説明

塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成方法

【課題】内部に環状マニホールドを有する環状ノズルを用いて流動性樹脂材料を円筒状あるいは円柱状の基材の外表面に塗布し、塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成方法において、より効率良く分散媒が偏在した流動性樹脂材料の滞留を防止して形成品の品質を向上させる。
【解決手段】環状ノズル2の内部の環状マニホールド3に複数の流入口7a、7bを設け、各流入口7a、7bにそれぞれ分岐管5a、5bが接続されている。各流入口7a、7bからマニホールド3への流動性樹脂材料の供給量の割合を、予め設定した塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成本数を形成する毎に変化させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状あるいは円柱状の基材の外表面に流動性樹脂材料の塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒状あるいは円柱状の基材の外表面に流動性樹脂材料の塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材を形成する場合、環状ノズルが用いられる。環状ノズルは、環状の本体に内設された環状マニホールドと内壁面に開口する環状吐出口とが円型絞りを介して連通されており、環状マニホールドには流動性樹脂材料を供給する供給口が設けられている。
【0003】
供給口より環状マニホールドに供給された流動性樹脂材料は、環状マニホールドの環状形状に沿って広がり、前記供給口の反対側で流動性樹脂材料が左右よりぶつかり合う。このときの位置は、供給口から最も遠い位置になるため、供給口の反対側が最も遅い流速の領域となる。流動性樹脂材料が環状マニホールド内で供給口の反対側で左右よりぶつかり合うことによって、滞留部分が生じて流動性樹脂材料に含まれる分散媒が滞留部分で流速を失って沈殿する。
【0004】
前記滞留部分には限界があり、滞留部分の容量を超えると、分散媒を多く含む物質が流動性樹脂材料の流速に載り、絞りを通過して環状の吐出口より流出し、この部位に不連続または連続的なスジ・ブツとして現れることで形成不良となる。
【0005】
これに対して、特許文献1には、環状マニホールド内の滞留部分における一部固化または分散媒が偏在した材料を多く含む流動性樹脂材料を常時排出することにより、一定の品質の流動性樹脂材料による塗布膜を形成する方法が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献2には、環状マニホールド内の滞留部分の箇所に配置した攪拌機構によって攪拌することにより、流動性樹脂材料が一部固化または分散媒が偏在することを防止する、流動性樹脂材料を吐出の直前に再攪拌する塗工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第1377135号公報
【特許文献2】特許第2930748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示された発明においては、流動性樹脂材料の滞留部分を樹脂吐出口から常時排出することにより品質を一定化するため、流動性樹脂材料を常に必要量以上使用しなければならない。特許文献2に開示された発明においては、環状マニホールドに回転機構を内蔵させ、環状ノズルの外部または内部に駆動部分を設置するため、環状ノズル内の環状マニホールド内部の構造が複雑となる。さらに、径小部品の形成では環状ノズル内の環状マニホールドも径小となるため、環状マニホールドに回転機構を内蔵させ、環状ノズルの外部または内部に駆動部分を設置することが困難であるという課題がある。
【0009】
