塗布具
【課題】製造が容易であり部品の強度が高く、初期使用するとき(初めてインキタンクからインキ吸蔵体へインキを供給するとき)に素早く筆記可能である塗布具を提供することである。
【解決手段】充填した塗布液7が内部流動可能な塗布液収容部3と、塗布液7を塗布するための塗布体6とを有し、塗布液収容部3と塗布体6の間に塗布液7を含浸する塗布液吸蔵体4を備え、塗布液収容部3と塗布液吸蔵体4の間に塗布液7を流通可能な流路を有する流路形成部5を備えた塗布具1に対し、前記流路形成部5に1つの突出部11を設け、突出部11の内部に中空部分21を設け、突出部11に中空部分21と連通する孔を2つ以上設ける。
【解決手段】充填した塗布液7が内部流動可能な塗布液収容部3と、塗布液7を塗布するための塗布体6とを有し、塗布液収容部3と塗布体6の間に塗布液7を含浸する塗布液吸蔵体4を備え、塗布液収容部3と塗布液吸蔵体4の間に塗布液7を流通可能な流路を有する流路形成部5を備えた塗布具1に対し、前記流路形成部5に1つの突出部11を設け、突出部11の内部に中空部分21を設け、突出部11に中空部分21と連通する孔を2つ以上設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵された塗布液をペン先等の塗布体に供給する塗布具に関するものであり、より詳細には、塗布体への塗布液の供給量を安定させるための塗布液供給手段を有する塗布具に関するものである。
なお、本明細書における塗布具とは、フェルトペン、万年筆、ラインマーカー、白板マーカー等の筆記具だけに限らず、例えば、修正ペンのような液状のものを紙面や白板等の任意の対象物に塗り付ける用具を含むものの総称として使用している。
【背景技術】
【0002】
ペン先(塗布体)に塗布液を安定して供給するための塗布液供給手段として、ペン先とインキタンクとの間にインキ(塗布液)を含浸することのできる中綿(塗布液吸蔵体)を設ける技術が知られている。この技術によると余剰なインキを中綿が吸収するので、ペン先にインキが供給されすぎることがない。またペン先でインキが不足した場合に、中綿に吸収されたインキがペン先に供給されるため、インキの供給不足を防ぐことができる。そのことにより、ペン先にインキを安定して供給することができる。
【0003】
この技術を用いた塗布具として、例えば、特許文献1に開示されている直液式筆記具がある。この直液式筆記具は、所謂無操作型筆記具といわれる筆記具である。無操作型筆記具とは、ペン先やペン軸をノックするといったインキ供給のための操作をすることなく、ペン先にインキを供給することができる筆記具である。特許文献1に記載の発明では、この直液式筆記具のインキタンクとインキ吸蔵体(塗布液吸蔵体)の間を接続する連通管を複数用いることにより、外気とインキの流路を分別している。そのことにより外気とインキの交替が迅速に行えるため、初期使用するとき(初めてインキタンクからインキ吸蔵体へインキを供給するとき)に筆記可能となるまでの時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明では、その構造上必ず複数の連通管が必要になる。そのことにより1つの連通管を設ける場合に比べて、連通管の太さや厚さ等の設計上の制限が大きくなってしまうという問題があり、加えて部品の成形が煩雑になるという問題がある。さらに、2つ以上の連通管が組になって作用するため、いずれかの連通管が突発的に損傷してしまった場合、筆記具が機能しなくなってしまうという可能性がある。
また、特許文献1のような2つ以上の連通管を設けた塗布具では、筆記具本体に直接連通管を一体に設ける場合、複数の連通管を設置するために本体の径を太くしなければならないという設計上の制約があった。
さらにまた、特許文献1のように複数の連通管の先端を中綿(インキ吸蔵体)に挿し込んで使用する場合、分解後の組み立てが困難であるという問題があった。即ち、部材の交換や塗布液の補充等のために各連通管を中綿から一度外してしまうと、再び組み立てる際に、それぞれの連通管が元の位置に挿しこまれるように位置合わせして挿し込まねばならず、組み立てが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、無操作型の塗布具において、製造が容易であって、且つ部品の強度を高くすることが可能であり、初期使用するとき(初めてインキタンクからインキ吸蔵体へインキを供給するとき)に素早く筆記可能である塗布具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、充填した塗布液が内部流動可能な塗布液収容部と、塗布液を塗布するための塗布体とを有し、塗布液収容部と塗布体の間に塗布液を含浸する塗布液吸蔵体を備え、塗布液収容部と塗布液吸蔵体の間に塗布液を流通可能な流路を有する流路形成部が設けられた塗布具であって、前記流路形成部は1つの突出部を有し、突出部は塗布体側に向かって突出するものであり、突出部には内部に中空部分を有し、中空部分と連通する連通孔が2つ以上設けられていることを特徴とする塗布具である。
【0008】
請求項1に記載の発明では、塗布液収容部(インキタンク)と塗布液吸蔵体(中綿)の間に内部に中空部分を有する1つの突出部(連通管)があり、突出部が内部の中空部分と連通する2つ以上の連通孔を有している。
本発明は、塗布液収容部と塗布液吸蔵体を接続する突出部(連通管)が1つのみとなっている。そのため、複数の連通管を作成する場合に比べて連通管の設計における自由度が高く、例えば径が大きく強度の高い連通管を成形することができる。そのことにより、径が小さな連通管では使用が困難であったインキ(例えば表面張力の高いインキ)が使用可能となるため、塗布具に多種多様な塗布液を採用することができる。またこの場合、連通管が壊れにくく突発的な故障が発生し難いという利点もある。
さらには、連通管を複数設ける場合に比べて突出部(連通管)の基端部分の径を細く成形することができる。そのことにより、突出部を本体部材と別々に形成した場合はより軸径の細い本体部材に取り付け可能であり、突出部を本体部材と一体に形成した場合は本体部材そのものの軸径を細くすることができる。即ち、本発明は塗布具の本体軸径をより細くできるという利点がある。
さらに、中空部分と連通する2つ以上の連通孔を有しているので、それぞれ異なる孔からインキの排出や外気の導入が可能であり、塗布具収容部でのインキと外気の交替を迅速に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記突出部が塗布液吸蔵体と接触していることを特徴とする請求項1に記載の塗布具である。
【0010】
本発明では、連通管たる突出部が塗布液吸蔵体に接触するため、突出部に設けた前記孔の開口を塗布液吸蔵体が覆うように配置できる。そのことにより、塗布液吸蔵体の毛細管力によって塗布液が引き寄せられ、連通管からの塗布液の時間当たりの流出量が安定する。即ち、連通管の先端で塗布液の表面張力により塗布液の流れが滞るという事態が発生しない。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記連通孔の少なくとも一つが突出部の先端近傍に設けられており、当該連通孔より突出部の基端側に他の連通孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具である。
【0012】
本発明では、先端側に設けた連通孔と他の連通孔の間に突出部の突出方向(突出部の軸方向)に距離を設けている。そのため、各連通孔の突出部の突出方向の距離が同じ場合と比べて、インキの供給のための連通孔と外気の導入のための連通孔を離れた位置に設けることができるので、より確実に外気の導入を行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記流路形成部は、押圧部を有しており、前記押圧部の少なくとも一部は塗布液吸蔵体に上方から接触していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具である。
【0014】
本発明では、流路形成部が押圧部を有し、押圧部の少なくとも一部が塗布液吸蔵体に上方から接触している。このことにより、塗布液吸蔵体の上方部分が押圧部に押圧され、塗布液吸蔵体の下端近傍に空隙率が低下した部分が形成される。つまり、塗布液吸蔵体の上端近傍は比較的空隙率が高い低密度部分となり、下端近傍は比較的空隙率が低い高密度部分となる。このように塗布液吸蔵体の上端部分と下端部分の間で密度差が形成されると、塗布液吸蔵体の上端近傍に比べて、塗布液吸蔵体の下端近傍の毛細管力が強くなる。
このことにより、インキの粘度が高い場合や、連通管の孔径が小さい場合のようにインキが自重のみでは下方へ移動しない場合であっても、毛細管力によってインキを塗布液吸蔵体へと引き込み、塗布液吸蔵体に引き込んだインキをさらに下方へと確実に移動させることができる。つまり、ペン先へのインキの供給をより安定させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の塗布具である。
【0016】
本発明では、記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置している。そのため、押圧部が連通孔と塗布液吸蔵体との接触を阻害することがなく、連通孔と塗布液吸蔵体とをより確実に接触させることができる。
具体的に説明すると、押圧部の下端が連通孔の下方にある場合や、押圧部の下端と連通孔との高さ方向の位置が同じ場合、押圧部が突出部から離れる方向へ塗布液吸蔵体を押圧することにより、突出部に形成された連通孔と塗布液吸蔵体の接触が妨げられるおそれがある。しかしながら、本発明では押圧部が連通孔の上方にあるため、突出部の下方側に位置する塗布液吸蔵体と連通孔との接触を阻害することがない。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記流路形成部は土台部と突出部から形成されており、土台部と突出部は径の異なる円筒状であって、それぞれの中心部分を連通する中空孔を有し、突出部の先端の円形面と、側面の先端近傍にそれぞれ前記中空孔と連通する孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布具である。
【0018】
本発明によると、塗布具本体に取り付けやすく製造が容易であって強度が高い突出部(連通管)を有する塗布具を提供することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記押圧部は、前記突出部の側面から外方へ向かって略垂直に突出する平板状の突起であり、突出部の突出方向の基端部分から先端部分の近傍まで延びるものであって、前記突出部の側面の先端近傍に形成された連通孔の中心軸は、前記押圧部の突出方向と略平行に延びていることを特徴とする請求項6に記載の塗布具である。
【0020】
本発明によると、強度の高い押圧部を有し、製造が容易な突出部(連通管)を有する塗布具を提供することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、塗布液吸蔵体の一部が前記流路形成部の内部に配されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の塗布具である。
【0022】
本発明によると、流路形成部の内部に塗布液吸蔵体の一部が配されている。このことにより、インキの粘度が高い場合や、突出部の径が小さい場合のようにインキが自重のみで下方の放出口まで移動しない場合であっても、流路形成部の内部に位置する塗布液吸蔵体にインキが接触すれば、塗布液吸蔵体の毛細管力によってインキをより下方へ移動させることができる。即ち、確実にインキを塗布液吸蔵体側へ移動させることができ、インキの供給を安定させることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、前記流路形成部と塗布液収容部とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布具である。
【0024】
本発明によると、流路形成部と塗布液収容部とが一体に形成されているため、塗布液が塗布液収容部に充填された状態の流路形成部を、以前の流路形成部と交換するだけで塗布液の補充が可能である。したがって、塗布具本体内の塗布液収容部にスポイトのような別部材を使用して塗布液を補充する場合に比べ、塗布液の補充作業が容易である。
また、流路形成部と塗布液収容部を一体に形成して部品点数を少なくした場合、製造コストの低減や組立の簡易化ができるという利点もある。
【0025】
請求項10に記載の発明は、前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布具である。
【0026】
本発明によると、前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であるため、塗布液収容部を交換するたけで塗布液の補充が可能である。したがって、塗布具本体内の塗布液収容部にスポイトのような別部材を使用して塗布液を補充する場合に比べ、塗布液の補充作業が容易である。
【0027】
請求項11に記載の発明は、塗布液収容部は、下方に外部と内部空間とを連通する収容部側貫通孔が設けられており、前記流路形成部は、土台部と突出部から形成され、前記土台部には筒状部が形成されており、筒状部は前記突出部の中空部分と連通するものであって、前記流路形成部と塗布液収容部を取付けたとき、収容部側貫通孔と筒状部とが連通することを特徴とする請求項10に記載の塗布具である。
【0028】
請求項11の構成によると、前記流路形成部と塗布液収容部の着脱がより容易となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、製造が容易であって部品の強度を高く設計できるという効果がある。また、初期使用するときに素早く筆記可能にできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態の塗布具を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態で使用する中継芯を天地逆にして示す斜視図である。
【図3】図2の中継芯のA−A断面図である。
【図4】第1の実施形態の塗布具において中綿配置部にインキが満たされていく様子を示す説明図であり、(a)〜(d)の順にインキが満たされていく。
【図5】第1の実施形態の塗布具において中綿配置部に充填されたインキが減少し、再びインキタンクからインキが充填される際のインキの液位(水位)を示す説明図であり、(a)は中綿配置部にインキが充填されている様子を示し、(b)は中綿配置部のインキが減少した状態を示し、(c)は中綿配置部にインキが再び充填されている様子を示す。
【図6】本発明の第2の実施形態の中継芯を用いた塗布具の中綿配置部にインキが満たされていく様子を示す説明図であり、(a)〜(d)の順にインキが満たされていく。
【図7】本発明の第3の実施形態の塗布具を示す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【図9】本発明の第5の実施形態の突出部を有する中継芯を示す斜視図である。
【図10】本発明の第6の実施形態の突出部を有する中継芯を示す斜視図である。
【図11】本発明の第7の実施形態の突出部を有する中継芯を示す斜視図である。
【図12】(a)〜(m)は各々図2とは異なる形態の中継芯に形成する孔の開口形状を示す説明図である。
【図13】本発明の第8の実施形態の塗布具を示す断面図である。
【図14】本発明の第8の実施形態で使用する中継芯を天地逆にして示す斜視図である。
【図15】図14の中継芯をA方向からみた平面図である。
【図16】図14の中継芯のB−B断面図である。
