説明

塗布ブラシおよび画像形成装置

【課題】適量の潤滑剤を長期間にわたり塗布できるとともに,感光体の残留トナー等を適切に除去することを可能にした塗布ブラシおよび画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の塗布ブラシ32は,シャフト41と,シャフ41トの表面に配置された基布42と,基布42に植設されたループ形状のブラシ毛43とを有するものであって,ブラシ毛43には,基布42の表面から最外周部までの高さが異なる複数種類のものがあるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,像担持体を用いて画像形成する電子写真方式の画像形成装置およびその画像形成装置に用いられる塗布ブラシに関する。さらに詳細には,像担持体に潤滑剤を塗布するための塗布ブラシおよび画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,トナー像を担持する像担持体には,適宜,潤滑剤が塗布されている。これは主に,転写時のトナーの離型性向上のため,および,クリーニングブレード等による摺擦箇所の双方の摩耗低減のためである。このような潤滑剤塗布装置としては,回転するブラシを,固形潤滑剤と像担持体との両方に接触させるように配置したものが知られている。このようなものでは,固形潤滑剤をバネ力や自重によってブラシに押圧させている。そして,ブラシによって,固形潤滑剤を掻き取り,掻き取った潤滑剤を像担持体に塗布するものである。
【0003】
このような潤滑剤を塗布する装置では,適量の潤滑剤を長期にわたって安定して供給することが求められる。塗布量が不足すると,十分なトナーの離型性が得られない。逆に塗布量が多すぎると,例えば,感光体から中間転写ベルトにトナー像を転写する画像形成装置では,感光体に塗布された潤滑剤が,感光体を介して中間転写ベルトに付着することがある。その場合には,中間転写ベルトの離型性が上昇してしまうため,感光体から中間転写ベルトへの転写性が逆に低下する原因となる。
【0004】
また,一般にこのような固形潤滑剤では,少なくとも像担持体の寿命までは安定した供給量が得られることが望ましい。すなわち,潤滑剤の残量が減少しても,その塗布量に大きな変化が無いことが望まれる。そこで,例えば,特許文献1に記載されている潤滑剤塗布装置では,固形潤滑剤を,潤滑剤とホルダとの自重によってブラシに押圧させている。これにより,潤滑剤をブラシに押圧する力を小さく保ち,潤滑剤の供給量を極力抑えるとともに,ブラシの毛倒れも防止するとされている。
【特許文献1】特開2003−57996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した特許文献1に記載の装置では,長期にわたる供給が特に目的とされているため,固形潤滑剤の押圧力がかなり小さくされている。そのため,像担持体への潤滑剤の塗布量が少なく,像担持体の十分な離型性が得られないおそれがある。また,自重を利用しているため,固形潤滑剤をブラシの上方に配置する必要がある。そのため,配置に制限があるという問題点があった。
【0006】
また,塗布ブラシに求められる機能の1つとして,感光体に残留したトナー等の異物を掻き取る機能がある。ブラシ毛が直毛で構成されている直毛ブラシは,ブラシ毛の先端部分のみが感光体や固形潤滑剤に接触するため,掻き取り性が高い半面,固形潤滑剤を局所的に掻き取りがちである。そのため,特に植毛密度の低いものでは,ひとたび固形潤滑剤に凹凸ができるとその凹凸が助長されやすい。その場合には,潤滑剤の塗布量にムラができるおそれがあった。
【0007】
これに対し,ブラシ毛がループ形状となっているループブラシでは繊維の比較的長い範囲が接触するため,植毛密度が低いものでも比較的均一な接触状態を確保できる。その一方で比較的当たりが柔らかいため,感光体からの残留トナー等の異物の掻き取り機能にやや劣るという問題点があった。これに対して,単にループブラシのブラシ毛の硬さを上昇させることは,固形潤滑剤を削りすぎてしまうおそれがあるため好ましくない。
【0008】