本発明は、内部に環状マニホールドを有する環状ノズルにより、円筒状あるいは円柱状の基材の外表面に流動性樹脂材料を塗布する方法において、分散媒が偏在した材料の滞留をより効率良く防止して形成品の品質を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願発明に係る塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成方法は、流動性樹脂材料を円筒状あるいは円柱状の基材の外表面を取り囲む内壁面を有する環状ノズルの内部に設けた環状マニホールドに供給し、前記内壁面に開口する環状吐出口より吐出させて、円筒状あるいは円柱状の基材の外表面に塗布膜を形成する方法において、前記環状マニホールドには前記流動性樹脂材料を供給する複数の流入口を設け、各流入口から前記環状マニホールドへの流動性樹脂材料の供給量の割合を、予め設定した塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成本数を形成する毎に変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複数の流入口より環状マニホールド内部へ供給する流動性樹脂材料の供給量の割合を変化させることにより、滞留部分に分散媒が偏在した材料の位置位相を一箇所に限定させないことができる。
【0012】
さらに、各流入口より供給される流動性樹脂材料の供給量の割合を変化させることにより、それまでの環状マニホールドの内部での滞留部分に分散媒が沈降し偏在した材料である低速域流速の流動性樹脂材料を、高速域流速に変化させることが可能になる。
【0013】
これにより、一箇所に存在した滞留部分における分散媒が偏在した材料を流動性樹脂材料の流速に載せ、滞留部分における分散媒が沈降し偏在した材料を消滅させるので、塗布膜にスジ・ブツとして現れない安定した形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施に用いる塗布装置の一例を示す模式正面図である。
【図2】第1の実施の形態における環状ノズルを示し、(a)は模式上面図、(b)は(a)のA−A線に沿う模式断面図である。
【図3】第2の実施の形態における環状ノズルを示し、(a)は模式上面図、(b)は(a)のA−A線に沿う模式断面図である。
【図4】第3の実施の形態における環状ノズルを示し、(a)は模式上面図、(b)は(a)のA−A線に沿う模式断面図である。
【図5】第3の実施の形態において、各材料供給管から供給される樹脂供給量を示すグラフである。
【図6】第3の実施の形態における環状マニホールドの状態を示す断面図である。
【図7】第4の実施の形態における環状ノズルを示し、(a)は模式上面図、(b)は(a)のA−A線に沿う模式断面図である。
【図8】第4の実施の形態において、各材料供給管から供給される樹脂供給量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の実施に用いる塗布装置全体を示す模式側面図である。図2は図1に示す塗布装置における環状ノズルを示し、(a)は模式上面図、(b)は(a)のA−A線に沿う模式断面図である。
【0016】
環状ノズル2は円筒状の基材1の外表面に流動性樹脂材料を塗布して塗布膜を形成する。環状ノズル2は、円筒状あるいは円柱状の基材1の外表面を取り囲む内壁面を有し、内壁面に開口する環状吐出口9aが内部に設けられた環状マニホールド3に連通されている。環状マニホールド3には流動性樹脂材料を供給する複数(図示のものは2個)の流入口7a,7bが設けられている。そして、環状マニホールド3と流動性樹脂材料の第1および第2の分岐管5a、5bとが2方向より180度位相で接続されている。
【0017】
材料供給装置20に、材料供給管14の一端が連通されており、材料供給管14の他端は、2方向分流部4を介して第1および第2の分岐管5a、5bに分岐されている。分岐した第1および第2の分岐管5a、5bには、それぞれ開閉バルブ6a、6bが介在されている。分岐管5a、5bは環状マニホールド3の一対の流入口7a、7bにおいて接続されている。
【0018】
円筒状の基材1は上下一対の保持部分8a,8bで固定され、塗布装置Eの直動ガイド10に取り付けられている。駆動部11により回転駆動されるボールネジ部12が直動ガイド10に接続されている。
【0019】
流動性樹脂材料の材料供給装置20は、駆動部21により回転駆動されるボールネジ部22が直動ガイド23に接続されている。直動ガイド23は、材料供給装置20の移動軸24に接続されており、直動ガイド23と一体に移動軸24が移動して材料供給管14へ流動性樹脂材料を供給する。
【0020】
円筒状の基材1は、塗布装置Eの一方の保持部分8aと他方の保持部分8bで固定されて直動ガイド10に取り付けられており、駆動部11によってボールネジ部12を回転させることにより、図示の下から上へ移動する。直動ガイド10が移動するときに、円筒状の基材1の塗布領域で、材料供給装置20のボールネジ部12を回転させて移動軸24を移動させる。同時に第1および第2の開閉バルブ6a、6bのどちらか一個所を開放させて流動性樹脂材料を環状マニホールド3へ供給し、環状吐出口9aより吐出させて円筒状の基材1の外表面に塗布膜13を塗布する。
