塗布剤、物品属性判別システム、物品属性判別方法および導体片
【課題】物品に容易に付加可能である物品属性判別のための塗布剤、該塗布剤を使用し正確な判別処理を可能にする物品属性判別システム、物品属性判別方法および導体片を提供すること。
【解決手段】物品10のマーカー領域12に塗布されたインクに対して、このインクに含まれる導体片12Aに配置される複数の導体素片13Aの周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生源2と、インクからの反射波の反射状態を検知する検知部3と、検知部3によって検知されたインクからの反射波のピーク波長が所定の波長であるか否かをもとに監視対象の物品10があるか否かを判別する判別部5と、判別部5によって監視対象の物品10があると判別された場合には警報を出力する出力部7とを備える。
【解決手段】物品10のマーカー領域12に塗布されたインクに対して、このインクに含まれる導体片12Aに配置される複数の導体素片13Aの周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生源2と、インクからの反射波の反射状態を検知する検知部3と、検知部3によって検知されたインクからの反射波のピーク波長が所定の波長であるか否かをもとに監視対象の物品10があるか否かを判別する判別部5と、判別部5によって監視対象の物品10があると判別された場合には警報を出力する出力部7とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、属性判別対象の物品に塗布される塗布剤、該塗布剤を使用する物品属性判別システム、物品属性判別方法および導体片に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波に共振するもの、または、磁界に共鳴するものが内蔵されているタグを
物品に取り付け、このタグの共振または共鳴を利用して物品を監視する物品監視システムが提案されている(たとえば特許文献1〜3参照)。このような物品監視システムでは、電界または磁界を発し、電波や磁界のゆらぎを検知することでタグの有無を判別し、監視対象の物品があるか否かを判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−94841号公報
【特許文献2】特表2001−517842号公報
【特許文献3】特開平9−147249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、物品に取り付けるタグのサイズが数cmと大きいため、物品が小さい場合にはタグを取り付けることができず物品の大きさが制限されるほか、タグの取付位置も制限される場合があった。また、従来では、物品ごとに一つ一つタグを取り付けるという煩雑な処理を行う必要がある上、タグ自体の大きさも大きいため、タグに要するコストも無視できないものとなっていた。そして、従来の物品監視システムでは、検知した電波や磁界のゆらぎがタグに起因しない他のものによる場合もあり、誤検知も多かった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、物品に容易に付加可能である物品属性判別のための塗布剤、該塗布剤を使用し正確な判別処理を可能にする物品属性判別システム、物品属性判別方法および導体片を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる塗布剤は、物体に塗布される塗布剤であって、電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有する平板状の導体片を含むことを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記複数の導体素片は、2次元格子状に配置されることを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記複数の導体素片は、5周期以上並んでいることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記導体片は、前記周期が互いに異なる2以上の領域を有することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記周期が互いに異なる複数種の前記導体片を含むことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記周期は、前記所定の波長と等しいことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、上記いずれか一つに記載の塗布剤が塗布された物品と、前記物品に塗布された塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生手段と、前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知手段と、予め求められた前記塗布剤からの反射波の反射状態と前記物品の属性との対応関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波の反射状態とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別手段と、前記判別手段による判別結果を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、前記判別手段は、予め求められた前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長と前記物品の属性との対応関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、上記いずれか一つに記載の塗布剤が塗布された物品と、前記塗布剤に対し、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の各周期に対応した2以上の波長の電磁波を発する電磁波発生手段と、前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知手段と、予め求められた前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別手段と、前記判別手段による判別結果を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、前記電磁波は、赤外線または電波であることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、前記電磁波発生手段は、前記電磁波をパルス発振することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、物品に塗布された上記いずれか一つに記載の塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生ステップと、前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知ステップと、予め求められた前記塗布剤からの反射波の反射状態と前記物品の属性との対応関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波の反射状態とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別ステップと、前記判別ステップにおける判別結果を出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、前記判別ステップは、予め求められた前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長と前記物品の属性との対応関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、物品に塗布された請求項上記いずれか一つに記載の塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の各周期に対応した2以上の波長の電磁波を発する電磁波発生ステップと、前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知ステップと、予め求められた前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別ステップと、前記判別ステップにおける判別結果を出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、前記電磁波は、赤外線または電波であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、前記電磁波発生ステップは、前記電磁波をパルス発振することを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる導体片は、電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有し、平板状であることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる導体片は、前記複数の導体素片は、2次元格子状に配置されることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる導体片は、前記複数の導体素片は、5周期以上並んでいることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる導体片は、前記周期が互いに異なる2以上の領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる塗布剤は、電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有する平板状の導体片を含むことによって、電磁波を照射したときの反射波の強度が波長依存性を示すため、物品判別に使用可能であるとともに、塗布剤であることから物品に容易に付加可能である。
【0027】
また、本発明にかかる物品属性判別システムは、上記記載の塗布剤を属性判別対象の物品に塗布し、該塗布剤に含まれる導体片に形成される複数の導体素片の周期構造に対応した波長の電磁波を発し、塗布剤からの反射波の反射状態と、予め求められた塗布剤からの反射波の反射状態と物品の属性との対応関係とをもとに電磁波が発せられた物品の属性を判別することによって正確な判別処理を可能にする。
【0028】
また、本発明にかかる物品属性判別方法は、上記記載の塗布剤を属性判別対象の物品に塗布し、該塗布剤に含まれる導体片に形成される複数の導体素片の周期構造に対応した波長の電磁波を発し、塗布剤からの反射波の反射状態と、予め求められた塗布剤からの反射波の反射状態と物品の属性との対応関係とをもとに電磁波が発せられた物品の属性を判別することによって正確な判別処理を可能にする。
【0029】
また、本発明にかかる導体片は、電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有し、平板状であるため、電磁波を照射したときの反射波の強度が波長依存性を示すため、物品判別に使用可能であるとともに、塗布剤などに容易に混ぜ入れることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる物品監視システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1におけるインクに含まれる導体片の平面図である。
【図3】図3は、図2に示す説明する図である。
【図4】図4は、図1に示す物品監視システム1の物品監視処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施の形態1におけるインクに含まれる導体片の他の例を示す平面図である。
【図6】図6は、実施の形態1におけるインクに含まれる導体片の他の例を示す平面図である。
【図7】図7は、実施の形態1におけるインクに含まれる導体片の他の例を示す平面図である。
【図8】図8は、実施の形態2にかかる物品監視システムの概略構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、実施の形態2におけるインクに含まれる導体片の平面図の一例を示す図である。
【図10】図10は、図9に示す導体片から発生する反射波を説明する図である。
【図11】図11は、図9に示す導体片から発生する反射波を説明する図である。
【図12】図12は、図8に示す物品監視システム201の物品監視処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態3にかかる所属判別システムの概略構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、図13に示す判別部が参照する所属先対応表の一例を示す図である。
【図15】図15は、図1に示す所属判別システムの所属判別処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】図16は、実施の形態3におけるIDカードの他の例を示す平面図である。
【図17】図17は、図13に示す判別部が参照する所属先対応表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明にかかる実施の形態である塗布剤および物品属性判別システムについて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0032】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。実施の形態1にかかる物品属性判別システムとして、物品監視システムを例に説明する。図1は、実施の形態1にかかる物品監視システムの概略構成を示すブロック図である。
【0033】
図1に示すように、実施の形態1にかかる物品監視システム1は、所定波長の電磁波を発する電磁波発生源2と、物品10からの反射波の反射状態を検知する検知部3と、物品監視システム1の各構成部の動作処理を制御する制御部4と、検知部3によって検知された物品10からの反射波の反射状態とをもとに監視対象の物品があるか否かを判別する判別部5と、各種情報を入力する入力部6と、判別部5による判別結果を出力する出力部7とを備える。電磁波発生源2および検知部3は人が出入りするゲートに設けられており、物品監視システム1は、このゲートを通って出ていく人と一緒に監視対象の物品10も持ち出されていないかを監視している。出力部7は、判別部5によってゲート近辺に監視対象の物品10があると判別された場合には、監視対象の物品がゲート外に持ち出されている旨を警告する警報を出力する。
【0034】
監視対象の物品10は、印刷面11の一部のマーカー領域12が所定のインクを用いて印刷されている。このインクには、所定の周期構造を有する平板状の導体片が、たとえば5〜10個/cm2の割合で含まれている。図2は、このインクに含まれる導体片の平面図である。
【0035】
