説明

堤防強化用ウエル工法における排水構造及びこれに使用する集水用ブロック

【課題】ウエル工法を使用し、堤体内に浸透した浸透水を連続して効果的に取り除くことができるようにした堤防強化用ウエル工法における排水構造を提供する。
【解決手段】既設の河川堤体10の基部地盤12に、通水孔22が外周面に設けられた集水ブロック16aを埋設し、該通水孔22を通して集水ブロック16a内に浸入された堤体10内の浸透水を集めて排出する堤防強化用ウエル工法における排水構造であって、集水ブロック16aは中空横長をした角柱状で、一面側に係合凹部23を有するとともに他面側に係合凹部23に挿入係合可能な係合凸部24を有してなり、堤体10の基部地盤12を堤体10に沿って一定の深さで掘削した溝穴20内に集水ブロック16aを複数連結させて横長列状に配設し、かつ、該横長の集水ブロック列上に係合凸部24を係合凹部23に挿入係合させて他の集水ブロック列を積み重ねて形成した排水壁17を備える構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堤防強化用ウエル工法における排水構造及びこれに使用する集水用ブロックに関するものであり、特に、洪水時等に河川の堤体内部及び堤体の基部地盤に浸透している浸透水を集めて排出する堤防強化用ウエル工法における排水構造及びこれに使用する集水用ブロックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風の通過や集中豪雨等によって既設の河川が増水し、河川堤防が決壊する原因として、流水により直接堤防を浸食し決壊する現象(浸食破壊)と、河川水が堤防内に浸透して崩落するか、また堤体の基部基盤を浸透してパイピング現象により堤体の裏側から崩壊する(浸透破壊)等がある。
【0003】
そして、近年までは、この浸食対策として堤防河川側の表面を浸食されないようにコンクリートブロック等で堤体表面を被覆する方法や、河川堤体内に河川水が浸透しないように遮水シートで浸透を阻止する方法、または流速による堤体の基部地盤の局所洗堀を防止する根固め工や水制工等が実施施工されていた。
【0004】
特に、今日での堤防破壊は、パイピング現象により堤体の基礎地盤の強度低下や地盤沈下により堤体破壊に至っていることが多い。この堤体破壊の対策としては、堤外地側(河川側)にコンクリート壁で止水壁を築造する、止水矢板を用いて止水壁を築造する、あるいは地中にコンクリート壁を埋め込んで止水壁を築造する等が行われて来た。
【0005】
また、今日では、堤体内に浸透した浸透水を、地中深くまで掘削した穴内に集めて溜め、これをポンプで地表に汲み出す、所謂井戸を設けて排出するウエル工法が採用されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。このウエル工法の場合では、堤体内に浸透した浸透水は、離れた箇所に設けられた井戸まで浸透した後、排出処理されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−68485号公報。
【特許文献2】特開2004−116152号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のウエル工法を用いた浸透水の排出方法では、堤体内に浸透した浸透水を穴(井戸)内に集めて溜め、これをポンプで地表に汲み出すようにしているので、十分な透水性が確保されていない場合には集水機能が十分でなく、浸透水が井戸まで行き着くのに時間がかかり、広範囲にわたって十分な排出処理を行うことができない。このように従来の方式の場合は、機能性に乏しく、また多数の位置に井戸等を設けなくてはならないので経済性も悪いという問題点があった。
【0008】