本発明は,前記した従来の装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,適量の潤滑剤を長期間にわたり塗布できるとともに,感光体の残留トナー等を適切に除去することを可能にした塗布ブラシおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の塗布ブラシは,シャフトと,シャフトの表面に配置された基布と,基布に植設されたループ形状のブラシ毛とを有する塗布ブラシであって,ブラシ毛には,基布の表面から最外周部までの高さが異なる複数種類のものがあるものである。
【0010】
一般に,ブラシ毛が長いブラシは当たりが柔らかく,ブラシ毛が短いブラシは当たりが硬い。本発明の塗布ブラシは,そのブラシ毛に基布の表面から最外周部までの高さが異なる複数種類のものがあるので,いずれのブラシ毛が接触するかによって当たりの程度を異なるものとできる。例えば,接触対象物によって,塗布ブラシとの距離が異なる位置に配置すれば,それぞれに適切な接触強度を得ることができる。
【0011】
さらに本発明では,ブラシ毛のループ形状部分の繊維長が,高さの種類により異なることが望ましい。すなわち,ブラシ毛の基布の表面から最外周部までの高さの種類は,ブラシ毛の繊維長自体の差によって形成されていることが望ましい。このようになっていれば,ブラシ毛の当たりの程度を,その繊維長によって調整することができる。また,接触対象物との距離との調整も容易である。
【0012】
また,本発明は,像担持体と,固形潤滑剤と,固形潤滑剤を掻き取って像担持体に塗布する塗布ブラシと,固形潤滑剤を塗布ブラシに向かって押圧する押圧部とを有する画像形成装置であって,塗布ブラシが,シャフトと,シャフトの表面に配置された基布と,基布に植設されたループ形状のブラシ毛とを有し,ブラシ毛には,基布の表面から最外周部までの高さが異なる複数種類のものがある画像形成装置にも及ぶ。
【0013】
さらに本発明では,ブラシ毛のループ形状部分の繊維長が,高さの種類により異なることが望ましい。
【0014】
さらに本発明では,最小の高さのブラシ毛は,像担持体に接触するとともに固形潤滑剤には接触せず,最大の高さのブラシ毛は,像担持体と固形潤滑剤との両方に接触することが望ましい。このようなものであれば,像担持体には比較的強く当たり,固形潤滑剤には比較的弱く当たる。従って,像担持体上の残留トナー等を適切に除去できるとともに,固形潤滑剤を削りすぎないようにできる。これにより,適量の潤滑剤を長期間にわたり塗布できる。
【0015】
さらに本発明では,塗布ブラシにおける,像担持体に接触した後で固形潤滑剤に接触する前の位置にて,すべての種類のブラシ毛に接触する異物除去部材を有することが望ましい。このようになっていれば,像担持体から掻き取った残留トナー等の異物が,異物除去部材によって塗布ブラシから除去される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗布ブラシおよび画像形成装置によれば,適量の潤滑剤を長期間にわたり塗布できるとともに,感光体の残留トナー等を適切に除去することを可能にした塗布ブラシおよび画像形成装置を提供すること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,いわゆるタンデム方式のカラー画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0018】
本形態の画像形成装置1は,図1に示すように,中間転写ベルト11に沿って各色のイメージングユニット12Y,12M,12C,12Kが配置されたものである。中間転写ベルト11の周囲にはさらに,2次転写ローラ13および中間転写クリーニング部14も設けられている。画像形成時には,中間転写ベルト11は,図中反時計回りに回転する。なお,各イメージングユニット12Y,12M,12C,12Kは,いずれもほぼ同様の構成である。以下では,各色を表す添え字を省略して,イメージングユニット12という。本形態の画像形成装置1では,イメージングユニット12がそれぞれユニット化され,交換可能にされている。
【0019】