【図17】本発明の第8の実施形態で使用するインキタンク部を示す斜視図である。
【図18】図17のインキタンク部のA−A断面図である。
【図19】本発明の第8の実施形態の塗布具を示す断面図であり、内部にインキがない状態を示す。
【図20】図13の中継芯とインキタンク部を接続するときの様子を中継芯を一部破断させて示す説明図であり、(a)〜(b)の順に接続する。
【図21】第8の実施形態の塗布具において中綿配置部にインキが満たされていく様子を示す説明図であり、(a)〜(d)の順にインキが満たされていく。
【図22】第8の実施形態の塗布具において中綿配置部に充填されたインキが減少し、再びインキタンクからインキが充填される際のインキの液位(水位)を示す説明図であり、(a)は中綿配置部にインキが充填されている様子を示し、(b)は中綿配置部のインキが減少した状態を示し、(c)は中綿配置部にインキが再び充填されている様子を示す。
【図23】本発明の第9の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【図24】本発明の第10の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下さらに、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において「前後」の関係はペン先側を前側、インキタンク側を後側として説明する。
本発明の第1の実施形態の塗布具1は具体的には白板用マーカーであり、図1に示されるように、本体筒2、中綿4(塗布液吸蔵体)、中継芯5(流路形成部)、ペン先6(塗布体)から形成されている。そして、本体筒2の内側の中空部分は中継芯5によって前後に仕切られており、中継芯5より後側の部分にインキ7(塗布液)を貯留することができるインキタンク3(塗布液収容部)が形成され、中継芯5より前側の部分には中綿配置部8が形成されている。
【0032】
本体筒2はポリプロピレン等の樹脂やニオブ等の金属といった適宜な材料によって形成された筒体である。この本体筒2は先端部分28と後端部分29から形成されており、先端部分28と後端部分29はねじによって着脱自在に取り付けられている。先端部分28は外観が前側に向かうにつれて先細りになった形状となっている。また、先端部分28の内部には長手方向に連通している空間30があり、この空間30も前側に向かうにつれて先細りになっている。
【0033】
中綿4は、公知の中綿であって、インキ7を含浸可能な連続気孔を有している部材である。より詳細にはアクリル繊維等の適宜な繊維で形成されており、内部にインキ7を含浸することができる。
【0034】
中継芯5は、本実施形態の特徴的構成部材であり、以下詳細に説明する。
中継芯5はポリプロピレンやポリアセタール等の合成樹脂や金属等の適宜な材料によって形成されるものである。また図2に示されるように、中継芯5は突出部11と土台部12から形成されている。突出部11と土台部12の外観は共に円柱状であって、突出部11の径は土台部12の径より小さくなっている。そして、突出部11の端部と土台部12の端部は2つの円柱を積み重ねるように段差を有して連続しており、突出部11と土台部12の中心軸は同じとなるように配置されている。具体的には、土台部12の長手方向に垂直な面(図2における上面)25と、突出部11の片側端部の側面が接続されている。
つまり、中継芯5の外観は2つの円柱を積み重ねたような形状であり、土台部12の面25の中心部分近傍から突出部11が突出している。なお、このとき突出部11の突出方向は土台部12の面25と垂直な方向である。
【0035】
また、突出部11には第1の孔13(連通孔)と第2の孔14(連通孔)の2つの孔が設けられている。
【0036】
第1の孔13は突出部11の突出方向先端にある円形の面24(図2における上面であり、突出部11が土台部12と接触している面に対向する位置にある面)に設けられている。そして、第1の孔13は開口形状が円形であって、開口の中心が突出部11の中心軸と重なっている。この第1の孔13の径の大きさは特に限定されるものではないが、2mm〜7mmであることが望ましく、より好適には2.5mm〜3.0mmであることが望ましく、さらに好適には3.0mmであることが望ましい。そして、第1の孔13の開口の面積は3.14mm2(平方ミリメートル)〜38.47mm2(平方ミリメートル)であることが望ましく、さらに好適には4.9mm2(平方ミリメートル)〜7.07mm2(平方ミリメートル)であることが望ましい。
【0037】
第2の孔14は突出部11の側面に設けられており、さらに詳細には、突出部11の突出方向の先端近傍(土台部12と反対側に位置する端部)に設けられている。そして、第2の孔14も第1の孔13と同じく開口形状が円形となっている。この第2の孔14の径の大きさは特に限定されるものではないが1.0mm〜5.0mmであることが望ましく、さらに好適には1.0mmであることが望ましい。そして、第2の孔14の開口の面積は0.79mm2(平方ミリメートル)〜19.63mm2(平方ミリメートル)であることが望ましく、さらに好適には0.79mm2(平方ミリメートル)〜7.07mm2(平方ミリメートル)であることが望ましい。さらに、突出部11の先端部分から第2の孔の中心までの距離(図2におけるX1)も特に限定されるものではないが、2.0mm〜7.0mmであることが望ましく、さらに好適には3.0mmであることが望ましい。
ここで、第2の孔14が突出部11の側面であるので、第1の孔13と第2の孔14の開口の方向は垂直となっている。また、第2の孔14が突出部11の突出方向の先端近傍に設けられているので、第1の孔13と第2の孔14は突出部11の突出方向(突出部11の軸方向)において近い位置にある。
【0038】
次に中継芯5の内部構造について説明する。図3で示されるように突出部11と土台部12はそれぞれ内部に中空部分21、22が設けられている。
【0039】
中空部分21は断面形状が円形で延びる空間であり、具体的には突出部11の土台部12側の端部から第1の孔13に向かって、突出部11の中心部分を長手方向と平行に延びるように設けられて、第1の孔13と連続している。そして、第1の孔13と中空部分21は断面の径が同じ大きさであり、開口の中心が同一の位置となっている。つまり、突出部11は中空部分21と第1の孔13によって中心部分が貫通されて略円筒状になっている。また、中空部分21は第2の孔14とも連続しており、中空部分21と第2の孔14は垂直に交わっている。つまり、中空部分21は第1の孔13と第2の孔14を介して外部と連続している。
【0040】
中空部分22もまた断面形状が円形で延びる空間であり、土台部12の中心部分を長手方向と平行な方向に延びるように設けられている。なお、中空部分22の断面の径は中空部分21の断面の径より大きくなっている。ここで、土台部12は突出部11と反対側に位置する端部(図2,3における下側の端部)に開口形状が円形である開口15を有しており、中空部分22は開口15を介して外部と連続している。そして、開口15と中空部分22の断面の径は同一になっている。つまり、中空部分22は開口15から開口15と対向する位置にある端部(図2,3における上側の端部)近傍まで延びており、土台部12は略有底円筒状になっている。
【0041】
ここで、中空部分21と中空部分22は連結孔23を介して連続している。即ち、土台部12の開口15に対向する位置にある端部に、土台部12を内部から外部へ貫通する孔である連結孔23が設けられている。ここで、連結孔23は断面が円形となっており、連結孔23と中空部分21は断面の径と中心軸が同一となっている。即ち、中空部分21と連結孔23は重なりあっており、あたかも1つの貫通孔を形成している。
【0042】
したがって中継芯5は、径の異なる2つのパイプが段差を有して連結したような形状であり、径の小さい部分の端部側面に内部と繋がる孔が設けられている。そして、中継芯5の内側には内部空間27(中空孔)が形成されている。この内部空間27は、突出部11の中空部分21と、土台部12の中空部分22と、これら中空部分21,22の間に位置する連結孔23とが一体となった空間である。つまり、この内部空間27は中継芯5の内側を空洞化したものであり、内部空間27全体の形状は中継芯5の外観の形状と相似形である。そして、内部空間27は開口15、第1の孔13及び第2の孔14によって外側と連続している。つまり、中継芯5は内部空間27によって長手方向の両端部を貫通されている。
【0043】
ペン先6は、公知のペン先と同様であり繊維束の熱融着加工体、繊維束の樹脂加工体、フェルトの樹脂加工体等の適宜な繊維束を接合した素材で形成され、毛細管現象により中綿4からインキ7を吸い込む作用をするものである。
【0044】
次に、本実施形態の塗布具1の組み立て構造について図1を参照しながら説明する。
本体筒2の後端部分29の内部に中継芯5が挿入されている。ここで、後端部分29の内径と中継芯5の土台部12の外径は略同じであるので、後端部分29の内部に中継芯5が嵌め込まれて固定される。このとき、後端部分29の中継芯5より後側の部分がインキタンク3となりインキ7が内蔵される空間となる。
また、先端部分28の前側端部にペン先6が取り付けられている。そして、空間30の内部であってペン先6の後側には中綿4が設置されている。そして、インキタンク3にインキ7を充填して、先端部分28を後端部分29に取り付けることにより、塗布具1が組み立てられる。
【0045】
このとき、本体筒2の内部は中継芯5によって前後に区切られ、本体筒2の内部の中で中継芯5より前側の部分が中綿配置部8となる。つまり、中継芯5の土台部12がインキタンク3と中綿配置部8の仕切りとなり、突出部11と突出部11の内部空間21がインキタンク3と中綿配置部8を接続する連通管となる。
そして、中綿配置部8には中綿4が配置されている。中綿4はペン先6の後端と中継芯5の突出部11の前側端部(突出方向の先端)に接触しており、第1の孔13と第2の孔14を覆うように配置されている。
【0046】
なおこのとき、中綿4の後方端の一部は、第1の孔13又は第2の孔14から突出部11の内部空間21に入り込んでいてもよい。即ち中綿4は、その一部が、第1の孔13の開口面又は第2の孔14の開口面より、突出部11の内側に位置するように配置してもよい。
【0047】
以下さらに図4、図5を参照しながら本実施形態の塗布具1の作用について説明する。
筆記のためにペン先6を下側に向けると、図4(a)に示されるように、インキ7が重力によりインキタンク3の内部から中継芯5を通って中綿配置部8側へ移動する。そして、中継芯5の突出部11の下端近傍まで移動したインキ7が自身の重力並びに中綿4の毛細管力よって下方側へ引かれる。このことにより、インキ7が第1の孔13から中綿配置部8に供給される。このとき、インキ7の供給に使用されない第2の孔14から外気(微細な量の空気)がインキタンク3内に導入される。そして、インキタンク3内でインキ7と外気の交換が行われ、インキ7が第1の孔13から勢いよく中綿配置部8へ供給される。なお、第2の孔14は第1の孔13よりインキタンク3に近い位置にあり、ペン先6を下側に向けた際に第1の孔13より上側に位置する。そのためインキ7は水圧の高い第1の孔13から中綿配置部8へ供給され、第2の孔14からインキ7が供給されることはない。
ここで、第1の孔13、第2の孔14の径や面積の大きさを上記した望ましい大きさにし、第2の孔14の先端部分からの距離を上記した望ましい位置にすることにより、インキ7の流速をより好ましい速さにすることができる。そのことにより、中綿配置部8へのインキ7の供給を安定させることができる。
【0048】
インキ7が中綿配置部8へ供給され続けることにより、図4(b)に示されるように、中綿4にインキ7が含浸されていく。なお、このとき第1の孔13と中綿4は接触しているので、第1の孔13近傍に到達したインキ7は中綿4の毛細管力に引っ張られる。そのため、インキ7の表面張力により第1の孔13近傍でインキ7の流れが滞るということがない。
【0049】
そしてインキ7が中綿4に含浸されていくと、中綿配置部8のインキ7の水位が上がっていく(水位の境界線がインキタンク3へ近づいていく)。上がっていく中綿配置部8のインキ7の水位はやがて第1の孔13の高さ(位置)に到達し、さらには図4(c)に示されるように、第1の孔13より高い位置(インキタンク3に近い位置)まで上昇する。
【0050】
このように中綿配置部8のインキ7の水位が上がっていくと、やがて図4(d)に示されるように、第2の孔14の位置までインキ7で満たされる。そのことにより、第2の孔14が含浸されたインキ7によって液シール状態となって実質的に閉塞される。そして、インキタンク3内に外気を導入することができなくなり、中綿配置部8へのインキ7の供給が停止する。このとき、中綿4は前側(図4、5における下側)がインキ7に十分に含浸された状態となり、後側(図4、5における上側)はインキ7に含浸されない状態となる。なお、通常この中綿4の後側はインキ7に含浸されないが、周囲の温度が上昇した場合はその限りでは無い。
【0051】
そして、図5(a)のような中綿4の前側にインキ7が含浸された状態で筆記を続けると、やがて中綿4に含浸されたインキ7が減少し、図5(b)のように第2の孔14の液シール状態が解除される。すると、再びインキタンク3内に外気が勢いよく取り込まれるので、中綿配置部8へのインキ7の供給が開始される。そして図5(c)のように、第2の孔14が含浸されたインキ7によって再び液シール状態となるまで、中綿配置部8へのインキ7の供給が継続される。このように、インキ7が筆記により減少するたびに中綿配置部8及び中綿4にインキ7が供給されるため、ペン先6に安定してインキ7を供給することができる。
【0052】
上記した第1の実施形態では、本体筒2と中継芯5によって仕切られた部分をインキタンク3として形成したが、インキタンク3は必ずしもこのように形成しなくてもよい。
例えば、図6に示される第2の実施形態のように、中継芯5の後端側の開口15の部分を塞いで形成した中継芯40を形成し、中継芯40の土台部44をインキタンク3として使用してもよい。なお、この場合も上記した場合と同様であって図6(a)〜(d)のように中綿4にインキ7を含浸させることができる。
また、図7に示される第3の実施形態のように、本体筒45の後端部分46と突出部11を一体的に形成することにより、本体筒45の後端部分46と中継芯41の土台部44を1つの部材とした中継芯41を形成し、中継芯41の土台部44(本体筒45の後端部分46)をインキタンク3として使用してもよい。
これら第2の実施形態又は第3の実施形態のように塗布具のインキを補充する場合、中継芯40(又は中継芯41)を予めインキ7を充填した新たな中継芯40(又は中継芯41)に交換するだけでインキ7の補充が可能であり、インキ7の補充作業が容易であるという効果がある。
【0053】
上記した実施形態では塗布具1がマーカーである例を示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明は万年筆やボールペン、修正液等の塗布具であってもよい。したがって、本体筒2の原料及び形状は適宜変更可能である。
また、ペン先6も、繊維束の樹脂加工体、繊維束の熱融着加工体、フェルト加工体、パイプ状ペン体、先端にスリットを有する万年筆型板状ペン体、毛筆ペン体、合成樹脂の多孔質気泡体、ボールペンチップ、軸方向のインキ誘導路を有する合成樹脂の押出成形体等意4からによって形成されたものであり、先端部分が開口する原料及び形状は適宜変更してよい。
さらにまた、中綿4も上記したようにインキ7を含浸可能な連続気孔を有している部材であればよく、その形状も略直方体型に限らない。原料及び形状は適宜変更可能である。また、中綿4の密度は全体が均一でもよいし、均一でなくてもよい。中綿4に高密度部と低密度部を設けると、高密度部から低密度部へインキ7が移動し難いので、ペン先6に供給するインキ7の量の調整が容易である。
