説明

塗布フィルム

【課題】 新規な塗布層を有する、塗膜の透明性、光沢に優れ、各種上塗り剤に対する強い接着性を有し、耐固着性に優れた延伸ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 (1)エチレンオキサイド繰り返し単位と2個以上のイソシアネート基とを有する自己乳化性イソシアネート、および(2)アクリル系ポリマーを含有する塗布液を塗布した後、乾燥および延伸されてなる塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有することを特徴とする塗布フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、光沢、耐固着性、接着性に優れた新規な塗布層を持つ、延伸ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
延伸ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平面性、平滑性、耐熱性、耐薬品性、透明性等において優れた特性を示すことから、磁気記録媒体のベースフィルム、製版用フィルム、磁気カード、包装用フィルム、合成紙をはじめとして幅広い用途に使用されている。
【0003】
ポリエステルフィルムは、このように優れた特性をもつ反面、プラスチックフィルム共通の問題として接着性に劣る。例えば、印刷インク(セロハン用印刷インク、塩素化PPインク、UV硬化インク、磁性インク等)、感熱転写インク、磁性塗料、接着剤(ラミネーション用接着剤、木材張合用接着剤等)、上塗り剤(離型剤、インク受像層、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、酢酸セルロース、酪酢酸セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、蒸着された金属・無機物(アルミニウム、銀、金、ITO、酸化珪素、酸化アルミニウム等)に対する接着性が劣る。上記のような問題点を解決する方法の一つに、ポリエステルフィルムの表面に塗布層を設けることが知られている。特に、フィルム製造工程中で塗布する方法が経済的かつ特性上も興味深い。この手法はインラインコーティングとも言われている。典型的な例としては、縦延伸後横延伸前に塗布を行い、横延伸および熱固定する。塗布処理により、接着性が向上する反面、フィルム同士が貼り付く現象(いわゆるブロッキングまたは固着)が生じる。固着を抑止し、かつ接着性の向上のために、さらに架橋剤を添加する場合が多い。
【0004】
一方、近年、環境負荷低減を目的として、水性塗料との接着性がポリエステルフィルムに求められるようになっており、水性塗料としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等が挙げられる。例えば、銀塩とゼラチンを利用する感光層を設ける場合、現像定着工程で多くの薬品にさらされ、長期保存等の耐久性も必要であり、ポリエステルフィルムとの強固な接着力が要求される。この用途には、従来、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、これらの共重合体が下引き層として使用されていた。また、さらに接着力を向上させる場合には、ゼラチンを含有する下引き層をこの上に設けている。しかし、塩素を含む塗布フィルムは、焼却時に有害なダイオキシン化合物が発生する懸念がある。また、銀塩塗布したフィルムは市中から回収され銀を回収再利用する場合がある。しかし、この場合でも、銀を回収した後に残るポリエステルフィルムには塩素系ポリマーが残留しており、焼却せずに回収再利用するとしても、加熱溶融時に塩化水素が発生する。そこで塩素を使用しない下引きポリエステルフィルムが求められている。
【0005】
ところで、一般に、架橋剤を添加すると塗膜が硬くなる。そこで、上記のような塗布後延伸する場合には、塗膜の延伸追随性が特に問題となる。すなわち、塗膜に十分な伸びがない場合、ポリエステルフィルムの延伸工程で均一延伸されずに細かく破断され、マイクロクラックを形成する場合が多い。塗膜の亀裂が生じるために、上塗り層等との接着性が低下したり、微細な凹凸により光散乱し、塗膜が白濁したりするという欠点が生じる。仮に基材のポリエステルフィルムが透明でない場合であっても、このような塗膜では、フィルム表面の光沢が低下するという問題を生じる。また、架橋剤を添加してもフィルム同士の固着が十分に小さくならない、あるいは奇妙な現象であるが、かえって固着が大きくなる場合さえある。そこで、ポリエステルフィルムの塗布延伸用途には、特に上記のような、相反する要求を満足する架橋剤、あるいは架橋剤とバインダーの組み合わせが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−229896号公報
【特許文献2】特開平5−78511号公報
【特許文献3】特開平5−179032号公報
