説明

塗工印刷用紙

【課題】JIS P−8148に規定されるISO白色度が100.0%以上の極めて高白色度であり、かつ印刷発色性に優れたオフセット塗工印刷用紙を提供することを課題とした。
【解決手段】 少なくとも片面に、白色顔料、接着剤および蛍光増白剤を含有する塗工層を有する塗工印刷用紙であって、接着剤に重合度800以下のポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を白色顔料に対して4〜15質量%含み、かつ接着剤の全配合量が、白色顔料に対して10〜30質量%であり、かつJIS P−8148に規定されるISO白色度が100.0%以上であることを特徴とする、塗工印刷用紙を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット塗工印刷用紙に関するものである。さらに詳しくは、極めて白色度の高いオフセット塗工印刷用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カタログ、ポスター、写真集、書籍、チラシ等の多くの分野において、画像部と非画像部との色のコントラストをより高めることが要求されるようになっている。この画像部と非画像部との色のコントラストを高めるためには、非画像部を高白色にするほどその効果が高くなることがわかっている。さらに、画像部を形成する印刷発色性が高いほどその効果が明確になるため、これらの分野に使用する印刷用紙としては、白色度が高く、かつ印刷発色性が高いことが望まれている。
【0003】
従来、白色度を高める方法としては、特許文献1に開示されているように、ジアミノスチルベン−ジスルフォン酸誘導体等の蛍光増白剤の使用が一般的である。蛍光増白剤を使用することで白色度を高めることができるのは、蛍光増白剤が紫外光を吸収し、その結果可視光の青色領域における反射率を高める性質があるためと考えられている。また蛍光増白剤はセルロース繊維への吸着性が高いことから、特に紙の製造においては広く使用されている。
【0004】
また、印刷発色性を高める方法として、カオリン、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の白色顔料と酸化澱粉、スチレン−ブタジエンラテックス等の接着剤からなる塗工液を基紙の表面に塗工し、紙の繊維を被覆する方法が一般的に使用されている。
【0005】
蛍光増白剤の性能を効果的に発現させる方法として、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体と蛍光増白剤を併用する方法が知られている。さらに、特許文献2では、ポリビニルアルコールまたはその誘導体の使用量と塗被組成物の乾燥条件を特定することで、白色性に優れた塗被紙を得る方法が提案されている。
【0006】
ポリビニルアルコールおよびその誘導体は蛍光増白剤との親和性が高く、蛍光増白剤粒子同士の凝集を防ぐ分散剤や、蛍光増白剤を塗工層の表面に留めるための保水剤、さらには蛍光増白剤の構造変化による褪色性を防ぐ固定剤として、蛍光増白剤と併用すると高い効果が得られることが知られている。また、接着剤としての性能が高く、古くから塗工印刷用紙における塗料の接着剤として、酸化澱粉やカゼイン等の水溶性接着剤と比較検討されている。しかしながら、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を高配合すると、塗料粘度が上昇するために塗料固形分濃度を高くできないこと、また、白色顔料や接着剤に対して吸着能力が高いために凝集物が発生しやすい等の問題が指摘されている。このため、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を塗工印刷用紙において使用する際には、白色顔料に対して2.5質量%以下での使用に限定され、一般的には1質量%以下で使用されていた。
【0007】
また、塗工用接着剤として広く使用される、スチレン−ブタジエンラテックス、アクリルラテックス、酢酸ビニルラテックス等のエマルジョンラテックスは、紫外線を透過させるための透明性に問題があり、これらを使用すると蛍光増白剤の効果を十分発現できず、蛍光増白剤の妨害物質として作用するといった問題があった。
【0008】
このため、JIS P−8148に規定されるISO白色度が100.0%以上の極めて高白色な塗工印刷用紙は、これまで得ることができなかった。
【0009】
【特許文献1】特開平3−294598号公報
【特許文献2】特開昭62−28493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、JIS P−8148に規定されるISO白色度が100.0%以上の極めて高白色度で、かつ印刷発色性の高いオフセット塗工印刷用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、蛍光増白剤を含む塗工液として、特定のポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を特定量配合することで上記したような課題を解決できることに着目し、本発明を完成させた。すなわち、低重合度のポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を常法と比較して極めて多量に使用することで、従来では得られない塗工適性と蛍光増白剤の性能を十分に発現させ、より好ましくはポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の配合量とその他の接着剤との配合比を特定することで、極めて高い白色度を発現させ、目的とする高白色度で印刷発色性の高いオフセット塗工印刷印刷用紙を提供することが可能となった。