【0054】
上記した実施形態では、中継芯5が中綿4と接触している形態を説明したが、中継芯5と中綿4は必ずしも接触していなくてもよい。しかしながら中継芯5(の第1の孔や第2の孔)と中綿4が接触していないと、中継芯5の内径が小さい場合にインキ7に働く表面張力が重力を上回ってしまい、インキ7が中空部分21内に留まろうとするため、インキ7の中綿配置部8への供給時にインキ7の時間当たりの流出量が低減してしまうおそれがある。それに対して中継芯5と中綿4が接触していると、中綿4の毛細管力によってインキ7が引き寄せられてインキ7が円滑に流れるため、中継芯5の内径を小さく設計してもインキ7の時間当たりの流出量が安定する。したがって、このように中継芯5と中綿4が接触していることが好ましい。
【0055】
また上記した実施形態では、突出部11に設けた全ての孔(第1の孔13と第2の孔14)が中綿4に覆われている(接触している)形態を説明したが、必ずしも第1の孔13と第2の孔14の2つを中綿4に接触させる必要はない。例えば、直方体状の中綿に塗布液収容部3側から突出部11を接触させることにより、第1の孔13のみを接触させてもよい。また中綿4に凹部を形成する等の手段により、第2の孔14のみ中綿4に接触させ、第1の孔13を中綿4に接触させない構成にしてもよい。これらはインキ7の粘度や第1の孔13、第2の孔14の位置などに合わせて適宜変更してよい。しかしながら、このように変更すると、インキが中綿配置部8から溢れる等の問題が発生する虞があるため、第1の孔13と第2の孔14の2つを中綿4に接触させることが好ましい。
【0056】
上記した実施形態では第1の孔13の径と中空部分21の径(短手方向の長さ)が同じであったが、これらは同じでなくてもよい。第1の孔13の径と中空部分21の径は違っていてもよい。中空部分21の径は第1の孔13の径より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0057】
上記した実施形態では、突出部11の突出側先端の円形面に第1の孔13を設け、突出部11の側面の先端近傍に第2の孔14を設けたが、突出部11に設ける孔の位置は先端部分に限るものではない。
例えば、図8に示される第4の実施形態のように、第1の孔33と第2の孔34を共に側面に設けてもよい。このとき、これらの孔(第1の孔33と第2の孔34)の突出部11の軸方向における位置は同じでもよいし離れていてもよい。つまり、突出部11の突出方向の基端である面25から第1の孔33までの距離をY1、面25から第2の孔34までの距離をY2とすると、Y1とY2は等しくてもよいし、どちらかが長くてもよい。しかしながらY1とY2が同じである場合、塗布液収容部3への外気の導入が困難となり、第1の孔33や第2の孔34の径を大きくしなければならない。このようにすると強度が弱くなる等の問題があるため、第1の孔33と第2の孔34は突出部11の軸方向に離れていることが望ましい。
【0058】
上記した実施形態では、突出部11の形状が円筒状である形態を説明したが、突出部の形状はこれに限るものではない。また、突出部に設ける孔の数も2つに限るものではない。これらは2つ以上設けてもよい。
例えば、図9に示される第5の実施形態のように、円柱の先端部分を斜めに切り落としたような形状の突出部51であってもよい。さらに、先端の円形面に孔53を2つ設けてもよい。このとき円柱の先端部分に形成された円形面は、突出部51の突出方向に対して傾いているので、部分ごとに突出方向の位置(基端(面25)からの距離)が異なる。そのため2つの孔53は、基端に遠い位置にある孔53(53a)を上記した第1の孔13のように作用させ、基端に近い位置にある孔53(53b)を上記した第2の孔14のように作用させることができる。
また、図10に示される第6の実施形態のように突出部11の側面部に複数の第2の孔14を設けてもよい。
またさらに、図11に示される第7の実施形態のように円錐の先端部分を切断したような形状の突出部52であってもよい。なお、突出部52は先端部分の円形面に第1の孔13が設けられており、先端に向かうにつれて細くなっている面に複数の第2の孔14が設けられている。
【0059】
上記した実施形態では、第1の孔13と第2の孔14の開口形状を円形としたが、孔の開口形状は円形でなくてもよい。以下で図12(a)乃至図12(m)を参照しながら、孔の開口形状について説明する。突出部11に設けられる孔の開口形状は、円形(a)に限らず、楕円形(b)であってもよい。さらには、四角形が2つ重なったような十字架形(c)、略円形の孔が2つ連なったひょうたん形(d)、略「V」字状の所謂ブーメラン形(e)等のように楕円形や多角形を組みわせたような形状であってもよい。さらには平行四辺形状(f)、菱形状(g)、台形状(i)、五角形状(j)、三角形状(k)等の多角形状であってもよい。またさらに、星型状(h)、「L」字状(l)、一部に波状の曲線を用いた多角形状(m)であってもよい。このように突出部に設けられる孔の開口形状は適宜変更可能である。しかし、開口形状が円形である孔は加工が容易であるので製造上好ましい。
さらに、上記した実施形態のように、第1の孔13と第2の孔14は開口形状が同じでなくともよい。第1の孔13と第2の孔14はそれぞれ別の開口形状であってもよい。突出部に孔を2つ以上設けた場合も同様であり、孔はそれぞれ別の開口形状でもよく同じ開口形状でもよい。突出部に設ける孔の開口形状の組み合わせは任意である。
【0060】
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。なお、上記した第1の実施形態と同様の部分については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0061】
第8の実施形態の塗布具60は、図13に示されるように、本体筒61、中継芯62(流路形成部)、インキタンク部63(塗布液収容部)を有している。そして、本体筒61の内側の中空部分の後側にはインキ7を貯留可能なインキタンク部63が配されており、中空部分の前側には中綿配置部68が形成されている。そして、本体筒61の中空部分の前後は中継芯62によって仕切られている。
【0062】
本体筒61は、先端部分69と後端部分70から形成されている。先端部分69の外観は、前側に向かうにつれて先細りする形状となっている。具体的には、後方側から前方側へ向かって、径の大きな筒状部分69a、径の小さな筒状部分69b、テーパ状の部分69c、最も径の小さな筒状部分69dの4つの部分が連続している。このとき、径の大きな筒状部分69aと径の小さな筒状部分69bは、段差を介して連続している。また、先端部分69の内部には長手方向に連通している内部空間71があり、この内部空間71も前側に向かうにつれて先細りになっている。また、先端部分69の内周面の後方端部には本体側螺旋溝69eが形成されている。
後端部分70は、一方に開放口が設けられた略有底円筒状の蓋体となっている。
【0063】
中継芯62は、ポリプロピレンやポリアセタール等の合成樹脂や金属等の適宜な材料によって形成されるものである。また図14に示されるように、中継芯62は突出部73と土台部74から形成されている。
【0064】
突出部73は円筒状の突出部本体75と、長方形平板状の押圧片76(押圧部)から形成されている。このとき、突出部本体75は土台部74の前端面77(図14における上端面)から前方(図14の上方)に向かって略垂直に突出している。また押圧片76は、突出部本体73の側面の円周方向に略180度ずれた2箇所にそれぞれ設けられており、突出部本体75の側面から外方へ突出している。ここで、2つの押圧片76は、いずれも突出部本体75の長手方向(突出方向)に対して略垂直な方向に突出している。したがって、2つの押圧片76は互いに離れる方向へ突出している。また、押圧片76は突出部本体75の長手方向に沿って延びている。具体的には、押圧片76の後端部分は土台部74の前端面77と接触しており、押圧片76の前端部分は突出部本体75の前端(突出方向先端であり図14の上端)よりやや後側(図14の下側)に位置している。つまり、2つの押圧片76はいずれも土台部74の前端面77(図14の上端面)から前方(図14の上方)に向かって略垂直に突出しており、長手方向の長さが突出部本体75よりもやや短くなっている。
なお押圧片76の幅L1、即ち、押圧片76の突出方向の長さL1は特に限定されるものではないが、2.0mm〜4.5mmが望ましく、さらに好適には4.0mmであることが望ましい。
また押圧片76の厚みL2、即ち、押圧片76の長手方向(延び方向)及び突出方向に対して略垂直な方向の長さL2は限定されるものではないが、1.0mm〜3.0mmが望ましく、さらに好適には1.5mmであることが望ましい。
【0065】
本実施形態の突出部73は、上記した第1の実施形態の突出部11に押圧片76を設けたような形状となっている。即ち、本実施形態の突出部本体75と第1の実施形態の突出部11は略同一の形状であり、本実施形態の突出部本体75にも第1の実施形態の突出部11と同様に第1の孔13と第2の孔14とが設けられている。この第1の孔13と第2の孔14については重複する説明を省略する。
【0066】
ここで本実施形態の第2の孔に注目すると、図14で示されるように、第2の孔14は、押圧片76の一つと突出部本体75の円周方向の位置が略同一となる位置に設けられている。そして第2の孔14は、押圧片76の前端面76a(図14における上端面)よりやや前方(図14における上方)に設けられている。つまり、第2の孔14の後方近傍(図14における下方近傍)に押圧片76の前端面76a(図14における上端面)が位置している。つまり実質的には、図13で示されるように、第2の孔14の上方に押圧片76の前端面76a(下端面)が位置しており、第2の孔14と押圧片76の前端面76a(下端面)とは近接した位置にある。
なお、押圧片76の前端面76aから第2の孔14の中心までの距離L3は、特に限定されるものではないが、0.5mm〜3.0mmが望ましく、さらに好適には1.0mmであることが望ましい。
【0067】
また本実施形態では、図15で示されるように、押圧片76の厚さ方向の長さL2が、第2の孔14の径L4と比べて長くなっている。このように、押圧片76の厚さL2は第2の孔14の径L4以上であることが望ましい。
【0068】
土台部74は、図14,15で示されるように、外筒部80と、外筒部80の内側に位置する内筒部81から形成されている。外筒部80は、図14乃至16で示されるように、一方に開放口86が設けられた略有底円筒状となっている。また内筒部81は略円筒状となっている。そして、内筒部81は外筒部80よりも径が小さく、外筒部80の中心部分に位置しており、内筒部81と外筒部80の中心軸は同一となっている。また、この内筒部81及び外筒部80は、いずれも前後方向(図15,16の上下方向)に延びる筒体となっている。
この内筒部81の前方端部は、図16に示されるように、外筒部80の内側底面87と連続しており、後方端部は、外筒部80の後端(図15,16の下端)より後方(図15,16の下方)に突出している。そして、内筒部81は前後方向(図16の上下方向)の長さが外筒部80より長くなっている。
また内筒部81の後方端部には、内筒部81の外周面が後方に向かうにつれて狭径となったテーパ部81aが形成されている。
【0069】
次に中継芯62の内部構造について説明する。
中継芯62の内部には、図16で示されるように、突出部73の内側と土台部74の内側にそれぞれ中空部分21,84,85が設けられている。
【0070】
突出部73の内側では、突出部本体75の内側に中空部分21が設けられている。この中空部分21は、上述の第1の実施形態の突出部11の内部に設けられた中空部分21と略同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0071】
土台部74の内側には、内筒部81の内側に設けられた中空部分84と、内筒部81の外周面と外筒部80の内周面の間に設けられた環状の中空部分85が形成されている。
内筒部81の内側に設けられた中空部分84は、断面形状が円形で延び、内筒部81の長手方向に沿って延びる空間である。
【0072】
ここで、突出部本体75の中空部分21と内筒部81の中空部分84は連結孔23を介して連続している。この連結孔23は、土台部74の開放口86に対向する位置にある底板部を内部から外部へ貫通する貫通孔であり、断面形状が円形で貫通方向に延びている。
【0073】
このとき、連結孔23と突出部本体75の中空部分21は、いずれも断面形状が円形で延びる孔であり、断面の径、孔の延び方向、中心軸が同一となっている。そして、連結孔23と突出部本体75の中空部分21が重なり合って1つの貫通孔を形成している。したがって、突出部本体75の中空部分21の内周面と連結孔23の内周面は同一面となっている。
さらに、連結孔23と内筒部81の中空部分84もまた、いずれも断面形状が円形で延びる孔であり、断面の径、孔の延び方向、中心軸が同一となっている。そして、連結孔23と内筒部81の中空部分84が重なり合って同一の貫通孔を形成している。したがって、内筒部81の中空部分84の内周面と連結孔23の内周面は同一面となっている。
即ち、中継芯62の内部には、突出部本体75の中空部分21、連結孔23、内筒部81の中空部分84が一体となって形成される内部空間89(中空孔)が形成されている。
この内部空間89は、内筒部81に形成された中空部分84の後端側の開口81bから、突出部本体75に形成された第1の孔13の開口までを貫通する貫通孔となっている。そして内部空間89は、断面形状が円形であり、断面の径が略同一で中継芯62の長手方向に沿って前後に延びている。このとき、内筒部81に形成された中空部分84の後端側の開口81bと、突出部本体75に形成された第1の孔13の開口とは対向する位置にあり、略同一の形状となっている。
【0074】
インキタンク部63は、図17,18で示されるように、外観が略円柱状のタンク本体部91と、本体筒係合部92から形成されている。
【0075】
タンク本体部91は、図18で示されるように、内側部分が空洞化されて内部空間94が形成されている。このとき、タンク本体部91の後方部分95は中心部分から後方に向かうにつれて内径及び外径が小さくなっている。またタンク本体部91の前方部分96では、中心部分から前方端まで略同じ内径及び略同じ外径で延びている。
【0076】
このとき、図17で示されるように、タンク本体部91の前方端(図17,18の下方端)には円形板状の底板部97が設けられている。このとき、底板部97はタンク本体部91の前方を塞ぐように設けられており、図18で示されるように、底板部97の天面である内側面97aと底板部97の底面である外側面97bとは、タンク本体部91の長手方向に略直交する面となっている。
【0077】
そして、図17,18で示されるように、この底板部97の中心部分には外部とタンク本体部91の内部空間94とを連通するインキ供給孔98が形成されている。このインキ供給孔98は、底板部97の外側面97bから内側面97aまでを貫通する貫通孔であり、断面形状が円形で貫通方向に延びている。そして、外側面97b及び内側面97aに設けられる開口の形状もまた円形となっている。ここで、底板部97の外側面97bに形成される開口98aの径は、特に限定されるものではないが、2.0mm〜7.0mmが望ましく、さらに好適には3.0mmであることが望ましい。
【0078】
また底板部97の外側面97bでは、底板部97の外側面97bに形成されるインキ供給孔98の開口を取り囲むように中継芯係合部99が設けられている。中継芯係合部99は、底板部97の外側面97bから略垂直下方へ突出する環状立壁となっている。この中継芯係合部99は、インキ供給孔98の開口の縁部分よりやや外側に離れた位置に設けられている。