そこで、ウエル工法を使用し、堤体内に浸透した浸透水を連続して効果的に取り除くことができるようにした堤防強化用ウエル工法における排水構造及びこれに使用する集水用ブロックを提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、既設の河川堤体の基部地盤に、通水孔が外周面に設けられた集水ブロックを埋設し、該通水孔を通して集水ブロック内に浸入された堤体内の浸透水を集めて排出する堤防強化用ウエル工法における排水構造であって、前記集水ブロックは中空横長をした角柱状で、一面側に係合凹部を有するとともに他面側に前記係合凹部に挿入係合可能な係合凸部を有してなり、前記堤体の基部地盤を該堤体に沿って一定の深さで掘削した溝穴内に前記集水ブロックを複数連結させて横長列状に配設し、かつ、該横長の集水ブロック列上に前記係合凸部を前記係合凹部に挿入係合させて他の集水ブロック列を積み重ねて形成した排水壁を備える堤防強化用ウエル工法における排水構造を提供する。
【0010】
この構成によれば、排水壁を堤体に沿って広い範囲にわたって敷設することができるので、堤体内の広い範囲にわたって浸透した浸透水を、各集水ブロックの通水孔を通して排水壁内に集め、さらに該排水壁内から所定の箇所に送って連続して効果的に取り除くことができる。しかも、横長の集水ブロック列上に、係合凹部と係合凸部を挿入係合させて他の集水ブロック列を積み重ねることにより、所望する高さ及び長さの排水壁を簡単に形成できる。また、集水ブロック列は樋状に連結されるので、排水壁内に浸入された水を所定の箇所に集めて簡単に排出処理することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記集水ブロックは、上面側の前記外周面が開放されて断面U字状に形成されているとともに、前記係合凹部を前記上面側の外周面に設け、前記係合凸部を下面側の外周面外側に設けてなる堤防強化用ウエル工法における排水構造を提供する。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記集水ブロックは、前記通水孔を有する4つの前記外周面が閉じられてなる断面矩形状に形成されているとともに、互いに重なり合う前記通水孔が位置対応して設けられている堤防強化用ウエル工法における排水構造を提供する。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載の構成において、上記集水ブロックの通水孔は、上記外周面に格子状にして複数個設けられている堤防強化用ウエル工法における排水構造を提供する。
【0014】
請求項5記載の発明は、既設の河川堤体の基部地盤を該堤体に沿って設定された間隔で一定深さの溝穴を掘削し、該溝穴内に該溝穴に沿って横長状に連結配設され、前記堤体内の浸透水を集めて排出する堤防強化用ウエル工法に使用する集水用ブロックであって、中空横長をした角柱状で、かつ、一面側に係合凹部を有するとともに他面側に前記係合凹部に挿入係合可能な係合凸部を有してなり、一つの集水ブロックの前記係合凸部を他の集水ブロックの前記係合凹部に挿入係合させて積み重ね可能に形成した堤防強化用ウエル工法に使用する集水用ブロックを提供する。
【0015】
この構成によれば、各集水ブロックを横長状に連結配置することによりウエル工法に適した樋状の集水ブロック列が形成され、さらに該横長の集水ブロック列上に、係合凸部を係合凹部に挿入係合させて他の集水ブロック列を積み重ねると、所望する高さ及び長さをした排水壁を簡単に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1,2,3たは4記載の発明は、堤体内に広い範囲にわたって浸透している浸透水を、この堤体に沿って配設している排水壁内に集めた後、さらに所定の箇所に集めて連続的に排出させ、効果的に取り除くことができるので機能性が向上し、堤防の安定性を高めることができる。また、一つの横長の集水ブロック列上に他の集水ブロック列を係合凹部と係合凸部を挿入係合させて積み重ね、所望する高さ及び長さの排水壁を簡単に形成することができるので、機能性及び経済性の向上が図れる。
【0017】
請求項5記載の発明は、一つの集水ブロック列の上に他の集水ブロック列を、係合凸部を係合凹部に挿入係合させて積み重ねると、所望する高さ及び長さの排水壁を簡単に形成することができるので、施工がし易く経済性を向上させることができる。また、堤体内に広い範囲にわたって浸透している浸透水を、堤体に沿って配設している排水壁内に集めた後、さらに所定の箇所に送って連続的に排出させ、効果的に取り除くことができるので、機能性が向上して堤防の安定性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】既設の標準的な河川堤体の基部地盤に、本発明に係る堤防強化用ウエル工法における排水構造を施した場合の一実施例を示す縦断面図。
