説明

堤防補強用マット並びに堤防補強工法

【課題】耐震構造の堤防を得るための堤防補強用マット並びにこの堤防補強用マットを用いた堤防補強工法を提供すること。
【解決手段】堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに掛け渡して敷設載置し得る幅と柔軟性を有する敷設体5に、下方が先細る形状の補強突体6を、敷設体5の下面から下方へ突出するようにして多数並設状態に付設して成る堤防補強用マット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐震構造の堤防を得るための堤防補強用マット並びにこの堤防補強用マットを用いた堤防補強工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
堤防は、河川の氾濫を防止することを主目的とした強固な構造が採用されている。
【0003】
しかし、大規模な地震が発生すると、振動によって堤防が沈下や亀裂を生じたり、基礎地盤の液状化を生じて崩壊してしまうケースがあることも報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記したような地震による堤防の損傷を防止するために開発されたもので、堤防上に敷設するだけで堤防を効果的に補強し安定化させて、極めて良好な耐震性能を発揮する画期的な堤防補強用マット並びにこの堤防補強用マットを用いた堤防補強工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0006】
堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに掛け渡して敷設載置し得る幅と柔軟性を有する敷設体5に、下方が先細る形状の補強突体6を、敷設体5の下面から下方へ突出するようにして多数並設状態に付設して成ることを特徴とする堤防補強用マットに係るものである。
【0007】
また、前記敷設体5は、前記堤防1に対して、前記表法面2の法尻から前記天端面3を介し前記裏法面4の法尻に至るまでに掛け渡して載置される幅を有する構成とし、この敷設体5の略全域に前記補強突体6を多数並設状態に付設して成ることを特徴とする請求項1記載の堤防補強用マットに係るものである。
【0008】
また、前記補強突体6は、下方が先細る円錐形状若しくは角錐形状であって、その側面視形状が、下部を頂角とし上部の底角の角度θが50°以下の略二等辺三角形状をなす形状に形成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の堤防補強用マットに係るものである。
【0009】
また、前記補強突体6は、上部を円柱形状若しくは角柱形状に形成し、下部を円錐形状若しくは角錐形状に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の堤防補強用マットに係るものである。
【0010】
また、前記補強突体6は、平坦状の上面部9を有する構成とし、この上面部9を前記敷設体5の下面に付設することで、この補強突体6を敷設体5の下面から下方へ突出せしめたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の堤防補強用マットに係るものである。
【0011】
また、前記敷設体5は、布製のシート体を採用したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の堤防補強用マットに係るものである。
【0012】
また、前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の堤防補強用マットAを、堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに掛け渡して敷設載置し、この堤防補強用マットAの敷設体5に上方から荷重を加えることにより前記各補強突体6を堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに没入させて、この堤防補強用マットAを堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに敷設状態に固定することを特徴とする堤防補強工法に係るものである。
【0013】