【0079】
本体筒係合部92は、図18に示されるように、タンク本体部91の長手方向の中心部分近傍を取り囲むように位置する筒状部分92aと、当該筒状部分92aの内周面の前端部分(図18の下端部分)とタンク本体部91の外周面を連結する連結部92bによって形成されている。
ここで筒状部分92aの内周面は、タンク本体部91の外周面から外側にやや離れた位置にある。そして、筒状部分92aの内周面の前端部分とタンク本体部91の外周面の間には連結部92bが位置している。このとき連結部92bは、筒状部分92の内周面の前端部分、及びタンク本体部91の外周面の一部のそれぞれと一体となっており、これらと隙間なく連続している。したがって、筒状部分92aの内周面とタンク本体部91の外周面との間には、前端が閉塞されて後端が開放された環状溝100が形成されている。
また、筒状部分92aの外周面にはインキタンク側螺旋溝92cが形成されている。
【0080】
次に、本実施形態の塗布具60の組み立て構造について、図13を参照しつつ説明する。
本体筒61の先端部分69の前側端部にペン先6が取り付けられている。そして、先端部分69の内部空間71にはペン先6の後側に中綿4が設置されている。このとき、中綿4は、PP(ポリプロピレン)等の適宜な材料で形成された筒体(図示せず)内に詰め込まれた状態で、本体筒61内に設置されている。さらにこのとき、中綿4の前端とペン先6の後端が接触している。
【0081】
そして先端部分69の内部空間71には、中継芯62が挿通されている。このとき、中継芯62は突出部73が前方、土台部74が後方となるように挿通されている。そして、突出部73の突出部本体75及び2つの押圧片76の略全ての部分は中綿4に挿し込まれている。即ち、突出部本体75及び2つの押圧片76の前後方向の前端から後端付近までの部分が中綿4に挿し込まれている。さらに詳細には、中継芯62は中綿4の後方側から挿し込まれており、突出部73の突出部本体75及び2つの押圧片76は、中綿4を後方から前方へ(図13における上方から下方へ)押圧している。
【0082】
つまり、先端部分69の内部空間71において、中継芯62の土台部74の前端面77よりやや前方の部分から、内部空間71の前端近傍の部分までが中綿配置部68となっている。
【0083】
このとき、突出部73の第1の孔13の開口と、突出部73の第2の孔14の開口は、略全面に亘って中綿4で覆われている。そして、図19で示されるように、中綿4の後方端(図19の上端)の一部は、第1の孔13から突出部73の内部空間89(中空部分21)に入り込んでいる。即ち、突出部73の内部空間89の前端近傍(図19における下端近傍)には中綿4の一部が配されている。換言すると、第1の孔13の開口面より後方(図19における上方)に位置する部分に中綿4の一部が配されると共に、第1の孔13の開口が中綿4によって塞がれている。
【0084】
ここで、中継芯62の土台部74の外径(外筒部80の外径)と、本体筒61の先端部分69の内径は略同じであるため、本体筒61の先端部分69に中継芯62が嵌めこまれて固定される。
【0085】
また本体筒61の先端部分69には、内部空間94にインキ7が充填されたインキタンク部63が中継芯62の後方側から取付けられている。このとき、インキタンク部63の外周に形成されたインキタンク側螺旋溝92cと、本体筒61の先端部分69の内周面に形成された本体側螺旋溝69eとが螺合しており、インキタンク部63が本体筒61に固定されている。
またこのとき、図20で示されるように、内筒部81の後方端部が環状立壁である中継芯係合部99の内側に挿入されている。このとき、内筒部81の外径と中継芯係合部99の内径が略同じであるため、中継芯係合部99に内筒部81の後方端部が嵌めこまれて固定される。そして、図13で示されるように、インキ供給孔98の外側に位置する開口98aと、内筒部81に形成された開口81bとが接触している。このことにより、インキ供給孔98と内部空間89が接続され、これらがあたかも一体の貫通孔のようになる。
【0086】
さらに、インキタンク部63の後方から本体筒61の後端部分70が取付けられている。詳しくは、インキタンク部63に形成された環状溝100に、本体筒61の後端部分70の前方端部を挿入された状態になっている。
【0087】
以上で本実施形態の塗布具60の組み立て構造についての説明を終了する。
【0088】
以下さらに図21、図22を参照しながら本実施形態の塗布具60の作用について説明する。
筆記のためにペン先6を下側に向けると、図21(a)に示されるように、インキ7が重力によりインキタンク部63の内部空間94から中綿配置部68側へ移動する。このときインキ7は、インキ供給孔98を通過し、中継芯62の内部空間89の下方部分まで移動する。そして、突出部73の下端近傍まで移動したインキ7は、自身の重力並びに中綿4の毛細管力よって下方側へ引かれる。このことにより、インキ7が第1の孔13から中綿配置部68に供給される。つまり、中継芯62の内部空間89がインキ7を供給するときのインキ流通路となる。
【0089】
ここで本実施形態では、押圧片76によって中綿4を上方から押圧している。そのことにより、中綿4の下方部分に比較的空隙率が低下した中密度部103が形成される。つまり、中綿4を上方から押圧片76等で押圧することより、押圧された中綿4の一部が下方に押し寄せられて集積する。そのことにより、中綿4には、比較的空隙率が高く繊維密度の低い低密度部104が上方部分に形成され、比較的空隙率が低く繊維密度の高い中密度部103が下方部分に形成される。そしてペン先6は、中綿4の中密度部103より繊維密度が高い高密度部となっている。
つまり、本実施形態においては、中綿4の上方部分と下方部分に連続する繊維密度の異なる部分が形成され、下方に向かって繊維密度が高くなっている。そして、中綿4の後端からペン先6の前端に向かって低密度部104、中密度部103、高密度部(ペン先6)が連続している。なお本実施形態においては、図21(a)で示されるように、中綿4の前端から第2の孔14の上端付近までが中密度部103となっており、第2の孔14の上端付近から後方の部分が低密度部104となっている。
このことにより、インキ7をペン先6へ安定して供給することができる。例えば、インキ7が自身の重力だけでは第1の孔13の開口まで到達しないようなインキであっても、インキ7を中継芯62から中綿4へと引き込み、中綿4からペン先6へ移動させることができる。
【0090】
このとき、インキ7の供給に使用されない第2の孔14から外気(微細な量の空気)がインキタンク部63の内部空間94に導入される。そして、内部空間94内でインキ7と外気の交換が行われ、インキ7が第1の孔13から勢いよく中綿配置部68へ供給される。なお、第2の孔14は第1の孔13よりインキタンク部63に近い位置にあり、ペン先6を下側に向けた際に第1の孔13より上側に位置する。そのためインキ7は水圧の高い第1の孔13から中綿配置部68へ供給され、第2の孔14からインキ7が供給されることはない。
ここで、第1の孔13、第2の孔14の径や面積の大きさを上記した望ましい大きさにし、第2の孔14の先端部分からの距離を上記した望ましい位置にすることにより、インキ7の流速をより好ましい速さにすることができる。そのことにより、中綿配置部68へのインキ7の供給を安定させることができる。
【0091】
インキ7が中綿配置部68へ供給され続けることにより、図21(b)に示されるように、中綿4にインキ7が含浸されていく。なお、このとき第1の孔13と中綿4は接触しているので、第1の孔13近傍に到達したインキ7は中綿4の毛細管力によって引っ張られる。そのため、インキ7の表面張力等により第1の孔13近傍でインキ7の流れが滞るということがない。
【0092】
そしてインキ7が中綿4に含浸されていくと、中綿配置部68のインキ7の水位が上がっていく(水位の境界線がインキタンク部63側へ近づいていく)。上がっていく中綿配置部68のインキ7の水位はやがて第1の孔13の高さ(位置)に到達し、さらには図21(c)に示されるように、第1の孔13より高い位置(インキタンク部63に近い位置)まで上昇する。
【0093】
このように中綿配置部68のインキ7の水位が上がっていくと、やがて図21(d)に示されるように、第2の孔14の位置までインキ7で満たされる。そのことにより、第2の孔14が含浸されたインキ7によって液シール状態となって実質的に閉塞される。そして、インキタンク部63の内部空間94に外気を導入することができなくなり、中綿配置部68へのインキ7の供給が停止する。このとき、中綿4は前側(図21、22における下側)がインキ7に十分に含浸された状態となり、後側(図21、22における上側)はインキ7に含浸されない状態となる。なお、通常この中綿4の後側はインキ7に含浸されないが、周囲の温度が上昇した場合はその限りでは無い。
【0094】
そして、図22(a)のような中綿4の前側にインキ7が含浸された状態で筆記を続けると、やがて中綿4に含浸されたインキ7が減少し、図22(b)のように第2の孔14の液シール状態が解除される。すると、再びインキタンク3内に外気が勢いよく取り込まれるので、中綿配置部68へのインキ7の供給が開始される。そして図22(c)のように、第2の孔14が含浸されたインキ7によって再び液シール状態となるまで、中綿配置部68へのインキ7の供給が継続される。このように、インキ7が筆記により減少するたびに中綿配置部68及び中綿4にインキ7が供給される。そして、中綿4に供給されたインキ7は中密度部103から低密度部104へは流れにくくなっている。つまり、中綿4に供給されたインキ7がペン先6側へ向かって流れ易いため、ペン先6に安定してインキ7を供給することができる。
【0095】
上記した第8の実施形態では、第1の孔13と第2の孔14の開口の全域を中綿4が覆うように配置したが、必ずしもこれに限るものではない。第1の孔13又は第2の孔14の開口は中綿4で覆われていなくてもよく、第1の孔13又は第2の孔14の開口の一部分のみが中綿4で覆われている構成であってもよい。つまり、内部空間89内において突出部73の前端近傍に位置するインキ7を、中綿4の毛細管力で中綿4側に引っ張ることができるように、突出部73と中綿4とが配されていればよい。
【0096】
上記した第8の実施形態では、押圧片76は平板状であって突出部本体75の側面と土台部74の前端面77に接触する構成であったが、本発明の中継芯はこれに限るものではない。例えば、図23で示される第9の実施形態のように、突出部本体75に接触せずに土台部74から前方に突出する押圧片108を備えた中継芯109を採用してもよい。
また、図24で示される第10の実施形態のように、押圧片110が土台部74に接触せず、突出部本体75から延びる押圧片110を備えた中継芯111を採用してもよい。
また本発明の押圧片の形状は特に限定されるものではなく、第9の実施形態で示されるような丸棒状の押圧片であってもよく(図23参照)、第10の実施形成で示されるような鉤状(L字板状)の押圧片であってもよい(図24参照)。したがって、押圧片は、断面形状が四角形のような多角形状で延びる押圧片であってもよく、断面形状が円形で延びる押圧片であってもよい。また、一部が屈曲して延びる押圧片であってもよい。
即ち本発明の押圧片は、中綿を押圧することによって、中継芯のインク排出口(第1の孔13)近傍に位置する中綿の少なくとも一部又は全部を繊維密度が高い状態することができればよい。
【0097】
上記した各実施形態の押圧片はいずれも中継芯に2つ設けるものであったが、押圧片の数は1つでもよく、3つ以上でも構わない。
【0098】
上記した各実施形態では、中継芯の突出部と中綿の上端面とがなす角が略90度となるように接触させているが、中継芯の配置角度はこれに限るものではない。中継芯の突出部と中綿の上端面とがなす角は特に限定されるものではないが、70度以上90度以下となるように中継芯の突出部と中綿の上端面を接触させることが好ましい。
【0099】
上記した各実施形態で使用されるインキは特に限定されるものではないが、粘度が6.7mPa・sより大きく、且つ固体表面と接触したときの接触角が53.8度より小さく、さらに表面張力が33.5mN/mより小さい特性を持つインキを好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,60 塗布具
2 本体筒
3 インキタンク(塗布液収容部)
4 中綿(塗布液吸蔵体)
5,40,41,62,109,111 中継芯(流路形成部)
6 ペン先(塗布体)
7 インキ(塗布液)
8 中綿配置部
11,51,52,73 突出部
12,44,74 土台部
13,33,53a 第1の孔(連通孔)
14,34,53b 第2の孔(連通孔)
21 中空部分
27,89 内部空間(中空孔)
63 インキタンク部(塗布液収容部)
76,108,110 押圧片(押圧部)
98 インキ供給孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵された塗布液をペン先等の塗布体に供給する塗布具に関するものであり、より詳細には、塗布体への塗布液の供給量を安定させるための塗布液供給手段を有する塗布具に関するものである。
なお、本明細書における塗布具とは、フェルトペン、万年筆、ラインマーカー、白板マーカー等の筆記具だけに限らず、例えば、修正ペンのような液状のものを紙面や白板等の任意の対象物に塗り付ける用具を含むものの総称として使用している。
【背景技術】
【0002】
ペン先(塗布体)に塗布液を安定して供給するための塗布液供給手段として、ペン先とインキタンクとの間にインキ(塗布液)を含浸することのできる中綿(塗布液吸蔵体)を設ける技術が知られている。この技術によると余剰なインキを中綿が吸収するので、ペン先にインキが供給されすぎることがない。またペン先でインキが不足した場合に、中綿に吸収されたインキがペン先に供給されるため、インキの供給不足を防ぐことができる。そのことにより、ペン先にインキを安定して供給することができる。
【0003】
この技術を用いた塗布具として、例えば、特許文献1に開示されている直液式筆記具がある。この直液式筆記具は、所謂無操作型筆記具といわれる筆記具である。無操作型筆記具とは、ペン先やペン軸をノックするといったインキ供給のための操作をすることなく、ペン先にインキを供給することができる筆記具である。特許文献1に記載の発明では、この直液式筆記具のインキタンクとインキ吸蔵体(塗布液吸蔵体)の間を接続する連通管を複数用いることにより、外気とインキの流路を分別している。そのことにより外気とインキの交替が迅速に行えるため、初期使用するとき(初めてインキタンクからインキ吸蔵体へインキを供給するとき)に筆記可能となるまでの時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−212884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明では、その構造上必ず複数の連通管が必要になる。そのことにより1つの連通管を設ける場合に比べて、連通管の太さや厚さ等の設計上の制限が大きくなってしまうという問題があり、加えて部品の成形が煩雑になるという問題がある。さらに、2つ以上の連通管が組になって作用するため、いずれかの連通管が突発的に損傷してしまった場合、筆記具が機能しなくなってしまうという可能性がある。
また、特許文献1のような2つ以上の連通管を設けた塗布具では、筆記具本体に直接連通管を一体に設ける場合、複数の連通管を設置するために本体の径を太くしなければならないという設計上の制約があった。