【図2】図1における排水構造を施した強化対象部位の拡大断面図。
【図3】図2の排水構造の下層部に配設される集水ブロックの拡大斜視図。
【図4】図3における下層集水ブロックの正面図。
【図5】図3における下層ブックの側面図。
【図6】図3のA−A線断面図。
【図7】図3の排水構造の最上層部に配設される集水ブロックの拡大斜視図。
【図8】同上強化対象部位における排水構造の一変形例を示す断面図。
【図9】図8の排水構造の下層部に配設される集水ブロックの拡大斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、ウエル工法を使用し、堤体内に浸透した浸透水を連続して効果的に取り除くことができるようにした堤防強化用ウエル工法における排水構造を提供するという目的を達成するために、既設の河川堤体の基部地盤に、通水孔が外周面に設けられた集水ブロックを埋設し、該通水孔を通して集水ブロック内に浸入された堤体内の浸透水を集めて排出する堤防強化用ウエル工法における排水構造であって、前記集水ブロックは中空横長をした角柱状で、一面側に係合凹部を有するとともに他面側に前記係合凹部に挿入係合可能な係合凸部を有してなり、前記堤体の基部地盤を該堤体に沿って一定の深さで掘削した溝穴内に前記集水ブロックを複数連結させて横長列状に配設し、かつ、該横長の集水ブロック列上に前記係合凸部を前記係合凹部に挿入係合させて他の集水ブロック列を積み重ねて形成した排水壁を備えることにより実現した。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の排水構造について、好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は既設の標準的な河川堤体の基部地盤に、本発明に係る排水構造を施した場合の一実施例を示す縦断面図である。同図において、この河川堤体では、堤体10の内側法面11に続く基礎地盤12に強化対象部位13を設けており、増水等により堤外地側(河川側)の水位が上昇して該堤体10の該基礎地盤12内に水の流れ(浸透流)が発生した際、その浸透流を該強化対象部位13で吸収し、パイピング現象による前記基礎基盤12の強度低下や地盤沈下を無くして前記堤体10の破壊を防止するようになっている。
【0022】
図2は、前記堤体10の前記強化対象部位13の拡大断面図である。同図において、まず、前記強化対象部位13の築造手順の一例を説明する。前記堤体10の前記内側法面11の下側部分、及びこれに続く周辺部分の前記基礎地盤12を、該堤体10に沿って設定された間隔で一定深さの溝穴20を掘削し、この掘削した溝穴20の底面に基礎材(コンクリート材)14を打設する。次に、掘削された溝穴20の内面を吸い出し防止シート15で覆い、該吸い出し防止シート15の上から前記基礎材14上に集水ブロック16を前記堤体10に沿って並べ、これを複数段積み重ね、該集水ブロック16により排水壁17を形成する。次いで、集水ブロック16内に栗石、単粒砕石等が流れ込んで目詰まりを起こすことがないように該排水壁17の外側をプラスチック繊維あるいは金網等で形成されたネットシート18で覆うとともに、該排水壁15の前後(外側法面側と内側法面側)に上記栗石、単粒砕石等の通水性の優れたドレーン材19を投入して該溝穴20内の隙間を埋めると前記強化対象部位13を築造することができる。
【0023】
前記ドレーン材19の外側に配設される前記吸い出し防止シート15は、前記強化対象部位13の外側で発生している浸透流を該強化対象部位13内に浸透水として吸い込み、また、この一度吸い込まれた浸透水が該強化対象部位13内から外側に逆流できない構造となっている。
【0024】
したがって、前記強化対象部位13では、前記吸い出し防止シート15を浸透して内側に吸い込まれた浸透水は、前記ドレーン材19及び前記ネットシート18を通って前記排水壁17の集水ブロック16内に集められ、さらに該排水壁17内の水路を通って所定の箇所(例えば、溜め池や井戸)に送られて連続的に処理される。