また、前記堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに敷設状態に固定した前記堤防補強用マットAを、アンカーなどの固定具10を用いて表法面2と天端面3と裏法面4とに固定することを特徴とする請求項7記載の堤防補強工法に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、堤防に対して容易に設置施工可能であると共に、堤防補強用マットが表法面と天端面と裏法面とに強固に一体化して多数の補強突体が堤防上側面を拘束するため、たとえ大規模な地震が発生しても、前記拘束作用によって堤防の変状や振動が小さく抑えられて秀れた耐震性が得られることになり、その上、表法面が堤防補強用マットによって保護されることで、堤防浸食の抵抗性も向上することになるなど、極めて実用性に秀れた画期的な堤防補強用マット並びに堤防補強工法となる。
【0015】
また、請求項2記載の発明においては、堤防補強用マットを堤防上側面の略全域を覆うように載置固定して極めて効果的に堤防を補強できる一層実用性に秀れた構成の堤防補強用マットとなる。
【0016】
また、請求項3記載の発明においては、堤防補強用マットを堤防に敷設した際に多数の補強突体が堤防に対して簡単には埋没しないため、敷設後であっても堤防補強用マットの位置是正を容易に行うことができるし、補強突体の下方の突出度を比較的小さくできるために、堤防補強用マットを丸めてかさばらない状態にして格納したり現場へと持ち運び可能となるなど、一層実用性に秀れた構成の堤防補強用マットとなる。
【0017】
また、請求項4記載の発明においては、前記作用・効果を確実に発揮する補強突体を簡易に設計実現可能となる一層実用性に秀れた構成の堤防補強用マットとなる。
【0018】
また、請求項5記載の発明においては、補強突体の敷設体への付設構造を簡易構成にして容易に設計実現可能となる一層実用性に秀れた構成の堤防補強用マットとなる。
【0019】
また、請求項6記載の発明においては、敷設体を簡易に且つ安価に構成可能となる一層実用性に秀れた構成の堤防補強用マットとなる。
【0020】
また、請求項8記載の発明においては、堤防補強用マットを堤防に対してより強固に一体化させることができるので、前記補強効果が一層良好且つ確実に発揮されることになる極めて実用性に秀れた堤防補強工法となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の堤防補強用マットを示す概略斜視図である。
【図2】実施例1の補強突体を示す拡大説明図である。
【図3】実施例1の堤防補強用マットを継合しようとする状態を示す説明部分拡大側面図である。
【図4】実施例1の堤防補強マットの継合状態を示す説明部分拡大側面図である。
【図5】実施例1の施工完了状態を示す概略説明図である。
【図6】地震により堤防が崩壊する様子を示す概略説明図である。
【図7】実施例2の補強突体を示す斜視図である。
【図8】実施例3の補強突体を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
本発明の堤防補強用マットAは、堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに掛け渡して敷設載置し、例えば、この堤防補強用マットAの敷設体5に上方から荷重を加えるなどして、下方が先細る形状の多数の補強突体6を堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに没入させることで、堤防1の上側面(表法面2と天端面3と裏法面4)に敷設状態に固定することができる。
【0024】
すると、堤防補強用マットA自身の荷重の作用もあって、多数の補強突体6が堤防1の上側面に対して強固に付着し、堤防補強用マットAが堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに一体化することになる。
【0025】
そのため、例えば、大規模な地震が発生して堤防1が大きく揺さぶられても、多数の補強突体6が堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4に没入してその土を掴んでいるかのような拘束作用を発揮することとなり、更にこの多数の補強突体6は、敷設体5に付設されていて夫々が敷設体5の引張力により可及的に移動できない状態に保持されているため、堤防1上側面への拘束作用が極めて良好に発揮されて堤防1が補強(保形)されることになる。
【0026】
従って、地震時に堤防1の変状が小さく抑えられ、テンションクラックの発生や、表法面2や裏法面4での小崩壊の発生を抑制でき、同時に振動も抑制されることになる。
【0027】