【0012】
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも片面に、白色顔料、接着剤および蛍光増白剤を含有する塗工層を有する塗工印刷用紙であって、接着剤に重合度800以下のポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を白色顔料に対して4〜15質量%含み、かつ接着剤の全配合量が、白色顔料に対して10〜30質量%であり、かつJIS P−8148に規定されるISO白色度が100.0%以上であることを特徴とする、塗工印刷用紙である。
【0013】
請求項2に係る発明は、上記ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の配合比率が、接着剤の全配合量に対して20%以上であることを特徴とする、請求項1記載の塗工印刷用紙である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、JIS P−8148に規定されるISO白色度が100.0%以上の極めて高白色度であり、かつ印刷発色性が優れることにより、オフセット印刷における画像部と非画像部との色のコントラストが明確である塗工印刷用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る塗工印刷用紙の実施形態について詳細に説明する。本発明に使用するポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体は重合度が800以下であり、白色顔料に対して、4〜15質量%配合する。重合度が800を超えると、顕著に塗工液粘度が上昇するために塗工液の濃度を高くできないばかりか、白色顔料や接着剤との結合性が高くなるために塗工液が凝固化しやすくなるので好ましくない。ただし、重合度が800を超えるポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を、本発明の範囲内で、重合度が800以下のポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体より少量で併用することができる。
【0016】
また、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の配合量においては、白色顔料に対して4質量%より少ないと蛍光増白剤の分散性が不十分となるので好ましくない。このため蛍光増白剤を多量に配合すると、本来蛍光増白剤が有する色を呈色(グリーニング現象)してしまい、十分な白色度を得るための蛍光増白剤を配合することができなくなってしまう。一方、15質量%より多いと、塗料の粘度が高くなり過ぎることと、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体は水に対する溶解度が高くないので、塗料全体としての固形分濃度が低下してしまうことにより著しく塗工条件を悪化させることになり、本発明の目的とする極めて高白色度の塗工印刷用紙を得ることが困難になるので好ましくない。
【0017】
また、上記ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体のケン化度は80%以上のものを使用することができる。ケン化度が低いものほど高pH域でケン化反応が進行して遊離酢酸を発生させ、独特の酢酸臭を発生させるので塗工印刷用紙としての商品価値を低下させるので好ましくない。ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体のケン化度は好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
【0018】
また、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の種類としては、酢酸ビニル重合体をケン化反応させたものに限らず、エステル化、エーテル化、アセタール化、共重合化、シラノール変性、カルボキル変性、カルボニル変成等の変性したものを使用することができる。
【0019】
重合度が800以下のポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体が本発明において効果的な理由について、本発明者等は、次のように推察している。すなわち、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体における重合度と水溶液の粘度には相関があり、また、塗工液として配合した際、水溶液の粘度は塗工液の粘度として影響し、重合度が低いほど塗工液の粘度における影響が少なくなるので、塗工液の粘度については各種増粘剤で調整できる範囲が広がり好ましくなる。
【0020】
