説明

塗布具および塗布方法

【課題】刷毛塗りの場合に比べたならば、溶液・溶剤中への浸漬回数を少なくでき、塗布作業性が良く、又、溶液・溶剤中への浸漬回数を少なくできることから、溶液・溶剤が入った容器の蓋を開けたままにすると言ったことが改善でき、例えば溶液・溶剤を床面に零す心配とか、揮発性溶剤の揮散と言ったことを改善でき、又、塗布の均一性にも優れた塗布技術を提供することである。
【解決手段】ケース体と、前記ケース体内に配設された液吸蔵体と、前記ケース体に対して着脱自在な塗布体とを具備した塗布具であって、
前記液吸蔵体は、前記塗布体の前記ケース体からの離脱状態において、該液吸蔵体端部が該ケース体から突出構成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布技術に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤・表面改質剤・塗料・潤滑剤・洗浄剤・その他の種々の剤を塗布することが行われている。尚、これらの塗布に前以って、或る種の溶液・溶剤を塗布することも行われている。例えば、接着性向上の為とか、表面清浄化の為とか、その目的に沿った溶液・溶剤を塗布することが行われる。すなわち、いずれの場合も容器内に充填されている溶液・溶剤中に刷毛を浸け、刷毛に溶液・溶剤を含ませ、そして塗布すると言った手法で行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
さて、刷毛を用いて塗布する手法は非常に厄介である。なぜならば、刷毛が保持する溶液・溶剤の量は多く無い。従って、溶液・溶剤中に刷毛を頻繁に浸けなければならない。これでは作業性が悪い。又、溶液・溶剤中に刷毛を頻繁に浸けなければならないことから、溶液・溶剤の入れられている容器の蓋を、作業中、開けたままにしておく必要が有る。そうすると、何かの拍子に、容器を倒す恐れも有ることから、溶液・溶剤で汚す恐れが有る。又、蓋を開けていることから、溶剤が揮発性の場合には、環境汚染の心配が有る。又、揮発性溶剤が揮散することから、溶質濃度が変動する恐れも有る。又、刷毛による塗布の場合、塗布量の変動が大きい。更には、刷毛で塗布する場合、所謂、ボタ落ちが起きる恐れも有る。
【0004】
従って、本発明が解決しようとする課題は、上記の課題を解決することである。すなわち、刷毛塗りの場合に比べたならば、溶液・溶剤中への浸漬回数を少なくでき、塗布作業性が良い塗布技術を提供することである。又、溶液・溶剤中への浸漬回数を少なくできることから、溶液・溶剤が入った容器の蓋を開けたままにすると言ったことが改善できる塗布技術を提供することである。すなわち、溶剤を床面に零す心配とか、揮発性溶剤の揮散と言ったことを改善できる塗布技術を提供することである。又、塗布の均一性にも優れた塗布技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題は、
ケース体と、前記ケース体内に配設された液吸蔵体と、前記ケース体に対して着脱自在な塗布体とを具備した塗布具であって、
前記液吸蔵体は、前記塗布体の前記ケース体からの離脱状態において、該液吸蔵体端部が該ケース体から突出構成されてなる
ことを特徴とする塗布具によって解決される。
【0006】
又、ケース体と、前記ケース体内に配設された液吸蔵体と、前記ケース体に対して着脱自在な塗布体とを具備した塗布具であって、
前記液吸蔵体は、前記塗布体の前記ケース体からの離脱状態においては、該液吸蔵体端部が該ケース体から突出し、該液吸蔵体突出端部を塗布溶液に浸けた場合、該塗布溶液が該液吸蔵体に含浸するよう構成されてなる
ことを特徴とする塗布具によって解決される。
【0007】
又、好ましくは、上記の塗布具であって、塗布体は、ケース体に対して着脱自在な枠体と、前記枠体に配設された塗布部材とを具備してなり、