図2に示すように、マーカー領域12印刷用のインクに含まれる導体片12Aは、基材に、行列状に複数の導体素片13Aが配置されており、この導体素片13Aの配置周期は、電磁波発生源2から照射される電磁波の波長λaと等しい。導体素片13Aと、この導体素片13Aに隣り合う基材枠14Aとは、ピッチ幅Lpで行列状に周期的に形成され、導体素片13Aの長さLwと、導体素片13Aに隣り合う基材枠14Aの長さLfとを合わせたピッチ幅Lpは、波長λaと同じ長さとなるように設定されている。なお、この基材は、非導体材料、シリコン材料などで形成される。
【0036】
このように波長λaと等しい周期で複数の導体素片13Aが配置された導体片12Aの導体素片形成面に、波長λaの電磁波がほぼ正面から照射された場合には、この電磁波と導体片12Aの周期構造との間で共振が発生し、図3のように、電磁波の波長λaに対応した波長Waで強い反射波が発生する。この波長Waをピークとする反射波は、波長λaと同間隔で導体素片13Aが形成された導体片12Aに波長λaの電磁波を照射した場合にのみ発生する。言い換えると、導体片12Aに波長λa以外の波長の電磁波を照射しても波長Waをピークとする反射波は発生しない。
【0037】
したがって、マーカー領域12に使用されるインクは、電磁波の所定の波長と同周期で配置された複数の導体素片13Aを有する平板状の導体片12Aを含むことによって、電磁波を照射したときの反射波の強度が波長依存性を示し、この導体片12Aを含むインクで印刷されたマーカー領域12に波長λaの電磁波を照射した場合には、この波長λaの電磁波に対応した波長Waにピークを有する反射波が発生する。
【0038】
そこで、物品監視システム1においては、全ての監視対象の物品10に、導体片12Aを含むインクを用いて印刷面11の少なくとも一部のマーカー領域12に印刷処理を行った上で、所定の波長λaの電磁波に対する反射波の反射状態を検知し、波長Waにピークを有する反射波があるか否かをもとに監視対象の物品があるか否かを判別している。
【0039】
図4を参照して、図1に示す物品監視システム1の物品監視処理について説明する。図4は、図1に示す物品監視システム1の物品監視処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
図4に示すように、制御部4は、たとえば入力部6から入力された物品監視開始の指示情報を受信した後に(ステップS1)、電磁波発生源2に電磁波の発生を開始させ(ステップS2)、この電磁波発生源2による電磁波発生処理に同期させて検知部3に反射波の検知を開始させる(ステップS3)。
【0041】
この場合、電磁波発生源2は、検知精度を高めるために、波長λaを含む波長範囲で電磁波をパルス発振する。ここで、電磁波の波長が長いほど透過性が向上し、電磁波の波長が短いほど分解能が向上するため、電磁波発生源2が発する電磁波の波長は、監視対象の物品に対応させて所望の検知精度を満たすように設定される。そして、透過性および分解能を考慮すると、電磁波発生源2が発する電磁波は赤外線または電波が適している。
【0042】
このため、電磁波発生源2が発振する電磁波の周波数は、1THz〜300THzの範囲内が望ましい。なお、1THzの周波数に対応する電磁波の波長は、いわゆるテラヘルツ光である300μmであり、300THzの周波数に対応する電磁波の波長は、赤外線に相当する1μmである。この中でも、透過性および分解能のいずれも適切に確保するためには、電磁波発生源2が発振する電磁波の周波数は10THz前後が最適であるものと考えられる。
【0043】
また、検知部3は、制御部4を介して、判別部5に物品10のマーカー領域12からの反射波の反射状態を出力する。この検知部3の検知範囲は、導体片12Aの周期構造に対応して強く反射する波長Waを少なくとも含むように設定される。なお、導体片12Aからの反射波として、波長Waのみならず波長Waの1/整数の波長でもピークが生じる。ただし、波長Waそのものにおいて最もピーク強度が高いことから、検知処理を効率よく行うには、検知部3の検知範囲を、波長Waを含み、波長Waの1/2以上の範囲に適宜設定するのがよい。
【0044】
そして、判別部5は、検知部3による検知結果においてピークを有する反射波があるか否かを判断する(ステップS4)。判別部5は、ピークを有する反射波がないと判断した場合には(ステップS4:No)、導体片12Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS5)。
【0045】
一方、判別部5は、ピークを有する反射波があると判断した場合には(ステップS4:Yes)、この反射波のピーク波長と、基準となるピーク波長(Wa)とを比較し(ステップS6)、反射波のピーク波長が基準となるピーク波長とほぼ一致するか否かを判断する(ステップS7)。
【0046】
判別部5は、反射波のピーク波長が基準となるピーク波長(Wa)とほぼ一致しないと判断した場合には(ステップS7:No)、導体片12Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS5)。
【0047】
これに対して、判別部5は、反射波のピーク波長が基準となるピーク波長(Wa)とほぼ一致すると判断した場合には(ステップS7:Yes)、導体片12Aが存在する場合に対応するため、この導体片12Aを含むインクで印刷された監視対象の物品10があると判断し(ステップS8)、判断結果を制御部4に出力する。なお、判断基準となる反射波の波長Waは、導体片12Aに実際に波長λaの電磁波を照射し、その反射波を検出することによって予め求められ、判別部5に記憶される。反射波のピーク波長が基準となる波長Waである場合には監視対象の物品10がある場合に対応し、反射波にピーク自体が発生しない場合及びピーク波長が基準となる波長Waでない場合には監視対象の物品10がない場合に対応するという監視対象の物品10の属性と反射波の反射状態との対応関係は、予め求められ、判別部5に記憶される。
【0048】
続いて、出力部7は、制御部4の制御のもと、監視対象の物品10がある旨を示す警報を出力する警告処理を行う(ステップS9)。物品監視システム1の使用者は、この警報によって、監視対象の物品がゲートを通ったことを認識することができる。
【0049】
そして、制御部4は、監視対象の物品がないと判断した後(ステップS5)、または、警告処理終了後(ステップS9)、物品監視終了の指示があるか否かを判断する(ステップS10)。制御部4は、物品監視終了の指示がないと判断した場合には(ステップS10:No)、検知処理を継続するため、ステップS4に戻り、検知部3の検知結果においてピークを有する反射波があるか否かを判断する。一方、制御部4は、物品監視終了の指示があると判断した場合には(ステップS10:Yes)、電磁波発生源2による電磁波の発生を停止させ(ステップS11)、検知部3による反射波の検知を終了させて(ステップS12)、物品監視システム1の物品監視処理を終了する。
【0050】
このように、実施の形態1では、物品10のマーカー領域12に印刷されるインク中の導体片12Aの導体素片13Aのピッチ幅Lpと照射する電磁波の波長λaとを等しくすることによって、波長λaの電磁波を照射した場合に導体片12Aに固有のピーク波長(Wa)を有する反射波が発生するように設定し、この固有のピーク波長(Wa)で反射波が生じたか否かを検知して、監視対象の物品10がゲート外に持ち出されていないかを監視している。
【0051】
このため、実施の形態1では、監視対象の物品10を監視するために、監視用のタグなどを物品ごとに取り付けるという煩雑な処理を行う必要がなく、この導体片12Aを含むインクを用いて監視対象の物品10の印刷面のいずれかの領域を印刷するだけで足り、取り付け対象の物品10の形状を損なうこともない。
【0052】
そして、実施の形態1では、物品判別用に使用する所定の導体片12Aは、電磁波を照射したときの反射波の強度が波長依存性を示すため、物品判別に使用可能であるとともに、塗布剤などに容易に混ぜ入れることが可能である。また、物品判別用に使用するものは、この所定の導体片12Aを含む塗布剤であることから、物品に容易に付加可能である。
【0053】
また、実施の形態1では、導体片12Aを含むインク用の印刷領域さえ確保できれば足りるため、どのような大きさの物品に対しても適用可能である。そして、実施の形態1では、電磁波として透過性の高い赤外線や電波を使用するため、この導体片12Aを含むインクを印刷する領域も特に制限されることはなく、物品10の表面や物品10内部の領域など自由に選択可能である。
【0054】
そして、この導体片12Aは、これまで一般的に用いられたシリコンプロセスなどにおけるエッチング加工処理や、蒸着処理あるいはメッキ処理を用いて製造できるため、特に複雑な方法を用いることもなく容易に製造することができる。
【0055】
また、この導体片12Aの導体素片13Aは、検知精度を保持するために縦方向および横方向のいずれも5周期以上配置されることが必要であり、さらに厳密な検知を実現するためには10周期程度配置されることが望ましい。ここで、電磁波の波長λaは1μm〜300μmであることから、この波長λaと同間隔のピッチ幅Lpで縦方向および横方向に10周期程度の導体素片13Aを形成したとしても、導体片12Aの一辺の大きさは大きくとも3mm程度である。実際に使用される電磁波としては10μm程度の波長が望ましいため、この波長に対応させて、たとえば導体素片13Aの長さLwを8μmとし、基材枠14Aの長さLfを2μmとし、ピッチ幅Lpを10μmとし、縦方向および横方向に導体素片13Aをそれぞれ10周期形成した場合には、導体片12Aの一辺の長さLa(図2参照)は、100μm程度しかない。このように、導体片12Aの大きさは、大きくとも3mm程度と小さいため、導体片12Aに要するコストも抑制することができる。また、導体片12Aにおいては、導体素片13Aの長さLwおよび基材枠14Aの長さLfを合わせたピッチ幅Lpが波長にほぼ対応していれば、各導体素片13Aおよび各基材枠14Aの長さに多少のサイズばらつきがあっても検知可能であるため、歩留まり自体も高く低コスト化が可能になる。
【0056】
そして、実施の形態1では、特定波長の電磁波と導体片12Aの周期構造との共振による反射波の強度の固有の波長依存性を利用するため、高い検知精度を実現できる。さらに、物品監視システム1では、導体片12Aのピッチ幅Lpを調整し、照射する電磁波の波長λaと検知する反射波の波長Waとを、一般的に使用されている電磁波使用機器で用いられていない波長に設定することによって、他の電磁波使用機器での使用電磁波を監視用の反射波として誤検知することがなくなるため、正確な監視処理を実現することができる。
【0057】
また、この監視対象の物品10を監視不要としたい場合には、強度の高い電磁波をマーカー領域12に照射し、導体片12Aのパターンを破損させるだけでよい。または、マーカー領域上に、電磁波を吸収または反射する導電性シートを貼付するだけでよい。これによって、波長λaの電磁波がマーカー領域12に照射されても、固有のピーク波長Waを有する反射波が発生することはないため、物品監視システム1において誤って検知されることはない。
【0058】
なお、実施の形態1では、導体片12Aを含むインクを用いて印刷した場合を例に説明したが、印刷方法に制限はなく、スクリーン印刷などによって印刷してもよい。また、インクに限らず、導体片12Aを含む接着剤を用いて物品と包装部材を接着させてもよく、導体片12Aを含むコーティング剤で物品の一部をコーティングしてもよい。すなわち、実施の形態1では、この導体片12Aを含む塗布剤を監視対象の物品10の少なくとも一部に塗布すればよい。塗布剤は、導体片12Aを所定割合で含めることができるものであればよく、たとえば樹脂材料で形成される。
【0059】
また、導体片12Aを含む塗布剤は、照射される電磁波を導体片12Aの導体素片形成面のほぼ正面で受けられるよう、導体素片形成面が一様に揃うように塗布されることが望ましい。さらに、導体素片形成面が一様に揃うように、塗布剤の塗布厚さを、この導体素片形成面の一辺の大きさよりも薄くなるように設定してもよい。
【0060】
また、図1に示す例では、マーカー領域12を印刷面11の他の領域と区別できるように印刷した場合を例に説明したが、もちろん、マーカー領域12を印刷面11の他の領域と区別できないように同色、同模様で印刷してもよい。この場合には、物品監視用のマーカー領域12が物品10のどこに位置するのかを判別することができないため、不正にシールド材が貼付されることを防止でき、物品監視システム1の不正すり抜けを防止することができる。
【0061】
また、実施の形態1に使用されるインク内の導体片は、照射される電磁波の波長λaと等しい周期で2次元格子状に複数の導体素片が配置されていれば、電磁波との共振が可能である。
【0062】
このため、導体片に必ずしも行列状に正方形状の導体素片を配置する必要はなく、たとえば図5に示す導体片12Bのように、六角形の導体素片13Bを2次元格子状に配置してもよい。この場合、この貫通穴13Bの長さLwbと基材枠14Bの長さLfbとを合わせたピッチ幅が電磁波の波長λaと等しいLpとなるように設定される。また、図6に示す導体片12Cのように、円形の導体素片13Cを2次元格子状に配置してもよい。この場合も、この導体素片13Cの長さLwcと基材枠14Cの長さLfcとを合わせたピッチ幅が電磁波の波長λaと等しいLpとなるように設定される。また、導体片自体の平面形状も矩形に限るものではなく、図7に示す導体片12Dのように、円形の平面形状を有していてもよい。また、導体片は、電磁波との共振が可能であれば、もちろん2次元格子状に限らず直線的に複数の導体素片を配置してもよい。
【0063】
また、実施の形態1においては、電磁波の波長と等しい周期で複数の導体素片を配置した導体片を例に説明したが、もちろんこれに限らない。電磁波の波長の整数倍の周期で複数の導体素片を配置した平板状の導体片においても同様に、照射された所定波長の電磁波と周期構造との間で共振が発生し、電磁波の波長に対応した波長で強い反射波が発生するため、実施の形態1と同様に監視対象の物品を検知可能である。この場合、反射波のうち反射強度がもっとも高い波長は、導体素片の周期の1/整数倍となり、これにともない、反射波の反射強度が最も高い周波数は、周期の整数倍となる。
【0064】
また、実施の形態1においては、基材に導体素片を設けた導体片を例に説明したが、これに限らない。たとえば、基材に、上述した各導体素片に代えて貫通孔を設けた導体片であってもよい。この場合には、貫通孔は、各導体素片と同形状であり、各導体素片と同配列で、設けられる。すなわち、各貫通孔の長さと基材枠の長さとを合わせたピッチ幅が照射される電磁波の波長と等しくなるように設定される。そして、この導体片からの反射波の強度は、図3に示す反射波とは強度が上下逆となり、所定の波長(図3では波長Wa)では所定の強度から強度の低いほうに向かうピークが現れる。このため、判別部5は、図4のステップS4では、検知部3による検知結果において強度の低いほうにピークを有する反射波があるか否かを判断すればよい。
【0065】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、2以上の波長の電磁波を検知用として用い、周期が互いに異なる2以上の領域を有する導体片を含むインクを用い、視対象の物品のマーカー領域への電磁波の照射角度によらず監視対象の物品を正確に検知できるようにしている。
【0066】