さらにまた、特許文献1のように複数の連通管の先端を中綿(インキ吸蔵体)に挿し込んで使用する場合、分解後の組み立てが困難であるという問題があった。即ち、部材の交換や塗布液の補充等のために各連通管を中綿から一度外してしまうと、再び組み立てる際に、それぞれの連通管が元の位置に挿しこまれるように位置合わせして挿し込まねばならず、組み立てが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、無操作型の塗布具において、製造が容易であって、且つ部品の強度を高くすることが可能であり、初期使用するとき(初めてインキタンクからインキ吸蔵体へインキを供給するとき)に素早く筆記可能である塗布具の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、充填した塗布液が内部流動可能な塗布液収容部と、塗布液を塗布するための塗布体とを有し、塗布液収容部と塗布体の間に塗布液を含浸する塗布液吸蔵体を備え、塗布液収容部と塗布液吸蔵体の間に塗布液を流通可能な流路を有する流路形成部が設けられた塗布具であって、前記流路形成部は1つの突出部を有し、突出部は塗布体側に向かって突出するものであり、突出部には内部に中空部分を有し、中空部分と連通する連通孔が2つ以上設けられていることを特徴とする塗布具である。
【0008】
請求項1に記載の発明では、塗布液収容部(インキタンク)と塗布液吸蔵体(中綿)の間に内部に中空部分を有する1つの突出部(連通管)があり、突出部が内部の中空部分と連通する2つ以上の連通孔を有している。
本発明は、塗布液収容部と塗布液吸蔵体を接続する突出部(連通管)が1つのみとなっている。そのため、複数の連通管を作成する場合に比べて連通管の設計における自由度が高く、例えば径が大きく強度の高い連通管を成形することができる。そのことにより、径が小さな連通管では使用が困難であったインキ(例えば表面張力の高いインキ)が使用可能となるため、塗布具に多種多様な塗布液を採用することができる。またこの場合、連通管が壊れにくく突発的な故障が発生し難いという利点もある。
さらには、連通管を複数設ける場合に比べて突出部(連通管)の基端部分の径を細く成形することができる。そのことにより、突出部を本体部材と別々に形成した場合はより軸径の細い本体部材に取り付け可能であり、突出部を本体部材と一体に形成した場合は本体部材そのものの軸径を細くすることができる。即ち、本発明は塗布具の本体軸径をより細くできるという利点がある。
さらに、中空部分と連通する2つ以上の連通孔を有しているので、それぞれ異なる孔からインキの排出や外気の導入が可能であり、塗布具収容部でのインキと外気の交替を迅速に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記突出部が塗布液吸蔵体と接触していることを特徴とする請求項1に記載の塗布具である。
【0010】
本発明では、連通管たる突出部が塗布液吸蔵体に接触するため、突出部に設けた前記孔の開口を塗布液吸蔵体が覆うように配置できる。そのことにより、塗布液吸蔵体の毛細管力によって塗布液が引き寄せられ、連通管からの塗布液の時間当たりの流出量が安定する。即ち、連通管の先端で塗布液の表面張力により塗布液の流れが滞るという事態が発生しない。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記連通孔の少なくとも一つが突出部の先端近傍に設けられており、当該連通孔より突出部の基端側に他の連通孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具である。
【0012】
本発明では、先端側に設けた連通孔と他の連通孔の間に突出部の突出方向(突出部の軸方向)に距離を設けている。そのため、各連通孔の突出部の突出方向の距離が同じ場合と比べて、インキの供給のための連通孔と外気の導入のための連通孔を離れた位置に設けることができるので、より確実に外気の導入を行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記流路形成部は、押圧部を有しており、前記押圧部の少なくとも一部は塗布液吸蔵体に上方から接触していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具である。
【0014】
本発明では、流路形成部が押圧部を有し、押圧部の少なくとも一部が塗布液吸蔵体に上方から接触している。このことにより、塗布液吸蔵体の上方部分が押圧部に押圧され、塗布液吸蔵体の下端近傍に空隙率が低下した部分が形成される。つまり、塗布液吸蔵体の上端近傍は比較的空隙率が高い低密度部分となり、下端近傍は比較的空隙率が低い高密度部分となる。このように塗布液吸蔵体の上端部分と下端部分の間で密度差が形成されると、塗布液吸蔵体の上端近傍に比べて、塗布液吸蔵体の下端近傍の毛細管力が強くなる。
このことにより、インキの粘度が高い場合や、連通管の孔径が小さい場合のようにインキが自重のみでは下方へ移動しない場合であっても、毛細管力によってインキを塗布液吸蔵体へと引き込み、塗布液吸蔵体に引き込んだインキをさらに下方へと確実に移動させることができる。つまり、ペン先へのインキの供給をより安定させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の塗布具である。
【0016】
本発明では、記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置している。そのため、押圧部が連通孔と塗布液吸蔵体との接触を阻害することがなく、連通孔と塗布液吸蔵体とをより確実に接触させることができる。
具体的に説明すると、押圧部の下端が連通孔の下方にある場合や、押圧部の下端と連通孔との高さ方向の位置が同じ場合、押圧部が突出部から離れる方向へ塗布液吸蔵体を押圧することにより、突出部に形成された連通孔と塗布液吸蔵体の接触が妨げられるおそれがある。しかしながら、本発明では押圧部が連通孔の上方にあるため、突出部の下方側に位置する塗布液吸蔵体と連通孔との接触を阻害することがない。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記流路形成部は土台部と突出部から形成されており、土台部と突出部は径の異なる円筒状であって、それぞれの中心部分を連通する中空孔を有し、突出部の先端の円形面と、側面の先端近傍にそれぞれ前記中空孔と連通する孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布具である。
【0018】
本発明によると、塗布具本体に取り付けやすく製造が容易であって強度が高い突出部(連通管)を有する塗布具を提供することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、前記押圧部は、前記突出部の側面から外方へ向かって略垂直に突出する平板状の突起であり、突出部の突出方向の基端部分から先端部分の近傍まで延びるものであって、前記突出部の側面の先端近傍に形成された連通孔の中心軸は、前記押圧部の突出方向と略平行に延びていることを特徴とする請求項6に記載の塗布具である。
【0020】
本発明によると、強度の高い押圧部を有し、製造が容易な突出部(連通管)を有する塗布具を提供することができる。
【0021】
請求項8に記載の発明は、塗布液吸蔵体の一部が前記流路形成部の内部に配されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の塗布具である。
【0022】
本発明によると、流路形成部の内部に塗布液吸蔵体の一部が配されている。このことにより、インキの粘度が高い場合や、突出部の径が小さい場合のようにインキが自重のみで下方の放出口まで移動しない場合であっても、流路形成部の内部に位置する塗布液吸蔵体にインキが接触すれば、塗布液吸蔵体の毛細管力によってインキをより下方へ移動させることができる。即ち、確実にインキを塗布液吸蔵体側へ移動させることができ、インキの供給を安定させることができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、前記流路形成部と塗布液収容部とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布具である。
【0024】
本発明によると、流路形成部と塗布液収容部とが一体に形成されているため、塗布液が塗布液収容部に充填された状態の流路形成部を、以前の流路形成部と交換するだけで塗布液の補充が可能である。したがって、塗布具本体内の塗布液収容部にスポイトのような別部材を使用して塗布液を補充する場合に比べ、塗布液の補充作業が容易である。
また、流路形成部と塗布液収容部を一体に形成して部品点数を少なくした場合、製造コストの低減や組立の簡易化ができるという利点もある。
【0025】
請求項10に記載の発明は、前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布具である。
【0026】
本発明によると、前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であるため、塗布液収容部を交換するたけで塗布液の補充が可能である。したがって、塗布具本体内の塗布液収容部にスポイトのような別部材を使用して塗布液を補充する場合に比べ、塗布液の補充作業が容易である。
【0027】
請求項11に記載の発明は、塗布液収容部は、下方に外部と内部空間とを連通する収容部側貫通孔が設けられており、前記流路形成部は、土台部と突出部から形成され、前記土台部には筒状部が形成されており、筒状部は前記突出部の中空部分と連通するものであって、前記流路形成部と塗布液収容部を取付けたとき、収容部側貫通孔と筒状部とが連通することを特徴とする請求項10に記載の塗布具である。
【0028】
請求項11の構成によると、前記流路形成部と塗布液収容部の着脱がより容易となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、製造が容易であって部品の強度を高く設計できるという効果がある。また、初期使用するときに素早く筆記可能にできるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態の塗布具を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態で使用する中継芯を天地逆にして示す斜視図である。
【図3】図2の中継芯のA−A断面図である。
【図4】第1の実施形態の塗布具において中綿配置部にインキが満たされていく様子を示す説明図であり、(a)〜(d)の順にインキが満たされていく。
【図5】第1の実施形態の塗布具において中綿配置部に充填されたインキが減少し、再びインキタンクからインキが充填される際のインキの液位(水位)を示す説明図であり、(a)は中綿配置部にインキが充填されている様子を示し、(b)は中綿配置部のインキが減少した状態を示し、(c)は中綿配置部にインキが再び充填されている様子を示す。
【図6】本発明の第2の実施形態の中継芯を用いた塗布具の中綿配置部にインキが満たされていく様子を示す説明図であり、(a)〜(d)の順にインキが満たされていく。
【図7】本発明の第3の実施形態の塗布具を示す断面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【図9】本発明の第5の実施形態の突出部を有する中継芯を示す斜視図である。
【図10】本発明の第6の実施形態の突出部を有する中継芯を示す斜視図である。
【図11】本発明の第7の実施形態の突出部を有する中継芯を示す斜視図である。
【図12】(a)〜(m)は各々図2とは異なる形態の中継芯に形成する孔の開口形状を示す説明図である。
【図13】本発明の第8の実施形態の塗布具を示す断面図である。
【図14】本発明の第8の実施形態で使用する中継芯を天地逆にして示す斜視図である。
【図15】図14の中継芯をA方向からみた平面図である。
【図16】図14の中継芯のB−B断面図である。
【図17】本発明の第8の実施形態で使用するインキタンク部を示す斜視図である。
【図18】図17のインキタンク部のA−A断面図である。
【図19】本発明の第8の実施形態の塗布具を示す断面図であり、内部にインキがない状態を示す。
【図20】図13の中継芯とインキタンク部を接続するときの様子を中継芯を一部破断させて示す説明図であり、(a)〜(b)の順に接続する。
【図21】第8の実施形態の塗布具において中綿配置部にインキが満たされていく様子を示す説明図であり、(a)〜(d)の順にインキが満たされていく。
【図22】第8の実施形態の塗布具において中綿配置部に充填されたインキが減少し、再びインキタンクからインキが充填される際のインキの液位(水位)を示す説明図であり、(a)は中綿配置部にインキが充填されている様子を示し、(b)は中綿配置部のインキが減少した状態を示し、(c)は中綿配置部にインキが再び充填されている様子を示す。
【図23】本発明の第9の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【図24】本発明の第10の実施形態の中継芯を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下さらに、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において「前後」の関係はペン先側を前側、インキタンク側を後側として説明する。
本発明の第1の実施形態の塗布具1は具体的には白板用マーカーであり、図1に示されるように、本体筒2、中綿4(塗布液吸蔵体)、中継芯5(流路形成部)、ペン先6(塗布体)から形成されている。そして、本体筒2の内側の中空部分は中継芯5によって前後に仕切られており、中継芯5より後側の部分にインキ7(塗布液)を貯留することができるインキタンク3(塗布液収容部)が形成され、中継芯5より前側の部分には中綿配置部8が形成されている。
【0032】
本体筒2はポリプロピレン等の樹脂やニオブ等の金属といった適宜な材料によって形成された筒体である。この本体筒2は先端部分28と後端部分29から形成されており、先端部分28と後端部分29はねじによって着脱自在に取り付けられている。先端部分28は外観が前側に向かうにつれて先細りになった形状となっている。また、先端部分28の内部には長手方向に連通している空間30があり、この空間30も前側に向かうにつれて先細りになっている。
【0033】
中綿4は、公知の中綿であって、インキ7を含浸可能な連続気孔を有している部材である。より詳細にはアクリル繊維等の適宜な繊維で形成されており、内部にインキ7を含浸することができる。
【0034】
中継芯5は、本実施形態の特徴的構成部材であり、以下詳細に説明する。
中継芯5はポリプロピレンやポリアセタール等の合成樹脂や金属等の適宜な材料によって形成されるものである。また図2に示されるように、中継芯5は突出部11と土台部12から形成されている。突出部11と土台部12の外観は共に円柱状であって、突出部11の径は土台部12の径より小さくなっている。そして、突出部11の端部と土台部12の端部は2つの円柱を積み重ねるように段差を有して連続しており、突出部11と土台部12の中心軸は同じとなるように配置されている。具体的には、土台部12の長手方向に垂直な面(図2における上面)25と、突出部11の片側端部の側面が接続されている。
つまり、中継芯5の外観は2つの円柱を積み重ねたような形状であり、土台部12の面25の中心部分近傍から突出部11が突出している。なお、このとき突出部11の突出方向は土台部12の面25と垂直な方向である。
【0035】
また、突出部11には第1の孔13(連通孔)と第2の孔14(連通孔)の2つの孔が設けられている。
【0036】