前記塗布体が前記ケース体に装着された場合、液吸蔵体端部が前記塗布部材に接続されるよう構成されてなる
ことを特徴とする塗布具によって解決される。
【0008】
又、好ましくは、上記の塗布具であって、塗布体の塗布部材と液吸蔵体とは別体であり、
(前記塗布部材の空隙率)≦(前記液吸蔵体の空隙率)を満たすよう構成されてなり、
塗布に伴って、前記液吸蔵体に含浸されている塗布溶液が前記塗布部材側に移行するようになることを特徴とする塗布具によって解決される。
【0009】
又、好ましくは、上記の塗布具であって、液吸蔵体は長手状繊維が束ねられたものであり、
液吸蔵体における空隙が、主として、長手方向に沿ったものである
ことを特徴とする塗布具によって解決される。
【0010】
又、好ましくは、上記の塗布具であって、塗布体の塗布部材の空隙は略等方的である
ことを特徴とする塗布具によって解決される。
【0011】
又、ケース体に装着されている塗布体を取り外し、該ケース体に内蔵の液吸蔵体の端部を該ケース体から露出させる液吸蔵体端部露出工程と、
前記液吸蔵体端部露出工程によってケース体外に突出している液吸蔵体端部を塗布溶液中に浸け、該塗布溶液を該液吸蔵体に含浸させる液吸蔵体端部浸漬工程と、
前記液吸蔵体端部浸漬工程の後、塗布体をケース体に装着し、該塗布体の塗布部材と前記液吸蔵体とを接続する塗布体装着工程と、
前記塗布体装着工程の後、前記塗布体の塗布部材を塗布部に当てて塗布作業を行う塗布工程
とを具備することを特徴とする塗布方法によって解決される。
【0012】
又、上記の塗布具を用いる塗布方法であって、
ケース体に装着されている塗布体を取り外し、該ケース体に内蔵の液吸蔵体の端部を該ケース体から露出させる液吸蔵体端部露出工程と、
前記液吸蔵体端部露出工程によってケース体外に突出している液吸蔵体端部を塗布溶液中に浸け、該塗布溶液を該液吸蔵体に含浸させる液吸蔵体端部浸漬工程と、
前記液吸蔵体端部浸漬工程の後、塗布体をケース体に装着し、該塗布体の塗布部材と前記液吸蔵体とを接続する塗布体装着工程と、
前記塗布体装着工程の後、前記塗布体の塗布部材を塗布部に当てて塗布作業を行う塗布工程
とを具備することを特徴とする塗布方法によって解決される。
【発明の効果】
【0013】
ケース体と該ケース体内に配設された液吸蔵体と該ケース体に対して着脱自在な塗布体とを具備した塗布具における液吸蔵体の端部をケース体から突出構成させたので、塗布体をケース体から取り外せば、ケース体から突出している液吸蔵体を溶液・溶剤中に浸漬できるようになる。すなわち、溶液・溶剤を液吸蔵体に簡単に含ませることが出来る。そして、溶液・溶剤を、たっぷり、液吸蔵体に含ませることが出来るので、刷毛塗りの場合に比べて、塗布を連続して行える時間が長くなる。よって、塗布作業性が良い。又、溶液・溶剤容器の蓋を閉じておくことが出来るから、塗布作業に際しては蓋を開けたままにしておくことから生ずる問題点をかなり改善できる。又、刷毛塗りの場合のようなボタ落ちが改善される。そして、塗布が上手く行える。
【0014】
又、ケース体に、直接、溶液・溶剤を入れるに過ぎない場合、注ぎ込む量が少なければ、注ぎ込む回数が増え、又、注ぎ込む量が多ければ、所謂、溶液・溶剤のボタ落ちが起き易い。かつ、ケース体内に溶液を注ぎ込む作業性が良くない。例えば、零すことも多い。従って、この点からも、液吸蔵体に吸い込ませる方式の本発明は好ましいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は塗布具である。この塗布具は、ケース体を具備する。又、前記ケース体内に配設された液吸蔵体(例えば、所謂、中綿)を具備する。又、前記ケース体に対して着脱自在な塗布体とを具備する。そして、前記液吸蔵体は、前記塗布体の前記ケース体からの離脱状態において、該液吸蔵体端部が該ケース体から突出構成されたものである。