更に重要なことは、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体は、長い炭化水素鎖を骨格とした水酸基等の親水性基を有する組成物であり、その結果、白色顔料との結合力が高いので接着剤としての効果が高い反面、炭化水素鎖が白色顔料を取り巻き、白色顔料を疎水化して塗工液を凝固化させてしまう(通常、PVAショックと呼ばれる)といった問題がある。この傾向はポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の重合度が高くなるほど顕著に現れる。また、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体は塗工液中の保水性接着剤との結合力も高く、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の重合度が高いほど、保水接着剤に結合して、白色顔料の保護効果を低下させてしまうといった問題を有している。このため、低重合度のポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体は分子鎖が短く、白色顔料の保水接着剤として安定した塗工液を調製することができるが、重合度の高いポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を塗料中に多量に配合すると、塗工適性のある安定した塗工液を調製することができなくなる。さらにはこの塗工液を塗工した際には、塗工面が筋状になったり、塗工液が凝固化してしまうために塗工面の平滑性が得られないといった問題が発生し、塗工印刷用紙としては著しく性能が低下してしまう。
【0021】
本発明に使用する白色顔料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、デラミネーテッドカオリン、焼成カオリン、クレー、タルク、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、サチンホワイト、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化チタン、白土、合成非晶質シリカ、ベントナイト等の無機白色顔料、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホルマリン樹脂粒子、中空有機顔料、多孔質粒子等の有機顔料といった、塗工用として従来から使用されている各種顔料の中から少なくとも1種類以上のものを、本発明におけるISO白色度の範囲内であれば適宜配合することができる。
【0022】
なお、酸化チタン、酸化亜鉛等の紫外線を吸収する白色顔料は、蛍光増白剤の性能を阻害することがあるため、発明の範囲内での使用においては特に注意を要する。また、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等の分散液が高pHである白色顔料は、蛍光増白剤の増白効果を高め、褪色性を低減する効果があるため、これらの使用は特に好ましい。
【0023】
本発明で使用する接着剤は、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の他に、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カゼイン、大豆タンパク質類、スチレン−ブタジエンラテックス類、アクリルラテックス類、スチレンアクリルラテックス類、酢酸ビニルラテックス類等の各種共重合体からなるエマルジョンラテックス樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂等を1種類以上、本発明におけるISO白色度の範囲内で適宜使用することができる。
【0024】
白色顔料に対する接着剤の配合量は10〜30質量%の範囲で使用することができる。10質量%より少ないとオフセット印刷における表面強度が不足し、塗工層が剥離して印刷機のブランケット汚れが頻発するといった印刷トラブルが発生するので好ましくない。また30質量%より多いと、塗工層における接着剤比率が高くなり、その結果、オフセット印刷インキの乾燥性を阻害するといった印刷トラブルが発生するので好ましくない。
【0025】
また、塗工液中に含まれるポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体以外の接着剤は必ずしも蛍光増白剤の性能を向上させることはできず、むしろ低下させるため、これらの接着剤の弊害を最小限に留めるため、接着剤の全配合量に対するポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の配合比率は20質量%以上が好ましい。
【0026】
本発明に使用する蛍光増白剤は、スチルベン系、クマリン系、ピラゾリン系、ナフタルイミド系、ベンゾオキサゾール系、イミダール系、チアゾール系、ジスチリルビフェニル系等の従来から慣用されているものを使用することができる。例えば、ジアミノスチルベン−ジスルフォン酸誘導体の中では、可溶化剤の選定やスルフォン酸基の数等により、分散性が高く塗工用途に開発された蛍光増白剤が多く市販されている。
【0027】
蛍光増白剤の使用量は、白色顔料に対して1〜7質量%の範囲で使用する。1質量%未満では蛍光増白剤の増白効果が十分でなく、7質量%を超える場合には蛍光増白剤の分散性を十分確保できず、その結果、蛍光増白剤同士が凝集して蛍光増白剤の本来持つ色を呈してしまうため好ましくない。
【0028】