また、図6に示すように、地震により堤防1の基礎地盤が液状化して堤防1がその表裏方向に幅を広げながら沈下しようとした場合にも、多数の補強突体6と敷設体5による前記拘束作用でその変状を小さく抑えることができるだけでなく、変状の均一化も図られるので、堤防1の所々に簡単に修復できないような崩壊箇所を生じてしまうことが防止されることになる。そのため、簡便な応急処置で堤防1の機能を修復でき、これにより堤防1の通路(道路)機能も短期間のうちに回復可能となるので、災害時に堤防1をいち早く修復することで緊急自動車などの通路としての機能を確保できることとなる。
【0028】
また、堤防1が空洞化を生じている場合であっても、堤防1内に隙間からモルタルを注入するなどの簡便な応急処置で堤防1の機能も確保できる。
【0029】
また、本発明の堤防補強用マットAが敷設載置された堤防1は、表法面2がこの堤防補強用マットAによって保護されているため、河川が氾濫した際の浸食への抵抗性も向上することになる。
【0030】
また、例えば、前記敷設体5は、前記堤防1に対して、前記表法面2の法尻から前記天端面3を介し前記裏法面4の法尻に至るまでに掛け渡して載置される幅を有する構成とし、この敷設体5の略全域に前記補強突体6を多数並設状態に付設して成る構成とすれば、堤防補強用マットAで堤防1上側面の略全域を覆うようにして載置状態に固定できるので、堤防1上側面の全域をくまなく強固に補強でき、前記作用・効果がより効果的に発揮されることになる。
【0031】
また、例えば、前記補強突体6は、下方が先細る円錐形状若しくは角錐形状であって、その側面視形状が、下部を頂角とし上部の底角の角度θが50°以下の略二等辺三角形状をなす形状に形成すれば、下方が比較的緩やかに先細る形状の補強突体6を設計可能となるので、堤防補強用マットAを堤防1に敷設した際に多数の補強突体6が簡単には堤防1に埋没しない先細り形状の補強突体6を形成することで、敷設した後からでも堤防補強用マットAの位置是正を容易に行うことができる設置施工性に秀れた構成を実現可能であり、しかも、補強突体6の下方への突出度を比較的小さく設計可能となるために、このように設計することで、堤防補強用マットAを丸めてかさばらない状態にして格納したり、持ち運び可能な構成を実現可能であるなど、一層実用的となる。
【0032】
また、例えば、前記補強突体6は、上部を円柱形状若しくは角柱形状に形成し、下部を円錐形状若しくは角錐形状に形成して構成すれば、前記作用・効果を確実に発揮する補強突体6を簡易に設計実現可能となる上、例えば後述する実施例のように、多数の補強突体6を、その上部の柱状部8の側面同士が互いに当接するようにして敷設体5に付設する構成とすることも可能で、これにより堤防1上側面に堤防補強用マットAを敷設載置した際に、隣接する補強突体6の柱状部8の側面が互いに当接し合うことで補強突体6が堤防1の表法面2,天端面3,裏法面4に対して傾きにくくなって、多数の補強突体6の堤防1に対する没入姿勢を調整する手間を要しなくなる設置施工性に秀れた堤防補強用マットAを実現可能となる。
【0033】
また、例えば、前記補強突体6は、平坦状の上面部9を有する構成とし、この上面部9を前記敷設体5の下面に付設することで、この補強突体6を敷設体5の下面から下方へ突出せしめれば、補強突体6が敷設体5の下面から下方へ突出することになる補強突体6の敷設体5への付設構造を簡易に設計実現可能となる。
【0034】
また、例えば、前記敷設体5は、布製のシート体を採用すれば、適切な幅と柔軟性とを有する敷設体5を簡易に且つ部品コスト安に構成可能となる。
【0035】
また、例えば、前記堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに敷設状態に固定した前記堤防補強用マットAを、アンカーなどの固定具10を用いて表法面2と天端面3と裏法面4とに固定することとすれば、堤防補強用マットAを堤防1に対して確実に一体化させることができるので、前記した補強作用が一層良好に且つ確実に発揮されることになる。
【実施例1】
【0036】
本発明の具体的な実施例1について図1〜図6に基づいて説明する。
【0037】
本実施例の堤防補強用マットAは、図1に示すように、堤防1の表法面2の法尻から天端面3を介し裏法面4の法尻に至るまでに掛け渡して敷設載置し得る幅と柔軟性を有する敷設体5に、下方が先細る形状の補強突体6を、敷設体5の下面から下方へ突出するようにして多数並設状態に付設して構成している。
【0038】
本実施例の敷設体5は、織物若しくは不織布から成る布製の方形状シート体を採用すると共に、通水性を有する布製として、堤防1に敷設した際の水はけが良好となるように構成している。
【0039】