【特許文献4】特開平11−286092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、塗膜の透明性、光沢に優れ、強い接着性、耐固着性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討した結果、ポリエステルフィルムの製造工程中に塗布する方法に対して、優れた延伸追随性を示しかつ十分な架橋特性、耐固着性を示す特定の化合物を組み合わせることによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、(1)エチレンオキサイド繰り返し単位と2個以上のイソシアネート基とを有する自己乳化性イソシアネート、および(2)アクリル系ポリマーを含有する塗布液を塗布した後、乾燥および延伸されてなる塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有することを特徴とする塗布フィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィルムは、新規な塗布層をもち、透明性、光沢、耐固着性、接着性に優れたポリエステルフィルムであり、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルであり、繰り返し構造単位の通常70%以上がエチレンテレフタレート単位またはエチレン−2,6−ナフタレート単位または1,4−シクロヘキサンテレフタレート単位またはエチレンイソフタレート単位またはトリメチレンテレフタレート単位を有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲を逸脱しない条件下であれば、他の成分を含有していてもよい。
【0012】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えば、イソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等の一種または二種以上を用いることができる。グリコール成分としては、エチレングリコール以外に、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール、トリメチレングリコール等の一種または二種以上を用いることができる。
【0013】
かかるポリエステルの極限粘度は、通常0.45以上、好ましくは0.50〜1.0、さらに好ましくは0.52〜0.80の範囲である。極限粘度が0.45未満ではフィルム製造時の生産性が低下したり、フィルムの機械的強度が低下したりするという問題が生ずることがある。一方、ポリマーの溶融押出安定性の点から、極限粘度は1.0を超えないことが好ましい。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムに滑り性を与えて取扱い性を向上させる目的で、ポリエステルに粒子を含有させ、フィルム表面に適度な突起を形成させてもよい。かかる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、およびポリエステル重合時に生成させる析出粒子を挙げることができる。
【0015】
本発明において、フィルムに含有させる粒子の粒径と量は、その用途にもよるが、平均粒径は、好ましくは0.005〜5.0μm、さらに好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えると、フィルム表面が粗面化しすぎる傾向がある。また薄いフィルムでは絶縁性が低下したりすることがある。さらに粒子がフィルム表面から脱落しやすくなり、フィルム使用時の、いわゆる粉落ちの原因となる恐れがある。平均粒径が0.005μm未満では、この粒子による突起形成が不十分なため、滑り性改良効果が弱くなる傾向がある。すなわち粒子を大量に添加しないと滑り性改良効果効果が現れなくなることがあり、粒子を大量に添加すると、逆にフィルムの機械的特性が損なわれることになる。また、ポリエステル中の粒子含有量は、好ましくは0.0000〜30.0重量%であり、さらに好ましくは0.010〜20.0重量%である。粒子量が多くなるとフィルムの機械的特性が損なわれる傾向がある。粒子含有量はフィルムの使用用途により異なり、高透明フィルムでは少ないほど好ましく、適度な滑り性を与えるため含まれる粒子も少ないほど好ましい。磁気記録用途ではフィルムの滑り性が重要な特性であり、添加する粒子径にも依存するが、通常0.1重量%以上は必要である。また、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの白色顔料を添加して製造する白色フィルムでは、2重量%以上は必要である。ただし、これは遮光率の高いフィルムを製造する場合であり、半透明のフィルムではこの下限はより小さくてもよい。
【0016】
フィルム中に、かかる粒子を2種類以上配合してもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを配合してもよい。いずれにしても、フィルムに含有する粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記した範囲を満足することが好ましい。粒子を含むポリエステルの製造に際して、粒子はポリエステルの合成反応中に添加してもポリエステルに直接添加してもよい。合成反応中に添加する場合は、粒子をエチレングリコール等に分散させたスラリーとして、ポリエステル合成の任意の段階で添加する方法が好ましい。一方、ポリエステルに直接添加する場合は、乾燥した粒子として、または、水あるいは沸点が200℃以下の有機溶媒中に分散したスラリーとして、2軸混練押出機を用いてポリエステルに添加混合する方法が好ましい。なお、添加する粒子は、必要に応じ、事前に解砕、分散、分級、濾過等の処理を施しておいてもよい。
【0017】