図8は、実施の形態2にかかる物品監視システムの概略構成を示すブロック図である。図8に示すように、実施の形態2にかかる物品監視システム201は、図1に示す物品監視システム1と比較し、制御部4に代えて、物品監視システム201の各構成部の動作処理を制御する制御部204を有し、判別部5に代えて判別部205を有する。そして、電磁波発生源2は、監視対象の物品10に所定の2以上の波長の電磁波を発する。
【0067】
監視対象の物品10は、印刷面11の一部のマーカー領域212が、所定のインクを用いて印刷されている。このインクには、所定の周期構造を有する平板状の導体片が、たとえば5〜10個/cm2の割合で含まれている。そして、この導体片は、周期が互いに異なる2以上の領域を有する。
【0068】
この導体片について、図9を参照して説明する。図9は、このインクに含まれる導体片の平面図の一例を示す図である。図9に示すように、マーカー領域212印刷用のインクに含まれる導体片212Aは、4つの領域Sb1,Sb2,Sc1,Sc2に分割されており、領域Sb1,Sb2は、ピッチ幅Lpbで行列状に導体素片213bが配置され、領域Sc1,Sc2は、ピッチ幅Lpbとは異なるピッチ幅Lpcで行列状に導体素片213cが配置される。
【0069】
この導体片212Aの導体素片形成面に、導体素片213bのピッチ幅Lpbと同じ長さの波長λbの電磁波が照射された場合には、この波長λbの電磁波と導体片212Aの領域Sb1,Sb2の周期構造との間で共振が発生し、図10に示すように、電磁波の波長λbに対応した波長Wbで強い反射波が発生する。そして、導体片212Aの導体素片形成面に、導体素片213cのピッチ幅Lpcと同じ長さの波長λcの電磁波が照射された場合には、この波長λcの電磁波と導体片212Aの領域Sc1,Sc2の周期構造との間で共振が発生し、図10に示すように、電磁波の波長λcに対応した波長Wc(>Wb)で強い反射波が発生する。さらに、波長λbおよび波長λcの電磁波を同じ照射強度で照射した場合には、波長Wcの反射波のピーク強度の方が、波長Wbの反射波のピーク強度よりも強くなる関係を有する。
【0070】
したがって、物品10のマーカー領域212に波長λbおよび波長λbの電磁波を照射した場合には、この波長λb,λcの電磁波にそれぞれ対応した波長Wb,Wcの2箇所でピークを有する反射波が発生する。そして、この波長Wb,Wcの2箇所でピークを有する反射波は、波長Wcの反射波のピーク強度の方が、波長Wbの反射波のピーク強度よりも強くなるという固有の強弱関係を保持した状態で発生する。
【0071】
ここで、導体片の導体素片形成面に、正面からではなく斜め方向から電磁波が入射した場合には、電磁波の入射によって各周期構造との共振は発生するものの、電磁波が入射する周期構造のピッチ幅が相対的に変わるため、反射波の反射状態が変化する。すなわち、反射波のピーク波長は、正面から電磁波が入射した際のピーク波長から電磁波の入射角度に応じた変化量で短波長側にシフトし、反射波のピーク強度は、正面から電磁波が入射した際のピーク強度から電磁波の入射角度に応じた変化量だけ弱くなる。
【0072】
そして、判別基準となる反射波としてピークが1箇所にしか設定されていない場合には、検知部3による検知結果にピークを有する反射波があっても、この反射波のピーク波長が基準となるピーク波長と異なるときには、インクに含まれる導体片以外のものに起因した反射波であるのか、導体素片形成面に対して斜めから照射されたためピーク波長がシフトしたのかを区別できない場合がある。
【0073】
これに対し、本実施の形態2においては、2以上の波長でピークを有する反射波が発生するように導体片212Aの平面構造が設定されている。そして、導体片212Aの導体素片形成面の斜めから電磁波が入射した場合には、各所定波長の電磁波の入射角度に応じた変化量で反射波のピーク波長とピーク強度がシフトするものの、各ピーク波長のピーク強度は固有の強弱関係を保持したままである。
【0074】
このため、判別部205は、検知部3によって検知された反射波に2以上の波長でピークがあるか否か、さらに、所定の強弱関係を保持した状態でピークが発生しているか否かを判断することによって、実際に検知できた反射波が導体片212Aに起因したものであるか否かを判断している。
【0075】
具体的には、導体片212Aの導体素片形成面のほぼ正面から波長λb,λcの電磁波が入射した場合には、この電磁波と導体片212Aの周期構造との間で共振が発生し、図11(1)のように、波長Wbに強度Gbのピークを有する反射波と、波長Wcに強度Gc(>Gb)のピークを有する反射波とが発生する。
【0076】
一方、導体片212Aの導体素片形成面に対して斜めから波長λb,λcの電磁波が入射した場合には、図11(2)に示すように、波長Wb,Wcの2箇所で発生したピーク波長は、入射角度に応じてそれぞれ短波長側の波長Wb´,Wc´にシフトする。さらに、入射角度に応じた変化量だけピーク強度がそれぞれ強度Gb´,Gc´に低下する。この場合、電磁波の波長λbに対応する波長Wb´の反射波のピーク強度と、電磁波の波長λcに対応する波長Wc´の反射波のピーク強度とは、波長Wc´の反射波のピーク強度の方が、波長Wb´の反射波のピーク強度よりも強くなるという固有の強弱関係を保持する。
【0077】
したがって、判別部205は、検知部3の検知した反射波の反射状態において、導体片212Aの2種類の周期構造に対応した2波長または該2波長よりもそれぞれ短波長側の2波長ピークがある場合であって、この2波長におけるピーク強度の強弱関係が、基準となる2波長のピーク強度の強弱関係と一致した場合(図11に示す例では長波長側に発生した波長Gc´の反射波のピーク強度が、短波長側で発生した波長Gb´の反射波のピーク強度よりも大きい場合)には、導体片212Aが存在する場合であると判断できるため、監視対象の物品10があると判別する。
【0078】
図12を参照して、図8に示す物品監視システム201の物品監視処理について説明する。図12は、図8に示す物品監視システム201の物品監視処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0079】
図12に示すように、制御部204は、たとえば入力部6から入力された物品監視の開始の指示情報を受信した後に(ステップS21)、電磁波発生源2に電磁波の発生を開始させ(ステップS22)、この電磁波発生源2による電磁波発生処理に同期させて検知部3に反射波の検知を開始させる(ステップS23)。
【0080】
この場合、電磁波発生源2は、検知精度を高めるため、波長λb,λcを含む波長範囲で電磁波をパルス発振する。また、検知部3は、制御部204を介して、判別部205に物品10のマーカー領域212からの反射波の反射状態を出力する。この検知部3の検知範囲は、導体片212Aの周期構造に対応して強く反射する波長Wb,Wcを少なくとも含むように設定される。また、検知処理を効率よく行うには、検知部3の検知範囲を、波長Wb,Wcを含み、短波長側の波長Wbの2倍未満の範囲に適宜設定すればよい。
【0081】
そして、判別部205は、検知部3による検知結果において波長Wb,Wcの2箇所または波長Wb,Wcよりもそれぞれ短波長側の2箇所でピークを有する反射波があるか否かを判断する(ステップS24)。判別部205は、この2箇所でピークを有する反射波がないと判断した場合には(ステップS24:No)、導体片212Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS25)。
【0082】
なお、このステップS24において、判別部205は、検知結果における2つのピーク波長と、基準となるピーク波長Wb,Wcとのシフト量についてもさらに判断してもよい。導体片の導体素片形成面への電磁波の入射角度θとした場合、反射波のピーク波長は、正面から電磁波が入射した際のピーク波長からそれぞれcosθに対応する波長分シフトする。このため、判別部205は、ステップS24において、反射波の2箇所のピークのピーク波長が、基準となるピーク波長Wb,Wcからそれぞれcosθに対応する波長分シフトしているか否かをさらに判断する。この場合、判別部205は、2箇所でピークを有する反射波がないと判断した場合、または、2箇所でピークを有する反射波があった場合であっても反射波の2箇所のピークのピーク波長が基準となるピーク波長Wb,Wcからそれぞれcosθに対応する波長分シフトしていないと判断した場合には(ステップS24:No)、導体片212Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS25)。これに対し、判別部205は、この2箇所でピークを有する反射波があると判断した場合であり、さらに反射波の2箇所のピークのピーク波長が基準となるピーク波長Wb,Wcからそれぞれcosθに対応する波長分シフトしていると判断した場合には(ステップS24:Yes)、後述するステップS26に進む。
【0083】
そして、判別部205は、この2箇所でピークを有する反射波があると判断した場合には(ステップS24:Yes)、この反射波の2箇所のピーク強度の強弱関係と、基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係とを比較し(ステップS26)、反射波の2箇所のピーク強度の強弱関係が、基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係と一致するか否かを判断する(ステップS27)。判別部205は、反射波の2箇所のピーク強度の強弱関係が、基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係と一致しないと判断した場合には(ステップS27:No)、導体片212Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS25)。
【0084】
これに対して、判別部205は、反射波の2箇所のピーク強度の強弱関係が、基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係と一致すると判断した場合には(ステップS27:Yes)、導体片212Aが存在する場合に対応するため、この導体片212Aを含むインクで印刷された監視対象の物品10があると判断し(ステップS28)、判断結果を制御部4に出力する。なお、波長λb,λcの電磁波の導体片212Aへの照射による反射波の波長Wb,Wcと、この波長Wb,Wcのピーク強度の強弱関係とは、導体片212Aに実際に波長λb,λcの電磁波を照射し、その反射波を検出することによって予め求められたものである。言い換えると、反射波に波長λb,λcまたは波長λb,λcよりも短波長側の2箇所でピークがありピーク強度の強弱関係が基準ピークの2箇所のピーク強度の強弱関係と一致する場合には監視対象の物品10がある場合に対応し、反射波に2箇所でピークが発生しない場合及び2箇所のピーク強度の強弱関係が基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係と一致しない場合には監視対象の物品10がない場合に対応する、という監視対象の物品10の属性と反射波の反射状態との対応関係は、予め求められ、判別部205に記憶されている。
【0085】
続いて、出力部7は、制御部204の制御のもと、監視対象の物品10がある旨を示す警報を出力する警告処理を行う(ステップS29)。物品監視システム201の使用者は、この警報によって、監視対象の物品がゲートを通ったことを認識することができる。
【0086】
そして、制御部204は、ステップS25において監視対象の物品10がないと判断した後、または、ステップS29における警告処理終了後、物品監視終了の指示があるか否かを判断する(ステップS30)。制御部204は、物品監視終了の指示がないと判断した場合には(ステップS30:No)、検知処理を継続するため、ステップS24に戻る。一方、制御部204は、物品監視終了の指示があると判断した場合には(ステップS30:Yes)、電磁波発生源2による電磁波の発生を停止させ(ステップS31)、検知部3による反射波の検知を終了させて(ステップS32)、物品監視システム201の物品監視処理を終了する。
【0087】
このように、実施の形態2では、2以上の波長でピークを有する反射波が生じるように導体片212Aの平面構造を設定しておくことによって、斜めから電磁波が入射し、反射波のピークの出方が変化した場合であっても、この2以上のピーク波長の強弱関係を、基準となる2以上のピーク波長の強弱関係と比較することによって監視対象の物品10の有無を検知可能となるため、実施の形態1と比較して、さらに検知精度を高めることができる。
【0088】
なお、本実施の形態2では、図11の強弱関係を有する2つのピーク波長を持つ反射波が発生する導体片212Aを例に説明したが、もちろんこれに限らず、導体片の周期構造によっては、長波長側のピーク強度が短波長側のピーク強度よりも小さくなる場合もあり、いずれのピーク波長のピーク強度もほぼ同等となる場合もある。このように、導体片からの反射波の各ピーク波長の強弱関係は、使用する導体片の各領域のピッチ幅に対応して導体片に固有の関係となるため、判別部205は、使用する導体片に応じて、図11のステップS27の判断処理を行えばよい。
【0089】
また、本実施の形態2における導体片として、照射する電磁波の2つの波長λb,λcに対応させて導体片を2つの領域に分割し、各領域ごとに波長λbまたは波長λcにそれぞれ応じた周期で複数の導体素片を形成してもよい。また、本実施の形態2における導体片として、周期が互いに異なる3以上の領域を有する導体片を使用してもよく、この場合には、各周期に対応する3以上の波長の電磁波を照射すればよい。
【0090】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3にかかる物品属性判別システムとして、IDカードなどを識別し、このIDカードの所有者の所属先がいずれであるかを判別する所属判別システムを例に説明する。図13は、実施の形態3にかかる所属判別システムの概略構成を示すブロック図である。
【0091】
図13に示すように、実施の形態3にかかる所属判別システム301は、判別対象のIDカード310に所定波長の電磁波を発する電磁波発生源2と、IDカード310からの反射波の反射状態を検知する検知部3と、所属判別システム301の各構成部の動作処理を制御する制御部304と、検知部3によって検知されたIDカード310からの反射波の反射状態とをもとに、このIDカードの所有者の所属先がいずれであるかを判別する判別部305と、各種情報を入力する入力部6と、判別部305による判別結果を出力する出力部307とを備える。また、出力部307は、図示しないネットワークを介して、外部システムや外部装置に判別部305による判別結果を出力してもよい。所属判別システム301は、たとえば開錠システムの一部として用いられており、電磁波発生源2および検知部3はビルの出入り口に設けられたリーダに備えられ、所属判別システム301によって判別された所属先が予め登録されていた所属先であった場合には、このビルの出入り口が開錠される。
【0092】