塗工液には、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体、白色顔料、接着剤、蛍光増白剤の他、セルロース誘導体類、保水剤、架橋剤、硬化剤、消泡剤、増粘剤、耐水化剤、離型剤、潤滑剤、防腐剤、防黴剤、染料、有色顔料等を本発明におけるISO白色度の範囲内であれば適宜使用できる。
【0029】
本発明に使用する基紙としては、原材料の種類、酸性抄紙や中性抄紙といった抄紙方法、抄紙機の種類、表面性、坪量等、特に限定されるものではなく、塗工層を設けた際に本発明におけるISO白色度の範囲内であるものを適宜選択して使用できる。例えば、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパルプ、溶解パルプ、セミケミカルパルプ、メカニカルパルプ、サーモメカニカルパルプ、砕木パルプ等の木材パルプ、コットン、リンター、竹、バンブー、ケナフ、楮、三椏、雁皮、麻等の非木材パルプ、SEP、レーヨン、ポリエステル等の合成繊維、古紙等、1種類以上の繊維を配合し、必要に応じて、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、合成非晶質シリカ、酸化チタン等の填料、通常の酸性抄紙または中性抄紙で使用される、ロジンサイズ剤、強化ロジンサイズ剤、エマルジョンサイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等のサイズ剤、カチオン澱粉、α化澱粉、両性澱粉、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン等の紙力増強剤、硫酸バンド、濾水性向上剤、歩留向上剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、高分子定着剤、消泡剤、染料、有色顔料、蛍光増白剤等の一般的に製紙用として使用される原材料や薬品類を使用することができる。
【0030】
抄紙機は、長網抄紙機、円網抄紙機、あるいは長網と円網のコンビネーション、ツインワイヤー抄紙機、オントップツインワイヤー抄紙機等が必要に応じて使用できる。基紙の表面性は、毛布、ロール、カンバス等の模様を付与したエンボス処理、チルド、コットン、樹脂等の平滑性を付与したカレンダー処理等のほか、特に表面性を処理しない抄紙機本来の肌等が挙げられる。坪量は単層、多層、貼合により、20g/m〜400g/mのものが一般的に使用される。
【0031】
このほか、基紙としてポリオレフィン等の合成材料を主成分とした合成紙、フィルム類、湿式もしくは乾式の不織布等のシート類も使用できる。また、基紙に澱粉、ポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド類等のクリアコートもしくは顔料と接着剤からなる塗工紙も基紙として使用することができる。
【0032】
ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体、白色顔料および接着剤を主成分として構成される塗工液を基紙に塗工する装置としては、公知の塗工設備、例えばサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、ダイコーター、グラビアコーター等を使用することができる。この際の塗工液濃度は特に限定されないが、15〜65質量%、より好ましくは20〜60質量%の範囲で調整できる。また塗布量も特に限定されないが片面あたり1〜30g/m、好ましくは3〜20g/mの範囲で調整することができる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明の実施例について説明する。実施例および比較例におけるISO白色度(%)、印刷均一性、表面強度、インキセット乾燥性、塗工液凝集物は、下記に示す方法で評価した。また、実施例および比較例における質量%は、明記した場合を除き、固形分換算値を示す。
【0034】
[ISO白色度]
ISO白色度は、分光白色度計(商品名「PF−10」、日本電色工業(株)製)を使用し、JIS P−8148に準拠して測定した。
【0035】
[印刷均一性]
印刷均一性は、塗工面の筋、ムラ等、塗工面均一性の評価とする。藍色のインキ(商品名「ハイユニティ藍MZ」、東洋インキ製造(株)製)0.6gをRIテスターによって紙に印刷し、1日後の印刷面を、視覚的に(5;優)、(4;良)、(3;可)、(2;不可)、(1;不可)の5段階評価し、3以上を本発明の塗工印刷用紙とした。
【0036】
[表面強度]
表面強度は、タック値20の墨インキ(商品名「SMXタックグレード20XF」、東洋インキ製造(株)製)0.6gをRIテスターによって紙に印刷した場合の紙剥けの程度を、視覚的に(5;優)、(4;良)、(3;可)、(2;不可)、(1;不可)の5段階評価し、3以上を本発明の塗工印刷用紙とした。
【0037】
[インキセット乾燥性]
インキセット乾燥性は、墨色のインキ(商品名「ハイユニティ墨MZ」、東洋インキ製造(株)製)0.6gをRIテスターによって紙に印刷し、1分後、5分後、10分後、20分後、30分後に印刷面を白紙のA2コート紙に転写させた場合のインキの裏写りを、視覚的に(5;優)、(4;良)、(3;可)、(2;不可)、(1;不可)の5段階評価し、3以上を本発明の塗工印刷用紙とした。
【0038】
[塗工液凝集状態]