【0021】
次に、各開閉バルブ6a、6bの切り替えタイミングの設定方法について説明する。
【実施例1】
【0022】
塗布する流動性樹脂材料として、液状シリコーンゴム塗布材料A(XE15−B9236A/B:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、粘度250Pa・s、比重2.6)を用いた。塗布材料Aにより外径8mm、長さ260mmの円筒状の基材の外表面に、塗布膜厚さ2mm、塗布長さ240mmの塗布膜を形成する。
【0023】
第1の開閉バルブ6aのみを開き、開放された第1の流入口7aより塗布材料Aを供給しながら円筒状の基材1に連続塗布を開始した。すると、塗布回数60本目以降、第1の流入口7aと反対側の塗布膜にフィラーの偏在によるスジ・ブツの形成不良が発生した。これは、環状マニホールド内の材料がぶつかり合う合流域で分散媒が沈降し偏在した材料が滞留し、それが塗布されたためであると考えられる。
【0024】
そこで、塗布開始から50本目の時点で第1の開閉バルブ6aを閉じて第1の流入口を閉鎖し、代わりに第2の開閉バルブ6bを開き、開放された第2の流入口7bより塗布材料Aを供給しながら引き続き連続塗布を行った。すると、塗布回数60本目以降も、塗布膜にスジ・ブツの形成不良は発生しなかった。
【0025】
しかしながら、そのまま開閉バルブ6bより追加で60本、連続で110本目まで連続塗布を行ったところ、やはり、第2の流入口7bと反対側の塗布膜にフィラーの偏在によるスジ・ブツの形成不良が発生した。そのため、塗布材料Aの供給を、50本目、100本目、150本目、と塗布回数50本毎に、第1の開閉バルブ6aと第2の開閉バルブ6bを交互に開閉しながら連続塗布を続けた。
【0026】
つまり、予め設定した塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成本数(塗布回数)を形成する毎に、各流入口から環状マニホールドへの流動性樹脂材料の供給量の割合を変化させることで、塗布膜にスジ・ブツなどの形成不良は発生しなかった。
【実施例2】
【0027】
次に、塗布する流動性樹脂材料として、液状シリコーンゴム塗布材料B(DY35‐561A/B:東レ・ダウコーニングシリコーン社製100重量部に、グラスバブルズフィラー(K15:住友3M株式会社製):10重量部を添加して分散)を用いた。前記同様、塗布材料Bを用いて外径8mm、長さ260mmの円筒状の基材の外表面に、塗布膜厚さ2mm、塗布長さ240mmの塗布膜を形成した。
【0028】
第1の開閉バルブ6aのみを開き、第1の流入口7aより塗布材料Bを供給しながら円筒状の基材1に連続塗布を開始したところ、塗布材料Bでは、8本目以降で流入口と反対側の塗布膜にフィラーの偏在によるスジ・ブツの形成不良が発生した。
【0029】
そこで、塗布開始から5本目の時点で第1の開閉バルブ6aを閉じ、続いて第2の開閉バルブ6bを開き第2の流入口7bより塗布材料Bを供給することとして、再度連続塗布を行った。すると、塗布回数8本目以降も塗布膜にスジ・ブツの形成不良は発生しなかった。以降、塗布回数5本毎に、第1の開閉バルブ6aと第2の開閉バルブ6bを交互に開閉しながら連続塗布を続けたところ、同じく塗布膜にスジ・ブツなどの形成不良は発生しなかった。
【0030】
以上より、塗布材料の特性に応じて各開閉バルブ6a、6bの切替タイミングを適宜調整することで、環状マニホールド内の材料がぶつかり合う合流域で分散媒が偏在した材料が滞留して塗布されることを防ぎ、連続的に安定した品質の塗布膜が形成できた。
【0031】
(第2の実施の形態)
以下に、本発明における第2の実施の形態を図面を参照にして説明する。
【0032】
図3は本発明の第2の実施の形態による塗布装置を示し、(a)は塗布装置の円筒状部材の上面断面図であり、(b)は塗布装置の側面断面図である。
【0033】
材料供給装置20から供給される流動性樹脂材料は、材料供給管14に供給され、2方向分流部4により第1〜第3分岐管5a、5b、5cに分岐する。分岐した第1〜第3分岐管5a、5b、5cには、それぞれ開閉バルブ部6a、6b、6cが設けられている。材料供給管5a、5b、5cは環状マニホールド3の流入口7a、7b、7cにおいて環状マニホールド3に接続されている。
【実施例3】