粒子の含有量を調節する方法としては、上記した方法で高濃度に粒子を含有するマスター原料を作っておき、それを製膜時に、実質的に粒子を含有しない原料で希釈して粒子含有量を調節する方法が有効である。また、上記の突起形成剤以外の添加剤として、必要に応じて、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤(染料、顔料)、光線遮断剤、紫外線吸収剤などを含有していてもよい。すなわち、本発明のポリエステルフィルムは、例えば、着色フィルムであっても差し支えないし、多数の微小気泡を含有している発泡フィルムであっても構わない。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムは、最終的に得られる特性が本発明の要件を満足する限り、多層構造となっていても構わない。例えば、共押出し積層フィルムであってもよい。この場合、ベースフィルムに関する上記の記述は、最表面層のポリエステルに適用される。それ以外の内層のフィルムは、いかなるポリエステル、プラスチック、紙、布でも差し支えない。例えば、多数の微小気泡を含有している発泡フィルム等が挙げられる。ポリエステルフィルムは、延伸されたポリエステルフィルムであれば、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、いずれでも差し支えない。しかし、工業的には、二軸延伸フィルムの方が広く使用されている。
【0019】
二軸延伸ポリエステルフィルムの製造は、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれかで実施されるが、特に逐次二軸延伸が多く行われている。すなわち、溶融押し出ししたポリエステルを冷却ドラムの上で冷却して未延伸フィルムを作成し、これを周速差のある一群のロールで延伸(縦延伸)し、この後、フィルムの長手方向と垂直な方向にクリップで保持しつつ延伸(横延伸)する。この変形として、縦延伸、横延伸を何回かに分割して実施してもよい。また延伸工程を分割し、その一部ずつを交互に実施してもよい。例えば、高強度フィルムを再延伸法で製造する方法がこれに相当する。
【0020】
次に、本発明において塗布剤として用いる、エチレンオキサイド繰り返し単位と2個以上のイソシアネート基を有する自己乳化性イソシアネートについて説明する。本発明において、エチレンオキサイド繰り返し単位と2個以上のイソシアネート基を有する自己乳化性イソシアネートとは、例えば、脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネートから形成される環状三量体骨格のイソシアヌレート構造を分子内に有するポリイソシアネートや、ビュレット構造、ウレタン構造等を分子内に有するポリイソシアネートをベースポリイソシアネートとし、これに片末端エーテル化したポリエチレングリコール等をポリイソシアネート基の内一部のみに付加させて得られるポリイソシアネート化合物が好ましい例として挙げられる。また、上記のエチレンオキサイド繰り返し単位数は、5〜50程度が好ましい。これ以下では、自己乳化性が乏しく水中で安定な分散体にならない場合がある。反面、これ以上では結晶化して固体になりやすい。自己乳化性イソシアネートにおけるイソシアネート基含有率は特に制限はないが、上記の理由により8〜25重量%の範囲が好ましい。 本発明で用いる自己乳化性イソシアネートは、イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、イソシアネートの自己乳化性が一層向上する。イオン性界面活性剤の添加量は、上記イソシアネートの0.5〜25重量%が好ましい。イオン性界面活性剤の添加量が0.5重量%未満では、イソシアネートの分散への寄与が小さくなる場合がある。25重量%を超えると、最終の水性塗料中での界面活性剤量が多すぎて、皮膜の強度が不足する場合がある。イオン性界面活性剤の例としては、例えば以下のものが挙げられる。すなわち、アニオン性界面活性剤としては、カルボキシレート型、サルフェート型、スルホネート型、ホスフェート型が適しており、例えば、(C〜C20アルキル)ベンゼンスルホン酸アンモニウム、(C〜C20アルキル)ジサルフェートナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホネートナトリウム、ジ(C〜C20アルキル)、スルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンC〜C30アリールエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンC〜C30アリールエーテルスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。カチオン性の界面活性剤の例としては、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩が適しており、例えばC〜C20アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、C〜C20アルキルピリジニウムブロマイド、イミダゾリニウムラウレートを挙げることができる。
【0021】