判別対象のIDカード310には、所有者のID番号や氏名、顔写真が印刷されているほか、一部のマーカー領域312が所定のインクを用いて印刷されている。このインクには、IDカードの所有者の所属先に対応した複数種の導体片が含まれるインクが用いられている。このインクに含まれる複数種の導体片は、周期が互いに異なり、所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、所定波長範囲の電磁波のうち対応する波長の電磁波と共振して、それぞれ所定の波長でピークを有する反射波を発する。
【0093】
たとえば、図14の所属先対応表T1に示すように、A社に対応するIDカード310のマーカー領域312は、所定波長範囲で電磁波が照射された場合に、第1ピークとして波長W1のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片と、第2ピークとして波長W2のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片との2種の導体片を含むインクで印刷されている。そして、B社に対応するIDカード310のマーカー領域312は、所定波長範囲で電磁波が照射された場合に、第1ピークとして波長W3のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片と、第2ピークとして波長W4のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片との2種の導体片を含むインクで印刷されている。
【0094】
したがって、A社に対応するIDカード310のマーカー領域312に所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、波長W1と波長W2との2箇所でピークを有する反射波が発生する。そして、B社に対応するIDカード310のマーカー領域312に所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、波長W3と波長W4との2箇所でピークを有する反射波が発生する。
【0095】
このように、実施の形態3では、各IDカード310のマーカー領域312に、IDカード310の所有者の所属先に対応した複数種の導体片を含むインクを用いることによって、このマーカー領域312に所定波長範囲の電磁波を照射すると各所属先に固有の反射状態で反射波が発生するようにしている。
【0096】
そして、図14に例示する所属先対応表T1のように、IDカード310に塗布されるインクからの反射波の反射状態と、このIDカード310の所有者の所属先との対応関係は、予め求められ、判別部305に記憶される。判別部305は、検知部3によって検知されたIDカード310のインクからの反射波の反射状態と、所属先対応表T1とを比較し、この所属先対応表T1から、IDカード310のインクからの反射波の反射状態と一致する所属先を求めることによってIDカード310の所有者の所属先を判別する。
【0097】
次に、図15を参照して、図13に示す所属判別システム301の所属判別処理について説明する。図15は、図13に示す所属判別システム301の所属判別処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0098】
図15に示すように、制御部304は、入力部6から入力された指示情報をもとに判別開始の指示があるかを判断する(ステップS41)。入力部6は、たとえばリーダ上にIDカード310が近接したことを検知した場合には判別開始の指示情報を制御部304に入力する。そして、制御部304は、判別開始の指示があるまでステップS41の判断処理を繰り返し、判別開始の指示があると判断した場合(ステップS41:Yes)、電磁波発生源2に電磁波の発生を開始させ(ステップS42)、この電磁波発生源2による電磁波発生処理に同期させて検知部3に反射波の検知を開始させる(ステップS43)。
【0099】
この場合、電磁波発生源2は、全種の導体片に対応する全波長が含まれる所定波長範囲の電磁波をパルス発振する。検知部3は、制御部304を介して、判別部305にIDカード310からの反射波の反射状態を出力する。この検知部3の検知範囲は、全種の導体片が発する反射波のピーク波長全てが含まれるように設定される。
【0100】
そして、判別部305は、検知部3によって検知結果中にピークを有する反射波があるか否かを判断する(ステップS44)。判別部305は、ピークを有する反射波がないと判断した場合には(ステップS44:No)、いずれの種類の導体片も存在せず判別対象のIDカードがない場合に対応するため、後述するステップS50に進み、判別終了の指示があるか否かを判断する。
【0101】
一方、判別部305は、ピークを有する反射波があると判断した場合には(ステップS44:Yes)、この反射波の各ピーク波長を取得し(ステップS45)、たとえば図14に例示する所属先対応表T1を参照する(ステップS46)。そして、取得した反射波の各ピーク波長と所属先対応表T1とを比較して(ステップS47)、取得した反射波の各ピーク波長の組み合わせと一致する所属先を取得し(ステップS48)、この取得した所属先を判別対象のIDカード310の所有者が所属する所属先として出力する(ステップS49)。
【0102】
そして、制御部304は、所属先出力処理後(ステップS49)、または、判別部305がピークを有する反射波がないと判断した場合(ステップS44:No)、判別終了の指示があるか否かを判断する(ステップS50)。制御部304は、判別終了の指示がないと判断した場合には(ステップS50:No)、判別処理を継続するため、ステップS41に戻り、判別開始指示があるか否かを判断する。一方、制御部304は、判別終了の指示があると判断した場合には(ステップS50:Yes)、電磁波発生源2による電磁波の発生を停止させ(ステップS51)、検知部3による反射波の検知を終了させて(ステップS52)、所属判別システム301の判別処理を終了する。
【0103】
このように、実施の形態3では、IDカード310の所有者の所属先に、IDカード310からの反射波のピーク波長が対応するように、対応する各波長をピークに有する反射波を生じさせる導体片を複数種組み合わせて用いることによって、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、判別対象のIDカード310の所属先までをも正確に判別できるようにしている。
【0104】
なお、判別用のインクには、それぞれ異なるピーク波長で反射波を生じさせる複数種の導体片を含ませるほか、もちろん図9に示す導体片212Aのように、一つの導体片から所属先に対応する2つのピーク波長で反射波を発するものであってもよい。
【0105】
また、図16のように、所属判別システム301では、判別対象となるIDカード310Aのマーカー領域312A内を5箇所の領域P1〜P5に分けて、各領域P1〜P5のインクに含まれる導体片の組み合わせによってIDカード310Aの所属先を判別してもよい。
【0106】
この場合には、図17の所属先対応表T2に示すように、たとえば、A社に対応するIDカード310Aに所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、領域P1,P4,P5には波長W1のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片を含むインクが用いられ、領域P2,P3には波長W2のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片を含むインクが用いられる。また、B社に対応するIDカード310Aに所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、領域P3,P4には波長W1のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片を含むインクが用いられ、領域P1,P2,P5には波長W2のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片を含むインクが用いられる。このように、各所属先に応じて各領域に使用されるインクが設定されている。
【0107】
そして、判別部305は、検知部3によって検知されたIDカード310Aの各領域P1〜P5からの反射波の各ピーク波長と、所属先対応表T2に例示する各領域P1〜P5に設定される各ピーク波長とを比較し、それぞれが一致する所属先を求めることによってIDカード310Aの所有者の所属先を判別する。
【符号の説明】
【0108】
1,201 物品監視システム
2 電磁波発生源
3 検知部
4,204,304 制御部
5,205,305 判別部
6 入力部
7 出力部
10 物品
11 印刷面
12,212,312,312A マーカー領域
12A,12B,12C,12D,212A 導体片
13A,13B,13C,213b,213c 導体素片
14A,14B,14C 基材
301 所属判別システム
310,310A IDカード
【技術分野】
【0001】
本発明は、属性判別対象の物品に塗布される塗布剤、該塗布剤を使用する物品属性判別システム、物品属性判別方法および導体片に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波に共振するもの、または、磁界に共鳴するものが内蔵されているタグを
物品に取り付け、このタグの共振または共鳴を利用して物品を監視する物品監視システムが提案されている(たとえば特許文献1〜3参照)。このような物品監視システムでは、電界または磁界を発し、電波や磁界のゆらぎを検知することでタグの有無を判別し、監視対象の物品があるか否かを判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−94841号公報
【特許文献2】特表2001−517842号公報
【特許文献3】特開平9−147249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来では、物品に取り付けるタグのサイズが数cmと大きいため、物品が小さい場合にはタグを取り付けることができず物品の大きさが制限されるほか、タグの取付位置も制限される場合があった。また、従来では、物品ごとに一つ一つタグを取り付けるという煩雑な処理を行う必要がある上、タグ自体の大きさも大きいため、タグに要するコストも無視できないものとなっていた。そして、従来の物品監視システムでは、検知した電波や磁界のゆらぎがタグに起因しない他のものによる場合もあり、誤検知も多かった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、物品に容易に付加可能である物品属性判別のための塗布剤、該塗布剤を使用し正確な判別処理を可能にする物品属性判別システム、物品属性判別方法および導体片を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる塗布剤は、物体に塗布される塗布剤であって、電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有する平板状の導体片を含むことを特徴とする。
【0007】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記複数の導体素片は、2次元格子状に配置されることを特徴とする。
【0008】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記複数の導体素片は、5周期以上並んでいることを特徴とする。
【0009】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記導体片は、前記周期が互いに異なる2以上の領域を有することを特徴とする。
【0010】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記周期が互いに異なる複数種の前記導体片を含むことを特徴とする。
【0011】
また、この発明にかかる塗布剤は、前記周期は、前記所定の波長と等しいことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、上記いずれか一つに記載の塗布剤が塗布された物品と、前記物品に塗布された塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生手段と、前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知手段と、予め求められた前記塗布剤からの反射波の反射状態と前記物品の属性との対応関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波の反射状態とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別手段と、前記判別手段による判別結果を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、前記判別手段は、予め求められた前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長と前記物品の属性との対応関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別することを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、上記いずれか一つに記載の塗布剤が塗布された物品と、前記塗布剤に対し、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の各周期に対応した2以上の波長の電磁波を発する電磁波発生手段と、前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知手段と、予め求められた前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別手段と、前記判別手段による判別結果を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、前記電磁波は、赤外線または電波であることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる物品属性判別システムは、前記電磁波発生手段は、前記電磁波をパルス発振することを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、物品に塗布された上記いずれか一つに記載の塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生ステップと、前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知ステップと、予め求められた前記塗布剤からの反射波の反射状態と前記物品の属性との対応関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波の反射状態とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別ステップと、前記判別ステップにおける判別結果を出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、前記判別ステップは、予め求められた前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長と前記物品の属性との対応関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別することを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、物品に塗布された請求項上記いずれか一つに記載の塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の各周期に対応した2以上の波長の電磁波を発する電磁波発生ステップと、前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知ステップと、予め求められた前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別ステップと、前記判別ステップにおける判別結果を出力する出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、前記電磁波は、赤外線または電波であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる物品属性判別方法は、前記電磁波発生ステップは、前記電磁波をパルス発振することを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる導体片は、電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有し、平板状であることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる導体片は、前記複数の導体素片は、2次元格子状に配置されることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる導体片は、前記複数の導体素片は、5周期以上並んでいることを特徴とする。