第1の孔13は突出部11の突出方向先端にある円形の面24(図2における上面であり、突出部11が土台部12と接触している面に対向する位置にある面)に設けられている。そして、第1の孔13は開口形状が円形であって、開口の中心が突出部11の中心軸と重なっている。この第1の孔13の径の大きさは特に限定されるものではないが、2mm〜7mmであることが望ましく、より好適には2.5mm〜3.0mmであることが望ましく、さらに好適には3.0mmであることが望ましい。そして、第1の孔13の開口の面積は3.14mm2(平方ミリメートル)〜38.47mm2(平方ミリメートル)であることが望ましく、さらに好適には4.9mm2(平方ミリメートル)〜7.07mm2(平方ミリメートル)であることが望ましい。
【0037】
第2の孔14は突出部11の側面に設けられており、さらに詳細には、突出部11の突出方向の先端近傍(土台部12と反対側に位置する端部)に設けられている。そして、第2の孔14も第1の孔13と同じく開口形状が円形となっている。この第2の孔14の径の大きさは特に限定されるものではないが1.0mm〜5.0mmであることが望ましく、さらに好適には1.0mmであることが望ましい。そして、第2の孔14の開口の面積は0.79mm2(平方ミリメートル)〜19.63mm2(平方ミリメートル)であることが望ましく、さらに好適には0.79mm2(平方ミリメートル)〜7.07mm2(平方ミリメートル)であることが望ましい。さらに、突出部11の先端部分から第2の孔の中心までの距離(図2におけるX1)も特に限定されるものではないが、2.0mm〜7.0mmであることが望ましく、さらに好適には3.0mmであることが望ましい。
ここで、第2の孔14が突出部11の側面であるので、第1の孔13と第2の孔14の開口の方向は垂直となっている。また、第2の孔14が突出部11の突出方向の先端近傍に設けられているので、第1の孔13と第2の孔14は突出部11の突出方向(突出部11の軸方向)において近い位置にある。
【0038】
次に中継芯5の内部構造について説明する。図3で示されるように突出部11と土台部12はそれぞれ内部に中空部分21、22が設けられている。
【0039】
中空部分21は断面形状が円形で延びる空間であり、具体的には突出部11の土台部12側の端部から第1の孔13に向かって、突出部11の中心部分を長手方向と平行に延びるように設けられて、第1の孔13と連続している。そして、第1の孔13と中空部分21は断面の径が同じ大きさであり、開口の中心が同一の位置となっている。つまり、突出部11は中空部分21と第1の孔13によって中心部分が貫通されて略円筒状になっている。また、中空部分21は第2の孔14とも連続しており、中空部分21と第2の孔14は垂直に交わっている。つまり、中空部分21は第1の孔13と第2の孔14を介して外部と連続している。
【0040】
中空部分22もまた断面形状が円形で延びる空間であり、土台部12の中心部分を長手方向と平行な方向に延びるように設けられている。なお、中空部分22の断面の径は中空部分21の断面の径より大きくなっている。ここで、土台部12は突出部11と反対側に位置する端部(図2,3における下側の端部)に開口形状が円形である開口15を有しており、中空部分22は開口15を介して外部と連続している。そして、開口15と中空部分22の断面の径は同一になっている。つまり、中空部分22は開口15から開口15と対向する位置にある端部(図2,3における上側の端部)近傍まで延びており、土台部12は略有底円筒状になっている。
【0041】
ここで、中空部分21と中空部分22は連結孔23を介して連続している。即ち、土台部12の開口15に対向する位置にある端部に、土台部12を内部から外部へ貫通する孔である連結孔23が設けられている。ここで、連結孔23は断面が円形となっており、連結孔23と中空部分21は断面の径と中心軸が同一となっている。即ち、中空部分21と連結孔23は重なりあっており、あたかも1つの貫通孔を形成している。
【0042】
したがって中継芯5は、径の異なる2つのパイプが段差を有して連結したような形状であり、径の小さい部分の端部側面に内部と繋がる孔が設けられている。そして、中継芯5の内側には内部空間27(中空孔)が形成されている。この内部空間27は、突出部11の中空部分21と、土台部12の中空部分22と、これら中空部分21,22の間に位置する連結孔23とが一体となった空間である。つまり、この内部空間27は中継芯5の内側を空洞化したものであり、内部空間27全体の形状は中継芯5の外観の形状と相似形である。そして、内部空間27は開口15、第1の孔13及び第2の孔14によって外側と連続している。つまり、中継芯5は内部空間27によって長手方向の両端部を貫通されている。
【0043】
ペン先6は、公知のペン先と同様であり繊維束の熱融着加工体、繊維束の樹脂加工体、フェルトの樹脂加工体等の適宜な繊維束を接合した素材で形成され、毛細管現象により中綿4からインキ7を吸い込む作用をするものである。
【0044】
次に、本実施形態の塗布具1の組み立て構造について図1を参照しながら説明する。
本体筒2の後端部分29の内部に中継芯5が挿入されている。ここで、後端部分29の内径と中継芯5の土台部12の外径は略同じであるので、後端部分29の内部に中継芯5が嵌め込まれて固定される。このとき、後端部分29の中継芯5より後側の部分がインキタンク3となりインキ7が内蔵される空間となる。
また、先端部分28の前側端部にペン先6が取り付けられている。そして、空間30の内部であってペン先6の後側には中綿4が設置されている。そして、インキタンク3にインキ7を充填して、先端部分28を後端部分29に取り付けることにより、塗布具1が組み立てられる。
【0045】
このとき、本体筒2の内部は中継芯5によって前後に区切られ、本体筒2の内部の中で中継芯5より前側の部分が中綿配置部8となる。つまり、中継芯5の土台部12がインキタンク3と中綿配置部8の仕切りとなり、突出部11と突出部11の内部空間21がインキタンク3と中綿配置部8を接続する連通管となる。
そして、中綿配置部8には中綿4が配置されている。中綿4はペン先6の後端と中継芯5の突出部11の前側端部(突出方向の先端)に接触しており、第1の孔13と第2の孔14を覆うように配置されている。
【0046】
なおこのとき、中綿4の後方端の一部は、第1の孔13又は第2の孔14から突出部11の内部空間21に入り込んでいてもよい。即ち中綿4は、その一部が、第1の孔13の開口面又は第2の孔14の開口面より、突出部11の内側に位置するように配置してもよい。
【0047】
以下さらに図4、図5を参照しながら本実施形態の塗布具1の作用について説明する。
筆記のためにペン先6を下側に向けると、図4(a)に示されるように、インキ7が重力によりインキタンク3の内部から中継芯5を通って中綿配置部8側へ移動する。そして、中継芯5の突出部11の下端近傍まで移動したインキ7が自身の重力並びに中綿4の毛細管力よって下方側へ引かれる。このことにより、インキ7が第1の孔13から中綿配置部8に供給される。このとき、インキ7の供給に使用されない第2の孔14から外気(微細な量の空気)がインキタンク3内に導入される。そして、インキタンク3内でインキ7と外気の交換が行われ、インキ7が第1の孔13から勢いよく中綿配置部8へ供給される。なお、第2の孔14は第1の孔13よりインキタンク3に近い位置にあり、ペン先6を下側に向けた際に第1の孔13より上側に位置する。そのためインキ7は水圧の高い第1の孔13から中綿配置部8へ供給され、第2の孔14からインキ7が供給されることはない。
ここで、第1の孔13、第2の孔14の径や面積の大きさを上記した望ましい大きさにし、第2の孔14の先端部分からの距離を上記した望ましい位置にすることにより、インキ7の流速をより好ましい速さにすることができる。そのことにより、中綿配置部8へのインキ7の供給を安定させることができる。
【0048】
インキ7が中綿配置部8へ供給され続けることにより、図4(b)に示されるように、中綿4にインキ7が含浸されていく。なお、このとき第1の孔13と中綿4は接触しているので、第1の孔13近傍に到達したインキ7は中綿4の毛細管力に引っ張られる。そのため、インキ7の表面張力により第1の孔13近傍でインキ7の流れが滞るということがない。
【0049】
そしてインキ7が中綿4に含浸されていくと、中綿配置部8のインキ7の水位が上がっていく(水位の境界線がインキタンク3へ近づいていく)。上がっていく中綿配置部8のインキ7の水位はやがて第1の孔13の高さ(位置)に到達し、さらには図4(c)に示されるように、第1の孔13より高い位置(インキタンク3に近い位置)まで上昇する。
【0050】
このように中綿配置部8のインキ7の水位が上がっていくと、やがて図4(d)に示されるように、第2の孔14の位置までインキ7で満たされる。そのことにより、第2の孔14が含浸されたインキ7によって液シール状態となって実質的に閉塞される。そして、インキタンク3内に外気を導入することができなくなり、中綿配置部8へのインキ7の供給が停止する。このとき、中綿4は前側(図4、5における下側)がインキ7に十分に含浸された状態となり、後側(図4、5における上側)はインキ7に含浸されない状態となる。なお、通常この中綿4の後側はインキ7に含浸されないが、周囲の温度が上昇した場合はその限りでは無い。
【0051】
そして、図5(a)のような中綿4の前側にインキ7が含浸された状態で筆記を続けると、やがて中綿4に含浸されたインキ7が減少し、図5(b)のように第2の孔14の液シール状態が解除される。すると、再びインキタンク3内に外気が勢いよく取り込まれるので、中綿配置部8へのインキ7の供給が開始される。そして図5(c)のように、第2の孔14が含浸されたインキ7によって再び液シール状態となるまで、中綿配置部8へのインキ7の供給が継続される。このように、インキ7が筆記により減少するたびに中綿配置部8及び中綿4にインキ7が供給されるため、ペン先6に安定してインキ7を供給することができる。
【0052】
上記した第1の実施形態では、本体筒2と中継芯5によって仕切られた部分をインキタンク3として形成したが、インキタンク3は必ずしもこのように形成しなくてもよい。
例えば、図6に示される第2の実施形態のように、中継芯5の後端側の開口15の部分を塞いで形成した中継芯40を形成し、中継芯40の土台部44をインキタンク3として使用してもよい。なお、この場合も上記した場合と同様であって図6(a)〜(d)のように中綿4にインキ7を含浸させることができる。
また、図7に示される第3の実施形態のように、本体筒45の後端部分46と突出部11を一体的に形成することにより、本体筒45の後端部分46と中継芯41の土台部44を1つの部材とした中継芯41を形成し、中継芯41の土台部44(本体筒45の後端部分46)をインキタンク3として使用してもよい。
これら第2の実施形態又は第3の実施形態のように塗布具のインキを補充する場合、中継芯40(又は中継芯41)を予めインキ7を充填した新たな中継芯40(又は中継芯41)に交換するだけでインキ7の補充が可能であり、インキ7の補充作業が容易であるという効果がある。
【0053】
上記した実施形態では塗布具1がマーカーである例を示したが、本発明はこれに限るものではない。本発明は万年筆やボールペン、修正液等の塗布具であってもよい。したがって、本体筒2の原料及び形状は適宜変更可能である。
また、ペン先6も、繊維束の樹脂加工体、繊維束の熱融着加工体、フェルト加工体、パイプ状ペン体、先端にスリットを有する万年筆型板状ペン体、毛筆ペン体、合成樹脂の多孔質気泡体、ボールペンチップ、軸方向のインキ誘導路を有する合成樹脂の押出成形体等意4からによって形成されたものであり、先端部分が開口する原料及び形状は適宜変更してよい。
さらにまた、中綿4も上記したようにインキ7を含浸可能な連続気孔を有している部材であればよく、その形状も略直方体型に限らない。原料及び形状は適宜変更可能である。また、中綿4の密度は全体が均一でもよいし、均一でなくてもよい。中綿4に高密度部と低密度部を設けると、高密度部から低密度部へインキ7が移動し難いので、ペン先6に供給するインキ7の量の調整が容易である。
【0054】
上記した実施形態では、中継芯5が中綿4と接触している形態を説明したが、中継芯5と中綿4は必ずしも接触していなくてもよい。しかしながら中継芯5(の第1の孔や第2の孔)と中綿4が接触していないと、中継芯5の内径が小さい場合にインキ7に働く表面張力が重力を上回ってしまい、インキ7が中空部分21内に留まろうとするため、インキ7の中綿配置部8への供給時にインキ7の時間当たりの流出量が低減してしまうおそれがある。それに対して中継芯5と中綿4が接触していると、中綿4の毛細管力によってインキ7が引き寄せられてインキ7が円滑に流れるため、中継芯5の内径を小さく設計してもインキ7の時間当たりの流出量が安定する。したがって、このように中継芯5と中綿4が接触していることが好ましい。
【0055】
また上記した実施形態では、突出部11に設けた全ての孔(第1の孔13と第2の孔14)が中綿4に覆われている(接触している)形態を説明したが、必ずしも第1の孔13と第2の孔14の2つを中綿4に接触させる必要はない。例えば、直方体状の中綿に塗布液収容部3側から突出部11を接触させることにより、第1の孔13のみを接触させてもよい。また中綿4に凹部を形成する等の手段により、第2の孔14のみ中綿4に接触させ、第1の孔13を中綿4に接触させない構成にしてもよい。これらはインキ7の粘度や第1の孔13、第2の孔14の位置などに合わせて適宜変更してよい。しかしながら、このように変更すると、インキが中綿配置部8から溢れる等の問題が発生する虞があるため、第1の孔13と第2の孔14の2つを中綿4に接触させることが好ましい。
【0056】
上記した実施形態では第1の孔13の径と中空部分21の径(短手方向の長さ)が同じであったが、これらは同じでなくてもよい。第1の孔13の径と中空部分21の径は違っていてもよい。中空部分21の径は第1の孔13の径より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0057】
上記した実施形態では、突出部11の突出側先端の円形面に第1の孔13を設け、突出部11の側面の先端近傍に第2の孔14を設けたが、突出部11に設ける孔の位置は先端部分に限るものではない。
例えば、図8に示される第4の実施形態のように、第1の孔33と第2の孔34を共に側面に設けてもよい。このとき、これらの孔(第1の孔33と第2の孔34)の突出部11の軸方向における位置は同じでもよいし離れていてもよい。つまり、突出部11の突出方向の基端である面25から第1の孔33までの距離をY1、面25から第2の孔34までの距離をY2とすると、Y1とY2は等しくてもよいし、どちらかが長くてもよい。しかしながらY1とY2が同じである場合、塗布液収容部3への外気の導入が困難となり、第1の孔33や第2の孔34の径を大きくしなければならない。このようにすると強度が弱くなる等の問題があるため、第1の孔33と第2の孔34は突出部11の軸方向に離れていることが望ましい。
【0058】
上記した実施形態では、突出部11の形状が円筒状である形態を説明したが、突出部の形状はこれに限るものではない。また、突出部に設ける孔の数も2つに限るものではない。これらは2つ以上設けてもよい。
例えば、図9に示される第5の実施形態のように、円柱の先端部分を斜めに切り落としたような形状の突出部51であってもよい。さらに、先端の円形面に孔53を2つ設けてもよい。このとき円柱の先端部分に形成された円形面は、突出部51の突出方向に対して傾いているので、部分ごとに突出方向の位置(基端(面25)からの距離)が異なる。そのため2つの孔53は、基端に遠い位置にある孔53(53a)を上記した第1の孔13のように作用させ、基端に近い位置にある孔53(53b)を上記した第2の孔14のように作用させることができる。
また、図10に示される第6の実施形態のように突出部11の側面部に複数の第2の孔14を設けてもよい。