また、反応性の高いイソシアネート化合物を水と共に使用するため、適宜有機溶媒を併用しても構わない。本発明の塗布剤は、上記自己乳化性イソシアネートの他に、アクリル系ポリマーを併用する。上記のポリマーは、それぞれそれらの誘導体をも含むものとする。誘導体とは、他のポリマーとの共重合体、官能基に反応性化合物を反応させたポリマーを指す。なお、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン等も強靱な被膜を形成し上塗り剤と良好な接着性を示すが、これらは塩素を含有するため、燃焼時に塩素を含む有害なダイオキシン化合物を発生する可能性があり、この点で好ましくない。また、塗布フィルムのスクラップを再利用する際に、着色、腐食性ガスの発生と言う問題があり、この点でも好ましくない。上記のアクリル系ポリマーを以下に詳しく説明する。
【0022】
本発明で塗布剤として用いるアクリル系ポリマーとは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0023】
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物を例示すると以下のようになる。アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、チッソ(株)製「サイラプレーンFM−07」(メタクリロイロシリコンマクロマー)等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類
上記アクリル系モノマーからのポリマーの製造には特に制限はなく、常法によって製造できる。例えば、有機溶剤と上記の各種モノマーおよび重合開始剤を混合して、加熱攪拌し重合できる。あるいは、有機溶媒を加熱攪拌しながら上記の各種モノマーおよび重合開始剤を滴下して重合を行ってもよい。さらには、有機溶剤、上記の各種モノマーおよび重合開始剤をオートクレーブ内で高圧で重合してもよい。また、上記有機溶剤の代わりに水を用い、必要に応じて界面活性剤を併用して、乳化重合や懸濁重合してもよい。これらのモノマーを反応させるのに要する重合開始剤は特に限定はない。ただし、それらのうちで代表的な化合物を例示すれば以下のとおりである。
【0024】
過硫酸アンモニウム、過酸化水素等のような無機のパーオキサイド;過酸化ベンゾイル等のようなアシルパーオキサイド;第3級ブチルヒドロパーオキサイド;p−メンタンヒドロパーオキサイドのような種々のアルキルヒドロパーオキサイド;ジ−tert−ブチルパーオキサイドのような種々のジアルキルパーオキサイド、さらには有機パーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル、アゾジ−tert−ブタンの様な種々のアゾ系化合物また上記の有機または無機のパーオキサイドは、還元剤と組み合わせて、いわゆるレドックス系触媒として使用することもできる。この場合、各成分を一つの化合物で行ってもよいし、複数を併用してもよい。上記の還元剤として代表的な化合物としては以下のとおりである。
【0025】
有機アミン類、L−アスコルビン酸、L−ソルビン酸、ナフテン酸コバルト、オクテン酸コバルト、ナフテン酸鉄、オクテン酸鉄
本発明で塗布剤として用いるアクリル系ポリマーは、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上、さらには40℃以上のものである。
【0026】
また、特に本発明の塗布液には、水より高沸点の水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。これにより塗膜の透明性、上塗り剤との接着性が向上する。具体的には、沸点が100℃以上300℃以下であり、20℃における水への溶解度が1%以上である有機溶媒である。例えば、n−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、セロソルブアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、3−メチル−メトキシブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、テキサノール、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
【0027】
上記以外のバインダーとしては任意のポリマーを添加して使用できる。その際、自己乳化性イソシアネートと反応しうるポリマーが好ましい。例えば、水酸基をもつポリマーであり、この例としては、ポリオール、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂の加水分解物、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの(共)重合体等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0028】
バインダーとしてのポリマーは、エポキシ基を持つポリマーも好ましい。この例としては、いわゆるエポキシ樹脂が全て該当するが、中でも水溶性エポキシ樹脂、水分散性エポキシ樹脂が好ましい。バインダーとしてのポリマーは、カルボキシル基を持つポリマーも好ましい。ここで言うカルボキシル基を持つポリマーとは、カルボキシル基が一部分でも中和されていても構わない。例えば、カルボキシメチルセルロース、このナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられる。また、アクリル系ポリマーと重複するが、ポリアクリル酸(共)重合体、ポリ(メタ)アクリル酸(共)重合体、これらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩が挙げられる。また、同じくポリウレタンと重複するが、水性ポリウレタンの中には、カルボキシル基を導入し、これをナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩にして、水溶性、水分散性を出させる例があるが、これらも上記の例として挙げられる。