【0025】
また、この発明にかかる導体片は、前記周期が互いに異なる2以上の領域を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる塗布剤は、電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有する平板状の導体片を含むことによって、電磁波を照射したときの反射波の強度が波長依存性を示すため、物品判別に使用可能であるとともに、塗布剤であることから物品に容易に付加可能である。
【0027】
また、本発明にかかる物品属性判別システムは、上記記載の塗布剤を属性判別対象の物品に塗布し、該塗布剤に含まれる導体片に形成される複数の導体素片の周期構造に対応した波長の電磁波を発し、塗布剤からの反射波の反射状態と、予め求められた塗布剤からの反射波の反射状態と物品の属性との対応関係とをもとに電磁波が発せられた物品の属性を判別することによって正確な判別処理を可能にする。
【0028】
また、本発明にかかる物品属性判別方法は、上記記載の塗布剤を属性判別対象の物品に塗布し、該塗布剤に含まれる導体片に形成される複数の導体素片の周期構造に対応した波長の電磁波を発し、塗布剤からの反射波の反射状態と、予め求められた塗布剤からの反射波の反射状態と物品の属性との対応関係とをもとに電磁波が発せられた物品の属性を判別することによって正確な判別処理を可能にする。
【0029】
また、本発明にかかる導体片は、電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有し、平板状であるため、電磁波を照射したときの反射波の強度が波長依存性を示すため、物品判別に使用可能であるとともに、塗布剤などに容易に混ぜ入れることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる物品監視システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施の形態1におけるインクに含まれる導体片の平面図である。
【図3】図3は、図2に示す説明する図である。
【図4】図4は、図1に示す物品監視システム1の物品監視処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、実施の形態1におけるインクに含まれる導体片の他の例を示す平面図である。
【図6】図6は、実施の形態1におけるインクに含まれる導体片の他の例を示す平面図である。
【図7】図7は、実施の形態1におけるインクに含まれる導体片の他の例を示す平面図である。
【図8】図8は、実施の形態2にかかる物品監視システムの概略構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、実施の形態2におけるインクに含まれる導体片の平面図の一例を示す図である。
【図10】図10は、図9に示す導体片から発生する反射波を説明する図である。
【図11】図11は、図9に示す導体片から発生する反射波を説明する図である。
【図12】図12は、図8に示す物品監視システム201の物品監視処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施の形態3にかかる所属判別システムの概略構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、図13に示す判別部が参照する所属先対応表の一例を示す図である。
【図15】図15は、図1に示す所属判別システムの所属判別処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】図16は、実施の形態3におけるIDカードの他の例を示す平面図である。
【図17】図17は、図13に示す判別部が参照する所属先対応表の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明にかかる実施の形態である塗布剤および物品属性判別システムについて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0032】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1について説明する。実施の形態1にかかる物品属性判別システムとして、物品監視システムを例に説明する。図1は、実施の形態1にかかる物品監視システムの概略構成を示すブロック図である。
【0033】
図1に示すように、実施の形態1にかかる物品監視システム1は、所定波長の電磁波を発する電磁波発生源2と、物品10からの反射波の反射状態を検知する検知部3と、物品監視システム1の各構成部の動作処理を制御する制御部4と、検知部3によって検知された物品10からの反射波の反射状態とをもとに監視対象の物品があるか否かを判別する判別部5と、各種情報を入力する入力部6と、判別部5による判別結果を出力する出力部7とを備える。電磁波発生源2および検知部3は人が出入りするゲートに設けられており、物品監視システム1は、このゲートを通って出ていく人と一緒に監視対象の物品10も持ち出されていないかを監視している。出力部7は、判別部5によってゲート近辺に監視対象の物品10があると判別された場合には、監視対象の物品がゲート外に持ち出されている旨を警告する警報を出力する。
【0034】
監視対象の物品10は、印刷面11の一部のマーカー領域12が所定のインクを用いて印刷されている。このインクには、所定の周期構造を有する平板状の導体片が、たとえば5〜10個/cm2の割合で含まれている。図2は、このインクに含まれる導体片の平面図である。
【0035】
図2に示すように、マーカー領域12印刷用のインクに含まれる導体片12Aは、基材に、行列状に複数の導体素片13Aが配置されており、この導体素片13Aの配置周期は、電磁波発生源2から照射される電磁波の波長λaと等しい。導体素片13Aと、この導体素片13Aに隣り合う基材枠14Aとは、ピッチ幅Lpで行列状に周期的に形成され、導体素片13Aの長さLwと、導体素片13Aに隣り合う基材枠14Aの長さLfとを合わせたピッチ幅Lpは、波長λaと同じ長さとなるように設定されている。なお、この基材は、非導体材料、シリコン材料などで形成される。
【0036】
このように波長λaと等しい周期で複数の導体素片13Aが配置された導体片12Aの導体素片形成面に、波長λaの電磁波がほぼ正面から照射された場合には、この電磁波と導体片12Aの周期構造との間で共振が発生し、図3のように、電磁波の波長λaに対応した波長Waで強い反射波が発生する。この波長Waをピークとする反射波は、波長λaと同間隔で導体素片13Aが形成された導体片12Aに波長λaの電磁波を照射した場合にのみ発生する。言い換えると、導体片12Aに波長λa以外の波長の電磁波を照射しても波長Waをピークとする反射波は発生しない。
【0037】
したがって、マーカー領域12に使用されるインクは、電磁波の所定の波長と同周期で配置された複数の導体素片13Aを有する平板状の導体片12Aを含むことによって、電磁波を照射したときの反射波の強度が波長依存性を示し、この導体片12Aを含むインクで印刷されたマーカー領域12に波長λaの電磁波を照射した場合には、この波長λaの電磁波に対応した波長Waにピークを有する反射波が発生する。
【0038】
そこで、物品監視システム1においては、全ての監視対象の物品10に、導体片12Aを含むインクを用いて印刷面11の少なくとも一部のマーカー領域12に印刷処理を行った上で、所定の波長λaの電磁波に対する反射波の反射状態を検知し、波長Waにピークを有する反射波があるか否かをもとに監視対象の物品があるか否かを判別している。
【0039】
図4を参照して、図1に示す物品監視システム1の物品監視処理について説明する。図4は、図1に示す物品監視システム1の物品監視処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
図4に示すように、制御部4は、たとえば入力部6から入力された物品監視開始の指示情報を受信した後に(ステップS1)、電磁波発生源2に電磁波の発生を開始させ(ステップS2)、この電磁波発生源2による電磁波発生処理に同期させて検知部3に反射波の検知を開始させる(ステップS3)。
【0041】
この場合、電磁波発生源2は、検知精度を高めるために、波長λaを含む波長範囲で電磁波をパルス発振する。ここで、電磁波の波長が長いほど透過性が向上し、電磁波の波長が短いほど分解能が向上するため、電磁波発生源2が発する電磁波の波長は、監視対象の物品に対応させて所望の検知精度を満たすように設定される。そして、透過性および分解能を考慮すると、電磁波発生源2が発する電磁波は赤外線または電波が適している。
【0042】
このため、電磁波発生源2が発振する電磁波の周波数は、1THz〜300THzの範囲内が望ましい。なお、1THzの周波数に対応する電磁波の波長は、いわゆるテラヘルツ光である300μmであり、300THzの周波数に対応する電磁波の波長は、赤外線に相当する1μmである。この中でも、透過性および分解能のいずれも適切に確保するためには、電磁波発生源2が発振する電磁波の周波数は10THz前後が最適であるものと考えられる。
【0043】
また、検知部3は、制御部4を介して、判別部5に物品10のマーカー領域12からの反射波の反射状態を出力する。この検知部3の検知範囲は、導体片12Aの周期構造に対応して強く反射する波長Waを少なくとも含むように設定される。なお、導体片12Aからの反射波として、波長Waのみならず波長Waの1/整数の波長でもピークが生じる。ただし、波長Waそのものにおいて最もピーク強度が高いことから、検知処理を効率よく行うには、検知部3の検知範囲を、波長Waを含み、波長Waの1/2以上の範囲に適宜設定するのがよい。
【0044】
そして、判別部5は、検知部3による検知結果においてピークを有する反射波があるか否かを判断する(ステップS4)。判別部5は、ピークを有する反射波がないと判断した場合には(ステップS4:No)、導体片12Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS5)。
【0045】
一方、判別部5は、ピークを有する反射波があると判断した場合には(ステップS4:Yes)、この反射波のピーク波長と、基準となるピーク波長(Wa)とを比較し(ステップS6)、反射波のピーク波長が基準となるピーク波長とほぼ一致するか否かを判断する(ステップS7)。
【0046】
判別部5は、反射波のピーク波長が基準となるピーク波長(Wa)とほぼ一致しないと判断した場合には(ステップS7:No)、導体片12Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS5)。
【0047】
これに対して、判別部5は、反射波のピーク波長が基準となるピーク波長(Wa)とほぼ一致すると判断した場合には(ステップS7:Yes)、導体片12Aが存在する場合に対応するため、この導体片12Aを含むインクで印刷された監視対象の物品10があると判断し(ステップS8)、判断結果を制御部4に出力する。なお、判断基準となる反射波の波長Waは、導体片12Aに実際に波長λaの電磁波を照射し、その反射波を検出することによって予め求められ、判別部5に記憶される。反射波のピーク波長が基準となる波長Waである場合には監視対象の物品10がある場合に対応し、反射波にピーク自体が発生しない場合及びピーク波長が基準となる波長Waでない場合には監視対象の物品10がない場合に対応するという監視対象の物品10の属性と反射波の反射状態との対応関係は、予め求められ、判別部5に記憶される。
【0048】
続いて、出力部7は、制御部4の制御のもと、監視対象の物品10がある旨を示す警報を出力する警告処理を行う(ステップS9)。物品監視システム1の使用者は、この警報によって、監視対象の物品がゲートを通ったことを認識することができる。
【0049】
そして、制御部4は、監視対象の物品がないと判断した後(ステップS5)、または、警告処理終了後(ステップS9)、物品監視終了の指示があるか否かを判断する(ステップS10)。制御部4は、物品監視終了の指示がないと判断した場合には(ステップS10:No)、検知処理を継続するため、ステップS4に戻り、検知部3の検知結果においてピークを有する反射波があるか否かを判断する。一方、制御部4は、物品監視終了の指示があると判断した場合には(ステップS10:Yes)、電磁波発生源2による電磁波の発生を停止させ(ステップS11)、検知部3による反射波の検知を終了させて(ステップS12)、物品監視システム1の物品監視処理を終了する。
【0050】
このように、実施の形態1では、物品10のマーカー領域12に印刷されるインク中の導体片12Aの導体素片13Aのピッチ幅Lpと照射する電磁波の波長λaとを等しくすることによって、波長λaの電磁波を照射した場合に導体片12Aに固有のピーク波長(Wa)を有する反射波が発生するように設定し、この固有のピーク波長(Wa)で反射波が生じたか否かを検知して、監視対象の物品10がゲート外に持ち出されていないかを監視している。
【0051】
このため、実施の形態1では、監視対象の物品10を監視するために、監視用のタグなどを物品ごとに取り付けるという煩雑な処理を行う必要がなく、この導体片12Aを含むインクを用いて監視対象の物品10の印刷面のいずれかの領域を印刷するだけで足り、取り付け対象の物品10の形状を損なうこともない。
【0052】