また、この敷設体5は、やや伸縮性を有するものとすると共に、引張強度(伸びに抗する強度)が前記補強突体6の重量の2倍以上であり、補強突体6を付設したこの敷設体5の両端を把持して吊り上げ、敷設して敷設体5両端の把持を解除した後、この敷設体5の伸びが後述する補強突体6の柱状部8の側面の高さ寸法以下であるものが好ましい。このように、敷設体5の伸びを小さくすることにより、敷設後の各補強突体6が堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに対して傾きにくい状態で支持されることになるので、後述する補強突体6の上面部9の平坦化を確保することができる。即ち、敷設体5の引張強度を強くして伸びを小さくすることで、補強突体6を安定して保持することができる。
【0040】
また、この敷設体5は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの汎用繊維や、炭素繊維、芳香族ポリアミドなどの機能性繊維及び天然、再生化学繊維などを単独であるいは組み合わせて構成したもので良い。また、織物の場合は、平織、綾織、メッシュなどどのような組織を採用しても良く、不織布の場合は、単独では一般的に伸びが大きいので、不織布内に織物を入れたものや不織布を糸でステッチ加工などを行い、上記の高い引張強度及び低い伸びを有するものとすると良い。
【0041】
また、厚み3mm以下の孔有り樹脂シートを延伸することで形成した、メッシュ状織物のように柔軟性があり伸びの小さいシート体を、敷設体5として採用しても良い。この場合、シートの伸び率は破断時で30%以下、好ましくは25%以下程度が好ましい。
【0042】
本実施例の補強突体6は、図2に示すように、上方部が短い(高さのない)円柱形状の柱状部8となり、下方部が柱状部8から連設してその下端側ほど先細る円錐形状の先細部7となる形状に、コンクリートで一体成形したものとしている。また、柱状部8の上端部が水平方向に面方向を有する平坦状の上面部9となる形状に構成している。このように補強突体6をコンクリートで構成すると、強度が高く、車両などの通行により加わる荷重に良好に耐え得ることとなる。
【0043】
また、この補強突体6は、円錐形状の先細部7の側面視形状が、下部を頂角とし上部の底角の角度θが50°以下の略二等辺三角形状をなす形状に形成している(図2(c)参照)。
【0044】
具体的には、底角の角度θが48°(頂角の角度が84°)となる略二等辺三角形状をなす形状に形成している。このように補強突体6を構成すると、上載荷重を分散し且つ堤防1表面(上側面)の圧密を促進し堤防1に対する沈下(没入)を抑制することができるため、著しく短い時間で堤防1を補強することができる。
【0045】
また、この補強突体6の先細部7は、先端部7A(側面視での二等辺三角形の頂角に相当する下端部)を面取りすることでこの先端部7Aが堤防1の上側面に簡単には没入しない構成とし、これにより堤防補強用マットAを堤防1上側面に載置した後でも、堤防1に対し堤防補強用マットAの位置是正を行うことができるようにしている。
【0046】
また、本実施例の敷設体5への補強突体6の付設構造は、補強突体6の上面部9を前記敷設体5の下面に接着することで、この補強突体6の下方の前記先細部7を敷設体5の下面から下方へ突出状態に付設した構造としている。
【0047】
また、敷設体5の下面の略全域に多数の補強突体6を縦横に整列させて付設すると共に、隣接する各補強突体6の前記柱状部8の側面同士が、互いに当接するようにして整列させて付設している。
【0048】
従って、堤防1上に本堤防補強用マットAを敷設載置した際に、隣接する補強突体6の柱状部8の側面が互いに当接し合っているために、この側面同士が互いに上下方向にずれる力が働かず、隣接する補強突体6が上下方向にずれることがない。このため、補強突体6が堤防1の表法面2,天端面3,裏法面4に対して傾きにくく、上面部9が、堤防1の上側面(表法面2,天端面3,裏法面4)に対して略平行となるように姿勢を保つことができる構成としている。
【0049】
また、敷設体5と補強突体6の接着には、例えば水硬性セメント組成物などの主に無機材料からなるものや、樹脂系接着剤などの主に有機材料からなるものや、ポリマーセメントモルタル、樹脂モルタルなどの無機材料及び有機材料からなるものを用いることができる。水硬性セメントとしては、セメント、砂、砂利、減水剤などを配合したコンクリートでも砂利のないモルタルでも良い。
【0050】