またさらに、図11に示される第7の実施形態のように円錐の先端部分を切断したような形状の突出部52であってもよい。なお、突出部52は先端部分の円形面に第1の孔13が設けられており、先端に向かうにつれて細くなっている面に複数の第2の孔14が設けられている。
【0059】
上記した実施形態では、第1の孔13と第2の孔14の開口形状を円形としたが、孔の開口形状は円形でなくてもよい。以下で図12(a)乃至図12(m)を参照しながら、孔の開口形状について説明する。突出部11に設けられる孔の開口形状は、円形(a)に限らず、楕円形(b)であってもよい。さらには、四角形が2つ重なったような十字架形(c)、略円形の孔が2つ連なったひょうたん形(d)、略「V」字状の所謂ブーメラン形(e)等のように楕円形や多角形を組みわせたような形状であってもよい。さらには平行四辺形状(f)、菱形状(g)、台形状(i)、五角形状(j)、三角形状(k)等の多角形状であってもよい。またさらに、星型状(h)、「L」字状(l)、一部に波状の曲線を用いた多角形状(m)であってもよい。このように突出部に設けられる孔の開口形状は適宜変更可能である。しかし、開口形状が円形である孔は加工が容易であるので製造上好ましい。
さらに、上記した実施形態のように、第1の孔13と第2の孔14は開口形状が同じでなくともよい。第1の孔13と第2の孔14はそれぞれ別の開口形状であってもよい。突出部に孔を2つ以上設けた場合も同様であり、孔はそれぞれ別の開口形状でもよく同じ開口形状でもよい。突出部に設ける孔の開口形状の組み合わせは任意である。
【0060】
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。なお、上記した第1の実施形態と同様の部分については、同じ番号を付して説明を省略する。
【0061】
第8の実施形態の塗布具60は、図13に示されるように、本体筒61、中継芯62(流路形成部)、インキタンク部63(塗布液収容部)を有している。そして、本体筒61の内側の中空部分の後側にはインキ7を貯留可能なインキタンク部63が配されており、中空部分の前側には中綿配置部68が形成されている。そして、本体筒61の中空部分の前後は中継芯62によって仕切られている。
【0062】
本体筒61は、先端部分69と後端部分70から形成されている。先端部分69の外観は、前側に向かうにつれて先細りする形状となっている。具体的には、後方側から前方側へ向かって、径の大きな筒状部分69a、径の小さな筒状部分69b、テーパ状の部分69c、最も径の小さな筒状部分69dの4つの部分が連続している。このとき、径の大きな筒状部分69aと径の小さな筒状部分69bは、段差を介して連続している。また、先端部分69の内部には長手方向に連通している内部空間71があり、この内部空間71も前側に向かうにつれて先細りになっている。また、先端部分69の内周面の後方端部には本体側螺旋溝69eが形成されている。
後端部分70は、一方に開放口が設けられた略有底円筒状の蓋体となっている。
【0063】
中継芯62は、ポリプロピレンやポリアセタール等の合成樹脂や金属等の適宜な材料によって形成されるものである。また図14に示されるように、中継芯62は突出部73と土台部74から形成されている。
【0064】
突出部73は円筒状の突出部本体75と、長方形平板状の押圧片76(押圧部)から形成されている。このとき、突出部本体75は土台部74の前端面77(図14における上端面)から前方(図14の上方)に向かって略垂直に突出している。また押圧片76は、突出部本体73の側面の円周方向に略180度ずれた2箇所にそれぞれ設けられており、突出部本体75の側面から外方へ突出している。ここで、2つの押圧片76は、いずれも突出部本体75の長手方向(突出方向)に対して略垂直な方向に突出している。したがって、2つの押圧片76は互いに離れる方向へ突出している。また、押圧片76は突出部本体75の長手方向に沿って延びている。具体的には、押圧片76の後端部分は土台部74の前端面77と接触しており、押圧片76の前端部分は突出部本体75の前端(突出方向先端であり図14の上端)よりやや後側(図14の下側)に位置している。つまり、2つの押圧片76はいずれも土台部74の前端面77(図14の上端面)から前方(図14の上方)に向かって略垂直に突出しており、長手方向の長さが突出部本体75よりもやや短くなっている。
なお押圧片76の幅L1、即ち、押圧片76の突出方向の長さL1は特に限定されるものではないが、2.0mm〜4.5mmが望ましく、さらに好適には4.0mmであることが望ましい。
また押圧片76の厚みL2、即ち、押圧片76の長手方向(延び方向)及び突出方向に対して略垂直な方向の長さL2は限定されるものではないが、1.0mm〜3.0mmが望ましく、さらに好適には1.5mmであることが望ましい。
【0065】
本実施形態の突出部73は、上記した第1の実施形態の突出部11に押圧片76を設けたような形状となっている。即ち、本実施形態の突出部本体75と第1の実施形態の突出部11は略同一の形状であり、本実施形態の突出部本体75にも第1の実施形態の突出部11と同様に第1の孔13と第2の孔14とが設けられている。この第1の孔13と第2の孔14については重複する説明を省略する。
【0066】
ここで本実施形態の第2の孔に注目すると、図14で示されるように、第2の孔14は、押圧片76の一つと突出部本体75の円周方向の位置が略同一となる位置に設けられている。そして第2の孔14は、押圧片76の前端面76a(図14における上端面)よりやや前方(図14における上方)に設けられている。つまり、第2の孔14の後方近傍(図14における下方近傍)に押圧片76の前端面76a(図14における上端面)が位置している。つまり実質的には、図13で示されるように、第2の孔14の上方に押圧片76の前端面76a(下端面)が位置しており、第2の孔14と押圧片76の前端面76a(下端面)とは近接した位置にある。
なお、押圧片76の前端面76aから第2の孔14の中心までの距離L3は、特に限定されるものではないが、0.5mm〜3.0mmが望ましく、さらに好適には1.0mmであることが望ましい。
【0067】
また本実施形態では、図15で示されるように、押圧片76の厚さ方向の長さL2が、第2の孔14の径L4と比べて長くなっている。このように、押圧片76の厚さL2は第2の孔14の径L4以上であることが望ましい。
【0068】
土台部74は、図14,15で示されるように、外筒部80と、外筒部80の内側に位置する内筒部81から形成されている。外筒部80は、図14乃至16で示されるように、一方に開放口86が設けられた略有底円筒状となっている。また内筒部81は略円筒状となっている。そして、内筒部81は外筒部80よりも径が小さく、外筒部80の中心部分に位置しており、内筒部81と外筒部80の中心軸は同一となっている。また、この内筒部81及び外筒部80は、いずれも前後方向(図15,16の上下方向)に延びる筒体となっている。
この内筒部81の前方端部は、図16に示されるように、外筒部80の内側底面87と連続しており、後方端部は、外筒部80の後端(図15,16の下端)より後方(図15,16の下方)に突出している。そして、内筒部81は前後方向(図16の上下方向)の長さが外筒部80より長くなっている。
また内筒部81の後方端部には、内筒部81の外周面が後方に向かうにつれて狭径となったテーパ部81aが形成されている。
【0069】
次に中継芯62の内部構造について説明する。
中継芯62の内部には、図16で示されるように、突出部73の内側と土台部74の内側にそれぞれ中空部分21,84,85が設けられている。
【0070】
突出部73の内側では、突出部本体75の内側に中空部分21が設けられている。この中空部分21は、上述の第1の実施形態の突出部11の内部に設けられた中空部分21と略同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0071】
土台部74の内側には、内筒部81の内側に設けられた中空部分84と、内筒部81の外周面と外筒部80の内周面の間に設けられた環状の中空部分85が形成されている。
内筒部81の内側に設けられた中空部分84は、断面形状が円形で延び、内筒部81の長手方向に沿って延びる空間である。
【0072】
ここで、突出部本体75の中空部分21と内筒部81の中空部分84は連結孔23を介して連続している。この連結孔23は、土台部74の開放口86に対向する位置にある底板部を内部から外部へ貫通する貫通孔であり、断面形状が円形で貫通方向に延びている。
【0073】
このとき、連結孔23と突出部本体75の中空部分21は、いずれも断面形状が円形で延びる孔であり、断面の径、孔の延び方向、中心軸が同一となっている。そして、連結孔23と突出部本体75の中空部分21が重なり合って1つの貫通孔を形成している。したがって、突出部本体75の中空部分21の内周面と連結孔23の内周面は同一面となっている。
さらに、連結孔23と内筒部81の中空部分84もまた、いずれも断面形状が円形で延びる孔であり、断面の径、孔の延び方向、中心軸が同一となっている。そして、連結孔23と内筒部81の中空部分84が重なり合って同一の貫通孔を形成している。したがって、内筒部81の中空部分84の内周面と連結孔23の内周面は同一面となっている。
即ち、中継芯62の内部には、突出部本体75の中空部分21、連結孔23、内筒部81の中空部分84が一体となって形成される内部空間89(中空孔)が形成されている。
この内部空間89は、内筒部81に形成された中空部分84の後端側の開口81bから、突出部本体75に形成された第1の孔13の開口までを貫通する貫通孔となっている。そして内部空間89は、断面形状が円形であり、断面の径が略同一で中継芯62の長手方向に沿って前後に延びている。このとき、内筒部81に形成された中空部分84の後端側の開口81bと、突出部本体75に形成された第1の孔13の開口とは対向する位置にあり、略同一の形状となっている。
【0074】
インキタンク部63は、図17,18で示されるように、外観が略円柱状のタンク本体部91と、本体筒係合部92から形成されている。
【0075】
タンク本体部91は、図18で示されるように、内側部分が空洞化されて内部空間94が形成されている。このとき、タンク本体部91の後方部分95は中心部分から後方に向かうにつれて内径及び外径が小さくなっている。またタンク本体部91の前方部分96では、中心部分から前方端まで略同じ内径及び略同じ外径で延びている。
【0076】
このとき、図17で示されるように、タンク本体部91の前方端(図17,18の下方端)には円形板状の底板部97が設けられている。このとき、底板部97はタンク本体部91の前方を塞ぐように設けられており、図18で示されるように、底板部97の天面である内側面97aと底板部97の底面である外側面97bとは、タンク本体部91の長手方向に略直交する面となっている。
【0077】
そして、図17,18で示されるように、この底板部97の中心部分には外部とタンク本体部91の内部空間94とを連通するインキ供給孔98が形成されている。このインキ供給孔98は、底板部97の外側面97bから内側面97aまでを貫通する貫通孔であり、断面形状が円形で貫通方向に延びている。そして、外側面97b及び内側面97aに設けられる開口の形状もまた円形となっている。ここで、底板部97の外側面97bに形成される開口98aの径は、特に限定されるものではないが、2.0mm〜7.0mmが望ましく、さらに好適には3.0mmであることが望ましい。
【0078】
また底板部97の外側面97bでは、底板部97の外側面97bに形成されるインキ供給孔98の開口を取り囲むように中継芯係合部99が設けられている。中継芯係合部99は、底板部97の外側面97bから略垂直下方へ突出する環状立壁となっている。この中継芯係合部99は、インキ供給孔98の開口の縁部分よりやや外側に離れた位置に設けられている。
【0079】
本体筒係合部92は、図18に示されるように、タンク本体部91の長手方向の中心部分近傍を取り囲むように位置する筒状部分92aと、当該筒状部分92aの内周面の前端部分(図18の下端部分)とタンク本体部91の外周面を連結する連結部92bによって形成されている。
ここで筒状部分92aの内周面は、タンク本体部91の外周面から外側にやや離れた位置にある。そして、筒状部分92aの内周面の前端部分とタンク本体部91の外周面の間には連結部92bが位置している。このとき連結部92bは、筒状部分92の内周面の前端部分、及びタンク本体部91の外周面の一部のそれぞれと一体となっており、これらと隙間なく連続している。したがって、筒状部分92aの内周面とタンク本体部91の外周面との間には、前端が閉塞されて後端が開放された環状溝100が形成されている。
また、筒状部分92aの外周面にはインキタンク側螺旋溝92cが形成されている。
【0080】
次に、本実施形態の塗布具60の組み立て構造について、図13を参照しつつ説明する。
本体筒61の先端部分69の前側端部にペン先6が取り付けられている。そして、先端部分69の内部空間71にはペン先6の後側に中綿4が設置されている。このとき、中綿4は、PP(ポリプロピレン)等の適宜な材料で形成された筒体(図示せず)内に詰め込まれた状態で、本体筒61内に設置されている。さらにこのとき、中綿4の前端とペン先6の後端が接触している。
【0081】
そして先端部分69の内部空間71には、中継芯62が挿通されている。このとき、中継芯62は突出部73が前方、土台部74が後方となるように挿通されている。そして、突出部73の突出部本体75及び2つの押圧片76の略全ての部分は中綿4に挿し込まれている。即ち、突出部本体75及び2つの押圧片76の前後方向の前端から後端付近までの部分が中綿4に挿し込まれている。さらに詳細には、中継芯62は中綿4の後方側から挿し込まれており、突出部73の突出部本体75及び2つの押圧片76は、中綿4を後方から前方へ(図13における上方から下方へ)押圧している。
【0082】
つまり、先端部分69の内部空間71において、中継芯62の土台部74の前端面77よりやや前方の部分から、内部空間71の前端近傍の部分までが中綿配置部68となっている。
【0083】
このとき、突出部73の第1の孔13の開口と、突出部73の第2の孔14の開口は、略全面に亘って中綿4で覆われている。そして、図19で示されるように、中綿4の後方端(図19の上端)の一部は、第1の孔13から突出部73の内部空間89(中空部分21)に入り込んでいる。即ち、突出部73の内部空間89の前端近傍(図19における下端近傍)には中綿4の一部が配されている。換言すると、第1の孔13の開口面より後方(図19における上方)に位置する部分に中綿4の一部が配されると共に、第1の孔13の開口が中綿4によって塞がれている。
【0084】
ここで、中継芯62の土台部74の外径(外筒部80の外径)と、本体筒61の先端部分69の内径は略同じであるため、本体筒61の先端部分69に中継芯62が嵌めこまれて固定される。
【0085】
また本体筒61の先端部分69には、内部空間94にインキ7が充填されたインキタンク部63が中継芯62の後方側から取付けられている。このとき、インキタンク部63の外周に形成されたインキタンク側螺旋溝92cと、本体筒61の先端部分69の内周面に形成された本体側螺旋溝69eとが螺合しており、インキタンク部63が本体筒61に固定されている。
またこのとき、図20で示されるように、内筒部81の後方端部が環状立壁である中継芯係合部99の内側に挿入されている。このとき、内筒部81の外径と中継芯係合部99の内径が略同じであるため、中継芯係合部99に内筒部81の後方端部が嵌めこまれて固定される。そして、図13で示されるように、インキ供給孔98の外側に位置する開口98aと、内筒部81に形成された開口81bとが接触している。このことにより、インキ供給孔98と内部空間89が接続され、これらがあたかも一体の貫通孔のようになる。