【0034】
次に、各開閉バルブ部6a、6b、6cの切り替えタイミングを説明する。塗布する流動性樹脂材料として、液状シリコーンゴム塗布材料A(XE15−B9236A/B:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、粘度250Pa・s、比重2.6)を用いる。塗布材料Aを用いて外径8mm、長さ260mmの円筒状の基材の外周面に、塗布膜厚さ2mm、塗布長さ240mmの塗布膜を形成する。
【0035】
まず第1の開閉バルブ6aのみを開き、開放された第1の流入口7aより塗布材料を供給しながら円筒状の基材に対する連続塗布を開始した。すると、塗布回数60本目以降、流入口と反対側の塗布膜に分散媒であるフィラーの偏在によるスジ・ブツの形成不良が発生した。これは、環状マニホールド内の材料がぶつかり合う合流域で分散媒が偏在した材料が滞留し、それが塗布されたためであると考えられる。
【0036】
そこで、塗布開始から50本目の時点で第1の開閉バルブ6aを閉じて第1の流入口7aを閉鎖し、続いて第2の開閉バルブ6bを開き、開放された流入口7bより塗布材料Aを供給しながら引き続き連続塗布を行った。すると、塗布回数60本目以降も、塗布膜にスジ・ブツの不良は発生しなかった。次に100本目において、第2の開閉バルブ6bを閉じて第2の流入口を閉鎖し、続いて第3の開閉バルブ6cを開き、開放された第3の流入口7cより塗布材料を供給しながら引き続き連続塗布を行った。すると塗布回数150本目まで塗布膜にスジ・ブツの不良は発生しなかった。以降150本完了時に第3の開閉バルブ6cを閉じ、再度第1の開閉バルブ6aを開き、開放された第1の流入口7aより塗布材料Aを供給し200本まで塗布した。このように、連続塗布50本毎に順次第1〜第3の開閉バルブ6a、6b、6cを開閉しながら連続塗布を続けた。
【0037】
つまり、予め設定した塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成本数(塗布回数)を形成する毎に、複数の流入口のいずれか一個所を開放することで、各流入口から環状マニホールドへの流動性樹脂材料の供給量の割合を変化させる。塗布膜にスジ・ブツなどの形成不良は発生しなかった。
【0038】
(第3の実施の形態)
以下に、本発明における第3の実施の形態を図4、図5、図6を用いて説明する。図4は本発明の第3の実施の形態による塗布装置を示し、(a)は塗布装置の円筒状部材の模式上面、(b)は(a)のA−A線に沿う側面断面図である。
【0039】
第3の実施の形態では、流動性樹脂材料の供給を、第1の実施の形態のように各分岐管5a、5bを切り替えるのではなく、各分岐管5a、5bからの供給量の割合を連続的に変化させている。供給量の割合は、絞り弁を用いる。絞り弁には、不図示のサーボモータが接続されている。不図示のサーボモータの位相制御により、絞り弁による供給量の割合を連続的に変化さている。さらに、不図示のドライバー、不図示のドライバーコントローラ、塗布装置のシーケンサー等の電気制御により、前記不図示のサーボモータの動作を制御している。図4の塗布装置では、分岐管5a、5bとが2方向より180度位相で接続されていて、絞り弁22a、22bが2箇所に接続配置されている。絞り弁22a、22bは、流入口7a、7bが接続配置されている。そして、流入口7a、7bは、環状マニホールド3と接続されている。前記不図示の2個サーボモータの動作は、電気制御され2箇所の絞り弁の供給量割合を連続的に変化させている。その際、全体の供給量は常に一定になるように制御することで、塗布膜13の厚さは均一となる。
【0040】
図5は、各流入口7a、7bから供給される流動性樹脂材料の供給量を示している。図5(a)は流入口7aの流動性樹脂材料の供給量の時間的な変化であり、図5(b)は流入口7bの流動性樹脂材料の供給量の時間的な変化である。図5(c)は円筒状の基材1に塗布される流動性樹脂材料の供給量の総和の時間的な変化を示している。
【0041】
図6は、成形時間0から6tにおける、環状マニホールド3の状態を示す断面図である。図6(a)は、成形時間0、4tにおける、環状マニホールド3の状態を示す断面図である。図6(b)は、成形時間1t、3t、5tにおける、環状マニホールド3の状態を示す断面図である。図6(c)は、成形時間2t、6tにおける、環状マニホールド3の状態を示す断面図である。いずれの時間においても、環状の吐出口からの樹脂吐出量は一定であり、環状ノズルと円筒状の基材1との相対移動速度vを一定に保つことで、円筒状の基材1上に塗布膜13が形成される。