そして、実施の形態1では、物品判別用に使用する所定の導体片12Aは、電磁波を照射したときの反射波の強度が波長依存性を示すため、物品判別に使用可能であるとともに、塗布剤などに容易に混ぜ入れることが可能である。また、物品判別用に使用するものは、この所定の導体片12Aを含む塗布剤であることから、物品に容易に付加可能である。
【0053】
また、実施の形態1では、導体片12Aを含むインク用の印刷領域さえ確保できれば足りるため、どのような大きさの物品に対しても適用可能である。そして、実施の形態1では、電磁波として透過性の高い赤外線や電波を使用するため、この導体片12Aを含むインクを印刷する領域も特に制限されることはなく、物品10の表面や物品10内部の領域など自由に選択可能である。
【0054】
そして、この導体片12Aは、これまで一般的に用いられたシリコンプロセスなどにおけるエッチング加工処理や、蒸着処理あるいはメッキ処理を用いて製造できるため、特に複雑な方法を用いることもなく容易に製造することができる。
【0055】
また、この導体片12Aの導体素片13Aは、検知精度を保持するために縦方向および横方向のいずれも5周期以上配置されることが必要であり、さらに厳密な検知を実現するためには10周期程度配置されることが望ましい。ここで、電磁波の波長λaは1μm〜300μmであることから、この波長λaと同間隔のピッチ幅Lpで縦方向および横方向に10周期程度の導体素片13Aを形成したとしても、導体片12Aの一辺の大きさは大きくとも3mm程度である。実際に使用される電磁波としては10μm程度の波長が望ましいため、この波長に対応させて、たとえば導体素片13Aの長さLwを8μmとし、基材枠14Aの長さLfを2μmとし、ピッチ幅Lpを10μmとし、縦方向および横方向に導体素片13Aをそれぞれ10周期形成した場合には、導体片12Aの一辺の長さLa(図2参照)は、100μm程度しかない。このように、導体片12Aの大きさは、大きくとも3mm程度と小さいため、導体片12Aに要するコストも抑制することができる。また、導体片12Aにおいては、導体素片13Aの長さLwおよび基材枠14Aの長さLfを合わせたピッチ幅Lpが波長にほぼ対応していれば、各導体素片13Aおよび各基材枠14Aの長さに多少のサイズばらつきがあっても検知可能であるため、歩留まり自体も高く低コスト化が可能になる。
【0056】
そして、実施の形態1では、特定波長の電磁波と導体片12Aの周期構造との共振による反射波の強度の固有の波長依存性を利用するため、高い検知精度を実現できる。さらに、物品監視システム1では、導体片12Aのピッチ幅Lpを調整し、照射する電磁波の波長λaと検知する反射波の波長Waとを、一般的に使用されている電磁波使用機器で用いられていない波長に設定することによって、他の電磁波使用機器での使用電磁波を監視用の反射波として誤検知することがなくなるため、正確な監視処理を実現することができる。
【0057】
また、この監視対象の物品10を監視不要としたい場合には、強度の高い電磁波をマーカー領域12に照射し、導体片12Aのパターンを破損させるだけでよい。または、マーカー領域上に、電磁波を吸収または反射する導電性シートを貼付するだけでよい。これによって、波長λaの電磁波がマーカー領域12に照射されても、固有のピーク波長Waを有する反射波が発生することはないため、物品監視システム1において誤って検知されることはない。
【0058】
なお、実施の形態1では、導体片12Aを含むインクを用いて印刷した場合を例に説明したが、印刷方法に制限はなく、スクリーン印刷などによって印刷してもよい。また、インクに限らず、導体片12Aを含む接着剤を用いて物品と包装部材を接着させてもよく、導体片12Aを含むコーティング剤で物品の一部をコーティングしてもよい。すなわち、実施の形態1では、この導体片12Aを含む塗布剤を監視対象の物品10の少なくとも一部に塗布すればよい。塗布剤は、導体片12Aを所定割合で含めることができるものであればよく、たとえば樹脂材料で形成される。
【0059】
また、導体片12Aを含む塗布剤は、照射される電磁波を導体片12Aの導体素片形成面のほぼ正面で受けられるよう、導体素片形成面が一様に揃うように塗布されることが望ましい。さらに、導体素片形成面が一様に揃うように、塗布剤の塗布厚さを、この導体素片形成面の一辺の大きさよりも薄くなるように設定してもよい。
【0060】
また、図1に示す例では、マーカー領域12を印刷面11の他の領域と区別できるように印刷した場合を例に説明したが、もちろん、マーカー領域12を印刷面11の他の領域と区別できないように同色、同模様で印刷してもよい。この場合には、物品監視用のマーカー領域12が物品10のどこに位置するのかを判別することができないため、不正にシールド材が貼付されることを防止でき、物品監視システム1の不正すり抜けを防止することができる。
【0061】
また、実施の形態1に使用されるインク内の導体片は、照射される電磁波の波長λaと等しい周期で2次元格子状に複数の導体素片が配置されていれば、電磁波との共振が可能である。
【0062】
このため、導体片に必ずしも行列状に正方形状の導体素片を配置する必要はなく、たとえば図5に示す導体片12Bのように、六角形の導体素片13Bを2次元格子状に配置してもよい。この場合、この貫通穴13Bの長さLwbと基材枠14Bの長さLfbとを合わせたピッチ幅が電磁波の波長λaと等しいLpとなるように設定される。また、図6に示す導体片12Cのように、円形の導体素片13Cを2次元格子状に配置してもよい。この場合も、この導体素片13Cの長さLwcと基材枠14Cの長さLfcとを合わせたピッチ幅が電磁波の波長λaと等しいLpとなるように設定される。また、導体片自体の平面形状も矩形に限るものではなく、図7に示す導体片12Dのように、円形の平面形状を有していてもよい。また、導体片は、電磁波との共振が可能であれば、もちろん2次元格子状に限らず直線的に複数の導体素片を配置してもよい。
【0063】
また、実施の形態1においては、電磁波の波長と等しい周期で複数の導体素片を配置した導体片を例に説明したが、もちろんこれに限らない。電磁波の波長の整数倍の周期で複数の導体素片を配置した平板状の導体片においても同様に、照射された所定波長の電磁波と周期構造との間で共振が発生し、電磁波の波長に対応した波長で強い反射波が発生するため、実施の形態1と同様に監視対象の物品を検知可能である。この場合、反射波のうち反射強度がもっとも高い波長は、導体素片の周期の1/整数倍となり、これにともない、反射波の反射強度が最も高い周波数は、周期の整数倍となる。
【0064】
また、実施の形態1においては、基材に導体素片を設けた導体片を例に説明したが、これに限らない。たとえば、基材に、上述した各導体素片に代えて貫通孔を設けた導体片であってもよい。この場合には、貫通孔は、各導体素片と同形状であり、各導体素片と同配列で、設けられる。すなわち、各貫通孔の長さと基材枠の長さとを合わせたピッチ幅が照射される電磁波の波長と等しくなるように設定される。そして、この導体片からの反射波の強度は、図3に示す反射波とは強度が上下逆となり、所定の波長(図3では波長Wa)では所定の強度から強度の低いほうに向かうピークが現れる。このため、判別部5は、図4のステップS4では、検知部3による検知結果において強度の低いほうにピークを有する反射波があるか否かを判断すればよい。
【0065】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、2以上の波長の電磁波を検知用として用い、周期が互いに異なる2以上の領域を有する導体片を含むインクを用い、視対象の物品のマーカー領域への電磁波の照射角度によらず監視対象の物品を正確に検知できるようにしている。
【0066】
図8は、実施の形態2にかかる物品監視システムの概略構成を示すブロック図である。図8に示すように、実施の形態2にかかる物品監視システム201は、図1に示す物品監視システム1と比較し、制御部4に代えて、物品監視システム201の各構成部の動作処理を制御する制御部204を有し、判別部5に代えて判別部205を有する。そして、電磁波発生源2は、監視対象の物品10に所定の2以上の波長の電磁波を発する。
【0067】
監視対象の物品10は、印刷面11の一部のマーカー領域212が、所定のインクを用いて印刷されている。このインクには、所定の周期構造を有する平板状の導体片が、たとえば5〜10個/cm2の割合で含まれている。そして、この導体片は、周期が互いに異なる2以上の領域を有する。
【0068】
この導体片について、図9を参照して説明する。図9は、このインクに含まれる導体片の平面図の一例を示す図である。図9に示すように、マーカー領域212印刷用のインクに含まれる導体片212Aは、4つの領域Sb1,Sb2,Sc1,Sc2に分割されており、領域Sb1,Sb2は、ピッチ幅Lpbで行列状に導体素片213bが配置され、領域Sc1,Sc2は、ピッチ幅Lpbとは異なるピッチ幅Lpcで行列状に導体素片213cが配置される。
【0069】
この導体片212Aの導体素片形成面に、導体素片213bのピッチ幅Lpbと同じ長さの波長λbの電磁波が照射された場合には、この波長λbの電磁波と導体片212Aの領域Sb1,Sb2の周期構造との間で共振が発生し、図10に示すように、電磁波の波長λbに対応した波長Wbで強い反射波が発生する。そして、導体片212Aの導体素片形成面に、導体素片213cのピッチ幅Lpcと同じ長さの波長λcの電磁波が照射された場合には、この波長λcの電磁波と導体片212Aの領域Sc1,Sc2の周期構造との間で共振が発生し、図10に示すように、電磁波の波長λcに対応した波長Wc(>Wb)で強い反射波が発生する。さらに、波長λbおよび波長λcの電磁波を同じ照射強度で照射した場合には、波長Wcの反射波のピーク強度の方が、波長Wbの反射波のピーク強度よりも強くなる関係を有する。
【0070】
したがって、物品10のマーカー領域212に波長λbおよび波長λbの電磁波を照射した場合には、この波長λb,λcの電磁波にそれぞれ対応した波長Wb,Wcの2箇所でピークを有する反射波が発生する。そして、この波長Wb,Wcの2箇所でピークを有する反射波は、波長Wcの反射波のピーク強度の方が、波長Wbの反射波のピーク強度よりも強くなるという固有の強弱関係を保持した状態で発生する。
【0071】
ここで、導体片の導体素片形成面に、正面からではなく斜め方向から電磁波が入射した場合には、電磁波の入射によって各周期構造との共振は発生するものの、電磁波が入射する周期構造のピッチ幅が相対的に変わるため、反射波の反射状態が変化する。すなわち、反射波のピーク波長は、正面から電磁波が入射した際のピーク波長から電磁波の入射角度に応じた変化量で短波長側にシフトし、反射波のピーク強度は、正面から電磁波が入射した際のピーク強度から電磁波の入射角度に応じた変化量だけ弱くなる。
【0072】
そして、判別基準となる反射波としてピークが1箇所にしか設定されていない場合には、検知部3による検知結果にピークを有する反射波があっても、この反射波のピーク波長が基準となるピーク波長と異なるときには、インクに含まれる導体片以外のものに起因した反射波であるのか、導体素片形成面に対して斜めから照射されたためピーク波長がシフトしたのかを区別できない場合がある。
【0073】
これに対し、本実施の形態2においては、2以上の波長でピークを有する反射波が発生するように導体片212Aの平面構造が設定されている。そして、導体片212Aの導体素片形成面の斜めから電磁波が入射した場合には、各所定波長の電磁波の入射角度に応じた変化量で反射波のピーク波長とピーク強度がシフトするものの、各ピーク波長のピーク強度は固有の強弱関係を保持したままである。
【0074】
このため、判別部205は、検知部3によって検知された反射波に2以上の波長でピークがあるか否か、さらに、所定の強弱関係を保持した状態でピークが発生しているか否かを判断することによって、実際に検知できた反射波が導体片212Aに起因したものであるか否かを判断している。
【0075】
具体的には、導体片212Aの導体素片形成面のほぼ正面から波長λb,λcの電磁波が入射した場合には、この電磁波と導体片212Aの周期構造との間で共振が発生し、図11(1)のように、波長Wbに強度Gbのピークを有する反射波と、波長Wcに強度Gc(>Gb)のピークを有する反射波とが発生する。
【0076】
一方、導体片212Aの導体素片形成面に対して斜めから波長λb,λcの電磁波が入射した場合には、図11(2)に示すように、波長Wb,Wcの2箇所で発生したピーク波長は、入射角度に応じてそれぞれ短波長側の波長Wb´,Wc´にシフトする。さらに、入射角度に応じた変化量だけピーク強度がそれぞれ強度Gb´,Gc´に低下する。この場合、電磁波の波長λbに対応する波長Wb´の反射波のピーク強度と、電磁波の波長λcに対応する波長Wc´の反射波のピーク強度とは、波長Wc´の反射波のピーク強度の方が、波長Wb´の反射波のピーク強度よりも強くなるという固有の強弱関係を保持する。
【0077】
したがって、判別部205は、検知部3の検知した反射波の反射状態において、導体片212Aの2種類の周期構造に対応した2波長または該2波長よりもそれぞれ短波長側の2波長ピークがある場合であって、この2波長におけるピーク強度の強弱関係が、基準となる2波長のピーク強度の強弱関係と一致した場合(図11に示す例では長波長側に発生した波長Gc´の反射波のピーク強度が、短波長側で発生した波長Gb´の反射波のピーク強度よりも大きい場合)には、導体片212Aが存在する場合であると判断できるため、監視対象の物品10があると判別する。
【0078】
図12を参照して、図8に示す物品監視システム201の物品監視処理について説明する。図12は、図8に示す物品監視システム201の物品監視処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0079】
図12に示すように、制御部204は、たとえば入力部6から入力された物品監視の開始の指示情報を受信した後に(ステップS21)、電磁波発生源2に電磁波の発生を開始させ(ステップS22)、この電磁波発生源2による電磁波発生処理に同期させて検知部3に反射波の検知を開始させる(ステップS23)。
【0080】
この場合、電磁波発生源2は、検知精度を高めるため、波長λb,λcを含む波長範囲で電磁波をパルス発振する。また、検知部3は、制御部204を介して、判別部205に物品10のマーカー領域212からの反射波の反射状態を出力する。この検知部3の検知範囲は、導体片212Aの周期構造に対応して強く反射する波長Wb,Wcを少なくとも含むように設定される。また、検知処理を効率よく行うには、検知部3の検知範囲を、波長Wb,Wcを含み、短波長側の波長Wbの2倍未満の範囲に適宜設定すればよい。
【0081】
そして、判別部205は、検知部3による検知結果において波長Wb,Wcの2箇所または波長Wb,Wcよりもそれぞれ短波長側の2箇所でピークを有する反射波があるか否かを判断する(ステップS24)。判別部205は、この2箇所でピークを有する反射波がないと判断した場合には(ステップS24:No)、導体片212Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS25)。
【0082】