【0029】
バインダーとしてのポリマーは、オキサゾリン基を持つポリマーも好ましい。本発明におけるオキサゾリン基を持つポリマーとは、あるいは生成したポリマー中に少なくとも一つのオキサゾリン環を持つポリマーである。オキサゾリン化合物としては、2−オキサゾリン、3−オキサゾリン、4−オキサゾリン化合物がありいずれを用いても良いが、特に2−オキサゾリン化合物が反応性に富みかつ工業的にも実用化されている。バインダーとしてのポリマーは、アミノ樹脂も好ましい。アミノ樹脂とは、アミノ化合物またはアミド化合物とアルデヒド類との反応により生成するポリマー、プレポリマーおよびそれらの誘導体である。骨格となるアミノ化合物、アミド化合物としては、例えば以下の化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0030】
尿素、チオ尿素、エチレン尿素、ジヒドロキシエチレン尿素、トリアゾン類、メラミン、イソメラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリル、アセトグアナミン、グアニルメラミン、ジシアンジアミド、ジシアンジアミドの単独重合体、ジシアンジアミドの共重合体、アミノアクリル(アミノ基を含有するアクリル系モノマー)、アミノアクリルの単独重合体、アミノアクリルの共重合体、アニリンアルデヒド化合物としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒドが挙げられるがこれらに限定されるものではない。アミノ化合物またはアミド化合物とアルデヒド類の反応により生成するポリマー、プレポリマーとしては、以下の例が挙げられる。この一部は、いわゆるメチロール化アミノ樹脂と言われることもある。
【0031】
モノメチロール尿素、ジメチロール尿素、トリメチロール尿素、テトラメチロール尿素、メチレン尿素、メチロールメチレン尿素、メチロールメチレン尿素三量体、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、モノメチロールベンゾグアナミン、ジメチロールベンゾグアナミン、トリメチロールベンゾグアナミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、モノメチロールグリコールウリル、ジメチロールグリコールウリル、トリメチロールグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリル、N−メチロールアクリルアミドの単独重合体、N−メチロールアクリルアミドの共重合体さらに、上記の誘導体も好ましい。例えばアルキルエーテル化アミノ樹脂等である。
【0032】
工業的に入手できるアミノ樹脂として、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、グリコールウリル樹脂、これらの共縮合物、これらと他の樹脂(例えばアルキッド樹脂)との共縮合物(アミノアルキッド樹脂)等が挙げられる。例えばメラミン樹脂では、工業的に生産する一例としては、メラミン−ホルムアルデヒド−メタノール(またはブタノール)の共縮合物として製造される。従って、メラミン、ホルムアルデヒド、メタノール(またはブタノール)の比率により各種のメラミン樹脂成分が出来上がる。さらにメタノールとブタノールを混合併用する場合もある。工業的に入手できるメラミン樹脂は、厳密には上記化合物群から選ばれた幾つかの混合物、(共)縮合物と言える。
【0033】
アミノ樹脂の自己硬化反応および他の官能基との反応は、熱、触媒により促進される。触媒は、有機酸あるいは無機酸が有効である。例えば以下の例が挙げられるが、これらに限定されるものではない;燐酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、これらの部分塩、これらの部分エステル、これらのアンモニウム塩、これらのアミン塩が挙げられる。
【0034】
本願発明の塗布フィルムは、上塗り剤との強固な接着性を示しつつ、固着性が小さい。これは本願発明の大きな特徴である。例えば、銀塩とゼラチンを利用する感光層を設ける用途では、従来、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、これらの共重合体が下引き層として使用されていた。またさらに接着力を向上させる場合には、ゼラチンを含有する下引き層をこの上に設けていた。これらのフィルムは固着しやすく、ロールフィルムの取り扱いは多大の注意が必要であった。本発明の自己乳化性イソシアネートとバインダーを使用した場合は、固着性は軽減されうる。この観点からは、好ましくは、ガラス転移温度0℃以上、さらに好ましくは40℃以上のポリマーを含有することが望ましい。
【0035】
しかしながら、完全水系の塗布剤(溶媒)で、これらの条件を満足させると、概して接着性・耐固着性は向上するものの、塗膜が白濁したり、光沢が失われたりする場合がある。極端な場合には塗膜にマイクロクラックを生じ、かえって接着性が低下する場合もある。このような好ましくない現象を抑えるために、水溶性有機溶剤を併用することが好ましい。また、固着性を低下させる方法として、塗布液に以下の条件で微粒子を加えることも好ましい。