【実施例4】
【0042】
実施例3と同様に、液状シリコーンゴム塗布材料A(XE15−B9236A/B:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、粘度250Pa・s、比重2.6)を用いる。塗布材料Aを用いて外径8mm、長さ260mmの円筒状の基材の外周面に、塗布膜厚さ2mm、塗布長さ240mmの塗布膜を形成する。
【0043】
まず、第1の絞り弁22aを全開状態に開き、開放された第1の絞り弁22aより塗布材料を供給しながら円筒状の基材に対する連続塗布を開始した。すると塗布回数60本目以降、流入口と反対側の塗布膜に分散媒であるフィラーの偏在によるスジ・ブツの形成不良が発生した。
【0044】
そこで、塗布開始時から各絞り弁22a、22bから供給される流動性樹脂材料の供給量を、連続的に変化させながら、円筒状の基材1に連続塗布を開始した。
【0045】
第1の絞り弁22aの流動性樹脂材料の供給量の変化を図5(a)、第2の絞り弁22bの流動性樹脂材料の供給量の変化を図5(b)、円筒状の基材1に塗布される流動性樹脂材料の供給量の総和の変化を図5(c)に示す。
【0046】
各絞り弁22a、22bから供給される流動性樹脂材料の供給量を、連続的に変化させながら、連続塗布回数60本目、70本目、80本目の時点で塗布膜13の状態を確認した。いずれの塗布膜13には、分散媒であるフィラーの偏在によるスジ・ブツの発生がみられず、安定した表面状態が確認された。
【0047】
さらに、そのまま、供給量を連続的に変化させながら100本目まで連続塗布を続けた。100本目の塗布膜13にスジ・ブツの不良の発生は、確認されず安定した表面状態が確認された。
【0048】
更に各絞り弁22a、22bからの供給量は連続的に変化していることから、塗布膜13の形成過程における環状マニホールド3内の状態は、形成時間の経過により流動性樹脂材料の合流領域2mが移動している。塗布膜13の形成中に合流領域2mが移動していることで、環状マニホールド3内部での経時的な局所材料滞留は発生せず、全周に渡り連続的に安定した材料状態での吐出が可能となる。
【0049】
(第4の実施の形態)
以下に、本発明における第4の実施の形態を図7、図8を用いて説明する。
【0050】
第4の実施の形態は、実施例2のように、各分岐管5a、5b、5cを切り替えるのではなく、各絞り弁22a、22b、22cからの供給量の割合を連続的に変化させている。
【0051】
供給量の割合は、絞り弁を用いる。絞り弁には、不図示のサーボモータが接続されている。不図示のサーボモータの位相制御により、絞り弁による供給量の割合を連続的に変化させている。さらに、不図示のドライバー、不図示のドライバーコントローラ、塗布装置シーケンサー等の電気制御により、前記不図示のサーボモータの動作を制御している。
【0052】
図7の塗布装置では、分岐管5a、5b、5cとが3方向より120度位相で接続されていて、絞り弁22a、22b、22cが3箇所に接続配置されている。絞り弁22a、22b、22cは、流入口7a、7b、7cが接続配置されている。そして、流入口7a、7b、7cは、環状マニホールド3と接続されている。
【0053】
前記不図示の3個のサーボモータの動作は、電気制御され3箇所の絞り弁の供給量割合を連続的に変化させている。その際、全体の供給量は常に一定になるように制御することで、塗布膜13の厚さは均一となる。
【0054】
図8に第4の実施の形態における、各流入口7a、7b、7cから供給される流動性樹脂材料の供給量の変化を示す。図8(a)は第1の流入口7aの流動性樹脂材料の供給量の変化であり、図8(b)は第2の流入口7bの流動性樹脂材料の供給量の変化であり、図8(c)は第2の流入口7cの流動性樹脂材料の供給量の変化である。図8(d)は円筒状の基材1に塗布される流動性樹脂材料の供給量の総和の変化を示している。
【0055】
成形時間0、1t、2t、3tにおける、いずれの時間においても、環状の吐出口からの樹脂吐出量は一定であり、環状ノズルと円筒状の基材1との相対移動速度vを一定に保つことで、円筒状の基材1上に塗布膜13が形成される。
【実施例5】
【0056】
実施例2と同様に、液状シリコーンゴム塗布材料A(XE15−B9236A/B:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、粘度250Pa・s、比重2.6)を用いる。塗布材料Aを用いて外径8mm、長さ260mmの円筒状の基材の外周面に、塗布膜厚さ2mm、塗布長さ240mmの塗布膜を形成する。