【0025】
図3乃至図7は前記排水壁17を構成している前記集水ブロック16の一例を示すもので、図3乃至図6は前記排水壁17の下層部に配設される集水ブロック16aを示し、図7は前記排水壁17の最上層部に配設される集水ブロック16bを示している。
【0026】
まず、図3乃至図6に示す下層部に配設される前記集水ブロック16aについて説明する。前記集水ブロック16aは、左右両側端が開口された中空横長をした角柱体で、上面側における外周面は開放されて、側面視概略上向きコ字状に形成されている。また、該集水ブロック16aの下面側の外壁部21aと前側及び後側の外壁部21b,21cには、内側から外側まで貫通している矩形状の通水孔22が複数個ずつ(本例では6個ずつ)、格子状に並設されている。
【0027】
さらに、前記集水ブロック16aの上面開口部分には、前後の外壁21b,21cにおける上端部分の一部をそれぞれ段状に切欠してなる係合凹部23が左右両端にわたって形成されている。一方、前記集水ブロック16aの下面側の外周壁部21aの外面には、前記係合凹部23に挿入係合可能な係合凸部24が一体に形成されている。
【0028】
次に、図7に示す最上層部に配設される集水ブロック16bについて説明する。前記集水ブロック16bは、前記集水ブロック16aと同様に、左右両側端が開口された中空横長をした角柱体で、上面側における外周面が開放されて側面視概略上向きコ字状に形成されている。また、該集水ブロック16bの上面開口部分は、上蓋となる集水ブロック16cが取り付けられて閉じられている。
【0029】
前記集水ブロック16bの下面側の外壁部25aと後側の外壁部25cには、内側から外側まで貫通している矩形状の通水孔26が複数個ずつ(本例では6個ずつ)形成されている。また、前記蓋状集水ブロック16cにも、内側から外側まで貫通している矩形状の通水孔27が複数個(本例では2個)形成されている。なお、上蓋となる前記集水ブロック16cの通水孔27は、該集水ブロック16c上を歩く人の足が該通水孔27にはまり込むのを防ぐように、通水孔26に比べて細長い孔として形成されている。
【0030】
さらに、前記集水ブロック16bの下面を形成している外周壁部25aの外面には、前記集水ブロック16aの係合凹部23に挿入係合可能な係合凸部28が一体に形成されている。
【0031】
なお、前記集水ブロック16a及び前記集水ブロック16bの大きさは、左右方向の幅が約2000mm、高さが約800mm、前後の幅が約700mmである。これらの各寸法は適宜変更可能である。
【0032】
次に、このように構成された集水ブロック16a,16b,16cを使用して前記排水壁17を築造する手順を説明する。まず、前記溝穴20内の基礎材14上において、下層部用の集水ブロック16aを使用して、排水壁17の下層部を組み立てる。集水ブロック16aはそれぞれ上面開口部分を上側に向けるとともに、隣り合う集水ブロック16a,16aの端同士を互いに突き合わせて集水ブロック16a,16a…を堤体10に沿って順に繋げ、一段目の細長く連続した樋状の下層集水ブロック列を形成する。
【0033】
次いで、一段目の下層集水ブロック列における前記集水ブロック16a,16a…の上に他の集水ブロック16a,16a…を、該他の集水ブロック16aの係合凸部24が下側の集水ブロック16aの前記係合凹部23に挿入係合されるようにして順に重ね、これを堤体10に沿って繋げて行くと、二段目の下層集水ブロック列が形成される。これを順に繰り返す。図2はこのようにして集水ブロック16a,16a…を使用した下層集水ブロック列を三段積み重ねて形成した状態を示している。
【0034】
このようにして下層用の集水ブロック16a,16a…を使用した下層部における集水ブロック列の組立を終えたら、この下層集水ブロック列の上にさらに一段分だけ最上部用の集水ブロック16b,16b…を積み重ね、これを堤体10に沿って繋げて最上段の集水ブロック列を形成する。また、その後から各集水ブロック16b,16b…の上に蓋となる集水ブロック16c,16c…を取り付けて上面開口部分を塞ぐと、堤体10に沿って連続した前記排水壁17が形成される。