【0036】
0.5h<d<2h・・・(1)
d<0.2μm ・・・(2)
(上記式中、dは微粒子の粒径[μm]、hは乾燥延伸後の塗膜厚さ[μm])
0.5h≧dのときには、固着性軽減の効果が小さい傾向がある。d≧2hのときには、上塗り剤との接着性が低下する傾向がある。また、d≧0.2μmでも、上塗り剤との接着性が低下することがある。これらの条件を満たすことで、卓越した接着性、塗膜の透明性および光沢、耐固着性という相反する要求を満足できることが判明した。上記のような条件を用いて、平坦で平面性に優れたフィルムでありながら固着性が小さい塗布フィルムを作成することができる。特に、フィルムの表面粗さ(Ra、JIS−B0601−1982に準じる。触針の先端半径は2μm、荷重は30mg、カットオフ値は0.08mmで測定。)が0.10μm以下であり、フィルムロールの幅方向の厚み斑が5%以下でありながら、フィルムの固着力が300g以下となるフィルムである。固着力が500g以上では、フィルムロールがブロッキングする恐れがある。固着力は300g以下が好ましく、100g以下ならブロッキングの懸念は非常に小さい。ここで言う厚み斑、固着力とは以下のとおりである。従来は、表面粗さが小さくて厚さ斑の小さいフィルムではフィルム全面がブロッキングしやすかったが、本発明でこのようなフィルムでも固着力を小さくできるようになった。
【0037】
<厚み斑>フィルムロールから幅方向に試料を切り出し、この試料の全長にわたって厚さ測定し、厚さプロフィールを採取する。平均厚さ=T、最大厚さ=Tmax、最小厚さ=Tminとし、下式により計算した。
【0038】
厚み斑(%)=100(Tmax−Tmin)/T
<固着力>フィルムを重ね合わせてプレスする。条件は、40℃、80%RH、10kg/cm2 、20時間とする。プレスしたフィルムは多くの場合に固着しており、これを、ASTM−D−1893により剥離し、その時の剥離強度を測定した。剥離強度が大きい程固着性が大きく、このようなフィルムをロールに巻き上げるとブロッキングが発生しやすく、工業製品として不適当である。厚手のフィルムでも、固着性が大きいと、フィルムを巻出す際にフィルムが破断する場合がある。
【0039】
本発明における塗布剤は、安全衛生上、水を主な媒体とする塗布剤であることが望ましいが、既に記載した様に水に溶解する範囲で、有機溶剤を含有してもよい。本発明における塗布剤の固形分濃度には特に制限はないが、好ましくは0.4〜65重量%、さらに好ましくは1〜30重量%、最も好ましくは2〜20重量%以下である。
【0040】
上述の塗布液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、(株)総合技術センター、1990年発行、「コ−ティング装置と操作技術入門」に示されるような塗布装置を用いることができる。例えば、正回転ロールコータ、リバースロールコータ、グラビアコータ、ナイフコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、エアドクタコータ、カーテンコータ、ファウンテンコータ、キスコータ、キスロールコータ、ビードコータ、浸漬コータ、スクリーンコーティング、キャストコーティング、スプレイコーティング、含浸機、LB法のようなコータまたはコーティング方式を使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
なお、塗布剤のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前のフィルムに化学処理や放電処理を施してもよい。また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの塗布層の接着性、塗布性などを改良するために、塗布層形成後に塗布層に放電処理を施してもよい。
【0042】
塗布工程は、ポリエステルフィルム製造工程中の種々の場所で実施可能であるが、塗布後に延伸する必要がある。特に、テンター前で塗布すると、乾燥炉の増設を低減または削除できるので、非常に好ましい。すなわち、本発明の典型的な実施態様は、縦(長手)方向に延伸された一軸延伸フィルムに、上記水系塗布剤を塗布し、乾燥、横延伸、熱固定、巻き取りの工程に従う方法である。必要に応じて、再縦延伸、弛緩処理を実施してもよい。塗布剤の乾燥は、ポリエステルフィルムの横延伸前の予熱時または横延伸時に行うことが好ましい。このほかに、同様の例としては、未延伸フィルムに塗布後テンター内で同時二軸延伸する、未延伸フィルムに塗布後テンター内で一軸延伸する例が挙げられる。本発明の塗布層は、単層であっても多層であってもよいし、多層中の単層または複層として設けられてもよい。
【0043】
次に、本発明のフィルムの典型的な製造法を、より具体的に説明する。ポリエステル原料を、押出装置に供給し、ポリエステルの融点以上の温度で溶融押出してスリット状のダイから溶融シートとして押し出す。次に、溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0044】