特に、前記液吸蔵体は、前記塗布体の前記ケース体からの離脱状態においては、該液吸蔵体端部が該ケース体から突出し、該液吸蔵体突出端部を塗布溶液に浸けた場合、該塗布溶液が該液吸蔵体に含浸するよう構成されたものである。尚、塗布体は、好ましくは、ケース体に対して着脱自在な枠体と、前記枠体に配設された塗布部材とを具備する。このように構成させることによって、塗布部材が損傷した場合に、簡単に、交換できる。そして、このような構成とさせた場合、前記塗布体が前記ケース体に装着された場合、該ケース体外に突出の液吸蔵体端部が前記塗布部材に接続されるよう構成させておくことが好ましい。すなわち、液吸蔵体に含浸されている塗布溶液が液吸蔵体から塗布部材側にスムーズに移行するように、液吸蔵体と塗布部材とが繋がっていることが好ましい。尚、この繋がっているとは、塗布溶液が液吸蔵体側から塗布部材側に移行できる程度のものであれば良い。従って、例えば光学顕微鏡で界面を観察したならば、液吸蔵体と塗布部材との界面に隙間が認められることを妨げるものでは無い。つまり、塗布部材と液吸蔵体とを別体で構成しても差し支え無い。と言うよりも、別体のものが好ましい。塗布部材と液吸蔵体とは、同一素材で構成させることも出来る。しかしながら、塗布に伴って、液吸蔵体に含まれている溶液が、液吸蔵体から塗布部材側に、スムーズに移行することが好ましい。斯かる作用を奏させる為には、(前記塗布部材の空隙率)≦(前記液吸蔵体の空隙率)を満たすことが好ましい。特に、(前記塗布部材の空隙率)<(前記液吸蔵体の空隙率)を満たすことが好ましい。例えば、液吸蔵体は、空隙率が50〜95%(より好ましくは、75〜90%。中でも、78〜88%)の材料で構成させる。このように、空隙率が大きな材料を用いることで、液吸蔵体に、塗布しようとする溶液を大量に保持させることが出来る。これに対して、塗布部材は、空隙率が30〜80%(より好ましくは、45〜75%)の材料で構成させる。勿論、(塗布部材の空隙率)≦(液吸蔵体の空隙率)である。特に、(前記塗布部材の空隙率)<(前記液吸蔵体の空隙率)である。そして、斯くの如くに構成させることで、塗布溶液を、液吸蔵体から塗布部材側にスムーズに移行させることが出来る。液吸蔵体は、例えばポリエステルの如きの耐溶剤性に優れた繊維、特に長手状繊維を束ねることによって構成されたものである。例えば、長手状繊維を柱状に束ねることで構成されたものである。これによって、繊維間に空隙が構成される。特に、長手方向に沿って連続した隙間が構成されたものを提供できる。そして、斯かる液吸蔵体は、その一端部を溶液中に浸漬したならば、毛細管現象によって、溶液が液吸蔵体の中に吸い上げられる。そして、溶液が大量に液吸蔵体に保有されるものとなる。塗布部材は、例えばポリエステルの如きの耐溶剤性に優れた材料で構成される。但し、塗布部材は、液吸蔵体に比べたならば、密な素材であるが、吸蔵体のように一方向に沿って空隙が存在する必要性はなく、空隙は略等方的でも良い。つまり、ポリエステル繊維にほぼ等方的な圧力を加えて成形したものでも、穂先のようにブリッスルを用いた非等方的な物でも良い。これは、液吸蔵体にあっては、含まれる溶液・溶剤が、後端部側(塗布部材から遠い側)から先端部側(塗布部材に近い側)に向かって(長手方向に沿って)スムーズに移行できることが好ましい。これに対して、塗布部材にあっては、液吸蔵体のように溶液・溶剤の吸入・保持・吐出性能が優先されるものではない。しかしながら、前記と同一の方向(前後方向)と言うだけでは無く、溶液を綺麗に塗布する為には、溶液が横方向にも拡がることが好ましい。従って、この意味で、空隙が略等方的であることが好ましいのである。しかしながら、液吸蔵体にあっては、この横方向(長手方向に垂直な方向)に溶液が拡がる必要は無い。寧ろ、液吸蔵体にあっては、溶液は長手方向に移行できるのみの方が効率的である。従って、液吸蔵体は、長手状繊維を束ねて構成したものを好ましいとした。
【0016】