【0086】
さらに、インキタンク部63の後方から本体筒61の後端部分70が取付けられている。詳しくは、インキタンク部63に形成された環状溝100に、本体筒61の後端部分70の前方端部を挿入された状態になっている。
【0087】
以上で本実施形態の塗布具60の組み立て構造についての説明を終了する。
【0088】
以下さらに図21、図22を参照しながら本実施形態の塗布具60の作用について説明する。
筆記のためにペン先6を下側に向けると、図21(a)に示されるように、インキ7が重力によりインキタンク部63の内部空間94から中綿配置部68側へ移動する。このときインキ7は、インキ供給孔98を通過し、中継芯62の内部空間89の下方部分まで移動する。そして、突出部73の下端近傍まで移動したインキ7は、自身の重力並びに中綿4の毛細管力よって下方側へ引かれる。このことにより、インキ7が第1の孔13から中綿配置部68に供給される。つまり、中継芯62の内部空間89がインキ7を供給するときのインキ流通路となる。
【0089】
ここで本実施形態では、押圧片76によって中綿4を上方から押圧している。そのことにより、中綿4の下方部分に比較的空隙率が低下した中密度部103が形成される。つまり、中綿4を上方から押圧片76等で押圧することより、押圧された中綿4の一部が下方に押し寄せられて集積する。そのことにより、中綿4には、比較的空隙率が高く繊維密度の低い低密度部104が上方部分に形成され、比較的空隙率が低く繊維密度の高い中密度部103が下方部分に形成される。そしてペン先6は、中綿4の中密度部103より繊維密度が高い高密度部となっている。
つまり、本実施形態においては、中綿4の上方部分と下方部分に連続する繊維密度の異なる部分が形成され、下方に向かって繊維密度が高くなっている。そして、中綿4の後端からペン先6の前端に向かって低密度部104、中密度部103、高密度部(ペン先6)が連続している。なお本実施形態においては、図21(a)で示されるように、中綿4の前端から第2の孔14の上端付近までが中密度部103となっており、第2の孔14の上端付近から後方の部分が低密度部104となっている。
このことにより、インキ7をペン先6へ安定して供給することができる。例えば、インキ7が自身の重力だけでは第1の孔13の開口まで到達しないようなインキであっても、インキ7を中継芯62から中綿4へと引き込み、中綿4からペン先6へ移動させることができる。
【0090】
このとき、インキ7の供給に使用されない第2の孔14から外気(微細な量の空気)がインキタンク部63の内部空間94に導入される。そして、内部空間94内でインキ7と外気の交換が行われ、インキ7が第1の孔13から勢いよく中綿配置部68へ供給される。なお、第2の孔14は第1の孔13よりインキタンク部63に近い位置にあり、ペン先6を下側に向けた際に第1の孔13より上側に位置する。そのためインキ7は水圧の高い第1の孔13から中綿配置部68へ供給され、第2の孔14からインキ7が供給されることはない。
ここで、第1の孔13、第2の孔14の径や面積の大きさを上記した望ましい大きさにし、第2の孔14の先端部分からの距離を上記した望ましい位置にすることにより、インキ7の流速をより好ましい速さにすることができる。そのことにより、中綿配置部68へのインキ7の供給を安定させることができる。
【0091】
インキ7が中綿配置部68へ供給され続けることにより、図21(b)に示されるように、中綿4にインキ7が含浸されていく。なお、このとき第1の孔13と中綿4は接触しているので、第1の孔13近傍に到達したインキ7は中綿4の毛細管力によって引っ張られる。そのため、インキ7の表面張力等により第1の孔13近傍でインキ7の流れが滞るということがない。
【0092】
そしてインキ7が中綿4に含浸されていくと、中綿配置部68のインキ7の水位が上がっていく(水位の境界線がインキタンク部63側へ近づいていく)。上がっていく中綿配置部68のインキ7の水位はやがて第1の孔13の高さ(位置)に到達し、さらには図21(c)に示されるように、第1の孔13より高い位置(インキタンク部63に近い位置)まで上昇する。
【0093】
このように中綿配置部68のインキ7の水位が上がっていくと、やがて図21(d)に示されるように、第2の孔14の位置までインキ7で満たされる。そのことにより、第2の孔14が含浸されたインキ7によって液シール状態となって実質的に閉塞される。そして、インキタンク部63の内部空間94に外気を導入することができなくなり、中綿配置部68へのインキ7の供給が停止する。このとき、中綿4は前側(図21、22における下側)がインキ7に十分に含浸された状態となり、後側(図21、22における上側)はインキ7に含浸されない状態となる。なお、通常この中綿4の後側はインキ7に含浸されないが、周囲の温度が上昇した場合はその限りでは無い。
【0094】
そして、図22(a)のような中綿4の前側にインキ7が含浸された状態で筆記を続けると、やがて中綿4に含浸されたインキ7が減少し、図22(b)のように第2の孔14の液シール状態が解除される。すると、再びインキタンク3内に外気が勢いよく取り込まれるので、中綿配置部68へのインキ7の供給が開始される。そして図22(c)のように、第2の孔14が含浸されたインキ7によって再び液シール状態となるまで、中綿配置部68へのインキ7の供給が継続される。このように、インキ7が筆記により減少するたびに中綿配置部68及び中綿4にインキ7が供給される。そして、中綿4に供給されたインキ7は中密度部103から低密度部104へは流れにくくなっている。つまり、中綿4に供給されたインキ7がペン先6側へ向かって流れ易いため、ペン先6に安定してインキ7を供給することができる。
【0095】
上記した第8の実施形態では、第1の孔13と第2の孔14の開口の全域を中綿4が覆うように配置したが、必ずしもこれに限るものではない。第1の孔13又は第2の孔14の開口は中綿4で覆われていなくてもよく、第1の孔13又は第2の孔14の開口の一部分のみが中綿4で覆われている構成であってもよい。つまり、内部空間89内において突出部73の前端近傍に位置するインキ7を、中綿4の毛細管力で中綿4側に引っ張ることができるように、突出部73と中綿4とが配されていればよい。
【0096】
上記した第8の実施形態では、押圧片76は平板状であって突出部本体75の側面と土台部74の前端面77に接触する構成であったが、本発明の中継芯はこれに限るものではない。例えば、図23で示される第9の実施形態のように、突出部本体75に接触せずに土台部74から前方に突出する押圧片108を備えた中継芯109を採用してもよい。
また、図24で示される第10の実施形態のように、押圧片110が土台部74に接触せず、突出部本体75から延びる押圧片110を備えた中継芯111を採用してもよい。
また本発明の押圧片の形状は特に限定されるものではなく、第9の実施形態で示されるような丸棒状の押圧片であってもよく(図23参照)、第10の実施形成で示されるような鉤状(L字板状)の押圧片であってもよい(図24参照)。したがって、押圧片は、断面形状が四角形のような多角形状で延びる押圧片であってもよく、断面形状が円形で延びる押圧片であってもよい。また、一部が屈曲して延びる押圧片であってもよい。
即ち本発明の押圧片は、中綿を押圧することによって、中継芯のインク排出口(第1の孔13)近傍に位置する中綿の少なくとも一部又は全部を繊維密度が高い状態することができればよい。
【0097】
上記した各実施形態の押圧片はいずれも中継芯に2つ設けるものであったが、押圧片の数は1つでもよく、3つ以上でも構わない。
【0098】
上記した各実施形態では、中継芯の突出部と中綿の上端面とがなす角が略90度となるように接触させているが、中継芯の配置角度はこれに限るものではない。中継芯の突出部と中綿の上端面とがなす角は特に限定されるものではないが、70度以上90度以下となるように中継芯の突出部と中綿の上端面を接触させることが好ましい。
【0099】
上記した各実施形態で使用されるインキは特に限定されるものではないが、粘度が6.7mPa・sより大きく、且つ固体表面と接触したときの接触角が53.8度より小さく、さらに表面張力が33.5mN/mより小さい特性を持つインキを好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1,60 塗布具
2 本体筒
3 インキタンク(塗布液収容部)
4 中綿(塗布液吸蔵体)
5,40,41,62,109,111 中継芯(流路形成部)
6 ペン先(塗布体)
7 インキ(塗布液)
8 中綿配置部
11,51,52,73 突出部
12,44,74 土台部
13,33,53a 第1の孔(連通孔)
14,34,53b 第2の孔(連通孔)
21 中空部分
27,89 内部空間(中空孔)
63 インキタンク部(塗布液収容部)
76,108,110 押圧片(押圧部)
98 インキ供給孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填した塗布液が内部流動可能な塗布液収容部と、塗布液を塗布するための塗布体とを有し、塗布液収容部と塗布体の間に塗布液を含浸する塗布液吸蔵体を備え、塗布液収容部と塗布液吸蔵体の間に塗布液を流通可能な流路を有する流路形成部が設けられた塗布具であって、
前記流路形成部は1つの突出部を有し、突出部は塗布体側に向かって突出するものであり、突出部には内部に中空部分を有し、中空部分と連通する連通孔が2つ以上設けられていることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記突出部が塗布液吸蔵体と接触していることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記連通孔の少なくとも一つが突出部の先端近傍に設けられており、当該連通孔より突出部の基端側に他の連通孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記流路形成部は、押圧部を有しており、
前記押圧部の少なくとも一部は塗布液吸蔵体に上方から接触していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具。
【請求項5】
前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の塗布具。
【請求項6】
前記流路形成部は土台部と突出部から形成されており、土台部と突出部は径の異なる円筒状であって、それぞれの中心部分を連通する中空孔を有し、突出部の先端の円形面と、側面の先端近傍にそれぞれ前記中空孔と連通する孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布具。
【請求項7】
前記押圧部は、前記突出部の側面から外方へ向かって略垂直に突出する平板状の突起であり、突出部の突出方向の基端部分から先端部分の近傍まで延びるものであって、
前記突出部の側面の先端近傍に形成された連通孔の中心軸は、前記押圧部の突出方向と略平行に延びていることを特徴とする請求項6に記載の塗布具。
【請求項8】
塗布液吸蔵体の一部が前記流路形成部の内部に配されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の塗布具。
【請求項9】
前記流路形成部と塗布液収容部とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布具。
【請求項10】
前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布具。
【請求項11】
塗布液収容部は、下方に外部と内部空間とを連通する収容部側貫通孔が設けられており、
前記流路形成部は、土台部と突出部から形成され、前記土台部には筒状部が形成されており、筒状部は前記突出部の中空部分と連通するものであって、
前記流路形成部と塗布液収容部を取付けたとき、収容部側貫通孔と筒状部とが連通することを特徴とする請求項10に記載の塗布具。
【請求項1】
充填した塗布液が内部流動可能な塗布液収容部と、塗布液を塗布するための塗布体とを有し、塗布液収容部と塗布体の間に塗布液を含浸する塗布液吸蔵体を備え、塗布液収容部と塗布液吸蔵体の間に塗布液を流通可能な流路を有する流路形成部が設けられた塗布具であって、
前記流路形成部は1つの突出部を有し、突出部は塗布体側に向かって突出するものであり、突出部には内部に中空部分を有し、中空部分と連通する連通孔が2つ以上設けられていることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記突出部が塗布液吸蔵体と接触していることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記連通孔の少なくとも一つが突出部の先端近傍に設けられており、当該連通孔より突出部の基端側に他の連通孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記流路形成部は、押圧部を有しており、
前記押圧部の少なくとも一部は塗布液吸蔵体に上方から接触していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塗布具。
【請求項5】
前記押圧部の下端が前記連通孔より上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の塗布具。
【請求項6】
前記流路形成部は土台部と突出部から形成されており、土台部と突出部は径の異なる円筒状であって、それぞれの中心部分を連通する中空孔を有し、突出部の先端の円形面と、側面の先端近傍にそれぞれ前記中空孔と連通する孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布具。
【請求項7】
前記押圧部は、前記突出部の側面から外方へ向かって略垂直に突出する平板状の突起であり、突出部の突出方向の基端部分から先端部分の近傍まで延びるものであって、
前記突出部の側面の先端近傍に形成された連通孔の中心軸は、前記押圧部の突出方向と略平行に延びていることを特徴とする請求項6に記載の塗布具。
【請求項8】
塗布液吸蔵体の一部が前記流路形成部の内部に配されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の塗布具。
【請求項9】
前記流路形成部と塗布液収容部とが一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布具。
【請求項10】
前記流路形成部と塗布液収容部とが着脱自在に取付け可能であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の塗布具。
【請求項11】
塗布液収容部は、下方に外部と内部空間とを連通する収容部側貫通孔が設けられており、
前記流路形成部は、土台部と突出部から形成され、前記土台部には筒状部が形成されており、筒状部は前記突出部の中空部分と連通するものであって、
前記流路形成部と塗布液収容部を取付けたとき、収容部側貫通孔と筒状部とが連通することを特徴とする請求項10に記載の塗布具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−218795(P2011−218795A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48600(P2011−48600)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(390039734)株式会社サクラクレパス (211)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]