なお、このステップS24において、判別部205は、検知結果における2つのピーク波長と、基準となるピーク波長Wb,Wcとのシフト量についてもさらに判断してもよい。導体片の導体素片形成面への電磁波の入射角度θとした場合、反射波のピーク波長は、正面から電磁波が入射した際のピーク波長からそれぞれcosθに対応する波長分シフトする。このため、判別部205は、ステップS24において、反射波の2箇所のピークのピーク波長が、基準となるピーク波長Wb,Wcからそれぞれcosθに対応する波長分シフトしているか否かをさらに判断する。この場合、判別部205は、2箇所でピークを有する反射波がないと判断した場合、または、2箇所でピークを有する反射波があった場合であっても反射波の2箇所のピークのピーク波長が基準となるピーク波長Wb,Wcからそれぞれcosθに対応する波長分シフトしていないと判断した場合には(ステップS24:No)、導体片212Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS25)。これに対し、判別部205は、この2箇所でピークを有する反射波があると判断した場合であり、さらに反射波の2箇所のピークのピーク波長が基準となるピーク波長Wb,Wcからそれぞれcosθに対応する波長分シフトしていると判断した場合には(ステップS24:Yes)、後述するステップS26に進む。
【0083】
そして、判別部205は、この2箇所でピークを有する反射波があると判断した場合には(ステップS24:Yes)、この反射波の2箇所のピーク強度の強弱関係と、基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係とを比較し(ステップS26)、反射波の2箇所のピーク強度の強弱関係が、基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係と一致するか否かを判断する(ステップS27)。判別部205は、反射波の2箇所のピーク強度の強弱関係が、基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係と一致しないと判断した場合には(ステップS27:No)、導体片212Aが存在しない場合に対応するため、監視対象の物品10がないと判断する(ステップS25)。
【0084】
これに対して、判別部205は、反射波の2箇所のピーク強度の強弱関係が、基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係と一致すると判断した場合には(ステップS27:Yes)、導体片212Aが存在する場合に対応するため、この導体片212Aを含むインクで印刷された監視対象の物品10があると判断し(ステップS28)、判断結果を制御部4に出力する。なお、波長λb,λcの電磁波の導体片212Aへの照射による反射波の波長Wb,Wcと、この波長Wb,Wcのピーク強度の強弱関係とは、導体片212Aに実際に波長λb,λcの電磁波を照射し、その反射波を検出することによって予め求められたものである。言い換えると、反射波に波長λb,λcまたは波長λb,λcよりも短波長側の2箇所でピークがありピーク強度の強弱関係が基準ピークの2箇所のピーク強度の強弱関係と一致する場合には監視対象の物品10がある場合に対応し、反射波に2箇所でピークが発生しない場合及び2箇所のピーク強度の強弱関係が基準となる2箇所のピーク強度の強弱関係と一致しない場合には監視対象の物品10がない場合に対応する、という監視対象の物品10の属性と反射波の反射状態との対応関係は、予め求められ、判別部205に記憶されている。
【0085】
続いて、出力部7は、制御部204の制御のもと、監視対象の物品10がある旨を示す警報を出力する警告処理を行う(ステップS29)。物品監視システム201の使用者は、この警報によって、監視対象の物品がゲートを通ったことを認識することができる。
【0086】
そして、制御部204は、ステップS25において監視対象の物品10がないと判断した後、または、ステップS29における警告処理終了後、物品監視終了の指示があるか否かを判断する(ステップS30)。制御部204は、物品監視終了の指示がないと判断した場合には(ステップS30:No)、検知処理を継続するため、ステップS24に戻る。一方、制御部204は、物品監視終了の指示があると判断した場合には(ステップS30:Yes)、電磁波発生源2による電磁波の発生を停止させ(ステップS31)、検知部3による反射波の検知を終了させて(ステップS32)、物品監視システム201の物品監視処理を終了する。
【0087】
このように、実施の形態2では、2以上の波長でピークを有する反射波が生じるように導体片212Aの平面構造を設定しておくことによって、斜めから電磁波が入射し、反射波のピークの出方が変化した場合であっても、この2以上のピーク波長の強弱関係を、基準となる2以上のピーク波長の強弱関係と比較することによって監視対象の物品10の有無を検知可能となるため、実施の形態1と比較して、さらに検知精度を高めることができる。
【0088】
なお、本実施の形態2では、図11の強弱関係を有する2つのピーク波長を持つ反射波が発生する導体片212Aを例に説明したが、もちろんこれに限らず、導体片の周期構造によっては、長波長側のピーク強度が短波長側のピーク強度よりも小さくなる場合もあり、いずれのピーク波長のピーク強度もほぼ同等となる場合もある。このように、導体片からの反射波の各ピーク波長の強弱関係は、使用する導体片の各領域のピッチ幅に対応して導体片に固有の関係となるため、判別部205は、使用する導体片に応じて、図11のステップS27の判断処理を行えばよい。
【0089】
また、本実施の形態2における導体片として、照射する電磁波の2つの波長λb,λcに対応させて導体片を2つの領域に分割し、各領域ごとに波長λbまたは波長λcにそれぞれ応じた周期で複数の導体素片を形成してもよい。また、本実施の形態2における導体片として、周期が互いに異なる3以上の領域を有する導体片を使用してもよく、この場合には、各周期に対応する3以上の波長の電磁波を照射すればよい。
【0090】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。実施の形態3にかかる物品属性判別システムとして、IDカードなどを識別し、このIDカードの所有者の所属先がいずれであるかを判別する所属判別システムを例に説明する。図13は、実施の形態3にかかる所属判別システムの概略構成を示すブロック図である。
【0091】
図13に示すように、実施の形態3にかかる所属判別システム301は、判別対象のIDカード310に所定波長の電磁波を発する電磁波発生源2と、IDカード310からの反射波の反射状態を検知する検知部3と、所属判別システム301の各構成部の動作処理を制御する制御部304と、検知部3によって検知されたIDカード310からの反射波の反射状態とをもとに、このIDカードの所有者の所属先がいずれであるかを判別する判別部305と、各種情報を入力する入力部6と、判別部305による判別結果を出力する出力部307とを備える。また、出力部307は、図示しないネットワークを介して、外部システムや外部装置に判別部305による判別結果を出力してもよい。所属判別システム301は、たとえば開錠システムの一部として用いられており、電磁波発生源2および検知部3はビルの出入り口に設けられたリーダに備えられ、所属判別システム301によって判別された所属先が予め登録されていた所属先であった場合には、このビルの出入り口が開錠される。
【0092】
判別対象のIDカード310には、所有者のID番号や氏名、顔写真が印刷されているほか、一部のマーカー領域312が所定のインクを用いて印刷されている。このインクには、IDカードの所有者の所属先に対応した複数種の導体片が含まれるインクが用いられている。このインクに含まれる複数種の導体片は、周期が互いに異なり、所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、所定波長範囲の電磁波のうち対応する波長の電磁波と共振して、それぞれ所定の波長でピークを有する反射波を発する。
【0093】
たとえば、図14の所属先対応表T1に示すように、A社に対応するIDカード310のマーカー領域312は、所定波長範囲で電磁波が照射された場合に、第1ピークとして波長W1のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片と、第2ピークとして波長W2のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片との2種の導体片を含むインクで印刷されている。そして、B社に対応するIDカード310のマーカー領域312は、所定波長範囲で電磁波が照射された場合に、第1ピークとして波長W3のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片と、第2ピークとして波長W4のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片との2種の導体片を含むインクで印刷されている。
【0094】
したがって、A社に対応するIDカード310のマーカー領域312に所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、波長W1と波長W2との2箇所でピークを有する反射波が発生する。そして、B社に対応するIDカード310のマーカー領域312に所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、波長W3と波長W4との2箇所でピークを有する反射波が発生する。
【0095】
このように、実施の形態3では、各IDカード310のマーカー領域312に、IDカード310の所有者の所属先に対応した複数種の導体片を含むインクを用いることによって、このマーカー領域312に所定波長範囲の電磁波を照射すると各所属先に固有の反射状態で反射波が発生するようにしている。
【0096】
そして、図14に例示する所属先対応表T1のように、IDカード310に塗布されるインクからの反射波の反射状態と、このIDカード310の所有者の所属先との対応関係は、予め求められ、判別部305に記憶される。判別部305は、検知部3によって検知されたIDカード310のインクからの反射波の反射状態と、所属先対応表T1とを比較し、この所属先対応表T1から、IDカード310のインクからの反射波の反射状態と一致する所属先を求めることによってIDカード310の所有者の所属先を判別する。
【0097】
次に、図15を参照して、図13に示す所属判別システム301の所属判別処理について説明する。図15は、図13に示す所属判別システム301の所属判別処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0098】
図15に示すように、制御部304は、入力部6から入力された指示情報をもとに判別開始の指示があるかを判断する(ステップS41)。入力部6は、たとえばリーダ上にIDカード310が近接したことを検知した場合には判別開始の指示情報を制御部304に入力する。そして、制御部304は、判別開始の指示があるまでステップS41の判断処理を繰り返し、判別開始の指示があると判断した場合(ステップS41:Yes)、電磁波発生源2に電磁波の発生を開始させ(ステップS42)、この電磁波発生源2による電磁波発生処理に同期させて検知部3に反射波の検知を開始させる(ステップS43)。
【0099】
この場合、電磁波発生源2は、全種の導体片に対応する全波長が含まれる所定波長範囲の電磁波をパルス発振する。検知部3は、制御部304を介して、判別部305にIDカード310からの反射波の反射状態を出力する。この検知部3の検知範囲は、全種の導体片が発する反射波のピーク波長全てが含まれるように設定される。
【0100】
そして、判別部305は、検知部3によって検知結果中にピークを有する反射波があるか否かを判断する(ステップS44)。判別部305は、ピークを有する反射波がないと判断した場合には(ステップS44:No)、いずれの種類の導体片も存在せず判別対象のIDカードがない場合に対応するため、後述するステップS50に進み、判別終了の指示があるか否かを判断する。
【0101】
一方、判別部305は、ピークを有する反射波があると判断した場合には(ステップS44:Yes)、この反射波の各ピーク波長を取得し(ステップS45)、たとえば図14に例示する所属先対応表T1を参照する(ステップS46)。そして、取得した反射波の各ピーク波長と所属先対応表T1とを比較して(ステップS47)、取得した反射波の各ピーク波長の組み合わせと一致する所属先を取得し(ステップS48)、この取得した所属先を判別対象のIDカード310の所有者が所属する所属先として出力する(ステップS49)。
【0102】
そして、制御部304は、所属先出力処理後(ステップS49)、または、判別部305がピークを有する反射波がないと判断した場合(ステップS44:No)、判別終了の指示があるか否かを判断する(ステップS50)。制御部304は、判別終了の指示がないと判断した場合には(ステップS50:No)、判別処理を継続するため、ステップS41に戻り、判別開始指示があるか否かを判断する。一方、制御部304は、判別終了の指示があると判断した場合には(ステップS50:Yes)、電磁波発生源2による電磁波の発生を停止させ(ステップS51)、検知部3による反射波の検知を終了させて(ステップS52)、所属判別システム301の判別処理を終了する。
【0103】
このように、実施の形態3では、IDカード310の所有者の所属先に、IDカード310からの反射波のピーク波長が対応するように、対応する各波長をピークに有する反射波を生じさせる導体片を複数種組み合わせて用いることによって、実施の形態1と同様の効果を奏するとともに、判別対象のIDカード310の所属先までをも正確に判別できるようにしている。
【0104】
なお、判別用のインクには、それぞれ異なるピーク波長で反射波を生じさせる複数種の導体片を含ませるほか、もちろん図9に示す導体片212Aのように、一つの導体片から所属先に対応する2つのピーク波長で反射波を発するものであってもよい。
【0105】
また、図16のように、所属判別システム301では、判別対象となるIDカード310Aのマーカー領域312A内を5箇所の領域P1〜P5に分けて、各領域P1〜P5のインクに含まれる導体片の組み合わせによってIDカード310Aの所属先を判別してもよい。
【0106】
この場合には、図17の所属先対応表T2に示すように、たとえば、A社に対応するIDカード310Aに所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、領域P1,P4,P5には波長W1のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片を含むインクが用いられ、領域P2,P3には波長W2のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片を含むインクが用いられる。また、B社に対応するIDカード310Aに所定波長範囲で電磁波が照射された場合には、領域P3,P4には波長W1のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片を含むインクが用いられ、領域P1,P2,P5には波長W2のピーク波長で反射波を発するように複数の導体素片を周期的に配置した導体片を含むインクが用いられる。このように、各所属先に応じて各領域に使用されるインクが設定されている。