本発明は、また、塗布方法である。この塗布方法は、ケース体に装着されている塗布体を取り外し、該ケース体に内蔵の液吸蔵体の端部を該ケース体から露出させる液吸蔵体端部露出工程を具備する。又、前記液吸蔵体端部露出工程によってケース体外に突出している液吸蔵体端部を塗布溶液中に浸け、該塗布溶液を該液吸蔵体に含浸させる液吸蔵体端部浸漬工程を具備する。又、前記液吸蔵体端部浸漬工程の後、塗布体をケース体に装着し、該塗布体の塗布部材と前記液吸蔵体とを接続する塗布体装着工程を具備する。又、前記塗布体装着工程の後、前記塗布体の塗布部材を塗布部に当てて塗布作業を行う塗布工程を具備する。そして、本塗布方法は、上記塗布具を用いないでも可能である。しかしながら、好ましくは、上記塗布具を用いての塗布方法である。
【0017】
以下、更に詳しく説明する。
【0018】
図1〜図4は本発明になる塗布具の一実施形態を示すもので、図1はキャップを取り外した状態(但し、塗布体装着状態)における塗布具の斜視図、図2は塗布体取り外し状態での斜視図、図3は中綿(液吸蔵体)をプライマー溶液中に浸漬し、プライマー溶液を中綿(液吸蔵体)の中に含浸させる状態での斜視図、図4は中綿(液吸蔵体)の斜視図である。
【0019】
各図中、1は、例えば円筒状の筒体(ケース体)である。この筒体1は耐溶剤性に富む材料で構成されている。例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂などの熱硬化性樹脂で構成される。或いは、例えばPOM(ポリアセタール樹脂),PBT(ポリブチレンテレフタレート樹脂),PA(ポリアミド樹脂),PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂),LCP(液晶樹脂),FR(フッ素樹脂)等の熱可塑性樹脂で構成される。又は、例えばアルミニウム、真鍮、或いはステンレス等の金属で構成される。尚、この筒体1の深さ寸法はaである。そして、ケース体1の上部開口部の近傍には螺旋状の螺子溝が構成されている。
【0020】
2は中綿(液吸蔵体)である。この中綿2は、例えば長手状のポリエステル繊維が柱状(例えば、円柱状)に束ねられて構成されたものである。尚、ポリエステル繊維に限られず、耐溶剤性に富む繊維であるならば、如何なるものでも良い。そして、繊維を束ねて構成したものであるが故に、中綿2は、各繊維間に空隙(長手方向に沿った空隙)が多く構成されている。例えば、空隙率は78〜88%である。尚、この空隙率は、乾燥させた中綿2を水の中に入れ、中綿2の吸水量を求めることによって得られたものである。さて、中綿2の長さは(a+b)である。尚、bは、例えば0.5〜3cm程度のものである。勿論、これに限られるものでは無いが、実用的には、これ位の程度である。従って、中綿2が筒体1内に挿入された場合、図2から判る通り、中綿2の上端部は筒体1の開口部からbの長さだけ突出していることになる。従って、この突出した中綿2の先端部2aを溶液中に浸けたならば、毛細管現象によって、溶液が中綿2の中に吸い込まれる。そして、中綿2は、吸い込んだ溶液を空隙部で保持することになる。
【0021】
3は、筒体1と4の塗布体とのシール性を確保すると同時に、筒体1内に挿入されている中綿2を保持する為のパッキンである。勿論、このパッキン3も、耐溶剤性に富む弾性材で構成されている。例えば、シリコンゴム等で構成されている。そして、図3に示される如く、中綿先端部2aをプライマー溶液中に浸漬する為、中綿先端部2a(筒体1の開口部)側を下側に向けても、パッキン3の機能によって、中綿2が抜け落ちることの無いようになっている。勿論、中綿2の外径と筒体1の内径とを同程度の寸法とすることによって、抜け落ち防止を図ることが出来る。しかしながら、中綿2の外径と筒体1の内径とが同程度であると、溶液の吸液に伴い、筒体1内と筒体1外との空気流通が阻害され易くなり、吸液速度・吸液量・吐出量等に悪影響を及ぼす場合がある。従って、筒体1の内径は中綿2の外径よりも大きく設定することが好ましい。そして、このままでは、図3の如くにすると、中綿2が抜け落ちることから、中綿2を保持できるようにしたパッキン3を設けたのである。勿論、パッキン3の代わりに、適宜な中綿抜落防止部材が設けられても良い。
