12を回転することにより、原料挿入袋11を略水平方向に回転して堆肥の原料を混合する。原料回転工程は、原料挿入袋11に原料を挿入した後に行なうようにしてもよいが、原料を挿入しながら行なうことが好ましい。原料を均等に混合しながら挿入することができ、時間を短縮することができるからである。
【0026】
原料振動工程では、振動部材17により原料挿入袋11に振動を加えて原料から空気を除去する。原料振動工程は、原料挿入工程および原料回転工程と別に行なうようにしてもよいが、原料を挿入しながら行なうことが好ましい。原料を挿入しながら圧縮することができ、時間を短縮することができるからである。すなわち、原料を挿入しながら回転と振動を行なうようにすればより好ましい。
【0027】
嫌気性発酵工程では、原料を挿入した原料挿入袋11を密閉して嫌気性発酵させる。嫌気性発酵工程には、通常、夏場で1カ月程度、冬場であれば2カ月から3カ月程度の期間が必要となる。その間、原料挿入袋11は、回転台12の上から降ろして、堆肥を使用する場所、例えば畑や、保管場所に静置する。また、嫌気性発酵させる際には、原料の含水率が50質量%以上55質量%以下となるようにすることが好ましい。水分が少ないと発酵しにくく、また、多いと嫌気性菌が水分の多い方に流れてしまい、発酵にむらを生じてしまうからである。原料の含水率は、例えば、水分調整剤の混合量により調整することができる。これにより堆肥を得ることができる。
【0028】
このように本実施の形態に係る堆肥製造方法によれば、堆肥の原料を原料挿入袋11に挿入する工程と、原料挿入袋11を回転する原料回転工程を含むようにしたので、原料を原料挿入袋11の内で混合することができる。また、原料挿入袋11に振動を加える原料振動工程を含むようにしたので、原料を圧縮して空気を除去することができる。更に、原料挿入袋11を密閉して原料を嫌気性発酵すること工程を含むようにしたので、悪臭の発生を抑制しつつ、嫌気性発酵を、例えば、畑などの肥料の使用場所において行なうことができ、大規模な保管場所の確保による費用の発生を抑制することができる。よって、悪臭の発生を抑制しつつ、安価で簡易に堆肥を製造することができる。
【0029】
また、原料挿入袋11を略水平方向に回転するようにすれば、より混合しやすくすることができる。
【0030】
更に、原料の含水率を、50質量%以上55質量%以下とするようにすれば、発酵をより促進することができる。また、水分調整剤として、もみがらまたはバークを含むようにすれば、水分を容易に調整することができると共に、これらも堆肥化することができる。
【0031】
更にまた、原料を加温するようにすれば、例えば、冬などの寒い季節であっても、発酵を促進することができる。
【0032】
また、本実施の形態に係る堆肥製造装置10によれば、堆肥の原料を入れる原料挿入袋11と、この原料挿入袋11を配置させると共に回転させる回転台12と、原料挿入袋11に振動を加える振動部材17とを備えるようにしたので、例えば、本発明の堆肥の製造方法により、簡易に堆肥を製造することができる。
【0033】
また、回転台12を略水平に配置すると共に、略水平方向に回転するようにすれば、原料をより混合しやすくすることができる。
【0034】
更に、振動部材17を原料挿入袋11の下部に備えるようにすれば、原料をより容易に圧縮して空気を除去することができる。
【0035】
(第二の実施の形態)
図4は、本発明の第二の実施の形態に係る堆肥製造装置20の構成を表すものである。また、図5は、堆肥製造装置20の一部の断面構造を表すものである。この堆肥製造装置20は、第一の実施の形態に係る堆肥製造装置10と振動部材27の配設位置が異なり、支持部材28の構成が異なることを除き、他は同様の構成を有している。なお、第一の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一部分の説明は省略する。
【0036】
振動部材27は、例えば、配設台15の側部に配設されている。支持部材28は、例えば、配設台15と部下端部との間の一部に、振動を緩和する緩和部材28aを備えている。振動部材27による振動が設置床に伝わって騒音が発生することを防止するためである。緩和部材28aは、例えば、ゴムなどの弾性材料により構成されている。
【0037】
このように本実施の形態に係る堆肥製造装置20によれば、支持部材28の一部に、振動を緩和する緩和部材28aを備えるようにしたので、振動が外部に伝達してしまうことを抑制することができ、騒音が発生することを防止することができる。
【0038】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、回転台12の下部に回転体12aを設けるようにしたが、下部に加えて側部にも回転体を設け、回転台12の回転を補助するように構成してもよい。
【0039】
また、上記実施の形態では、振動部材17,27を配設台15の下部または側部に設けるようにしたが、他の場所に設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
嫌気性発酵を利用した堆肥の製造に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
10,20…堆肥製造装置、11…原料挿入袋、11a…開口部、12…回転台、12a…回転体、12b…ベアリング、13…支持体、14…回転モーター、15…配設台、16…回転軸、17,27…振動部材、18,28…支持部材、19…スクリューコンベア、28a…緩和部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥の原料を入れる原料挿入袋と、
この原料挿入袋を配置させると共に回転させる回転台と、
前記原料挿入袋に振動を加える振動部材と
を備えたことを特徴とする堆肥製造装置。
【請求項2】
前記回転台は、略水平に配置されると共に、略水平方向に回転することを特徴とする請求項1記載の堆肥製造装置。
【請求項3】
前記振動部材は、前記原料挿入袋の下部に備えることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の堆肥製造装置。
【請求項4】
前記回転台と、前記振動部材とを支持する支持部材を有し、この支持部材の一部には、振動を緩和する緩和部材を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の堆肥製造装置。
【請求項5】
堆肥の原料を原料挿入袋に挿入する原料挿入工程と、
前記原料挿入袋を回転して原料を混合する原料回転工程と、
前記原料挿入袋に振動を加えて原料から空気を除去する原料振動工程と、
前記原料を挿入した原料挿入袋を密閉して前記原料を嫌気性発酵させる嫌気性発酵工程と
を含むことを特徴とする堆肥製造方法。
【請求項6】
前記原料回転工程において、前記原料挿入袋を略水平方向に回転させることを特徴とする請求項5に記載の堆肥製造方法。
【請求項7】
前記原料の含水率を、50質量%以上55質量%以下とすることを特徴とする請求項5または請求項6のいずれかに記載の堆肥製造方法。
【請求項8】
前記原料は、水分調整剤として、もみがらまたはバークを含むことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれらに記載の堆肥製造方法。
【請求項9】
前記原料を加温することを特徴とする請求項5から請求項8のいずれかに記載の堆肥製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−235420(P2010−235420A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87840(P2009−87840)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(507321451)
【Fターム(参考)】