【0107】
そして、判別部305は、検知部3によって検知されたIDカード310Aの各領域P1〜P5からの反射波の各ピーク波長と、所属先対応表T2に例示する各領域P1〜P5に設定される各ピーク波長とを比較し、それぞれが一致する所属先を求めることによってIDカード310Aの所有者の所属先を判別する。
【符号の説明】
【0108】
1,201 物品監視システム
2 電磁波発生源
3 検知部
4,204,304 制御部
5,205,305 判別部
6 入力部
7 出力部
10 物品
11 印刷面
12,212,312,312A マーカー領域
12A,12B,12C,12D,212A 導体片
13A,13B,13C,213b,213c 導体素片
14A,14B,14C 基材
301 所属判別システム
310,310A IDカード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に塗布される塗布剤であって、
電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有する平板状の導体片を含むことを特徴とする塗布剤。
【請求項2】
前記複数の導体素片は、2次元格子状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の塗布剤。
【請求項3】
前記複数の導体素片は、5周期以上並んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布剤。
【請求項4】
前記導体片は、
前記周期が互いに異なる2以上の領域を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の塗布剤。
【請求項5】
前記周期が互いに異なる複数種の前記導体片を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の塗布剤。
【請求項6】
前記周期は、前記所定の波長と等しいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の塗布剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の塗布剤が塗布された物品と、
前記物品に塗布された塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生手段と、
前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知手段と、
予め求められた前記塗布剤からの反射波の反射状態と前記物品の属性との対応関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波の反射状態とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別手段と、
前記判別手段による判別結果を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする物品属性判別システム。
【請求項8】
前記判別手段は、予め求められた前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長と前記物品の属性との対応関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別することを特徴とする請求項7に記載の物品属性判別システム。
【請求項9】
請求項4〜6のいずれか一つに記載の塗布剤が塗布された物品と、
前記塗布剤に対し、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の各周期に対応した2以上の波長の電磁波を発する電磁波発生手段と、
前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知手段と、
予め求められた前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別手段と、
前記判別手段による判別結果を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする物品属性判別システム。
【請求項10】
前記電磁波は、赤外線または電波であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一つに記載の物品属性判別システム。
【請求項11】
前記電磁波発生手段は、前記電磁波をパルス発振することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一つに記載の物品属性判別システム。
【請求項12】
物品に塗布された請求項1〜6のいずれか一つに記載の塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生ステップと、
前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知ステップと、
予め求められた前記塗布剤からの反射波の反射状態と前記物品の属性との対応関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波の反射状態とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別ステップと、
前記判別ステップにおける判別結果を出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする物品属性判別方法。
【請求項13】
前記判別ステップは、予め求められた前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長と前記物品の属性との対応関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別することを特徴とする請求項12に記載の物品属性判別方法。
【請求項14】
物品に塗布された請求項4〜6のいずれか一つに記載の塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の各周期に対応した2以上の波長の電磁波を発する電磁波発生ステップと、
前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知ステップと、
予め求められた前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別ステップと、
前記判別ステップにおける判別結果を出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする物品属性判別方法。
【請求項15】
前記電磁波は、赤外線または電波であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一つに記載の物品属性判別方法。
【請求項16】
前記電磁波発生ステップは、前記電磁波をパルス発振することを特徴とする請求項12〜15のいずれか一つに記載の物品属性判別方法。
【請求項17】
電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有し、平板状であることを特徴とする導体片。
【請求項18】
前記複数の導体素片は、2次元格子状に配置されることを特徴とする請求項17に記載の導体片。
【請求項19】
前記複数の導体素片は、5周期以上並んでいることを特徴とする請求項17または18に記載の導体片。
【請求項20】
前記周期が互いに異なる2以上の領域を有することを特徴とする請求項17〜19のいずれか一つに記載の導体片。
【請求項1】
物体に塗布される塗布剤であって、
電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有する平板状の導体片を含むことを特徴とする塗布剤。
【請求項2】
前記複数の導体素片は、2次元格子状に配置されることを特徴とする請求項1に記載の塗布剤。
【請求項3】
前記複数の導体素片は、5周期以上並んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布剤。
【請求項4】
前記導体片は、
前記周期が互いに異なる2以上の領域を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の塗布剤。
【請求項5】
前記周期が互いに異なる複数種の前記導体片を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の塗布剤。
【請求項6】
前記周期は、前記所定の波長と等しいことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の塗布剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の塗布剤が塗布された物品と、
前記物品に塗布された塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生手段と、
前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知手段と、
予め求められた前記塗布剤からの反射波の反射状態と前記物品の属性との対応関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波の反射状態とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別手段と、
前記判別手段による判別結果を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする物品属性判別システム。
【請求項8】
前記判別手段は、予め求められた前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長と前記物品の属性との対応関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別することを特徴とする請求項7に記載の物品属性判別システム。
【請求項9】
請求項4〜6のいずれか一つに記載の塗布剤が塗布された物品と、
前記塗布剤に対し、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の各周期に対応した2以上の波長の電磁波を発する電磁波発生手段と、
前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知手段と、
予め求められた前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係と、前記検知手段によって検知された前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別手段と、
前記判別手段による判別結果を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする物品属性判別システム。
【請求項10】
前記電磁波は、赤外線または電波であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一つに記載の物品属性判別システム。
【請求項11】
前記電磁波発生手段は、前記電磁波をパルス発振することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一つに記載の物品属性判別システム。
【請求項12】
物品に塗布された請求項1〜6のいずれか一つに記載の塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の周期に対応した波長の電磁波を発する電磁波発生ステップと、
前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知ステップと、
予め求められた前記塗布剤からの反射波の反射状態と前記物品の属性との対応関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波の反射状態とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別ステップと、
前記判別ステップにおける判別結果を出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする物品属性判別方法。
【請求項13】
前記判別ステップは、予め求められた前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長と前記物品の属性との対応関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波におけるピーク波長とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別することを特徴とする請求項12に記載の物品属性判別方法。
【請求項14】
物品に塗布された請求項4〜6のいずれか一つに記載の塗布剤に対して、該塗布剤に含まれる導体片に配置される複数の導体素片の各周期に対応した2以上の波長の電磁波を発する電磁波発生ステップと、
前記塗布剤からの反射波の反射状態を検知する検知ステップと、
予め求められた前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係と、前記検知ステップにおいて検知された前記塗布剤からの反射波における2以上のピーク波長および各ピーク波長におけるピーク強度の強弱関係とをもとに、前記電磁波が発せられた物品の属性を判別する判別ステップと、
前記判別ステップにおける判別結果を出力する出力ステップと、
を含むことを特徴とする物品属性判別方法。
【請求項15】
前記電磁波は、赤外線または電波であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか一つに記載の物品属性判別方法。
【請求項16】
前記電磁波発生ステップは、前記電磁波をパルス発振することを特徴とする請求項12〜15のいずれか一つに記載の物品属性判別方法。
【請求項17】
電磁波の所定の波長の整数倍の周期で配置された複数の導体素片を有し、平板状であることを特徴とする導体片。
【請求項18】
前記複数の導体素片は、2次元格子状に配置されることを特徴とする請求項17に記載の導体片。
【請求項19】
前記複数の導体素片は、5周期以上並んでいることを特徴とする請求項17または18に記載の導体片。
【請求項20】
前記周期が互いに異なる2以上の領域を有することを特徴とする請求項17〜19のいずれか一つに記載の導体片。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−236271(P2011−236271A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106447(P2010−106447)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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