塗工液凝集状態は、塗工液調製後、固形分35質量%濃度の1000gの塗工液を、目開き150μmのフィルタによってろ過した残滓において、視覚的に(5;なし)、(4;微量)、(3;少量)、(2;多量)、(1;非常に多量)の5段階評価し、3以上を本発明の塗工印刷用紙とした。凝集物が多量に発生している場合、塗工面均一性を低下させる、またはオフセット印刷機での印刷において、ピッキングされブランケットを汚す等の問題が発生する。
【0039】
[実施例1]
軽質炭酸カルシウム(商品名「タマパールTP−123」、奥多摩工業(株)製)に対し、分散剤(商品名「ポイズ520」、花王(株)製)0.5質量%を添加し、コーレス型分散機にて、固形分濃度60質量%で1時間分散し、白色顔料分散液を得た。この分散液の60質量%と、重質炭酸カルシウム(商品名「FMT−90」、(株)ファイマテック製)を40質量%と共に混合し、顔料スラリーを得た。この顔料スラリー100質量%に対して、重合度500、ケン化度94%のポリビニルアルコール(商品名「JM−05」、日本酢ビ・ポバール(株)製)を10質量%、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(商品名「スマーテックス SN−307」、日本エイアンドエル(株)製)を10質量%、ステアリン酸カルシウム(商品名「DEF−922」、(株)日新化学研究所製)を1質量%、炭酸ジルコニウムアンモニウム(商品名「AZコート5800MT」、サンノプコ(株)製)を0.5質量%、蛍光増白剤(商品名「ブランコファーUW−L」、ランクセス(株)製)を5質量%添加して塗工液を得た。
【0040】
クラフトパルプ(LBKP90質量%とNBKP10質量%)を主成分とし、蛍光増白剤を添加し、常法にて坪量105g/mの酸性紙を基紙として得た。この基紙のISO白色度は95.5%であった。ここで得られた基紙に、上記塗工液を片面当たり10g/mの塗布量となるように両面塗工し、塗工印刷用紙を得た。
【0041】
[実施例2]
ポリビニルアルコールのケン化度を88%に変更(商品名「JP−05」、日本酢ビ・ポバール(株)製)したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0042】
[実施例3]
ポリビニルアルコールのケン化度を98%に変更(商品名「JF−05」、日本酢ビ・ポバール(株)製)したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0043】
[実施例4]
ポリビニルアルコールから、重合度500、ケン化度98%のカルボニル変性ポリビニルアルコール誘導体(商品名「DF−05」、日本酢ビ・ポバール(株)製)に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0044】
[比較例1]
ポリビニルアルコールの重合度を1000(商品名「JM−10」、日本酢ビ・ポバール(株)製)に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0045】
[比較例2]
ポリビニルアルコールの重合度を1700(商品名「JM−17」、日本酢ビ・ポバール(株)製)に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0046】
[比較例3]
ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合量を、それぞれ白色顔料に対して5質量%、15質量%に変更したほかは、比較例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0047】
実施例1〜4、比較例1〜3のISO白色度(%)、印刷均一性、塗工液凝集状態について評価し、その結果を表1に示した。
【0048】
表1

【0049】
表1からわかるように、実施例1〜4はポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体のケン化度、官能基が変化してもISO白色度が規定を満足し、印刷均一性、塗工液凝集状態とも良好であった。比較例1〜2は、ISO白色度は規定を満足しているものの、ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の重合度が高いために印刷均一性、塗工液凝集状態が不良であり塗工印刷用紙としての性能が不十分であった。また比較例3は、ポリビニルアルコールの配合比が5質量%としたため、塗工液のレベリングは良好であったが、塗工液凝集状態が不良となり、塗工印刷用紙としての性能が不十分であった。
【0050】
[実施例5]
ポリビニルアルコールの配合量を、白色顔料に対して5質量%に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0051】
[実施例6]
ポリビニルアルコールの配合量を、白色顔料に対して13質量%に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0052】
[比較例4]
ポリビニルアルコールの配合量を、白色顔料に対して2質量%に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0053】
[比較例5]
ポリビニルアルコールの配合量を、白色顔料に対して20質量%に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0054】