イメージングユニット12の概略構成を図2に示す。イメージングユニット12は,感光体21を中心に,クリーニング部22,帯電部23,露光部24,現像部25を有している。また,感光体21に対して,中間転写ベルト11をはさんで反対側には,1次転写ローラ26が配置されている(図1参照)。ここで,感光体21および帯電部23,露光部24,現像部25,1次転写ローラ26はいずれも一般的な画像形成装置に使用されているものである。
【0020】
さらに,本形態では,図2に示すように,クリーニング部22のハウジング30内にクリーニングブレード31,塗布ブラシ32,固形潤滑剤33,ホルダ34,押圧バネ35,フリッカー36,スクリュー37を有している。クリーニングブレード31は,その図中上部の一辺が感光体21に当接されている。
【0021】
塗布ブラシ32は,図3の断面図に示すように,基布42にループ形状のブラシ毛43が植えられたものがシャフト41の外周に巻き付けられて接着されたものである。ここで,ループ形状とは,ブラシ毛43の繊維の両側部が基布42に固定され,その中間部分を基布42から浮き上がらせたものである。基布42は,例えば,厚さ0.5mm程度のナイロンやポリエステル,アクリルなどからなる繊維を網目構造に織り込んだ平面状のものである。また,樹脂シートやゴムシートを基布として用いることもできる。なお,この図では,基布42の厚さを他の部分に比してかなり大きく描いている。
【0022】
本形態の塗布ブラシ32は,図4に示すように,繊維高さtが異なる3種類(t1,t2,t3)のブラシ毛43(43a,43b,43c)となるように,基布42の一面に繊維を連続したS字状に編み込んだものである。この3種類のブラシ毛43は,繊維の種類や太さは同じものであり,例えば,導電性ナイロンの繊維によって形成されている。ここで,繊維高さtは,基布42の表面から自然状態でのブラシ毛43のループ頂部(最外周部)までの高さであり,1つのループに使用される繊維長の2分の1よりやや短い距離である。すなわち,3種類のブラシ毛43はそれぞれ,各ループに使用される繊維長が異なる。また,本実施例での繊維高さtは,新品の塗布ブラシ32における高さのことである。
【0023】
なお,本形態では,シャフト41に基布43が巻き付けられたときに,ループが含まれる面がおよそシャフト41の軸方向に平行となるようにされる。一般に,基布42はシャフト41に対して螺旋状に巻き付けられるので,ブラシ毛43を基布42に対して斜めに並べて植毛しておくことが望ましい。また,3種類のブラシ毛の植毛密度は必ずしも均等でなくてもよい。
【0024】
また,この塗布ブラシ32は,クリーニング部22のハウジング30の中で,クリーニングブレード31の図2中上方に配置されている。そして,塗布ブラシ32は画像形成時には,図中矢印で示すように,感光体21の回転によって連れ回りされ,ウイズ回転方向に回転される。すなわち,塗布ブラシ32の配置は,感光体21の回転に関して,クリーニングブレード31の上流で1次転写部の下流の位置となっている。
【0025】
固形潤滑剤33は,ステアリン酸亜鉛等の潤滑剤を固めて成形したものである。これは,比較的柔らかいものである。固形潤滑剤33は,図2中奥行き方向に感光体21の軸方向長さと同程度の長さに形成され,図中右端面がホルダ34に固定されている。さらに,そのホルダ34は押圧バネ35によって,図中左向きに押圧されている。なお,押圧バネ35の図中右端部は,クリーニング部22のハウジング30に固定されている。また,押圧バネ35は,塗布ブラシ32の軸方向(図中奥行き方向)に,複数個がバランスよく配置されている。
【0026】
また,フリッカー36は,多少の弾力性を有する薄い板状の部材の一辺部を辺に沿って曲げた形状となっている。そして,その曲げられた図2中左端部は自由端とされ,図中右端部がクリーニング部22のハウジング30に固定されている。さらに,曲げられた一辺の外周部が塗布ブラシ32のブラシ毛43のループ頂部に接触する位置に固定されている。ここでは,すべての種類のブラシ毛43a,43b,43cに接触するようにされている。これにより,塗布ブラシ32が回転すると,すべてのブラシ毛43a,43b,43cがフリッカー36によってはじかれる。これにより,塗布ブラシ32に付着した付着物がはじき飛ばされるようになっている。
【0027】