【0022】
4は塗布体である。この塗布体4は、筒体1に着脱自在に取り付けられる枠体4aと、枠体4aに嵌め込まれた直方体形状の塗布部材4bとで構成されている。尚、枠体4aは、本実施形態にあっては、耐溶剤性に富む樹脂で成形されたものである。そして、枠体4aを筒体1に着脱自在なものとする為、枠体4aの内壁部には筒体1の螺旋状螺子溝に螺合する螺旋状螺子溝が構成されている。
【0023】
直方体形状の塗布部材4bは、枠体1の先端部から0.5〜2cm程度突出しているように枠体4aに嵌め込まれたものである。又、図1の如く、塗布体4が筒体1に装着された状態にあっては、塗布部材4bの下端面(後端面)と筒体1から突出している中綿2の上端面(先端面)とが面接合しているように嵌め込まれたものである。従って、毛細管現象によって中綿2の内部空隙部に吸液されている溶液が塗布部材4b側に移行できるようになっている。そして、この移行をスムーズならしめる為、かつ、塗布作業性を向上せしめる為、塗布部材4bの空隙率が中綿2の空隙率よりも小さなものとしている。従って、塗布に伴って、中綿2が保持している溶液が、中綿2から塗布部材4b側にスムーズに移行する。尚、本実施形態にあっては、塗布部材4bは、例えばポリエステル繊維などの繊維を直方体形状に圧縮成形し、空隙率が45〜75%のものとした。そして、空隙率が45〜75%の直方体形状のものに圧縮成形した為、塗布部材4bの内部空隙は略等方的なものとなっている。すなわち、中綿2の空隙は中綿2の長手方向に沿って構成されているのに対して、塗布部材4bの空隙は略等方的なものとなっている。従って、中綿2にあっては、液は、主として、長手方向に沿って移行するものであるが、塗布部材4bにあっては、前後方向(前記長手方向と同じ方向)のみで無く、横方向(前記前後方向に対して垂直な方向)にも、液が移行する。すなわち、中綿2から塗布部材4bに毛細管現象によって移行して来た液は、横にも拡散して拡がり、塗布部材4bの先端面に大きなムラ無く伝わって行く。
【0024】
5は、枠体4aと塗布部材4bとの間に設けられた孔である。尚、孔5は、枠体4aと塗布部材4bとの間では無く、枠体4aそのものに設けられても良い。或いは、筒体1に設けられても良い。すなわち、孔5は、内外の気圧差を無くして塗布作業性を良好なものとする為に設けられるものであるから、孔形成位置に格別な制約は無い。尚、孔5を設けるが故に、溶液を中綿2に保持させなかった場合には、孔5から溶液が出てしまうようになる。従って、この点からも、中綿2は大きな意味を持つ。
6はキャップである。
【0025】
上記塗布具を用いての塗布は次のようにして行われる。
先ず、塗布体4を筒体1から取り外す。尚、キャップ6を取り外した後で塗布体4を筒体1から取り外しても良いが、キャップ6と塗布体4とが一体のままで塗布体4を筒体1から取り外しても良い。そして、塗布体4の取り外しで筒体1から露出した中綿2の先端部2aを、図3に示す如く、溶液中に浸漬する。これによって、中綿2に溶液が毛細管現象で含浸して行く。含浸終了後、図1に示す如く、塗布体4を筒体1に取り付ける。これによって、中綿2に含浸されている溶液は毛細管現象によって塗布部材4bに移行して行く。この後、溶液を塗布しようとする箇所に塗布部材4bを当てることで塗布が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態になる塗布具のキャップ取外状態での斜視図
【図2】本発明の実施形態になる塗布具の塗布体取外状態での斜視図
【図3】本発明の実施形態になる塗布具の液吸蔵体への溶液含浸時の斜視図
【図4】本発明の実施形態になる塗布具の液吸蔵体の斜視図
【符号の説明】
【0027】