実施例5〜6、比較例4〜5のISO白色度(%)、印刷均一性、塗工液凝集状態について評価し、実施例1の結果とともに表2に示した。
【0055】
表2

【0056】
表2からわかるように、実施例1、実施例5および実施例6は、ポリビニルアルコールの配合率によってISO白色度に差は見られるものの規定を満足しており、印刷均一性、塗工液凝集状態とも良好であった。比較例4は、ポリビニルアルコールの白色顔料における配合量が2質量%と少ないため、ISO白色度が98.7%と規定外であった、比較例5は、ポリビニルアルコールの白色顔料における配合量が20質量%と多量のため、ISO白色度が規定を満足しているものの印刷均一性が劣り、塗工印刷用紙としての性能が不十分であった。
【0057】
[実施例7]
ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合率を、それぞれ白色顔料に対して5質量%、15質量%に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0058】
[実施例8]
ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合量を、それぞれ白色顔料に対して5質量%、23質量%に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0059】
[比較例6]
ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合量を、それぞれ白色顔料に対して5質量%、3質量%に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0060】
[比較例7]
ポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合量を、それぞれ白色顔料に対して5質量%、30質量%に変更したほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0061】
実施例7〜8、比較例6〜7のISO白色度(%)、印刷均一性、表面強度、インキセット乾燥性、塗工液凝集状態について評価し、実施例1の結果とともに表3に示した。
【0062】
表3

【0063】
表3からわかるように、実施例1、実施例7および実施例8は、ポリビニルアルコールの白色顔料に対しての配合量が高くなるほど、またポリビニルアルコール配合量の全接着剤における配合比率が高くなるほど、ISO白色度が高くなり、良好な塗工印刷用紙が得られ、また、印刷均一性、塗工液凝集状態はともに良好であった。これに対し比較例6は全接着剤の白色顔料における配合量が8質量%と少ないため表面強度が不良であった。また比較例7は全接着剤の白色顔料における配合量が35質量%と多いためインキセット乾燥性が劣り、塗工印刷用紙としての性能が不十分であった。
【0064】
[実施例9]
実施例1における、基紙の蛍光増白剤を無添加とした以外は、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0065】
[実施例10]
クラフトパルプ(LBKP90質量%、NBKP10質量%)を主成分とし、常法にて坪量105g/mの蛍光増白剤が無添加で炭酸カルシウムを含む中性紙を基紙(ISO白色度は92.2%)として得た。このほかは、実施例1と同様にして、塗工印刷用紙を得た。
【0066】
実施例9〜10のISO白色度(%)について評価し、実施例1の結果とともに表4に示した。
【0067】
表4

【0068】
表4からわかるように、実施例1と実施例9は、基紙のISO白色度に差があるものの、塗工後のISO白色度はほぼ同程度であり、塗工後のISO白色度が基紙の蛍光増白剤に影響されないことを示した。また、実施例10は、ISO白色度の規定を満足しており、基紙における抄紙法が、酸性抄紙と中性抄紙のいずれにも影響されないことを示した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明による塗工印刷用紙は極めて高い白色度を示し、また印刷発色性も良好で、オフセット塗工印刷用紙として好ましく使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に、白色顔料、接着剤および蛍光増白剤を含有する塗工層を有する塗工印刷用紙であって、接着剤に重合度800以下のポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体を白色顔料に対して4〜15質量%含み、かつ接着剤の全配合量が、白色顔料に対して10〜30質量%であり、かつJIS P−8148に規定されるISO白色度が100.0%以上であることを特徴とする、塗工印刷用紙。
【請求項2】
上記ポリビニルアルコールおよび/またはその誘導体の配合比率が、接着剤の全配合量に対して20%以上であることを特徴とする、請求項1記載の塗工印刷用紙。








































【公開番号】特開2006−274496(P2006−274496A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96682(P2005−96682)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】