なお,このフリッカー36は,塗布ブラシ32の回転方向に関して,固形潤滑剤33より上流で感光体21より下流の位置に配置される。そのため,塗布ブラシ32によって掻き取られた潤滑剤は,フリッカー36によってはじき飛ばされることはなく,感光体21に塗布される。一方,感光体21に触れることによって塗布ブラシ32に付着したトナー等の付着物は,フリッカー36によって除去することができる。そして,フリッカー36によって塗布ブラシ32からはじき飛ばされた残留トナー等は,スクリュー37によって,その軸方向(図2中奥行き方向)へ搬送される。そして,軸方向端部付近に設けられている廃トナーボックスに回収される。
【0028】
ここで本形態では,塗布ブラシ32の各ブラシ毛43a,43b,43cの繊維高さt1,t2,t3が以下の条件を満たすように各部が配置されている。すなわち,図5に示すように,塗布ブラシ32の基布42の表面と固形潤滑剤33との最短距離d1は,次の関係を満たす。
d1 > t1 かつ d1 < t3
また,塗布ブラシ32の基布42の表面と感光体21との最短距離d2は,次式の関係を満たす。
d2 < t1
【0029】
このようにすると,図5に示すように,そのブラシ毛43のうち繊維高さtが最も低いもの(ブラシ毛43a)のループ頂部は,感光体21の表面には接触するが,固形潤滑剤33の表面には接触しない。一方で,ブラシ毛43のうち繊維高さtが最も高いもの(ブラシ毛43c)のループ頂部は,感光体21と固形潤滑剤33の表面との両方に接触する。
【0030】
一般にこのようなブラシでは,繊維高さtが低いと繊維の剛性が大きく,掻き取り性が大きい。繊維高さtが高いと繊維の剛性が小さく,掻き取り性が小さい。ここでは,繊維高さt1のブラシ毛43aは掻き取り性が大きく,繊維高さt3のブラシ毛43cは掻き取り性が小さい。本形態では,掻き取り性が大きいブラシ毛43aは固形潤滑剤33には接触していないので,固形潤滑剤33を削りすぎることはなく,適切な量を長期間にわたって塗布することができる。一方,感光体21には,繊維高さt1〜t3のブラシ毛43a,43b,43cがすべて接触するので全体としての掻き取り性が大きい。従って,感光体21の表面の残留トナー等を確実に回収することができる。
【0031】
次に,本形態の画像形成装置1による画像形成方法について説明する。画像形成時には,感光体21は図2中時計回りに回転する。そして,帯電部23によって感光体21の表面がほぼ均一に帯電される。次に,露光部24によって,画像データに基づいて露光され,感光体21の表面に静電潜像が形成される。さらにその静電潜像が,現像部25において現像され,感光体21の表面にトナー像が形成される。形成されたトナー像は,1次転写ローラ26によって,中間転写ベルト11へ転写される(図1参照)。転写後も感光体21上に残留したトナーは,クリーニング部22のクリーニングブレード31によって掻き取られる。
【0032】
このとき,塗布ブラシ32は,そのすべてのブラシ毛43a,43b,43cが感光体21と接触するように配置されている。そのため,感光体21の回転によって連れ回り,図2中反時計回りに回転される。そして,固形潤滑剤33は,ブラシ毛43cに接触するまで押圧バネ35によって塗布ブラシ32に押圧されている。従って,塗布ブラシ32のブラシ毛43cのループ頂部は,回転により感光体21の表面と固形潤滑剤33の表面とに交互に接触される。
【0033】
そのため,塗布ブラシ32は,図2中右方で固形潤滑剤33を適量掻き取り,左方で感光体21に塗布することになる。感光体21と塗布ブラシ32とが回転されているので,感光体21の表面にはまんべんなく潤滑剤が塗布される。その後,感光体21のうち潤滑剤が塗布された部分は,さらに回転してクリーニングブレード31に接触する。これにより,塗布ブラシ32により塗布された潤滑剤が,よりまんべんなく塗布された状態である膜状となる。
【0034】
なお,塗布ブラシ32の配置から,塗布ブラシ32が感光体21と接触するときには,感光体21には残留トナー等が付着した状態となっている。塗布ブラシ32は,そのすべてのブラシ毛43a,43b,43cが感光体21と接触するので,感光体21の表面に付着していた残留トナー等を適切に掻き取ることができる。その掻き取られた残留トナー等は,さらに回転された塗布ブラシ32がフリッカー36に接触することにより,ブラシ毛43からはじかれて除去される。