【0035】
したがって、このように構成された排水壁17では、各集水ブロック列同士が左右方向で樋状に繋がって内部に水路を形成しているとともに、上下の集水ブロック列間も、外壁部21aに設けた通水孔22及び外壁部25aに設けた通水孔26で互いに繋がっているので、集水ブロック16a,16a…、16b,16b…、16c,16c…で集められて該排水壁17内に流れ込んだ浸透水は、該排水壁17内の各水路を通って所定の箇所(例えば、溜め池や井戸)に送られて連続的に処理することができる。
【0036】
これにより、堤体10内に広い範囲にわたって浸透している浸透水を、効果的に取り除くことができるので機能性が向上し、堤防の安定性を高めることができる。また、一つの横長の集水ブロック列上に他の集水ブロック列を係合凹部23と係合凸部24を挿入係合させて積み重ね、所望する高さ及び長さの排水壁17を簡単に形成することができるので、機能性及び経済性の向上が図れることになる。
【0037】
図8は、前記堤体10の強化対象部位の一変形例を示す拡大断面図である。この変形例では、図2乃至図7に示す強化対象部位13の排水壁17を形成している側面視概略上向きコ字状の下層部用の集水ブロック16aに変えて、上面側における外周面を閉じて側面視概略口字状に形成されている下層用集水ブロック16dを使用して排水壁17を形成したものであり、他の構成は図2乃至図7と同一であるから、同一の構成部分は同一符号を付して重複説明を省略する。
【0038】
そして、下層部用集水ブロック16dは、前記集水ブロック16aと同様に、左右両側端が開口された中空横長をした角柱体で、また下面側の外壁部21aと前側及び後側の外壁部21b,21c並びに上面側の外壁部21dには、内外に貫通している矩形状の通水孔22が、それぞれ複数個ずつ(本例では6個ずつ)設けられている。
【0039】
さらに、前記集水ブロック16dの上面側の外壁部21dには、係合凹部23が左右両端にわたって連続して形成されている。一方、前記集水ブロック16dの下面側の外壁部21aの外側面には、前記係合凹部23に挿入係合可能な係合凸部24が左右両端にわたって連続して形成されている。
【0040】
そして、このように構成された下層部用の集水ブロック16dを使用して前記排水壁17を築造する場合は、まず、係合凹部23が設けられている上面側の外壁部21dを上側に向けるとともに、隣り合う集水ブロック16d,16d…の端同士を互いに突き合わせて集水ブロック16dを堤体10に沿って順に繋げ、一段目の細長く連続した樋状の下層集水ブロック列を形成する。
【0041】
次いで、一段目の下層集水ブロック列における前記集水ブロック16d,16d…の上に他の集水ブロック16d,16d…を、該他の集水ブロック16dの係合凸部24が下側の集水ブロック16dの前記係合凹部23に挿入係合されるようにして順に重ね、これを堤体10に沿って繋げて行くと、二段目の下層集水ブロック列が形成される。これを順に繰り返す。図8はこのようにして集水ブロック16d,16d…を使用した下層集水ブロック列を三段積み重ねて形成した状態を示している。また、このようにして積み重ねられた下層集水ブロック列は、上側の集水ブロック16dにおける外壁部21aの通水孔22と外壁部21dに設けた通水孔22とが上下で連通するように設定されている。
【0042】
このようにして下層用の集水ブロック16dを使用した下層集水ブロック列の組立を終えたら、この下層集水ブロック列の上にさらに一段分だけ図7に示した最上部用の集水ブロック16b,16b…を積み重ね、これを堤体10に沿って繋げて最上段の集水ブロック列を形成する。また、その後から各集水ブロック16b,16b…の上に蓋状集水ブロック16c,16c…を取り付けて上面開口部分を塞ぐと、堤体10に沿って連続した前記排水壁17が形成される。なお、下層用の集水ブロック16dと最上部用の集水ブロック16bの間は、下層集水ブロック列の上に最上段の集水ブロック列が積み重ねられたとき、最上段の集水ブロック16bにおける外壁部25aの通水孔26と下層用の集水ブロック16dの外壁部25dに設けた通水孔26とが上下で連通するように設定されている。