樹脂系接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を用いたものや、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂などの熱可塑性樹脂を用いたものや、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴムなど合成ゴムを用いたものなどを用いることができるが、強度、硬化性の秀れたエポキシ樹脂が好ましい。
【0051】
また、図示していないが、補強突体6と敷設体5とを機械的に付設する構造、即ち例えば金属製あるいは樹脂製のアンカーピンや、ボルトや、フックなどを用いて付設する構造を採用しても良い。
【0052】
また、接着剤による付設構造と、機械的な付設構造とを、複合して用いる構成としても良い。
【0053】
また、本実施例の堤防補強用マットAは、図1に示すように、方形状の敷設体5の四辺のうちの隣接する二辺の近傍に補強突体6が付設されない継合代部5Aを形成し、この継合代部5Aを、他の堤防補強用マットAの継合代部5Aのない辺部の上側に重合して接着することで、堤防補強用マットA同士を継合できる構成としている(図3,図4参照)。
【0054】
即ち、本実施例の堤防補強用マットAは、継合代部5Aを利用して複数の堤防補強用マットA同士を継合することで、堤防1の上側面(表法面2と天端面3と裏法面4)の全域を覆い得る大きさ寸法の堤防補強用マットA(の集合体)を形成する構成としている。
【0055】
次に、本実施例の堤防補強用マットAを用いた堤防補強工法を説明する。
【0056】
堤防補強用マットAは、現地で製作しても良いし、予め工場などで製作しておいて現場に持ち込んでも良い。
【0057】
また、予め製作した堤防補強用マットAを現場へ持ち込む場合、多数の補強突体6の先細部7が比較的緩やかに先細る形状であって補強突体6の下方の突出度が小いために、堤防補強用マットAを丸めてかさばらない状態にして持ち運び可能である。
【0058】
例えば、堤防補強用マットAを、補強突体6の先細部7が下向きとなるようにしてその両端を適宜な機具で把持して吊り上げ、堤防1の上側面に敷設載置する。
【0059】
次いで、この堤防補強用マットAの敷設体5に上方からローラーで転圧荷重を加えるなどして、多数の補強突体6の先細部7を堤防1の上側面に没入させ、この堤防補強用マットAを堤防1の上側面に敷設状態に固定する。
【0060】
同様にして、堤防補強用マットAを敷設していない堤防1の上側面に堤防補強用マットAを敷設載置し、既設の堤防補強用マットAに新設の堤防補強用マットAの前記継合代部5Aを継合接着し、これを繰り返して堤防1の表法面2の法尻から天端面3を介し裏法面4の法尻に至るまでの全域に堤防補強用マットAを掛け渡して敷設載置する。
【0061】
また、堤防補強用マットAは、堤防1の長さ方向にも継ぎ足して、堤防1の全域に設置施工する。
【0062】
次いで、堤防補強用マットAの上方からアンカーなどの固定具10を表法面2と天端面3と裏法面4とに夫々固定する。
【0063】
また、図面では、堤防補強用マットAの幅方向の両端部が、表法面2の法尻と裏法面4の法尻を超えて地面にも少し敷設されるように堤防補強用マットA(の集合体)の幅寸法を設定構成し、この地面にはみ出すように敷設された堤防補強用マットAの幅方向の両端部も、夫々固定具10によって地面に固定した場合を示している(図5参照。)。
【0064】
次いで、この敷設した堤防補強用マットAの上に盛土して植生したり、天端面3上に敷設されている堤防補強用マットAの上方にはアスファルト舗装するなどして河川管理者用通路を形成する。
【0065】
このようにして堤防補強用マットAを堤防1に敷設すると、堤防補強用マットAの持つ荷重の作用もあって、各補強突体6の堤防1への付着性が非常に高くなり、堤防補強用マットAが堤防1の表法面2と天端面3と裏法面4とに一体化して堤防1を補強し、図6に示したような堤防1の崩壊や変形(変状)を抑制することになる。
【0066】
また、この堤防1の補強作用により、河川管理者用通路のアスファルト舗装のクラックの発生防止も期待できる。
【実施例2】
【0067】
本発明の具体的な実施例2について図7に基づいて説明する。
【0068】
本実施例は、前記実施例1において、前記補強突体6の先細部7の先端部7Aだけをコンクリート以外の素材で形成した場合を示している。
【0069】
具体的には、先細部7の先端部7Aを引張力が強く弾性のある金属または樹脂によって形成している。
【0070】
このように補強突体6の上側部分(前記柱状部9と先細部7の先端部7Aを除いた上側部分)をコンクリート製とすることで、上部にかかる荷重に耐え得てこの上側部分の損傷を防止でき、且つ先細部7の先端部7Aを引張力が強く弾性のある金属または樹脂によって形成することで、この先端部7Aが堤防1への敷設時において硬い石などがあった場合にも、これらから受ける応力に適度に対応でき、この先端部7Aの損傷も防止できることになる。