【0035】
次に,本発明者らは,塗布ブラシの種類によるクリーニング性,転写不良,トナーロール化への影響を調べた。ここでは,試験機としてコニカミノルタビジネステクノロジーズ製のbizhubC450(A4Yで35枚/分の速度のMFP)を用いた。これのクリーニング部の塗布ブラシを,以下の5種類のブラシで置き換える改造を施して試験を実施した。
【0036】
実施例 :繊維高さ1.5mm,2.0mm,2.5mmの3段階のループ毛
植毛密度100本/(25.4mm)2
比較例1:繊維高さ1.5mm,2.0mm,2.5mmの3段階の直毛
植毛密度100本/(25.4mm)2
比較例2:繊維高さ1.5mm,2.0mm,2.5mmの3段階の直毛
植毛密度430本/(25.4mm)2
比較例3:繊維高さ2.5mmの1段階のループ毛
植毛密度100本/(25.4mm)2
比較例4:繊維高さ1.5mmの1段階のループ毛
植毛密度100本/(25.4mm)2
ここで用いた塗布ブラシ32はいずれも,シャフト径6mm,基布厚み0.5mmの導電性ナイロン繊維(ヤング率1000〜1700N/mm2)のブラシである。なお,植毛密度は,基布42のいわゆる1インチ四方あたりに植毛されているブラシ毛43の植毛箇所の数に相当する。
【0037】
なお,感光体21の塗布ブラシに対する食い込み量は最も短い繊維が約0.5mm食い込む位置とした。実施例および比較例1〜2では,最も長い繊維は1.5mm食い込むことになる。また,比較例3では1.5mm,比較例4では0.5mmの食い込み量とした。塗布ブラシは感光体21に連れ回り,線速度比0.7程度でウイズ回転した。また,固形潤滑剤33は,その鉛筆硬度がHB相当のものとし,塗布ブラシへの押圧力を5N/mに設定した。クリーニングブレード31の感光体21への当接力は23N/mとした。なお,実施例および比較例1〜2では,最も長い繊維のみが固形潤滑剤33に接触していることを確認した。
【0038】
この試験ではまず,上記の各塗布ブラシを装着した試験機において,A4Yを1枚間欠モードでφ30mmの感光体21が100K回転する(通紙枚数では約10K枚)まで,耐久を行った。この耐久時には,23℃65%の環境(NN環境)で,画像濃度が各色5%でトータル20%のチャートを印刷した。
【0039】
次に,クリーニング性試験として,10℃15%の環境(LL環境)でベタ画像の未転写画像を通過させ,クリーニングブレードをトナーがすり抜けているかどうかを目視で確認した。クリーニング性の評価基準は以下の通りとした。
トナーのすり抜けが確認できなかった場合に○
わずかにすり抜けているが,画質に影響のない場合に△
すり抜けが目視で確認できる場合に×
【0040】
また,転写不良試験として,同様のLL環境でベタ画像を用紙に転写させ,画像濃度ムラの有無を目視で確認した。転写不良の評価基準は以下の通りとした。
画像濃度ムラが全く確認できなかった場合に○
わずかにムラがあるが,全体として画質に影響がない場合に△
画像濃度ムラがはっきり確認できる場合に×
【0041】
また,トナーロール化試験として,耐久後の塗布ブラシを取り出し,目視で確認した。塗布ブラシに多くのトナーが溜まり,トナーで凝固した状態となる現象がトナーロール化である。トナーロール化の評価基準は以下の通りとした。
トナーロール化が認められない場合に○
トナーロール化が認められる場合に×
さらに総合評価として,クリーニング性,転写不良,トナーロール化のすべてに○であったものを○とした。1つでも×あるいは△のあるものを×とした。
【0042】
【表1】

【0043】
試験の結果は上記の表1に示す通りとなった。実施例以外のものはいずれも,いずれかの性能において満足できない結果であった。すべての評価において○であったのは,実施例のみであった。
【0044】
以上詳細に説明したように,本形態の画像形成装置1によれば,塗布ブラシ32として3種類の繊維高さが異なるループ状のブラシ毛43を有し,固形潤滑剤33にはその最も長いブラシ毛43cのみが接触する。従って,固形潤滑剤33を掻き取る掻き取り力は小さく,適量の潤滑剤を長期にわたって塗布することができる。さらに,感光体21にはすべてのブラシ毛43a,43b,43cが接触するので,比較的強い力で掻き取ることができる。従って,感光体21に付着する残留トナー等を適切に除去することができる。これにより,適量の潤滑剤を長期間にわたり塗布できるとともに,感光体の残留トナー等を適切に除去することができる画像形成装置となっている。