このようにして得られた塗布処理未延伸シートをまず縦方向に延伸する。延伸温度範囲は70〜150℃、延伸倍率は2.5〜6倍の範囲とするのが好ましい。延伸は一段階または二段階以上で行うことができる。本発明においては、任意の段階で上述の塗布液を少なくとも一つの面に塗布後乾燥処理を施すことができるが、最も好ましい段階は、この縦延伸後横延伸前である。次に横方向、すなわち、縦方向と直交する方向に一軸配向フィルムを一旦ガラス転移点以下に冷却するか、または冷却することなく、例えば90〜150℃の温度範囲に予熱して、さらにほぼ同温度の下で2.5〜5倍、好ましくは3.0〜4.5倍に延伸を行い、二軸に配向したフィルムを得る。必要に応じて予熱を補強してもよい。
【0045】
かくして得られたフィルムを、30%以内の伸長、制限収縮、または定長下で1秒〜5分間熱処理する。この際、熱処理工程内または熱処理後に縦方向に10%以内、好ましくは5%以内で弛緩処理する等の手法も、特に縦方向の熱収縮率を好適な範囲とするために採用することができる。熱処理温度は、延伸条件にもよるが、好ましくは180〜250℃、さらに好ましくは200〜250℃の範囲である。熱処理温度が250℃を超えるとフィルム密度が高くなりすぎる。また、塗布層の一部が熱分解を生ずる場合がある。一方、180℃未満ではフィルムの熱収縮率が大きくなって好ましくない。
【0046】
本発明の塗布フィルムを製造する際、ある程度の割合で不良品が発生する。そこで、これを再利用することが工業的に大きな価値が生ずる。再生原料を原料ポリエステル混入しなければ、製品価格が高くなり、不利になる。しかし、あまりに多量に混入すると、溶融押し出しの工程などで着色する。また、ポリエステルフィルムの力学的特性を損なう。混入量の割合は、ポリエステルフィルムの厚さ、塗膜の厚さ、塗布層の含有量、加工歩留まり等にも依存するが、塗布層が10重量%を超えると上記のような光学的特性、力学的特性を損なう恐れがある。
【0047】
本発明のフィルムは、接着性、透明性、耐固着性に優れたフィルムである。したがって、透明性を要求される用途には特に好適である。しかし、本塗膜は、半透明、不透明のフィルムに関しても価値が高い。半透明、不透明のフィルムには塗膜の透明性は不要と解釈される場合もあるが、必ずしもそうではない。塗膜の透明性は、塗膜の光沢と関連しており、白濁した塗膜は光沢を低下させる。すなわち、ベースフィルムの光沢を保持したまま接着性を付与できることは、全てのポリエステルフィルムにとって価値の高いことだからである。光沢のある塗膜は、塗膜表面が平滑であり、したがって固着しやすい。本発明のフィルムは、この問題を解消したフィルムである。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中の評価方法は下記のとおりである。実施例および比較例中、「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0049】
(1)ポリマーの極限粘度[η](dl/g)
ポリマー1gをフェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlに溶解し、30℃で測定した。
【0050】
(2)フィルムヘーズ
JIS−K6714に準じて、日本電色工業社製分球式濁度計NDH−20Dによりフィルムの濁度を測定した。
【0051】
(3)固着性
フィルムを重ね合わせてプレスする。条件は、40℃、80%RH、10kg/cm2 、20時間。プレスしたフィルムは多くの場合に固着しており、これを、ASTM−D−1893により剥離し、その時の剥離強度を測定した。剥離強度が大きい程固着性が大きく、このようなフィルムをロールに巻き上げるとブロッキングが発生しやすく、工業製品として不適当である。厚手のフィルムでも、固着性が大きいと、フィルムを巻出す際にフィルムが破断する場合がある。
【0052】
(4)接着性1
フィルム表面に紫外線硬化インクを塗布・硬化し、そのフィルムとの接着の程度を評価する。評価条件は、以下のとおりである。
インク:東洋インキ社製オフセット印刷インク”FDカルトンP”藍色塗布:明製作所のオフセット印刷装置であるRIテスター”RI−2”にて5μm厚さに塗布した。
硬化:ウシオ電気社製UV照射装置”UVC−402/1HN:302/1MH”にて硬化させた。メタルハライドランプ出力120W/cm、ラインスピード10m/分、ランプ〜フィルム間隔100mmの条件で硬化させた。
接着性:セロテープ(登録商標)剥離を実施し、インクの剥離の程度を下記基準で評価した。
○:優秀。全く剥離しない。
○△:良。僅かに、剥離する。
△:やや良。多少剥離する。
△×:悪い。かなり剥離する。
×:非常に悪い。セロテープ(登録商標)を貼り付けた部分が完全に剥離する。
【0053】
(5)接着性2
水系上塗り剤の例として、以下のように塗布剤を塗布し、剥離試験に供した。
塗布剤組成:ポリビニルアルコール(けん化度88%)=100(重量部)
上記組成のポリビニルアルコール溶液を作成し、フィルム表面に塗布し80℃で5分乾燥し、10μm厚さの皮膜を得た。溶媒組成:水/エタノール=80/20wt%。これを以下のように剥離試験した。
接着性:セロテープ(登録商標)剥離を実施し、ポリビニルアルコール層の剥離の程度を下記基準で評価した。
○:優秀。全く剥離しない。
○△:良。僅かに、剥離する。
△:やや良。多少剥離する。
△×:悪い。かなり剥離する。
×:非常に悪い。セロテープ(登録商標)を貼り付けた部分が完全に剥離する。
【0054】
(6)接着性3
水系上塗り剤の例として、以下のように塗布剤を塗布し、剥離試験に供した。
塗布剤組成:ゼラチン=100(重量部)