【0057】
まず、第1の絞り弁22aを全開状態に開き、開放された第1の絞り弁22aより塗布材料を供給しながら円筒状の基材に対する連続塗布を開始した。すると塗布回数60本目以降、流入口と反対側の塗布膜に分散媒であるフィラーの偏在によるスジ・ブツの形成不良が発生した。
【0058】
そこで、塗布開始時から各絞り弁22a、22b、22cから供給される流動性樹脂材料の供給量を、図8のように連続的に変化させながら、円筒状の基材1に連続塗布を開始した。各絞り弁22a、22b、22cから供給される流動性樹脂材料の供給量を、連続的に変化させながら、連続塗布回数80本目の時点で塗布膜13の状態を確認した。塗布膜13には、分散媒であるフィラーの偏在によるスジ・ブツの発生がみられず、安定した表面状態が確認された。さらに、そのまま、供給量を連続的に変化させながら100本目まで連続塗布を続けた。100本目の塗布膜13にスジ・ブツの不良の発生は、確認されず安定した表面状態が確認された。
【0059】
各流入口7a、7b、7cに接続されている絞り弁22a、22b、22cからの供給量は連続的に変化していることから、塗布膜13の形成過程における環状マニホールド3内では、流動性樹脂材料の不図示の合流領域が常に移動する。従って、環状マニホールド3内部での局所的な流動性樹脂の滞留が抑制され、全周に渡り連続的に安定した材料状態での吐出が可能となる。
【0060】
上記実施例では、説明を簡便に判りやすくするために円筒状の基材の外表面への塗布膜形成を例に挙げ、かつ塗布膜厚が吐出長手方向に渡り均一な場合を例示している。しかし、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば塗布膜の厚さを変化させるような場合には、各分岐管からの供給量の総和を変化させる。また、円柱状の基材の外表面に流動性樹脂材料を塗布して塗布膜を有する円柱状部材を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
環状ノズルの供給口が2つ以上である場合、及び環状ノズルから円筒状に吐出された樹脂材料が、直接樹脂円筒状部材として形成されるような押出し成形の場合においても、本発明が有効であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1 円筒状の基材
2 環状ノズル
3 環状マニホールド
4 2方向分流部
5a、5b、5c 分岐管
6a、6b、6c 開閉バルブ
7a、7b、7c 流入口
8a、8b 保持部分
13 塗布膜
14 材料供給管
20 材料供給装置
21 駆動部
22 絞り弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性樹脂材料を円筒状あるいは円柱状の基材の外表面を取り囲む内壁面を有する環状ノズルの内部に設けた環状マニホールドに供給し、前記内壁面に開口する環状吐出口より吐出させて、円筒状あるいは円柱状の基材の外表面に塗布膜を形成する方法において、
前記環状マニホールドには前記流動性樹脂材料を供給する複数の流入口を設け、各流入口から前記環状マニホールドへの流動性樹脂材料の供給量の割合を、予め設定した塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成本数を形成する毎に変化させることを特徴とする塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成方法。
【請求項2】
前記供給量の割合を、前記複数の流入口のいずれか一個所を開放することで変化させることを特徴とする請求項1記載の塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成方法。
【請求項3】
前記供給量の割合を、前記複数の流入口のいずれか一個所を閉鎖することで変化させることを特徴とする請求項1記載の塗布膜を有する円筒状あるいは円柱状部材の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−224493(P2011−224493A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97993(P2010−97993)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】