【0045】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,塗布ブラシ32としては,導電性ナイロン繊維のものに限らず,レーヨン,アクリル等の合成繊維のブラシでもよい。あるいは金属繊維でも良い。また,導電性繊維に限らず絶縁性繊維でもよい。また,長さの異なるブラシ毛43で,繊維の種類や太さを異なるものとしても良い。あるいは,植毛密度を異なるものとしても良い。また,本形態では3種類の繊維高さのループ毛を有するものとしたが,2種類または4種類以上の繊維高さのループ毛を有するブラシとしても良い。
【0046】
また,固形潤滑剤33としては,ステアリン酸亜鉛に限らず,ステアリン酸マグネシウム,ステアリン酸リチウム等の各種の脂肪酸金属塩が使用できる。また,タンデム方式のカラー画像形成装置に限らず,複写機,プリンタ,FAX等の画像形成装置またはモノクロの画像形成装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本形態に係る画像形成装置の主要部の概略構成図である。
【図2】本形態に係るイメージングユニットの概略構成図である。
【図3】塗布ブラシの概略断面図である。
【図4】塗布ブラシのブラシ毛の植毛状態の例を示す説明図である。
【図5】塗布ブラシの配置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 画像形成装置
21 感光体
32 塗布ブラシ
33 固形潤滑剤
35 押圧バネ
36 フリッカー
41 シャフト
42 基布
43(43a,43b,43c) ブラシ毛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと,前記シャフトの表面に配置された基布と,前記基布に植設されたループ形状のブラシ毛とを有する塗布ブラシにおいて,
前記ブラシ毛には,前記基布の表面から最外周部までの高さが異なる複数種類のものがあることを特徴とする塗布ブラシ。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布ブラシにおいて,
前記ブラシ毛のループ形状部分の繊維長が,高さの種類により異なることを特徴とする塗布ブラシ。
【請求項3】
像担持体と,固形潤滑剤を掻き取って前記像担持体に塗布する塗布ブラシと,固形潤滑剤を前記塗布ブラシに向かって押圧する押圧部とを有する画像形成装置において,前記塗布ブラシは,
シャフトと,前記シャフトの表面に配置された基布と,前記基布に植設されたループ形状のブラシ毛とを有し,
前記ブラシ毛には,前記基布の表面から最外周部までの高さが異なる複数種類のものがあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において,
前記ブラシ毛のループ形状部分の繊維長が,高さの種類により異なることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像形成装置において,
最小の高さのブラシ毛は,前記像担持体に接触するとともに固形潤滑剤には接触せず,
最大の高さのブラシ毛は,前記像担持体と固形潤滑剤との両方に接触することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において,
前記塗布ブラシにおける,前記像担持体に接触した後で固形潤滑剤に接触する前の位置にて,すべての種類の前記ブラシ毛に接触する異物除去部材を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−233477(P2008−233477A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72207(P2007−72207)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】