上記組成のゼラチン温水溶液を作成し、フィルム表面に塗布し80℃で5分乾燥し、10μm厚さの皮膜を得た。これを以下のように剥離試験した。
接着性:セロテープ(登録商標)剥離を実施し、ゼラチン層の剥離の程度を下記基準で評価した。
○:優秀。全く剥離しない。
○△:良。僅かに、剥離する。
△:やや良。多少剥離する。
△×:悪い。かなり剥離する。
×:非常に悪い。セロテープ(登録商標)を貼り付けた部分が完全に剥離する。
【0055】
比較例1:
極限粘度0.65であり、粒子径1.5μmのSiO2 を0.005重量%含むポリエチレンテレフタレートを常法により乾燥して押出機に供給し、290℃で溶融してシート状に押出し、静電印加密着法を用いて冷却ロール上で急冷し、無定形シートとした。得られた未延伸シートをロール延伸法を用いて縦方向に85℃で2.5倍延伸した後、さらに95℃で1.3倍延伸した。次いで、得られた一軸延伸フィルムをテンターに導いて、横方向に120℃で4.0倍延伸し、235℃で熱処理を行い、基材ポリエステルフィルムの厚さ50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムきわめて透明性に優れた平坦なフィルムであった。しかしながら、接着性に欠けるものであった。フィルムの透明性、固着性、接着性を下記表3に示す。
【0056】
比較例2〜3および実施例1:
比較例1と同様の方法にて一軸延伸フィルムを得た。このフィルムの片面に、下記表1の原材料を下記表2の組成で配合して得られた各種塗布剤を塗布した。その後、比較例1と同様に本フィルムをテンターに導き、テンターにより乾燥、横延伸、熱処理を実施して、表3に記載の各例に該当する二軸延伸フィルムを得た。塗膜も延伸されて最終的な乾燥塗布層厚さは0.04μmであった。フィルムの透明性、固着性、接着性を表3に示す。 実施例1のフィルムは、いずれも優れた接着性を示す。これに対して、架橋剤としてブロックイソシアネートやアルキロールメラミンを用いた比較例2および3のフィルムは、一部の上塗り剤に対して接着性があるものの、水系上塗り剤に対して接着性に乏しい。実施例1では、ポリエステル、アクリル系ポリマー、ポリウレタンいずれも良い接着性を示している。なかでも、ポリウレタンが概して良好である。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
【表5】

【0062】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のポリエステルフィルムは、例えば、磁気記録媒体のベースフィルム、製版用フィルム、磁気カード、包装用フィルム、合成紙をはじめとして幅広い用途において、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)エチレンオキサイド繰り返し単位と2個以上のイソシアネート基とを有する自己乳化性イソシアネート、および(2)アクリル系ポリマーを含有する塗布液を塗布した後、乾燥および延伸されてなる塗布層をポリエステルフィルムの少なくとも片面に有することを特徴とする塗布フィルム。
【請求項2】
塗布液が、イオン性界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の塗布フィルム。
【請求項3】
塗布液が、ガラス転移温度0℃以上のポリマーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の塗布フィルム。
【請求項4】
塗布液が、ガラス転移温度40℃以上のポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布フィルム。
【請求項5】
塗布液が、水より高沸点の水溶性有機溶剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗布フィルム。
【請求項6】
塗布液が微粒子を含有し、その粒径dと塗布層の厚さhとが下記式(1)および(2)を同時に満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗布フィルム。
0.5h<d<2h ・・・(1)
d<0.2μm ・・・(2)
(上記式中、dおよびhの単位はμm)
【請求項7】
フィルムの表面粗さ(Ra)が0.10μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塗布フィルム。
【請求項8】
フィルムの固着力(F)が300g以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の塗布フィルム。
【請求項9】
フィルム幅方向の厚み斑が5%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の塗布フィルムからなるフィルムロール。

【公開番号】特開2012−21170(P2012−21170A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238088(P2011−238088)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【分割の表示】特願2001−150445(P2001−150445)の分割
【原出願日】平成13年5月21日(2001.5.21)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】