1 筒体(ケース体)
2 中綿(液吸蔵体)
2a 中綿先端部
3 パッキン(中綿抜落防止部材)
4 塗布体
4a 枠体
4b 塗布部材
5 孔
6 キャップ

代 理 人 宇 高 克 己


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース体と、前記ケース体内に配設された液吸蔵体と、前記ケース体に対して着脱自在な塗布体とを具備した塗布具であって、
前記液吸蔵体は、前記塗布体の前記ケース体からの離脱状態において、該液吸蔵体端部が該ケース体から突出構成されてなる
ことを特徴とする塗布具。
【請求項2】
ケース体と、前記ケース体内に配設された液吸蔵体と、前記ケース体に対して着脱自在な塗布体とを具備した塗布具であって、
前記液吸蔵体は、前記塗布体の前記ケース体からの離脱状態においては、該液吸蔵体端部が該ケース体から突出し、該液吸蔵体突出端部を塗布溶液に浸けた場合、該塗布溶液が該液吸蔵体に含浸するよう構成されてなる
ことを特徴とする塗布具。
【請求項3】
塗布体は、ケース体に対して着脱自在な枠体と、前記枠体に配設された塗布部材とを具備してなり、
前記塗布体が前記ケース体に装着された場合、液吸蔵体端部が前記塗布部材に接続されるよう構成されてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の塗布具。
【請求項4】
塗布体の塗布部材と液吸蔵体とは別体であり、
(前記塗布部材の空隙率)≦(前記液吸蔵体の空隙率)を満たすよう構成されてなり、
塗布に伴って、前記液吸蔵体に含浸されている塗布溶液が前記塗布部材側に移行するようになることを特徴とする請求項1〜請求項3いずれかの塗布具。
【請求項5】
液吸蔵体は長手状繊維が束ねられたものであって、
液吸蔵体における空隙が、主として、長手方向に沿ったものである
ことを特徴とする請求項1〜請求項4いずれかの塗布具。
【請求項6】
塗布体の塗布部材の空隙は略等方的である
ことを特徴とする請求項1〜請求項5いずれかの塗布具。
【請求項7】
請求項1〜請求項6いずれかの塗布具を用いる塗布方法であって、
ケース体に装着されている塗布体を取り外し、該ケース体に内蔵の液吸蔵体の端部を該ケース体から露出させる液吸蔵体端部露出工程と、
前記液吸蔵体端部露出工程によってケース体外に突出している液吸蔵体端部を塗布溶液中に浸け、該塗布溶液を該液吸蔵体に含浸させる液吸蔵体端部浸漬工程と、
前記液吸蔵体端部浸漬工程の後、塗布体をケース体に装着し、該塗布体の塗布部材と前記液吸蔵体とを接続する塗布体装着工程と、
前記塗布体装着工程の後、前記塗布体の塗布部材を塗布部に当てて塗布作業を行う塗布工程
とを具備することを特徴とする塗布方法。
【請求項8】
ケース体に装着されている塗布体を取り外し、該ケース体に内蔵の液吸蔵体の端部を該ケース体から露出させる液吸蔵体端部露出工程と、
前記液吸蔵体端部露出工程によってケース体外に突出している液吸蔵体端部を塗布溶液中に浸け、該塗布溶液を該液吸蔵体に含浸させる液吸蔵体端部浸漬工程と、
前記液吸蔵体端部浸漬工程の後、塗布体をケース体に装着し、該塗布体の塗布部材と前記液吸蔵体とを接続する塗布体装着工程と、
前記塗布体装着工程の後、前記塗布体の塗布部材を塗布部に当てて塗布作業を行う塗布工程
とを具備することを特徴とする塗布方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−12387(P2010−12387A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173058(P2008−173058)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000204608)大下産業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】