【0071】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【実施例3】
【0072】
本発明の具体的な実施例3について図8に基づいて説明する。
【0073】
本実施例は、前記実施例1において、前記補強突体6の中心部に上下方向に貫通した貫通孔11を形成した場合を示している。
【0074】
このように貫通孔11を形成することにより、降雨時などに水が貫通孔11を通って地中(堤防1内)へと排水することになるので、本堤防補強用マットAの排水性能が更に向上することになる。
【0075】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【0076】
尚、本発明は、実施例1〜3に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0077】
1 堤防
2 表法面
3 天端面
4 裏法面
5 敷設体
6 補強突体
9 上面部
10 固定具
A 堤防補強用マット
θ 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤防の表法面と天端面と裏法面とに掛け渡して敷設載置し得る幅と柔軟性を有する敷設体に、下方が先細る形状の補強突体を、敷設体の下面から下方へ突出するようにして多数並設状態に付設して成ることを特徴とする堤防補強用マット。
【請求項2】
前記敷設体は、前記堤防に対して、前記表法面の法尻から前記天端面を介し前記裏法面の法尻に至るまでに掛け渡して載置される幅を有する構成とし、この敷設体の略全域に前記補強突体を多数並設状態に付設して成ることを特徴とする請求項1記載の堤防補強用マット。
【請求項3】
前記補強突体は、下方が先細る円錐形状若しくは角錐形状であって、その側面視形状が、下部を頂角とし上部の底角の角度が50°以下の略二等辺三角形状をなす形状に形成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の堤防補強用マット。
【請求項4】
前記補強突体は、上部を円柱形状若しくは角柱形状に形成し、下部を円錐形状若しくは角錐形状に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の堤防補強用マット。
【請求項5】
前記補強突体は、平坦状の上面部を有する構成とし、この上面部を前記敷設体の下面に付設することで、この補強突体を敷設体の下面から下方へ突出せしめたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の堤防補強用マット。
【請求項6】
前記敷設体は、布製のシート体を採用したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の堤防補強用マット。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか1項に記載の堤防補強用マットを、堤防の表法面と天端面と裏法面とに掛け渡して敷設載置し、この堤防補強用マットの敷設体に上方から荷重を加えることにより前記各補強突体を堤防の表法面と天端面と裏法面とに没入させて、この堤防補強用マットを堤防の表法面と天端面と裏法面とに敷設状態に固定することを特徴とする堤防補強工法。
【請求項8】
前記堤防の表法面と天端面と裏法面とに敷設状態に固定した前記堤防補強用マットを、アンカーなどの固定具を用いて表法面と天端面と裏法面とに固定することを特徴とする請求項7記載の堤防補強工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−216184(P2010−216184A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66377(P2009−66377)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【特許番号】特許第4538822号(P4538822)
【特許公報発行日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(591273281)株式会社アドヴァンス (18)
【出願人】(391007747)株式会社興和 (17)
【出願人】(591041196)旭化成ジオテック株式会社 (25)
【Fターム(参考)】