【0043】
したがって、このように構成された排水壁17でも、各集水ブロック列同士が左右方向で樋状に繋がって内部に水路を形成しているとともに、上下の集水ブロック列間も、外壁部21aに設けた通水孔22及び外壁部21dに設けた通水孔22並びに外壁部25aに設けた通水孔26でそれぞれ繋がっているので、集水ブロック16b,16b…、16c,16c…、16d,16d…で集められて該排水壁17内に流れ込んだ浸透水は、該排水壁17内の各水路を通って所定の箇所(例えば、溜め池や井戸)に送って連続的に処理することができる。
【0044】
これにより、堤体10内に広い範囲にわたって浸透している浸透水を、効果的に取り除くことができるので機能性が向上し、堤防の安定性を高めることができる。また、一つの横長の集水ブロック列上に他の集水ブロック列を係合凹部23に係合凸部24を挿入係合させて積み重ね、所望する高さ及び長さの排水壁を簡単に形成することができるので、機能性及び経済性の向上が図れることになる。
【0045】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明はウエル工法以外における堤体の強化方法及び強化構造にも応用できる。
【符号の説明】
【0047】
10 堤体
12 基礎地盤
13 強化対象部位
14 基礎材
15 吸い出し防止シート
16 集水ブロック
16a 下層部用集水ブロック
16b 最上層部用集水ブロック
16c 蓋状集水ブロック
16d 下層部用集水ブロック
17 排水壁
20 溝穴
21a〜21c 外壁部
21d 外壁部
22 通水孔
23 係合凹部
24 係合凸部
25a〜25c 外壁部
26 通水孔
27 通水孔
28 係合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の河川堤体の基部地盤に、通水孔が外周面に設けられた集水ブロックを埋設し、該通水孔を通して集水ブロック内に浸入された堤体内の浸透水を集めて排出する堤防強化用ウエル工法における排水構造であって、
前記集水ブロックは中空横長をした角柱状で、一面側に係合凹部を有するとともに他面側に前記係合凹部に挿入係合可能な係合凸部を有してなり、
前記堤体の基部地盤を該堤体に沿って一定の深さで掘削した溝穴内に前記集水ブロックを複数連結させて横長列状に配設し、かつ、該横長の集水ブロック列上に前記係合凸部を前記係合凹部に挿入係合させて他の集水ブロック列を積み重ねて形成した排水壁を備えることを特徴とする堤防強化用ウエル工法における排水構造。
【請求項2】
上記集水ブロックは、上面側の前記外周面が開放されて断面U字状に形成されているとともに、前記係合凹部を前記上面側の外周面に設け、前記係合凸部を下面側の外周面外側に設けてなることを特徴とする請求項1記載の堤防強化用ウエル工法における排水構造。
【請求項3】
上記集水ブロックは、前記通水孔を有する4つの前記外周面が閉じられてなる断面矩形状に形成されているとともに、互いに重なり合う前記通水孔が位置対応して設けられていることを特徴とする請求項1記載の堤防強化用ウエル工法における排水構造。
【請求項4】
上記集水ブロックの通水孔は、上記外周面に格子状にして複数個設けられていることを特徴とする請求項1,2または3記載の堤防強化用ウエル工法における排水構造。
【請求項5】
既設の河川堤体の基部地盤を該堤体に沿って設定された間隔で一定深さの溝穴を掘削し、該溝穴内に該溝穴に沿って横長状に連結配設され、前記堤体内の浸透水を集めて排出する堤防強化用ウエル工法に使用する集水用ブロックであって、
中空横長をした角柱状で、かつ、一面側に係合凹部を有するとともに他面側に前記係合凹部に挿入係合可能な係合凸部を有してなり、一つの集水ブロックの前記係合凸部を他の集水ブロックの前記係合凹部に挿入係合させて積み重ね可能に形成したことを特徴とする堤防強化用ウエル工法に使用する集水用ブロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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